プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

湿度(8)



遊園地の日

理由のわからない重苦しいユノの気持ちとは裏腹に
とてもいい天気だった。

ユノが車を出して、3人を乗せて行く

助手席には当然のようにソンヒが乗り込み
後部座席にはミナとチャンミン

ユノの耳は後ろの2人の声を聞こうと研ぎ澄まされ
ソンヒの言葉はほとんど聞こえないと言ってよかった。

ミナとチャンミンのさりげない会話が
その親密度を物語っているようで、
なぜかユノは変な汗をかいていた。


「キンパなんか作っちゃった。」

「は?なんで?遊園地っていったら、ホットドッグだよ」

「だよねーなんか変なとこ張り切っちゃった」

「いいよ、今回はミナのキンパ食べてやる」

「じゃ、私はホットドッグ食べるから
キンパお願いね」

「なんだよそれ」

ケラケラと楽しそうな笑い声

ユノの受け取る印象とは全く別の感情が
2人には宿っている。

チャンミンとミナは同志だった。

お互い報われない想いを抱える者同士
この世で唯一、自分の苦しみをわかってくれる相手

遊園地に着き、4人はエントランスから賑やかな夢の世界に入る

ソンヒはもう自分の想いを隠すこともせず
ユノの腕にぶらさがるようにして歩く

その後ろをチャンミンとミナ

ユノが何かと気にして後ろを振り返っている


ミナの口数が少なくなって行くのをチャンミンは感じた。

「ミナ」

「ん?」

「ちょっと辛いんじゃない?」

「フフ…かなり…」

「……」

チャンミンは少し速足になって
2人に追いつく。

「ねぇ、ヒョン」

「ん?どうした?」

「あのさ、お昼までそれぞれ2人で過ごさない?」

「えっ?!」

「いいわね、ミナたちもいっつも保護者つきじゃね?」

ソンヒはそう言って意味ありげにユノを睨んだ。

ユノはあまりいい顔をしなかった。

「せっかく4人で来てるのにさ
それなら、2人で来たって同じじゃないか」

「あ、あの、大丈夫ですよ
4人で回りましょう」

ユノに気をつかったミナが、慌てて言った

「お昼までなんだからいいじゃない。
僕だって、ミナと2人きりになりたいんだよ」


珍しくチャンミンがユノに刃向かった
しかもその理由はミナ


ユノは震えた


「チャンミンたら」

ミナがたしなめるようにチャンミンのポロシャツの裾を後ろで引っ張る

その様子に、さらにユノの顔が引きつった

2人きりになりたいと
それがミナとチャンミンの想いなのか?

女の子と2人になりたいなんて、そんなこと…
チャンミンは言ったことがなかったのに


「だったら好きにしたらいい。
2人でいたいなら、ずっと2人でいればいいさ」

「ユノヒョン…」

「何怒ってるの、ユノ」

ソンヒも不審な顔をしている

「あ、あの…私も4人で回りたいわ
そうしましょう、チャンミン」

「僕はミナといたいんですよ」

チャンミンが言い終わらないうちに、とうとうユノは歩き出してしまった

ソンヒが慌てて追いかける
「もう、ガンコなんだから」

「ユノさん!」

ミナの声は届かない


「チャンミン、ユノさん怒っちゃったわ
ごめんね、私が辛いなんて言ったから」

チャンミンは握り拳をギュッと握りしめながら
俯いていた

「チャンミン…」

チャンミンはうっすらと微笑み顔をあげた。

「いいんだよ、ミナ。
僕もあのままじゃ辛くて」


「あ…そうか…そうよね」

「これでいいんだと思う。僕もユノヒョンから少し離れて楽しまないとね。」

「じゃあ今日は楽しみましょう
いつも思い悩んで厳しい日々なんだから」

「そうだね、じゃまずキンパ食べよう」

「えーほんと?じゃあ私はホットドッグ」

「なんだよー」


側からみたら、お似合いの素敵なカップルだった。

それぞれに辛い現実を生きている同志などとは
想像できなかった。


ユノは自己嫌悪に陥っていた

一体自分はなんてやつなんだ。


「俺さ、ガンコ親父だよな、まるで」

「そうよ、バカみたい。
ミナたちだって、うまくいきそうなんだから
上手くお膳立てしてあげないでどうするのよ」

「うん…」

「ユノはチャンミン君に対して異常な執着よ」

「可愛いんだよ、ほんとに」

「そうは言っても、もう立派な社会人なんだから、いいかげんウザがられるわよ」

「だよな…」


チャンミンがいなくなった遊園地は
ユノにとって一気に色をなくしたようだ。

さっきまでは、今日はどんなに楽しい一日になるだろうかと。

昨日も車を洗いに行ったり
スーパーで車の中で食べるスナック類をチャンミンを思いながら買ったりした。

チャンミンの好きなチップスや
チャンミンが食べてみたいと言っていたミントのキャンディ

見つけた時は心が踊った
そんな俺はバカだ…

いきなり自分と離れて女の子といたいなんて言われて

怒っている自分はまったくもって理不尽だ。

弟離れ…

ダメなヒョンを許してくれ

ユノは空を見上げて苦笑した



ソンヒに対して申し訳ない気持ちもあって
ユノはなんとかテンションを上げるように努力した。

もうチャンミンと来たという事は忘れて
ソンヒと楽しもうと努力した。

お昼近くになって、そろそろお腹も空いてきた。

「どこか入ろうか」

「お腹空いたわね、私、もう遊園地はいいわ。
ミナたちはまだいるんだろうから、後で迎えに来ることにして、どこか食べに行く?」

お昼まで2人ずつで、というチャンミンの申し出も
なんだか自分がダメにしてしまったのもあったし

チャンミンは自分たちとお昼を食べようなんて気はないのだろうし。

このまま、帰るまで別々でもいいんだろうな。

どうせチャンミンたちは、もうミナの手作りのキンパでも食べているのかもしれない。

寂しい気持ちは否めない。

でも、これ以上チャンミンに執着すると、まわりにも迷惑だ。

いいかげんにしろよ、俺…


「ああ、そうだな。ここは出るか。」

そうやって、2人でエントランスに戻ろうとした時だった。


「ユノヒョーーーン」

その声にユノは振り向いた


大きな観覧車を背景に

チャンミンがにこやかな笑顔で手を振りながら
ユノを呼んでいた。


チャンミン……


その姿をみて

ユノの心に何かがストンと落ちた


ああ、チャンミン

そういうことか


この魂の奥からこみ上げるような感情は

そうか

俺は

チャンミンが好きなんだ





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