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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 19



ユノとキュヒョンは会場内に戻った。

「じゃあ、僕たちは昼ごはん食べて来るから
チャンミン、がんばって」

「わかった。終わったら連絡するから」

そう言って、チャンミンはキュヒョンたちと別れた。

そして、ユノに向き直り、申し訳なさそうな顔をする
チャンミン。

「どうした?」

「僕さ、ユノの事、ちゃんと紹介できなかった…」

「?」

「ユノはいつも僕を恋人だって、堂々と紹介してくれるのに…」

「あーチャンミン、それは相手によるだろ」

「?」

「ギルや女、会社の野郎達には、
ちゃんと言っておかないと危険だからね。
俺だって、オンマには簡単に紹介できないよ。
する時がきたら、ちゃんと順序立てて紹介するさ」

「そっか。そんなもんかな」

「だから、なんとも思ってないよ」

ユノはチャンミンの頭を撫でた。

「さ、そろそろだぞ」

ユノはチャンミンを連れて
受付へ行った。

ここでチャンミンはユノともお別れだった。

受付で名前を告げ、チェックをしてもらうと
ギターケースを抱えたチャンミンがユノを振り返った

不安そうな大きな瞳

ユノはガッツポーズを作って
口元だけで「が ん ば れ」と言うと

チャンミンは安心してニッコリと笑った

そして、うん、と大きく頷くと
あとはもうユノを振り返らなかった。


頑張れだなんて口ばっかりで
この可愛い笑顔が自分のところから飛び立ってしまったら、と。
そんな恐怖しかないユノだった。

チャンミンはギターケースを抱えて、
背筋を伸ばしてオーディションに向かった。


チャンミンは、オーディションがこんなに時間がかかるものだとは、意外だった。

今日は予選なので、いわゆる個人面接程度だと聞かされていた。

書類にも披露するのは1曲とあった。

それなのに

何曲も弾かされ、歌わされ
あれはできるか、これはできるか
立ってみせたり、座ってみせたり

歌やギターとは関係ないことまでさせられた。

「ご苦労様でした。結果は郵送とHPとなります。
その後、電話連絡でテレビ出演の意思決定をいただきます」

「あ、はい」

「最後にプライベートな事を聞きますが」

今まで黙っていた1人の審査員がはじめて質問をしてきた。

「?」

「彼女とか付き合ってる人はいますか?」

「………」

一瞬チャンミンは躊躇した
なんでそんな事に答えなくちゃいけない?


でも、ユノの顔が目に浮かんだ

いつも「俺が夢中になったヤツ」そう言って
堂々とチャンミンを紹介してくれた。


「愛してる人がいます」

審査員の目を見てしっかりと答えた。

何人かの審査員が、やれやれと首を振って大きなため息をついた。

いやな感じ
愛する人がいて、何がいけないんだ

まるで、オーディション受けに来るならそこをどうにかしろ、とでも言いたげな雰囲気。


チャンミンは審査員に頭を下げて
部屋を出た。

控え室に戻ると、ユノが立ち上がって
チャンミンのところに走り寄ってきた

ユノがなぜか不安そうな顔をしている。

「おかえり。随分時間がかかったな」

「なんか、イヤーな感じ」

「なにが?」

「話と全然違って、何曲も弾かされたし
付き合ってる人はいるかとか、なんか不躾っていうかさ」

「………」


やっぱり

とユノは思った。

もうプロデューサーがチャンミンに目をつけているんだ。

この新番組で一般公募から生まれたスター
路上ライブから出てきたギタリスト

どういうコンセプトでいくのか
ユノにはそこまで想像できた。

予感は的中だ

ユノは心臓がドキドキして
立っていられないのではないかと思うくらい
頭もクラクラしてきた


チャンミンが…

もうレールに乗せられている


その綺麗な瞳の前に
煌めく道が用意されている

ユノの腕の中から、飛び立ってしまうのだ。


「ユノ?」

「ん?」

「どうしたの?顔色が悪いよ、大丈夫?」

ユノは微笑んでみせた

「大丈夫だよ、なんでもない」


俺は笑えてるか?
ずっと俺の側にいたいと思わせる、そんな笑顔を見せているだろうか。

チャンミン…
俺の、俺だけのチャンミン

「僕さ、もし、万が一オーディションに受かったとしても、もうやめる」

「どうして?」

「なんか嫌な感じだった」

「芸能界って裏と表がある世界だからね
裏はメチャクチャ嫌な感じだよ。
表が綺麗な分、仕方ないのかもな」

「ま、どうせ受からないけどさ。
僕の後ろの子なんて、いろんなコンテストでいつも上位なんだって。それくらい歌が上手いみたい」


エージェントが気にするのは
歌がどれだけ上手いかより、どれだけ人気がでそうか、だよ。

お前には、それがある。

けれど、嫌なイメージを持ったというチャンミンに少しだけホッとした。

ユノはチャンミンが芸能界に入ること自体を嫌がっているのではない。

その純粋な魂が汚され、その笑顔が争いに澱み
誰もが持っている汚い欲望が目覚めて

チャンミンがチャンミンでなくなることを
怖れていた。

チャンミンを信じていないのではない。

こんなチャンミンをも変えてしまう力を
ユノはよく知っていた。


「今夜はバイトだから、早く帰らなくちゃ」

「車だから、そのままバイト先まで送るよ」

「ありがとう、助かる」


助手席で、チャンミンはウトウトしていた

微睡む表情が可愛い

「最近、週に3日もバイト入ってなくて
クビになっちゃうかなぁ、僕」

「ま、その時考えるんだな」

「うん、昼間のコンビニって、廃棄のご飯がもらえないから、そんなにメリットもないしね」

「そっか」


高速道路のゆるやかなカーブが春の日差しに眩しく光る


コンビニの廃棄物をもらえるのを楽しみにしている
そんな俺の大好きなチャンミン

どこへも行かないで






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