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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

カナヅチの島(5)




母がよく冷やしたカモミールティを作ってくれて
小さなミントを浮かべてくれた。

「ミントだ」

「そう、これもね、庭師の方が植えてくれて。
どんどん増えるから料理にどうぞって。」

「ふぅん」

ユノが植えたミントをつまんで口にいれてみた。

歯磨きのニオイ

そして噛むと苦い


「今日はどこかへお出かけするの?」

「ああ、ちょっとね。」

「明日はウェディングの写真を撮るから
日に焼いたりしないでね」

「わかったよ」


チャンミンは意を決して
ユノの家へ行こうと思っていた。

行く口実はある。

服を返してもらい、ユノの服を返す

きれいにラッピングしたユノの服を
チャンミンは少しドキドキしながら手提げのペーパーバッグにおさめた。

車で行こうと思ったけれど
なんだかそれは違うと思い、自転車で行くことにした。

坂を降りてビーチ沿いの道を自転車で軽快に走る

気持ちいい

いつもどこに行くにも車で
こんなふうに風を感じることはできない

オープンカーならそんなことないのでは?
と思われるけれど


そこは大きく違うんだ


ユノの家の玄関に自転車を停め
木戸を開けてみる

少しドキドキする


そこにはこの間と変わらぬユノの部屋


誰も…いない…

ふと見ると、パソコン机の上に
チャンミンの服が畳まれて置いてある

まるでさっさと持っていけと言ってるようだ。

ここでこれを持って帰ってしまったら
もう会う口実がない。

でも、待ってるのもなんか変だし
っていうか、それはカッコ悪いからしたくない。

うーん

どうしようかな。


チャンミンは持って来たペーパーバッグを机の上に置いてバルコニーを覗いてみた。

燦々と降り注ぐ太陽が眩しく
目の前に広がる海は真っ青だ。

ふと、足元を見ると、
小さなピンク色の花が地を這うように咲いていて
その上にハート形の葉っぱが生い茂り
白い花と黄色い花が生い茂っている

きれいだな

海の青さとどれもがぴったりだ。

バルコニーから海へ出られるようになっていて、
ちょうどその境のところにそれらの花が植えられている。

小さなスペースに
まだなにも植えられていない部分があった。

これからデザインするのだろうか。

土が肥やされている状態のようだった。

僕だったら、なにを植えるかな

じっと考えているチャンミンの耳には
波の音だけが穏やかに聞こえていた。


のはずが…


ハッとして振り向くと

ユノがバルコニーを覗いていて
チャンミンを見てニヤニヤしている。




ユノ…

チャンミンは照れくさそうに
でもムッとした表情で頭を下げた。

「ほんとに鍵かかってなくて
勝手に入ってきちゃいました」

「いいんだよ、全然」


ジョンが部屋の奥から飛び出して来た

「あ、ジョン」

ジョンはチャンミンを見るなり
尻尾を振りながら飛びついた


かわいいな

「ウハハハハ…僕に会いたかった?」

ジョンは狂ったようにチャンミンの
いたるところを甘噛みする。

その様子をユノが腕組みをして、
眩しそうに見つめている


大きな犬と戯れるチャンミンは
まるで子供のように素直で可愛い

ピンクのチェックシャツがよく似合っている
白い短パンから伸びたまっすぐな細い脚

眉が下がってしまう可愛い笑顔に
ユノは見惚れていた


「あー僕に会いたかったんだねージョン!」

チャンミンがクシャクシャとジョンの頭をなでた。


「やっと来たね、待ってたんだぜ」

やっとジョンから解放されたチャンミンは
ユノの声にまた無表情になった

「服を…とりあえず…」

「何か飲んで行ってよ」

カーキのタンクにベージュの短パンから
日に焼けた脚が伸びている

そんなユノがジョンを伴ってキッチンへ行った。

チャンミンもその後について部屋へ入った。


「どこへ行っていたんですか?」

「ジョンの散歩だよ、前のビーチで少し遊んだ」

「ふぅん」

「そこ座って」

この部屋でひとつしかない椅子に
チャンミンは座った。

用意された飲み物は、先日パラ・トリアムでだされたオレンジ色のカクテルに似ている

「あ、これって」

「チャンミンも飲んだだろ?
美味しかったから、マスターに頼んで譲ってもらった。」

「あのマスターが自分で作ってるんですよ?
そんなに何本もないのに譲ってもらうなんて」

「チャンミンが美味しそうに飲むからさ
服を取りに来た時、出そうと思って計画してた」

「け、計画って…」

落ち着いたユノと違って
チャンミンは慌てていた。

なんとか呼吸を整えて
チャンミンは反撃に出ようとした。

「そういえば」

「なに?」

「セリはどうでしたか?」

「どうでしたかって?」

ユノはグラスの中を覗き込みながら
なんでもないように言う。

「お持ち帰りしたんじゃないんですか?」

皮肉を込めて言ってみた


ユノはグラスの肌に浮かぶ水滴を
その綺麗な指ですくいながら真剣な顔になった

「下品な言い方するんだな」

チャンミンはドキッとした

「そんな…そんな言い方、みんなしますよ?
ユノこそ先生みたいな言い方」

「気になるの?チャンミン」

「は?」

「ヤキモチ?」

チャンミンは慌てた
心の中をかき乱されたような気がして焦る


「独占欲を刺激された?」


ユノがゆっくりと近づいてくる


「何言ってるんですか!
どうして僕が男のあなたに独占欲なんか!」

ユノはニヤッと口角を片方だけあげて微笑む


「セリに独占欲、って言ったつもりだったんだけど」


!!!

どうしよう!!


チャンミンはガタガタと椅子からブザマに立ち上がり
机の上にあった自分の服をつかむと、急いでユノの家を出た。


どこをどうやって歩いているのか
チャンミンはよくわからなかった

心臓がバクバクと音をたてている


失態だ!
僕の失態だ!

もうダメだ



ちょっと待って

チャンミンは歩きながら少しずつ冷静さを取り戻していた。


所詮、ユノなんて
賭けの対象じゃないか。

僕は結婚するんだよ?

ユノは勘違いをしてカッコつけてるけど
後でバカをみるのはユノなんだ



チャンミンが出ていったドアに向かって
ジョンが寂しそうな声を出した

「行っちゃったねぇ、チャンミン。」

「クゥン」

ユノはチャンミンが置いて行ったペーパーバッグを見た。

綺麗にラッピングされて飾りのリボンまでついている

ユノはクスクスと笑った

「なんだこりゃ。リボンまでついてる」

寄ってきたジョンの頭をユノはクシャクシャと撫でた。


「チャンミンは可愛いねぇ。
そう思わないか?」

ジョンが嬉しそうに尻尾をふる。






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