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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

カナヅチの島(4)




朝陽がかなり暑くなってきた。

チャンミンは仲間たちとバーベキューに出かけようとしていた。

ウヨンが運転するランドクルーザーがチャンミンを迎えにきた。
肉や飲み物は業者に手配をさせてある。

身軽な格好で車に乗り込むと
チャンミンの家に見覚えのある軽トラが入って行く

あ!

ユノの車だ。

なんで?

チャンミンは固まった

洋服を届けに来てくれた?

まさか、だって家がどこにあるかなんて…


そうか

僕のウェディングに携わっている庭師って
ユノのことなんだ。


ユノも3ヶ月しかこの島にいない、と言っていたし。

そうなんだ…



車内では相変わらずユノを落とす賭けの話で盛り上がった。

チャンミンはセリに言った

「ユノって、僕たちのウェディングに関わってる人だったみたい」

「うそー?!」

「庭師だからさ、彼」

ウヨンがニヤニヤしながら
こっちを向く

「大丈夫。誰もお前たちのウェディングの話はしないよ。業者にもご法度だろ?」

「たぶんね、今は」

「最後にあたしたちが結婚するなんて知ったら
ちょっと楽しそうね」

「え?」

「チャンミン、バカにされてるみたいだったから、
たいしたタマだと思われるわよ」

「そう…かな」


二股かける余裕

そんなのをチラつかせるのもいいかもしれない


あなたが思ってるより
僕はたいしたヤツなんですよ?

「アタシは今夜から作戦にでるからね」

「え?」

「ユノさんが出入りしている店、調査済み」

「え?どこ?」

「ライバルに教えるわけないでしょ」

「なんだよ、正々堂々とやろうよ」

「いやよ、そんなのコソコソやるに決まってるじゃない。もしかして、私が彼に惚れ込むとでも?」

「はぁ?セリが誰かに惚れ込む?
そんなことあるの?」

「フフフ…私のことをよくご存知で。
大好きよチャンミン。やっぱりあなたは私のパートナーだわ。」

完全に上から目線のセリだけど
昔からこうだから、なんとも思わない。

面倒くさいことは人に任せたい自分は
セリといると楽だった。

でもそれは愛や恋ではないことなんて
お互い百も承知だった。


でも

ユノの行きつけの店ってどこだろう

チャンミンはバーベキューの間中そのことを考えていた。


家に帰ると、母がとても機嫌よくて。

「おかえりなさい。
今日ね、早速庭師の方がいらっしゃって
バルコニーの下にいろいろ植えていただいたのよ」


「庭師…」


「ウェディング用よ。だんだん育っていくと
バルコニーからお花が覗くようになるんですって」

「庭師ってどんな人だった?」


「それがね」

母の顔がパッと華やいだ。

「ステキな人でね!ほんとにカッコイイのよ」

「そう…」


やっぱりユノだ

「どんな感じの人?なんていうか、
どんな店に行きそうな人?」

「店?」

「そう、夜なんか、どんな店が合いそうな感じ?」

「そうね…MAISON じゃちょっと子供っぽいかしら」

「……」

「パラ・トリアムなんてどう?」

「なるほど」


チャンミンには少し敷居の高い大人の店

格調の高さならクリアできるけれど
その敷居の高さはそういった類いのものではなかった。

ある程度経験を積んだ、でも十分に若くて鋭い
そんな大人の男

チャンミンに持ち合わせていない
そんな雰囲気が必要だった。

それでもなにも考えずチャンミンはその店に向かった。

短パンにタンク、そして麻のジャケットを羽織った
このジャケットが少しは自分を大人に見せてくれるのでは、と期待して。

そう考えると、ユノのMAISON でのスタイルは完璧だったな、と思った。

あくまでもカジュアルで
でも昼間のそれではなく、これからお酒を飲んで
楽しもうとする大人の男だった。


チャンミンはパラ・トリアムのドアを開けた

「いらっしゃいませ?」

ダンガリーシャツの髭を生やした店主が出迎えた

「おひとりですか?」

訝しげにチャンミンを見て言った

「そう」

できるだけ、落ち着いた感じでクールにさらりと。

「失礼ですがお酒を飲める年齢?」

「は?身分証明書かなにかいるの?」

「失礼いたしました。こちらへどうぞ」

チャンミンのイラだちなど気にしないような店主は
にっこりと微笑みチャンミンを案内した。

まったく、なんだよ
バカにしてさ。

フロアはとても静かで、優しくジャズが流れていた。

カウンターにセリとユノがいる。

心臓がドキドキした。


ユノがチャンミンに気づいた

「チャンミン?」

その声に、ユノの隣でカクテルを飲んでいたセリがこちらを向いて驚いたような顔をした

「やだ、チャンミンじゃないの」

ユノがセリとチャンミンを交互に見る

「2人知り合い?」

「そうよ、遊び友達」

セリの視線は自分のカクテルに戻った


「こんばんは」

チャンミンができるだけ落ち着いて挨拶をすると
店主が気をつかった

「ご一緒されます?」

「いえ、1人で飲みたいので」

「じゃ、こちらで」

チャンミンはカウンターの隅に案内された

ユノがこちらを見ている


なんだよ、女に興味がないとか言って
セリに引っかかってるじゃないか


なぜかイライラした

賭けなんてどうでもよかったけど

この後、この2人はどうするんだろう

そして自分は…

セリが作戦に出るときいて、なにも考えず来てしまったけれど、自分はどうするつもりだったんだろ


バカみたい…

なにやってるんだか。

なにも注文しないのに
店主がチャンミンに淡い色のカクテルを持って来た。

「ウチで栽培してるオレンジでつくったリキュールなんです。試飲してもらえませんか?」

「あ、いいんですか?」

「他にも注文あれば。
サーモンが合うのでお持ちしようかと思いますが
いかがですか?」

「ありがとう。サーモンお願いします」

いい店だな、と思った。


さすがユノ。


MAISON なんか紹介して
恥ずかしい…


俯くチャンミンの横を
セリとユノが横切った。

店を出るのか。


気になった。2人はどこかへ行くのだろうか。


あのユノの家に?

大きなヤシの木のある、あの家に?

壁に頭をつける形で大きなベッドがあったことを
思い出した。

そんな…

チャンミンはバッと席を立った。

「すみません、帰らなくてはいけなくて。
お会計してもらえませんか」

「サーモンはまだお出ししてないので
本日は会計はないですよ」

「でも…」

「また来ていただけたらうれしいですよ。
次はカクテルとサーモンをご注文いただけたら、それで。」

「またすぐに来ます」

「お待ちしてますね」


チャンミンは店の外に出た。

外には一台のタクシーが止まっていて
拗ねているセリをユノがなだめているようだった。


タクシーのライトがチカチカと点滅して
後ろからは夜の波の音が聞こえていた。


ユノがチャンミンに気づいた

「あ、ほらチャンミンと一緒に乗って帰ればいいよ」

「ユノさんと一緒にいたいって言ってるのに」

セリは怒ったような顔をチャンミンに向けた。

「残念だね。ウチには怖くて大きな犬がいてさ。
よそ者に吠えるんだ。な?チャンミン」

セリはユノの家に押しかけようとしたのか。

「セリは結構いいですよ、ユノ」

精一杯

カッコつけた


「は?」

「連れて帰れば、わかると思います」

自分で言って、自分で傷ついていた。


こんなこと言って
ユノがセリを連れ帰ったらどうしよう

なにを怖れている?


婚約者のセリがユノにとられてしまうこと?
賭けに負けてしまうこと?

そのどちらも違うことを
チャンミンは認めるわけにはいかなかった。





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