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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 28



チャンミンのライブツアーの概要が決まった

回るのは小さなホールクラスを5箇所。

ツアーという程のものではないけれど
アルバムも同時に発売となる。

レコーディングや撮影、リハーサル。
チャンミンは大忙しだった。

「終わったら、少し休んでもいいかな」

チャンミンはよほど疲れているのか
そんなことを言うようになった。

「ああ、終わったらゆっくり休めるよ。
もう少しの辛抱だ。」

「楽しいから辛抱なんてないよ、大丈夫」

「無理するな、時間見つけて寝るようにして
きちんと食事もとらないと」

「ユノもね」

「俺?」

「僕よりハードに働いてるように見える」

「楽しいから大丈夫」

「楽しいの?」

「お前と一緒だからね」

「そうだよね?」

2人は笑った。


今日もスタジオに缶詰のチャンミン。

ユノはその間、スポンサーのところへ打ち合わせに行くといって出かけた。


「さあ、少し休憩しようか」

ステージマネージャーがキリのいいところでチャンミンに声をかけた。

「はい。」

ユノのいないチャンミンは、買ってきたパンとコーヒーを持ってロビーで1人ソファーに座った。


「あれ、もしかして、チャンミン?」

ソファの後ろから声をかけられて振り向くと
ギルが立っていた。

ジャージにパーカという珍しいスタイル
ダンスのレッスンだろうか。

「こんにちは」

チャンミンはとりあえず挨拶をした、という感じで
ぺこりと頭を下げた。


「相変わらず俺はチャンミンに嫌われてるなぁ」

ギルは笑ったけれど、チャンミンは黙っていた

「もうすぐツアーが始まるんだってね
ここでリハしてたんだ。」

「はい」

「俺も、ツアーが始まるから一緒」

「………」

「なんかさ、お節介かもしれないけど
ジンさんのとこ、チャンミンみたいなアーティスト慣れてないから、そこわかってたほうがいいよ」

「どういうことですか?」

「ん、ギターで聴かせて楽しませるタイプのアーティストって今までいないからさ。ジンさんのところ」

「………」

「見てるとチャンミンのプロモも、アイドル路線な気がするよ」

「それじゃダメなんですか?」

「ダメだね」

はっきりとギルは言った。
その目はアーティストの目だった。

「アイドルにはアイドルのやり方がある。
でもそれはチャンミンの路線とは違うよ」

「………」

「ドラマで掴んだファンを離さないようにしないとね。それでせっかく盛り上がったんだから」

「………」

「路線を間違うと、失敗するよ」


嫌だったけれど、
ギルの一言一言がストンとチャンミンの心に落ちた

芸能界を知らないチャンミンだったけれど
アーティストとしてのチャンミンはギルの言っている事は正しいと思ってしまった。

「ユノはたぶん、わかってるだろうから
安心していいと思うけど」

ギルはミネラルウォーターを取り出して
一口飲んだ。

チャンミンはコーヒーを飲み干した

「アドバイスとして、ありがたくお受けしますよ」

「このアドバイスを痛いほど感じる時が来ると思うよ。
ユノと一緒にいたい気持ちと、自分の合う事務所に行きたい気持ちで悩むだろうね」


意味深な事を言うギル。
ギルのこういうところが大嫌いだ。

チャンミンはソファから立ち上がった

「僕は小さいホールでやるので、ギルさんとは比べものにならないかもしれないけれど、余ればチケット送りますよ」

「え?」

「上り坂を上る途中のアーティストって新鮮なんじゃないですか?」

「なんだって?」

「人気も落ち着いているギルさんにとって
新鮮なんじゃないんですかって言ってるんですよ。」

「俺が上り切って落ち着いたとでも言いたいのか」

「あなたはそこで終わりですよ。
僕とユノの方がもっと高いところまで行けます」

「チャンミン…」

「そうしたら、あなたは僕達を見上げるようになるでしょうね。」

「チャンミン、ユノはそんなお前を知っているのか?」

「は?」

「そんな上昇志向のお前をユノは知ってるか?」

「2人で高いところへ行こうと誓ったんですよ。
もちろん知ってます」

「へぇ…」

「そんなユノはギルさんの知ってるユノじゃないですか?残念ながら、ユノも大人になったんですよ」

「昔のユノを知らないくせに」

「ギルさんは今のユノを知らない」

「人間の本質はそんなに変わらない」

「どうでしょうね。僕がユノを変えてしまったかもしれません」

「言うねぇ、意外だねチャンミン」


「ギルさん、あなたはユノを苦しめることしか出来なかった。でも僕はユノを幸せにすることができる。
それがあなたと僕の大きな違いです」

チャンミンは真っ直ぐにギルを見つめた

ふと、ギルのスマホが鳴る
チャンミンの視線を受けながら電話にでた

そして、ギルはニヤリとチャンミンを見つめた

「ユノか、どうした?」

その声にチャンミンが目を見開いた


**********


ユノはスポンサーのところから
チャンミンのプロモーションをするために
テレビ局にまわった

ディレクターと立ち話をしていたユノは
スンホとすれ違った


スンホだ…

様子がおかしい…


「じゃあ、これで。
準備はばっちりしておきますので」

挨拶を終えたユノはスンホを追いかけた


「スンホ、待て」

スンホがぼんやりとした瞳でユノを振り返った


「スンホ?」

「あ…ユノさんだ」

「お前、大丈夫か?」

「なにが…?」

「なにがって、なんだかぼーっとして歩いてさ。
マネージャーもつかないでどうしたんだよ」

「トレスタはもう僕を捨てたんです。
マネージャーなんて付きませんよ」

「何言ってんだ。じゃあ、なんでテレビ局に入れるんだよ」

スンホはフフッと笑った

「?」

「それは内緒なんですよ、ユノさん」

「内緒?」

みるみるスンホの目に涙が溢れてくる

「なんだよ、どうしたスンホ!」

「ユノさんが…そばにいてくれたらなぁ…」

スンホの頬に涙が一筋流れた

「なにがあったんだよ」

「僕、ユノさんのところ辞めたの、すごく後悔してます」

「スンホ、なにか困ったことになってるんじゃないか?」

「ユノさん…」

「なんだ、なんでも言ってみろ」

「そんな風に言ってもらえるだけでうれしいです。
きっともうすぐ、ユノさんは僕を軽蔑することになる。
だから今言います。ほんとごめんなさい」

スンホは頭を下げた。

「時間あるか?話聞くぞ」

「それが…ないんですよ
ユノヒョン、ありがとう」

ユノはこのまま、スンホを離してはいけないような気がした。

思わずスンホの腕を掴む。


事務所に入ったばかりのスンホを思い出す
緊張した垢抜けない少年。

自分がグループのメンバーの中で
一番の年長だということで責任感もあった。

それがフラッと大人の口車に乗せられて…


「スンホ、どこへ行くんだ?」

「事務所に帰ります。こんなところで
泣いたりしてごめんなさい」

スンホはニッコリと微笑んでみせた。

スンホはユノの腕を振り切って走っていってしまった


思わずユノはギルに電話をかけた。

「もしもし?ギル」

「ユノか、どうした?」

「今、大丈夫か?」

「ああ、大丈夫。誰もいないよ」

「今、テレビ局でスンホに会った」

「え?」

「様子が変だった…」

「どんな風に?」

「いや、なんて言ったらいいかよくわからないけど
スンホはトレスタで何かあったのか?」

「なにもないよ。っていうかよく知らないけど」

「知らないってなんだよ」

「いろいろあってね。なんであいつが局に入れたのか
不思議だな。ちょっと聞いてみるよ」

「あいつの話きいてやってほしい」

「わかった。お前の頼みだ。
聞いてやるよ」

「大袈裟だな。とりあえず、頼むよ」

「ああ、わかった」


そして…

それから4時間くらいたっただろうか

夜のニュースのトップは
スンホの薬物所持による現行犯逮捕だった。

それに紐づくようにテレビ局のスタッフたちにも
捜査の手が伸びた。


スタジオでリハの終わったチャンミンを迎えに来たのはユノではなく、セキュリティの担当だった。

そして、その夜、ユノは帰ってこなかった





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