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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 26



早々に、チャンミンにライブツアーの話が出た。

早すぎる、とユノは思った。

レコード会社からは、来年あたりにでも、
という形で話が来たけれど

スポンサーもいくつか名乗りをあげ

ジンはもう準備出来次第すぐにでも、
という入れ込みようだった。

「早いよ、ジン。今のドラマの放送が終わって
人気の落ち着き具合を見て、もう一曲くらい出してからアルバムでいいんじゃないか?」

「何言ってるんだよ、ユノ
人気が出ている時にライブせずにいつするんだよ。」

「……」

「歌のストックなら、それなりにあるだろ?」

「まぁ、あるだろうけど…」

「だったらさ!俺だっていきなりデカイところでなんて思ってないよ、な?」

「………」


「ユノ、お前さ」

「なんだ?」

「自分の腕の中から、チャンミンが離れていきそうな、
そんな思いでいるんだろうけど」

「……そうじゃないよ」

「ドライな言い方をするようだけど
チャンミンはウチの商品なんだよ?
そういう気持ちで仕事してくれないと」

「わかってる。
ビジネスライクに考えてるさ」

「どうだかなー」

「だから、少し見極める時間が欲しいんだ」

「何をだよ」

「ジン、アイドルとチャンミンみたいなアーティストとは、売り方が違うと思うんだよ」

「売り上げの伸び率は一緒だよ」

「でも、ファン層が少し違う」

「アイドルみたいにいろんな層を取り込めるさ、
何しろあのビジュアルだしな。」

「ジン、今のドラマを最初地味で大したことないと
思っていただろ?」

「ああ、当たってびっくりだ」

「俺たち、調査が足りないんだよ。
あれは一部のドラマフリークの中では期待されていたものなんだ」

「へぇ、ラッキーだったな。
そこへチャンミンは飛び込んだんだ」

「きっと、チャンミンのファン層は繊細で
高い審美眼を持っていると思う。
そこを裏切らなければ、長く活躍できる」

「キャーキャー言われてるぜ?
知らないのか?アイドル並みだから」

「そこはすぐにいなくなるんだよ、わかるだろ?」

「今は、アイドルっぽく行く。
以上」

ジンがデスクの上のキーを取って立ち上がる

「………」

何も言わないユノに、ジンが上から見下ろすように声をかける。

「恋人が女の子から騒がられるのは面白くないだろうけれど、そこ割り切れないなら、お前を外すぞ。」

「外せるもんか。チャンミンは俺ありきだ。」

「すげぇ自信だな、ユノ。
これ以上、俺のやり方に口出すようならほんとにそうするからな」

「………」

ユノは書類をバッとまとめると、黙って事務所を出て行った。

今、この時間、チャンミンは美容室に行っている。
まるでアイドルのように。

早く、迎えに行かなきゃ


ユノは車を走らせた。


チャンミンがアイドルのように活躍したいなら
その方向で俺が道を作る

でも、そうじゃないんじゃないかと…思う。


" ユノへの思いを歌って、それをみんなが共感してくれたらいいな "

そこがチャンミンのスタートなんだ。


美容室に着いた。

事務所は無理して、一番流行りの店にチャンミンを行かせている。

美容室の前には何人も女の子がいた。

チャンミンを待っているのだろうか
そうだとしたら、ジンの言う通りアイドル並みだな。

女の子の間を抜けて、長身のユノが入り口に向かう

「あの人!ほら、チャンミンのイケメンマネージャー!」

「ほんとだ!カッコいい!」

「今日はツーショットが見れるね」

「あの人、アンティムのマネだったよね?」


そんな風に見られているのは
SNSで知っていた。

ユノがチャンミンを抱えるようにして、テレビ局から出てくる姿などが盗撮されている。

カップルを想定して楽しむ

今や、チャンミンは完全にアイドルだ


美容室に入ると、ちょうどチャンミンはすべてが終わって、ケープをとってもらっているところだった。

鏡に映るチャンミンをスタッフが何人も囲む。

チャンミンはユノを見つけると
照れ臭そうに立ち上がってペロリと舌を出した。

そしてせっかくセットした髪に手をやるものだから
スタッフの何人かが思わず手が出そうになる。

「ユノ、染めてもらったの、わかる?」

「ああ、いい感じだよ」

柔らかいアッシュカラーがチャンミンの肌によく似合う

「へへっ」

「さあ、行こう。
今日はいくつかの曲を編曲してもらうんだ」

「うん、初めてだから、すごく楽しみだよ」

ユノはキャーキャーと騒ぐ女の子たちの中を
チャンミンの肩を抱いてくぐり抜ける

身体を触られるのはチャンミンだけではない

明らかにユノとわかってユノを触ってくる女の子もいる。


やっとの思いで、車に乗り込んだ

「ふーっ、これは美容室行くにも警備が必要だな。
もう俺1人じゃどうにもならない」

ユノがため息をついた。

エンジンをかけて、室内の駐車場を出ると
ユノが眩しそうな顔をした。

「ねぇ、ユノ」

「なんだ?」

「ユノって人気あるんだよ、知ってた?」

「知ってる」

「えっ?そうなの?」

「ああ、アンティムのマネージメントしてる時だって
すごかったんだぞ」

「ユノ、自分で言ってる」

チャンミンが口を尖らせた


車は編曲のスタッフが待つスタジオに向かう。


え?まさか?


スタジオの入り口に女の子たち。

スタジオの警備員が女の子たちをまとめるのに
大忙しだ。

「これは、正面から入れないな、轢いちゃうよ」

「じゃ、どうするの?」

「離れたところに停めて、裏から入ろう」

「わかった」

ユノはスタジオの裏に車を停めて
チャンミンを抱えるように入り口から入ろうとした。

その時、どこに潜んでいたのか

何人もの女の子たちが走り寄ってきた。

5人や10人ではない。

警備のまったくない状態で
もみくちゃになる2人

ユノはチャンミンを抱えて、入り口を目指した

ユノも腕を掴まれ、それこそどこを触るんだ、という有様。

なかなか歩こうとしないチャンミンを不思議に思ったユノがチャンミンの顔を見た。

「その手を離せ!」

いきなりチャンミンが、ファンの1人に叫んだ

「チャンミン!いいから!」

ファンの1人がユノの腕を掴んで離さない
あきらかにユノ狙いだった。

あまりのチャンミンの剣幕に「ひゃっ!」とそのコは
びっくりして腕を離した。

「ユノに触るな!」

「チャンミン、やめろって!」

ユノはチャンミンの頭を抱えて
入り口へ急いだ

やっと騒ぎに気づいた警備員がやってきて
女の子たちをとりまとめた。


やれやれ…


やっとの思いで入れたスタジオ。

チャンミンがムッとしている。

「チャンミン、あれはダメだぞ
ファンはスルーするんだ。笑ってスルー」

「だって!ユノを…」

「そんなこと気にしない。
お前だって、いろんなところ触られてるだろ」

「いやだよ!あんなの。ユノのこと…」

「必要悪だよ、人気があると思って耐えろ」

「………」

「こんなこと耐えられないようじゃ
先が思いやられるんだけど」

ユノがため息をついた

「僕は何されたっていいさ。
だけど…ユノは…」

「俺は?」

ユノが微笑んでいる

「………」

ユノが嬉しそうにチャンミンの頬を撫でる

「ありがとな、チャンミン。
俺が女の子に掴まれてヤキモチか?」

「………」

下を向いてしまったチャンミン

俺の落とし所のないヤキモチなんて
まったく気づいてないな。

ユノはおかしくなって
クスクスと笑った


「何笑ってんの」

「ごめんごめん、嬉しくてさ」

「………」

「さ、みんな待ってるから行こう」


それから音楽に長けているスタッフたちと
チャンミンは初めて仕事をした。

チャンミンの歌をより良く仕上げてくれる、
そんなスタッフ。

チャンミンはすっかり溶け込んで嬉しそうに談笑したり思わぬギターのテクニックを教わり、驚いたりしてる。

ユノの思い描いていた、チャンミンの音楽活動だった。

こんな風にチャンミンが音楽に一生懸命になれる環境を作ってやりたい。


ユノはロビーのソファに座りSNSを確認した。

ハッシュタグで検索をかけるまでもなく、
チャンミンがファンに怒鳴ったことで盛り上がっている

いろんな議論が交わされたようで
でも、結局、ファンが悪いということで決着も付き

そして、マネをかばった思いやりのあるチャンミン
という嬉しいオマケもついた。


ユノはホッとして、コーヒーをひとくち飲んだ





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