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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 14



「チャンミン、ラインに貼ったリンクみた?」

キュヒョンから電話がきた

「うん、これオーディション?」

「新番組だって。5週勝ち抜いたらデビューだ
アメリカとかでよくある番組」

「そんなに勝ち抜く自信ないよ」

「やってみなきゃわからないじゃないか」

「うん…」

「ユノさんに、相談してみなよ」

「ユノ、忙しくて…」

「なんだよ、寂しそうな声出しちゃって」

「相談してみる。連絡する用事ができたからよかった」

「声が聞きたかったら我慢することないだろ?」

「……仕事中だと…悪いからさ」

「愛ってやつだね、お前の思いやりはきっと伝わってるさ」

「ありがと、キュヒョン」


そのオーディションはネットから申し込めた。
条件がいろいろあったけれど

申し込むには問題なさそうだった。

とりあえず自分の画像も貼って
ある程度まで入力してみた。

両親の名前なんて必要なの?

チャンミンは父親の名前を入れるところで
躊躇した

しばらく迷って母親の名前だけいれる

ずっと読み進めていきながら、
チャンミンは1人笑った

なんだ

両親の名前って、未成年の場合だけか!
そうだよね

その時、スマホが鳴った

ユノだ!

「もしもし?」

「チャンミン?」

ユノの後ろから盛大に音楽が聞こえる

「ユノ、どこにいるの?」

「え?なに?」

「ど・こ・に・い・る・の?」

「音楽祭の生中継だよ?
テレビ観てなかった?」

「ごめん、観てなかった」

「あーちょっと待って」

ユノが移動したのか、音楽が微かに聞こえるくらいに小さくなった。

「アンティム出てるの?」

「ああ、出てるよ」

「音楽祭ってことは賞があるんだね」

「まあね」

「アンティムがいい賞をとれるといいね!」

「アハハハ。賞はもう決まってるよ。
出させてもらうだけでいいんだ。
大きなステージだから、みんな緊張してる」

「決まってる??うん、みんなの緊張ほぐしてあげてね」

「チャンミン…」

珍しく、ユノの甘えた声

「なに?」

「最近お前とキスしてない」

「キスどころか会えてもいないでしょ」

「ごめんな」

「仕方ないよ。今大事な時だろうからさ」

「俺の恋人は理解があって助かる。
だけどそれに甘えちゃいけないって、俺思ってるから」

「うん、ありがとう」

「あと少しで落ち着くと思う。
そうしたら、2人で旅行に行こう」

「ほんと?!」

「ああ」

「楽しみにしてる!」

「うん、呼ばれたから戻るよ」

「がんばってね」


理解ある恋人をなんとかがんばってるよ

寂しいけど……


ユノはチャンミンの寂しさが
どれだけ色濃く深くチャンミンに根ざしているか
わかっていなかった。

それから3日たっても、ユノは家に帰ることができなかった。
それどころか、まめに入れていた連絡も
思う通りに出来ずにいた。

チャンミンは久しぶりに夜うなされた

眠っているのかウトウトしているのか
よくわからない

次第に迫る闇

そして心の奥底にある恐怖

唯一の助けはチャンミンを捨てて逃げる



まって!

まってよ!

どこにいくの?

ぼくをおいていかないで!


ガバッとチャンミンは飛び起きた

汗びっしょりだ。


はぁはぁと荒い息をついて
チャンミンは自分の胸をおさえた

ユノと暮らし始めて、うなされることはなくなっていた。また、はじまったのは、ユノが最近いないせいだろうか。

フフッとチャンミンは笑った

それでも、逃げる相手の顔が出てこなくなった

よかった…ユノに感謝しないとな


時計を見ると夜中だった。

いけないと思っていても、思わずユノに連絡してしまった。
手が動いしてしまった、という感じだった。

しばらくしてから、ユノが出た

「チャンミン?」

「あっ!ユノ!ごめん、仕事してた?」

「うん、どうした?」

「いや、なんでもない」

「こんな夜中になんでもないってことないだろ」

「声が聴きたくなっただけ」

「怖い夢でもみた?」

「……うん」

「どんな夢?怖い夢は話したほうがいいんだぞ?」

「フフフ…そんなの聞いたことないよ…」

「いいから話してみて?」

「…………」

「ん?」

「…お父さんがね…」

「え?」

「お父さんが…僕を置いて行ったんだ」

「チャンミン?」

「………待ってって叫んだけど」

「それは…」

「………」

「昔の…話か?」

「ユノ、いつ帰る?」

「え?」

「旅行…行くでしょう?」

「あ、うん。どこに行くか、決めた?」

「僕が…決めるの?」

「チャンミンの行きたいところでいいよ?」

「じゃあ、世界一周」

「それは無理だけど…」
「僕が行きたいところでいいって言ったじゃん!」

突然チャンミンが興奮しだした。

「チャ…」
「旅行に行こうなんて口から出まかせじゃないか!」

「チャンミン、落ち着いて、出まかせなんて言ってない」

「帰ってくる気なんかないくせに!
どうして僕と一緒に住もうなんて言ったの?!」

「チャンミン!落ち着け」

「だって、ユノ、全然家に帰って来ない!」

チャンミンはスマホを投げつけた


「チャンミン?!」

スマホの向こうですごい音がして
それから何も聞こえなくなった。


ユノは呆然とした

いったい何があったのか

いや、俺が悪い

チャンミンと一緒にいたくて、半端強引に家に連れてきたのは俺なのに…仕事が忙しくなったとはいえ
寂しい思いをさせすぎた。

俺だって…毎日お前のところに帰りたい
その可愛い顔が見たくてたまらない

いつも俺にがんばってと労ってくれるチャンミン。

俺はそんなチャンミンに甘えていた。



それにしても…尋常ではないチャンミンの様子。
父親と普通の別れ方をしていないのだろうとは
思っていたけれど

そんな幼い日の記憶にうなされていたのだろうか。

思い立って
ユノは寝ているであろうテソンを電話で叩き起こした



チャンミンは泣きながら、画面の割れたスマホを震える手で撫でていた

「ユノ…ごめんなさい…ごめん」

はらはらと涙が次から次へと流れ落ちる

「ユノがせっかく…仕事がよくなってきたのに…」

よろよろと立ち上がり、子供のように声をあげて泣いた

「ごめんね…ユノ」

長い時間ひとしきり泣いて、チャンミンはやっと落ち着きを取り戻した

謝らなきゃ…きっとユノはびっくりしてるはずだ

でも、もう電話もかかってこない

呆れてしまったんだろうか。

こんな僕じゃダメだ…捨てられてしまう
こんなんじゃ、ダメだ…

チャンミンはスマホの電源を入れて見た。
画面が割れただけで、普通に使えるようだ

ふと偶然に
前に見ていた画面が出てきて
オーディションのリンクが開いた。

見えにくい画面で、チャンミンはひとつずつ残りの応募項目を埋めていった

涙をふきながら、すべてを入力し終わると
送信をタップした

オーディションに挑戦する僕。
ユノと同じように、なにかに向かってがんばる僕じゃないと。

はぁーっと大きくため息をついて
もう一度、スマホからユノに連絡をとってみた

チャンミンの耳には留守を知らせる案内が虚しく響く

項垂れて…そのままベッドに入った

隣に愛しいユノがいてくれたらいいのに



「チャンミン」

「………」

「チャンミン、チャンミン」

「ん……」

どれくらい時間がたった?

今…何時?

ふとチャンミンが目覚めると

ベッドのそばにユノが立っていた

え?夢?

「ユノ…?」

「ただいま、チャンミン」

「あ……」

ユノが優しく微笑んで、チャンミンを見下ろしていた

「あ…僕…」

「いいんだよ、なにも言わなくて。
俺も寝るから布団にいれて?」

「え?」

ユノはシャツを脱ぐと、そのままベッドに入ってきた

ユノの匂いだ

ユノの温度だ…

なんだか泣きそう


ユノはなにも言わずに
チャンミンを自分の胸に抱き込んだ

チャンミンの胸になんとも言えない感情が湧き上がってきた

泣き止んだはずの心が、また何かを求めて震えだす

僕があんなに興奮したから、心配させちゃったんだ


「ユノ…さっきは…ごめんなさい」

「謝るのは俺だよ、チャンミン」

「ユノ…仕事が大変なのに…僕…我儘ばかり言って」

チャンミンはしゃくりあげて泣いた

ユノはチャンミンの頭を撫でた

「寂しい思いをさせてごめんな」

「ううん、僕が…僕が全然ダメなんだ…」

「そんなことない。今夜は側にいるからもう泣かないで」

「仕事は?こんなところにいていいの?」

「明日一日、テソンにバトンタッチした」

「大丈夫なの?」

「明日は俺じゃなくてもなんとか大丈夫」

「僕が…興奮しちゃったからだよね」

「いいんだよ、俺だってもう限界にきてたんだから」

チャンミンが泣き顔のまま笑う

「帰ってきたくて、限界?」

「そう、お前に会いたくてもうダメ」

ユノはチャンミンをさらに強く抱きしめた。

「チャンミン、ごめんな」

「無理なことさせて、僕もごめん」

「お前はいつも聞き分けのいいことばかり言って。
ああやって興奮しないと本音が言えなかったね」

「………うん」

「明日は離れずに一緒にいよう
世界一周は行かれないけど」

「うん…ありがとう…ユノ 」


ユノの大きな温かい手が、チャンミンの頬を包む

そして、ユノの柔らかい唇がチャンミンのそれを塞いだ

お互いの会いたかった思いが行為に拍車をかける

チャンミンがどれほど寂しかったか
ユノがどれほど帰りたかったか

それを伝え合う言葉のない時間だった。





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