プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 30



チャンミンが不安そうにユノを見る

「どうしたの?」

「アンティムが事情聴取を受けるみたいだ」

「そんな…みんなは関係ないでしょう」

「スンホが薬物を買いはじめた時期が
ウチに所属していた時期だってさ」

「そんな」

「そんなはずはないよ。
薬物を売っていたディレクターは、ウチとは仕事してない」

「なら、すぐ証明されるよ」

「だけど、イメージが悪い。
これでCMの契約が破棄されたらマズい」

「……ユノが行ってどうにかなるの?」

「どうしてそんな話になってるのか。
事情聴取されるのかだって、本当かどうか確かめないと」

「…ウワサなら余計に消さないとね」

「ジンが行くだろ。社長なんだから」

「ユノが行きたいんでしょ?」

「俺はチャンミンの側についてるよ」

「そんなこと、してくれなくていい」

「ムリするな。」

「ムリしてるのはユノだよ。」

「ムリしてるんじゃない。勘違いしてたことに気づいただけ」

「勘違い?」

「チャンミンに甘えてた。
一緒に住んでる俺の大事な恋人で
俺はただ応援してる気になってた。
だけどそうじゃなくて、これは大事な仕事で。
それに、俺たち二人三脚なんだから」

「ユノ…」

「チャンミンの方がよっぽどビジネスとして
きちんとやってる」

「ユノは1人でなんでも抱えようとするんだから」

チャンミンはため息をついた。

「悪いクセだね。
そんなに器用でもないのに」

ユノは苦笑した。

「ほんとだよ?ユノはそんなに器用じゃないんだから」

「うん。」

「ユノ、僕は大丈夫。
だから、ユノはアンティムのところに行って」

「いいんだよ、社長のジンが行ったんだから
俺より上手くいくはずだ。」

「欲しかったギター買ってもらったからもう十分」

「それはいいんだよ」

「このギターが一緒なら大丈夫だから。
ステージでは結局僕1人なんだよ、ユノ。」

「お!わかるのか?チャンミン」

「うん、結局そうかなって。」

「それはね、ほんとその通りなんだよ。
ステージでは1人」

「だから、行ってあげて。
僕もあの子たちの事、気になるし」

ユノは少し考えた

「うん…」

「そのかわり、アンコール終わったらステージの袖で待っててよ?」

「いいのか?」

「いいよ」

「迎えに行くって約束する」




チャンミンの初めてのライブ

それは観客すべてを魅了し、感動させ、涙させた。

盛り上がるところは、明るく爽やかに盛り上がり
しっとりと聴かせるところは切なく甘く

でも、歌手としてのチャンミンの一番の魅力は
静かな中に時折顔を出す、その強さと哀しさだった。

透き通る声で時に激しさを滲ませて懸命に歌う

意外性のあるアーティスト

それがチャンミンだった。


早めに舞台袖にスタンバイしたユノは
そんなチャンミンを見て驚愕した

思っていたより、チャンミンの実力はすごい

ユノが手に負えないほどの、スターになるかもしれない。

アンコールを終えて、割れるような拍手の中、
白いコットンシャツのチャンミンは頭をなんども下げて
大きく手を振った。

やりきったいい笑顔だった。

そうしてチャンミンはまっすぐに
舞台袖にいたユノに向かって歩いてきた

「チャンミン!お前、すごいぞ!」

「ユノ!」

チャンミンはユノに抱きついた

「すごいぞ、チャンミン!
聴こえるか?この拍手」

「うん!僕、すごく気持ちよかったよ!」

「ここから見てごらん、
みんながもう一度お前に会いたくて待ってる」

「もう一度…行ってこようかな…
ステージマネージャーに怒られるかな」

「大丈夫だよ、ほらステージの下にいるだろ。
出てこいってさ」

ステージマネージャーがニコニコと
チャンミンを手招きしている

チャンミンはもう一度ステージの中央に立ち、
観客に手を振って頭を下げた。

素晴らしいアーティスト

その地位を確立したツアーとなった。


最終日も大盛況に終わり
すぐにファンクラブも設営された。


ジン・コーポレーションはチャンミンとアンティムの
2本の大黒柱で潤った。

そんなある日、音楽番組のリハーサルをしていた。

少し格調の高い番組で、生バンドでの演奏だった。

バンドメンバーは名だたる有名なアーティストばかり
さすがにチャンミンは緊張した。

そんな有名な人ばかりなのに
みんな気さくだった。

キーボード担当の人が特にいい感じだった。

「オレ、チャンミンのライブ行ったんだよ
すごくよかったよ」

「え?ほんとですか?うれしいです!」

「チャンミンってどこのエージェント?」

「ジン・コーポレーションです」

「ジン?どこの系列?」

「系列は…わかりませんけど
あ!アンティムと一緒です」

「あーあのアイドルのコたち。
他には誰がいるの?」

「今は、たぶん僕たちだけですよ」

「えっ?!2組だけ?」

「はい…」

「そうなんだ…がんばってるね」

「はい!」

「でも、チャンミンはもう少しギターを練習した方がいいな。声はすごくいいし、曲もいい。」

「あ、はい…」

チャンミンを応援してくれるファンもいれば
アンチと呼ばれる類のファンもいる

そのアンチから、ギターが下手だと言われているのは知っていたし、チャンミンも気にしていた。

「ちゃんと一流の人にみてもらって練習したら?
すぐ上手になるし、曲の幅も広がるよ」

そうしたい。

前から少し、そんな風に思っていたチャンミンだった。

チャンミンは、ユノに相談した。

「わかった。ジンに相談して、
次のアルバムまで、いい先生をつけてもらおう」

「うん、曲の幅も広がるって」

相変わらずビルの小さな一室にある事務所。
ジン・コーポレーションはそろそろ引越しも考えていた。

ユノとチャンミン、そしてジンとテソンが打ち合わせをしている。

「だから、チャンミンは少しレッスンさせるから。
いい先生を探して、その時間を確保させたい」

ユノの提案にジンは顔色を曇らせた

「レッスンなんて、そんな時間はないよ」

「次のアルバムは早くて来年だろ。時間はたっぷりある。」

「チャンミンに、ドラマの話が来てるんだよ」

ジンが嬉しそうに言う

「主題歌?いいね」

「新しく歌を作った方がいいですか?」

チャンミンも身を乗り出した。

「いやいや、曲なんて作らなくていいよ
ドラマの主演だから」

「はぁ?」

「僕が…俳優ですか?」

「いろんな事ができないとな、チャンミン。
他にも単発でドラマのオファーが来てるよ」

「僕、そんなことできません」

チャンミンが縋るようにユノを見た。

「チャンミンは俳優になりたくて芸能界へ入ったんじゃないよ、ジン」

「なに言ってんだよ。向こうから話が来るうちに
いろいろやっておかないと。チャンスだぞ。
俳優だって、チャンミンのルックスならばっちりだ」

「嫌です」

「はぁ?拒否するなんてどういうことだ」

「ジン、落ち着けよ。よく考えろ。
コンセプトなしにチャンミンを露出させたらダメだ。」

「今が活躍の時だろ。何言ってんだユノ」

「僕はとにかく、ぜったい俳優なんてやりません」

チャンミンの唇が真一文字に引き結ばれる


チッとジンが舌打ちをする。

「この話はまた今度だ。
とにかくレッスンなんて、そんな時間はないからな」


ユノとチャンミンは事務所を出て車に乗った

ほんとうにアイドル並みの人気で
車に乗るのも一苦労だった。


「ふーっ。チャンミンほんと凄い人気だ」

「………」

「大丈夫。心配するな。
俳優なんてしなくていいから。
いい先生を見つけて、レッスンしよう」

「うん、そうしたい。
事務所に所属してたら、そういうことも
なんでも受けないといけないのかな」

「心配するな。大丈夫」

ユノはツテを頼り
この人なら、という先生を見つけた。

先生ももちろんチャンミンを知っていた。

「チャンミン、こちらはク先生」

「よろしくお願いします」

「いやー僕ね、チャンミンのライブ行ったんだよ」

「え?そうなんですか?嬉しいです!」

「すごく良かった、歌がね」

そう言ってニコっと笑った。

ギターが下手な事を言われてるんだ

チャンミンは恥ずかしくなって下を向いた。

「路上でやるには十分だけどね。
だから、僕と一緒にがんばりましょう」

「よろしくおねがいします!」

とても温かい感じの先生だった。

チャンミンはすぐに打ち解けて
翌日からレッスンがはじまった。

それなのに…

結局、ジンはドラマの話をどんどん進めていた。
そのことがユノとチャンミンの耳に入り

ユノは激怒してジンに詰め寄った。

「チャンミンの全権は俺にあると言ったはずだ」

ユノは書類の山に囲まれるジンに食ってかかった。
鋭い眼差しでジンを睨みつける

「ユノは怒るとカッコいいね」

ジンはユノの怒りなどなんとも思っていない。

「いい感じのドラマだから。
あんなに嫌がったから、俺だって考えて単発にしてやったんだよ。」

「やらないって言ってただろ」

「個人事業じゃないんだから、決めるのは俺らだ」

「ジン、お前、チャンミンが売れてるからって
大事なところ見落とすなよ」

「それはこっちのセリフだよ」

「浮かれていると痛い目にあう」

「ま、とりあえず、王子様のご機嫌とりを
がんばってくれよ、な?」


引き受けた仕事をキャンセルすることが
どんなにマイナスか、ユノはよく知っていた。


「ユノ、いいよ。僕、やってみるよ」

「チャンミン…」

「やったことないから、案外面白いかも
それに主役じゃないんだよね」

「もっと早く動けばよかった。
ごめんな、チャンミン」

「ユノのせいじゃないよ。気にしないで。
そのかわり、これが最初で最後、いい?」

「わかったよ。
ちょっとジンには気をつける」


「ありがとう」


そんな嫌々で引き受けたドラマで
チャンミンは多方面で高く評価されることとなった。





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