プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

大好き 27


チャンミンはユノの表情に驚いた

整ってはいるけれど、元々甘い顔立ちとは言い難いユノ
怒るととても冷たい印象になる

チャンミンは思わずヘラヘラと微笑んだ

「ユノ、あのさ…大きな病院に行こうかと思うんだけど」

「………」

返事はなかった。

「でも…寝てれば…治るかな…うん」

ユノはなにも言わず車に戻った

チャンミンもフラフラと後をついて行き
助手席に乗った。

「家に帰ろ?ね?」

「………」

ユノは真っ直ぐ前を向いて
感情のない、いや、完全に怒った顔で運転をしている。

結局、車は大きな病院の急患入り口に入って行った

やっとユノが口を聞いた
けれど、それはチャンミンにではなく、窓口の人にだった。

「急患なんですけど、保険証などはないんです。
事情は誰に話せばいいですか?」

「そうですか。とりあえず受付か医師に相談してもらえますか」

「ありがとうございます」

テキパキと事をすすめ、ユノはチャンミンを抱きかかえるようにして、ロビーへと向かった。

チャンミンがよろけた時、

「大丈夫か?」

ユノがひとことだけ口をきいてくれた…

チャンミンは嬉しくて、少し微笑むと
ユノは慌てたように目を逸らした。



チャンミンはされるがままにロビーのソファに座らされ
ユノはダウンを脱ぐと、チャンミンの肩にそれをかけた。

暖かいユノのダウンにチャンミンの胸が悲しく軋む。

ユノを怒らせている

でも、チャンミンにはどうすることも出来ない。
人間になって、なぜ先にシウミン先生の所に行かなかったのか。

そんな事を今更言ったところで始まらない。

ユノはロビーを横切る看護師を呼び止めて話をしている。

小柄な看護師に、長身のユノは腰をかがめて話をしている。その後ろ姿。広い背中。

頼もしくて大好きなユノ。

あんなに怒っていても、結局はチャンミンのために
いろいろとしてくれる。

チャンミンはふと、スジンの事を思った。

出世したそれなりの男と結婚したかったスジン。
だから、ユノの保険として、ほかの男とも付き合っていたけれど、
結局はユノが良くていつも戻ってきた。

その気持ちはわかる。

だって、ユノより素晴らしい男なんて
この世にいるのだろうか

自分はユノが本当に優しい人間だってことを
この身をもって知っている。

寒い夜、捨てられていた仔猫を思わず拾い上げたユノ。
自分の損得は考えない心

僕はユノが大好きだ。

それはずっと変わらない

昔も今も、そしてこれからも…


ほどなくして、チャンミンは診察室に通された

ユノがぴったりとチャンミンにくっついている。

医師は簡単に喉や胸の音を確認すると
ま、風邪ですねと、大雑把な感じで診断をした。

「それより」

それより?

「記憶喪失だとか?」

「あ…」

「今日は当番で急患ですけれど
専門はこっちなので、よかったら聞かせてください」

そう言って医師は自分の頭をコツコツと叩いてみせた。

「えっと…」

「どこまで覚えてますか?
一番古い記憶を話していただけますか?」

「一番古い記憶は…」


気づいたら、駅にいたんだ…

身体中が痛くてたまらなかった

やっとの思いでなんとか歩いて…


チャンミンの顔が険しくなった

その前の事は思い出したくもない…
つらい記憶

猫から人間へと、心と身体がバラバラになるような日々

チャンミンはギュッと目をつむった。

「先生…」

助け舟をだしてくれたのは、ユノ。

「生活の中で何かを思い出すようなことがあれば
またご相談に来ますので、今日はどうか…」

チャンミンは悲しくてたまらなくなった。
記憶喪失だと言った日から、いろんなウソをつかなくてはいけなくなってしまった。

「そうですね。それはいいとしても、警察には言わないとね。
捜索願が出てるかもしれないから」

これからも、いろいろな嘘をついて生きていくのだろうか。

大好きなユノにも…

「いやです!」

チャンミンが突然大きな声を出した

「警察とか困ります。
僕は…このまま、ユノの側にいたいんです」

「ユノって、この方?」

「そうです。もうほっておいてください!」

「チャンミン」

ユノがたしなめた。

「もう、そういうのイヤなんです。
誰かに調べられたりするのはイヤなんです」

チャンミンは自分の両膝をつかんだ。

「君は何か調べられることに恐怖を感じてるようだけど」

「誰だってイヤでしょう?」

「チャンミン…わかった。もういいから。」

ユノがチャンミンの手を握りしめた

「だから、調べたりしないで、ね?ユノ」

「………」

「お願い、もう帰ろう、帰りたい」

「………」

「お願い…」

「……わかった」


医師はやれやれと言った顔をした。

「ま、情緒が不安定なのも、記憶障害によるものと考えられます。改めて診察に来てください」


それからチャンミンは少し点滴を打ってもらい
楽になったところで病院を出た。

トボトボとユノの後ろを歩くチャンミン

2人とも黙っていた。

車に乗って家に帰ろう。
ユノと僕が住む小さなアパートへ


僕はまだ生まれて3年くらいしかたっていないけど
人間になる1年でいろんな事を学んだつもり。

だけど、わかったのはただひとつ

誰かを大好きだと思うパワーってすごいって事。

ユノの事を思って、あれだけの苦行に耐えることができた。


車窓の外を眺めたら、遠くの空が白んでる

「ユノ、もう仕事行かなきゃだね」

「ああ」

「ごめんね、疲れたまま仕事行くことになって」

「………」

「ユノ…」

「………」

「ユノは、嘘とか隠し事が大嫌いだよね」

「ああ、大嫌いだ」

「その嘘が大嫌いな気持ちと、僕を大好きだと思う気持ち、どっちが勝ってる?」

「………」

残酷な質問だね、チャンミン…

「………」

「……大好きな気持ちが…全然勝ってる」

ユノの表情は険しい


こんな葛藤をユノにさせているなんて可哀想だ。

どうしたらいいんだろう



「チャンミンは?」

「ん?」

「俺を好きだという気持ちと、隠し事をしたいという気持ち、どっちが勝ってるの?」

「僕は!」

「………」

「僕は…その気持ちはひとつなんだ」

「意味がわかんないよ」

「ユノを大好きと思う気持ちと、隠し事をしたいという気持ちは同じことなんだ」

「………」

「違う…えっと…隠し事はしたいんじゃなくて」

「隠さなきゃならない事があるって意味?」

「そう」

「………俺のために?」

「僕の…ために…」


フッとユノが笑った

「ほんとにチャンミンは、なんていうか…」

「………」

「隠し事をしている、なんて堂々と言わないんだよ、普通はね」

「………」

「あの男たち、だれ?」

「先生と駅員さん」

「いや、そうじゃなくて…」

「………」

「チャンミンにとって、どういう男たち?」

「………言えない」

「………」

「言えないんだ、ごめん、ユノ」


ユノはため息をついた

ここで、適当な嘘をついてくれたらいいのに。

捨て猫を拾って見てもらったとか
駅で落し物をした時知り合ったとか。

そう言ってくれたら、俺は少し穏やかな気持ちになれた

俺はたしかに嘘をついたり、隠し事は嫌いだ
だけど、大人になれば相手を思いやる気持ちから
嘘をつくことだってある。

あまりに幼くて、正直なチャンミン
そこがたまらない魅力でもあるけれど

その純粋すぎる正直さは、時に氷の槍となって
相手の心を突き刺す

透明すぎる堅い槍

それさえ溶かすほどの度量が
俺にあるだろうか






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百海です。
いつも読んでいただいてありがとうございます。

みなさま年末はいかがお過ごしですか?
私は相変わらずバタバタと過ごしています。

お話ですが、本当は年末年始に向けて
明るく楽しいお話であればよかったのですが
流れ上、この時期にだんだんと切ない雰囲気になってしまいました(^_^;)

実はお話は先まで出来上がってはいるのですが
お正月には相応しくなさそうなので
明日、1月1日から1月3日までおやすみすることにしました。
1月4日から再開しますので、
よろしかったらまた遊びにきてください。
お待ちしてます!

今年は去年よりペースは落ちましたが
どのお話も大好きで、描きたくて描いたものばかりだったので、満足な1年でした。
この拙い文章で好き勝手に綴っているお話を
読んでくださって本当に感謝しています。

来年もまたどうぞよろしくお願いいたします。
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