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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 16



ユノはチャンミンを抱きしめながら深呼吸をした。

落ち着け…

落ち着け…

今すぐ、チャンミンがどこかに行ってしまう訳じゃない
それに…

「ユノ…僕、そこまで歌手になりたいわけじゃないんだ」

「………」

そんなこと、チャンミンに言わせてる。

ユノはゆっくりとチャンミンを解いた

向き合うと、チャンミンが泣きそうな顔でユノの顔を伺う。

「ほんとごめん、俺、最低」
ユノはチャンミンに笑ってみせた。

「ユノが最低なわけない。
ユノは僕が傷ついたりしないか心配してるんだよね」

「違うよチャンミン」

ユノは笑った

「違うの?」

「お前が人気出ちゃったら
ファンが増えるのが嫌なんだよ」

「え?」

「オーディションで純粋にお前の歌が認められたら
問題ないルートでデビューできるだろうね」

「そうなの?でも、出来レースって」

「うん、大抵はね。
でも準優勝とか、特別賞は一般の応募者から選んでくれるかもしれない。
そうしたら、デビューって話も夢じゃない」

「僕はきっとそんな勝ち抜いたりできないよ。
でも、どこまでやれるか試して見たいなって。
その程度のことなんだよ」

「わかった。やるだけやってみよう。
でも、約束してくれ。
芸能界へ入るような何かに参加したりするなら、必ず俺に先に言って?」

「わかった。参加なんかしないよ。
このオーディションに応募するのが最初で最後だから。
なんていうか、思い出に。」

「やるなら、中途半端じゃなくて
とことんやってみな」

そう言いながら、ユノはチャンミンの頭を撫でた

そうしてもう一度抱きしめた

「大きな声出して怖かったろ?
ほんとにごめんな」

「ユノの怒った顔、カッコよかったよ?
初めてみた」

そう言ってチャンミンはユノにキスをした。


それから、チャンミンはバイトのない日は屋上で練習をした。

以前のような上昇志向はユノの怒声で一瞬消え失せた。

でも、頑張っている姿をユノに見せたい。

ユノへの思いをステージで披露するんだ。

そんな明るく前向きな姿はチャンミンの頭上に広がる青空によく似合った。


**********


ユノはアンティムのバラエティの収録に来ていた。

ふと、ユノのスマホにスンホの文字

忙しくて話をしていられないユノは
一旦、それを無視して、なんとかタバコを一服できる時間をみつけて、折り返し電話をした。

「ユノ…さん?」

「スンホ、さっきは電話とれなくてごめんな」

「僕こそごめんなさい。
忙しいんでしょ」

「今は大丈夫」

「僕はヒマなんですよ、フフフ…」

スンホの様子がおかしい

「人気なんて浮き沈みはあるさ。
またいくらでも復活できる」

「ってことは、ユノさんもやっぱり僕の人気はないって
思ってるんですよね」

「そういう訳じゃない。
活動がなくて、ファンも悲しんでるみたいじゃないか。」

「だって、活動させてくれないんだ」

「スンホ」

「はい」

「いろんなリスクを1人で背負っていくことは
覚悟していたんじゃないか?」

「………」

「もう、スンホはアンティムに戻ることはできない。
わかるよな。」

「そんなこと頼んでるんじゃないです」

「じゃあ、なんだ?」

「みんなに忘れられるのが怖くて」

「まだまだこれからじゃないか
お前は歌もダンスもいいもの持っているんだから」

「僕なんか…トレスタのお荷物ですよ」

「トレスタなんて、何人抱えても大丈夫だよ。
心配すんな」

「みんなに会いたい…ユノさんにも会いたい」

「アンティムの…みんな?」

「僕がいた頃はアンティムなんて名前じゃなかった」

「あの頃はグループ名なんかなかったじゃないか」

「みんなでユノさんに奢ってもらったチゲが懐かしくて」

「スンホ…大丈夫か?」

「大丈夫じゃなかったら、救ってくれますか?」

「……スンホ、俺はお前を救えない。
お前を救うのは、自分だよ」

「………ユノさんはどうしてたんですか
ギルさんが、昔、ユノさん大変だったって」

「俺の時とお前は違うよ。
とにかく、目の前の事を一生懸命にやるしかない。
意外と大事なことだぞ」

「……僕、間違ってたのかもしれない。」

「自信持てよ。お前は才能を見込まれて引き抜かれたんだから」

「………」

「いいか?アーティストはな、努力してある程度までの線まで自力で行くやつと、元々才能があってまわりが道を作ってくれるやつといるんだ。」

「僕は…みんなが道を作ってくれる方だよね?」

「でも、そのどっちもスターになれるとは限らない。
努力し続けないといけないし、時代も味方してくれないといけない」

「………」

「今のスンホみたいにメゲているだけだと、
せっかく作ってもらった道も閉ざされてしまう」

「わかってるけど…」

「ボヤいているヒマはないはずだぞ」

「………」

わかったような、わからないような…
そんな様子のスンホだった。

置いていかれそうな予感

立場は違っても、その感覚は今、ユノも感じていた。

そう、ユノは肌で感じているのだ。
きっとチャンミンにはまわりが道を用意してくれる。

それだけのものを、チャンミンは持っている。

けれど、ユノはチャンミンのその純粋さも心配だった。

本当に素直でいい人間だったのに
芸能界の風を浴びて、変わってしまった人間を何人も知っている。

信じてはいる

チャンミンは変わらない

でも、先の事は誰にもわからない。
今は、チャンミンを応援してやるのが自分の務めだ。

それにチャンミンはオーディションには参加するだけだと言ってるのだから。

チャンミンのやりたがっている事を支えよう


ユノはオーディションの日程を確認して、
その日は休ませてもらうように、ジンに伝えた


ユノはチャンミンにいいスタジオを借りてやり
時間を作っては、その練習に付き合った。

路上でギターを弾いていたころとは
その曲調はよりいいものになっていた。

透明感のある伸びやかな高音は、少し色気も加わって
ユノも聞き惚れてしまう。

持っていた才能が、ここで一気に開花したような
そんなチャンミンだった。


ユノとしては、本当はやりたくないことをなんでもやった。

チャンミンのためだと気持ちを抑えながら
気持ちと行動はバラバラだった。


オーディションが来週にせまったある日
久しぶりに少し長めの時間がとれた夜

その日はチャンミンの誕生日だと言う。


ユノは一般人がなかなか泊まれないようなホテルに
チャンミンを連れて行った。

ユノもアンティムの人気で収入は格段に良くなっていて
少し無理すればこのくらいのホテルを予約できるまでになっていた。


豪華なエントランス
煌めくシャンデリア

足が沈み込みそうな段通が一面に敷き詰められている

カウンターやセンターテーブルはすべて大理石でできていて、スキルのあるホテルマンが恭しく頭を下げる

チャンミンは少しは良い服を着てきたつもりだった。

白いコットンのシャツに、グレーのフラノパンツ
紺色のカーディガン。

元々品の良い姿のチャンミンは、
一流の学校に通うお坊ちゃん、というイメージだ。

ただ、どうしていいかわからず
完全にホテルの高級感にやられてしまっていて

ユノにぴったりくっついて、
あたりをキョロキョロと見回していた


ユノは身体に程よくフィットしたスーツ姿で
ホテルでのやりとりをスマートにこなしていた。

ホテルマンへの態度も傲ることなく
きちんとした配慮で、とても好感が持てるとチャンミンは思った。

いつもながら、頼り甲斐のあるカッコイイユノだった。

チェックインは夕方になってしまったけれど
落ち着いた広い中庭を2人で散歩した。

チャンミンは少し歌いながら歩く
そしてそんなチャンミンをユノが優しく見つめる

「ユノ、こんな豪華なホテルをとってくれて
かなり無理させちゃったね」

「ずっと忙しかったからな
プレゼントも何も用意できなかったし」

「そんなの、いらないよ」

「そうはいかないよ。
俺はチャンミンの誕生日に何してやろうかって
楽しみにしてたのに、このザマだ」

「最高のバースデーだから」

「そうか?それならいいけど」

「うん、僕のために…ほんとうにありがとう」


夜はそのホテルで食事をした。

たくさん並べられたフォークやナイフに
チャンミンはオロオロしっぱなしだったけれど

ホテルマンのさりげない気遣いで
間違うことなく、食事を堪能した。

「このホテルの人はみんな優しいんだね、ユノ 。
一流ホテルなのに、なんにもわかってない僕に親切だよ」

「チャンミン、高級ホテル慣れしていない客を
バカにしたような態度をとるのは二流だ」

「あ…そうか…」

「このホテルはどんな客に対しても態度が一貫しているし、慣れてない客にはさりげない気遣いができる。」

「ほんとだね」

「どんな客も居心地よくさせようとするのは
一流のプライドだ」

「なるほど、なんか感激だな
そういうのってすごいね」

「チャンミン、本当の一流は奢り高ぶったりしない」

ユノは食事の手を休めて、チャンミンに教え込むように
真剣に話す

「ユノ…」

「いつか、お前が一流になったら
そのことを忘れないでほしいんだ」

「アハハハ…ユノ、いつか僕がそんな一流になれると思っているの?」

「お前は、なれるよ。」

「無理無理!」

チャンミンは笑いながら、目の前のフィレステーキに
没頭した。

そんなチャンミンを見つめるユノの目に
寂しそうな影が宿っていたことに、

チャンミンは気づかなかった。





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