プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

湿度(7)




「な、何を言うの?」

「気にしないでチャンミンさん」

「気にしないでって…」

チャンミンはひどく慌てた

自分の気持ちを誰かに話した事はない

それをほんの2時間一緒にいただけで
チャンミンの心を見破り

それをなんでもない事のように言うなんて

この子は一体なんなんだ


「私も…同じなんです」

「え?同じって?」

「ソンヒオンニの事が好きなの」

「へっ?」

チャンミンの返事にフフッとミナは笑った。


「つらい…ですよね…」

諦めたような、すべてを飲み込んだような
暗く寂しそうな瞳

それでもニッコリと微笑むミナは
とても強く見えた。

「あ…」

チャンミンはなんと言っていいかわからなかった。

完全に見透かされてしまった心
そして同じ想いに苦しむがゆえ、それを理解してくれると言うのか。


他人に話したことのないこの想いを
いきなり言葉にはできず、
チャンミンはどうしていいかわからなかった。

「ミナさんは…辛い?」

「辛いですよ、すごくね」

「あ…だけど…そんな風に笑っていられるなんて」

「無理してるんですよ、当たり前でしょう」

そう言ってケラケラと笑うミナ


その声にユノが振り返った。

チャンミンとばっちり目が合う


この人への想いを
昇華することのないこの想いを、もしかしたら
少し楽にできるかもしれない

チャンミンは思わず目を逸らした
そして、ミナを見て微笑んだ

今度はユノが目を逸らす。

「気が合ったみたいね、あの2人」

ソンヒがユノに耳打ちする。

「え?」

「仲よさそうじゃない、よかったわね」

「……」

「ミナはいい子よ」


よかったじゃないか?
そんないい子と出会えて。

よかったんだ…

ユノはそんなつもりはないのに

まるで自分に言い聞かせるように
なんども心で唱えた。


2次会は洒落た居酒屋だった。

たわいない話で盛り上がり
そろそろ帰ろうかという頃になった。

「今度4人でどこか行きませんか?」

ミナが提案した。

「うん、いいね。遊園地とかどう?」

チャンミンも乗り気だ。

瞬く間に、遊園地に行く話がまとまり
その夜はお開きになった。


「じゃあ、これで。
僕はミナを送って行きます」

チャンミンより頭2つ分も小さいのではないかと思われるミナもぺこりと頭を下げた。

可愛く微笑ましいカップルだった。

「気をつけてね、チャンミン君、よろしくね」

「はい。おやすみなさい」


ユノはずっと無言だった

怒ったりしているわけではない
言葉がうまく出てこないのだ

なぜだかわからない

堪え難い嗚咽のようなものが
胸の奥からせり出してくるようだ

2人の後ろ姿を見送った。

背の高いチャンミンが、ミナと話すのに顔を傾ける

その光景を見ていると、ユノは吐き気を覚えた。

じっとりと湿度の高い重苦しい空気に息が出来ない


「これからどうする?」

ソンヒが期待に満ちた目で訴える

「これから?」

「ま・わ・り・を・み・て」

そう言われて見回すと
いつのまにかホテル街に来ていた。

「たまにはこういうのもいいと思わない?」

「今夜はダメだ、なんだか飲み過ぎたみたいで」

「………」

「ごめん」

「ま、いいけど」

半分怒ったようにソンヒはユノの腕に自分の腕を絡めた。

そのホテル街を抜けようとした時だった。

電信柱の影にユノは人の姿を見た


それは2人の男が抱き合ってキスをしている姿だった。

!!!

2人ともサラリーマンだろうか。
激しく想いをぶつけ合うようにキスをしている。

ユノはその光景を見て衝撃を受けた

頭の中に閃光が走ったような気がして
動悸がとまらなくなった。

「うわ、行きましょ」

ソンヒがユノの腕をぐいぐいと引っ張っていく。

「気持ち悪いわね、男同士よ?」

「………」

ユノは何も答えなかった。



チャンミンは小さなアパートの前までミナを送った。

「ありがとう、チャンミン」

「いいよ、今夜は楽しかったよ」

「私もよ。チャンミンがいてくれて、平静を保てたっていうか。とにかくよかった」

「それ、僕も感じてた。
自分の気持ち、誰にも話したことないからさ。
わかってくれる人がいるって、いいね」

「悔しいけど、オンニとユノさん、お似合いだったわね」

ミナが寂しそうだった。

「うん、そうだね。ソンヒさんはしっかりしていて、少し抜けてるヒョンにはぴったりだ」

「ユノさん、抜けてるの?」

「うん、ああ見えてね、部屋とか片付けなかったりして」

「そうなんだ、チャンミンが掃除してあげてるの?」

「今までは…ね」

「オンニが現れるまでは?」

「…そう」

「そうか、辛いね」

「うん…」

「側にいたいでしょ?ユノさんの部屋、掃除したいよね」

「………」

「ごめん、きついね」

チャンミンはフッと微笑んだ

「…側に…いたいよ…」

「うん…そうよね」

「できることなら、ね…」

「その思いはとりあえず、飲み込むのよチャンミン」

「わかってる…」

凹んでいくチャンミンに罪の意識を感じたのか
ミナが急に明るく言う

「来週は楽しみにしてるわよ」

「え?あ、遊園地?」

「ええ、ストレス発散しましょ、ね?」




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