プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

ブリキの涙(21)



「昔の事を思い出したら…家族や友達が恋しくなるだろ」

「どう…かな…」

「幸せだったんだろ?チャンミン」

「たしかに家族の仲は良くて、友達からも慕われていました」

「そんな生活が懐かしくなるはずだ。」

ユノは落ち着かない様子で、しきりに自分の膝をトントンと指で叩く。

「俺といたってこの生活は俺と2人きりで、大して面白くもない。せいぜいパン屋に行くくらいで…」

「パン屋?」

「それくらいしかしてやってない。
旅行に行ったって、バーベキューも2人でやってんだぜ?」

「ユノさん…」

「チャンミンは俺との生活しか知らないから
だから満足にやってきたかもしれないけど」

「思い出したら…違う?」

「違うだろ?」

ユノは泣きそうな顔をしてさらに落ち着かなくなった


「プログラミングしてくれ、思い出した昔の記憶はリセットしてほしい。」

「ユノさん…」

「チャンミンは俺の所有するAIロボットだ。
決定権は俺にあるはずだ」

「……ユノさん…」

「博士にはそう言ってくれ
プログラミングが終わったら俺はチャンミンを連れて帰る」

「わかりました…」

ユノはイライラした…

それはミノの態度にというわけではないし
チャンミンが無かったはずの過去を思い出したからでもない。

自分にイライラしているのだ。

心の狭い、臆病な自分。

偉そうな事を吐く割には、
チャンミンを手放したくなくて無理強いしている。

金と力に任せて…


昔から、欲しかった金と社会的な力

それがあれば自分は強くなれる。
そう信じて1人がむしゃらに頑張ってきた

そしてやっと手に入れたそれらが
今、自分をさらに孤独にしようとしている

チャンミンと一緒にいることの幸せを知ってしまった今、また1人になることはもうユノには考えられなかった。


博士が神妙な顔つきでチャンミンを連れて部屋に入ってきた。

チャンミンは初めてここで会った時のように
少しぼーっとしてるような感じだ。

「プログラミングしました。
思い出した過去についてはおそらく今のところ消えています。」

「わかった。じゃこれで帰るから」

ユノはチャンミンの手を引き、部屋を出ようとした。

「チョンさん」

博士が少し大きな声でユノを呼び止めた

「なんですか?」

「また、思い出すかもしれない。
申し訳ないが、そこについては予測できない。」

「……」

ユノはため息をついた。

「そうなったら、また連れてきます」

ユノがチャンミンの肩を抱くと
チャンミンが嬉しそうにユノを見た。

俺の事は忘れていない

俺だけを愛するチャンミンが戻ってきてくれた。

駐車場に歩いて行く2人を
ミノが追いかけてきた

「あの…」

「まだなにかあるか」

「リセットはしましたけど、初期化したわけではないので」

「どういう意味?」

「チャンミンはユノさんとのことは忘れてません」

ユノが安堵のため息をそっとつく

「ああ。いろいろありがとな。」

「それと、ふたつの人格の記憶をもつのは
チャンミンに負担がかかります。今日倒れたみたいに。だから何かあったらすぐ来てください」

「わかった。」

チャンミンは不思議そうにミノを見つめると
ミノは悲しそうに目を伏せた。

ユノはチャンミンを助手席に乗せる

ミノは自分のことを思い出してほしかったんだろうな。

ユノにはそれがわかっていたけれど
自分のエゴを通した。

チャンミンは俺のものだ
俺といるのが幸せなんだ


「ユノ…」

「なに?」

チャンミンに話しかけられてユノはドキッとした。

「明日はパスタランチですよ?覚えてますか?」

「あ…」

チャンミンがニッコリと可愛く笑う

「あたりまえだ、覚えてるよ」

ユノはホッとして、チャンミンにキスをした。

「今夜は何にする?」

2人で今夜の夕食を考える

チャンミンは栄養を計算し
ユノが店を吟味する

またはどこかでいい食材をみつけては
2人で料理をする。

そんな毎日が戻って来るんだ。



夜になり、ユノはシャワーを浴びたチャンミンをベッドに寝かせた。

「今日は疲れただろ」

「僕…ごめんなさい」

「なにが?」

「ユノにGPSをつけたんです」

「知ってるよ」

「最近、ユノは僕にウソをついて他の誰かと会ってるから」

「あー、うん、ごめん」

「知りたくて、ユノが誰となにしてるのか」

「だけどね、ほんと仕事なんだよ。」

「今日は僕のことで、あのチェ・ミノって人に会ってたんですね」

「うん、そうだよ。最近具合が悪そうだったからね」

「ユノがウソをつかなければ
具合なんて悪くならないんですよ!」

「わかった、わかった、ほんとごめん」

ユノはチャンミンを抱きしめた

「充電器つけてください、ユノ」

「了解しました」

ユノがふざけた声で答えた

そしてチャンミンを抱きしめながら
その後頭部にある差し込み口を指で探した

たまにチャンミンは甘えて、充電器をつけてという。

ユノにとっては、チャンミンが機械だと認識せざるを得ないその行為がキライだった。

でも、今は…チャンミンが機械であることが嬉しかった。

ユノはチャンミンの後頭部をまさぐり
差し込み口を手探りで探し当てると
キスをしながら、充電コードを差し込んだ

「チャンミン…」

「なんですか?」

「ずっとそばにいてくれ、俺から離れないで」

「?」

「うまく表せないけど、俺、感謝してるよ。
お前と出会って…俺の人生は変わった…」

「どんなふうに変わりましたか?」

「うまく言えないけど…
もう、お前がいない生活は考えられないんだ」

「ユノ…」

チャンミンはユノの頬をそっと撫でた

「……」

「僕は機械ですけれど、あなたが離れてと言っても
離れたくないんです。いいですか?」

ユノの瞳が水を湛えて揺れる

「もちろん」

ユノは心の中で、消されてしまったチャンミンに謝った

ごめん、お前の楽しかった今までの人生をなかったことにするなんて、こんなことして本当にごめん。


勇気のない臆病なライオンを許してくれ






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