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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

カナヅチの島(7)




ユノッ!!!!

チャンミンの叫び声が聞こえた気がして
店の外に飛び出したユノだった。

車の後部座席から、あの酔った男と、チャンミンの脚が絡まってはみ出しているのを見た瞬間、
ユノは冷静さを失った


ユノ、ユノと無我夢中で自分の名前を呼んでいたチャンミン。

究極の恐怖を感じた時に、まず俺が浮かんだのか。

光栄すぎて、どうしたらいいんだ。


誰もいなくなった駐車場で、
ユノは泣き止まないチャンミンを抱きしめていた

「うっ…ひっく…えっ…」

「怪我はない?」

チャンミンが自分の耳を触ってみせた。

「耳がどうかしたか?殴られた?」

「うっ…耳を…えっ…舐められ…」

「は?!」

ユノの頭に一気に血が上った

舐められた?

「体も…うっ…えっ…触られて…」

「あいつ、ぶっ殺してやる」

思わずそんなセリフが口から出た

自分らしくない、と思った。


腕の中で転んだ子供のように泣きじゃくるチャンミン

愛おしくてたまらない


そんな言葉しか見つからないけれど
もっと深いものがユノの中にはあった。


チャンミンは、いつもなら決して惹かれたりしない種類の人間だった。

世間知らずのカッコつけ坊っちゃん
薄っぺらな中身、見かけだけの綺麗さ

それでも

トラックの荷台で気持ちよさそうなその笑顔が
ユノの心を捕らえて離さない。

いろんな世界を教えてやりたいなと
思ったのは確かだ。

小さな価値観に雁字搦めになっている感があって
解放してやりたい思いがあった。

チャンミンの右手はがっしりとユノの肩を脇の下から抱え込み、肩に顔を押し付けて泣いている

左手は控えめに、ユノのシャツの胸元に添えられていた。

チャンミンはあまりの恐怖に
小刻みに震えていた

たまらなくなったユノがその左手をとると
身体を離されると思ったのか
ユノの手をふりほどき、左手はユノの背中にまわった。

よりしっかりと抱きつかれてしまった


どうしよ

キスしたい


耳を舐められて泣いてるヤツに
キスなんかしちゃダメだよな

ユノはチャンミンの髪を優しく梳いた。
柔らかいくせ毛が指に絡まる

この島に来てから誰も抱いていないことに今更気づき、ユノはため息をついた。

このままでは、自分もさっきの男と同じになってしまう。


「チャンミン?」

「ん?ひっく…うっ…」

「帰ろうか、送っていくよ」

「いい」

そう言ってチャンミンは首を振った

「いいって、よくないだろ?
シャワーを浴びて、今夜は早く寝るといいよ」

「ユノの家にいく。こんな顔で家に帰ったらお母様が心配するし」

お母様、か。

顔を覗き込めば、あどけない泣き顔に甘えた声

いつものチャンミンと全然違う
これが本当のチャンミン?ヤバすぎるだろ

「ウチはマズイよ」

「どうして?」

「いや、なんていうか」

理性が崩壊しそうです、なんて
それこそカッコ悪くて言えない。

困ったな

「じゃあ、俺ん家でシャワー浴びて
落ち着いたら帰るんだぞ」

こくりと頷くチャンミン。

真っ暗なビーチに白い波が立つのが見える。

夜の海を見下ろしながら、ユノはしっかりとチャンミンの肩を抱きながら歩いた。


波音だけが聞こえている


まだ嗚咽の治らないチャンミンは
震えながらユノの腰にしっかりと手を回す。

トボトボと堤防の上を歩いた

ここはユノとチャンミンが出会ったあの堤防

よろめくチャンミンをユノは抱き直す

「しっかり歩かないと、また落ちるぞ。
泳げないんだろ?」

「うん」

小さな子供のようで心のヘンなところがくすぐられる。

どうか、そのウルトラ素直モードを解除してくれ…

ユノはため息をついた。


チャンミンがやっと顔をあげた

「大丈夫か?」

こくりと頷いて、海からの風に髪がなびくと
濡れた瞳と濡れた長いまつげが月明かりに光る

その澄んだ瞳には暗い海が映る

泣きすぎたのか鼻が赤い。


「僕さ、ばかみたい」

「ん?」

チャンミンが遠くの海を眺める

「かっこつけて、こんなジャケットなんか着て」

「いいジャケットじゃないか」

「こんなのの助けがないと、あんな店、入れないんだよ」

「大丈夫だよ。
そんなに怖れる店じゃないだろ?」

「そんなことない」

「MAISON の入店チェックにパスするほうが
よっぽど凄いぞ?」

「違うよ、MAISON なんて服しかみてない」

「そんなことないさ」

フワフワとした髪が海風になびく
少し厚めの唇が拗ねたように突き出している


何が気に入らないの?

そんなに可愛くて綺麗なのに。

自分に自信を失ってるみたいだけど

なんにもわかってないね、お前は


「チャンミン」

「ん?」


そう言って、あどけない顔で俺を見る
泣きはらした瞳

そっとその頬に触れる

少し驚いたような顔をしたね。

でもごめん…もうダメ

「お前はそのままでいいんだよ」


ユノはそっとその可愛い唇にくちづけた

チャンミンはユノのシャツをギュッと掴み
そのくちづけを受け入れる

甘く優しく

ユノのくちづけが次第に深くなっていくと
チャンミンの喉の奥から、声にならない声がした




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