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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 11



シャワーを浴びながら
チャンミンは自分の子供っぽさにウンザリしていた

せっかくユノが忙しい中電話してくれてるのに
出ないで焦らそうだなんて

僕はなんてやつ

やっぱり急いで髪を洗って、早くユノに電話しよ!



ユノは全然応答しないスマホを睨みつけイライラしていた

スンホが抜けた後、軌道に乗ってきたメンバーたち、
アンティムの撮影がこのままだと明け方まで続きそうだ

メンバーの体調を気遣いながらも
ユノは多忙を極めていた

スンホが抜けた後のメンバーの頑張りは
もう半分意地のようなものがあったけれど

アイドルグループは大人数を良しとする風潮の中で
4人という人数は意外にも新鮮だった。

ユノは4人の個性を際立たせた

髪の色もそれぞれわかりやすく変え
メンバーのキャラ設定もはっきりとさせた。

金のかけられない弱小な事務所で
アイデアと、メンバーの素材の良さだけが武器だ。

それが時代の要求にマッチした


それに比べて、ギルの事務所に行ったスンホは精彩を失っていった。

能力もあるし、オーラもある。
プロデュースは最高のメンツを揃えてもらえる

それなのに、バラエティ番組に出るスンホは
話をするのがあまり上手ではなく、その場の雰囲気をこわしがちだった

歌やダンスはかなりいいものを持っていたけど
それだけでは人気は続かない
アーティストそのものに個性がなければ。

話が上手くないのなら、寡黙なキャラで演出するなど
手立てはあるだろうけれど、
正直、今の流れには合ってないだろう。

ユノはそんなことを考えながら、スンホを遠くから心配していた。


それにしても。

どうして今夜に限ってチャンミンは電話にでないんだ

いつもワンコール以内で飛びつくようにでてくれるのに。

そういえば、
誰かと飲みに行くとか言ってたな。

幼馴染としか聞いてないけれど、誰だったんだろう


ユノの中に不安がせり上がってくる
いや、不安というか目に見えない誰かへの怒り

チャンミンが電話に出ないほどに、話に夢中になるような誰か。

イライラは募る

もう仕事にならないから、スマホをしまおうかと思ったところに、着信の合図があり、ユノは慌ててタップした

耳元に可愛い声が聞こえる

「ユノ?」

「チャンミン!どこ行ってたんだよ」

ユノは話す口元を手で覆いながらスタジオを出て
屋外の荷物置き場へ移動した。

「ごめん」

「今日飲みに行くって、幼馴染とじゃなかったのか?」

「そうだよ」

「こんな遅くまで…」

「シャワー浴びてた」

「心配したよ」

「どんな心配?」

ユノの反応を伺うような声

「………」


ユノはため息をついた…


チャンミンはワザと…

わざと電話にでなかったんだな

きっと…寂しいんだ

構ってほしいんだろう



ユノはタバコを一本取り出して火をつけた

夜空にはもうすぐ満月になりそうな月が光る


「寂しいか?チャンミン」

「え?」

「ごめんな、ずっと1人にして」

「………」

「俺も会いたいよ。もう声だけじゃ足りない」

「……仕事、上手くいってるんでしょ?」

「仕事?」

「ユノが担当してる男の子たち、売れてるんだって聞いたよ」

「誰から?」

「さっきまで飲んでた幼馴染」

変な心配をしたけれど、
そんな会話で飲んでいたのか

「ああ、コマーシャルがとりあえず一本ね」

ユノは安堵のため息をついた。

「よかったね、ユノ 」

「うん、まあな。」

「ユノだから、出来たんだよ、きっと」

「まだまだだよ」

「ユノが、みんなに自分みたいな思いをさせたくないってそう思ったんでしょう?」

「………」

「僕はユノが昔、辛い時一緒にいなかったからよくわからないけど。
いやな経験も今のためだったって、ユノが思えるようになるといいな」

「………」

たぶん、ほかのヤツに同じことを言われたら
何にも知らないくせにと怒っただろう

実際、心配してくれた他人にそんな風に言ってしまったこともある。

だけど、チャンミンの言葉は
ユノの心の深いところに染み渡った


本当にそう思えるようになれそうな気がする

お前のおかげで…


「チャンミン」

「ん?」

「とりあえず、明日一回帰る」

「えっ?」

「連絡するよ、家にいる?」

「えっと、いないけど連絡くれたらいるようにする!」

「アハハハ、そっか」


スタジオの重い扉が開いて、スタッフがひょっこりと
顔をのぞかせた。

「ユノさん、チェックお願いしていいですか?」

「あ、はい」

「じゃあね!ユノ 、がんばってね」

「ああ」


月は明るくユノを照らしていた


上手くいっているとは言っても、そこは仕事だ。
楽しい事ばかりではない。

理不尽さの中でやっとの思いで息をして
なんとか生きている。

チャンミンの声を聞くと
ユノは気持ちがリセットされて癒される

肩肘張らなくていいんだと
ユノに穏やかさが戻ってくる。

今日こそはなんとか時間を作って
チャンミンを補充したい

渇望している心が叫ぶ




スタジオへ戻ると、メンバーがひとりひとり撮影をしている。

スタジオ内は雰囲気を盛り上げるための音楽と
シャッターを切る音が響いている

ディレクターがユノに近づいてきた


「いいね、この子たち」

「ありがとうございます」

「前会った時は、なんだか垢抜けないって正直思ったけど、あのコが抜けてよかったんじゃない?
なんだっけ、トレスタに行ったコ」

「スンホですか?」

「かな?彼だけちょっと異質だったからね」

「ソロ向きだったかもしれませんね」


ディレクターは呆れたようにユノを見た

「ユノくん、甘いよ」

「そう…ですか?」

「ソロで売れるなんて、そんな簡単にはいかない。
ギルはたまたま、成功しただけだよ。
あのスンホも自分のように行くと思ってるなら
ギルも甘いなぁ」


そうかも…しれない


そして


メンバーの撮影が終わった

もう明け方に近い

メンバーのメイクした顔はさすがに夜通しの撮影で
疲れ切って見えた

私服に着替えて、みんながユノの元に集まる


「今夜ははじめての歌番組の収録だ。
緊張するとは思うけど、これから家に帰って少し寝ろ」

「はい!」

疲れているのにみんなが元気に応える

ユノが考えに考えて名付けたグループ名「アンティム」

スンホが抜けて、4人のメンバーには本気が宿った


昔のMAD BLOODはギルが抜けてもがいていた

変に意地になっていた

それを思うと、アンティムの4人は前向きで力強かった

頼もしい

ユノは嬉しかった

そして

やっと呼んでもらえた歌番組

音楽データを送りつづけ、
「今月の話題曲コーナー」の仕事をなんとかゲットしてきた。

毎週、番組に出られれば、かなりの宣伝になる


ユノはメンバーを、合宿させているマンションに送り届けると、そのまま会社に戻らずに家に帰った。

車を走らせながら、チャンミンに連絡をする


「ユノ、運転しながらスマホとか危ないよっ」

「マイク使ってるから大丈夫」

「もう帰ってくる?」

「ああ」

「朝ごはん、まだだよね?
パンだけどいい?」

「いいよ、もうすぐだから」


ユノはドキドキした

チャンミンに久しぶりに会うのに
まさか心臓がこんなことになるなんて

俺はどうしちゃったんだろうな

まるでガキの初恋だ

ユノは苦笑した


部屋のキーを開けるや否や

チャンミンがダイブするようにユノに抱きついてきた

「ユノ、ユノ、ユノ!」

「アハハ…チャンミン…元気だったか?ん?」

「もう!こんなに1人にさせるなら
僕が浮気してもユノはなんにも言えないよっ!」

「ごめんな、ほんとに。いい子だったな」


昨夜の電話では、大人ぶって俺を励ますような事を言っていたくせに…

やっぱり無理させてたんだな

寂しかったんだ


ユノはぎゅーっとチャンミンを抱きしめた


「ユノ、今日はずっといる?」

「残念ながら午後から仕事だ」

「……そっか」

チャンミンの声がワントーン下がる

そりゃそうだよな
一緒にいられる時間があまりに短すぎる

「チャンミン、今夜テレビ局に一緒に来るか?」

「え?いいの?」

「ついてくるくらいなら、大丈夫」

「行く!」

チャンミンの顔が輝いた

「静かにしてるんだぞ。」

「大丈夫。スタッフのフリとかしてればいい?」

「そうだな。入館証だけ事務所でとってから行こう」

チャンミンははしゃいだ。

ユノはチャンミンの笑顔を見て安心しきったせいか
急激に眠気が襲ってきた

「ちょっと寝るね、チャンミンこっちへおいで」

そう呼んではみたものの、
チャンミンがベッドに近づいた時には
ユノはぐったりと眠っていた

チャンミンはそんなユノの寝顔にキスをした。



チャンミンにとって、大きな扉を開けることになる
そんな夜が近づいていた






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