プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

大好き 28



ユノは翌朝、ほとんど眠っていない状態で起きなければならなかった。

ベッドではまだチャンミンがぐっすりと眠っている

顔色は少しよくなったようで
額に手を当てると、昨日より熱が下がっている

ユノの手の冷たさに、チャンミンの眉毛がピクリと動いたので、急いで手を離した。

ユノはそっとベッドを出ると、洗面所で身支度をした。

今は、好きなダンスの仕事をしているせいか
以前のような出勤前の重い気分はない。

それでも肉体労働の部分は多くなったので、今日みたいに寝てない状態での出勤はつらい。

ユノは顔を洗いながら考えた。

チャンミンの寝顔をみて
自分はどう感じたか

スヤスヤと眠るその姿を、相変わらず愛おしいと思えた。
ユノはそんな自分に安心した。
今日も何も変わらない。
チャンミンはチャンミンで
俺の気持ちも想いも、何も変わらない


そう思っていたのに…


カタッと音がして振り向くと
チャンミンがノソノソと起きて来た

「おはようユノ、ごめん、朝ごはん…」

「いいよ、まだ熱あるんだから寝てな」

「昨日よりね、かなり良くなったよ」

「いいから、寝てな」

「じゃ、コーヒーだけでも、ね?」

そう言ってふんわりと微笑むチャンミンを見ていたら
ユノの中にまたあの黒い雲が湧き上がって来た

「いいから、寝てろって!」

「………」

思わず大きな声が出た

「……」

チャンミンが固まって、まるで息をしていないかのようだ。

チャンミンは思った…
こんな事が、前にもあった…ユノに怒鳴られちゃったこと。
そう…あれはスジンさんのハイヒールを噛んでしまった時だ。
あの時は本当に僕が悪くて…

だけど今日はどうして?

「………」

あ…昨日のこと…か…

「ごめん…ユノ…」

「…………」

「僕……」

「謝るのは俺だ…大きな声だして…ごめん…」

ユノは怒鳴った自分に落ち込んだ…
イライラしてあたってしまった…

「………」

「また夜に高熱でも出されるとさ、俺、今は身体使う仕事だから……その…」

俺は…何を言ってるんだ

まるで、チャンミンに熱を出されたら
やっかいだ、みたいな言い方

「なんて言うか…」

チャンミンが明らかな作り笑いをした

「そうだよね、ごめんね。
また熱が出たら迷惑かけちゃうよね」

「………」


やっぱり早めにはっきりさせたい
ユノはそう思った


「チャンミン…」

「なに?」

チャンミンが縋るような視線でユノを見る
ユノの口からどんな言葉が出てくるのか不安なのだろう


「俺にどうして言えない?」

「……」

チャンミンが息を飲むのがわかった

「昨日の事だけどさ、どうして、俺に本当の事が言えないかな」

「………」


悲しそうな瞳がやっぱり愛おしくてたまらない
ユノの表情が少し和らぐ


「どんな事でも受け止めるよ。約束する。
それを理由に俺はチャンミンを嫌いになったりしない」

ユノの目が真剣だ

チャンミンをまっすぐに見つめている

一歩、ユノがチャンミンに近づいた

「俺はお前に隠し事はしない。
言わなくていいと思う事は言ってないかもしれないけど、例えば、過去の恋愛とかさ…
だけど、チャンミンが知りたいと言えば、なんでも話すよ」

チャンミンの表情が強張る

「………」

「………」

「僕は話せない」


「じゃあさ、どうして話せないか、それだけでも
言ってくれないか」

「言えない…話せない理由も…言えない」

「俺が信用ならない?」

「そうじゃないけど…でも言えない」

「じゃ、これだけ教えて。
チャンミンは本当に記憶喪失?」

「……」

「……」

「ユノは……嘘や隠し事は嫌いなんだよね?」

「ああ、大嫌いだ」

「………」

「………」

「記憶喪失は…ウソです…」

そう言って、チャンミンは下を向いてしまった

「……チャンミン」

「……」

「何かあるなら、力になるよ…」

「………」

「警察に追われてるなら、命かけて匿う。
どんな罪を犯してたって、俺が受け止める」

「………」

ユノは切ない表情でチャンミンを抱きしめた

「チャンミン…お前を愛してる…」

その言葉に、ユノの胸の中でチャンミンがギュッと目を閉じた

「だから、俺を信じて…全部話してほしい。」

「………」

ユノがチャンミンの答えを待っている
身体を離して、伺うようにチャンミンの顔を覗き込む

ユノ…言えないんだ…
僕はあなたの側にいたいから…

傷つけて本当にごめんね


「言えない…」

「………」

「………」

「そう…」

「……ごめんね」

「いいよ、しつこくて悪かったな」

「僕…」

「もういいよ、じゃあ行ってくる」

「ユノ…あ…いってらっしゃい」


ユノはリュックを背負って部屋を出た。


毎朝、この「行ってらっしゃい」でどれだけ幸せになれただろうか。

「お帰り」を行ってもらうことで、どれだけ満たされたか。

純粋で素直で可愛くて、俺だけを見つめてくれたチャンミン。

揺るがないはずのチャンミンへの想いが
少しだけ色褪せる

かつて、スジンへの想いが冷めていったのとは
まったく違う感情だった。

チャンミンに裏切られたようなこの気持ちは
スジンの浮気がわかったあの日とは
比べようがないほどショックだ。


チャンミンはひとりベッドにもぐって思い悩んでいた

どうしよう

たぶん、すっかりユノの信頼を失ってしまった。
だけど、どうしても言えないよ

だって、猫に戻ってしまったら
もうユノと…

なんとかして、ユノが大好きな気持ちは本当だって
わかってもらいたい

毎日、がんばるしかない…
気持ちを伝えよう、せっかく人間になったんだ。

多少フラつく身体を奮い立たせて
チャンミンは部屋の掃除をし、そして買い物に出かけた

今、自分がユノのために出来ること

小さい事だけど、美味しいご飯を作って
笑顔にしてあげる事だ。

チャンミンにはそれしか思いつかなかった

牛スジ肉が目に付いた。

はじめてだけど、じっくり煮込んだビーフシチューはどうかな。
今から煮込めば、ユノが帰ってくる頃には
きっと美味しいシチューが出来そうだ。

チャンミンは少しテンションが上がってきた。

野菜も買い込み、早速シチューにとりかかった。


ユノはダンスを始めると、昨夜の疲れもどこかへ行ってしまった。
やはり、ダンスが好きなのだ。

その日、いくつかのレッスンが終わるとドンへから連絡があった。

「たまには飲みに行かないか?仕事の様子も聞きたいし
チャンミンのノロケ話でも聞いてやろうかと思って」

「うーん、そうだな」

ドンへには仕事の様子は話さないとならない。
転職についてよく相談に乗ってもらっていた。

それに…チャンミンの話も聞いてもらおうか

「ああ、実は聞いてほしい話もあってさ、
居酒屋の個室とっておくよ」

ユノはドンへとの電話を切ると、すぐにチャンミンに連絡をした。

「はい!」

「あ、あのさ、今夜ドンへと呑んでくるから
夕飯はいらない」

「えっ?いらない?」

ユノは時計を見た。
まだ夕方にもならない時間だった。

「まだ作ってないだろ?」

「……うん」

「熱は?」

「もう…大丈夫…」

「あんまり大丈夫じゃないみたいだな」

「………」

「…チャンミン?」


電話の向こうで、チャンミンは鍋の中を見つめていた
この美味しそうな匂いが、ユノに伝わるといいのに。

「……ん?」

「ほんとに大丈夫?」

「うん、全然大丈夫」

「じゃあ、今夜は早く寝て」

「はい」



電話を切ると、チャンミンはため息をついた





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

あけましておめでとうございます。
百海です。

楽しいお正月を迎えられたでしょうか?

今年もマイペースにはなりますが
切なく甘い2人のお話を描いていけたらと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。
検索フォーム
ブロとも申請フォーム