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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 21



オーディションの日がやってきた。

今日は生放送。

ここで優勝すると、来週も引き続き出演して
新しい挑戦者と対戦する。


でも、プロデューサーとの話で
チャンミンは初代優勝ではあるけれど
来週は新しい挑戦者にその冠を譲ることになっている。

チャンミンがそれで歌手になることをあきらめたら
それまでだ。

いくらプロデューサーがチャンミンを欲しがっても
俺が断る。

その権利を外部に発動させるためにチャンミンをうちと契約させたんだ。

ユノは挑む準備はできていた。


チャンミンはもうガタガタと震えている

「そんなに緊張しないで。
とりあえず、一曲歌い切ったらいいから。」

「だけど…この間の審査員の前で歌うのとは
全然違うよ」

「チャンミン、今日の曲って俺と出会ってから作ったやつ?」

「そうだよ」

「じゃあさ、俺、客席にいるから。
そうだな…一番後ろのど真ん中の客席。
俺に向かって歌ってくれよ、な?」

「客席にいるユノに向かって?」

「そう、俺に向かって、心を込めて歌ってくれ。
俺がステージに駆け寄って抱きしめたくなるくらい」

「……それなら…少しは上手く歌えるかもしれない」

チャンミンは薄っすらと微笑んでみせた。


「上手く歌おうなんてしなくていいから。
いつも通りで、だけど今日は俺に向かって歌って」

「わかった」

ユノは客席をひとつ確保すると、あとは控え室でもチャンミンの側にいた。

他の出演者は本当に素人もいれば
やはり既にマネージャーがついている者もいた。

「この間のオーディションで僕の後ろにいた上手い子、今日いないや」

「歌が上手いだけじゃ、ダメなんだ」

「そう…なのかな?」

「歌が上手いのと、見ている者を魅了できるのとは
違うよ、チャンミン。」

「………」

チャンミンはその大きな瞳でじっとユノを見つめた。

「僕、ユノをどれほど愛してるか
聴く人に伝えたいんだ。それはデビューするかどうかとは別の話。」

「チャンミン…」

「それだけは自信がある。」

そう言って、チャンミンは笑った。

「ユノ、客席で待ってて。
僕、ここからは1人で大丈夫」

「大丈夫か?」

「うん、僕の作った歌、ひさしぶりにちゃんと聴いて?」

「そうだね、路上ライブも随分やってないし。
こうやってお前の歌を聴くのもひさしぶりだ」

「ユノの心に響くように歌うよ」

「わかった。
じゃあ、客席にいるよ。後で控え室に迎えに行くから」

「約束だよ?絶対に迎えに来てね」

チャンミンが突然不安そうな顔になった。

ついさっきまで、大丈夫だなんて気丈なところを見せていたのに。

「わかった。約束するから」


そして、煌びやかに新番組が始まった

「明日を夢見て」


明日のスターを夢見る者たちがデビューのチャンスを
かけて自分をアピールする。

5週連続して勝ち抜けば半年後の決戦でデビューのチャンスを獲得できる

MCが音楽と共にそんな説明を軽やかに告げていた

みんながステージに出てくる。

チャンミンだ

前回と同じ、白いコットンのシャツに
グレーのフラノパンツがその長身によく似合う。

緊張はしているものの、表情は思ったより柔らかい

5人いる挑戦者の中で
チャンミンだけが輝いてみえるのは、自分の贔屓目か
またはチャンミンが持っているスターのオーラか。


ユノは落ち着かず、何度も座り直したり
足を組み直したりしていた。

まるで、学芸会に出る我が子を心配する親のようで
ユノは苦笑した。

そしてそれぞれの出番がきた。

最初はアイドル路線の女の子

さっき控え室ですでにマネージャーがついていた。

ステージ慣れしているその子は難なく終わる。

続いて、同じような路線の女の子が続き

チャンミンの番になった。

ギターを抱えて、チャンミンが出てくると
ステージに爽やかな風が吹いてきたような錯覚をおこす

それがチャンミンのオーラだ。

チャンミンに目をつけたプロデューサーが
睨むように見ている。

そんな視線の中、緊張はしているものの
チャンミンは柔らかく微笑み、挨拶をして名乗る。

そして、背の高い丸椅子に腰掛け
ギターを弾き出した

正直、ギターの腕が抜群に上手いわけではない

それでも、前奏に続いて聴こえてきた伸びやかな高音

駅前ではじめてこの歌声を聴いた時
その優しさが疲れた心に優しく染み渡ったのを思い出した。

歌の中盤に差し掛かると
少し強さが出てくる

チャンミンは優しく穏やかではあるけれど
意志が強い。

それは付き合ってきてユノが発見した、
チャンミンの一部だ。

歌詞はそのフレーズのどれもが
ユノへの信頼と愛、そしてユノを守りたいという
チャンミンの意思にあふれていた。


ずっと側にいる約束をしてくれて
ありがとう

僕はあなたさえいてくれたら

何もいらない

2人で一緒に暮らそう

そうすれば何も怖くない



チャンミンは時折、客席のユノを切なく見つめながら歌った。

気がつけばユノの目には涙があった


チャンミン

ずっと側にいる約束を

俺は守り通すから…


突然沸き起こった盛大な拍手にユノはハッとした。

まわりの観客の反応はすごかった

立ち上がって拍手する者もいた。


チャンミンは凄い

もしかしたら、ユノが想像しているより
遥か彼方へと飛び立ってしまうかもしれない

そんな翼がユノには見えた





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