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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 27



チャンミンが興奮しながら、ユノに語る

「僕の作った曲がさ、ほんとに!
少しピアノが入ったら、泣けるんだって、ほんと」

「うん、聴いてたよ、すごく良かった
ギターだけでもいいけど、ちょっと手を加えたら
映画の主題歌でもいけると思った」

ユノはコーヒーを淹れながら、微笑む
白いTシャツにグレーの霜降りジャージ

そんな姿でも、スッキリとしたスタイルは
健康的なセクシーさを漂わせる

「ユノもそう思った?
ホールくらいの会場なら、できる自信がついたよ」


もうすこしゆっくりと、というユノの思惑とは裏腹に
チャンミンのライブツアーは着々と計画が進んでいた。

アルバム作りも同時進行だ。

そんな中、ユノはすこし憂うことがあった。


その朝

ユノは助手席にサリーを乗せて
後ろの席にはチャンミンを乗せ

駅へ向かって車を走らせていた

車内ではサリーが無意味にはしゃぐ


サリーは事務所を辞めて、故郷へ帰るのだ

アンティムが軌道に乗ったら
次はサリーに力を入れてやらなきゃと
ユノは考えていた。

それでも、サリーはアイドルを辞めることを選んだ。

「ファンは悲しむだろうな。いつも来てくれてたコたちに挨拶したのか?」

「うん、泣いてる子もいてね、
最後にお手紙いっぱいもらったの。」

「サリー、ごめんな、力になれなくて」

「もうサリーじゃないよ、イ・ユソンだよ」

「ユソンとして、これからどうするんだ?」

「それがね!役場やいろんなところで来てくれって」

「そうか」

「結婚する、いい人見つけて」

「お前なら、いいやつ見つけられそうだ」

「ユノオッパみたいな、カッコよくて、心が大きくて優しい人がいい」

後ろにいるチャンミンが顔を上げた

上り調子のチャンミンとしては
事務所から目をかけてもらえず、こうやって故郷に帰るサリーに対して、どこか申し訳ないような、そんな気持ちがあった。

「あたし、ユノオッパのこと、本当に好きだったんだよ」

「俺だって、お前のこと可愛いと思ってたよ」

「何言ってんのよ、ねーチャンミン」

チャンミンはフッと微笑んだ。

「サリーさん、僕もサリーさんのこと、可愛いくて明るくて好きでしたよ」

「ありがと!チャンミン!」


車は駅に着いた。
ユノは駐車場を探して車をさらに走らせる

「オッパ、いいよここで」

「え?なんで、荷物だってあるのに」

「ほとんど、オッパが送ってくれたじゃない。
荷物なんてこのリュックしかないよ?」

「いや、田舎に何か買ってけよ、
駅で俺が土産買ってやるから持っていけって。
だから、一緒に行こう」

「チャンミンをどうするの?
一緒に駅に入って、ファンに見つかったら大変よ」

「あ、僕は車の中にいるから
行ってきて、ね?」

チャンミンが微笑む

「オッパ、チャンミンひとり置いてくわけにいかないでしょう」

「……」

たしかにそうだ
それこそファンに見つかりでもしたら…

「オッパ、チャンミンはもうオッパだけのものじゃないのよ。大変なんだから」

「そんな寂しいこと言うなよ」

「寂しいの?フフ…じゃあ、私はここで」

「サリー…」

サリーはさっさとドアを自分で開けて外へ出た。

ユノも外に出て、イ・ユソンに戻ったサリーを見送る
チャンミンも窓を全開にして、顔を出した

ユノは財布から一枚札を出して
サリーに渡した

「これで、なにか土産を買ってけ、な?」

「もう…いいのに…」

「駅の中で土産ばかり売ってるところがあるから」

「知ってるよ、そんなの。」

「サリー、ほんとに元気でな?
いい男見つけろよ?」


まるで、旅立つ妹を心配する兄だ

チャンミンは微笑ましいと思った。

アイドルの夢破れて故郷へ帰るサリーと
ずっと面倒を見てきたユノ

何か喉の奥がツンと痛くなるような
そんな光景だった。


「オッパ、あたし、オッパのこと、ほんとに好きだったんだからね!」

サリーはとっさにユノの頬にキスをした

チャンミンは思わず目を逸らした
サリーに嫉妬したくない

それでも生理的に受け付けず
サリーのキスを寛容に見れないチャンミン

「ごめんね、チャンミン!
最後だから、いいでしょ?」

サリーはウインクをして
道路を渡り、駅に向かった


はぁーとユノが車に寄りかかりため息をつく

「ユノ?」

チャンミンが車の窓から顔を出す

「何にもしてやれなかったな、結局…」

「………十分してあげたでしょう」

「いや、人手も足りなかったけど
もうすこし余裕があったらな、時間もなにもかも」

「………」

「もっと、丁寧に育ててやりたかったな」

「それはユノのせいじゃなくて、事務所でしょう?」


意外なチャンミンの言葉にユノはすこし驚いた

「事務所がウチじゃなかったら、
サリーは違ってたか?」

「そうじゃないの?違う?」

「………」

「チャンミンの言う通りかもしれないけど
なんていうか、お前からそんな事聞きたくなかったな」

「それ、どういう意味」

「フッ…俺のエゴだから…気にすんな」

「エゴ?」

「チャンミンから、業界っぽい話聞きたくないんだよ」

「………」

「そういうのは、俺らが話す事であって
チャンミンは…なんていうか…」

「純粋でなにも知らない存在でいてほしいってことだね」

「………」

チャンミンは視線を逸らした

「僕はユノの住んでる世界のことに
詳しくなろうとしてるだけ」

「誰かとこんな話をしてるのか?」

「してるよ?ジンさんとか、テソンさんとか。
いろんな事情みたいなのも教えてもらってる」

「ふぅん」

ユノが面白くなさそうに返事をした。

「一緒にいるっていうのは、そういうことだよユノ」

「なにを知ったかぶりしてるんだか」

ユノはタバコを一本取り出して口にくわえ、火をつけた

ちぐはぐな感情

チャンミンがデビューしてから、たまに感じる違和感。
自分勝手な思いだということは、ユノ自身もわかっている。

チャンミンは商品だと豪語するジン…
芸能界に染まっていくチャンミン…
そして、ユノの思い

サリーは笑っていたけれど
芸能界を辞めることを思い悩んでの結論に違いない

今は、そんなサリーがとても純粋に見える

なんだかな、と思いながらユノは車に戻った

「助手席に行ってもいい?
ユノの隣がいい」

チャンミンが甘える

「もう行かなきゃならないから
そのまま後ろに乗ってな」

「………」


チャンミンはムクれているのだろう
ユノはあえてほっておいた。

「そういえばチャンミン、帰りはテソンが迎えに来るから」

「えっ?!ユノは?!」

「アンティムのところへ行かなきゃなんない。
あいつらツアーはじまるから」

「どうしてユノが行くの?」

「いつも世話になってるスタッフたちなんだ
一度は顔出さなきゃ」

「………」

「子供みたいな事ばかり言うな」

「なにも言ってないもん………」

チャンミンはムッとして窓の外を眺めていた。


ユノはチャンミンをスタジオでテソンに引き渡し
そのまま、アンティムが練習する別のスタジオに向かった。

正直な気持ち、ユノは久しぶりにアンティムに会えることが嬉しかった。

アンティムのメンバーへの想い、というよりは
それを担当していた頃の生活が懐かしかった。

今日も駅でチャンミンの歌を聴いて帰ろう
今夜は何を食べに連れて行ってやろうか

そんな楽しみがあった生活

それでも、スタジオに入ると
メンバーが顔を輝かせて飛びついてきた

「ユノさん!ヒョン!」

「なんかデカくなったな、お前ら」

ユノもみんなを受け止めながら笑った。

みんなが口々に自分の近況を語ろうと
ユノを独占しようとする。

そんな時間が過ぎた後、そのスタジオにジンが来た。

「どうしたんだ?」

「ユノ、お前チャンミン迎えに行ってくれ」

「俺はこれから挨拶まわりだよ」

「それ、俺がやるから。」

嫌な予感がした…

「……チャンミンから頼まれたのか?」

「そうそう、もう、絶対ユノじゃなきゃイヤだってさ、
聞かないんだよ」

「そんな話、聞いてやるなよ。
ただのワガママじゃないか」

「お前だってこの間、チャンミンは俺ありきだって
言ってたじゃないか、だったらユノが言ってくれよ」

「………」

「早く行けって。王子様がお待ちかねだ」

ユノは仕方なく、アンティムのスタジオを離れた。


チャンミンは今、スターダムを駆け上ろうとしているのだろう。

だから、みんなが甘やかす
機嫌をとろうとする。

警戒心のない素直なチャンミンだからこそ
勘違いをするんだ。

自分だけでも厳しくしないといけないのかもしれない。

ユノは難しい顔をして
チャンミンが待つスタジオへ向かった。

迎え出たチャンミンは満面の笑みだった

「ごめんね!ユノ!無理させちゃったよね、
僕、わがまま聞いてもらったんだけど、
大丈夫だった?」

「大丈夫だと思うか?」

「………」

チャンミンの笑顔が固まった

「これから挨拶まわりをしようとしたところにジンが来てさ。お前が俺に迎えに来いって言ってるからって」

「ごめんなさい…」

「謝るなら最初からワガママ言うな。
大して考えなくてもわかるだろ」

チャンミンは下を向いた

「ごめん…」

「で?これからどこかへ行こうっていうのか?」

「いや、そうじゃないけど」

「だったら、なんだよ」

「……なんでもない…ごめん」

「じゃあ、帰るぞ」

「うん…」

「俺、みんなに挨拶してくるから、
車横付けしてあるから、中で待っとけ。」

「はい…」

「自分の荷物は自分で持てよ?」

「うん…じゃあ、車で待ってる」


明らかにイライラしているユノ。

すっかり沈んでしまったチャンミンは
トボトボと荷物を持って出口へ向かった。

ユノはスタジオに入ってぺこりと頭を下げた

「今日はありがとうございました」


スタッフたちはキョトンとしている



まだみんなはピアノやキーボードをセッティングしたままだ。
まだこれから演奏するのだろうか。

「あれ?チャンミンは?」

キーボードのスタッフが声をかける

「いや、もう車ですけど、なにか?」

「えーそうなんだ、ユノさんですよね?」

「はい」

「今、あなたに聴かせるってアレンジしてたんですよ
新しい歌」

「え?」

「いやーかなりいい出来でね。
チャンミンがまずはあなたに聴かせたいって。
だから、ユノさん来たら演奏しようって」

「俺に…」

「チャンミンがね、ユノさんのために作った歌なんですよ、知りませんでした?」

「ま、他も全部ユノさんへの歌だけどね」

バンドスタッフがみんなで微笑む


そうだったのか…


「チャンミンも忙しいよね、
うん、ユノさん、また次回聴いてやってください」

狼狽えるユノを余所に、みんなが楽器を片付け始める

やっぱり演奏を聴かせてもらえないか、とは
言えなかった。

一流のバンドメンバーだ。
みんなだって忙しい

「ありがとうございます。知らなくてすみませんでした」

「チャンミン張り切ってたから残念だけど。
いいステージになると思うから
楽しみにしていてください」

「はい」


廊下を歩きながら
ため息をついて、ユノは自分の首をさすった。


出口の自動ドアが開くと、横付けされた車の後部座席に項垂れたチャンミンが乗っているのが見える

チャンミンがチラリとこちらをみて、寂しそうに微笑んだ。

ユノは近づいて行き、後部座席のドアを開けた

「?」

「助手席に乗っていいよ」

「え?いいの?」

「いいよ」

チャンミンは嬉しそうに後部座席から出て
にっこりと笑った


そんなに嬉しいか?
俺の隣に乗るだけなのに


助手席のドアを開けてやると
チャンミンが照れ臭そうだ

「ありがと」

そう言って助手席に乗り込むチャンミン

ユノはエンジンをかけてスタジオから出て
真っ直ぐな道路に出ると、チャンミンの手を握った


「……」

ハッと息を飲むチャンミンを感じる

そしてチャンミンもユノの手を握り返した

「今日はごめんなさい」

「俺も…ごめん…悪かった」

「?…ユノは何も悪くないよ?」

「……」


たしかに、俺たちのまわりは変わりつつある

その波に飲まれないように必死になるあまり
チャンミンを守るつもりが、逆に潰してしまっているのかもしれない

もう、帰りにスーパーに寄ることもできない。

居酒屋にフラッと入ることも難しい


それでも、俺たちはなにも変わっていない





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こんばんは、百海です。
昨夜はエラーでブログ管理画面に入ることができず
1日抜けてしまいました。
申し訳ありませんでした。

お話は、歌手として成功の道を歩み始めたチャンミンと
そんなチャンミンを支えようと覚悟を決めたユノ。

荒波の中を行くような2人です。

いろんな事をわかっているようで
何もわかってない

その事に気づかない2人です
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