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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 20




チャンミンの母は、親戚の家にしばらく泊まるらしい。だから、ちょくちょくチャンミンと出かけていたりした。

田舎の人らしく、チャンミンのバイト先のコンビニに手土産などを持っていき、みんなから恐縮されていた。

ユノもチャンミンがお世話になっているということで
高級珍味のようなセットをもらい、困惑しながらも
ありがたく受け取った。

チャンミンの母は、オーディションの結果をみてから
帰ると言っている。

一応、と言っていたから、受かるとは思っていないのだろう。


そんなある日



「ユノ!」

突然かかってきたチャンミンからの電話

アンティムのレッスン休憩だったユノは嫌な予感がした。

「どうした?そんな大きな声を出して」

「もう、びっくりだよ!
僕さ、オーディション受かってた!」

「そうか」

「なんで?驚かないの?
テレビ出演の依頼だって!」

「驚かないよ、チャンミンならイケると思ってたから」

「えー!なんだよぉ、どうしよ、何着たらいいんだろ」


つい先日、受かってもやめる、と言っていたチャンミンは既にそこにはいなかった。

「いつもの格好でいいんだよ、
スーツ着てギターじゃおかしいだろ?」

「そうか、でもジーパンじゃダメだよね」

「ごめん、ディレクターに呼ばれたから切るぞ」

「あ、ごめんね!」

「何着ていくかは、今夜話そう」

「わかった!」


ユノの心がザワザワしている

何かが始まる

いろんな手が伸びてきて
俺のチャンミンを奪いに来るのか

守りきる自信はある

だけど、チャンミンが行きたがったら
俺は止めない


ユノはディレクターのところへ行った。

「あ、ユノさん、アンティムの話じゃないんだけどさ」

「なんでしょうか」

「この間、テレビ局でギター弾いてた子
あの子ジンさんとこの子?」


「チャンミンですか?……そうですが」

ユノは咄嗟にウソをついた。



「あーそうなんだ、いやね、あの子の事、プロデューサーが気に入ってさ、たしかにちょっといい線行けそうだからね」

「ウチの所属です」

「じゃあ、ユノさん通した方がいいかな」

「お願いします、何かあれば私を通してください」

「じゃあ、早速なんだけど、
あの子、オーディションに公募してきたんだよ。
書類審査でみつけてね。ちょうどいいかなって」

「オーディションで受かってデビューって形で?」

「そうそう、もう第一回目の優勝者にしちゃうから」

「わかりました。」

「なんで、あの子応募してきたの?
ジンさんたち、知ってるの?」

「ただの度胸試しってやつですよ」

「そう。いい子見つけてきたね
アンティムといい、なんか上り調子じゃない?」

「ありがとうございます」

「デカイ事務所からイジワルされないようにね」

「アハハハ…気をつけます」

ユノはお辞儀をした


そしてすぐジンに連絡をとって
事の次第を説明した

何も知らないチャンミン

影でどんどんいろいろな話が進む

ある程度説明をしないと。
順序だてて

ジンから折り返し連絡があった

「チャンミン君の契約書作っておいたから。
5年契約でいいよね」

「1年契約にしてくれ。
5年はダメだ」

「なんでだよ。イケそうなら5年にしてくれ。
1年じゃ、売れた時どっかにとられちまう」

「絶対ダメだ。契約は1年。
チャンミンに関しては、決定権は俺にある。
後で確認して俺が作るから」

「わかったよ、じゃあ、1年にしておくから。」

キャッチが入って変わるとプロデューサーだった。

「ユノさん、チャンミンはジンさんのとこの子なんだってね」

すでにチャンミン、と呼び捨てなところに
正直ムッとした。

「はい、話は聞いてます。
よろしくお願いします」

「本人に言っちゃった?
優勝して感激するところリアルで撮りたいんだけど」

「はい、わかってます。言ってませんので」

「さすが、ユノさん。
ジンさんより、ユノさんのほうが話早いんだよな」

「チャンミンの事は、私が窓口なので
よろしくお願いします」

「はーい、よろしく」


ユノの顔つきが鋭くなった。

仕事の顔半分、愛する者を守る男の顔半分


チャンミンが離れて行くとか
もうそんなことを憂いているヒマはない

守らないと、チャンミンを守らないと。


契約を確認しないといけない。

長い契約はチャンミンを縛る。
1年後には、チャンミンにその後の道を選ばせる

やめるのか、続けるのか。

もし、売れているなら
契約金をその都度支払われるようにしないと。
安金でこき使われることになる。

そして、その時にウチの事務所がダメなら
他へ行く自由も…

ユノはかぶりを振った。

いや、きっとチャンミンはそれをしない。
俺の側にいたがるはずだ。

チャンミンの意志で、俺の側に。


ユノが家に帰ると、チャンミンは母親といた。

「ユノさん、お邪魔してます。
今ね、帰るところなの」

「遠慮しないでいてください。
むさ苦しいところで申し訳ないですけど。
夕ご飯まだなら、どこか行きましょうか」

「今ね、チゲ作ってチャンミンと食べたところよ。
ユノさんの分もあるから、食べて?」

「ありがとうございます。」

「じゃあね、チャンミン、オーディション楽しみにしてるわ」

「ご親戚のところへ?」

「ええ、そう。
もう少し世話になって、明後日帰ろうと思って」

「じゃあ、車で送ります」

「でも、ユノさん何も食べてないでしょう?」

「大丈夫ですよ、後で作っていただいたチゲあっためて食べますから」

「そう?」

「じゃあ、僕お風呂掃除してお湯張っとくね」

「頼むよ、チャンミン」


ユノはチャンミンの母親を助手席に乗せて
親戚の家へ向かう。

車内では、なんとなくの世間話をした

「あの子、ユノさんと出会ってから
すごく明るくなって」

「そうですか?」

「いろいろあった子でね、
なんかこう、影があったの」

「………」

「ユノさんは聞いてるかしら
あの子の小さい頃の話」

「全部は聞いてませんが…
あまりいい別れ方をしてないのかなってことくらいで」

「親がね、バカでねほんと。
私も最低なのよ」

「そんなこと…」

「でもね、あの子、小さい頃に戻ったみたいで
なんだか、嬉しかったわ」

「……それは私も一緒なんですよ」

「ユノさんが?」

「私もチャンミンのお陰で、本来の自分を取り戻せたんです」

「あら、あの子にそんな力があるなんて」

「ありますよ、きっとこの先、チャンミンは多くの人を魅了していきます」

「ユノさん、どうかよろしくお願いしますね」

「はい。命を張ってでも、チャンミンを守りますから。
約束します」

「頼もしいわ、よろしくお願いします」

シートベルトがあるのに、お母さんは
深くお辞儀をした。



帰ってから、ユノはチャンミンに順序だてて説明をした。

次にオーディションに行く時には
ウチの所属、という立場にしないと。

「僕はきっと優勝なんてしないよ」

「しなくても、エージェントの目に止まると
話が来るんだよ。」

「僕は歌手になるかどうかなんて…」

「それはとても不安定で無防備なことなんだよ。
どこかに所属してるとなると、みんなが簡単には手を出せない」

「歌手にならなくても所属できるの?」

「それはまた別の話だから、大丈夫」

「ふぅん。じゃあコンビニは辞めるってことだね?」

「そうだな。でも給料は支払われるんだ。
辞めても大丈夫だと思う」

「ユノは僕にジンコーポレーションに所属してほしい?」

「最終的に、どこに所属するかはチャンミンの自由だ。
契約金とか、給料に関しては他のエージェントの方がきっと高い」

「そうなんだー」

「だから、もし、他と比べたいっていうなら
また考えてもいいかもしれないけど
今だけでもとりあえず…」

「ユノは?」

「?」

「ユノが僕にどうしてほしいか、聞いてるの」

チャンミンが真っ直ぐに強い瞳でユノに問う

「俺?」

「そう、ユノはどう思ってるの。
僕が他のエージェントに行ってもいいと思ってるの?」

「実は…」

「?」

「お前を誰にもとられたくなくて…
すでにウチとの契約書を作ってもらってる」

チャンミンは少し微笑んだ
満足そうな瞳

「俺の独断で。お前に言わなくて申し訳ない」

「ユノ、なんで黙ってたの」

「話す前に手を打った」

「先回りして?」

「そう」

「僕がユノの事務所じゃ嫌だって言ったらどうしたの?」

「それはもう、その時考えようと」

「ユノは、僕の人権とか、そんなこと考えなくていいんだよ」

チャンミンがソファの隣に座るユノの首に抱きついた

「僕の事はユノの好きにしていい。
どこかに所属しなきゃいけないってユノが決めたなら
それでいいし、僕の意志なんて考えなくていい」

ユノは安堵のため息をついて、チャンミンを抱きしめた。

「お前は俺のものだからね」

「そうだよ、僕の考えなんてないから」


ユノはチャンミンを抱きしめる腕に力を込めた。


「チャンミンのことはオレが決めるって
みんなに宣言してるんだよ」

「うわー」

チャンミンは仰け反って笑った

「じゃあ、僕に聞かなくたっていいのに。
優しいね、ユノは」

「チャンミン…」

ユノはチャンミンの髪に手を入れて
自分の方に引き寄せる。

角度を少し変えて
そっと口付ける


今夜言ったことを、忘れないで

俺はチャンミンが俺の側にいれるようにしか
考えないから

それでいいって、お前は言ったんだ

だって

俺たちはずっと一緒にいる約束なんだから






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