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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 24



「チャンミン、さっき俺が言ったこと
聞いてなかったか?」

その言葉にチャンミンはまっすぐにユノを見つめる。
意志の強さが現れる大きな瞳

緊迫したような2人の間にプロデューサーが割って入った。

「まぁ、ユノさん、とりあえず本人の意志を尊重して
これで話進めてあげようよ。
案はいろいろあるし、ジンさんも交えて、ある程度決めてくれていいから」

「あ……はい」

ユノは狼狽えた

あまりにも早く進みすぎるチャンミンのデビューの話

ユノ自身も気持ちが追いつけない

プロデューサーが去った後
チャンミンが口をへの字に曲げた

「ユノは僕がデビューするのは嫌?」

「嫌だ!」

突然ユノが叫んだ

チャンミンがそのあまりの大声にビクッとした

「今の生活の何が嫌なんだ?十分幸せじゃないか?
俺が忙しすぎるなら、他の仕事にしたっていいんだ!」

ユノの心の奥からどんどん本音が湧き上がる
それは止まることを知らずに迸る


「俺は…お前と…静かに暮らしていきたい」

「………」

「ただ、それだけなんだよ…」

ユノの顔は悲痛に歪む


「ねぇ、ユノ、それなら尚更…
全てを終わらせて2人で静かに暮らそう」

「終わらせる?」

「うん、僕とユノの過去を終わらせるんだ」

それを聞いたユノの表情が険しく歪む

「俺にはもう、すべては過去だ。」

「そんなのウソだ」

「ウソじゃない、俺なりにそりゃ苦しんだけど
チャンミンと出会えて、今はあの頃に感謝してるくらいだ。」

スタッフが誰もいなくなった控え室を覗きに来た。


「とりあえず、ここを出よう
家に帰ろう」

「あ…うん、わかった」


ユノはチャンミンを助手席に乗せて
車を走らせた

車内ではユノは黙っている

チャンミンはそんなユノの様子をチラチラ覗き見るようにして、やはり黙っていた。

「ユノ、家に何か食べるものあった?」

「どうだったかな…」

「ないから、買っていく?」

「ああ、うん」

車の停められるスーパーに寄って
2人は買い物をした。

こんな風に2人で食材の買い物なんて
久しぶりだった。

チャンミンは少し嬉しかったけれど
ユノの顔は相変わらず険しかった

いつもの楽しい雰囲気は…ない

夜遅いスーパーはもう何も残っていなくて

仕方なく、ビールと残り物のチキンを買った


家に着き、チャンミンがチキンを温める
ユノが先にシャワーを浴びる

いつもの光景だった。

いつものことなのに、2人は何か特別な時間に感じた。

これからは、もうこんな生活はできないのではないか
2人ともそんな予感がしていた。

チャンミンのシャワーが終わり、2人でビールを開けた

「祝杯、なのかな?勝ち抜けなかったから違うけど
デビューするから祝杯でいい?」

チャンミンは笑ってみせた

「いいんじゃないか、祝杯で。お前がデビューするならね」

ユノの笑みは引き攣る

ユノがデビューに反対だ、と言ったことに
チャンミンは触れない

「僕ね、デビューしたらユノと同じ世界にいられるから嬉しい。ずっと側にいてくれるよね?だからユノのところの事務所と契約したんだよね?」

「もしそうなら、アンティムをテソンに引き継いで
俺がチャンミンといられるようにするつもりだけど」

「そうしたら、一緒に地方にも行けるね!」

「チャンミン、デビューするっていうことは
路上ライブとはまったく違う世界なんだ」

「わかってる…いや、わかってるつもり」

「………」

ユノはため息をついた

「僕ね、有名なアーティストになってみせる。
ギルさんよりうんと人気のあるアーティスト」

「ギル?」

「うん、ユノを捨てたギルさんを、2人で見返してやろうよ!」

「チャンミン、そんなこと、お前が考えなくていいんだよ」

「僕はユノを救いたい。
一緒にうんと高いところまで行って。
ギルさんを見下ろすほど、高いところまで行こう」

「チャンミン、ギルのことは考えるな。
俺の過去をお前が背負う必要はない」

「僕の…為でもあるんだ…」

「………」

「父を…父さんを見返してやりたい」

ユノは哀れむようにチャンミンを見た

「後悔させてやるんだ。
僕を捨てたことをね」

「チャンミン、そういう野心は危険だ。
お前の歌の良さを殺してしまう。」

「ユノ…いつか、僕たちは心の傷を自分たちで癒して
幸せになろう」

「俺は、今の生活で十分幸せだ、お前は違うか?!」

「僕は…違うよユノ」

「チャンミン…」

「僕はこのままでは、ギルさんも父さんも許せない。
ユノの心奥深くに居座るギルさんを追い出したい…
そして…僕の中からも父さんを追い出したい!」

「チャンミン!
芸能界で成功するのとそれとは別の話だ!」

「何言ってるの?チャンスなんだよユノ!」

「なんのチャンスだ?
ちょっとスカウトされたからって甘いんだよ!
芸能界はそんな簡単なところじゃない!」

ユノは立ち上がった

ユノは懸命にチャンミンを説き伏せようとした。


危険だ。

あまりにもチャンミンは危険だ。

ユノの知らないチャンミンが顔を出しつつある。

けれど…チャンミンにどんな別の顔があろうとも
ユノはチャンミンを愛しすぎていた。

たしかに、チャンミンの言う通り
ユノの心の中にはギルが巣食って、居座り続けていた。

けれど、そんな過去の傷をチャンミンが癒した。
時に依存心が強すぎるほどユノを求め、愛してくれるチャンミンがユノの心の穴を埋めた

ユノにはチャンミンがなくてはならない存在
すでにユノの身体の、人生の一部だ。


それなのに…自分はチャンミンをまったく癒していなかったことがショックだった。

「チャンミン…」

「なに?」

「俺が側にいるだけじゃ、ダメか?
そんなに高いところに行かなきゃお前は癒されないのか?」

「ユノ…愛してる
僕はユノがいないと生きていけないんだよ」

「だったら、チャンミン」

「でも、それでもいまだに、真っ黒い何かが
僕の心の底にある」

「………」

「ユノは僕にとって、唯一絶対で…なんでも頼って
そして甘えて…」

「………」

「僕ね…自分でわかってる…こんな僕じゃ
いつかユノに愛想つかされちゃうって…」

そう言ってチャンミンは泣き出した

ポロポロと透明な涙がチャンミンの頬を伝う。

「チャンミン…泣かないで…そんな心配しなくていいんだよ」

テーブル越しに、ユノがチャンミンの手を握る

「俺がお前に愛想つかすわけないだろ。
いくらでも頼って甘えてくれたらいい」

「ユノにおんぶに抱っこで…こんなんじゃダメだって。
僕はユノに、足りてない父親の愛情を求めてるのかもしれない」

「いいよ、それだって。足りてないものは俺が全部埋めてやる」

ユノはチャンミンの腕をひっぱりあげると、
そのまま自分の胸に抱き込んだ

「じゃあユノ、お願い…僕と一緒に、みんなを見返せるところまで行って」

ユノはため息をついた…
震えるため息…

平行線だった

ユノが側にいるだけでは…満たされないチャンミン
傷を癒すことができないチャンミン


どうしたら、チャンミンにわかってもらえるのか

復讐からは…なにも生まれないんだよ

恨みは自分から切り離さないといけない

チャンミンは俺に…それをさせてくれたのに
俺はチャンミンになにもしてやれなかった。

やれるところまでやって…
自分で気づくしか…ないのかもしれない。


だったら、俺が…どこまでも一緒に行って
お前を守ってやる


ユノはチャンミンをきつく抱きしめた


「わかったよ、チャンミン…」

「ユノ…」

「………」

「………」

「デビューしたらいい。
俺がずっとついているから」

「ほんと?!」

「ああ、一緒に高いところからみんなを見下ろそう」

「ユノ…」

「俺も、一度は登ろうとした道だ
高いところから見た景色がどんなものか
それを見たら、完全に過去と決別できるのかもしれない」

ユノの正直な気持ちでもあった。


「ユノ…僕と一緒にいこう、ね?」

「ああ、一緒にいこう」


お前の気がすむまで、見守るから
今、俺にできることはそれだけ






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