プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

大好き 30



しばらくは穏やかな生活に見えた。

チャンミンは毎日、ユノのために家事と料理をして
ユノも2人の生活のために働いた。

でも以前と比べると
2人の生活は変わった

それは当初の熱が落ち着いてきて
それなりの穏やかさが生まれている、というのではない。

緊張感は逆に高まっている

ユノはあたりさわりのない会話しかしなくなった。
今日は天気がいいとか、そんな話。

以前はダンスについて熱く語ったり
チャンミンの話す事をひとつも聞き漏らしたくない
そんな姿勢で会話をしていたユノ。

懐の深い男になろうとするあまり、余裕を持とうとするその気持ちがそれ以上チャンミンにハマることを拒んでいた。

チャンミンも、記憶喪失の話だとか、シウミンや駅員の話、そこには触れたくないことから
あたりさわりのない会話になってしまう。

チャンミンは以前のように「大好き」と甘えることもなくなり、
隠し事をしているという後ろめたさから
ユノに遠慮して自分の気持ちを言わなくなった。

それでも笑顔で生活する2人はどこかよそよそしく
お互い本音を言わず、まるでなにかの物語を演じているような毎日だった。

そんなピリピリとした生活は2人にとって次第にストレスになっていく。

ユノはチャンミンを抱かない日が増えていき、
気がつけば、もうほとんどそれはなくなっていた。


チャンミンはその事をとてもさみしく思っていたけれど

ユノが時にチャンミンの寝顔にキスをしながら
1人苦しんでいることは知らなかった。


「どうして、俺に何も話してくれない?」


チャンミンの寝顔に切なく話しかけるユノは
まったくもって、気持ちに折り合いなどついていなかったのだ。

チャンミンを大きく包み込もうとすればするほど
愛しさは増し、自分の情けなさにうんざりした。

より寛大な男になろうとするその努力は空回りをしていた。

チャンミンはその向こう見ずにも見える純粋さを失っていき、ユノは男としての自信を失っていった

ユノは仕事に没頭した。
せっかく大好きなダンスの仕事ができるようになったのだ。

本腰入れて一生懸命仕事をしよう
そうすれば、きっとチャンミンの事ももう少し余裕を持ってみてやれるだろう。


相手を思うあまりに生まれた歪みを
ユノは距離を置く事だと勘違いした。

刺激せず、そっとしてあげることが愛情だと
チャンミンも勘違いをした。

次第に広がる溝に
2人とも気づくことができなかった。


ユノは仕事だけに集中していくにつれて
今まで見えていなかったものが見えてきた

男子高校生のクラスの中で
1人光るものを持った生徒がいた。

イ・ソンジュ

頑張っている生徒だというのは知っていた。
レッスンが終わっても、ユノのところへ来ていろいろと質問をしてきた。

「もう少しやりたいので、小さい練習室を借りてもいいですか?」

そんなソンジュの練習をみてやったりしていた。

けれど、このごろソンジュだけが特別に光ってみえる

たぶん、成長期も手伝い、そのビジュアルが見事に変わってきた。
元々可愛い顔はしていたけれど、輪郭はシャープになり
甘い顔立ちに色気のようなものが感じられる

そのスタイルも手足が美しく伸び
見事なバランスの体躯

そしてソンジュのダンスにはストーリーがあった
その表現力は天性のものだ。

ユノはソンジュの気持ち次第では
プロになれるのではと思い始めていた

ある日、レッスンが終わったころ
ユノの方からソンジュに声をかけた。

「ちょっと話できる?」

「えっ?僕ですか?」

汗に光るソンジュの顔が輝く

ユノはロビーの自販機でドリンクを買うと
ソンジュにひとつ渡した

「ありがとうございます」

「座って、時間とらせないから」

「あ、はい」

「ソンジュは最近すごくよくなったね」

「ほんとですか?」

「うん、とてもいいよ
ダンスは将来どう考えてるの?
趣味で続けていくのか、もしくはプロになりたいとか」

「プロになりたいです!」

即答だった。

その希望に輝く瞳は
かつてユノも持っていた輝きだった

「そう、もしそうだとしたら、
今から準備をしたほうがいい。ご両親には相談してるの?」

「あー僕はその…」

「?」

「その…隣町に教会があるの、知ってますか?」

「ああ、知ってるよ」

「そこの施設で…その…」

自分と…同じなのか…

親に捨てられ、施設で育ったユノ


「そうなんだ、施設じゃソンジュはお兄さんだな。
小さい子の面倒は大変だろ」

ユノはなんてことはない、という言い方をして
ソンジュを驚かせた

みんながこの話をすると、驚いて慌てたりするのに
この人はまったく動じない

「俺も施設で育ったんだ」

「……先生」

「ここのレッスン費は、あれか?
"未来の基金"から借りている?」

「そ、そうです…先生…も?」

「俺は大学の学費をそこで借りてるよ
サークルでダンスをしていたんだ」

「だけど…先生ならプロ間違いないのに…」

「どうかな。俺は準備が遅かった」

「スカウトはあったでしょう?」

「あったけど、大学を辞めるわけにもいかなかったし
ま、そこまでの情熱がなかったと言われても仕方ない」

「そんなことない…そのあたりの事情は…僕、わかります」

「そうか。だよな、わかってくれるよな」

ソンジュとユノはそこで一気に打ち解けた

「もし、その気なら力になる。
オーディションもいくつかあるから、受けてみてもいいと思う。」

「やってみたいです!」

「なら、決まりだ。明日からレッスン後に
1時間くらい、個別でみてやる」

「あ…」

「ダメか?」

「余分にお金は…出せなくて…」

「そんなのいいよ。でも、勉強はおろそかになるなよ?」

「いいんですか?…」

「明日からな」

「ありがとうございます!」

ソンジュの輝く笑顔に
ユノは最近なかった気持ちの高揚を感じた





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