プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束31



ユノはドラマの撮影現場が初めてなこともあり
上手く立ち回ることができずにいた。

それこそ、チャンミンはまったく勝手の違う現場に
連れてこられているのに

ユノはチャンミンをフォローしきれず、
歯がゆい思いをしていた。

「チャンミン、昨日練習したみたいに
台本通り読めばいいから」

「うん…」

明らかにチャンミンは緊張している

「大丈夫、一緒にいるよ」

それでもユノはチャンミンを力づけた。

「やっぱりこんなのできないよ」

とうとう怖気付いてしまうチャンミン

もうすぐ本番なのに
上手に演技なんてできる気がしない

チャンミンは主役ではない、と聞いていたのに
かなり出番も多い。


そんなとき、共演の女優がベテランらしく遅めに登場した。

「チャンミン、挨拶に行こう」

「うん…」

女優がチラリと長身の2人を見て微笑む

「今回お世話になります、うちのシム・チャンミンです
初体験なのでよろしくご指導お願いします」

ユノがキッチリと挨拶をして
チャンミンがぺこりと頭を下げた

「知ってるわ。友達があなたのライブに行ってね
共演するっていったらすごく羨ましがられて」

「ありがとうございます」

「演技なんてね、歌を歌うことに比べたら
大したことないのよ、大丈夫」

「はぁ…」

気さくな大女優に少し笑顔になったチャンミン

ディレクターから、ユノはチャンミンから離れるようにと指示があった

仕方なく、ユノはスタッフの後ろまで下がった

そんなユノを心細く見つめるチャンミン。


それでも

リハーサルを何度か行って
チャンミンは少し緊張がほぐれて来た

共演のこのベテラン女優が上手く乗せてくれる

さすがだ。

リハーサルの合間にチャンミンと並んでディレクターズチェアに座った

「ねぇ、チャンミン」

「はい」

「あなたのエージェント、カッコいいのね」

「は?」

「ユノさん、だっけ。
セクシーだわ、彼。話つけてくれない?」

「話?」

「そうよ、橋渡しお願い、チャンミン」

チャンミンの心の奥がジリッと熱くなる

「ユノはダメですよ」

「あら、なんで?」

「女性は…ダメです」

「えー?そうなの?」

「はい、残念ながら」

「ふぅん、あなたがユノさんの可愛い彼ってとこかしら」

「………」

チャンミンはしまった、と思った。
ここで2人の関係を晒していいものかどうか

「いいのよ、隠さなくっても。
でも、チャンスはちょうだいね」

「チャンス?」

「ユノさんがアタシになびいて来たら
邪魔しないでね。
そこんとこ、自信あるのよ私」

その言葉が、完全にチャンミンを怒らせた

運がいいのか、悪いのか

今日のシーンは、その女に裏切られ
激しく罵倒する若い男、というもの。

罵倒するための、酷い言葉が台本に並ぶ

チャンミンは心を込めて、女優を罵倒した

気迫のある演技

一発OKをもらえたチャンミンはハッと我に帰るほど
興奮していた。

「いい絵が撮れたわよ。
最高よ、チャンミン。煽ったのがよかったかしら」

ウインクをする女優にチャンミンはふんと笑った


「チャンミン!すごいじゃないか!
一発OKだって!」

ユノがチャンミンの元に走って来た

「なんか、結構スムーズだったよ」

チャンミンも満足そうに微笑む。

いくつかのシーンを撮り終える頃には
チャンミンは演技も悪くない、と思えるまでになっていた。

ギターを弾いて歌うのとは
また違った面白さがある。

そして、放送されたドラマはかなりの視聴率を叩き出し
チャンミンの演技も高い評価を受けた。

ライブツアーを成功させ
ドラマもヒットさせる

チャンミンはひとつのムーヴメントを巻き起こしつつあった。

高いところに行きたかったチャンミンは
少しずつその階段を上って行く。

今日はひさしぶりにギターのレッスンだった。

「チャンミン、久しぶりだね。」

「はい、ドラマの撮影があって
来られなかったんです」

「ギターも完璧じゃないのに、ドラマなの?」

「うーん、そう言われちゃうと何にも言えないですけど
仕事なので…」

「どういう方向でやっていくのか、事務所と話し合ってる?」

「特にそういう話は…」

「僕は、チャンミンが来年またツアーをする時に
今より歌や曲が広がればいいなって、そんな思いでやってるから」

「……」

だったら、どうすればいいんだよ?

「本格的なアーティストを目指さないなら
僕はチャンミンに教えることは何もないよ」

「目指してますよ。演技も歌もできる
エンターティナーってことで、みんな期待してるみたいですし。」

「マルチタレントだね」
その言い方が少しイヤミだった。


ユノはレッスンの終わるチャンミンを迎えに来た。

ファンに囲まれ過ぎず、スムーズに乗り降りできる場所を確保するのに毎回苦労する。

「どうだった?」

「ユノ」

「ん?」

「ク先生、ダメだ」

「え?なんで?」

「僕の方向と合ってない」

「チャンミンの方向?」

「俳優の仕事もしたから、マルチタレントだって
バカにされた」

「ああ、そうか。
ク先生はそういうのイヤかもな。」

「そういうタレント事情みたいなの
わかってくれる人のほうがいいな。
僕、ギタリスト目指してるわけじゃないからさ」

「……」

「いろいろやれるのがいい、って思ってくれるような先生いないかな。
手っ取り早く、ギターが上手く見えるようなテクニック教えてくれる人とか」

「そういう風にやりたいのか?」

「うん、時間もないし、
そんな感じのほうがいいかな」

「…わかった。考えてみるよ」

「そういえば、ジンさんがまたドラマの話がきてるって」

「うん、でもな、あんまりいいドラマじゃない」

「アイドルの女の子が主役だから、
ヤキモチ?」

「アハハ、そうじゃないよ」

「なんだ、つまんない」

チャンミンが悪戯っぽい目でユノを見つめる

「チャンミンが、ただの話題作りのためだけに
出させられるような感じで」

「いいでしょ、それで話題になったら」

「いいのか?」

「全然構わないよ。」


チャンミンが鼻歌を歌いながら、
スマホで何やら物色している。

「何か買うのか?」

「うん、結構ギャラが入ったから」

「大事に使えよ?」

「アハハハ、ユノ、僕の保護者?」

「恋人のつもりだ」

チャンミンがスマホをいじる手をやめて
ユノを見た。

「つもりじゃなくて、恋人だよ」

チャンミンが真面目な顔で言う。

フッとユノが微笑んだ



**********


「ユノ、今、アンティムから離れられるか?」

久しぶりにアンティムのレッスンに付き合っていたユノの元にジンから連絡があった。

「チャンミンがどうかした?」

「みんなが困ってる」

「なんで?」

「よくわかんないけど、なにかムクれてるらしい。
まわりのスタッフがどうにもできないらしい」

「え?」

「ちょっと行ってくれないか?
テソンをそっちに行かせるから」

ユノはチャンミンがドラマの撮影をしているロケ現場へ行った。

ディレクターズチェアに脚を組んで座っているチャンミンはひどく難しい顔をしている。

まわりのスタッフがオロオロしている様子がわかる。

ユノが近づくと、
チャンミンの隣のチェアで、監督がなにやら
説得しているようだ。

スタッフがユノに気づいた

「あ、監督、ユノさん来ました」


監督が縋るようにユノの元へきた。

知らない監督だ。

「ユノさん、よかった。
いやーなんかね、ドラマの趣旨が気に入らないって
ゴネだしちゃってさ。
ナミちゃん、もう次のスケジュールせまってて
時間もないんだよ」

主役のアイドルのスケジュールが優先、程度のドラマだった。


「はい、ちょっと話させてください」

チャンミンがユノに気づいた

「ユノ!」

「チャンミン、ちょっとこっちへおいで」

チャンミンは勢いよく席から立ち上がって
ユノについてきた。

「聞いてよ!ユノ!」

「どうしたんだよ、なにが気に入らない?」

「最初聞いてたコンセプトと全然違う。
これ、原作は漫画なんだけど、僕読んだことあってさ、
全然ちがうんだよ」

「チャンミン、ドラマは原作通りにはいかないよ」

「そんなこと、聞いてない」

「チャンミン…」

「いいもの作りたいじゃん。
変なドラマを選んだって思われたくない」

「チャンミンは、話題作りだけだから
ほんとにこのシーンだけで終わりだよ」

「ユノは僕がこんなドラマに出るのでもいいの?」

「そういうわけじゃないけど、
オファーされたものはちゃんと選ばなきゃな。」

「ジンさんが選んだんでしょう?」

「チャンミン、頼むからここはなんとか頑張ってくれ」

「……」

「頼むよ、俺を助けると思って」

「今夜、ジンさんと話したい」

「うん、帰りに事務所行こう。
俺も一緒に話してやるから」


チャンミンは渋々スタンバイした。

ユノがまわりに謝る

「すみません。もう大丈夫ですから」


そんな感じでなんとか行われた撮影だったけれど
これがまた、チャンミンだけがクローズアップされ
話題になった。


定例会、ではないけれど、
ジン・コーポレーションで、ユノとチャンミン
そしてジンで席を設けた。

ジンはとにかく上機嫌でチャンミンを讃える

「これから、みんなで盛り上がっていこうな!
チャンミン、何か欲しい車があったら、事務所で買ってやるぞ。
みすぼらしいバンばかり乗っているのも恥ずかしいだろ」

ユノが怪訝な顔をした。

「ギターも乗せるんだから
バンでいいんだよ」

「だけどさー、なぁ?チャンミン」

「車はなんでもいいけど、
もっと一流のスタッフと仕事がしたいです」

「何言ってんだよ、
どれも一流の仕事じゃないか」

「なんか単発ばっかりで。
それもスタッフが2流だし。
だったら、普通の歌番組でいい」

「欲がないねぇ、チャンミンは」

「貪欲なんですよ、わかりませんか?
もっといいものを求めてるんです」

「……言いたいことはいろいろあるだろうけれど
とりあえず、チャンミンはウチの所属なんだから
そこ、忘れるなよ」



家に帰る車内。

ユノもチャンミンも黙っていた。

やっとユノが口をきいた

「チャンミン、仕事はなるべく俺がせき止めるようにするから」

「ジンさん、僕の言いたいことわかってくれたかな」

「わかんないだろ。今までこういうやり方しかしたことないから。」

「考え方、変えて欲しいよ」

「ああ、そうだな。」

2人で悩むことは
2人で歩んでいるってことで

チャンミンは気分がよかった

ユノだけが難しい顔をしていた





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