FC2ブログ
プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 25



ジン・コーポレーションからパクプロデューサーへ、
チャンミンがデビューするにあたっての挨拶も終えた。

レコード会社も決まり
早速、新しくはじまるドラマの主題歌の依頼があった。

オーディション番組の最初で歌った切ないラブバラード

まずはここからだった。


歌手のチャンミンと歩んで行く覚悟を決めたユノは
元々の人脈を生かして、事務所を超えた活動をはじめた。

「様子くらいは報告してくれよ?」

ジンからはチャンミンの全権を任せてもらった
それがチャンミンを引き取らせる条件でもあった。

アンティムのメンバーはユノを恋しがってはいたけれど
ある程度その人気も落ち着き、アイドルの中ではかなりいいポジションを確保していた。

チャンミンは曲の直しをしたりして過ごし
先日はティーザーの撮影も終えた。

撮影という事でなにやら楽しそうに挑んだチャンミンだったけれど

「なんかね…ギター持って暗闇で座ってるだけだったよ」

「大丈夫、それがいい感じのティーザーになるから。」


音源の発売はドラマの初回の日

ユノはゆっくりとチャンミンと歩んでいくつもりだった。

正直言って、ドラマの主人公はこれと言って人気がある俳優でもなく、どっちかといえば地味なドラマだった。

ティーザーはチャンミンがギターを弾く後ろ姿という
これまた地味なものだったけれど

ユノの知り合いのデザイナーがゴリ推ししたので
仕方なくこれに決めた。

こんな売り方でいい訳がない

ジンもあまりに地味なやり方に疑問を呈したし
ユノもやったことのない展開の仕方に戸惑っていた


ところが

ドラマは第1話からかなりの視聴率をはじいた

聞けば、その主人公を演じた俳優は
前シーズンのドラマで静かなブームを呼び
ドラマフリークの間では期待のドラマだったらしい。

脚本家もよければ、チャンミンの音楽もドラマの持つ静かで切ない雰囲気にぴったりとハマっていた。

主人公が感情を表すシーンで
チャンミンの歌声がまるでその表情を代弁するかのように聴こえて

多くの人々の涙を誘った

じわじわと、いつのまにか誰もが見逃せないドラマとなり、ひとつのムーブメントを作るまでになった。

チャンミンはまずその歌声が一人歩きをし
そしてそのルックスも話題となった。

ユノは、自分の感覚が大きく狂っていたことに危機感を感じた。

情報の収集や、時代を読む力にすっかり自信を無くしていたけれど

チャンミンのスケジュール管理に追われた

チャンミンは目の前のことを一生懸命にこなす。
雑誌のインタビューに答えたり
歌番組に出演したり、一気に多忙になってしまった。

ユノについていくだけで精一杯で
インタビューで何を答えるにも、ユノの言う通りにした。

どこで嗅ぎつけるのか
チャンミンの行く手にはファンが集まり
ギターを弾くアーティストとしては異例のアイドル並みの人気だった。

ジン・コーポレーションは、急遽、セキュリティの人数を増やして、チャンミンの警護にあたった。


チャンミンとユノの住む世界は目まぐるしく変わりつつあった。

本来はプロモーションの為に
地方へ行ったりするはずで

それをチャンミンは楽しみにしていた。

けれど、地方に行く必要もなければ
時間の余裕もなかった。

ジンはチャンミンの人気に浮かれた

元手のかかっているアンティムより
博打で儲けたようなチャンミンの人気

いよいよ、自分たちにも運が向いてきた
ジンもまた、ギルを見返したいと思う1人だ。

ユノだけが、1人置いていかれたような気持ちでいた。
側からみれば、有能で冷静なエージェントだったけれど

ユノは密かに気づいていたことがあった。

それは、今までアイドルしか扱ったことのない
ジン・コーポレーション

チャンミンのようなアーティスティックな歌手は初めてで。

たまたま今回は当たったけれど
正直、こういうアーティストをどう展開していけばいいか、それが苦手な事務所だ。

ジンとテソンはそれに気づかず
天下をとったような浮かれようだった。

チャンミンをコケさせる訳にはいかないのに



「なんか…もしかして…僕は凄いことになってる?」

ベッドの中の天使が囁く

その大きな瞳をキラキラとさせてユノを見上げる

「もしかしなくても…凄いことになってるよ」

鍛えた上半身を晒すユノが
隣で横たわるチャンミンの髪を撫でる

「思ったより…売れたね、僕」

「いろいろとラッキーだったな」

「実力じゃなくて?運だけ?」

「そうじゃないよ、お前の実力をみんながいい方向に持って行ってくれたんだ」

「僕の力だよ」

「ああ、そうだな。
でもな、チャンミン…」

「ウソだよっ!まわりの人たちには感謝してる」

チャンミンはクスクスと可愛く笑う

「その言葉が聞きたかった」

「ちゃんとね、ありがとうも言ってるよ」

「意識しなくてもちゃんと言ってるね。
俺は見てるよ、お前のこと」

「フフフ…」

「もう寝な。明日も早いんだから」

「うん…」

ユノはベッドサイドのランプを消した




チャンミン…父さん、ジュース買ってくるから

いやだよ、ジュースいらない
どこにもいかないで

どこにもいきやしないさ
ただ、ジュース買ってくるだけ

うそ!
どこか行こうとしてるんでしょ?

チャンミン、母さんはああ言うけど

父さん、いやだ!

そんな簡単にはいかないんだよ

いやだーー!


走り去る父

作業着を着たその背中

ピンクの花が咲く花壇を踏み越えて

ホームから飛び降り線路を超えて柵を越え

みるみる小さくなっていった



僕は…あのピンク色の花を忘れることはできない


置いていかないで


喉から血が出るかと思うほど泣き叫んだ


残された僕と黒いふたつのボストンバッグ

泣き疲れた僕の目に映ったのは
ホームの外でくるくる回る赤色灯


近づく駅員と警官

「名前は?いくつ?」

もう何も答える気力がなかった

捨てられたんだ

僕のことを父さんは捨てた
僕のこと、母さんも父さんもいらないんだ

誰も僕を欲しいとは思わない


その晩は

迎えに来た母さんが、ずっと泣いて僕に謝った

父さんを罵倒しながら
僕をごめんね、と抱きしめた

僕の心からはどくどくと血が流れて

それはやがて赤黒い海となって
僕の心に波が打ち返すように戻ってきた

たかが…

親に置いていかれたくらいで
暴力を受けた訳でもないのに

何をそんなに傷ついたふりをしているんだ


そんな風に言う人が多かった

それは先生や警察や親戚


親の愛情を知らなくても
立派に育っている人はたくさんいるんだ


だから、なに?

だから、なんだよ

傷ついたのは僕の心だ

あんたたちじゃない

僕の心は僕にしかわからない


優しく手を差し伸べてくれたのは
先生でもない、母さんでもない

それはユノだった

ユノの力強い手に触れて
その長い指を握って

僕はやっと、愛する人に求められる喜びを知った

ユノじゃなきゃダメだ
その甘く低い声で僕を呼んでくれる


誰にもユノを汚させない

ユノを傷つける者は許さない

ユノのその心を奪う者は消えてしまえばいい

ユノのその瞳には、僕だけが映っていればいいんだ。


ハッとして、チャンミンは起き上がった…

はぁはぁと息が荒い

横にはたくましい腕を晒してユノが眠る

少し安心したチャンミンが
その腕の中に潜り込むと

ユノが無意識にチャンミンを抱き込んだ




にほんブログ村 BL・GL・TLブログへ
にほんブログ村
検索フォーム
ブロとも申請フォーム