プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

大好き〜完〜



白い猫を抱きしめながら泣くチャンミンの肩に
ユノがそっと手を置こうとした時だった

ガチャと目の前のドアが開いた


「うわっ!!」

ひょっこりと顔を出したシウミンに
ユノはびっくりして後ずさった

「ひっ!」

チャンミンもびっくりして、思わず抱いていた猫を手放してしまった。

白い猫はぴょんとチャンミンの膝から飛び降りて
シウミンの元へミャーミャーと泣きながらすり寄っていった。



「え?先生?大丈夫なの??」

チャンミンが恐る恐るたずねた

「なにが?」

シウミンは最初驚いた顔をしていたけれど
ユノの姿を見て、怪訝な顔になった。


「いや、あの…猫に戻ったのかと…」

思わずユノがそう言うと、シウミンは更に難しい顔をして呟いた

「チャンミン、まさか…」

「あ……僕……言ってしまったんです」

「ちょっと入って、2人とも」


明らかに不機嫌な声のシウミンは
さっさとクリニックの中に入っていった。


ユノとチャンミンはお互い顔を見合わせたけれど
ユノが頷いたのを合図に2人でクリニックに入っていった。

シウミンのクリニックは見事に中が空っぽだった。
どこかへ引越すのだろうか。


「もう何もなくて悪いね、そこの丸イスに座って」

ユノはそばに重ねられていたイスを2脚取って
並べて座るとチャンミンをしっかり抱き直した。

その姿を見たシウミンは苦笑した。


「何事?しっかり抱き合っちゃって」

「あの…僕…猫だったこと…話してしまって」

「だろうね」

「…俺がかなり無理に聞き出してしまって
チャンミンは…悪くないんだ」


「でも、約束を破ったのはそこの元仔猫ちゃんだね」

シウミンが怒った顔でチャンミンを睨んだ

「あ……」


「何か悪いことが起こるなら、罰せられるなら俺も一緒に!」

ユノはさらにチャンミンを抱きしめる

「なんなら、俺も一緒に猫になるってことはできませんか?!」

「なっ、何言ってるの!ユノ!」

2人を見比べたシウミンがため息をつく


「そんなに簡単に猫になったりできるなら
僕はとっくの昔に猫に戻ってるよ」


「え?」

「それって…どういうこと?」


「ほんとにもう…」

シウミンは頭を掻いている

「だって…人間になる時に…バレたら猫に戻るよって…ユノの言葉がわからない猫になっちゃうって…」

チャンミンも声がうわずる


シウミンがやれやれと言った風に自分も小さな丸イスを
持ってきて座った。

そして、ユノに微笑みながら話しかけた


「この子ね、あなたと話がしたくて人間になりたいって」

「………」


「あなたの事が大好きらしくてね、
あまりにピュアで…こんな話もちかけちゃったんだけど」

思わずチャンミンは下を向いてしまった


「だけど、この子、人間になったらまずここへ来なきゃならなかったのに、すぐあなたのところへ行っちゃって」

ユノはあの転がり込んできたチャンミンを思い出した


「人間として生きて行くために、必要な書類とか身分証明書とか用意していたのに。記憶喪失とか適当に話作り上げちゃって…大事な話もあったんだよ?」

「ごめんなさい…」


「あの…猫に戻るっていうのは…」

ユノがおずおずと聞いた


「だから!そんなに簡単に猫になったり、人間になったりできないよ。もう2度と猫には戻れません」


「えっ?!」

「え?じゃあ…」


「あんな思いして人間になったのに。
簡単に戻れるわけないでしょう?
覚悟して人間になったんじゃないの?」


「そしたら…」


「チャンミン!俺たち…」


「ぬか喜びしないで」

シウミンは2人を睨んだ


「この事が世間に知れたらどうなると思う?」


「え……猫が人間になるって話を?」


「誰も信じないと思うでしょう?
でもね、中には信じるやつもいるんだよ」

「………」

「信じるやつに限って面倒くさいやつが多くてね
学者だったり、科学者だったり」

シウミンはユノをまっすぐに見た

「そういう奴らは何をすると思う?」

思わずユノはチャンミンを抱き直した。

「調べるんだよ、この子の身体を全部。
脳から何からね。頭を割って中に電極を入れられて」

チャンミンも怖くなってユノに抱きついた


「ウソなんてすぐにバレる。身分証明もとりあえず静かに生活するためのもの。専門機関で調べられたらすぐにわかる」


「だから、猫に戻るって戒めで言った?」

もうユノは喉がカラカラになって声も掠れていた。


「そういうこと」


シウミンのその一言にユノは全身からガクガクと力が抜けて、膝から崩れてしまった

「ユノっ!」

チャンミンがユノを助け起こそうとして
その頑丈な肩をつかみ顔を覗き込んだ


「ユノ……」


ユノは泣いていた…その凛々しい顔を安堵の涙で濡らしていた。


「よかった……」


「…ユノ…」

ホロホロとユノはその場に泣き崩れた…


「よかった…ほんとに…」


ユノはうわずった声をあげて
泣き崩れる


シウミンは安心したような笑みを浮かべている

この2人なら大丈夫


「ユノ…」

チャンミンはユノのそんな姿に胸が詰まった

ユノはこんなにも自分を思ってくれてた
全力で僕を守ろうと…気を張ってたんだね…

いろいろ振り回してしまったのは僕なのに


「ユノさん」

シウミンが泣き崩れるユノの肩に手を置いた

「…はい…」


「これだけは覚えていてください
猫が人間になるなんてこと、ほんとに特別なんですよ。
途中で挫折する猫がほとんどなんです」

「挫折って…」

「死んじゃうんですよ…耐えられなくてね」


チャンミンはその時のことを思い出して、ギュッと目をつぶった。


「だけど、ユノさん、この子はあなたに大好きだと伝えたくて、それだけの想いで、信じられないような荊の道を1年もかけて歩いてきたんです。あなたの元へ」

「……はい…」

ユノは自分を支えようとしているチャンミンの手を握った。

「あなたがチャンミンを手放したら
この子はもっと酷い目に合うんですよ、
たとえこの子を嫌いになったとしても、絶対にこの秘密を漏らすことのないように」

「嫌いになんて、なるわけないじゃないですか」

「ユノ…うっ…うっ…」

「その秘密を知ってるからと、チャンミンを脅すような事も…」

「そんな事!するわけないでしょう!」

ユノは握りこぶしを握って立ち上がった

「はいはい…わかってるけど、一応ね?」


「チャンミンは、人間になってからも、俺のことばっかりで…ほんとに…俺を愛してくれて…」

「はいはい」

シウミンは笑って椅子から立ち上がった


「コーヒー淹れるから飲んで行って。
後でもう一回、人間として生活するためにいろいろとやり直しね」

シウミンがキッチンへ入って行った


「ユノ…」

「チャンミン…俺たち…変わらないって」

「そうだって!ユノ!よかった…」

「よかった…ほんとに」

「ごめんね」

「だけど、お前があのチャンミンだって
なんか信じられるから不思議だな」

「だって、本物だから」

「そうか、そうだよな」

ユノはチャンミンの頭をクシャクシャと撫でた

まるで猫をあやすように



シウミンが3人分のコーヒーを持って戻ってきた

「コーヒーのセットだけ残して置いてよかったよ」

「そういえば先生はここを閉鎖してどうするの?」

「ドイツへ行くんだよ」

「ドイツ…ですか?」

「こういうチャンミンみたいな猫が2匹ほど現れたらしくて、手伝いにね」

「そう…なんですか…」

「ま、人間になりたいって、どれほどの覚悟なのか確認してからだけど」

「チャンミンはそれほどの覚悟だったんだな」

ユノは改めてチャンミンを愛おしそうに見つめた。

「それほど愛し合ってるなら、人間でいるのもいいかもね。僕は猫に戻りたいけど。」


「先生はどうして猫から人間に…」

そう聞こうとしたユノをチャンミンが止めた

「それは…ユノ…だめ」

シウミンがコーヒーをすすって少し微笑んだ

「僕は野良猫でね、近所のお婆さんから毎日ご飯をもらって生きていたんだ…」

「……」

「お婆さん、お金がないみたいでね、どうにかしてやれないかと思って…人間になって稼いでやろうって…
だけど死ぬ思いで人間になってみたら、もう亡くなってた」

「あ……」

「気楽な猫に戻りたいよ、この事をバラして猫に戻れるならとっくにバラしてる」

「せっかく人間になったのにですか?」

「それほど人間って寂しくて大変だ。
猫の方が全然いいよ」

「そんなこと…ないです」

チャンミンが呟いた

「少なくとも…僕は…このまま人間でいたいです」

「そんなにいい?人間て」

「ユノと、たとえば今日は寒くなりそうだねとか
ご飯が美味しいねとか…そんななんでもない会話、
それがとっても幸せで」

「チャンミン…」

「それだけでもう何もいらないです」


ユノがチャンミンの手をとって微笑んだ。


シウミンも微笑む。

「それはよかった。
僕も少しはいいことしたのかな、と思えるよ。
この紙袋にこれから人間として生きていくための書類が入ってます。持って行って」


チャンミンが手渡された袋の中を一生懸命確認している。

シウミンは、そんなチャンミンを優しげに見つめるユノに声をかけた。


「ユノさん」

「はい」

「チャンミンを大事にしてやってください。」

「はい、命かけて守ります」

「この子、きっとモテるからね」

「はい?」

「いや、なんでもない
末永く幸せにね」

シウミンは笑った


そうして、ユノとチャンミンは連れ立ってシウミンのクリニックを後にした。

もうチャンミンを抱きかかえなくても大丈夫なはず。
だけど、ユノはしっかりとチャンミンの肩を抱いていた。

ふと見るとさっきの白い猫が、近所のお婆さんから
餌をもらっていた。


それがまるで、かつてのシウミンとお婆さんに見えて
チャンミンは胸が切なくなった


自分もかつて、ユノに拾われ可愛がられ
やっとの思いで人間になった。

言葉が交わすことができると
時には誤解を招いたり、喧嘩をしてしまうかもしれない。

でもやっぱり大好きだと、いつもユノに伝えたい

これからも…ずっと

毎日言おう


アパートには、ユノが切り取ったハート型の新聞紙が
無造作にばらまかれていた

"大好きと伝えたい時は
このハートの上に乗って

大好きだと鳴くんだよ"


2人はそのハートを見て笑った
なんだか照れ臭かった




それからいくつもの季節が過ぎた



ドンへのところにはまた仔猫が増え

風の頼りにスジンは政治家の卵かだれかを
捕まえて結婚したとか

あの猫だった駅員さんはいつのまにかいなくなっていた


ソンジュはオーディションでたくさんの芸能プロダクションの目にとまり、それからしばらくして華々しくデビューした。

ユノはソンジュの振り付けや、ソンジュによって人気がでたダンススタジオの経営に大忙しだった。

チャンミンはそんなユノを相変わらず美味しいご飯と
可愛い笑顔で支えている。


しかし…

ユノにしてみれば、いろいろと面白くない事が続いていた。

チャンミンがあまりに普段ヒマなので
自分の友達を通じて、ギターを習わせていたけれど
見事にこれがチャンミンのツボにハマり、その上達ぶりは凄かった。

今は個人で生徒を持ってレッスンをしているほどだ。

ユノはいつも急いで帰ってくる

なぜなら、家ではチャンミンが生徒と2人っきりなのだ。

生徒が可愛い女子だろうがキリッとした青年だろうが
すべてがユノには面白くない

生徒の誰もがチャンミンに恋心を抱いているようにしか
見えないのだ。

その上、チャンミンはピアノを習いたいと言いだし
少しはレッスンが減るからいいかと思っていたのに。

いろいろな場所でピアノがあると
ちょっといいですか?と目を輝かせるチャンミン

長身でスマート、黙っていると男前で、笑うと可愛い
そんなチャンミンが静かにピアノを弾きだすと
寄ってくる寄ってくる

うっとりとした女性たちと、よからぬ事を考えているであろう男性陣

ユノは気が気ではなかった。

少しばかりオトナになったチャンミンは
そんなヤキモチを焼くユノを可愛いと思えるまでに成長した…


考えたことをそのまま口に出していた幼さは
少しばかり影を潜めた。


僕は…


僕は、ユノに真実を伝えたあの頃を思い出すと
あまりに幼い自分が恥ずかしく思える


だけど…

今日も僕はユノにキスをして
大好きと言って送り出す


ユノは僕がギターのレッスンがある日は
いろいろと小言を言って出かける

ヤキモチをやくユノは可愛い

そんなあなたは、ますます成熟した男の色気に溢れ
ダンスの生徒さんを男女問わず虜にしてるくせに

自分はまったく気づいてないんだから


ふと、リビングを見ると

壁にはあの日、ユノが泣きながら切り取ったハートの新聞紙が額装されて飾ってある

あの日の2人の涙で印刷は滲み
少しばかり歪んだハートだけれど

これは僕の宝物


幼い僕は覚悟したんだ

猫に戻ってしまったら

あのハートの上に乗って毎日大好きだと言おうと。


ユノにウソをつきたくなかったあの時の決心を
僕は今でも誇りに思う。


そして、押しかけるように
一方的にユノの生活に入り込んだ僕を
ユノはこの人生ごと受け入れてくれた

そのことを僕は一生感謝して過ごす


凄いことなんて起こらない毎日でいい
このまま、大好きだと毎日言えたらそれでいい


僕は変わったようで変わらない



今日はシウミン先生のクリニックがあったところを通って駅に行こうかな

夕陽の差す、しずかな道

懐かしい道だった。


クリニックは跡形もなかったけれど

そこにはあの日の2人が見える


泣きながら、僕をしっかりと抱きかかえるユノと
そんなユノに抱きついている自分が
クリニックを訪れている

離れてしまう恐怖に怯え
泣いていた2人

それでも僕はユノに誠実でいたかったのだ。

それからもずっと、ユノにウソをつかないことは
僕のポリシーだ。


大好きだよ、ユノ

これからも、ずっとずっと一緒だからね



〜完〜





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「大好き」
読んでいただきまして、ありがとうございました。
そして、たくさんの拍手や楽しく心温まるコメントに
感謝の言葉もありません。

ラストは結局猫に戻らなかったチャンミンです。

特にファンタジックな事が起こりませんでしたが
期待ハズレではありませんでしたか?

このラストは最初から決めていました

2人は静かに幸せなのだと思います。
ほんとに羨ましい…


最終回がアップして、みなさまに読んでいただいてる時間、きっと私は名古屋へ向かう夜行バスに揺られてウトウトしてるかと思います。

このお話は、掲載しているツアーパンフのチャンミンの画像に惚れ込んでしまい、ぱーっと思いついたお話で
一気に10話くらいまで描いてしまいました。

まだこの世に生を受けて3年ほどしかたっていないチャンミンはとても幼くてピュアですが
最終回の最後で、聡明で知的なチャンミンに成長しています。

それでも、ユノへの愛は変わらず
真っ直ぐな気持ちもそのままに、それを誇りに思うチャンミンです。

お話自体は少しコメディの要素も入れたかったのですが
なかなか難しいですね。

自分も読んでくださった人もフフッと微笑むような
お話が描けたらいいな、と思います。
勉強いたしますwww


お話を描いている最中には
悲しい出来事がありました。

日本でデビューしてから
私のSHINeeの入り口はジョンヒョンでした。

こんな状態でライブに行っていいものかと
悩みながら行った東京ドームで
「ジョンヒョナ」と叫んだユノ、言葉に詰まってしまったユノからマイクを変わったチャンミンの心に染みる挨拶
悲しみに寄り添ってもらえたような気がして
癒されました。


このところ急に寒くなって来ましたね
私も先週寝込んでしまいました。

インフルエンザも猛威をふるっているようです。
みなさまもどうかご自愛ください

それでは、また。

百海














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