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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 15



朝になって、チャンミンは簡単な朝食を作った

ユノはひさしぶりに自宅で眠れたせいか
まだもう少しベッドにいたいと思う。

できればチャンミンを抱きながら

「チャンミン、今日は仕事?」

「休みだよ。曲を作ろうと思ってたけど」

「どこか行こうか」

「ユノは何時頃出かけるの?」

「今日は夕方でいいんだ。
テソンと交代するだけだから」

「そう、じゃ夕方までは僕がユノを独占していいんだね」
チャンミンがクスクスと笑う。

「どこ行く?」

チャンミンは優しくユノを見つめた。

「出かけなくてもいいよ。
ユノ疲れてるんだから、夕方まで家でゆっくりしてよう」

「そんなこと言ったら、ずっとベッドの中で過ごすことになるけどいい?」

チャンミンがゲラゲラと笑う

「じゃあ、やっぱり買い物行こう」

「今行かないといけない買い物?」

「違うけど…」

「じゃあ、今はベッドで過ごそう」

そう言って、ユノはベッドからチャンミンに向かって手を伸ばした。

筋張って、筋肉が隆起する腕
ムダな贅肉のないその腕はとてもセクシーだ。

チャンミンはわざとため息をついてみせる

「朝食の前に?」

「そう、朝メシの前に。おいで」

ユノは伸ばした腕で手招きをする。

せっかちなその表情に
チャンミンは欲情してしまう。

「じゃあ、ちょっとだけ」

チャンミンは降参、といった感じで
ユノが空けたベッドの隣に潜り込む。

待ち構えていたように
ユノがチャンミンを抱き込んだ。

チャンミンはくすぐったそうに笑う

幸せな時間

お互いを埋め合う大切な時間


そして、離れ離れになる残酷な時間がやってくる。


「いってらっしゃい、ユノ」

下を向いたままのチャンミンは
ユノの目を見ずに見送ろうとしている

そんな様子のチャンミンをユノはじっと見つめている

「チャンミン」

「ん?」

「顔上げて、俺の顔見て」

「カッコよすぎて離れたくなくなるから、見ない」

「下向いてたら、キスができないよ」

「キスなんか、いいよ」

すっかり拗ねたチャンミンを
可愛くてたまらない、と思うユノ。

ユノのスマホがメール着信で震える
画面を一瞥したユノが微笑んだ

「チャンミン、俺、明日も帰ってくる」

「えっ?いいの?」

「いいって、俺の家なんだし」

「仕事は?」

「アンティムも休ませないといけない。
1人、疲れがたまっているのか調子が悪いらしい」

「アンティムの子たちもだけど、ユノも疲れが溜まってるでしょう」

「俺はここに帰ってくれば大丈夫だよ」

「そう?」

「そうだよ」

「じゃあ、行ってらっしゃい」

チャンミンは今度は笑顔でユノを送り出すことができた。


ユノはレッスンスタジオに行ってテソンと交代をした。
そして、パフォーマンスの練習に余念がないアンティムのメンバーをご飯に連れて行った。

久しぶりにみんなでゆっくりした時間を過ごし
とりあえず今日のところは自由な時間を与えた。

疲れている子は寝るもよし
友達と会うもよし。

ただ、既に食堂の外にもファンが出待ちをするまでになったアンティム。

それぞれの行動には十分注意するよう伝えるユノだった。

メンバーを送り届けると
ユノは事務所へ戻ってひとしきり仕事をした。

仕事はかなり溜まっていて、パソコンに没頭しているうちに、いつのまにか明け方になっていた。

朝のコーヒーを事務所で淹れていたユノに
ギルから連絡があった。

「おはよう、ユノ。
アンティムの調子は上々だね?」

「おかげさまで。まだまだこれからだ」

「今が大事な時だぞ?気をつけないと」

「ああ、わかってる」

「それからさ、この間、お前の愛しのチャンミン君。
見事なパフォーマンスを披露したそうだけど」

「パフォーマンスってほどじゃないよ」

「プロデューサーがもう一度チャンミン君に会えないかって煩くてね」

「なんでギルに頼むんだ」

「頼まれたわけじゃないよ。雑談でさ」

「ああ、会えないから」

「即答だな、おい」

ギルが笑う。

「本人は、チャンミン君自身は歌手になりたいとか
言わないのか?」

「ギルには関係ない」

「そうだけどさ」

「それよりスンホはどうしてる?」

「イマイチだね。パッとしないよ。
アンティムの活躍が気になってるみたいだな」

「上手く、フォローしてやってくれないか?」

「最低限のフォローはしてるつもりだ。
でもこれは自分で解決することだ。」

「引き抜いておいてそれはないだろ」

「ユノ」

「なんだ」

「そんなに甘い世界じゃないよ
自分でのし上がっていかなきゃ」


「………」


ギルの言う通り。
ユノは百も承知だった。

「じゃあな、アンティムは頑張ってるとスンホに伝えてくれ」


ユノはチャンミンに連絡をした。

そして車に乗り、家に帰った。


いつものようにエントランスの郵便受けから
郵便物を取る。

ふと、その中にチャンミン宛に来ているものがあった。

「?」

見るとそれはよく知っている企画会社からのもので
封筒の隅に番組のタイトル名が書いてあった

" 明日を夢見て "

これは、今度新しく始まるオーディション番組のタイトルだ。

これが来てるということは
チャンミンがネットから申し込み、住所確認を兼ねて
速攻で書類が郵送されたということだ。

ユノの心に理由のわからない怒りがこみ上げて来た

なぜ自分は怒るのだろう
誰に怒っているのだろう

ユノは足早に自分の部屋に向かった。

頭の中に冷静になれ、という声と
抑えきれない怒りと


その頃チャンミンは朝ごはんを作っていた。
今日もユノと一緒に過ごせそうで、嬉しくて鼻歌まで出る始末。

キーの外れる音がして
チャンミンの顔が輝いた

急いで玄関まで行く


ユノは部屋のキーを外して乱暴にドアを開けた

「おかえりなさい…」

ユノの表情は、チャンミンが想像していたそれと
大きく違っていた。

いつもの優しい笑顔がなかった

「ユノ?」

ユノは郵便物をチャンミンに投げつけた

「なんだよ!これ!」

チャンミンの足にいくつかの封筒が当たった

何が起きたのか。

こんなに怒ったユノをチャンミンは初めて見る。

チャンミンは足元に落ちた郵便物を拾い上げると
その中に見覚えのあるものがあった。

オーディションの連絡だ…

「お前、なんで俺に黙ってこんなの応募してるんだよ」

「ご、ごめんなさい…」

チャンミンはユノの怒りの理由もわからず謝った。
たしかに応募することは言わなかった。

ユノの息が荒い

「内緒にするつもりはなかったんだ。
ユノに話す時間がなかっただけ…ごめん」

「このことは!俺がシュミレーションするから
待ってろって言ったはずだろ?!」

「そうだけど…締め切りが…」

「一言言えよ!あれだけ電話してたんだから!
話す機会はあっただろ?!」

「………」

なぜユノが怒っているのかわからない
これ以上何かを言っても、ユノを怒らせるだけだ

「こういうのはな、チャンミン。
出来レースなんだよ。」

「出来レース?」

「そう、もう優勝するヤツは決まってる。
どこかの事務所の新人なんだ。
こうやって、一般から公募して、全国の会場でオーディションをする。それ自体が番組の宣伝なんだ。」

「あ……」

「これを目指して曲作ったりしてたのか?!」

「そこまでは…」

「なんで俺に黙って勝手に芸能界へ行こうとしてんだ!」

「ごめん、そんなつもりじゃなくて…
ただ、なんとなく」


ユノの心に一瞬スンホの顔が浮かぶ

引き抜きという優越感を味わされながら
パッとしなければ飼い殺し

チヤホヤされたかと思えば、一瞬でソッポを向かれる

そんな世界…

チャンミンが傷つくのを見たくない

逆にチャンミンが成功したら
ユノではない他の手がどんどんチャンミンへ伸びる

チャンミンはそのどれかの手を掴んで引っ張り上げられ
ユノの元から飛び立ってしまうだろう

そんな自分勝手な思い


ユノは突然自己嫌悪の気持ちに襲われて項垂れた

チャンミンはただ驚き、戸惑い
不安そうにその場に立ち尽くしている。


ユノはぎゅっと目をつぶった


チャンミンの夢なのに
それを叶えようとするのを俺が邪魔する権利はない

なのに俺は…

握りこぶしが震える

なんてちっぽけなヤツなんだ…
これじゃ昔、MAD BLOODを潰したあの社長と一緒じゃないか。


「ユノ…」

小さな声でチャンミンが話しかける

「ごめん…そんなにユノが怒るとは思わなくて…」

「………」

「僕、オーディション行かないから、ね?」

チャンミンにこんなこと言わせている俺…

「朝ごはん出来てるから食べよう?」

ユノはなんとか顔を上げると
チャンミンが不安そうにユノの顔を伺うように
引きつった笑顔を見せている。

こんな顔をさせたかったんじゃない


愛しすぎて気が狂いそうだ


ユノはチャンミンの顔を見つめながら
その不安そうな表情から目を離さないまま、部屋に上がってきた。

ユノの真顔はその顔立ちのせいで本当に怖い

チャンミンは思わず後ずさりをしてしまう。

そんなチャンミンの腕を強引に引っ張りこんで
ユノはきつくチャンミンを抱きしめた。

「ごめん…ほんとにごめん」

ユノの押し出すような呻くような低い声

チャンミンもユノを抱きしめた。

「ううん、いいんだ」


ほっておかれるより
こうやって、怒ってでも求められる方がいい

怒るのは僕を必要としているから

チャンミンは理不尽なユノの行動を
嬉しく思った。

ユノは溢れ出る自己嫌悪の思いを打ち砕くように
チャンミンをきつく抱きしめた





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