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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

カナヅチの島(3)




夕暮れになり、ユノはジョンと帰宅した。

空腹のジョンをなだめるため、とりあえず餌をやる。

洗濯の終わったチャンミンと自分の服を夕陽の当たる裏庭に干した

チャンミンの服の質の良さに少し驚いた。
見た目も品が良くて育ちの良さは感じていたけれど。

「いい家のコだな」


ソウルに犬がいるとか言ってた。

本土のデカイ家に住むお坊ちゃんが
夏休みに別荘に来てる、そういうノリだ。

今回来た仕事も、そんなどこかのお坊ちゃんと
どこかのお嬢様のウェディングだった。

スマホが震えて、見るとヒチョルだった

「ヒチョリヒョン?」

「ああ、着いたか」

「先週とっくに着いてるよ
テーブルがまだ届かないんだけど」

「そうか。船便だから気長に待ってろよ」

「テーブルないから机でご飯食べてるよ」

「どうせハダカで食べてるんだろ?
写真撮らせろ」

「は?なんで」

「女子たちに売るから。儲けてやる」

「アハハハハ」

「悪いけどこれからそっちへ行く。
仕事だ。今回時間がないんだよ」

「わかった。ビール買って来て」


ヒチョルはユノの幼馴染で少し先輩

今はウェディングコンサルタントとして
このところ人気がある

ユノはヒチョルの手がけるガーデンパーティの手伝いをしていた。

今回は植栽から始める少し大掛かりなガーデンの創作で、しかも時間がなかった。

いつもの事で誰の結婚式かはシークレットだ。

ヒチョルの手がけるパーティは著名人が多く
ユノも自分が整えたガーデンが有名な芸能人のモノだったことを後で知る。そんな感じだった。


ヒチョルかギシギシと木のドアを開けて入ってくる

ジョンが狂ったように喜んでヒチョルに飛びついた

「元気だったか愚か者め」

「早かったね」

「ビールとチキンも買って来てやったぞ」

「ありがと」

2人は空腹を満たすと、夜中まで仕事の打ち合わせに集中した。

遊びと仕事をきっちり分ける
そんな大人な2人だった。

そんな日が数日続いた。



MAISON と書かれた看板はすっきりと都会的で
ドアの向こうから、騒がしい音楽と人々の笑い声が聞こえた。

そのドアが開く度に、チャンミンは入り口を見た。
そしてため息をついた。

別に待っているわけじゃないけど
遊ぶ店を知らないみたいだったから教えただけ

僕がいるのはイヤなのかな

他の店に行ったのだろうか。

この店はうるさいかな
ユノだったら、もっと静かな店が…

まわりの友達が一瞬静かになった





目の前のセリや、他の仲間の視線が入り口に集中している

あ!

入り口にはユノと、女性かと見紛う綺麗な連れ

すごく…目立つ2人がそこにいた

ドレスコードがあると話したから
どれだけめかしこんでくるかと思ったのに

ユノは首の詰まった黒いノースリーブのセーターに
カーキのカーゴパンツを膝まで捲っている
それに白いスニーカー

夏の夜に大人がカジュアルに遊ぶスタイル

自分のことも、その場所のこともよくわかっている
ユノのこなれた感覚はかなり遊んでいる男のそれだ。

隣の綺麗な男の人は誰だろう

ユノはゲイのようだから、
恋人なのかな

チャンミンの胸が少しだけチクっとした。

ユノは辺りを見回すと、チャンミンに気づきニコッと微笑んだ

陽に焼けた顔に白い歯がきれいな笑顔

チャンミンは思わず立ち上がってしまった

「チャンミン??」

急に立ち上がったチャンミンにセリが驚いた

「あ」

「なになに?あのイケメン知り合いなの?」

セリとその友達がチャンミンを突く。

「うん、ちょっとね」

「ねぇねぇ、こっちに呼んでよ!」

呼ばなくてもユノはゆっくりと余裕の足取りでチャンミンのところへ来た。

「よぉ」

「こ、こんばんは」

「チャンミン、服取りに来ないの?」

「え?」

「もう畳んでおいてあるよ。
ってか俺の返してくれる?ポロシャツってあれしかないんだよ」

「あ!あ、ですよね、なかなか忙しくて」

セリや仲間がユノとチャンミンのやりとりを興味深く見つめている

「じゃあね、また」

ユノは入り口へ戻ってしまう

「え?もう帰るんですか?」

「うん、せっかくだけど、この店うるさい」

「あ」

「それじゃ」

「あ、はい」


腹がたった。


「この店はうるさい」


チャンミンにとっては背伸びのこの店を
子供っぽいと言われているような気がして


おまけにチャンミンも子供だ、と言われているような気がした

「ちょっと、チャンミン、いつのまにあんなイケメンと知り合ってたのよ」

「うん、ちょっとね」


根拠なく、意味深に答えてみる


どこまでも背伸びをするチャンミン


セリは自分がチャンミンの婚約者なんてことは
関係ないようで、さきほどのユノに興味深々だった。

そしてチャンミンもそんなセリのことがまったく気にならない。


気になるのはユノにバカにされたことだ。


ため息をついたチャンミンがソファにもたれて
また酒を飲み始める

「あの人、ゲイだから女に興味ないって」

「え?そうなの?」

なぜか嬉しそうなセリ

「え?もしかしてチャンミン、あなたもう…」

「いーえ、そんなことありません」

「あたしがオンナの良さを教えてあげようかしら」


まわりがその話に乗ってきた

「賭けさせてくれよぉ
最近面白い賭けが全然ないから」

チャンミンがその友達にけしかけた

「俺だったらどうだと思う?」

「えーお前のほうが可能性高いな。
B専なんだろ?さっきの人」

「やーねぇ、あたしにかかればB専だってイチコロなんだから」

「よし決まった!」

友達のウヨンが賭けをとりまとめた

「さっきのイケメン、チャンミンが落とすか、セリが落とすか」


当たり前だけど

ほとんどがチャンミンに賭け
セリは大穴扱いだった。

他にも何人か面白がって参加し、

賭けが分散して、ちょっとしたお祭り騒ぎだった。


からかってやる

子供扱いがなんだか悔しくて

チャンミンは身の程知らずに
浅はかな海に飛び込んだ

僕はカナヅチだったのに…




「可愛かったな、さっきの子」

「ん?」

「服貸したの?」

「ああ、この間溺れてて助けたんだよ」

「へぇー」

「生意気な坊ちゃんだよ」

へへっと笑ったユノをヒチョルはニヤニヤしながら見つめる

「ああいうのは案外真面目だぞ」

「どうだか。雑食なんだってよ」

それを聞いてヒチョルはゲラゲラと笑った。

「いいね、雑食か」

「でもさ、なんか縛られてるんだろうな
自由に見えても」

「え?」

「そんな感じ。自分で自分を縛ってるって感じ」

「ユノ」

「ん?」

「解放してやれ」

ヒチョルの綺麗な横顔が月明かりに白く輝いていた。




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