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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

この世の果て 31



ソン医師からの報告書を
パク刑事はコーヒーを飲みながら眺めていた

難しい話はよくわからない

これは自分の領域ではなく
別の部署に回そう

パサッと書類をテーブルに戻し
パク刑事は、先日自分を訪ねてきたある男を思い返していた

チェ・ドンホ

「名前はそうでも、君は韓国人ではないね」

「難民だったのを今のご主人に
引き取っていただきました」

「ほぅ、なぜ君を?」

「え?」

意外なパク刑事の言葉に
ドンホは顔をあげた

「いや、なぜわざわざ君を選んで引き取ったのかなと
思ってね」

「その…べ、勉強熱心だったからだと思います」

「ふぅん、ご主人というのはボランティアで?」

「そうです」

「で?俺になんの用事なんだろう
こんな定年間近の冴えない刑事に」

そう言って、パク刑事は笑った

「チャンミンの…こと…です」

「ふむ…」

はるか昔のことなのに

その名前を聞くと
パク刑事の脳裏には、寄り添う幼い兄弟の姿が
瞬時に出てくる

だれだっけ?と思うインターバルは
パク刑事の中にはない

自分の兄への思慕も相まって

忘れられない兄弟だった


密かに兄弟の近況は都度確認していた

なぜなら、あの時
パク刑事は2人の父親から訴えを聞いていたからだ

文字盤を使って、なんとか会話を試みようとしていた

兄であるユンホを訴える、とあった

階段から自分を落としたのはユンホだ、と。

パク刑事は、ゆっくりとその時に告げた

状況から考えるに
ユンホの正当防衛になる可能性があること
まだ幼いこと
時間が経ちすぎていること

そして、逆に父親のほうが立場が悪くなる場合もある

そう伝えたけれど
父親はユンホを訴えると言って聞かなかった

あの幼い兄になんの罪があるというのか

パク刑事はそれでも上層部の圧力で
ある程度事を進めなくてはならなかった



チェ・ドンホは慎重に話をした

「チャンミンは…罪を犯そうとしています」

唐突にすごい事を言う

「ほぅ、どんな罪だというんだ」

「犯罪ではありません
けれど罪です」

「犯罪ではない罪?」

「警察に捕まることはないけれど
やっちゃいけないことです」

「立件できないということか?」

「そうです」

「君がそういう話を私にするというのは
とても危険だよな?」

「大丈夫です、立件できませんから」

「立件できない犯罪を私に止めろというのは
無理な話だ。なぜ私に言う?」

「チャンミンのターゲットはあなただからです」

「ほぅ」

「もう、僕はチャンミンを手伝うことはしません」

「そのチャンミンの完全犯罪を
君が手伝っていたというのか」

「そうです」

「チャンミンひとりでそれをすると?」

「チャンミンひとりではできません
僕が手伝わなければ、チャンミンはどんな方法で
あなたを葬るかわかりません」

「気を付けろと?」

「そうです。きっと立件される犯罪しか
できないはずですから」

「君は私に助言してくれたというのか」

「そうです。」

「私の知り合いでもないのに」

「チャンミンに…」

「……」

「チャンミンにこれ以上
罪を犯させたくないんです」

ドンホの膝に置いた手は
可哀想なほど強く握りしめられて
白くなっているほどだ

「……」

「チャンミンは…自分とユノ先輩を引き離す者を
許さない」

「……なるほど」

「きっとチャンミンは…ひとつミスをしているので
これから、あなたがチャンミンに近づくでしょう」

「これのことか?」

パク刑事は側にあったソン医師の書類を
ヒラヒラと手にしてみた

「………」

「チャンミンが、点滴に触っているようだ
という話だね」

「………」

「実はね、私が追わなくてはいけないのは
兄のユンホも然り」

「え…」

「圧力があってね、情けない話だけれど
お父さんは亡くなったけど、やはりユンホが今のように会社で活躍されては困る人間がいるんだろうね」

「だけど…まだ幼い時の話でしょう」

「うん、そうなんだがね
気付いたらいろいろな証拠が差し出されて驚きだ」

「そんな…」

「捏造だよ、もちろん。
逮捕なんてできない。警察が騒げばそれでいいんだろ」

「………」

「かつて、あの父親の目的もそれだった
騒ぎを起こして、ユンホに傷をつけたかっただけだ」

「チャンミンが…
そんなこと許すはずがありません」

「それに加担する私は危険だということだね」

「はい…」

「君に…ありがとうと言うべきなんだろうけれど
私はあのチャンミンと正面から向き合うつもりだ」

「……」

「あの兄弟を引き離したり…しない」

「刑事さん…」


ドンホは驚いたように
パク刑事を見つめた

ドンホの瞳には涙が溢れていた


そんなドンホの思いと
先日の駐車場での、あのチャンミンの瞳を思うと

パク刑事は胸が詰まる思いがした

なぜ、道を間違えてしまうのだろう

なぜ、そこまでだれかを思おうとするのだろう

気持ちは…わかる

大好きな兄を苦しめた者への復讐の気持ちは
よくわかる

けれど、今のチャンミンは
大事なおもちゃを取られたくない、ただの駄々っ子だ

おもちゃを奪おうとする敵を
ゲーム感覚で倒していくような

そのことを

あのユンホはわかっているだろうか

自分の弟の危険さをわかっているのだとしたら
これは本当にまずい


***********



「プレゼンは上手くいった?」

「チャンミンが揃えてくれた資料で
ほとんど事足りたよ、ありがとうな」

「よかったです」

「俺さ、このまま部長職で十分満足だよ」

「そんな…この会社は僕たちの会社なのに
今はまだすべてを手にするわけにはいかないけれど
しっかりと味方をつけてがんばらないと」

「味方を見つけるのが、俺は上手くないかもしれない」

「そこは僕がうまくやるから
ユノはみんなにアピールすることに長けている
だから、2人で役割分担してがんばろ?」

ニッコリと微笑むチャンミンに
ユノは複雑な気持ちになる

邪魔をする人間を
酷い方法で排除するのではないかと心配になる

チャンミンはギリギリの綱渡りで生きている
善悪の判断がつきにくいのか

とにかく、きちんと見ていてやらないと

ユノはそう思った


それなのに…


ユノは見てはいけないものを
見てしまった



普段は行かないようなファーストフードの店

ここなら、ユノも来ないと思ったのか


奥の黄色のテーブルに赤い椅子という
ハデなインテリアの中で

チャンミンとドンホは額を突き合わせて
話をしていた


普段は通らない道を仕事上通ってしまったばかりに
ユノはそれを目撃することとなった


ユノの心臓がドキドキして
足が震えてきた


チャンミン…


最近は穏やかな生活だった

チャンミンのしてきたことはすべて飲み込んで、
それでもなおチャンミンを全身で愛した

少し時間が空けば旅行をしたり
美味しいものを2人で食べたり

幼い日のことを話すこともなくなり
父や母の話もまったく出なかった

あえて、出さないようにしていた

何度も2人が離れ離れになりそうな危機を乗り越え
今、やっと手に入れた穏やかな生活

どうかその生活を脅かさないでほしい
チャンミンを刺激しないでほしい

ユノはそう思った

ドンホはチャンミンの言うことを拒否できない
その気持ちの奥には何が潜んでいるかは
特に知りたくもない

ただ、もうやめてくれ

チャンミンが、透明さを失わないでいられるのは
その悪魔のような仕業が、すべてユノの為だったからだ

父のことと、母のことは
ユノも関わったこと

チャンミンがそうなったとしても
幼いころから一緒にいたユノならば
理解できなくもない事だった

けれど

他人の、自分たちとは関係ない人間には
何もしてはいけない

チャンミンにそれをさせるわけにはいかない

もう…これ以上

その美しい手を悪魔に差し出すようなことは
やめてくれ

ユノは目星をつけた

チャンミンを刺激したのは
あのパク刑事だ

あの刑事に会わなければ

ドンホやチャンミンが近づかないように
注意しなければ








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この世の果て 30



チャンミンが病院に戻ると
血相を変えてユノが駆けつけたところだった

「チャンミン!」

「母さんが、死んだよ」

ひどく落ち着いたチャンミンが
ユノの手をとる

「ごめんね、ヒョン」

「……」


病室が並ぶ廊下で
ユノはまじまじとチャンミンを見つめた

信じられない、と言いたげなユノの表情

それは、美しいチャンミンの
恐ろしい仕業に対してだ

「ちょっとおいで、チャンミン」

ユノはチャンミンの手を引いて
廊下の隅に来た

誰にも聞こえないように
ユノは低い声でつぶやく

「正直、こんなのないって思ってる」

「ごめんなさい…」

「何を謝っているの」

「……」

チャンミンは俯いた

バツが悪そうに
ユノの目を見れずにいる

「今度も…俺の為?」

「それは…違う」

「じゃあ、なに?」

「僕の…為…」

「チャンミンの?」

「全部…僕1人が悪い…
ドンホも何も悪くないよ」

「チャンミン…」

そっと瞳をあげるチャンミン

あまりにも儚げで
美しすぎるその存在

もっと

たくさん言いたいことがあったのに

ユノは何一つ言えないでいた

キラキラとガラスのように輝く瞳に

ユノはため息をついた

「チャンミン、ドンホとはどういう話になっている?」

「僕が、ちょっと間違えてしまって」

「間違えた?」

「もしかしたら、怪しまれるかもしれない」

「そうか…」

「ごめんなさい…」

「……」


ユノはチャンミンの手を自分の両手で包んだ

「俺は、チャンミンが困っているなら
相談してほしかった」

「ごめんなさい」

「なんでも自分1人で勝手に決めて」

「うん」

「俺は…頼りないか?」

「ううん、そんなことない!」

「だったら…」

「ヒョンのことが大好きだから、心配かけたくないって
そう思うんだ」

「……」

ユノはため息をついて、チャンミンの手を
しっかりと握った


「何も…心配しなくて…いいから」

「ヒョン…」

「母さんのところへ行こう
これから忙しくなる」


チャンミンは項垂れたまま、
ユノに抱き寄せられるようにして
みんなの前へ出た

その様子は母親を亡くしてショックを受けている
兄弟に見えて、なにも不可思議なことはなかった

ドンホだけが、2人の間でどんな会話があったのか
想像することができていた

結局は…ユノはチャンミンを甘やかして
徹底的に守ろうとする

そこに善も悪もない

あるのはお互いの存在だけ

そんな…2人だ


父が亡くなった時もそうだったけれど
ユノとチャンミンの家は、人が亡くなれば
権利や金が大きく動く家だった

2人が世間知らずで若い、というところに目をつけられて
その金や権利をかすめ取ろうという輩が多かった

意外にも、そういう輩をいち早く察知するのは
ユノではなく、チャンミンだった

危険回避能力はチャンミンの方が高かった

そのおかげで、大きな収入源を得て
大学を出ると、2人で会社経営に乗り出した

順風満帆、に見えたその影で

暗闇が2人を覆い始めていた


シム夫人が危篤状態に陥った経緯が謎で
ソン医師は胸にくすぶるモヤモヤとしたものと闘っていた

そもそも、はっきりと体調不良の原因がわからず
それを確かめるための検査入院だった

原因がわからないため
積極的な治療や投薬は行なっていない

2人の息子の許可を得られず
解剖は行えなかったため

尚のこと謎は深まる

ソン医師は暇さえあれば
シム夫人の投薬資料や血液検査の結果など
限られた資料でさまざまな可能性を考えていた

そんな時

例の「砂漠の暗殺者」を読んだという看護師と
それについて話をしていたソン医師

興味深いこの話を語れる相手として
お互いに貴重な存在だった

かつて、中央アジアに存在していた砂漠の国

そこに生息する独特の草花は
地中深くから栄養を得るため、長い根を痛めないように
そして、その根をいろいろな生物から守るために
自ら毒を出して、根を狙う生き物を殺していった

集団で生息することで
身を守ってきた砂漠の草花

薬理を学ぶものにとっては
魅力的な都市伝説だった

「僕がテレビで見たのはですね、ゆっくりと体調を崩していくやつです。黄色い花の」

「知ってるよ、それ。
クリームに混ぜることもできるんだよね?
肌から少しずつ吸収させて」

「そうです、そうです!」

「花を混ぜるっていうやり方もあるらしいよ」

「茎を広く切って花瓶にまぜて生けると
その水が毒物に変化するんですよねー」

「そう!それを薬物に混ぜると、毒性が表から見えないってやつ!」

「一度行ってみたいなぁー片っ端から採取して
研究してみたい」

「ほんとですねぇ
僕なんか、大臣の会談なんていうと、その側に黄色い花が
生けてあるんじゃないか、なんて目をこらしてテレビ観てました」

そう言って、看護師はゲラゲラと笑った

「花が生けて…ある…?」

ふと

ソン医師の脳裏に
シム夫人の白い病室で

いつも黄色い何かを見ていたような記憶が
蘇ってきた

あれは、サイドテーブルにあった花の色ではなかったか?

いやいや、まさか

ソン医師はかぶりを振った

あくまでも都市伝説にある国の
お伽話だ

現実にあるわけではないだろう


けれどどうしても、あの病室の黄色いイメージが
ソン医師の頭から離れず

シム夫人が使用していた部屋の
花瓶を持って、研究室へと持っていった

もう片方の手には
シム夫人の血液検査の診断結果があった


***********


〜現代


「チャンミン、パク刑事の話なんて
気にすることない」


砂色のブランケットから
ユノの逞しく引き締まった上半身がのぞいている

うつ伏せに寝ているチャンミンを覆うように
抱きしめている

「な?心配するな」

耳元に響く、心地よいユノの優しい声

「心配なんてしてないけど」

「お前が不安な時はすぐわかるよ」

「何かあったら…」

「ん?」

「何かあったら、ユノは自分が盾になろうなんて
考えてるでしょう?」

「お前も俺を見抜けるか」

そう言って、ユノは可笑しそうに笑った

自分を組み敷く腕の中で
チャンミンは身体の向きを変えて仰向けになった

自分を見下ろすユノのまなざし

それを愛おしそうにチャンミンは見つめた

「そんなこと、させないから」

そう言って、ふわりとチャンミンは微笑んだ


今思えば、その時ユノが不安そうな表情に変わったことに
何故気づけなかったのだろう

自分が愛だと思っていたそれが

ガラスの破片のように
ユノの心を突き刺していたことに

なぜ

気づけなかったのだろう





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こんばんは、百海です

ここのお話にいるユノとチャンミンは
ユノとチャンミンでありながら
ユノとチャンミンではありません

このお話の中のチャンミンは
美しくて透明で、少し病んでいて
心が子供のように純粋で

ユノに自分の存在をすべて依存して
友達さえ自分のいいようにする

そんなチャンミンが愛を知って大人になろうとする
お話です。

現実が辛かったら
いろんな小説で自分の大好きなユノとチャンミンに逢いに行くといいと思います

わたしの小説がそんなお手伝いを少しでもできたら
うれしいです。

この世の果て 29



「ドンホ?どうしたの、その顔」

チャンミンが驚いたようにドンホを見た

「ユノ先輩に殴られたよ」

さらりとドンホは答えた

「え?ヒョンに?どうして?」

チャンミンは一瞬驚いた
ユノが誰かを殴るなんてことは初めてだ


「…あ…まさか」

「バレてるよ、ユノ先輩には。
チャンミンが何をしようとしてるか」

「……」

チャンミンが不安そうな顔をした

「それでも…チャンミンを庇おうと…」

「僕を庇う?」

「悪いのは、この僕ってことで。
チャンミンはなにも罪だと思ってない人間だから
まわりが気をつけないといけないってさ」

「……」

「チャンミンに近づくなって殴られた」

ドンホの言葉に、チャンミンはうれしそうに
笑った

「……ヒョンは僕を守ろうとしてるんだ
僕のことが危なっかしいんだろうね、もう大人なのに」


なぜ、この状況で笑えるのか…
ドンホは驚いたようにチャンミンを見た

「……」

「僕は…ドンホに感謝してるよ?
殴られたりして痛かったでしょう?ほんとに
申し訳ない」

「……チャンミンが代わりに謝るなんて、変なの」

「だって、無理言って頼んだのは僕なのに
ドンホが悪者になるなんてさ」

ドンホはいきなり話を切り替えた

「……そろそろ、お母さんは仕上げに入るけどいい?」

「うん…僕も手伝うよ」

「できる?」

「できるさ…僕がなにもしないなんて、
ドンホだけにさせるわけにいかない」

「……」

「もらったアンプルは点滴に入れるんだね?」

「注意深くやらないとダメだよ
ちゃんと花瓶の水で薄めることを忘れずにね
あの花瓶に生けてある花は意味があるんだから」

まだチャンミンは薄らと微笑んでいた

ユノが自分を庇って、怒りの感情をおさえられなかったことが、そんなに嬉しいのか

「わかった
この間、教わったとおりに」

チャンミンは朗らかに笑った



チャンミンはそっと母の病室に入った

母はやっと頭を動かして
チャンミンを見る

母がいろいろなことを話すらしいけれど
支離滅裂なことが多くて誰もまともには聞かないらしい

「チ、チャンミン…」

母が絞り出すような声をだす

「母さん、調子はどうかな
まだ、話ができるみたいですね」

チャンミンは、慎重にアンプルの口を割り
スポイトで点滴の中に少しだけ液体を入れる

これを

少しでも間違えてしまえば

何かの時に毒物として、成分が検出されてしまう


「なに…してるの…」

母が震える瞳でチャンミンの手元を見つめる

「………」

「まさか…チャンミン…」

「………」

「大丈夫、そんなに苦しまないから」

母の顔が恐怖に震える

「どうして…」

「どうしてって、仕方ないんだ」

「お父様も…もしかしたら…」

「父さんも仕方ないよ
ヒョンを訴えるなんていうから」

「あ…」

「ごめんね、母さん」

チャンミンは点滴を元に戻すと
アンプルを小さなポーチに入れた

そして

チャンミンは静かに母を見下ろした

「僕ね…ヒョンが側にいないと
生きていけないんだ」

「……」

「僕からヒョンを引き離そうなんて
そんなこと絶対ダメなのに」

「……あ…」

母の身体を痺れが襲う

「母さん…」

「……」

チャンミンの表情は穏やかだ


「母さんは…ユノの声がどんなに甘くて優しいか
知ってる?」

チャンミンの瞳は夢見るように輝く

「僕を抱いて、僕がユノにとって
どれだけ必要な存在か、低い声で甘く囁いてくれるんだ」

母の瞳は見開き、恐怖に怯えてチャンミンを見つめる

「母さんは…ユノがどれだけ優しく僕を見るか
知ってる?」


薄らと微笑むチャンミンは天使のように
透明で美しい

けれど、それはガラスの破片のように
美しく危険だった


「ユノが大好きなんだ…
側にいてくれないと僕は生きていけない
ユノじゃないとダメなんだ」

母の息がハァハァと荒くなる

「母さんが…ユノを苦しめるから」

チャンミンの頬に涙がつたう

「ユノを家から追い出して
あんなに苦しめて追い詰めて…
それでも…ユノは耐えていたよ」

「あ…はぁ…」

母が何かを言おうとする

「ユノを苦しめるものは、許せない」

「あなたは…」

母の頬に涙がこぼれ、その枕を濡らす

「あなたは…狂ってる…」

「誰かを愛するということは、狂ってるのと同じ」

「だめよ…」

母が残された力を振り絞り
手を伸ばした

「だめよ…戻って…いらっしゃい…」

「僕が…戻る場所は…ユノだ」


その声が聞こえたかどうかは定かではないけれど

母の身体から
次第に力が抜けていった

チャンミンに向かって伸ばされていた腕は
力を失いつつあった

チャンミンはその手をそっととって
優しく握った

母の柔らかい手の感触を
自分がほとんど覚えていないことに

チャンミンは愕然とした

自分が覚えているのは
叩かれて痛む手をさすってくれるユノの手

遊びに行った帰り道、危なくないように
手を握ってくれたユノの手

寝る前に背中をトントンとしてくれたのも
ユノの手だった


なぜ、こんなにも母の手の感触を覚えていないのだろう


甘やかすな、という父の躾があったからだろうか

母は溢れる涙を拭くこともできずに
呼吸の乱れと嗚咽と闘っていた


「ご…めん…ね」


ギリギリの生の瀬戸際で
母がやっとひとこと告げた


「ごめん…ね…」


最後にもう一言告げて
母はゆっくりと目を閉じた


チャンミンの頬を涙がつたう

母さん…

僕も…ごめん

こんな息子で…ごめんね


母の手から完全に力が抜ける

それを見届けると

チャンミンの瞳に涙が溢れた


「母さん…さよなら」


そして、チャンミンはナースコールを押した


ドンホはその異変に気づき
慌てて、病室へと向かった

こんなに早く、体調に異変が起きるのはおかしい

やはり、チャンミンに任せず
自分が処方すればよかった

もし、これが異常だと判断されたら
詳しく調べられてしまう

医療従事者ではない者が
点滴を触ったとわかったら

まずい

早く、自分がいかなければ


しかし

時すでに遅く

先にナースコールに気づいたソン医師が
チャンミンの母の蘇生措置をしているところだった

病室の外では
チャンミンが項垂れて立っている

「チャンミン!」

「ドンホ…」

「なんでこんなことに?!」

「大丈夫だよ」

「大丈夫なわけない
こんなはずじゃないんだ」

「でも…」

「アンプルの中身を
花瓶の水で薄めた?」

「それは…してない…」

「そう話したはずだ!」

「あ……」

「花瓶の花は、僕が管理してるんだよ!
うすめ液なんだ、ただの水じゃないんだよ!」

「ごめん…」

その時、ソン医師が大声でドンホを呼んだ


ドンホは不安な表情でチャンミンを見つめると
ソン医師の元へと行ってしまった

チャンミンはチラリと病室の慌ただしい様子をみやると
ポケットに手を入れて、その場を後にした

母親が危篤状態だというのに

その場を離れた息子を、まわりはどう思うのか
少し不安はあったものの

悪いことをしたという実感を感じにくく

チャンミンはそのまま病院を出た

街は年末の賑わいの中
多くの人々が行き交う

チャンミンの携帯には
さきほどから通知や電話が盛んに入ってくる

母が亡くなったのかもしれない

ユノはショックを受けるだろうか

もしそうなら、かわいそうだな、と
チャンミンはポツリと思った

ユノを傷つけることはしたくなかったけれど
そのおかげで、ユノは会社の仕事を学びながら
夜大学に通えている

思ったより早く
実務につくことができそうだ

チャンミンは清々しい笑顔になって
携帯の着信をとった


それはやはり

母が亡くなったという知らせだった




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こんばんは、百海です

昨夜はソウルでファンミがありましたね

チャンミンからの「サランへ」
ユノの「お前はもう1人の俺」

なんだか萌なセリフも聞こえてきて
行かれた方は羨ましいですww

ひ**様からご質問で
ドキドキ感のメドをお知りになりたいとw

年内で終わるつもりが、お話に肉付けをしてしまい
もう少し伸びそうです。

一旦終わって、続編を描くつもりでしたが
一気に描いたほうがよいと思いはじめています。

大きくお話は動きます。

今までのお話が
ラストに深みを持たせることができたらいいなと
今は思っています。

年末の忙しいときに
お話を読みにきてくださって
本当にありがとうございます

この世の果て 28



今朝もチャンミンは自分の洗面のついでに
母の歯ブラシに小さなスプレィで液体をかける

なんてことはない、すでに毎朝のルーティーンのひとつだ


「母さん、今日も仕事休み?」

「ええ、だるくて…どうしたのかしら」

「お医者様はなんて言ってるの?」

「いろいろな数値は確かに悪いけれど
その原因がわからないって」

「もう少し、きちんと調べたほうがいいんじゃない?」

「そうね…」


チャンミンはベッドに横になる母をチラッとみやり
大学へ出かけた


ひとつ季節が過ぎると、
母はベッドから起きられないほどに体調を崩していた

大きな病院で、検査入院をすることになった


ドンホがインターンで入っている病院
そこへ入院するようにドンホから言われていた


なるべく苦しまないように


それがチャンミンが出した注文だった

チャンミンに残された、母へのわずかな思慕


ドンホは徹底して管理をするために
自分の勤める病院で準備を整えた

何人か政府要人も入院しているということで
それがドンホの役目を物語っている

けれど、母はその政府関係者もいるということに
安心感を持って入院をした


母の担当医、ソン医師はやる気のある
誠実で明るい医師だった

ソン医師は人望も厚いようで
看護師やインターンとも気さくにランチを共にする

ドンホはその中にはいない

少し距離を置いて人と付き合う
それはドンホの生き方だった


その日、いつものように何人かでランチをしている
医局のスタッフの内、
看護師の1人がランチの席を早めに立った

「図書館行かなきゃ」

ソン医師はそんな看護師に声をかけた

「図書館で本を借りてるの?
悪いけど、僕のも一緒に返してくれないか?」

「いいですよ、ソン先生はどんな本を借りたんですか?」

「変わった本だよ、砂漠の暗殺者っていうやつ」

「あ、それって知ってます」

「え?知ってるの?」

「知ってます。中央アジアにあった国の
薬草の話でしょ?」

「君、詳しいの?
僕は大学で少し研究していたんだよ
すごく興味があってね」

「僕は都市伝説の番組でみて、読んだことがあったんですよ」

「都市伝説か。ま、そうかもね」

ソン医師は笑った


***************


ユノは母のことを気にかけていた

母への思い、などというものより
チャンミンの負担や気持ちのことが気になった

「会社の事は大丈夫なのか?」

「手助けをしてくれる、という人はそれなりにいてもね
誰もが信用できなくて…結局、親戚ばかり頼りにしてるよ」

「それでいいと思う。
俺たちはまだまだだけど、親戚だって他人に会社に入り込まれるよりいいはずだ」

「学ぶことも多くて、結構勉強になってるよ」


「母さんは結局、病名がついたのか?」

「わからないんだって
でも、疲れたんだと思う、ずっと走り続けて来たからね」

「チャンミンは…大丈夫か?」

「なにが?」

「気持ちが…沈んだりしてないか」

「してないよ?どうして?」

「………」


母親が原因不明で入院しているとは
思えない平常心

もう、子供ではないし
それより会社をどうにか保たなければならないのだから
当然のことかもしれない


「ヒョンは気を使わなくていいからね
でも、会社のことは一緒にやっていきたい
それは力を貸してほしい」

「わかった。協力するよ」

「僕らの会社なんだから、ね?」

チャンミンはニッコリと笑った


ユノがチャンミンを助けながら
会社をなんとか保とうとしている中

やはり、ユノには給料が発生するべきではないかと
チャンミンが提案して

ユノは昼間の仕事をやめた


夜、大学で経営を学びながら
昼はチャンミンと会社の仕事をこなした

まだまだ、経営者として仕事はできない
母が守ってくれた2人の立場を守りながら
ユノもチャンミンも必死だった


ある日、ユノは書類について確認したいことがあり、
ベテランの秘書を探していると
今日は、母の病院で入院費の相談をしているとのことだった。

ユノは少し悩みながらも、どうしても今日中に確認がとりたくて、病院へ出向いた

母に会わなければならないということもないだろう

秘書が看護師と話をしているというので
ユノはロビーで待つことにした

その時

ユノの視界に、見知った男の姿が入ってきた


え?

ドンホ?


どうして、ドンホが…


ユノの心に暗雲が立ち込めるように
むくむくと不安が押し寄せてくる

まさか…

まさか…


気づけばユノはロビーのベンチから立ち上がり
ドンホを追いかけていた


なぜ、あいつがいるんだ

どうして、母さんの入院している病院に…


ユノはドンホの腕を掴んだ

びっくりしてドンホが振り向くと
そこには不安と疑心に溢れたユノの顔があった

「ユノ…先輩…」

「ちょっと来てくれないか」

「僕は…今…手が離せないので…」

「それなら、君の手が空くまで
いつまでもここで待たせてもらうけどいいか」

ユノの表情は待ったなし、であった

ドンホのため息が聞こえる

ドンホは観念して、ユノを医局の応接に通した


「こんなところで、患者の家族と密談なんて
本当はダメなんですけどね」

「密談になるのか?俺たち」

ユノがドンホを睨む

「僕にどんな用事ですか」

「わかっていると思う」

「なにをですか?」


「今度は…母か?」


「僕のことを、そんな風に睨みますけれど」

「………」

「僕は誰も恨んではいないので」

「君は恨んでないけれど、他の誰かが母を恨んでいる、ということか」

「………」

「ユノ先輩、知ってどうするんですか?
傷つくだけですよ?」

「俺は…知っておくべきなんだよ」

「…なんでも知る必要ないです
知らない方がいいこともある」

「チャンミンのことは、なんでも俺が知っておく」

チャンミン、の名を出されて
ドンホの瞳が一瞬揺れた

「すみませんが、僕から先輩にお話することは
なにもありません。特にチャンミンのことは」

「母さんなんだな、チャンミンから頼まれたんだろ?」

「先輩には関係ない」

「チャンミンはまた俺のために」

「違うそうです
今回はあなたは関係ない」

「………」

「チャンミンは自分の為だと」

「………」


ユノはドンホを睨んだ

「手を貸すな、今後2度とチャンミンに手を貸すな」

「そんな指示を僕は…」

ユノが立ち上がった
そしてドンホの襟首を掴み上げた

「お前…」

「………」

「チャンミンに…これ以上…罪を…」

「………」

「いいか、チャンミンは…何も罪と思ってない…
そういう人間なんだ
お前はそれをわかってるだろう」


「……保護者ですね、完全に」

「だったら、なんだ?」

「……あなたは正義の味方でいいですね」

「なんだと?」

「なんだかんだ言っても
チャンミンが罪を重ねることで
あなたは助かってる」

ユノの顔色が変わった

ドンホは頬に熱い衝撃があった後
床に叩きつけられた






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こんばんは、百海です。

いつものように20時にアップされていると思っていたら
あがっていませんでした

ほんとうにすみません(汗)

この世の果て 27




出勤したユノは愕然とした

「ごめんな、ユノくん、すごく良く働いてくれてたのに」

「あの…よく意味がわからないんですけど
どうして僕がクビなんですか?」

「君さ、いいとこの坊ちゃんだったんだね」

「……」

「こんなところで、働かなくたって大丈夫でしょ
もう、こっちが拉致したみたいな言い方されてさ」

「誰に…何を言われたんですか」

「君のママ」

「あ……」

「辞めさせてくれってさ」

「あ、母は僕が説得しますから
ですから、あの…」

「君のところ、親御さんの会社ね?
ウチの仕入れ先とか牛耳ってるって言われて
半分脅しだよね、あれ」

「すみません…」


********



「それで、ヒョンは謝ったわけ?」

「迷惑かけたのは…事実だからさ」

チャンミンは無表情だった

「ヒョンは…いつも…自分は何も悪くないのに
謝ってばかりだね」

「……」

「これじゃ、ヒョンはどこで働いても
クビになるよ」

「……そう…かもな」



「母さんが意地悪しているんだ
ヒョンの独り立ちを邪魔しようとしてる」

ユノはフッと笑った

「白旗あげて、おとなしく帰るのが利口かもしれないけど」

「そうしたら?」

「でも…俺は、もうあの家に帰らない」

チャンミンが寂しそうにユノを見る

「僕が…いても?」

ユノが不思議そうな顔をした

「チャンミン…」

「あの家に僕がいるのに、それでも?」

「チャンミンはあの家を…出ないのか?」

チャンミンが力なく微笑んだ

「おかしいよ…ヒョンがこんな苦労ばかり」

「……」

「僕たちが育った家なのに
僕たちが一緒に住んでなにがおかしいんだ」

「チャンミン…」

「ん?」

「少なくとも…あの家は
俺の家じゃないよ」

「寂しいこと言うね、ずっと僕と一緒に暮らしてきたのに」

「一度家を出て、母さんとこんなふうになってしまって
思ったんだ」

「ヒョンは家を出たら、開放された気分になった?」

「少しね、大変だけどさ
また、こんな風になっちゃって
明日から、どうしたらいいのかわからないけど」

「僕も家を出たい…でも…」

「チャンミン」

ユノはチャンミンの肩をつかんで
その顔を覗き込んだ

「勢いだけで家を出たらダメだ
俺をみてわかっただろう?」

「……」

「俺たちはいつか絶対に一緒に暮らせる
それまで、お互い耐えよう」

「ヒョン…」

「母さんは…俺をもっとチャンミンから遠ざけるつもりだ」

「……」


「でも、チャンミンがいるところが、俺の居場所だ」

チャンミンが目を見開いた

「ほんと?」

「そうだよ、本当の居場所に帰れるように
俺は頑張る」

「……」

「だから…チャンミン、お前もがんばれ」

「………」



それから、ユノは
住み込みの仕事を見つけてきた

夜、大学に通い続け
昼間は物流系の肉体労働をこなした

前ほどチャンミンには会えなかったけれど
少しの休みを見つけては

母に見つからないように、チャンミンと会った

チャンミンは母の元で
なにごともなかったように、母を刺激しないように
静かに暮らした


2人が短い逢瀬を楽しむのは
寂れた街のラブホテルだった

お金はチャンミンが出していた

住み込みのアパートは一部屋に4人で住んでいたので
ユノの部屋に行くわけにはいかない

ユノは毎日の肉体労働で
以前より逞しい風貌になり

あんなにオシャレだったのに
今は着古したTシャツとジーンズといった服装ばかり

それでも、ユノはとても魅力的だった


ベッドの上で、チャンミンはユノの腕に包まって
短い時間を噛み締めるように目を閉じていた

固く閉じられたラブホテルの窓の外から
かすかにトラックがバックする合図が聞こえる


ユノの低い声が響く


「もう、クリスマスだね」

「うん…」

「大学でパーティあるだろ?」

「みたいだね」

「出ないのか?」

「まったく興味ない」


フッとユノは笑った

「楽しんだらいいのに
俺のこと気にしてるの?」

「別に…ほんとに興味がないの」

「そっか」


「僕が生きてるって実感できるのは
こうやって、ヒョンといる時間だけ」


「俺たち…」

「どこへ行くんだろうな」


「僕は…ヒョンとならどこへでも行くよ」


この世の果てまで…

そこがどんな場所でも…構わない


ユノがチャンミンの髪を
指でもてあそぶ

そして、優しくくちづけた



********


「忙しいのにごめんね、ドンホ」

「大丈夫、試験終わったから」

「医学部なんて半端ないんだろうね
勉強大変でしょう」

「うん、半端ない」

ドンホは呆れたように微笑みながら
運ばれたコーヒーをひとくち飲んだ

「今日はなに?
また眠れないから薬をくれって話?」

「違うよ」

「じゃあ、どんなこと?」

「……まずは、近況を聞かせてほしいって
そう思ったんだけど」

「それより、僕に頼みたいことがあるんでしょう?」

「ドンホ…」

「手っ取り早く言ったらいいよ」

「そんな風に言われたら
切り出せないよ」

「………」

ドンホはため息をひとつついた

「………なにを…頼みたい?」

「……」

「そいつは…わるいやつ?」

「え?」

俯いていたチャンミンが顔を上げた

「わるいやつ?」

「チャンミン、僕はね
薬草の調合をするときに…その人物がどんな人が
一応調べるんだ」

「……」

「依頼が依頼なだけに…なんていうか
要人の暗殺…ほとんどがわるいやつなんだ」

「政府の?」

「ご主人にも…言ってる
僕は…僕の人生と引き換えに言うことは聞くけれど
わるいやつしか、殺せないって」

「ドンホ…」

「チャンミンが殺したいのは
わるいやつ?」

「……」

「また、ユノ先輩のため?」

「違う」

「……」

「今度は…ヒョンのためじゃない
僕のためだ」

「……」

「わるいやつだよ」

「……」

「幼い僕らを見殺しにした…
そして、僕からユノを引き離そうとする」

「……」

「僕のために…お願い…」

「チャンミン、僕は…」

「……」

ドンホはコーヒーカップを受け皿に置いた

「僕は…チャンミンの頼みを拒否できない
理由は…わからない」

薄らと、ドンホは笑った

「チャンミン、君は…そのことを
よく知ってるはずだよね」

「………」

「君は…ずるい」




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この世の果て 26




母からチャンミンに話があるという
進学の事でチャンミンの意向を聞きたいらしい

それはチャンミンにとって、嫌な予感しかなく
母の自室に行く足取りは重い


「そろそろ大学を決めないといけないわね」

「僕、このまま付属の大学に行くから」

母は、大学のパンフレットをめくる手をとめて
チャンミンを見た

「チャンミンたら、おかしなことを言うのね」

「なにか、おかしい?」

「そんなこと、許されるわけないじゃないの」

「どういうこと?」

母は呆れた

「あの付属の大学に行くのは、他に行くところがない生徒でしょう」

「経営とか経済に強い大学だから
いいと思う」

「大学は名前で決まるの」

「経営を学んで、ヒョンと一緒にしっかりと
会社を守っていきたい」

ヒョン、という名前に
母の表情が険しくなった

「ユンホはもうこの家とは関係ないわ」

チャンミンは笑った

「母さんこそ、おかしなことを言うね」

「この家を出て行った人間よ、関係ないわ」

「出て行くように仕向けたのは
母さんじゃないか」

「何言ってるの、ロンドン留学なんて
最高の環境を用意してあげたのに
それを蹴って家を出て行ったのはユンホのほうよ」


「僕は…わかってるよ、母さん」

「なにをわかってるというの?」

「ロンドンなんて
僕たちを引き離そうとしただけじゃないか」

「……」

「違う?」

「そうよ」

母は立ち上がった

「ユンホは異常者だわ
兄弟のように育ったあなたを、自分の欲望の餌食にするなんて…」

「餌食?」

「ありえないわ
訴えないだけ、ありがたいと思うべきね」

「ヒョンが異常なら僕も異常ってことだ」

「やめなさい!あなたまで何バカなこと言ってるの!」

チャンミンはしっかりと母の目を見つめた

「僕はヒョンを愛してる」


「愛してるだなんて…やめて
聞きたくないわ」

「……僕は何も恥ずかしいことなんてない」

「目を覚ましなさい、あなたはユンホに騙されてるの
あの子はウチの会社の権利がほしいのかもしれないわ」

「僕とヒョンの会社だよ?」

母は笑った

「最初はね?そう思ったわ
私だって、ユンホを自分の子のように育ててきたのだから」

「母さんは、僕たちの為に会社を守ってくれてたんでしょ?」

母は大きくため息をついた

「ユンホには権利を渡さないことにしようと思ってる」

「な……」

「あなたをこんな目にあわせて」

「……」

肩で息をしていた母が
自分で自分を落ち着かせようと
髪をなでつけたりした

「私はあなたを心配しているのよ、チャンミン」

「……」

「お母さんね、チャンミンは留学したらいいと思うのよ」

「今度は僕がロンドン?」

チャンミンが皮肉たっぷりに笑うと
母はその嫌味を無視して話を続ける

「カナダでもいいと思うの」

チャンミンは真顔になった

「僕は留学なんてしない」

「少し…環境を変えたほうがいいわ
世界を広げれば、今自分がどんなに可笑しなことをしているか、よくわかるはず」

「僕はなにも可笑しなことはしていないよ」

「あなたがユンホのところに毎晩行ってることを
母さんが知らないとでも思った?」

「知ってるのに何も言わないから
認めてくれてるのかと思ったよ」

「認めるわけないでしょ」

「母さんはいつもそうだ」

「いつもって?」

「なんでも見て見ぬ振り」

その言葉に、初めて母が戸惑いをみせた


「親に対して…なんてこと」


「僕とヒョンが父さんから理不尽に叩かれても
一度も助けてくれたことはなかった…
いつでも、見て見ぬ振り」

「……チャンミン…」

「叩かれて真っ赤に腫れ上がった手を
いつも冷やしてくれたのはヒョンだ」

チャンミンの髪が震えて揺れる

「……」

「僕が叩かれないように
いつも身代わりになってくれたのは、母さんじゃなくて
ヒョンだ」

「……」

母は固まったまま、動けずにいる

すごい形相でチャンミンを見つめている


「あの夜だって…」

「やめて」

「あの夜だって、僕の泣き叫ぶ声が
母さんにも聞こえていたでしょう?」

「やめて、チャンミン」

「ヒョンが父さんを止めようとした。
危ないって、何度も叫んだ
僕が危険な目にあっていることは、母さんもわかっていたはずだ」

「……」

「けれど…母さんは…助けてくれなかった」

「違うわ…わたしは…」

「…母さんはその時何をしてた?」

「……」

「隠れていただけでしょう」

「わたしは…」

母はそれ以上、何も言葉がでない

「僕を身を呈して助けてくれたのは」

「……」

「母さんじゃない、ユノだ!」

チャンミンの握り拳が、わなわなと震える

「わたしに…」

「……」

「わたしにどうしろというの…」

「母さん」

「……」

「あの夜、僕が酔った父さんに階段の手すりから
落とされて死んだとしても」

「……」

「母さんは今でも、父さんの支配下で
普通に暮らしてたと…思うよ」

「チャンミン…母さんを…そんな風に」

「ある意味さ…今、母さんがバリバリ働いて
生き生きしてるのは…ユノのおかげじゃないの?」

「あなた、なんてことを…言うの…」

「だって、そうでしょう?」

「わたしは、黙っていたわ
ユンホを思って、あの刑事にも何も言わなかったわ」

「母さんは…ユノを思って黙っていたわけじゃない」

「……」

「自分のためだ」

「私はそんなに強くない…今にあなたもわかるだろうけど…だれだっていつも正義だけで生活できないわ」

「僕たちが、理不尽に痛めつけられていても?!」

「……」

「叩かれて、真っ暗な物置に閉じ込められていたことを
なんとも思わなかった?」

「……」

「どうして助けてくれなかった?!
あの夜、母さんは自分を守ることしか考えてなかった…
僕が父さんに突き落とされて死んでも、
ユノが心に消えない傷を負っても」

「……」

「母さん…あなたは…それでも自分が…大事なんだ…」

「ひどいわ…」

「なにが?なにが酷い?
ひどいのは、母さんじゃないか!」

「……」

「僕からユノを引き離そうとしたって
母さん、それはできないよ?
僕たちの絆は…そんな毎日で培われたんだ」

「………」

「僕らを見捨てたくせに…
僕らは寄り添って、耐えてきたんだ
それを引き離そうだなんて」

「……」

「僕は…ヒョンから…離れない」


この世の果てまで、ユノと一緒に…



チャンミンはそれから
ユノのアパートへ出向いた

気を取り直して、ユノに笑顔を見せようと思った


ユノが働く店はテレビで紹介されたのをきっかけに
行列ができるようになってしまい
チャンミンもおいそれとは店に入れなくなってしまった

人件費の節約を目論む店は
スタッフを増やしてはくれない

いくら若いユノでも、かなり疲弊していた

もう今日が何日で何曜日なのかも
よくわからなくなるほど、きつい毎日だった

将来のためと思って選んだ学部も
後悔し始めていた

夜間大学とは言っても、結局昼間の学部が受からなかったから入学した、というような生徒も多く

昼間、学費を稼ぐために必死に働いている生徒は
予想ほどいないのが現実だった

ユノは気ばかり焦って
なにごとも思うようにいかずに苦しんだ

自分は世間知らずだと
認めざるを得ない

さらなる試練があった

単位をいくつか落としてしまったユノは
かなりショックを受けていた

毎日食事をつくりに来るチャンミンが
今日も部屋で待っている

単位を落としてしまったせいで
また別の課題をこなさなくてはならない

正直、今夜はチャンミンに来ないでほしいと

ユノはつい思ってしまった


ドアを開けると、チャンミンが笑顔でユノを迎える

ユノに構ってほしくて仕方ないのだ

「ヒョン、おかえり!
シャワー浴びてから大学行く?」

「ん…」

ユノは気持ちよく返事ができない

「ビーフシチュー作ってあるよ
ヒョンの店ほど旨くはないけど、牛肉が柔らかく煮えて
なかなか…」

「チャンミン」

「なに?」

鍋の取っ手をフキンで包んで
テーブルに移そうとしているチャンミンは
きょとんとしてユノを見た

「優雅に食事をしながら、
会話を楽しむって気分じゃないんだ」

「ヒョン…」

「単位を落としてるんだ、俺」

「僕の…せい?」

「そうは言ってない」

「僕が、毎日来て話をしたがるから?」

「だから!」

ユノが思わず大きな声を出した

「そうじゃないって言ってるだろ!」

「……」

チャンミンが大きな瞳を見開いたまま
驚いたようにユノを見つめた

「…ごめん…」

ユノは両手で顔を覆った

「俺…余裕なくて…ダメだね」

「……」

コト、と鍋をテーブルに置く音が静かな部屋に響いた

「帰るね」

「……」

チャンミンは財布や身の回りのものをリュックに入れて
上着を着た

「チャンミン、帰そうと思ってるんじゃなくて」

「いいよ、言い訳なんかしなくて」

「そうじゃないんだ」

チャンミンは散らかった野菜のクズなどを
ビニールに入れて口を閉じた

ユノには背を向けた格好で
一瞬その動きが止まった

「ヒョン…」

「……」

「ほんと言うとね」

「……」

「僕…今日だけは…優しくしてほしかったんだ」

ユノがその言葉にハッとして顔を上げた

「…チャンミン?」

「大丈夫って…頭を撫でてもらおうと思って
ここに来ちゃった」

ユノがチャンミンに近寄った

「何があった?」

「なにも…ない…」

「おいで、チャンミン」

ユノがチャンミンの手をとった

チャンミンがゆっくりとユノを見た
優しいけれど、とても悲しい瞳だった

チャンミンがそっと、ユノの頬に手を添えた

「ヒョン、とても疲れた顔をしてる
ちゃんと寝てないでしょう」

「家で…なにかあったのか?
母さんと何かあった?」

「なにもないよ、僕はいつも通り」

「チャンミン、ごめん、俺、余裕なくて」

「大丈夫、ヒョン大変なんでしょ」

「もうすぐ春休みになる
少しは図書館なんかに通わないといけないけど
今より時間ができるはずだから」

「じゃ、その頃また来る」

「待って、そうは言ってもまだまだ先のことだ」

「我慢するよ」

「俺は…そんなに我慢できない」

チャンミンはフフっと呆れたように笑った

「勝手なことばかり言ってるよ、ヒョン」

「ほんとだな…俺…勝手なことばかり」

「今は、僕の癒しより時間がほしいよね
わかってる」

「チャンミン…
俺、お前のことは癒しなんて、そんな軽いものだとは
おもってない」

「……」

「お前としっかり生活できるようにがんばろうと思って
1人立ちしてみたのに
なんだか…あまり…上手く行かなくて…」

チャンミンがユノを優しく見つめた

「こんなふうに、チャンミンを怒鳴ったりして
元も子もないよな、なんのための今の生活なんだか」


「少し、僕たちグチろうか?」

チャンミンが可愛い顔で笑う

「チャンミン、俺、今日は大学休む」

「そんな…」

「いいさ、1日くらい
チャンミンといるために毎日がんばってるはずなのに
なんか、こんなのいやだよ」

「じゃあさ…」

チャンミンが恥ずかしそうに言う

「うん」

「シチュー食べようか」




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この世の果て 25



泊まりたいのを我慢して
チャンミンはユノの部屋から出て行く

ユノが駅まで送ろうとするのを
チャンミンはやんわりと拒否した

「明日、仕事でしょう?」

「だから?」

「だから…ヒョンはもう寝なよ」

ユノは笑う

「何言ってんの、お前」

「だってさ…」

「ギリギリまで一緒にいたいのは…俺」

「……」

「終電なんかで帰ったら、母さんが心配するから
早く駅に行こう」

2人は連れ立って駅まで歩く

ゴミが風に舞うような町

決して品の良い町ではない
その辺で寝転がっている人などもいる

2人には馴染みのない町

けれど、ユノは平然としていた

「ヒョンは…すごいね」

「俺の、どこが?」

「一生懸命働いてる。
なんか…生き生きしてるように見えるのは
僕の気のせいかな」

「うん…自分の力で生きているって感じは…すごくいいかな」

「ふぅん」

「充実はしてるけど、でも」

「でも?」

「圧倒的にチャンミンが足りない」

チャンミンがフフッと笑った

「そう?」

「うん」

「だといいけど…ヒョンが新しい生活が楽しそうで
僕がいなくてもいいのかな、なんてさ…」

「そんな風に思ってるの?」

「うん…僕は…そういう風にしか
考えられないタイプみたい」

ユノがチャンミンの頭を優しく撫でた

「チャンミナはオトナになったなぁ」

チャンミンが意外そうな顔をする

「え?僕が?」

「自分のことを分析できるようになったね
客観的に自分を見れるようになったら、もう大人なんだと思うよ」

「早く僕も働きたい
自分の力で生きていきたい」

「まずは大学を出ないとね
俺たち、しっかり勉強しないと」

「ヒョンは…大学…」

「もういくつか絞ったよ
夜間で通うから卒業まで少し時間はかかるけど
勉強はしていたから、そこそこの大学に行けそうだ」

「そう!よかった」

「チャンミンもがんばれ」



そして


ユノは夜間大学に通うようになり
昼間は仕事、夜は大学、という生活になった

大学はしっかりと課題も出て
その二重生活でユノは多忙を極めた

大学の入学金は少し貯めていたものから支払ったけれど
普段の学費は夜間だからといって馬鹿にならない

昼間の仕事は肉体労働だったし
学費のことを考えれば残業もしたかった

チャンミンと会いたくても
なかなか時間がとれない状況が続いた

意気込んで家をでて
働きながら大学に行くなんて

やはり自分は甘かったのかもしれない
そんな風に弱気になっているユノだった

チャンミンは、ユノが仕事から帰るころ
寮のアパートでご飯を作って待つことが多かった

ほんの短い時間だったけれど
2人でとる夕飯の時間はチャンミンにとってかけがえのない時間だった

最初はユノもその時間を大事にしてくれた

仕事から帰って大学に行くまでの時間
チャンミンが用意してくれた夕飯を食べて
会話をする

なんとか繋がりを持とうと
2人は一生懸命で、お互いを大事にしていた

けれど

ユノはあまりの忙しさに
少しずつ心の余裕を失っていった

チャンミンは…なかなかそれに気づくことが
できなかった


「おかえり、ヒョン」

「ただいま、チャンミン」

ユノの笑顔がひどく疲れたようで
チャンミンは気になった

無理に笑っているような気がする

「疲れてるね
今日はあったかいチゲ作ったから食べて?
お腹空いたでしょう」

「ごめん、課題をやらなきゃ
昨夜寝ちゃって、なにもやってないんだ」

「あ……
あ、そうなんだ
じゃあさ、大学から帰ってきてから
一緒に食べよう。僕も勉強しながらここで待ってる」

「チャンミン、食べたら家に帰って
母さんが怪しむから」

「……」

チャンミンの表情が悲しみに沈んでいく

「ごめんな…それさ、俺帰ったら温めて食べるよ
ありがとう」

一緒に食べようと思って作ったチゲは
ひとり温かそうに湯気を吹き上げている

しばらくその湯気を見ていたけれど

チャンミンは微笑んだ

「わかった」

無理して微笑むその姿が
いじらしくてユノは切なくなった

「ほんとにごめん」

謝りながらも、ユノはもう教科書を取り出していた


「勉強の邪魔になるから
これで帰るね」

"邪魔だなんて、そんなこと思ってない"

そう言ってもらえることを期待して
チラッとユノを見てみたけれど

ユノはチャンミンの声が聞こえなかったのか
もう勉強に没頭していた

「じゃあね」

そういうと、ユノはチラッとチャンミンを見て
にっこりと微笑んだ

「ありがとな」

そしてすぐに
教科書へ真剣なまなざしを向けていた


夕方の時間


チャンミンはドンホと静かなカフェにいた


チャンミンとドンホは
結局のところ、一番の親友となった

大きな秘密を共有してるということもあったけれど

どこか、同じような悲しみも共有しているような気がした


「チャンミンは大学決めたの」

「うん、そのまま上の大学に行くよ」

「僕は…医学部に行く」

「ドンホなら受かるよ
医者になりたいの?」

「うん…」

「すごいね、いい医者になれそう」

「僕…たくさんの人を殺めてるから」

「……」

「その人数分、多くの人の命を救いたいんだ」

「ドンホ…」

「ご主人も、僕が医者になることは大賛成で」

「それは…」

「都合がいいでしょう、僕が医者になれば」

「……」

「僕の逃れられない運命だよ
もう諦めてる」

「抜け出す方法はないの?」

静かにドンホは微笑んで首をふった
それは諦めと絶望の微笑みだった


「そういえば、ユノ先輩はどうしてるの?」

「仕事と大学で忙しくて」

「そう」

「いろいろそばにいて、何かしてあげたいんだけど」

「けど?」

「いや、そうじゃないな」

チャンミンは可笑しそうに笑う

「僕がヒョンの側にいたいだけ
別にヒョンは何か手助けが必要なわけじゃない」

「チャンミンの存在は必要でしょう」

「どうかな…僕は邪魔ばかりしてるような気がするよ」

「そんなこと…あるわけない」

「だと…いいけどね…」


白い木の窓枠の外に落ち葉がひとつ舞い降りる

チャンミンはそれを目で追った





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この世の果て 24




遊具で遊ぶ子供たちを
チャンミンが無表情で見つめている


ユノが一通り、母に言われた話をした


2人の関係を知られていること

ロンドンへの留学という名目で
2人を離そうとしていること


「そんなこと…僕が耐えられると思う?」

「……俺だって、耐えられない」

「それでもヒョンはロンドンに行くつもりなんだね」

「俺…母さんを裏切るわけには行かないと思ってる
でも…」

でも、と言ったユノをチャンミンが見た

「チャンミン、俺、大学に行くのは辞めようかと思ってる」

「ヒョン…」

「昼間働いて、夜勉強したっていいんだ
大変かもしれないけれど、チャンミンと離れてロンドンなんて話よりはいい」

チャンミンが身を乗り出した

「それなら!…いいよ、ヒョン、僕も大学へは行かない」

「チャンミンは大学へきちんと行かないとダメだ」

「ヒョンは追い出されるよ、ロンドンなんてまさに追い出すいい理由だ」

「自分から、あの家を出るよ」

「それだって、体裁を気にして反対される」

「世話になったのに、そういうこともしたくなかったんだけど、勝手をさせてもらう」

「……」

ユノがチャンミンに向き直った

「チャンミン」

「……」


ユノの優しい笑顔

ユノの笑顔が優しいというだけで
それだけでチャンミンは泣きそうだ

「俺、お前と離れるのは…嫌なんだ
誰に迷惑かかろうと、恩知らずだと言われようと」

「ヒョン…」

「離れていても…心はひとつなんてよく言うけどさ」

「……」

「俺は…そんなの…ダメだ
ロンドンなんて、無理だ」


その言葉に
チャンミンの顔がぱーっと輝いた

「一緒にいよう、ね?
僕たち離れたくないんだから、離れる必要なんかない」

「チャンミン…」

ユノはチャンミンの手をギュッと握りしめた


そしてほどなくして


ユノは大学の進学を一旦あきらめ
長年住み慣れた家から出て行った

母は特にそれについては何も言わなかった


ユノは自分で住まいや職場を見つけた

チャンミンが通いやすいように
なるべく近くに住みたかったけれど

家賃の安いところもなく

ユノは仕方なく寮に住める食堂での仕事を見つけ、
そこに移り住んだ

チャンミンは、当初ロンドンに行ってしまうよりはましだと考えて、ユノの引っ越しを手伝ったりしていたけれど

いざ、ユノが家からいなくなると
心が空っぽになってしまい、空虚な夜を過ごすようになった

ベッドの隣に
いつも存在していた温もり

ただ寂しいなら
人肌が恋しいなら

何か手立てもあったのかもしれない

けれど、チャンミンのユノに対する思いは
ユノにしか満たしてもらえないものだった


チャンミンが夜、家から出ないように
今までいなかった秘書がチャンミンにつくようになり

煩わしいことこの上なかった


それでもそんな秘書の目を盗み
ユノの働く食堂へとチャンミンは様子を見に出かけた

外から様子を伺うだけでは我慢できずに、
いつも食堂に入ってはなにか注文して食事をした

今日も気づけばフラフラとこの食堂に来てしまっていた

古い木枠のガラス扉を押すと
上についている鈴が鳴って、客が来たことを知らせる

「いらっしゃ…おーチャンミン!」

「いいかな」

照れ臭そうにチャンミンが席を見つけて座ろうとする

「カウンターにおいで、こっち」

そう言って、ユノが仕事をしている近くの
カウンターに座らせてもらった

「なにする?日替わり?今日の日替わりは
ビーフシチューだ」

「美味しそうだね、その日替わりお願い」

「わかった。大盛りにしてやるから」

ユノは白いシャツを腕まくりして
逞しい腕を覗かせている

黒いカフェエプロンがよく似合う

昼時はかなり忙しそうで
ユノは各テーブルを回っては注文をとり
厨房に伝えている

テーブルの中には
明らかにユノ目当てだと思われる女性も見え隠れしていた

チャンミンは少しキツイ表情でその様子を見ている


「この間のグラタンも美味しかったわ、ユノさん」

「ありがとうございます、今日のシチューも美味しいですよ」

「ユノさんのおすすめなら、私はそれにするわ」


ユノユノと、いちいちうるさい

注文を厨房に伝えるその後ろ姿を
汚らわしい視線でうっとりと見つめている女たち


チャンミンは運ばれて来たシチューを少し口にすると
席を立ってしまった

「ごちそうさま」

「え?チャンミン、もう帰るのか?」

「うん」

ユノの目を見ずに、チャンミンは財布から紙幣をだすと、レジ前にポンと置いて店のドアを開ける

「ちょっ、ちょっとチャンミン」


ユノの声は無視して
チャンミンは店を出て行く

もしや、追いかけてきてくれるかと思い
後ろを振り返り、店を見つめてみたけれど

ユノは出てこなかった

あの店は人が足りなすぎるのではないだろうか

ユノばかりがとても忙しそうだ


もう少し…話ができるかと思ったのに


仕方なく、ユノからもらった合鍵で
店が用意してくれたという寮代わりのアパートへ行った

古いアパートは、ユノが育ったチャンミンの屋敷とは
比べ物にならないくらい古くて狭い

鍵でドアを開けると
部屋はユノが起きたままの状態で、散らかっている

チャンミンは少し片付けをして
台所の洗い物をして、ユノを待った


ぽつんとひとり

部屋の小さなソファに腰掛ける

窓からは既に西陽が差し込んでいる


知らない間に、チャンミンは寝てしまった


ユノが毛布をチャンミンに掛けてくれた感触で
チャンミンは目覚めた

ユノの優しい声が耳元に聞こえる


「ごめんな、遅くなって」


チャンミンの目の前に
ユノの笑顔があった

「ユノ…」

「せっかく店に来てくれたのに
ほとんどなにも話せなかったな」

チャンミンの瞳にみるみる涙が溢れた

わがままばかりしているのに
ユノは何も怒らない

いつも、チャンミンのすべてを
受け入れて愛してくれる


「ユノ…大好き」

そう言ってチャンミンはユノに抱きついた

「ほんと?もう拗ねてない?」

「うん」

「それなら、よかった」

ユノは優しく抱きしめたチャンミンの背中を
トントンとした

「ごめんね、ビーフシチュー、いっぱい残して」

「あのまま、容器に入れてもらって
取っておいたよ」

「ほんと?!」

「ああ、一緒に食べよう」

「僕が、温め直すから
ヒョンは着替えて座って?
疲れているでしょう」

チャンミンはそそくさとキッチンに立ち
ビニール袋から、シチューの入った容器を出した

ユノの世話を焼こうとするチャンミンを
ユノは愛おしそうに見つめる

その一生懸命な姿は
自分にとってかけがえのない存在であることを
ユノはあらためて実感する


「なぁ、チャンミン」

「ん?」

「早く一緒に暮らしたいね」

「……」

しばらくユノの瞳をじっと見つめていたチャンミンが
その長いまつ毛をふせて、コクリとうなずいた

「もう…我慢の限界…」

「俺も」

「そう?」

「おいで、チャンミン」

チャンミンが恥ずかしそうに微笑みながら
自分に伸ばしてくれた、ユノの手を掴むと

ユノはその手を引き寄せた

優しく抱き寄せて

力強く抱きしめた

「ヒョン…」

まつ毛までくっつきそうなくらい顔を寄せて
そして、優しくくちづけた

優しい夜が2人を包んだ








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百海です

みなさま、こんばんは
メリークリスマス!

クリスマスイブをどのようにお過ごしですか?
私は仕事ですー(T . T)
お仲間はいますか??ww

コメントのお返事をせずに
現在に至っています

ほんとに申し訳ありません

ひとつひとつ、温かく読ませていただいています
ほんとうにありがとうございます

ステキなイブをお過ごしくださいね

この世の果て 23



母は今日も出勤していた

専業主婦で、傲慢な夫の元でビクビクしながら
暮らしていた日々が嘘のようだ

仕事はやりがいもあり
次第に、チャンミンとユノに会社を引き渡すことが
惜しくなってきたりもしている

自分も何かしらの地位をもらって
これからも張り切って仕事がしたい

そう思っていた

1人でランチをすることにも慣れた

それはとても自立してカッコいいことに思えて
気分がいい

今日も、洒落たカフェで簡単なランチをとる

「あら?お母様?」

声をかけられて振り向くと

そこにはユノの彼女のミンスがいた

「あら、ミンスちゃん
お久しぶりね」

「はい、お久しぶりです
私もご一緒してよろしいですか?」

「ええ、どうぞ」

ミンスは向かいに座って
パスタを注文した

「今日はユノと一緒ではないの?」

母の問いかけに、ミンスはびっくりして
笑った

「もちろん一緒ではないですよ」

「そうなのね」

ミンスは母の顔を覗き込んだ

「お母様、もしかしてご存知ないですか?」

「何を?」

「わたし、ユノさんからフラれたんですよ」

「えっ?!」

「もうずいぶん前です」

「でも、主人のお葬式でお会いしなかったかしら」

「それは私の父の関係で伺いましたけど
ユノさんとはお別れしてます」

「あの子から振ったというの?」

「はい」

「あの…こんなこと聞いていいのかわからないけど
その…どうして?」

「え、お母様はご存知ないですか?」

やけに興奮気味なミンス

何か言いたくて仕方ないその雰囲気を
少し嫌だな、と母は思った

「ごめんなさいね、知らないわ。
もうユンホは大人だもの
恋愛のことは私には話さないことも多いと思うし」

「そうですよね」

ミンスは意味深に微笑んだ

何かを言いたげな感じを同じ女として
気分が悪かったけれど

とても気になるのも事実だ

「ミンスちゃんにユンホが何か失礼をしてなければ
いいのだけど、そんなことない?」

「私が口を出すことではないかもしれないんですけど」


**********



チャンミンが隣で寝ているユノを起こした


「ヒョン、起きるんでしょう?
大学のガイダンスの日だよ?」


うーん、と眠い目をこすりながら
ユノがベッドからゆっくりと身体を起こした


「今日は7時には起こしてと言ったのはヒョンだよ」

「うんうん、わかってる
ありがとな、チャンミン」

そう言って、まだ閉じたまぶたが開かない
といった風なユノがチャンミンに抱きついた

「ヒョン、もう着替えて」

チャンミンがかいがいしくユノの世話を焼く

とても、嬉しそうなチャンミン
ユノの世話を焼くということは、この上ない幸せな仕事なのだ

ユノもよく気のつくチャンミンに
頼ることも増えてきた


甘く、優しい関係だった


力強い絆と信頼をベースに
外見は生クリームでコーティングされたように
甘く柔らかい

そんな2人だった


「ヒョン、何時ころ帰るの?」

「午後には帰るよ」

「じゃ、公園まで迎えに行ってもいい?」

「連絡するよ」

そう言って、笑顔でユノは出かけて行った


チャンミンは勉強をして
本を読み、ランチをとってユノからの連絡を待っていた


午後の遅い時間になっても連絡込みがなく

待ちきれなくなったチャンミンは
公園で連絡を待つことにした

ユノはただの手続きに
なにをやっているのだろうか


その頃、ユノは会社まで出かけて
母に会っていた


「母さん、どういうこと?」

「なんの話かしら」

「今日、大学のガイダンス手続きに行ったけど
学部が変更になっていたよ」

「……」

「国際教養学部って…」

「……」

ユノはごくりと唾を飲み込んで言った

「校舎はロンドンだけど」

「そうよ」

「母さん…」

「そんなこと、とっくに知ってると思ったわ」

「知るわけないでしょう
なんの相談もなく、勝手に学部が変えられてるって
どういうこと?」

母はキッとユノを睨みつけた

「どういうことか、自分の胸に聞いてみたらいいわ」

「意味がわからないよ」

「学部変更の書類は、あなたの机の上に置いておいたわ」

「え?」

「ユンホ、あなた、チャンミンの勉強をみてやってるけど」

「……」

「そのあと、ちゃんと毎晩、自分の部屋に戻っていたら
わかるはずでしょう」

「……」

ユノの顔が青ざめた

「自分の部屋に戻ってないから
書類があることに気づかないんじゃない?」

ユノは…頭の中が真っ白になった


「ユンホ」

「……」

「私は…善意で…あなたが、姉さんの忘れ形見だから」

「……」

「我が子だと思って、ここまで育ててきたつもりよ」

「……」

「飼い犬に手を噛まれるなんて、そんな言い方はしたくないけどね、裏切られたという思いよ」

ユノは微動だにしなかった


何も言えず…何もできなかった



チャンミンが公園に行くと

ベンチにユノがひとりボーッとした表情で座っていた


「ヒョン!」

それを見つけたチャンミンが駆け寄った

「もう来てるなら連絡くれたらよかったのに!」

ユノは遠くを見つめていた

「ヒョン!返事して?」

ユノはゆっくりと、チャンミンに視線を移した

「どうしたの?」

ユノの目が哀しみを湛えている

「ヒョン…」

「ごめんな、チャンミン」

「何を…謝っているの…」

「俺は、あまりに力不足で…」

ユノは優しく、そして哀しく微笑んだ





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この世の果て 22



チェ・ドンホはユノに呼び出された

ランチの時間がはずれたレストランの個室

たぶん、特別に開けてもらったのだろう


自分の連絡先をどうやって知ったのか
チャンミンが教えるとは思えず

あのユンホ先輩なら
喜んで教える人間もいるだろうけれど

自分の連絡先なんて
いったいどのくらいの生徒が知っていたというのか


「科学部の部長に無理言って教えてもらったんだ
悪く思わないでほしい」

それがユノの答えだった

凛とした佇まい
男でも惚れ惚れするような整った顔立ちと
大柄でもスッキリとしたそのスタイル

チャンミンとはまた違った美しさを持っている

「いきなり呼び出してすまない。
俺と会うなんて、あまり喜ばしいことではないと思うけど」

「いえ、そんなことはないです」

「なにかいつも、タイミングが悪くて
君には良くない態度をとってたと思う」

「………」

黙っているドンホに
ユノは苦笑した

「タイミングの問題では…ないよな」

冷たく見えるその顔立ちが
笑うと一気に人懐こい温かさが宿る

ドンホは俯いた

「君は頭がいいから、気づいているだろうけれど
そう…みっともない嫉妬っていうやつだ」

ドンホがなんと答えていいか迷っているうちに
ユノがまた口を開いた

「今回も嫌な話にはなるけれど
チャンミンが…信じられないことをして…」

ユノの眉間が少しだけ歪む

憤りをなんとか抑えているのだろう

「手助けをした君を正直言って
俺は、恨まずにはいられない」

「……」

「けれど」

「……」

「チャンミンが…君に頼んだのだと思う
詳しくはわからないけれど…」

「……」

「父に毒を盛った、ということでいいか」

「そうです」

ドンホはユノの目を見て
はっきりと告げた

「……」

「詳しいことは…お話ができずすみません」

「チャンミンはその詳しいことを
知っているのか」

「はい」

「……」

「チャンミンが先輩に背くということではないんです
僕が…固く口止めをしたので、きっと言えないのだと思います」

「……そうか」

「すみません…」

「なぜ、手伝った?」

「……」

「なぜ、あんな取り返しのつかないことを
チャンミンにさせた?」

「それは…」

「言えよ」

「僕は…」

「……」

「チャンミンに…感謝しています」

「感謝?」

「僕は…人生を諦めていました」

「その若さで?」

「はい…いろいろ思うところがあって」

難民であるということを
その言い訳にしないドンホ

ユノはその強さに好感を持った

「チャンミンは、僕に楽しい学生生活というものを
与えてくれました」

「……」

「僕の人生の中で、たぶん
この3年間は一番輝いた時代なのだと思います」

「まだ、これからじゃないか」

「すでに背負う物が多すぎて
僕は…」

「なんだ?」

「いや、なんでもありません。
とにかくチャンミンに…僕はなにかしてあげたかったんです」

「それがこれか?」

「チャンミンは」

ドンホは真っ直ぐにユノの目を見つめた

ユノは睨むようにその視線を受け止めている


「チャンミンは…あなたを愛していると
そう言っていました」

その言葉に、ユノがひどく驚いた

「そんなウソをつくな
チャンミンはそんな風に言ったことは
一度もない」

「あなたには言わなくても
そう思っているんです」

「そんな…」

「あなたにだけ、荷物を背負わせたくないのだと
そう言っていました」

ユノの漆黒の瞳が震える

「それに…あなたが離れて行ってしまうことも
恐れていたようです」

「そんなことを…君には伝えているのか」

「僕は…よくわからないですけれど
きっと、愛してるからこそ、言えないこともあるのだと
思います」

「俺たちは分かり合っている」

「そうでしょうか」

「なに?」

ユノの顔が怪訝な表情に変わった


「あなたが…倒れたとき…」

「……」

「もし、このまま、あなたが目覚めなかったら
チャンミンは自分が側にずっといるからいいのだと」

「…え?」

「生きていてくれさえしたら、それでいいのだと」

「……」

「そう言って、チャンミンは泣いていました」

「チャンミンが…」

ユノはドンホの話にうろたえた

いつも甘えん坊でわがままで
勝手なことばかり言っている

それでもユノにとっては
愛おしくて仕方のない…そんなチャンミン

ユノはなんとも言えない気持ちになった

けれど、それとこれとは違う

「……だからといって
何をしていいわけではない」

「僕だって…」

ドンホの声が震えた

「僕だって、できることなら止めたかった!」

「……」

「断りましたよ?僕だって、大好きなチャンミンを
人殺しなんかにしたくない」

「…じゃあ、なぜ」

「他の方法を考えようとしてたんですよ?
あなたのために…チャンミンは、他の方法で
お父さんを…」

「……」

「そんなにも…あなたの事を愛しているんだって」

ユノは動揺していた

「そんなにも…あなたが1人で罪を背負うことを
チャンミンは申し訳なく思って…」


しばらく沈黙したまま、時間が流れた


やがて、どちらからともなく席を立ち
一緒に店を出た


「今日はご馳走様でした」

ドンホがユノに頭を下げた


「忙しい時間に呼び出して
悪かったね」

「いえ、なにもないので」

「ひとつ聞きたいんだけれど」

「はい」

「今回の方法で、チャンミンに何か疑いがかかるような
ことは、ないのか?」

「ないです」

「ずいぶん自信があるんだね」

「お父様が亡くなった原因の成分は
まだ発見されていない成分です」

「発見されていないからこそ、危険じゃないのか
これはなんだ?という話になるじゃないか」

「それを見抜くには、僕の国の歴史を学ぶ必要があります」

「なるほど…」

「そんなマニアックな人間が
普通の医師や警察になるなんて、思えません」

「そうか」

「チャンミンは大丈夫なので」

「わかった」

「あの…僕もひとつだけ言ってもいいですか?」

「うん、いいよ」

「ユノ先輩が…あなたがとても、羨ましいです」

「……」

ユノのドンホを見る目は優しいものになっていた

「チャンミンは…あなたが側にいないと
狂ってしまうでしょう」

「……」

「そんな存在である、あなたが羨ましい」

「君もチャンミンにとってかけがえのない存在だと、
俺は思うよ」

ユノは綺麗に笑った

寒空にその笑顔は厚い雲の中から差し込む
冬の太陽のようだった



帰宅するとチャンミンがモコモコと温かそうな格好をしていた
ブランケットを肩からかけている

「ヒョンおかえり、どこへ行ってたの?」

「図書館」

「それなら僕も一緒に行ったのに」

「チャンミンはなんでそんな格好しているの?
寒いの?」

「寒いよ、ヒョンだって鼻が赤いよ
今日は本当に寒い」

「ああ、そうだな」

「何か温かい物飲む?」

「うん」

「ココアあるんだよ、飲みたいでしょ」

チャンミンの笑顔が可愛い

ブランケットに包まって
まるでフワフワな天使みたいだ

「ココアは後で」

ユノはブランケットに隠れた
チャンミンの手を引いた

「あっ」

チャンミンはバランスを崩して
ユノに身体を預ける格好になった

ユノの胸に倒れ込んできたチャンミンを
ユノはしっかりと抱きしめた

「ヒョン?どうしたの」

「寒いよ、ほんとうに今日は寒いね」

「?」

「こうやって、チャンミンといると
俺は暖かくて気持ちいい」

ユノは抱きしめたチャンミンのブランケットに
顔を埋めた

「変なヒョン…」

そう言ってチャンミンもユノを抱きしめた




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