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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 17




「ただいま」

ユノが仕事から帰ってきた

チャンミンが家でユノを待っている前提の挨拶


しかし

いつもの「おかえり!」という甘い返事はない


「チャンミン?」


ユノがリビングに入ると

そこには…憔悴しきったチャンミンが立っていた


くしゃくしゃの髪

泣きはらした真っ赤な目

背中を丸め、ぼんやりと立っている

誰かに…襲われた?

そんな錯覚を起こさせる

「チャンミン…?」


ユノは驚いてチャンミンに駆け寄った

「チャンミン!どうしたんだ!」

「………」

「なにがあった?!」

「………」

「だれかが…来たのか?」

「………」

「なにをされたんだ!?」

「なにも…」

「え?」

「されてなんか…ない…けど」

「けど?なんだ?」

ユノは不安そうにチャンミンを揺さぶる


「あのね…」

チャンミンがゆっくりとまぶたを開ける

「言ってごらん?どうしたんだ」


「スビンが…」

そう言うと、チャンミンの瞳にみるみる涙が溢れた

「え?」

意外な言葉にユノは驚いた

「スビン?」

「………」

「スビンが…どうしたんだ?
スビンに何かされたのか?」


「あのね…」


チャンミンの視線がゆらゆらと揺らぎ
なんとかユノへ焦点を合わせた


「結婚…するんだって…スビン…」

「え?結婚?」

「うん…」

「だれと?」

「僕の…知らないひと…」

「まさか…」


ユノは心臓が激しく鼓動する


もちろんスビンが結婚するからではない
それを聞いたチャンミンが、取り乱しているからだ


ユノは激しく動揺した


なぜ…

スビンが結婚するということで
チャンミンはこれほどまでに取り乱しているのか


まさか…

スビンが忘れられない?

これほどまでに、自分と密に過ごしているというのに?

落ち着け…落ち着かないと…


「チャンミン…ちょっと座ろう」

「イヤだ」

「じゃあ、立ったままでいいから
少し話をしよう」


「………」


「泣かなくていいから
きっとチャンミンの悪いようにはならない」


「いや、僕は…なんていうか…」

チャンミンが我に帰ったようにハッとしてつぶやいた
でも、そこから言葉が続かない


「スビンに話をしに行こうか?一緒に行ってやるから」

「そんなこと…そんなのいい」

「チャンミン…」


「ごめんね、ユノ…こんな僕…ユノを傷つけてるよね」

そう言いながら、チャンミンはまた泣き出した


どうしたんだろう

涙がとまらない

チャンミンは自分でも不思議なくらい泣いた



「バスタブに湯を張るから、ゆっくり入ろう」

「うん」


ユノがバスタブに湯を張ってくれた

2人で裸になり、
ユノがチャンミンを後ろから抱き抱えるようにして
ふたりで湯舟に浸かった

身体の大きな2人が入ると、お湯が一気に流れ出た

「凄いな、俺たちが入ると」

ユノがわざとおどけてみせた


「………」


「チャンミン…」


ユノが後ろからチャンミンを抱きしめて
首筋に唇を這わす


「チャンミン…お前はいい香りがするね」

「なんの…香り?」

「ピーチの香り」

「フッ…それはボディソープの匂いだと思うよ」


やっと、チャンミンが笑った


「それでなくても、お前は甘いピーチの香りがするよ」

ユノも笑った


チャンミンは後ろから腰にまわるユノの手を握った


2人して泡まみれになり
子供のように風呂で遊んだ

うっかりチャンミンの目に石鹸の泡が入ってしまい
ユノが慌ててシャワーをかけてくれた

「痛いか?」

「うーん、もう大丈夫」

まだ目が開けられないチャンミンを
ユノが愛おしそうに見つめる

でもその瞳は寂しさを帯びていた


ふたりでタオルに包まり、風呂を出ると

ユノが冷蔵庫からミネラルウォーターを出してくれた

「チャンミンは炭酸入ってるやつ?」

「うん」

ユノから渡された炭酸水を一口飲んだチャンミンは
胸の奥から、なにか大きなものが込み上げてくるような感じがして苦しくなった


「チャンミン?」


咽せたまま、またもやチャンミンは泣き出した


「……ごめん…自分でも…なんだかよくわからなくて」


「………」


チャンミンは膝を床について泣いた


「涙が枯れるまで…泣いたらいいよ」


ユノの声は今夜も甘く低く…優しい


ひざまづいたまま、チャンミンはユノに抱きついて泣いた


ユノの裸の腹にチャンミンの嗚咽が熱く染み込んでいく

ユノは立ったまま、泣いているチャンミンの髪を優しく撫でた


「大丈夫」


そして、チャンミンの頬を両手で挟むと
かがんで優しくくちづけた






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蒼い観覧車 16



ベッドの海で2人は泳ぐ

深く蒼い海に2人で沈んでいく

身体のどこで呼吸をしているのだろう

それさえ、快感でわからなくなる


うつ伏せになったチャンミンの背中の窪みが
ユノは大好きだ

ユノはチャンミンの骨盤から首に向かって、
その溝を一気に舐め上げた。

「あ!!」

チャンミンはシーツをきつく掴み、仰け反る

馬乗りになったユノは
そのまま、チャンミンの肩から耳へと少しずつ甘噛みしていく

その唇がそっとチャンミンの耳たぶを食むる

チャンミンはもう息も絶え絶えに喘いだ

大きく肩で息をして
閉じられた瞼が少しだけぼんやりと開く

その可愛い唇は快感を逃すために閉じることができない


次第にユノに慣らされつつあるチャンミン
スビンとのその行為をもう思い出せないほどに


相手を欲しがるのはきっと、愛だ

自分もユノを欲しがっている

身体だけじゃない

心から全部

それを言葉じゃなくて、行為で表す

それが愛だ


確信に近いものを感じて

チャンミンは深く眠った


朝目覚めると、目の前にユノの男らしい眉があった

その下の閉じられた瞼の際にまっすぐな睫毛が並ぶ
意外にもその睫毛が長いことにチャンミンは驚いた

優しくて、カッコいいユノ

この瞼の奥には優しく黒目がちな瞳があることを知っている

時に獰猛に、時に小動物のように変化するユノの瞳

優しくて、頼もしくて

大好きなユノ


それなのに

なぜか、完全にスビンからユノへ移行できない自分がいる

心も身体もユノのなのに

誰かがユノに近づいたりしたら、
許さないのに


スビンから飛び立つなんて
まるで呼吸のできない宇宙へ行くような恐怖がある


チャンミンはいつも思っていた

自分はまるで孫悟空のようだと

スビンというお釈迦様の手のひらでどんなに暴れても
そこから出ることはない

遠くまできてしまったと思っても、
実はそこから一歩もでていない

それが、チャンミンの安心感だった

けれど今はどうだろう

たぶん今はそれがストレスだ

そう思うこと自体が自分は、スビンを窮屈に思っているのだろうか

悩むチャンミンの目の前には
美しいユノが眠っている


「ユノ?」

チャンミンがそう呼ぶとユノがビクッと動いた

その硬質な顔のあちこちに、チャンミンはキスをした

寝ぼけながらも、ユノの手がチャンミンを探して動き回る

その手から逃れようとして
ケラケラと笑いながら、チャンミンがベッドの上を転げ回る

「落ちるよ、チャンミン」

掠れた声でそう言いながら
まだ寝ぼけたユノがチャンミンの腰を抱く

「フフフ…じゃあ、しっかり捕まえてて」

チャンミンがユノに抱きついた

キスをしながら、上になったり下になったりしているうちに

とうとう2人はベッドから落ちた

咄嗟にユノは自分が下になって、チャンミンを庇った

「ユノ?!」

「なに?」

「大丈夫?」

「なにが?大丈夫だよ」

「僕の下敷きになったのかと…」

「アハハハ…そんなヤワじゃないよ」

「だって…」

ユノは床に仰向けになった

「おいで、こっちに…俺の上に乗って」

チャンミンはゆっくりとユノの腹に跨った

「こう?」

「そう」

ユノがゆっくりとチャンミンの腕を引き寄せると
チャンミンはユノの上に重なってキスをした


「ユノ…愛してる」


チャンミンがユノを見下ろしてつぶやく


ユノが少し驚いたような顔をした


「チャンミン…」

「愛してる…ユノ…」

そう言ってチャンミンはふんわりと微笑みユノを見つめた


「今日は…たぶん…って言わないのか?」

ユノが不安そうに聞いた

「言わないよ、たぶんなんて…だって絶対だもん」

「チャンミン…」


ユノはチャンミンを強く抱きしめた

まるで自分の中に取り込もうとしているように


このまま、ユノとひとつになってもいい

そうチャンミンは思った



そんなチャンミンの思いは…ユノの愛は…
いとも簡単に覆された



「うん、ま、そういう訳だから…」


チャンミンは動けない…

チャンミンは床の一点を凝視したまま動かない


その日はスビンが丁寧にも、チャンミンの着替えや服を
ユノの家に持ってきてくれた

すっかりユノの家にいついているチャンミンを
またもや寛大に捉え、着替えまで持ってきてくれる始末

少し勉強しなさい、他の男のところで…

きっとそんな事を言うのだろう
そうチャンミンは思っていた


そんなある日…


「チャンミン?大丈夫?」

スビンが固まって動かないチャンミンに問いかける


やっとの事で顔をあげたチャンミンは
目にいっぱい涙を浮かべて、少し視線が動いた


そして、掠れた高い声でやっと言葉を発した

「結婚って…」

「うん、いい人が見つかったんだよ」

「………」

「僕もそろそろ身を固めるっていうかさ
チャンミンもユノといい感じだし」

「僕?」

「そうだよ、ユノのところへ行ってただろ?
まさか、仕事をしに行ったなんて、言わないよね」

そう言ってスビンは笑った

「………」

「2人でたくさんセックスをしていたんだよね」

スビンは持ってきた着替えや下着を丁寧に畳んでいる


「なんで…」

「ん?」

チャンミンの目がうつろだ
涙だけが次から次へと溢れ落ちる

「なんで…結婚なんて…」

「チャンミン…君がそう仕向けたっていうのも
あるかなぁ」

「……僕…が…」


チャンミンの足元にある大地が
音を立てて崩れていくような錯覚に陥った







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百海です。
20時にアップされていませんでしたね汗
ほんとにすみませんでした

皆さま、大きな台風が近づいていますが
十分気をつけてください

蒼い観覧車 15




「ユノ?」

スビンはスマホをタッチして
不思議そうに聞く

「スビン、ひさしぶり」

「ああ、ひさしぶり」

「少し、会って話がしたいんだ」

「いいよ、今日?」

「いいか?」

「家で仕事してるから、いつでもどうぞ」


そして、ユノはスビンの家に行った
緊張した面持ちで。

チャンミンの事をこのままにしておくわけにはいかない

生真面目なユノはそう思っていた

きちんとスビンに話をして
正々堂々とチャンミンを愛したかった


コーヒーカップを2つ持って部屋に入ってきたスビンはユノの前にそれを1つ置いた


「忙しいのにすまない」

「今日はなに?
チャンミンのこと?」

いきなりスビンの方から話を振ってきた


「……そう…だ」

「このまま寝取るから、承認を求めに来たとか?」

「寝取る?」

「違ってる?」

スビンは優しく微笑む

「……」

ユノは何も言えなかった


「チャンミンが僕と別れるって言ってるなら
もう僕は何も言えないけど」

「そうは言っていない」

「だろうね」

ユノは意外そうな顔でスビンを見つめた

どこから、その自信が出て来るのだろう


「で?僕から別れるように仕向けてほしいとか?」

「そうじゃない」

「そうだよね、ユノがそんな裏工作しないよね」


スビンが意味ありげに笑う

すべてを見透かしているような落ち着いた態度


チャンミンがスビンから離れられない理由が
なんとなく見えてきた

愛や執着ではなくて
チャンミンは怯えなのではないか

それは自分に都合のいい解釈か?



「チャンミンは迷っているんだ、俺とスビンの間で」

ユノは顔が強張りながらも、ゆっくりと話す


スビンはコーヒーを一口飲んだ

「で?」

「俺はチャンミンを正々堂々と愛したい。
そのためなら、スビンを裏切る行動をとるだろうから、
詫びにきた」

「とっくにそういう行動をとっているだろう?」

「………」

「フフフ…僕を裏切るって…」

「チャンミンの意思は大事にする。
チャンミンがスビンのところに戻るなら、俺は無理強いしないし、潔く身を引く」


「正直言っていいか?」

「なんだ」

「ユノ、僕はね、昔から君のそういうところが大嫌いなんだ」

スビンは柔らかく微笑みながら、その表情とは裏腹なセリフを吐く

「え?」

「曲がったことや、コソコソするのが嫌い、
いつも潔く正々堂々と」

「スビン……」

「ユノは大学生の頃から、そういうキャラでまわりの羨望を集めてきた。」

「なんの…話だ」

「そういう、隠し事しません、みたいな態度。
それが多くの人間を傷つけてきたんだよな?」

「………」

ユノの表情が固まっている

「女を愛せません、とか、さ?」

「……」


チャンミンの事で辛辣な事を言われるのは
覚悟していた。

土下座してでも、詫びなければいけないとも
思っていた

それが、自分の人間性について言われている


「妾の子のくせに」

スビンがフッと微笑みながらユノを見る


「……なっ…なに?」


いきなり、なんの話だ



「堂々とその事をアピールして、
まわりの同情をひいていたよな、昔から」

「同情?」

「逆境に負けない母子家庭育ちの男。
苦労人だけれど、その事で、卑屈にならずに生きてきた」

「………」

「そんなキャラだ…」

「………」


「本当は、大学の費用だって、ちゃっかり父親に出してもらってたくせに」

「え?」


「自分の父親の名前は聞かされてないか?」

「会ったこともないし、名前も聞かされてない」

スビンはひとつため息をついて、ぽつりと言った

「イ・ドンホ」

「知らない…そんな名前は知らない…
それに…スビンが知っているわけない」

ユノは狼狽えた

「弁護士事務所を経営してる
お前の母親はそこの事務をしていたんだ」


「……そんな…どうしてそれをスビンが…」

「僕の…父親だ」


「あ……」


「………」


「ウソだ…」


「大学のとき、こんないい奴がいるって
お前のことを母親に話した」

「……」

「そうしたら、何かを察した母親がお前についていろいろ聞いてきて、少し調べてわかったんだ」


ユノに大きな衝撃が走った

それはあまりに大きな衝撃で、言葉が出ない


「あの親父は、一応約束は守ってたんだなぁ」

スビンはまたコーヒーをすすった

「僕の母がね、お前が出来たことを知った時、
父親に一生会わない、という約束をさせたらしいよ」

「………そんな」

「さすが、親子だなぁ、
他人のものを寝取るワザには長けているね」

ユノは握り拳に力を込めて立ち上がった
それは怒りに震えている

「僕を殴るかい?
母を侮辱された孝行息子だな」

「おまえ…」

ユノが一歩詰め寄った

「おっと、僕を殴る前に
その資格があるのかどうか、よく考えるんだな」

「なんだと…」

「苦労したのは、お前たちだけじゃないんだよ」

「………」

「僕だって、僕の母親だって苦労したんだ」

「………」

ユノの額にジリッと熱い汗が滲む

「いつも、潔く、正々堂々と。
お前は1日何度そのセリフを吐くんだ?」

「………」

「隠し事っていうのはね、思いやりでもあるんだ。
お前みたいに、全部バカ正直なのは、相手を傷つけているんだ。結局、自己満足で気持ちがいいのはお前だけだ」

「………」

ユノは、なにも言い返せなかった

スビンの言うことは、間違ってはいなかった


「チャンミンを僕から寝取ろうとしている」

「……」

「どこがどう間違っている?」

「………」


「チャンミンは僕がずっと育てて来たんだ。
なにも知らない可愛い男の子だった時から
自分好みに仕上げて来たんだよ」

「………」

「ヒナが最初に見たものを母親と思うように」

「ヒナ?」

「チャンミンは僕から離れられないよ」

「お前のは愛じゃない、支配だ」

「だから?チャンミンがそれでいいなら、問題ないだろ」

「………」

「本題に戻ろう、いいよ、チャンミンがユノのところに行くなら、どうぞ」

「………」

「申し訳ないけれど、仕事が立て込んでるのでね
これで今日はいいかな?」

「これで、失礼する」

「うん」

「ひとつだけ…教えてほしい」

「なに?」

「その…父親は…今…どうしてる?」

「聞いてどうする?」

「………どうも…しないけれど」

「隠し事として話さないでおくよ。
その方がユノとユノの母親のためだ」

「………」

「心配しないでくれよ?ユノのことを兄弟だなんて
思いたくもないからさ」

そう言って、穏やかにスビンは笑った




ユノはどうやって、スビンの家から自分のマンションに帰って来たのか、よく覚えていない

まさか、自分の父親について聞かされるとは
思わなかった…

気持ちが動揺して落ち着かない

とりあえず、シャワーを浴びてゆっくりと考えよう

そう思い、ドアのロックを外そうとしたら
先に勢いよくドアが開いた

「!」

目の前に、チャンミンの満面の笑顔があった

「チャンミン…」

「びっくりしたでしょう?」

「なんで…」

「ユノ、キーの暗証番号、電話番号と同じだなんて
不用心だよ?」

チャンミンが可愛くユノを睨んだ

「あ…」

そして、チャンミンは少し照れたように微笑む

「なんか、会いたくなって、試しに電話番号入れたら
開いちゃってびっくりだよ」

可笑しそうにチャンミンがケラケラと笑う

コロコロと変わるその表情


「…………」

ユノはそんなチャンミンを見つめた


「?」

「………」

「あ…ダメだった?僕、勝手な……」

ユノは勢いよくチャンミンの腕を引き
強く抱きしめた

「!」

そのまま、玄関に入り、さらに強く抱きしめる

「ユノ?」

「チャンミン」

「ん?」

ユノはチャンミンを抱きしめながら
きつく目を閉じていた

チャンミンのうなじに、ユノの震える唇が触れている


「ユノ…どうしたの…」

「チャンミン」

「なに?」

「チャンミン…チャンミン」

ユノはチャンミンを搔き抱いた

ユノの様子にチャンミンは困惑しながらも
ユノをしっかりと抱きとめた


「お前が大好きだよ」

「ユノ…」

「俺は…お前が大好きなんだ」

「あ…」

「会いたかった…まさか、来てくれるなんて」

「僕も…会いたくて…」

「チャンミン…愛してる…
お前が誰のものでも関係ない」

「ユノ…」

チャンミンは優しくユノの背中をあやすように撫でた






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蒼い観覧車 14



さっきまでのチャンミンの不安は一掃されて

帰りの車の中は、とても楽しく
ユノと2人、笑顔の絶えないドライブとなった

ユノは何度もチャンミンに言った

難しく考えないで

こうしなきゃいけないと、考えないで

それでも奪うつもりだと


身体の芯から心の奥底まで
メロメロに蕩かされるようなユノの言葉

これではいけないと思いながらも

チャンミンは足元をガッチリと
スビンに杭を打たれているような感覚は拭えなかった


ユノのマンションに着いた。

ここはあの夜、エレベーターの中から
ユノに攻めまくられた事を思い出してしまう

今日は普通に笑いながらエレベーターに乗っているのが
不思議な感じだ


はしゃぐチャンミンが可愛い

ユノは思う

本当に好きでたまらない


テーブルに、式典でもらってきた料理を並べた
フルーツやサラダ、チキンのトマト煮、デニッシュなど

チャンミンは満面の笑みでそれらを平らげた

美味しそうに次から次へと食べていく様は
見ていてとても気持ちがいい


「ガーデンレストランはそのままオープンすればいいのに」

「そうだな。たぶん今日の評判でそういう話も出てくるかもしれない」

「実現するといいなぁ」

「一番喜ぶのはチャンミンだな」

ユノが笑う

「お客様も喜ぶからいいんだよ」

「うん、提案事項に入れてみよう」

ふと

しばし、会話が途切れて…

2人は見つめ合う


ユノの瞳が穏やかな色から少しずつ変化して
既に色気を伴ってチャンミンを捉える

チャンミンはその強い視線に絡められて動けない

チャンミンの瞳がユノを見つめながら、揺れる

それがまたユノを狂わせることを
チャンミンはわかっていない

ユノがゆっくりとチャンミンの腕をとる

視線を外さないまま、自分の胸にそっと抱き込み

そして、強く抱きしめる


「愛してる」

もうユノは隠さなかった…

「!」

いきなりの言葉にチャンミンは動揺した

なんて返事をしたらいいのだろう

「答えなくていい」

ユノはそう言ったかと思うと
何も言わせないようにくちづけた

「ん…」

ユノの長い指がチャンミンの柔らかい髪をまさぐり
抱きしめた腰を撫でる

チャンミンの身体の奥から、波が打ち寄せるように
甘い感覚が押し寄せてくる

ユノはチャンミンの腰を抱き上げるようにして立ち上がり、くちづけをしたまま、チャンミンを引きずるように寝室へと誘う

シャワーを浴びたいのに…

チャンミンは甘く蕩けた感覚の中思ったけれど

ユノはこういう時、とても性急で強引だ


あっという間にベッドに沈められ
気がつけば、チャンミンは全裸にされていた

スビンと全然違うのは、その愛する行為もさながら
チャンミン自身の反応もまるで違うことに気づく

焦れったいような、途中でもう勘弁してほしいと思うようなスビンと

性急で荒々しくそれでも官能的なユノの行為

チャンミンはユノにはついていけない、と思いつつ
気づけばとんでもない嬌声をあげているという始末だ。

自分のどこからこんな声が出ているのか

この感覚はどこから来るのだろう

視界に入るユノの淫靡な表情からか?
身体を這う、その唇の感覚か
耳に入るその甘い吐息か

チャンミンは五感でユノを感じた


腰のあたりにあるユノの髪を撫でる

もうチャンミンは陥落寸前…

ユノがなにやら、腰骨のあたりを指で触りだした


「……なに…くすぐったいよ」


チャンミンは焦らされて、感覚がおかしくなっている

早く

早く

それなのにユノは、挑むような視線で
下からチャンミンを見上げる

「このころんとした骨が可愛いよ」

「え…骨?」


ユノはなにを言っているのか

早く…

お願いだから


その時、いきなりユノが腰骨を甘く噛んだ

「痛っ!」

「ごめんごめん…あんまりかわいくて」

「ユノ…もういじわるしないで…」


お互いが…お互いに魅了されて

堕ちていく

抗えない何か


チャンミンは感じていた


自分はもうスビンの元に…帰れない





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蒼い観覧車 13




「チャンミン?」

車から降り立ったのは、ユノだった


「あ……」

チャンミンは咄嗟に言葉がでなかった


心細くて…

怖くて…

寒くて…


このままずっとひとりぼっちなのかと思って


「ユノ…さん…」

「なんで…ひとりでこんなところまで…」


優しい低い声…

ユノの困惑した顔が、涙で滲んで見えにくい


「ユノさん…僕…」


ユノが手を伸ばした
困惑は穏やかさに変わる


「何も言わなくていい」

「でも…僕…」

チャンミンの顔が大きく歪むと
ユノが優しく微笑んだ


「おいで」

「ユノさん…」

「帰ろう」

チャンミンはこっくりと頷くと
次から次へと涙が溢れ出した

我慢して強がっていた分
一気に決壊したように涙と嗚咽がとまらない

ユノはたまらず、伸ばした手でチャンミンの腕をひっぱるとそのまま抱きしめた。
チャンミンもまた、飛び込むように抱きついてきた


「ごめんなさい…僕…ほんとに…ごめんなさい…」

泣きじゃくるチャンミンの頭をユノは優しく撫でた


「もう、大丈夫だから」

「ほんとに…迷惑ばっかり」

「迷惑だなんて…そんなこと思わないよ」


チャンミンが泣きはらした顔をあげて
ユノを見つめた

涙を溜めた大きな瞳がキラキラと輝く

ユノが慈しむように、そんなチャンミンを見つめる


ススキが夜風にそよぐざわめき

2人を照らすのは月明かりだけ


愛おしくて

狂いそうだ…


ユノは顔を傾けて、チャンミンにくちづけた

チャンミンはそっと目を閉じてそれを受け止める

冷たくて、少し乾いたユノの唇が
チャンミンのそれを捉えようとして動く


僕はきっと…ユノさんが好きなんだ…
そう思って、いいんだよね?


チャンミンは少し唇を開いて、ユノの熱い舌を受け入れた


ユノは優しくチャンミンの肩を抱くと
助手席に座らせて、自分は運転席に入りドアを閉めた

ススキがそよぐ農道を、2人を乗せた車が走る


「もう涙は止まった?」

チャンミンの嗚咽が静かになったところで
ユノが問いかけた

「はい…」

「俺から、少し話をしてもいいか?」

「…はい」

「どうしてひとりで帰ろうとしたのかは聞かない」

「………」

「自分だって、よくわかってないんだろ?」

チャンミンは黙ってこっくりと頷いた


「チャンミンが少し不安定になってることは…
知ってた」

「………」

「電話しても様子が変だったし」

「すみません…」

「謝ることない…知ってて俺がどうにかしてやればよかったものを」

「いえ…」

「これはそっとしておいてやったほうがいいのかって。
そんな風に捉えてたんだよ」

「………」

「仕事が負担か?」

「いえ」

「じゃあ、俺の存在?」

「え?」

「自惚れかもしれないけどさ
俺とスビンとの間で気持ちが揺れているってことはないか?」

「…………それが」

「うん」

「………」

「うん、ゆっくりでいい。
何言ってもいいから、正直に話してほしい」

「よく…わからないんです」

「そう…か」

ユノは落胆するでもなく、少し難しい顔をしている


「ユノさんのことを…好きになったと思うんです」

「…チャンミン」

「だけど…浮気はしたことあるけど、スビン以外の誰かを好きになったことってなくて」

「高校生からずっとスビンが好きだったんだもんな?」

「そう…それも…なんていうか、恋い焦がれて
やっと付き合ってもらえたようなところもあるから」

「そうか」

「なんでもスビンの言う通りに生きてきて」

「………」

「親の言うことより、スビンに従ってきた…」

「それで…正解なことも多かったわけだ」

「たぶん」

「………」

「だから、正直言って…
スビンときっぱり別れた自分が想像できないし
だからといってユノさんが誰かと付き合ったりしたら
耐えられないし…」

「俺は…」

チャンミンが少し興奮気味になる

「そんな自分が…すごく嫌なんです
スビンと別れればいいのに、それは不安すぎて
ユノさんとも一緒にいたいし
あまりに中途半端で、誰に対しても不誠実で」

ユノがハンドルを握っていない手で
そっとチャンミンの手を握った


「ユノさん…」

「もういい」

「嫌ですよね、こんな僕なんか
わがままで自分勝手だってわかってるんです
自分でも、何言ってるんだって…」

「もういいから」

「嫌いになりました?…よね?」

チャンミンが不安で目を見開いてユノを見つめる

ユノはチャンミンの手を強く握り返して
それでも視線は前を向いたままだった


「うれしいよ、チャンミン」

「うれしい?」

「少しでも、俺を思う気持ちがあるなんてさ」

「だって…」


あの時…ホスに対する嫉妬を自覚してしまったんだ…


「正直言って…」

「はい…」

「スビンから奪い去りたい気持ちでいっぱいだよ」

「ユノ…さん…」

「だけど…チャンミンが不安なのにそれはできない」

「………」

「ゆっくりでいい、自分の気持ちに正直に」

「だけどそれじゃ…」

「いいんだよ、自然に俺の元に来てくれたらそれでいい」

「………」

「今そんな気持ちで、白黒はっきりつけることない」

「僕が自分でそれは嫌なんです」

「でも、答えが出ないんだろ?」

「出します!」

そんなチャンミンにユノが笑った

「いいんだよ、チャンミン
俺がそれでいいって言ってるんだから」

「………」

「でもね、これは言わせてもらう」

「はい…」

「容赦なく奪いに行くから」

「え?」

「俺に少しでも気持ちがあるのなら遠慮はしない」

「………」

「今の俺の言葉に返事しなくていい。
これは俺の決意」

そう言ってユノは笑った


チャンミンは困惑していた

ますます、気持ちが揺れ動いて
こんなのでいいはずがないのに

ユノが突然話題を変えた


「今日はあのままいれば、美味しい料理が食べれたんだぞ?」

「え?」

「となりにガーデンレストランを一時的にオープンさせて、そこがブッフェになってさ」

「あ…」

そんなこと…すっかり忘れてた
それを楽しみに今日は来たはずだった

「食べ損ねたね、チャンミン」

「あ…それ楽しみにしてたのに…」

「うん、すごく美味かった…」

「あー残念…」

「残念だったな」

「え?でもさ、ユノさん」

「ん?」

「そんな食べる時間あったんですか?
僕を迎えに来ちゃって」

「ん…実は俺も食べてない」

「ユノ…さん…」

「視察から戻って、レストランでチャンミンを探したけど、見つけられなくて」

「………」

「とっくに帰ったっていうから」

「すみません…」

「挨拶しなきゃいけない人たちに一通り挨拶して
とりあえず駅まで行ったりしたんだよ」

「あ…ほんとに…すみません」

チャンミンは申し訳なさすぎて、
下げた頭をあげられなかった

「でも、しっかり料理はもらってきた」

「え?」

パッとチャンミンが顔をあげた

ユノがニコニコしながら、後部座席を示す

振り返って後ろを見ると
大きなバスケットがあった

「あ……全然匂いがしなくて…わからなかった!」

「パッキングしてあるからね、
フルーツもみんなもらってきた」

「すごい!」

「これから、俺の部屋で食べようぜ」

「はいっ!」

途端に元気になったチャンミンに
ユノが可笑しそうに笑った








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蒼い観覧車 12




チャンミンはそれから少し気持ちが不安定な日が続いた

スビンはそれを見て見ぬ振りをしているようだった。

放って置かれる事がチャンミンにとっては丁度いい距離感だと感じていて、その事も不思議だった

今までは構ってほしくて、気にしてほしくて大変だったはずだ。

チャンミンは少しずつ、自分の気持ちが変化していることに気がついていた

それがどこか不安で、あまりユノに連絡をとらないようにしていた。


やがて

遊園地の工事がはじまり、一部を残して乗り物の撤去が行われ、そこは広い野原となった

地鎮祭とまではいかないけれど
関係者を集めた簡単な式典が開かれることになった

まずは現地を視察して

側のガーデンレストランを借り切って
地元の美味しい食材で作った料理やフルーツが出されることになり

関係者とはいえない連中まで集まって
それはかなりの人数になった。


ユノはチャンミンを車に乗せて現地まで行った

「スビンも連れてくればよかったのに」

「うん、誘ったんだけど、自分は関係者とはいえないからって」

「スビンらしいね、美味い飯にはつられず
立場を大事にするんだな」

「なんか用事もあったみたいだし」

「なんの用事?」

「知らない」

「今日の予定とか、話してくれないのか?」

「しないよ、そんな話。
あんまりしつこく聞くと嫌がられるし」

「チャンミンは知りたそうだな」

ユノは笑った

「………」

チャンミンは図星なのか、口を尖らせて拗ねた


そんなチャンミンを見て、ユノが可笑しそうに笑う

「恋人がそんな風に可愛く拗ねたら、どこへ行くにも連れて行くけど」

チャンミンはドキッとした

「なーんてね」

ポソッとユノがつぶやく


「ユノさんの恋人って大変そう」

「大変だよ?恋人が一度寝た相手とこんな風に車で2人きりになるなんて、許せないね」

「ユノさん…」

「大変な男ってわかってるから、俺は誰とも付き合わないよ」

「相手を不幸にしちゃうとか、思ってるんでしょ」

「そう、不幸にしちゃうからさ」

「そんなことないんだよ?ユノさん」

「………」

「そういう風に、嫉妬してほしい時もあるよ」

「そんなもんかね」


ユノは遠くを見つめて微笑んだ



現地に着くと、たくさんの車がすでに到着していて
「ジェリーフィッシュ」の少ない社員も総出で応対に当たっていた

ユノは少し真剣な顔でチャンミンに言い聞かせる

「いいか?なるべくたくさんの人に顔を売るチャンスだ。話は多少盛っていいから。ここのデザインを全て任されてるくらいのことを言っていい」

「はい…え?ユノさんは?僕と一緒に視察じゃないの?」

「俺はみんなと来客の接待をするから」


そんな…


不安そうなチャンミンを少し心配そうに見つめながら
ユノは何かを吹っ切るようにチャンミンの肩を叩いた

「じゃ、そういうことだから」


視察と言っても、ほとんど自己紹介合戦、という感じだった。

チャンミンも覚えきれないほどの人と挨拶をした


ふとユノを見ると、ユノは何人かの水商売風な女性たちに囲まれている

どこかの偉い人が店の女の子たちを引き連れて来たのだろう

女性たちの攻めの視線は狩人そのものなのに
当のユノはそれに気づいていないようで、身振り手振も派手に遊園地のことを一生懸命に話している

時に大きな笑い声も響き
気づけばユノにさりげなくボディタッチをする女性もいる

そんなことしたって
ユノさんの心は手に入るもんか


なんの根拠もないのに
チャンミンは少し得意げな気持ちになっていた


ユノをあれほどまでに狂わせるのは
君たちにはムリだ

そんな風にチャンミン思う


「こんにちは、チャンミンさん」

ふと声をかけられ振り返ると
先日ジェリーフィッシュで会った植栽業者の営業だった

「あ!先日はどうも!お会いしたかったんですよ
いろいろ聞きたいことがあって」

「実はこちらも提案する準備が整ったのでぜひ。
あ、ウチの技術者を紹介します」

植栽の営業の後ろに小柄な男の子がひとりいるのは気づいていた。

男の子、と呼んだら失礼かもしれないけれど、
まさにそんなイメージの男性だった

「私はコ・ホスといいます。よろしくお願いします」

ホスは丁寧にお辞儀をした

「私は遊具のデザインを担当するシム・チャンミンです」

ホスは驚いたような顔をした

「チャンミン……さん?」

「?」

「あ、すみません…」

「珍しい名前ですか?
それともどこかでお会いしましたか?」

チャンミンは笑った

そして思った…


ホス…僕と同じ匂いがする

たぶん、おそらく…いや、絶対…

しかも、ホスも男に抱かれたいタイプだ


なにがどう、とは言えないけれど
同じ趣向の生き物としての本能なのか

そういうことは、口に出さなくてもわかってしまう

営業がホスに説明をする

「チャンミンさんは、ジェリーフィッシュのユノさんが連れてきたんだよ」

「ユノさんって誰ですか?」

不思議そうにしているホスにチャンミンが聞いた

「ユノさんの紹介はまだ?どっちかというと、僕よりそっちが先かも…」

「そうなんですよね、失礼だとはわかってるんですけど
あの通り、女性陣がユノさんを解放してくれなくて」

植栽の営業が苦笑する
ふと見ると、ユノは幾分うんざりしているようだ

偶然にユノがチラリとこちらを見た

自分の視線を感じたのだろうか

チャンミンが慌てて視線を逸らすのを
ホスが見逃さなかった


何かアンケート用紙が配られて
ユノのまわりの女性陣が一瞬そちらに気をとられた

「ホス、今だ、これを逃したら挨拶できずに帰ることになる」

営業に腕をとられてユノがいる方へ引っ張られて行くホスは、チャンミンにニッコリと意味深に微笑んだ


チャンミンは何か気になり、ホスがユノと挨拶する様子をずっと見ていた


「ユノさん!」

植栽の営業に呼ばれて振り返るユノは
満面の笑みになった

「あー!電話しようと思っていたんですよ」

「すみません。あ、今日は技術者を連れて来ました」

「コ・ホスといいます」

ぺこりと頭を下げたその男をユノが不思議そうに見た

「ん?どこかで会った?」

ホスは上目遣いでユノを見上げた

「会ってませんよ、ユノさん、勘違いです」

そう言ってホスはニヤッとほほえんだ

「そう…か…」

何かを思い出そうとするユノに
ホスが切り出した

「ちょっと、裏の方を一緒にみてもらいたいんですけど
来てもらえませんか?」

「あ、いいよ」

営業と離れて、ユノとホスがその場を離れて裏の方へ歩き出した


それをみたチャンミンはたまらなく不安になった


2人してどこへ行くの?

チャンミンに大きな不安が押し寄せる

あのホスなら、ユノとどうこうなる可能性があるのだ

それを阻止する資格は自分にはない

それは…わかっている

だけど…

この焦りをなんと呼んだらいいのだ


2人が人気のない方へ歩いて行く

チャンミンは我慢できず、その場を離れてみたけれど
だからと言って後をつけるわけにもいかず
ひとりオロオロとしていた



ホスが静かに話し出す

「ユノさん…て言うんですね」

「?…やっぱりどこかで会った?」

「覚えてませんか?」

ユノがまじまじとホスの顔を見つめた

あ…

「思い出しましたか?」

自分が完全に仕事モードのせいか、まったく気づかなかった

この線の細い可愛い男は

チャンミンの声に似ているからと
クラブで誘った男だ

「あの…クラブで…そのあとバーで会った…」

ユノが記憶を辿る

「はい、バーでは僕、フラれました」

へへっと可愛く笑うコ・ホス

「あ……」

「安心してください。僕もこういうことバレたらマズイので、誰にもいいません」

ユノは完全に困ってしまっている

「えっと…」

「ほんと、何も心配しないでください。
僕は仕事はきっちり、やりますから。
そこは公私混同しませんから」

誠実そうなホスの瞳

「うん…俺も…仕事は仕事だから」

「じゃ、早速仕事の話をしていいですか?
一応、途中で僕のこと思い出されたら面倒なので
告白しておきました」

「あ…うん、頼む」

ホスの提案や問題点の指摘はどれも的確で、
ユノはホスを信頼できる優秀な技術者だと判断して安心した

そこへ、チャンミンがひとりでやってきた
何か不安そうな顔をしている

「チャンミン?」

「………」

「あ、こちらね、植栽の…」

ユノがホスを紹介しようとした

「さっき、紹介していただきました」

「あ、そう…」

何を不安そうにしているのだろう

「なにか、あった?」

「いや、2人で何してるのかなって…」

「?」

「なんとなく…」

ホスが務めて明るく笑う

「チャンミンさんのデザインした緑が
きちんと実現できるように相談してました」

「うん、ホスさん、なかなかいいアイデア出してくれて」

「そう…なんですね」

チャンミンも薄っすらと笑った

ユノは優しく微笑む
弓なりになる切れ長の瞳

「チャンミンも一緒に話を聞こう」

「いや、僕は大丈夫です」

「え?」

「僕はいいんです…」

「いいって…そんな…」

困惑するユノを置いて
チャンミンは踵を返して、遊園地の中央へ小走りで戻った。

どこか気恥ずかしくてたまらない


僕は…

何をしているんだ

これじゃまるでガキじゃないか…


2人の間を疑って、様子を見に行った面倒な恋人みたいに…

そんな立場じゃないのに


ユノさんを遠ざけたのは僕のほう

ユノさんが誰を選ぼうが、僕には関係ないはずだ

チャンミンは息が苦しくなってきて
思わず手にしていたアンケート用紙を捻り潰した


不可思議なチャンミンの様子に
残されたホスとユノがしばし気まずい雰囲気になった

「デザイナーにありがちです、少し気持ちが不安定なのって」

ホスがなんでもないように微笑んだ

「そう…だな」

「こんなデザインができる人ですから、きっと繊細な神経の持ち主ですよ」

「チャンミンは…最近少しナーバスみたいで
心配なんだ。なかなか連絡もできなくて」

「あの人が…チャンミンなんですね」

「え?知ってるの?」

「ユノさん、その最中、ずっとチャンミンって僕のこと呼んでました」

「あ…」

この男をチャンミンの身代わりにして
チャンミンを抱く想像をしながら…あの夜…

今となれば、なぜこのホスの声がチャンミンと似ていたように聞こえたのかも…わからない

「すみません。ユノさん」

「いや…」

「仕事の話に戻りましょう」

「そう…だな」



チャンミンは、行動がコントロールできないほどに気持ちが動揺していた

自分が嫌で

そしてユノと一緒にいるホスが嫌で

自分を飼い殺しにするスビンも嫌で

とにかくチャンミンをとりまくすべてが嫌だった


とにかく、ここにはもういたくない


遊園地を出て行くチャンミンに
ジェリーフィッシュの社員が声をかける

「どこ行くんですか?チャンミンさん」

「帰ります」

「えっ?!」

「ユノさんには、先に帰ったと言っておいてください」

「だって、ここからどうやって帰るんですか?」

「大丈夫です」



チャンミンは1人で農道として使われている道を歩いて行った。

この間来た時、たしかここを現地の循環バスが駅まで走ってるとオーナーに聞いた。

このまま、バス停を探して駅から電車で帰る

ユノはホスとよろしくやっていればいいんだ


嫉妬と悲しみと悔しさがごちゃ混ぜになって
チャンミンは正しい判断ができなかった


しばらく歩いていると、チャンミンは気持ちが落ち着いてきた

なんだかユノをホスに取られたような気がして
そんな身勝手な嫉妬でこんな行動に出てしまった

自分に夢中なはずのユノをみすみすホスに持っていかれてしまいそうだ。

だからといって、スビンと別れてユノに正々堂々と行く、ということは怖くて出来ない

なにが怖いのか…それさえわからない


とんでもないことをしてしまいそうで
わけもわからず飛び出してしまった


でも…

あるはずのバス停はまったく見えてこない

自分の勘違いだったのだろうか

だんだんと不安になってきた

途中、無我夢中で何箇所か曲がってしまった

どこか民家で道を聞きたくても、まわりはススキが生い茂るだけで民家など見えない

車も通らない


時計を見ると小一時間経っている
こんなに歩いてきたのか…


チャンミンはスビンに連絡をしようとスマホを出そうとしたが

ない…

チャンミンはあらゆるところを探したけれど
スマホを見つけることができない

あ…

チャンミンの顔に絶望が走る

そういえば、ユノさんの車で充電をしたまま、置きっ放しにしてしまった…


絶望的になったチャンミンは大きくため息をついた

しかたない…

何か見えてくるまで歩き続けるしかない…


それから、どれだけ歩いたのだろう

辺りはすっかり夕暮れになり
ススキが夕陽に金色に輝く様子は素晴らしいと言えるけれど

チャンミンはそれどころではなかった

いろんな後悔がチャンミンの心に湧き上がってくる

その後悔の原因はどんどんと深くなり

そもそも、働き出したのがよくなかった、
そんな結論に達した

スビンの元で、ぬくぬくと過ごせばよかったのだ

デザインでフリーランスになりたい
そう言ったのは自分

いつもスビンに認められたいと思っていた

フリーランスの件はいい話だったはずだ。

だけど、自分はこんなにガキで
ダメな人間なのに

独り立ちして、スビンに認められるなんて
早すぎたのだ


チャンミンは次第に涙が出てきた


空は少し暗くなって、まわりのススキが黒い影に見えてくる


その時


クルマのヘッドライトが遠くの角を曲がり
こちらへやってくるのが見えた


だれかくる!


チャンミンは踵を返して、車に向かって一目散に走った

だれか!!!

助けてください!!!


近づいてくる車のライトが眩しいと感じる頃
ゆっくりと車は停まり、だれかが降りてきた


……ユノ…さん?


長身のすっきりしたシルエットが浮かんだ






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蒼い観覧車 11





「ん…」

ユノが小さな声で呻いた

チャンミンはパッと顔を離した

キスをしたことが、ユノに気づかれただろうか…


「ん…チャンミン」

ユノがぼーっとした顔でベンチに座りなおした
うつろな瞳がなんだか可愛い

「撮り終わった?」

「はい、終わりました」

「後は?」

「もうすぐ夕暮れなので、空の様子も撮りたいかなと」

「いいよ、そうしよう」


ユノは立ち上がって伸びをした


キスをしたことは…気づかれていない…たぶん


「裏の方もちょっと行ってみたいです」

「うん、この間行ってなかったところを回ろう」


2人は夕暮れを待つ間、誰もいない遊園地を散歩した


ユノがスーツではないということがチャンミンにとってはとても親近感が湧いて、
突っ込んだことも聞いてみたくなる

「ユノさん…」

「ん?」

「あの…聞いてみたいことがあって」

「遊園地のこと?」

「違うんです、ユノさんのことで」

「俺?」

「聞かれたくなかったら、言ってくださいね
それ以上は聞かないから」

「わかったけど…怖いな、なんか」

ユノは頭をかきながら、困ったように笑った

「あの…」

「うん」

「奥様とは…なんで別れたのかなって…」

「………」

「いや、あの、ユノさんて、結婚したら…奥さんを大事にするだろうから、女性はすごく幸せだろうなって思うんですよね、だから」

「………」

「あ…やっぱり、僕…すごくぶしつけだな…」

「いいよ、直球で…」

ユノは笑った

「そう…ですか?」

「俺…母子家庭だって言っただろ」

「はい…」

「苦労した母親に、孫の顔見せてやりたくて」

「孫?」

「うん…俺…女の人、ダメなのにさ」

「あ…」

「俺もガキで、浅はかだったんだよ。
嫁さんにはホント失礼だよな」

「でも…愛そうと思ったんでしょう?
ユノさんのことだから」

「まあね」

軽く言うけれど…きっとこの人は
奥さんを愛そうと必死だったに違いない

「俺、努力すれば成せない事はないって思いこむタイプだったから」

「なるほど…」

「気持ちも、そうやって自由自在になるかと思ったけど…違ったよ。当たり前だけど」

「そうかもしれないですね…」

「取り繕っても…愛してないことはバレる…
孫の顔どころじゃなくて…嫁さん、他の男に安らぎ求めるようになって」

「それは…ダメですよね」

「いや、俺が悪い。
全然女として愛してやれないんだから
他へ安らぎ求めて当然なんだ」

「でも、それとこれとは…」

「あたしはあなたのツールじゃないんだって、散々言われた」

「ツール?」

「あなたの親孝行のための道具だったのかって。」

「あ…」

「俺は失礼きわまりないよな…ほんと。
もう…何も言えなかった」

「でも、ユノさんはそれでも愛そうとしたんでしょう?」

「嫁さんが付き合ってたヤツが、いいヤツでね。
俺のところに直談判に来た。自分が幸せにするから別れろって」

「うわ…」

「別れるしかなかった…」

「でも…奥さん…幸せにはなれなかったんですね?」

「うん、そいつの田舎について行ったんだけどさ
やっぱりバツイチっていうのが、受け入れ難いような田舎みたいで」

「ああ…なるほど」

「何度か嫁さんから泣いて電話もらったんだけど
まさか、そんな苦労してるともしらず…
突っぱねちゃってさ、俺…」

「それはユノさんの優しさでしょう?」

「だけど俺と結婚さえしてなければ、そんな目に合わずに済んだのに」

「………」

「結局、母親も悲しませて…
嫁さんも…その相手の男も…みんなを悲しませた」

「ユノさん…」

「サイテーなんだよ、俺」


ユノの唇が微かに震えたように見える

その声もいつもより、少し高めで…震えているのかもしれない…

なんでもかんでも自分で背負って…


ユノはチャンミンに背を向けて
小高い丘から、夕焼けの迫る空を見上げている


涙がこぼれないように
空を見上げているの?


チャンミンは思わずユノに触れようとして
手を伸ばした

その肩に触れる寸前、ユノはいきなり笑い出し
びっくりしたチャンミンは手を引っ込めた

「ユノ…さん?」

「あーなんだかな、俺はチャンミンにこんな話をして
どうしようって言うんだよ」

「いいんですよ、僕でよかったら話して」


その言葉にユノは振り返って、チャンミンを見つめて微笑んだ。

爽やかな微笑み

夕陽をバックにユノの真っ直ぐな男らしさが引き立つ

チャンミンはその美しさにドキッとした。

「ありがとな、チャンミン。
でも、俺たちはとにかくいい仕事をしよう」

「え?」

「俺はチャンミンといい仕事をすることに全力を注ぐつもりだ。」

「………」

「チャンミンがこの先フリーランスとして、いいキャリアになるように力になりたい」

「ユノさん…」


「それが…俺のやるべきことだ」


あなたの…役割ってこと?

なんだか、少し寂しい…

それがチャンミンの率直な感想だった


ユノはまた歩き出した

夕焼け差し込む遊園地のあちこちを
ビデオに収めている


ユノさんは僕との間に大きな溝を作ろうとしている
「仕事」という橋しかかけられない深い溝


もし、あの朝
僕がユノさんの用意した朝食を食べたとしたら

あの夜の香りそのままに甘い会話を楽しんだとしたら

どうなっていたのだろう

きっと今頃、この誰もいない遊園地で手を繋ぎ
キスをしながら仕事をしていたのだろうか

公私混同甚だしく、楽しんでいたのかもしれない


そんな風に考える僕はサイテーだ


ユノさんはたしかに僕を求めていた
僕の心と身体と、全部

それはよくわかっていた

僕はスビンから離れられないくせに
そんなユノさんを浮気相手として楽しんだ


ユノさんをいいかげんにしたら、いけない
この人はそういう人ではない

だから

真っ向からユノさんと向き合うのが
僕は怖い…

怖いくせに

ユノさんが僕を仕事のパートナーとして再認識してくれたことを

寂しいだなんて言う資格は微塵もないのだ


「カメラで記録はしておくけど、生で見たこの感じを忘れないで」

「はい」


ユノさん、僕の脳裏に焼きつくのは
あなたの綺麗な笑顔かもしれない


「いいのができるといいな」

ユノさんが僕を見つめて微笑む

「いい仕事しようぜ」

「……」

チャンミンがなぜかムッとしているように見える


「ん?どうした?」

「仕事仕事って…」

「え?」

抑えようとしても、本音が湧き出るこの口を抑えることができないチャンミン

「仕事を振りかざして、そうやって僕との距離をしっかりとろうとして…」

「………」


「寝たんですよ、僕たち…」


ユノが驚いたようにチャンミンを見つめた


「…………」


「…………」


ユノは顔を背けて眩しそうに夕陽を眺める
そして、低い声でそっと呟く


「じゃあさ…」

「………」


「俺はどうすればよかったんだ」


チャンミンがハッとしたように顔をあげた


ユノは遠くを眺めて微笑んでいる


「俺は…あの朝、あのまま帰す気なんてなかった
チャンミンをスビンのところにはもう帰さないつもりだった」

「ユノさん…」

「でも…チャンミンに謝られて気がついた」

「なにを…ですか?」

「一晩寝たくらいで…俺はとんだ勘違いをしていたんだと…」

「ユノさん…」

「俺、面倒クサいんだよ、スビンも言ってただろ?」

ユノが自嘲気味に笑う
その笑顔が寂しそうだ…

チャンミンは何か込み上げてくるものを
抑えきれなかった

「あなたは…面倒クサくなんかない!
誠実なんですよ、誰に対しても!」

「チャンミン…」

いきなり興奮しだしたチャンミンに
ユノが驚く

「えっと…ごめんなさい…」

吠えてしまって…その後が続かないチャンミンは
思わず自分の唇に手をやったまま、俯いてしまう

「チャンミン」

「…はい?」

ユノを見ると、さわやかな笑顔に戻っていた

「ありがとな…そんな風に言ってくれて」

「そんな…僕のほうこそ、勝手なことばかり」

「さ、裏を回ろう、早くしないと陽が暮れる」

「……」


はぐらかされたのか、助け舟をだしてくれたのか
ユノが空気を変えた

それを寂しいと感じる資格がないのに

チャンミンはなにか悔しいような
なんとも言えない気持ちになった


ユノがカメラを持ったまま、緑生い茂る方へと大きなストライドで歩いていく


その後ろ姿を見つめながら
チャンミンは自分の気持ちを持て余していた


なんだろう

僕はユノさんに対して何を思っているのだろう

その気持ちに上手いタイトルをつけられない


だけど…この込み上げるような激しい気持ちは。



チャンミンは小走りにユノに追いついた

「チャンミン、この辺りから、ほら」

ユノが指差す方向を見上げると

夕陽に照らされて、観覧車が浮かび上がる

「あ…」

「これさ、蒼かったら最高だと思う」

「そう…ですね…僕、間違ってないかな」

「うん、間違ってない。
誰に何を言われても、これで押し通して
出来上がったらみんなの度胆をぬいてやろうぜ?」

「はい!」


そのとき、ふと

チャンミンの手がユノの手に触れてしまった

咄嗟にユノがその手を引っ込めようとするのを
チャンミンが掴んだ

「チャンミン…」

ユノがチャンミンの方をみると
その視線は観覧車を見上げている

「こうやって、大好きな人と夕焼けの中…
この観覧車に乗りたいって…みんなが思ってくれたらいいな…」

ユノはたまらない気持ちになった

「そう…だな」

ユノは握られた手を、一旦解いて強く握り返した








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蒼い観覧車 10



ユノは仕事をまとめて終わらせ
チャンミンともう一度遊園地に行く時間を作った。

仕事的にはそろそろ次の段階へと進まなければならない

その朝、ユノは会社には戻らないつもりで
スーツではなく普段着でチャンミンを迎えに行った


いつものステンカラーコートにジーンズのチャンミンが
ユノを見て驚く

「ユノさん…」


その日のユノは完全にオフ仕様だった。


ヘアスタイルは洗いっぱなしでサラサラとして
ユノをいつもよりうんと若く見せていた。

ジーンズに白いTシャツ、濃紺のパーカに白いスニーカー
何も気負うところがなく、まるで大学生のようだ


「おはようチャンミン」

「ユノさん…」

「ん?どうした?」

「なんか、今日若い!」

チャンミンが思わずそう叫ぶと、ユノが楽しそうに笑った。

「なんだよーいきなり失礼な挨拶だなぁ、
元々若いんだよ」

「だって、なんか、そう思ったんですよぉ」

「今日は会社寄らないからいいかと思って」

「はい、遊園地だし、いいと思います!」

ニッコリと優しそうなチャンミンの微笑みに
ユノの心が苦しくなる


時折溢れ出して、止められなくなりそうなチャンミンへの想い…


ユノはそんな気持ちを振り切るように笑った

「さ、乗って?出発しよう」

「はい!」


車中では、たわいない話で盛り上がった。

ユノのカジュアルな雰囲気がより親しみさを増して
2人は仕事という枠を離れてより距離が縮まる

話題も仕事を離れ、自分のプライベートな話で盛り上がることも多かった

「ユノさん、ちゃんと料理してるんですかぁ?
食事は大事ですよ、フフフ」

「まったくしないなぁ、アハハハ…
たまに義妹がたくさん作り置きしてくれるけどさ」

「あ、ミンスさん…でしたっけ?」

「そう、俺がダメダメだから気になるみたい」


その話を聞いて、なぜかチャンミンの心が少しだけ
ジリッと焼け付くような気がした


なんだというのだ。


独り身の義兄を心配して、料理を作りに来てくれる。
それがなんだと?

一度寝たからって、ユノのセクシャルな部分を独り占めできる立場ではない

あの夜、あまりにユノがチャンミンを欲したものだから
ユノが自分の手中にあると勘違いをしているとしたら

だとしたら、自分はひどく失礼なヤツだ。


「どうした?チャンミン、疲れたか?
少し休もうか」

疲れるのは運転しているあなたの方なのに
僕のことを気にする

「はい、ユノさんも少し休みましょう」


景色のいいサービスエリアに車を停めると
ユノは車を降りて、大きく伸びをした

その時、チャンミンの視界にユノの裸の腹が見えて
心臓がドキドキした


その細い腰にやはりどうしてもあの夜を思い出す


仕事上の付き合いがあるからと言っても
やはり、あの夜をなかったことにはできないのかもしれない。

チャンミンはそんな気持ちを払拭するように
明るくユノに声をかける。

「あのベンチに座っててください!
僕、コーヒー買ってきます」

「え?あ、じゃあ、これ、」

ユノが慌ててジーンズのポケットから財布を取り出そうとする

「いいんです、僕が買うから」

「あ、ちょっと…」

チャンミンは走って売店へ行き
コーヒーを2つ買ってベンチに座るユノのところへ来た。

「なんか悪いな」

「いいんですよ、これくらい」

「いただきます」

軽くお辞儀をして、ユノはコーヒーを飲んだ

「ユノさんて…」

「ん?」

「こんなこと言ったら失礼だけど
きちんと躾られて育った感じがします」

「そうか?」

「はい、そう思います」

「母子家庭だから、その辺は母親が気を使ったと思う。
厳しかったよ、よく挨拶とか、細かいことで叱られた」

「そうなんですか…」


母子家庭だったのか…


「母は妾だし、俺はいわゆる婚外子ってやつだから
そのことでバカにされないようにって思ったんだろうねぇ」

凄まじい環境を、この人はいとも簡単にあっさりと話す

そんな風に生きて、結婚したのに…奥さんは自殺

そのあたりの事が知りたかったけれど
とてもこちらから聞けるような内容の話ではない

興味本位で、そういう事を聞くのもよくない

そうチャンミンは思って少し話の矛先を変えた

「そういえば、今日動画を撮れたら
アプリで色を変えられるみたいで。だからそれで
プレゼン資料として動画を作ってみようかと思ってます」

「アプリやソフトを持ってるか?」

「あ、スビンが…持ってるはずなので…」

チャンミンはなぜかスビンの名前を出すことが憚れた


「それで上手くできればイメージを伝えやすくていいね」

ユノはスビンの名前を出したところで何も感じてない

あたりまえだ

ユノさんはもう、僕とのことは仕事としてとらえてくれてるんだ。

僕がそう望んだんじゃないか…



やがて、車は遊園地に着き

ユノはセキュリティから鍵をもらって園に入った

高台の観覧車は色も落ちてしまって寂れている
これはもうすぐ取り壊されて、チャンミンがデザインした観覧車が作られる予定だった。

「さぁ、動画を撮ろう
観覧車を回すことはできないから、撮りながら俺が動いて、こう、動きをだすかな。」

「はーい」

チャンミンはそう返事しながらも、まだ観覧車に触れている

優しそうな横顔

観覧車に触れて、何かを感じとろうとしているのか


ユノは思わず、そんなチャンミンにビデオカメラを向けて
撮影をオンにした

モニターの中のチャンミンは
柔らかな前髪が風に吹かれてなんとも儚く美しかった


上を見上げるために伸ばされた、細くて長い首…


触れたい…

ユノの中に抑えている衝動がぶり返す


ふと、モニターの中のチャンミンがこっちを向いて
ユノは慌ててカメラをオフにした。


「そろそろ撮りますか?僕どいてますね」

「あ、ああ、頼む」


グルリと観覧車を下から撮影し、途中でチャンミンと交代した。

「どうだ?」

「後は植栽の部分も撮りますね」

チャンミンはすっかり仕事モードで
真剣に各部の動画を夢中で撮っていた

ユノはいまひとつ、することがなくなり
ベンチに座ってチャンミンを見ていた

それに気づいてチャンミンがニッコリ笑った

「ユノさん、眠そう」

「そんなことないよ」

「いいですよ、風が気持ちいいからユノさん寝てて。僕、もう少し撮りたいから」

「うん…」

寝ないつもりのユノだったけれど

いつのまにか、ウトウトと眠ってしまった


チャンミンはしばらく夢中であちこち動画を撮っていたけれど、やがて満足してユノが座るベンチに戻ってきた

ユノは頭をベンチの背に預けて眠っていた


綺麗な顔…


男らしく涼やかな目元から
高い鼻筋へとチャンミンの視線は移り

その柔らかな唇を見つめた


この唇がチャンミンの全身を隙間なく食むり
息もできないほど口付けてきたのだ

なんどもなんども…

だらんと膝から落ちた力の抜けた手

筋ばっているけれど、長い指がセクシーだ

この手が優しく頬に触れて
力強く頭を抱きこんだあの夜


指を絡ませて僕を壁に押し付けたそれ

次々にリアルな感覚が蘇る


チャンミンは腰のあたりにぞくりと寒気に似た快感を感じた

ユノはぐっすりと眠っている

チャンミンは…ゆっくりと顔を近づけ

その柔らかそうな唇にそっとキスを落とした






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蒼い観覧車 9




時間が経つにつれ

チャンミンはまたユノを仕事関係の人として
見ることができるようになった

前とまったく同じ、という訳にはいかなかったけれど
躊躇なく仕事の事で相談することができた


そうはいかないのが、ユノの方だった

抑えても抑えても…
チャンミンへの想いは募り

一度その腕に抱いてしまってからは

チャンミンのすべてが欲しいと思うようになっていた

それでも見事にそれを表に出さず
ユノはプロに徹して仕事をした


「もしもし、ユノさん?」

「チャンミンか、どうした?」

「観覧車の件、どうなりましたか?」


チャンミンが観覧車を蒼いカラーでデザインしてから
ユノから連絡が途絶えていた


「うん…もう少し煮詰めてから話そうと思ったけど」

「はい…」

チャンミンは不安になった
あまりいい結果ではなさそうだ

「結果から言うと、下案を見せた時点で
難色を示されたよ」

「あ……そうなんですか…」

「まだがっかりする必要はない。
コンセプトはしっかりしてる事を伝えてあるから」

「プレゼン…次第って…感じですか?」

「そうだな、そこを頑張ろう」

「はい…」

「プレゼンの仕方を練らないとな」

「打ち合わせしたいです、いいですか?」

「もちろんいいよ」


ひさしぶりに、チャンミンはユノと会った

平日の夕暮れ時に時間を作ってもらって
会社の近くのカフェで待ち合わせた

チャンミンが店に入った時には
すでにユノはテーブルについていた

ユノはいつものスーツ姿で
ノートPCを睨みながら、難しい顔で仕事をしていた

「ユノさん」

声をかけると、ユノがヒョイと顔をあげた

その表情がとてもカッコよくて
チャンミンは一瞬頬が紅潮したかと思った


ユノさんて…こんなにカッコいいんだな

今更ながらにそんな風に思った


「チャンミンひさしぶりだな」

ニッコリと笑うユノは真っ白な歯がまぶしい

「はい…」

「座って、コーヒーでいい?」

「はい」

ユノは店員にチャンミンのコーヒーを注文してくれた。


「進んでいるか?」

ユノがパタッとPCを閉じた

「それが…なかなか…」

「最初は順調だったのに、失速したかな。」

「蒼い観覧車っていうのを、クライアントが難色示してるって聞いて…」

「自信なくしたか?」

「そんなところです。
でも、ユノさん…」

「ん?」

「やっぱり、蒼でいいと思うんです。
最初ユノさんと話したイメージがいちばんしっくりくる」

「うん」

「黄色やピンクで目立たせるより
なんかこう…大人が…カップルが乗りたくなるような
そんな…」

「俺もそれでいいと思う。
最新式のアトラクションを揃えた遊園地ができるほど
広くないし、資金だってないんだ。
そこは俺がちゃんと攻めるから大丈夫だ」

ユノの笑顔はとても頼もしかった


こうやってユノさんと話していると
前向きに考えられる


「プレゼンは動画で見せられればと思ってるんです」

「どうやって?」

「今の遊園地を崩す前に、観覧車を撮影して
あとで加工で色をつけて…」

「いいね、リアルで」

「いいでしょう?イメージビデオみたいに音楽もつけて」

「うん、わかりやすい」


ユノが同意してやると
チャンミンはホッと安心した笑顔を見せた


可愛い…チャンミンの笑顔はほんとうに和む


ユノは愛おしさで胸が締め付けられるようで
思わず視線を逸らしてしまった


「ユノさん、遊園地の工事が始まるのはいつですか?」

「再来週くらいになるな」

「じゃあ、来週には行きたいんですけど」

「いいよ、都合つけるから」

「ありがとうございます」


話がまとまり、2人は別れた

ユノは気持ちが高揚するのを止められない

仕事とはいえ、またチャンミンと出かけることができる
ドライブに行くわけではないことはわかっている
チャンミンはあくまで動画を撮りたいだけなのだ

ユノは自分に言い聞かせた


その夜、高まる気持ちを宥めるため
ユノは繁華街に出た

前にチャンミンが酔いつぶれていたバーへ出向いた
チャンミンがいないことはわかっている
だからこそ来たようなものだ

ユノが重いドアを開けて中に入ると
客の視線が一斉にユノに向けられた

待ち合わせの連れではなくてがっかりする顔もあったけれど、その大半はセクシーなユノを見て心ときめかせた

ユノがカウンターに座って酒を注文すると
早速、誰かが隣にやってきた

「こんばんは」

その声がチャンミンに似ていてドキッとして振り返った

「………」

「覚えてます?前にクラブで…」

すっきりと細面の可愛い顔
今時の子らしく、流行りのマッシュヘアが似合う

そうか…クラブで…

チャンミンに声が似ていて、
個室に引っ張り込んだ…男だ…

「クラブで?会った?」

「そうです。覚えていてくれたなんて感激」

笑うと可愛い

顔の骨格が似てるから、声も似るのかな

ユノはそんな風に思った


「ひとりですか?隣座ってもいい?」

「あ、ああ、いいよ」

その男はユノの隣の席に座り、甘いカクテルを頼んでいる

「あなたの隣を独占して、まわりの視線が痛いです」

男はクスクスと笑った

「俺の隣?」

「お兄さん、かっこいいもん」

「そんな……えっと」

「名乗らなくていいです。気にしないで」

「え?」

「お互い、名前も知らないほうが都合がいいことも多いし」

「………」

「この間…」

「え?」

「僕とやってる時、お兄さん、しきりに誰かの名前呼んでた」

「………」

とたんにユノは気まずくなった


チャンミンの名前を呼んでいたのだろうか


「いいんです。僕があなたを慰めたのなら
すごく嬉しいから」

「………なんて言っていいか…わかんないよ」

ユノは苦笑した

「何も言わなくて…いいです」

男はそっとユノの大腿に手を置いた

「今夜は…そういうつもりはないんだ」

「そうですか…じゃこのまま少し飲みましょう」

男はさっとユノの太腿から手をどけると、グラスを持ってユノのグラスに縁を当てた

「乾杯!」

「ああ、乾杯…」


わきまえている男だった

ルールをわかっている

必要以上にしつこくしない
詮索しない


かと言って、大した話もせず
結局、隣の男は、他の男を見つけてついて行く段取りをつけている

「お兄さん、またね」

そう言って、他の男と腕を組み
ユノへ手を振った

面白くない男だと思っただろうな

ユノはやれやれとため息をついて
2杯目の酒を頼んだ


女々しい自分がイヤになる

いつまでもチャンミンを想う
湿度の高い自分がイヤだ

性格がいいとか悪いとか

好きになるのに理由なんかない

彼氏がいるとか結婚してるとか

そんな理由で諦め切れるはずもない


ユノは長い指でそっとグラスを掴み
少し揺らして氷を鳴らした





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蒼い観覧車 8



チャンミンは自分のアパートへ帰った

なんとも後味の悪いユノとの出来事に
チャンミンは何か苦いものでも食べたような
難しい顔をしていた

スビンはどうしているかと、ふと思った。

念のため確認しても、スビンから連絡は入っていなかった

気にしてないのだ
僕が何をしようと

それほどスビンの懐は広くて深い

チャンミンはそう理解して疑わなかった


いつものことだけれど
チャンミンからスビンに連絡をした

「もしもし?チャンミン?」

「ん…」

「今、アパート?」

「そう…」

「昨夜は忙しくて…突っぱねて可哀想なことをしたね」

「……」

「もう落ち着いたから、構ってやれるよ?」

スビンにそう言われると
なんともくすぐったいチャンミンだった

「仕事だもん」

「そっか」

「昨夜はなにしてたか、聞かないの?」

「んーそうだな、ハッテンバに行って適当な相手を探そうとして…結局見つからずに1人家に帰ったってところか」

「浮気したよ」

「おやおや…そうだったか」

電話の向こうでスビンが笑う

「すごくカッコいい人だった」

「上手かったか?」

「なにが?」

「エッチに決まってるよ」

「激しかった」

「痛い目には合ってないか?」


痛い?

ユノさんは…あんなに激しかったのに
僕に触れる手はもどかしいほど優しかった

チャンミンは突然そんな事を思い出したりした

「痛い目になんてあってない」

「じゃ、上手だったんだよ、そいつ」


結局、僕はスビンの手のひらの上で
もがいて甘えているだけ

スビンはなにがあっても動じない

ユノさんみたいに…余裕なく僕を欲しがったりしない


そう言いつつ…チャンミンは昨夜のユノの淫靡な表情が頭から離れない

チャンミンは仕事がはかどらなかった

言われていた園内のグリーンを構築し直さないといけなかったのに、なにも手に付かなかった

ユノさんと…あんなことになったのは
本当にまずかった

仕事の関係だし
スビンの友達だし

でも、ユノさんは大人だから
きっと仕事には昨夜のことは持ち込まないだろう

やりたい仕事ではあったけれど
早く終わるといい、そんな風にチャンミンは思った

やっと仕事に取り掛かる気になれた頃

突然ユノから連絡があった


「あ…僕ですが…なにか…」

チャンミンは慌てた

なにしろ、昨夜の今日だ

「さっき観覧車の模型が出来上がってきたから、早く見せたいと思って。いつ来れる?」

いたって仕事の会話という感じで
昨夜、あんなに絡み合ったことなど微塵も感じさせなかった

「あーえっと、そうですね、明日でもいいですか?」

ちょっと今日行くというのは、憚られた
まだ自分の身体からユノの匂いがしてきそうな状態だ

「わかった。明日何時でもいいから。
結構いい仕上がりだから、楽しみにしてて」

「あ、はい…」


晴れやかなユノの声に
昨夜の事をどうこう思ってるのは自分だけなのかな、とさえ思った。

「あのさ、チャンミン…」

「はい?」

「来づらかったら、スビンも一緒でいいよ」

「え?」

「遊園地の模型なんてなかなか見れないしさ、
俺が連れてきていいって言ってるってさ、そう話してみたらいいよ」

「はい…」

「なんなら、俺がスビンに会いたがってるとか、適当なこと言ってくれてもいいし」

「ん…ちょっと聞いてみます」


電話を切って
ユノはため息をついた…

やっぱり気まずいんだな

自分としては、昨夜のことを吹っ切るために
できる限りなんでもない風を装ったつもりだった


まだチャンミンの温もりが残るこの身体


忘れなきゃ

忘れないと…前に進めない…


ユノは仕事が終わり1人になると、人肌を求めずにはいられなかった

チャンミン…

求めるのは…チャンミンの身代わり

その夜も馴染みの繁華街で、相手を探すユノ

何人もがユノと肌を合わせたくて
そして抱かれたくて縋ってきたけれど

ユノはその夜、誰も抱こうとはしなかった

チャンミンの残り香を
感じていたかった…

それが本音


昨夜の事は…自分にとっては夢の一夜でも
チャンミンにとってはちょっとした間違いなのだ

寛大なスビンは笑って許すのだろう

俺とのちょっとした間違いを



翌朝、チャンミンはスビンを伴って会社にやってきた

「何か滅多に見れない遊園地の模型があるって聞いて
忙しいのに邪魔して悪いね」

スビンはいつもの柔和な笑顔で挨拶する

「いいんだよ、俺が呼んだようなものだから。」

「………」

チャンミンはやはり気まずそうに黙っている

ユノは2人を別の部屋へ通した。

そこには大きな台しかなくて
その上に真っ白な遊園地の模型があった

「うわぁ」

チャンミンが思わず模型に駆け寄る

「ジオラマみたいですね」

「ここにチャンミンが色をつけていくんだ」

「僕が?」

チャンミンが振り向いてみると、
優しそうに目を細め、微笑むユノがいた

チャンミンはドキッとした

その笑顔に色気を感じてしまったから


「緑の部分のジオラマも作らせてるから
今度それと合わせてみよう」

「あ…はい」

ユノが模型のひとつひとつを説明する

指を指す時に、手首に筋が立って
思わずチャンミンがそれを見つめる


この節くれた綺麗な指を辿っていくと、逞しい腕に繋がっているのを僕は知っている

そして、その腕が僕を抱え込み
狂ったように僕を欲したのだ

整然と冷静に模型について語るユノの
もうひとつの顔を僕は知っている

欲望を剥き出しにして
あなたはあんなにも僕を欲しがった

チャンミン、チャンミンと名を呼び

もしかして、あなたにとってあの夜は
思いを遂げた記念すべき夜だったのでは

そんな風に自惚れたくなる

ふと、視線に気づきそちらを見ると
スビンが僕を見つめていた

すべてを見透かしたようなその瞳に
僕は動けなくなる


案の定

帰り道、タクシーの中でスビンがポツリと呟いた


「浮気相手ってユノだったんだね」

「………」

「その辺の輩じゃなくて良かった」

「………」

「ま、だけど、ある意味面倒くさいヤツだから。
なんていうか、良くも悪くも真っ直ぐだしね」


「…そうでもないよ、あっさり解放してくれたし」


チャンミンのその言葉にスビンは吹き出した

「解放してくれた、か…アハハハ」

チャンミンはスビンの態度に困惑した


「あー、ユノはそんなに激しいのか、ウケるなぁ」


「そんなに…可笑しい?」

「知らないからさ、そんなユノを」

「………」

「ま、ユノなら安心した」


それでも


チャンミンの困惑はやがて霧が晴れるように
明るく消えていく


スビンの手のひらの上は
どんなに暴れても大丈夫だ

そこから落ちることなんてない

僕のやることすべてを見守って
緩やかに成長させようとしている

こんなに大きな愛で包まれて
僕は安心して生きていくことができる…


チャンミンはスビンの手を握った

「なに?どうした?」

「ううん、なんでもない。
こうしていたいだけ」







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