FC2ブログ
プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

初恋30



チャンミンの母親は自分が納得できる解釈をして
やっと落ち着いてきた

チャンミンはユノに脅されて、
イジメられていたと。

辱めまで受けてしまって
傷ついたのはチャンミン

自分の息子は何も悪くない

自分が人生をかけて1人で育てて来た息子が
まさか同級生の男子生徒と恋愛関係だなんて

突拍子もない話は、母の理解を超えた

母は早く元の生活に戻りたかったけれど
ふと、その話が心に重くのしかかってくることがあった。

そして


ユノは退学処分となった。

住み込みで働いていたスナックのママが
なんだかんだと学校に抗議をしたけれど

ユノの就職が上手くまとまりそうなのもあって
口をつぐんだ。

店の常連客のパク社長は、昔から心根が明るく誠実。
商売の腕は確かでいくつかの支社を構えようとするほど仕事は波に乗っていた。

そんなパク社長は、気のいいママを慕って
この場末のスナックを好んで通った

そこで住み込みで働くユノに
最近の若者にはない男気と誠実さを感じていた。

テキパキと仕事さばきもいいし性格も明るくて気持ちがいい。
勉強はどうだとしても、決して頭は悪くない。

それに弟を大学までやりたいだなんて
人情も厚く責任感もある。

パク社長は真剣にユノを会社に欲しがった

ママの太鼓判もあったし
今回、退学になったのも以前からやりあっていた
友達と、ちょっと大ごとになってしまったと聞いている

若い頃はいろんなことがある。

そういうことなら、ウチが是非引き取ってやろう


処分を受けたユノとしては
こんないい話はなかった。

なんだかんだ言っても

スナックのママはユノのことで動いてくれたし
先生も一緒になって取り計らってくれた

あの日、泣きながらスナックを訪れたチャンミンの姿に
ママは少しだけ心を動かされた。

ママは思った

若い頃は、そういうこともあるのかもしれない。

たまたま好きになったのがもしかしたら、同性だと

ただの憧れが、ちょっと違う方向へと行ってしまうことも、あるのかもしれない。


チャンミン自身も表向きは受験生として
追い込みをかけていた

ユノが退学になり
もう2人は会わないと大人たちに約束をすることで
この話は一件落着となったように見えた

けれど

2人はこっそりと連絡を取り合い

時間こそ短かったものの
隠れて会っていた


こんな理由で別れるなんて
2人にとってなんの意味もない

大人になったら
自分で自分の人生の責任がとれるようになったら

誰に何も言わせない

2人で暮らす

それが2人の新しい夢となって
また歩き出したところだった


それなのに

誰がどこで知り得るのか

2人の隠れた逢瀬は

大人たちの耳に入る


再び、大人たちは協議を重ねる羽目となり
2人が会えなくなるような既成事実を作り出した


ユノはソウルではなく、テジョンで働くことになった

ユノがまたトラブルのあった友達とこじれそうだ

そんな事情を知らされたパク社長が、そういうことなら少し友達とは離れた方がいいだろうという計らいだ。

パク社長はこれから立ち上げのテジョン支社で
ユノを試したいという気持ちもあった。


「テ、テジョンですか?」


「チョン・ユンホ、それは仕方ない」

「……」

キム教諭はとても頑張ってくれたのだ

「ユンホ、お前はね、きっとテジョンでも可愛がられる。先生は買ってたからね、お前のこと」

「……」

俯くユノにキム教諭は言葉が見つからない


「私たちが考えるのは、お前たちがいかにして
逢瀬を重ねられるかじゃないんだよ。
2人がこの事で躓くことなく、人生を送れることなんだ」


未熟な若者たちを見捨てずに導こうとしてくれているのは、間違いない。


今後、今までのようにチャンミンとは会いにくいのはわかっていた。

きっと、自分がテジョンへ行ってしまっても
何か会う方法はあるはずだ。

大人になって独立したら、もうそこは誰にも何も言わせない。

チャンミンもいつも言っていた

無事に大学が受かって、そして医者になれば
もう、そこは大人で自分の主張をしてもいいと

それまで、少しでもユノと一緒にいられる時間があればいいと。


いつか堂々と2人で一緒に暮らせるようになるまで…


ユノはテホに連絡をした
テホには退学処分の話もまだしていない

「高校は楽しいか、テホ」

「部活決まったよ!サッカー部!」

「そうか、やりたかったんだよな、サッカー。
よかったな」

「うん、試合とか来てよ!」

「それは…行かれなそうにない」

「ヒョン、どうして?」

「あ、叔母さんたち、なんか言ってなかった?」

「何も聞いてないよ」

「そうか、俺さ、テジョンへ行くことになったから」

「え?なんで?」

「就職決まったんだ」

「ええー?!だって卒業してないのに」

「うん、でも是非にって言われて
もう卒業とか関係ないからさ」

「そうなんだ…」

「金はきちんと振り込めるから心配すんな。
何かあったら、必ず連絡しろよ?」

「うん…」

「きちんと勉強するんだぞ?」

「ヒョンもタバコとかやめて
もうバイクもヘルメット被ってよ?」

「バイクはもう乗らないよ」

「だったらいいけど…」

「また…連絡するよ」


ユノはひさしぶりに図書館の公園に来て見た

退学になってから、会社の仕事がはじまるまで
時間はたっぷりとあった。


テホとチャンミンと3人で歩いた帰り道が懐かしい

2人に小言を言われながら、夕陽の中で笑い合いながら
楽しく帰ったあの初夏の夕暮れ


俺とチャンミンはあの時のまま、いられたらよかったのかな

なにも求めなければ、一緒にいられたのだろうか

今となっては…すべてが遅かった

意を決して
ユノはチャンミンに連絡をした


「え?!テジョン?」

「ああ、その方がいいって先生も言ってた。
会社にはケンカで退学ってことになってて」

「ケンカで?」

「ま、元気がいいくらいに思ってくれてる社長だから。
それなら、その相手ともう離れた方がいいって」

「…ユノ、僕ね、どうしても納得ができない」

「俺は問題ないから」

「退学とかそういうことじゃなくて
僕は、自分が何か悪いことをしたって、そういう実感がまるでないんだよ」

「俺だって…そうだよ…お前を好きなのは本気だ
遊びだとか、それこそイタズラなんかじゃない」

「どうして、離れ離れにならなきゃいけないんだろう」

「チャンミン…」

「ユノは?ユノは僕と離れてもいいの?」

「いいわけない」

即答だった

「……」

「このまま、いつになったら自由になれるんだよ」

「……」

「きっと、いつまでも自由にはなれないよ」

チャンミンは胸元のチェーンを指先で触れていた
心の震えがとまらない

ユノがテジョンへ行ってしまう

「たぶん、僕達は引き離されるんだ…
2度と会えないように」

「チャンミン…」

「うまい事言われて、連絡もとれないようにされて
ユノがテジョンに行くっていうのは
きっとその始まりだよ」


そうなのだろうか

なぜかチャンミンの言うことが、ひとつひとつ
ストンと心に落ちて行く

言われてみれば
思い当たることがないわけではない

「俺、テジョンに行ったら
別の携帯を用意してるからって言われた」

「住むところは決まってるなら教えて?」

「知らされてないよ」

「ほら、やっぱりそうだ」

「チャンミン…まさか」

「だれも…信用できない、こんなのイヤだ
僕はユノと会えなくなるのはイヤだ!」

「俺、行くのやめようかな…」

「ここで仕事ができる?それなら一番いいよね?」

「それはダメだ、チャンミン…テホがいる。
バイトの給料じゃ大学まで出してやれない」

高校を退学になったユノに
そこそこの給料がもらえる就職だなんて、こんなにいい話はないのだ


「じゃあ、僕がテジョンに行く」

「え?!大学はどうするんだよ」

「そんなの行かなくたって別にいいし」

「待てよ、チャンミン」

「ユノ、医者なんて他の誰かがなればいいんだよ。
僕が医者にならなくてもだれも困らない。
僕はユノと一緒にいたいんだ」

「チャンミン…」

「このまま、会えなくなりそうで…怖い」

「……」

「テジョンに住んでいたって
行きたくなったら夜間の大学もあるだろうし
きっとどうにでもなる。ユノが僕を守ってくれて退学になったのに申し訳ないけど、やっぱりこれじゃイヤだ」

「………」


「……一緒に行ったら…ダメ?」


チャンミンがテジョンに一緒に来てくれたら…

そんな幸せな想像は許されるのだろうか


それでも

来て欲しい


やっぱり一緒にいたい


2人の胸に、押さえていたそんな思いがせり上がってくる



「チャンミン、来てくれるか?」

「ほんと?!」

「一緒にテジョンへ行こう
なにがあっても、俺が守ってやる」


ユノ!

チャンミンは安堵の涙にくれた

もう、2度と会えなくなるかと不安でいっぱいだった心が
霧が晴れたように明るくなっていった




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

初恋29



ユノは住み込みで働いているスナックで

ママと対峙していた

怒りで震えるその年老いた手

このママには、ユノはどう恩返しをしていいかわからないほど世話になっている。

若くしてこの世を去った息子を
ユノに投影していたママは

まるで我が子のようにユノの世話を焼いてくれ

預けられた親戚よりも愛情を注いでくれた


そんな存在のこの人を
身の置き所がないほどに怒らせているのは
他でもないユノ自身だった。

知らん振りをした親戚に代わって
電話でPTAと話をしてくれた

「仕方ないわね、この子は」と

ヤンチャなユノを可愛くてたまらない、といった風にユノの頭を小突いたその人は
庇ってくれようと、意気込んで電話に出てくれた

けれど

その事実は、

酸いも甘いも噛み分けたほどのママでさえ
衝撃的なことで

そして、許すことのできない話だった。


「アタシの可愛いドンホの部屋で
あんたたち、そんなことしてたってワケね」

「だけど、俺、いいかげんな気持ちじゃない」

「バカ言ってんじゃないわよ
あたしに隠れてこそこそと。
世間様に言えない関係は、楽しかった?」

「そんな…」

「汚らわしい…今すぐ出て行って」

「……」

「あんたなんて、その辺の路地で暮らせばいいのよ
ネズミと一緒にね!」

「……」

「もう、あたしのドンホの部屋からは出て!」

「わかりました。荷物をまとめます」




味方はだれもいなかった

ここまで忌み嫌われるようなことを
自分たちはしているのだろうか

ただ、チャンミンが好きなだけだ

誰かを傷つけようとしたわけじゃない

それなのに…

なぜこうもみんなが敵になるんだ


「アンタの荷物は全部放り出しておくから」


ふと、家のチャイムを鳴らす音がする


その内、その音が立て続けに鳴る


ママは大きくため息をついて玄関へ出た


ドアを開けると、顔を涙で濡らしたチャンミンが
真剣な顔で立っていた

「あ、もしかして、あんた…」

チャンミンは頭を下げた
溜まっていた涙がボロボロっと地面に落ちる

「はじめまして!シム・チャンミンです
すみません、ユノは…」

「チャンミン!」

ママの後ろからユノが顔を出した

チャンミンはユノを見て泣き崩れた

「うう…ユノ…ごめんね、ほんとにごめんね」

「ちょっと、あんた近所に恥ずかしいから
とりあえず、入んなさい」

ママはその酒とタバコでガラガラになった声で
チャンミンを家に入るように促した。

「うう…すみません…」

「座りなさい、そのソファに」

チャンミンは頭を下げてソファに座った

開店前のこの店のソファは
楽しい思い出しかないソファだった。

こんな思いでまた座ることになるなんて
チャンミンの悲しみはさらに増した

ユノが立ったまま、チャンミンを見つめていた
その瞳は涙を湛えて震えている。


「チャンミン…先生に会ったか?」

「うん…」

「誰が何を言ったか知らないけど…」

「もう、みんなが敵だよ、ユノ」

「チャンミン…」


「僕たち、何も悪いことしてない…
僕はたまたまユノを好きになっただけだ」


「あんた…」

ママが難しい顔をして、チャンミンを見つめている

「あんたね、きれい事言うんじゃないわよ。
自分が何したかわかってるの?」

チャンミンはママの顔を真剣に見つめた


「僕はユノを好きになっただけだ」

「……」

そのチャンミンのあまりの真剣さに
ママは一瞬言葉が出てこなかった。


「もし、これがそんなに罪深いなら
その罰をなんでユノだけが受けなきゃなんない?!」

「チャンミン。
俺がそうしてくれって、先生に頼んだんだ」

「ユノが退学になるなら、僕も学校辞める」

「ユノだけが退学なの?どういうこと?」

ママがユノに詰め寄った

「こいつは、医者にならなきゃなんねぇ。
でも、母子家庭だから、招待生ってやつで大学入んないと。でも、これでバツがついたらそれを受けられないんだよ」

「医者って…」

「医者になって…
こいつの親父みたいに早死にする人を無くしたいってさ」

「………」

「そんな夢を俺が壊すわけにはいかねぇだろ」

「だから、あんたが退学だっていうの?」

「俺は…パクさんが来いっていってくれてる。」

「それは知ってるけどさ」

「それが半年早くなるかどうかって話だろ
いつも今すぐでもいいって、言ってくれてたし。
別の何かだっていいんだ」

「ユノ、そこまでユノが犠牲になることない。
医者なんて、ほかの誰がなったっていいんだ
だけど…僕にはユノしかいない」

「チャンミン…」

ユノが震えている

ユノがママに向き直った

「ひとつ…教えてくれよ」

「ユノ…」

「俺たちってさ、そんなに汚いのかな…」

そう言うユノの瞳は澄んでとてもキレイだった。

「俺、誰かを傷つけようと思ったわけじゃない
そりゃ、まわりに言えば驚かれるから言わなかったよ?
だけど…」

ユノは言葉に詰まった

ママは黙っていたけれど、
やっと口を開いた

「悪いわね、あたし古い人間でさ」

「……」

「そういうことなら、パクさんにはアタシからも良く言っておく。それにね、チャンミンくん?あなた大学行きなさい。」

「そんな…」

「ユノがそこまで考えて、こういう風にしたのよ
大人もみんなそれが一番いいって、思ってんのよ」

「いやです」

「チャンミン…」

「チャンミンくん?あなたね、これからずっと苦しむの
ユノだけが不幸なんじゃないわよ。
こうなって、ユノだけが退学になったこと
あなたは苦しみ続けるわ、あなたそういう子よ」

「ううっ…」

「だから、おあいこよ、ね?
大学がんばんなさい、今回のことは忘れて」


忘れる?

ユノを?

チャンミンを?

ママは深くため息をついた

「あんちたち、ここで少し話しなさい
それで出て行ってよ、ね?
アタシは2階で横になってくるから」

そう言って、やつれた顔でママは2階に上がった



「ユノ!」

チャンミンがユノに抱きついた

「チャンミン…ドンへが心配して、俺が寝泊まりできるところを準備してくれてる」

「ここを…出るの?」

「もう、いられないよ、ママを傷つけちゃったしさ」

「うん…」

「チャンミンのオンマはどう?」

「受け入れられないみたい、自分の言いように話作ってて」

「そうか…可哀想にな」

「僕はユノと離れるのはいやだ」

「チャンミン」

「僕も働く、学校辞める」

「何言ってんだよ」

チャンミンの首元にはあのシルバーのチェーンが光る

チャンミンもユノの首に光るチェーンに触れた

「ユノ、僕はユノを信じてる
ユノしか信じてない」

「……」

ユノは思わずチャンミンを抱きしめた

「ただ、好きなだけなのにな」

ユノはギュッと目を閉じた





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

初恋28



2人で学校から帰ってきて
泣き疲れた母親が、キッチンでボーっとしている


どこを見ているの?

母さん、ごめんね、こんなに泣かせて

僕がしていた事はそんなに母さんを悲しませることだったの…

よく、彼女はまだできないの?
と言ってくれていた母さん

それがユノだっていうことは
ここまでまわりを驚かせることだなんて

正直、僕はまだわからない


「母さん…僕…」

「チャンミン…」

母さんが僕の言葉を遮るように呼んだ


「…はい」

「何も気にしなくていいのよ」

「……」

「あなた、何にも悪くないわ
あの不良に騙されたのよ」

「母さん!」

「わかってる。あんな写真撮らされて
あんた嫌だったでしょう?」

「…違う」

「脅されてたのね、かわいそうに」

「そうじゃないよ!」

「きっと、可哀想に思ったお友達が
学校に言ってくれたの。だからもう心配することないわ」

母は…そう思い込もうとしているのだろう

母なりに自分が納得できるように
話を組み立てている、そんな風に見えた

それほどまでに

僕がユノを好きなことを
受け入れられないのだろう

僕はそれ以上、もう何も言うことができなかった

母にこれ以上なにを言っても、悲しませるだけだ

いつかみんなにわかってもらおうなんて
ユノと話していたことが、これほどまでの事だなんて


そして、更に驚いたことに
すべては母親の言う通りの話が作られていった



翌朝、針の筵の中登校した。

川沿いのいつもの道で、期待していたユノとは会えず

あの「おはよ、チャンミン」と
後ろから肩をポンとされる喜びが今朝はなかった

あの後、ユノに連絡をしてみても
まったく繋がらない。

どうしてるの…ユノ

あの後、どんな話になったのだろう


教室に入れば、みんなが汚いものでも見るような目で
僕を見た。

なんだよ

僕は皆んなを睨みつけながら、席についた


ユノの席は空いている

登校してないのか…


キュヒョンとミノだけが
わざとらしいほどにいつも通り挨拶にきてくれて
どうでもいいようなゲームの話をしてくれる

「あ、おはよう…」

「おはよ、チャンミン、
お前には悪いが、王冠は先にゲットさせてもらったからな」

なんの話?

「キュヒョンは汚い手を使ったんだぜ?
課金したんだよ、オキテ破りだろ?」


あ、ゲームの話か

わざと明るくしてくれる2人

なんか、

泣けた…


「………」

「チャンミン…」

「ありがと」


「なにも心配することない」

ミノが僕の肩を叩いて元気づける


「今日は…これから手続きなんだ」

「なんの?」

「停学処分」

「そんなの自分でやるの?」

「わかんないけど、来いって」

「ユノは…やっぱり同じ停学処分みたいだけど、来てないよ」

なんで…僕だけ」


教室にキム教諭が入ってきた

「1時間目は私の授業だけれど、
自習でお願いね、シム・チャンミン、ちょっと」

クラスのみんながチャンミンを振り返る

「はい…」

チャンミンはみんなの好奇の視線の中
教室を出て行った

廊下を歩きながら、キム教諭が静かに話す

「ユノと…連絡をとった?」

「いえ」

「ドンへから何か連絡は?」

「いえ、ドンへがなにか?」

「いや、あいつも学校きてないから」

「そう…ですか」


「ユノの保護者って、あの親戚のはずなんだけど
拒否されてしまって、だれか身元引受人みたいな人いないかな」

「ユノの、ですか?」

「そう」

「バイト先の…」

しまった!と思った。ユノはスナックのママには言ってないのかもしれないのに。


「ああ、やっぱりね」

「やっぱりって…」

「うん、前もユノがケンカして大変だった時
バイト先のご婦人が来てくれて、面倒みてくれたから」

「……」

「やっぱり今回もお願いするしかないか」


昨日の応接室に入った。

そこには校長とPTAの会長がいた。
面倒くさそうな表情で座っている


「座って」

ぺこりと頭を下げて、チャンミンはソファに座った

早速、と言った感じで
校長が事務的に話し始めた

この件は早く終えたいのだろう

「結論から言って、シム・チャンミンお咎め無し。」

「は?」

お咎め無し?
なにか犯罪でも犯したのか?


「チョン・ユンホが君を脅してたらしいという事で
性的要素を含んだイジメと判断させてもらって
昨日言った、不純な交友ではないということで頼むよ」

早口で話すそれは、まるで罪状認否だ

しかも、ユノが僕を脅すってなんだ?

「ちょ!ちょっと待ってください!」

チャンミンが立ち上がると、
校長も会長も怪訝な顔をした。

チャンミンが抵抗するのを見越していた感じだ

「ここからは、私が話しますから」

キム教諭がチャンミンの肩をおさえた

「じゃ、頼んだよ。私たちはこれで」

応接室から校長と会長がさっさと出て行った


「先生!どういうこと!ユノはどうなるの?」

「退学処分だ」

「………」

「た、退学?停学じゃなくて?」

「そうなんだよ…」

「待ってよ…」

「……」

「僕がお咎めなしって…なんだよ…」

「シム、これはユノの希望なんだよ
ユノが望んだ事なんだ」

「………」

「内々で済ませてやりたかった。
ほんとに、伝わり方がまずかった。最悪の展開だったんだよ」

「……」

「力になってやれず、ほんとに情けないけど」

「こんなのって…」

「シム・チャンミン…」

「こんなのってないでしょう?
なんでユノばっかりこんな!」

「チャンミン!ユノの気持ちもわかってやって!」

「いい?先生?
あの日、この写真を撮られた日
あのベンチに座ろうと言ったのは僕なんだよ」

「落ち着いて、チャンミン」

チャンミンはその大きな瞳を剥き出して教諭に詰め寄った。

「あそこなら、木の枝に隠れて
キスしても誰からも見えないって、そうやって
ユノを誘ったのは僕だよ!」

「もう、それ以上言わない、シム!」

「僕とユノは汚くなんかない!
誰より大好きで、愛し合ってるんだよ!」

「もう、それ以上言わないで!」

キム教諭が怒鳴った

「私だってね…お前たちのことは、少なからず衝撃受けてるんだよ」

「先生…」

「理解してやりたい。
イタズラや、さっき話にでたみたいに
脅しとか、そんなのはない事は知ってる」

「……」

「お前たちは、そんなヤツらじゃない、
どれだけ真っ直ぐで正直なのか知ってるよ」

「……」

「だけどね、世間はそうはいかない!」

「……悪いことなんか…してない!」

「じゃあ、聞くけど
なんで他の生徒みたいに、付き合ってることを
おおっぴらにしなかった?」

「それは…」

「お前たちだって、まわりに理解されないのは
わかっていたんだろう?」

「そんなこと、人に言うことじゃない…」

「知れたら、どんな反応をされるかわかっていたはずだ
そういうものなんだよ」


先生の…言う通りだ


今も、今だって

テホくんがこのことを知ったら
どう思うか気になる

ドンへがどう思っているのか
キュヒョンたちが本当はどう思っているのか


母親が受け入れられないのも、なんとなくわかる


ユノ…僕たちは…本当はわかっていたのかな

いけないことだって…思っていたのかな

「先生…」

「なんだ?」

「罪なの?先生これってそんなに罪なの?」

「世間では、受け入れられないんだよ
それを認めてもらおうとするにはお前たちは幼すぎる」

「…全然、わからない」

「いいか?ユノはね、お前にバツがついて
医大の招待枠を受けられなくなることを恐れた。
それだけは困ると、昨夜、ここで土下座して私に頼んだ」

キム教諭の声に涙の色が滲む

「これで、シムまでが将来を見失ったら
ユノがもっと苦しむ」

「じゃあ、ユノはどうなってもいいっていうの…」

「大丈夫。きちんと私が裏付けをとって
あいつの悪いようにはしないから」

「なんの?なんの裏付け?」

「ユノを欲しいと言ってる会社があるらしくて
事情を聞いたら、結構本格的な話まで進んでいたし
社長さんも本気だった。
私が責任もってそこは面倒みるから」

「ユノにはバツがついていいっていうの?!」

「シム・チャンミン、いいからこれは
一度、ユノと話した方がいい。ね?」


もう、だれも信じられない

味方は誰もいないんだ


孤独だった

チャンミンは初めて孤独を味わった


そしてなにより

ユノに会いたかった


ユノに会えたら、きっとすべてが今までどおり

昨日から今日のことが
とてもバカバカしく思えるに違いない

ユノ…

どこにいるの


チャンミンは首に光る
シルバーのネックレスにそっと触れた






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

初恋27




ある日、ユノはミナに呼び出された

「あのさ、まだ俺に用があるわけ?」

「そうよ、アタシのことバカにしてさ。
忘れたわけじゃないのよ」

「去年のことだろうが?お前だってもうカレシいるだろ」

「でもね、バカにされたのは事実だから」

ユノは呆れたようにため息をついた

思ったよりしつこい女だ。


「で?なんだっていうんだよ」

「なんでもない。せいぜい自分の可愛い恋人を大事にすることね」

「……」

ユノの顔に緊張が走った

「どういう意味だ」

「だから、恋人を大事にしなさいって言ってんの。
忠告よ」

ミナは意味ありげにほほ笑むと、ユノを校庭の隅に置き去りにして立ち去った


ユノは急に不安になった

理由は思い当たらないけれど
何かとんでもないことになりそうな気がする

それが何かはまったくわからない

ただの「悪い予感」だった。

とにかく
無性にチャンミンに会いたい、とユノは思った。

ユノは居ても立っても居られずチャンミンに電話をした

携帯電話はひたすら呼び出し音だけが鳴り響く

出ない…

ユノは携帯の蓋を閉じた

しばらくして、折り返すようにユノの携帯が鳴った

「チャンミン?」

「ユノ…」

力なくチャンミンが返事をする

「どうした?」

「…なんで電話くれたの?」

「なんでって…別に用があったわけじゃないけど」

「先生から何か言われた?」

「えっ?何を?」

「今日、僕とうちの母さんが、先生に呼ばれた。
今、帰ってきたところ」

「なんで?」

「母さん、今、泣いてるんだ、キッチンで…」

ユノの胸に痛みを感じるほどの不安が走る

「どうして…」

チャンミンのテンションの低さが
ユノを更に不安にさせた。

「僕たち、この間…公園のベンチにいるところ
誰かに写真撮られてて…」

「……え?」

「今日、キム先生に学校で見せられた…」

ユノは突然電話を切ってバイクのキーを入れ
タイヤが軋むほどカーブさせて学校へ向かって走り出した。

嫌な予感がだんだん的中していくような気がして
ユノの身体に悪寒が走る

学校の塀にバイクを停めた

校門を駆け抜け、校舎に駆け込み、職員室へ向かって走った

「チョン・ユンホ!」

後ろから声がして振り向くと
そこには担任のキム教諭がいた。

1年からずっと担任のキム教諭

女だけれど怒ると誰よりも怖く、厳しい
男口調でそっけないけれどその心根はとても優しく、
温かいことをユノはよく知っていた

「ユノ、お前どこに行ってた」

キム教諭は難しい顔をしていた

「先生…」

「話がある。お前の保護者に連絡をしたけれど
関係ないと言って取り合ってもらえなくて」

「あのさ、なにがあったか知らないけど
まずは当人だけを呼んで話を聞くべきなんじゃないか?」

「なにがあったか知らないけどなんて
お前よく言えるね、全部わかってるんじゃないか」

「なんでいきなり親とかなんだよ」

「……シム・チャンミンから聞いたのか」

「………」

「ユノ…PTAから来た話でね、個別にどうこうって時間も猶予もなかった。それは悪かった」

「なんだよ、それ」

「ユノ、ちょっとこっちへ」

ユノはキム教諭に応接室へ入るよう促された

テーブルには何枚かの写真が置いてある

「座って」

ユノは心臓がドキドキした

テーブルの上には、あの日、あの紅葉の影のベンチでキスをしている2人が写っていた

しかもそれは1枚や2枚じゃない

「………」

なにも誤魔化すことのできない写真だった

「チャンミンは…認めたんだよ」

「何を?」

ユノはキッとキム教諭をにらみつけた

「お前たちがここで何をしていたか」

キム教諭は負けずにユノを睨んだ

「悪いことなんて、何もしてねえよ」

「ユノ…」

キム教諭の顔が少し悲しげだ

「ごめん、力不足で…」

「…なんだよ」

ユノは狼狽えた

「本当は、私が先に2人に話をしたかったんだよ」

「……」

「一番いい方法を3人で考えたかった」

「……」

「この写真は生徒から親へ、そして学校へと伝わって。
最悪のシナリオなんだよ」

「最悪?」

「うん。お前にはわからないだろうけど
正直、最悪なパターンで話が伝わってしまった」

「俺たちの話は誰も聞いてくれないのか」

「チャンミンはひたすら謝ってた…」

「誰にだよ、誰に謝るんだよっ!」

「PTA会長と母親に」


なんてことだ

チャンミンは親と一緒にこの写真を見せられ
責められ、詫びさせられたっていうのか。

「卑怯だぞ!みんなでチャンミンを囲んで責めたんだろ!
母親を呼び出すなんて最低だ!」

「ユノ!お前はわからないかもしれないけど
それだけ、世間ではお前たちは子供なんだよ」

「チャンミンにとって母親がどんな存在か知ってるだろ?」

「ほんとに、お前に卑怯だって言われても
私は何も言えない…」

「……」

「すまない…ユノ」

「……」

応接室の大きな時計がカチ、カチと時を刻んでいる


「で?俺はどうすりゃいいの…」

「とりあえず、2人とも停学処分だ」

「処分理由はなんだよ」

「不純な交友をしたってことだよ」

「けっ、なんだよそりゃ」

「残念だけれど、チャンミンも招待生の道が閉ざされた」

「え?」

「大学の招待生は高校で事件を起こしてないことが条件だ」

「おい、待てよ」

「残念だけれど…」

「そ、それは…困る!」

「ユノ…」

ユノがキム教諭に詰め寄る

その顔は真剣で悲しそうだった。

キム教諭が今まで見たことのない
ユノの表情だった。

「先生!俺はさ、どんな処分でもいいんだよ。
わかるだろ?保護者だってあんなんでさ、俺がどんな処分になったって、誰もなんとも思わない」

「……」

「でもさ、チャンミンは違うんだよ!
親孝行なのが見ててわかっただろ?」

「ユノ…お前たちは…」

「頼む!チャンミンを助けてくれ!
どうか、頼む…お願いだから…」

ユノはソファから降りて、土下座した

「頼むよ…チャンミンを救ってくれよ」

「ユノ…」

応接室の床に額をつけるユノの頭上でキム教諭の静かな声がする

「チャンミンも、ユノは何も悪くないんだって…叫んでたよ…」

「……」

「ユノを助けてって」


ユノは嗚咽をこらえることができなかった

「何言ってんだ…チャンミン…」

「私もつらいよ、ユノ」

ユノはバッと顔を上げた

「頼む、俺はどうにでもなるんだ
バイト先で、俺に来ないかっていってくれてる会社がある。
だからどうにかなる。
だけど、チャンミンはバツがつくわけにはいかない。
学校だってチャンミンは貴重だろ?
この高校から医大の招待生が出るってなればプラスだろ?」

「ユノ…」

「俺が…全部ひっかぶる」

「……」

「先生、俺のためだと思って、うまい話
作ってくれよ…この通りだから…」

キム教諭はため息をついた

「俺、そのためなら、なんでも言うし
どんな悪役だって構わない…」

「……」

「チャンミンだけは…頼むから…今まで通りに」


もう誰もいなくなった校舎に
ユノの叫びが響き渡っていた





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

初恋26



ドンへが突然、朝迎えに来なくていい、と言い始めた

「なんでだよ、お前、また入院とか困るぜ」

「少し、運動始めたほうがいいってさ。
だから、朝は少し歩くよ」

「そうなのか?」

「お前さ、朝、チャンミンと登校しろよ
ユノもバイクばっかり乗ってないで、少しは歩け」

「……なんだよ、ドンへ」

「いいから、そうしろよ」


ドンへはきっと、
俺の気持ちに気付いてる

さりげない思いやりだった。


「ドンへは…さすがだな」

「……別に」

「バレるかやっぱり」

「仕方ないだろ、あんだけ可愛いきゃ」

「はぁ?」

「あれだけ可愛いかったら、惚れてもしかたないって言ってんだよ」

「まいったな」

「これから、チャンミン受験であまり会えないだろ?
朝の時間を大事にしろよ」

「ああ」

「そのかわり、放課後の勉強の邪魔すんなよ」

「そうさせてもらうよ、サンキュ、ドンへ」



朝、チャンミンが川沿いの道を登校していると
後ろからポンと肩を叩かれた。

振り向くとユノだった

「ユノ!!」

「おはよ」

「どうしたの?バイクは?」

「基本禁止だろ?」

「えー今更でしょう?」

「ドンへが歩いたほうが身体にいいらしい。
俺、元々こっちだからさ」

「そうなんだ、それって調子がいいってことだね」

「だから、朝だけでも一緒に行こうぜ」

「へへっ…うん」


そうやって、お互いの未来のために自分のことを頑張る二人

チャンミンはまずは大学受験、招待生を狙う
ユノはしっかりと就職をする

たった半年の我慢

そんなのあっという間だ。

でも…初めて好きな人と体をつなげる喜びを知ったチャンミンにとってその我慢はなかなか難しく

ユノにとっても、チャンミンから縋られたら
とてもじゃないけれど抗うことなんてできなかった


2人は若く、溢れる情熱に自分が負けてしまう


ユノもチャンミンも、自分の熱を持て余していた

会いたい

声が聴きたい

キスしたい

抱き合いたい

繋がりたい

結局、二人が朝の登校時間だけ会う、なんていうのが続いたのはほんの1週間くらいだった。


ユノはチャンミンの勉強の邪魔にならないよう気を使い
決して自分から会おうとは言わなかった

会いたくてたまらなくなったチャンミンから連絡があるまで耐えている。

そんな日々が続き

やがて、チャンミンは徐々に成績を取り戻しつつあって
2人は順調だった


その日は秋の深まりを感じる気持ちのいい日だった


2人は久しぶりに図書館がある公園を散歩していた。

チャンミンはその日の勉強が終わらなければ、
ユノには会わないと自分を律していたから
2人で会うときは気持ちよく過ごした

紅葉のキレイな公園で、ベンチを隠すように紅く色づいた枝がぶら下がっている

それを見つけたチャンミンが、少し恥ずかしそうに言う

「ユノ、このベンチならさ、キスしても外から見えないよ、きっと」

「えーそうかな」

「大丈夫、僕、昨日から気になっていたんだよ」

2人はベンチに腰かけてみた
なるほど、外からは見えないかもしれない

元々、遊具があるような公園ではないから
平日の夕方はあまり人も通らない

「どうだろうね、見えるかな」

チャンミンが楽しそうに笑う

ユノは愛しくてたまらない、という眼差しでチャンミンを見る

そして、一瞬の隙をついてチャンミンの頬にキスをした。

「あっ!ユノ、ほんとにキスしたね?」

「したよ、外から見えないって言ったのチャンミンだろ」

お返しにチャンミンも一瞬の隙をついてユノの頬にキスをした

二人は笑いあった
楽しくてしかたがない

「ユノ…」

チャンミンはユノに顔を近づけた

「もう一度、キスして」

「欲張りだね、チャンミンは」

おどけた顔をしてため息をついたユノが
顔を傾けて、チャンミンにくちづけた

長いキス

角度を変えてもういちど…


「早く、一緒に住みたいね」

「ああ、一緒に住みたいな」

「僕が一緒に住むと言ったら
テホくん、びっくりするかな」

「喜ぶんじゃないか?俺とチャンミンなら」

「うちのお母さんは無理だろうなあ」

「俺も、あのママは理解できねえだろうなあ」

「いつかさ、みんなに理解してもらおうね」

「ああ、みんなに祝福してもらえるように、俺たち
ちゃんとしないとな」

「まずは、僕は大学!」

「俺は就職だな」


二人は世間というものを
まったくわかっていなかった

ただ、お互いを心から好きで
一緒にいたいと思っているだけなのに

大人たちにとっては
危険な道に進んでいるだけの若い2人だった。


一本の電話がそんな2人の別れの序章だった


「我が校の生徒が不純な交友をしています。」

不純、とされた2人

「生徒同士が普通に男女交際しているのとワケが違う。
子供を同じ学校へ通わせている保護者として
無視できない事案です。
大至急、確認と対応をおねがいしたい」


2人に味方になってくれる大人は
誰一人としていない

2人だけで超えるには
その波は大きすぎた








にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

初恋25



そして9月


高校3年生は卒業後の進路について
いろいろと忙しくなる季節だった

大学を受けるものは模試が続き
就職の者は面談などがはじまっていた


その頃、チャンミンの成績はガタ落ちだった
少し焦っていたけれど

ユノのせいにはできないし、したくない

ユノに会いたいのは自分だ

時間をみつけては、ユノに会いに行き
ユノの声を聞くために、夜中まで電話で話す

そんな生活をしていたら
当たり前といえば当たり前

けれど、それが母に負担をかけることになるとは
チャンミンはそこまで気づけなかった。

すぐに挽回できると思っていたし
その自信もあった。

面談で、キム教諭が首をかしげた

「あんなに成績の良かったシムくんが。
特に学校ではどうということはないのですが
この模試の結果では、招待生で大学に行くのは難しいです」

チャンミンの母にとってそれは
大きな不安となったようだった。

ここまでハッキリ言われるとチャンミンはさすがにうろたえた。

学校の勉強は問題ない

でも、大学受験となるとそうではなかった
しかも、経済状態から招待生を目指さしていたチャンミン。

母が大きくため息をつきながら
それでもニッコリとチャンミンに微笑んだ

「お金のことは気にしなくていいの。
招待生じゃなくたって、国立じゃなくたっていいのよ。
死に物狂いで働くわ」

母さんに負担をかけている

このままじゃいけない

「予備校にも行かせてやれないんだから
仕方ないわ、チャンミンのせいじゃないの」

そうじゃないんだ、母さん

僕は…母さんに言えないような事に
夢中になっているんだ


チャンミンはユノとのことが
次第に後ろめたく思えてきた

元々おおっぴらに付き合えるわけではなかったけれど
チャンミンにはユノに夢中だった。

そして


不安なチャンミンはユノに確実な未来を求めるようになった

「前にさ、先のことを考えようって言ったよね」

「ああ」

「僕は大学へ行かなきゃならない
ユノはどうするの?」

「うん、就職するよ、昼間きちんと働く」

「そうしたら、僕達はどうなるの?」

腕の中で不安気にユノを見上げるチャンミンに
ユノは優しくキスをした

「なにか不安になった?」

「うん…」

「お前、成績が落ちたんだろ」

「………」

「このままじゃ、招待生で医大に行くのはダメか?」

「そう…言われた…」

「それは困るな」

「……」

ユノはチャンミンを抱きしめながら
その首元に輝くシルバーのチェーンを指で弄ぶ

でもその視線は遠くをみつめていた

「チャンミン」

「ん?」

「受験が終わるまで、会うのやめよう」

やっぱり…そういう話になるか

それが一番いいって
そうしなきゃっていけないってわかってる

「チャンミン、たった半年だよ」

「間に合うかな…」

「追い込めば大丈夫さ。」

「うん…」

「……」

「……」

「学校でも、会えるしな」

「うん…」

「……」

ユノが小さくため息をついた

「ユノ」

「ん」

「全然会わないっていうのは…ダメかも」

ユノがプッと吹き出した

「アハハハ…俺も」

ユノの小さなベッドの中で
2人は身をよじって笑いあった


ユノは思う

今まで何人となく、乞われるがままに女の子と付き合ってきたけれど
こんなに可愛くて手放せないと思える恋人が
今までいただろうか。


チャンミンにとってはもちろんのこと
ユノにとっても、チャンミンは初恋だった

友情とは明らかに違う、同性への耐え難い想い

だからこそ
守ろうと思った

チャンミンを…そして、2人を

真剣だからこそ

ずっと一緒にいたいからこそ
しっかりしなきゃいけない。

それでも、会うことを我慢できない、というチャンミンは、ユノにとってかけがえのない愛しい存在だった



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

初恋24




2人はなんとなく、お互いの思いや覚悟を
感じ取っていた。

2人きりで手を繋ぐ時
手に力を込めるユノの熱を

そんなユノを見つめるチャンミンの瞳の甘さを

もう、後戻りは出来なかったし
するつもりもなかった

だから

そんな話が出るのもとても自然なことだった。

同性同士が愛を確かめ合う行為について
2人で少し調べたりもした

最初は恥ずかしかったけれど
ユノが戸惑っている様子がチャンミンにとっては
嬉しく

チャンミンが覚悟を決めているような様子が
いじらしくて、ユノをたまらなくさせた。


「チャンミン、俺は…
そんなのなくってもいいんだよ」

「ユノ、僕が望んでいることだから」

「……」

そんなユノの思いやりが感じられる言葉にも
チャンミンは一瞬不安になる

ユノは自分と違って女の子を知っている

やはり、こういうことは
女の子がいいと思っているのではないか。

いくら僕がいいと思っていても
ユノが踏み込めないのではないか

「そうなりたいと思っているのが僕だけだったら
それは…無理してほしくないけど」

「は?」

「それなら、今のままでも…いいけどさ」

少し凹んだようなチャンミンの表情

「お前、なんにもわかってないな」

そう言って、なんて言ったら気持ちをわかってもらえるのか、ユノは苦笑した


やがて

ユノがアクションを起こした



なけなしの金をはたいて
部屋を予約した

「その日は泊まれるか?」

「ありがとう、大丈夫」


すでに、外に出ればじっとりと蒸し暑いような
そんな季節になっていた。

部屋を予約したことに
チャンミンは胸が高鳴りはしたものの

恐怖とか、嫌悪感とか
そんなものはもう何も感じなくなっていた。


その夜の始まりを知らせるユノのキスは

それまでの優しいキスとは確実に一線を画すものだった。

次の行為へ繋がるキスというのは
いつもとこんなに違うのだと

チャンミンはそんな風に思いながらも
ユノに翻弄されていった

ユノはいろいろな準備をして
チャンミンの負担を減らそうとしていた


ユノはチャンミンを気遣い
チャンミンは想像以上のツラさに気を失いそうになったけれど

時間をかけて、やっとひとつになれた時には
思わず嬉し涙がでたほどだった。

チャンミンに覆いかぶさるユノの、その首にかけられたシルバーのチェーンがチャンミンの目の前で輝いていた

今までみたことのないユノだった。

いつも余裕があって、
ちょっとやそっとでは動じないユノが

自分を抑えられずに苦戦している

そんなユノの姿がチャンミンの快感に繋がる

嵐のような2人の時間が過ぎて

少し静かな時間が訪れた

ベッドに横向きになり、
うれし涙を流すチャンミンに

ユノは何度も何度もキスをした


なんとなく、チャンミンは最初にユノに出会ったころを思い出していた

なんて無粋で、なんて粗っぽい
とんでもない男だと

でも、実際のユノはとても優しい。

何より相手の事を考え
自分が犠牲になることは厭わず守ろうとする

その温かさに誰もが一度は触れてみたくなる

女の欲を掻き立てるようなその容姿とは裏腹な
素朴な温かさに。

2人はフカフカの布団にくるまり
ユノは後ろからチャンミンをしっかりと抱きしめていた

「俺さ」

「うん」

「もう離せない、お前のこと」

「僕だって、離れられないよ」

「チャンミン」

「ん?」

「俺たちの先のことを考えないか?」

「先のこと?」

「ずっと一緒にいられるように
いろいろ考えよう」

「うん、僕はなにをしたらいいんだろう」

「まずは大学だろ?」

「うん、じゃあユノは?」

「俺は、まずテホだ」

「そうか…」


自分のことより、テホだなんて

チャンミンは振り向き、体の向きを変えて
ユノの真正面から抱きついた

「なんだよ」

そんな風に笑いながらも
ユノは優しくチャンミンを抱きしめてくれる

「ユノ、大好き」

クスクスとユノが恥ずかしそうに笑った

「本当に大好き」

チャンミンはギュッとユノを抱きしめた


それからの2人はまるで荒波に飲まれるように
お互いを求めあった


若い2人は時として
心より身体が先を行ってしまう


心と身体がどこで分かれているのか
わからないほどに

理性という箍がこんなにも容易く外れるのは
若い2人だからというしかなかった。

夏は2人で海に行き
暇さえあれば、2人きりになれる場所をみつけて
愛し合った

チャンミンもユノを受け入れることが
既に自分の欲となっていて

ユノに会いたくて、いてもたってもいられない、
そんな時も多かった


どこまでもこの波に飲まれながら
漂っていけたら


そんないい季節が長続きするわけには
いかなかった


夕暮れは黒い雲が立ち込め、突然の豪雨に見舞われることが多くなった

遠くで雷が轟き、空は夏の終わりを告げていた





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

初恋23



ユノとチャンミンはまるでテホの両親のようだった

男気のある父と、清廉で聡明な母

そう思うと、テホは嬉しくなった


いつも自分を守ろうとする兄と
自分を導いてくれる先生と

そんな2人に見守られ、試験を受けられることが
とても幸せだと感じだ

愛されることでパワーを得た人間はとても強い


ユノとチャンミンはその日カフェにいた

今日は土曜日でテホの試験の発表

あと1時間もあるというのに

2人は早々に学校に着いてしまい、
こうやって、イライラしながらカフェにいた


「こんなことなら、ウチの学校の合格発表を手伝ってればよかった」

「なんでだよ、せっかく休みなのに」

「だって、あとどれくらいこうやっていればいいの?
もう心臓に悪いよ」

それくらい、チャンミンにとっても
テホの合格はまるで自分のことのように真剣だった

「で、肝心のテホはどこにいるんだよ」

「もうすぐここへ来るよ。
なんだかさ、すごい自信あるみたいで。
もしダメだった時のことを考えると忍びないよ」

「そんな!ダメだった時のことなんて考えんなよ。
本人が自信あるならいいじゃねぇか」

「だけど…そんな簡単にいくような話じゃないよ」


そして、テホがカフェに入って来た

「テホくん!こっち!」

チャンミンが合図をする

2人のまるで本当の両親のような心配ぶりをよそに
テホは至って明るくスッキリとしている

「テホ!お前さ、もしダメだっとしても
凹んだりする必要ないんだからな?」

「なっ!自分こそ、なんてこと言うの!」

チャンミンがびっくりして、ユノをたしなめた


「僕ね…」

テホが2人を前に静かに話し出す


「ヒョンと先生に力になってもらって
ここまでがんばってこれた」


「テホくん…」


「それにとても楽しかった
図書館通いがなくなると思うと、受験生生活が惜しくてたまらないよ」

「………」

「2人にはほんとうに感謝してる
おかげで試験も全力でがんばれた。
結果はどうであれ、僕は大満足なんだ」


「おまえ…」

チャンミンはすでにグズグズに泣いていて
ユノは言葉に詰まってしまった


「さぁ、そろそろ発表だから、行こ!」

「おぅ、さぁ行くぞ」

そう勢いよく立ち上がったユノだけれど
チャンミンは感動して座ったまま泣いていた

ユノがそれを優しくなだめている。

テホはそんな2人を見ながら
この2人が自分の両親だったらいいのにと
心から思った


合格発表の時間が迫り
校庭には、たくさんの生徒や、その両親が集まって来た


いよいよ発表だ


係の生徒たちが、慌ただしく掲示板を用意して、
白く覆われた紙を一気に剥がした


ユノもチャンミンも、前に乗り出して
その番号を探した


「あった!!!」


テホの番号が

しっかりと大きく

しかも、招待生として!



まだまだ寒い冬の日だったけれど

太陽は少しずつ春に向かって
輝きを増していた

そんな明るい日差しの下で

ユノとチャンミンとテホが

ほんとうの家族のように
お互いを抱きしめあって喜びの涙を流していた


そんな風に、お互いの絆が深まるにつれて
ユノとチャンミンはまた別の想いにとらわれていた

2人の愛し合う行為は
お互い人には見せない自分を見せ合って
相手のために尽くすというものだったけれど

やっぱり
2人はひとつになりたかった

どちらからともなく
それぞれでいろんな事を調べていた

その決心がつくとかどうか
自問自答しながら、2人は変わらず一緒に過ごしていた。

ユノはチャンミンに負担がかかったり
どちらかがツライ思いをすることに反対だった

チャンミンも本や漫画で調べたその行為には
恐怖しか感じなかった

でも

それでも


チャンミンは今日も、お互いが精を吐き出す行為に
心底満足ができずに、ユノのベッドで寝転がっていた

スナックのママがいない間のつかの間の時間
チャンミンの母が仕事から帰るまでのつかの間の時間


2人はひとつになるのが自然だと思えるようになって、
相手を欲しいと思った

もう、気持ちはひとつだ

でもそれだけでは物足りなかった







にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

初恋22



毎朝、ホームルームでユノが寝ているのはいつものことで

だけど

この2、3日はユノは授業中も寝ている。
昼までほとんど起きない

チャンミンがいくらユノを揺り起こしても
全然ダメだった。

以前は店が空いた時間に電話をくれたりしていたし
たまに夜遅くに会えることもあったのに

このところまったくそれもない

どうしたんだろう

夜は連絡もとれない

チャンミンは自分が嫌われたのかもしれない
そう思うようになっていた。

所詮、男同士

最初は興味本位で自分とキスをしたり
それが物珍しかったのかもしれないけれど

もしかしたら飽きてきた…とか。

元々、ユノはだれかと付き合おうと思えば
そんなことは簡単で。

ほかにだれかいるとか?

2人で買おうといった「お揃いのもの」の話も
まったく出なくなってしまった


悶々としながら、チャンミンはクリスマスを迎え
そして約束をした2人のクリスマスの日になった。

その日は2学期の終業式で
珍しくユノがシャンとして朝から式に参列していた

帰る頃になって

「なぁ、チャンミン、何時頃来れる?」

「えっ?あ、あぁ、帰ったらすぐに行けるけど」


覚えていたんだ

よかった


チャンミンは胸を撫で下ろした

自分に飽きたのでは、と
こっちから話しかけることさえ、躊躇していたのだ

今日は予定通り、会えるのだ
2人きりで長い時間を過ごせるのだ

チャンミンは急いで家に帰り
着替えて、ユノのバイト先へと向かった

真冬の太陽が冷たい空気の中で明るかった


チャンミンはインターフォンを鳴らした

「はい、入って」

ユノがいつもと変わらない
爽やかな笑顔で迎えてくれた


「少し、掃除したんだぜ」

「今日は店じゃないの?」

「俺の部屋、掃除したから」


初めて入る、ユノの部屋

ドキドキする

階段を上がる音と、胸の鼓動の音が同じリズムを踏んでいた

部屋はどれだけ散らかってるかと思っていたら
案外スッキリと片付いていた

「意外ときれいだね!」

「だから、さっき掃除したんだよ」

「おつかれさま」

「座るとこないから、ベッドに座って」

「うん」

「ちょっとさ、ケーキとか食べる前に」

「なに?」


ユノは引き出しから、何か紙袋をグシャグシャと出していた

「?」

振り向いたユノの手のひらには
鈍く光るシルバーのネックレスがあった


「あ!これ!」

ほら、とユノは自分の首元を、シャツを引っ張ってみせた

ユノの長い首に、同じシルバーのチェーンが輝く

「え、でも、これ、あの時高くて…」

「なんてことねぇよ」

「どうしたの?だって、あの時、買えなかったじゃん
とてもじゃないけど高くて」

「高い、高いって、そんなこと気にすんなよ」

ユノは手のひらのチェーンを、チャンミンの首に付けようとした

「待って、ユノ」

「なんだよ」

「まさか、店員を脅すとか…」

「はぁ?」

「そんなこと、してないよね」

「するわけねぇよ、俺をどんなヤツだと思ってんだ」

「だって、あの時あきらめたじゃん」

「バイトしたんだよ、バイト!」

ユノが吐き捨てるように言った

「バイト?この店の?」

「バーカ、ちょっと他のバイトもしたんだよ」

「ほかの…」

「もう!言いたくなかったのに!」


ユノに他のバイトを入れる時間なんてないはずだった。

もし、もしそれをするならば、
この店が終わって夜中…

その時間のバイトなんて限られている

そんな思いをしてまで
このネックレスを2人のために

僕の、ほんの思いつきだったのに

「あの時は、店員に取り置きしてもらったんだよ
脅してなんかないから、心配すんな」

「ユノ…」

嫌われたのかと、我慢していた想いも溢れ
自分の為に、そんなことまでしてくれた嬉しさと

いろんな思いが高まってしまい

思わずチャンミンはユノに抱きついて
ベッドに押し倒してしまった

「おっと!お前あぶねぇよ」

ユノはチャンミンを抱きとめて
そして、起き上がった

「泣いてんのか?」

「だってさ…
嫌われたのかと思ったし…」

「あーうん、たしかに疲れてさ、それは悪かった」

「それに…」

「ん?」

「こんなうれしいこと、
生まれてはじめてだよ…」


そっとチャンミンが顔をあげた

つややかな頬に、きれいな涙が一筋こぼれる

涙で潤んだ大きな瞳はこの世の何よりも美しく
ユノの心を鷲掴みにするには十分だった。


「それをユノが僕に付けて」

ユノはそっとチェーンの留め具を外し
チャンミンの滑らかできれいな首にそれを回す

まだチャンミンはグスグスと泣いている

「ありがと、ユノ」

ユノはチェーンを付けると
そのままチャンミンを優しく抱きしめた

「チャンミン」

「ユノ…大好きだよ」

チャンミンもユノを抱きしめた

「俺なんか好きで、ほんとにいいのか」

「変だよね、こんなのおかしいってわかってるんだけど」

チャンミンが顔をあげると
ユノが優しくチャンミンを見つめている

「おかしくなんかないさ。」

「……」

「お前はなんにもわかってない。
自分がどれだけ可愛いか、わかってないよ」

不思議そうな顔をするチャンミンに
ユノはそっと口付けた

長い長いキス

それは次第に熱を帯び

キスは深くなっていく


だけど

どんなに深く口づけても
終わりが見えなかった

満足できない

気持ちを沈める術を知らない

わかってはいた
どうすればこの熱が落ち着くのか

でも、その一線を超えていいものかどうか
そこまでの決心はできなかった

それでも攻めるほうのユノが先に限界を迎えた

「チャンミンは、キスだけで落ち着けるのか?」

「落ち着けないよ、特に今日は」

「……」


2人は囁くように、お互いの耳元で話す

「触っていいか。」

「僕も触っていい?」


「恥じらう」という柵を2人で乗り越えた

自分の欲望に素直に従い
相手にもそうしてあげたいという想いを遂げた

2人で一緒に同じように天に昇ろう

お互いが男だからこそ
どうしてあげたらいいか、わかる

それはきっと、男女より分かり合えて
より思いやることができる愛の行為だ


想いを吐き出して
2人はユノのベッドで抱き合った

満足…だけれど

身体はそれなりに落ち着いたけれど

心は違った

もっとユノが欲しい

もっとチャンミンが欲しい

そんな気持ちは収まるどころか、更に強くなった


けれど


そこまではダメだと、心が警鐘を鳴らす


それから、2人はひっそりとシルバーのネックレスを
首に認めて、その秘密を楽しんだ

たとえ外で手を繋げなくても
おおっぴらに恋人同士だと宣言できなくても

この銀色に光る絆がすべてを物語る


やがてニュースでは、この冬一番の寒さ、というセリフが毎日聞かれるようになり

テホは受験の本番を迎えた





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

初恋21



臨海学校が終わり、バスが学校に戻る頃には
ユノはミナと別れていた

「なんなのよ、あいつ」

プライドを傷つけられたミナはユノを罵倒していたけれど、ユノは気にも留めなかった

チャンミンと想いを確認しあったのに
ダラダラとミナと付き合うほうがどうなんだ、
というのがユノの言い分だ。

その辺りはとてもユノらしかった。


2学期がはじまるまで、チャンミンはテホの面倒をよくみてやり、ユノのバイト時間の合間を縫って、2人で会った。

普通のカップルと違って、堂々と手を繋いで歩くわけにもいかず

暗い映画館で手を繋ぎあったり
母が仕事に出ている間、チャンミンの部屋でキスをしたりした。

お互いを掻き抱きあい
ユノはチャンミンの髪をなで、それこそ貪るようにキスをした。

それがお互いの想いを伝え合う、最上級の行為だった。

さすがにそれ以上はどうすることもできず
2人は唇が痛くなるほどキスをした。

自分たちが背徳であることを楽しみ
外を歩く時手を繋げない分
2人きりになった時のキスは日に日に濃厚になっていった。


そして2学期

クラスではユノはドンヘたちとツルみ
チャンミンはキュヒョンたちと一緒にいることが多く

2人だけの秘密は誰にも知られることもなく
次第に熱を帯びていった。

2学期になれば、今までのように2人きりでいられる時間をとることができず

月曜日にテホを送った帰り道しか
2人で話す時間がない

チャンミンが甘えたようにユノに言う

「最近、キスしてないね」

そんなチャンミンを可愛くてたまらない、というように
ユノが見つめる

「キスしたいか」

「ユノは、したくないの?」

「したいよ、授業中だってお前を机に押し倒してキスしたいって思う。」

チャンミンは恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑った

ユノはあたりを見回して
一瞬でチャンミンの頬にいきなりキスをした

「びっくりした!」

「へへッ、お前可愛く笑うからだよ」

「もう」

青い情熱を持て余す2人に
今日も夕陽が優しい


秋が深まり、テホは受験勉強が大詰めを迎えていた

ユノもチャンミンも少しずつ、そのことに意識が向き
テホの受験は3人の共同作業のようになっていった。


「ユノ、テホが行きたいって言ってる高校を調べたけど」

「おぅ、ありがとな」

「招待生になれなかったら、かなりの授業料がかかるよ」

「入学金はどうにかなる。親父が残してくれてる金があるから。授業料が困ったな」

「招待生を受けるには、先に他の学校が受けられないんだ」

「えっ?」

「だから、招待生がダメだった時に受ける学校をもう決めないと」

そんな事を3人でも話し合った

テホはいろんな事情を踏まえ
チャンミンのアドバイスをよく聞いて志望校を決めた

「先が見えてきたね、テホくん」

「あの」

「?」

「どうした、テホ」

「えっと…」

ユノがテホの両肩をがっしりと掴んだ

「招待生がダメでも、その学校に行きたいなら
それでもいいんだぞ?」


「僕は本当に…幸せだよ」

「テホ…」

「なんか、ヒョンも先生も…本当にありがとう」

テホは涙ぐんでいる

「え?そ、そんな泣かないでよテホくん
まだどこも受かっていないんだからね」

「そうだよ、お前、なんだよ」

そう言いながら、ユノの声も少し鼻にかかるように聞こえている

「ヒョン、僕、ちゃんと勉強して、いい会社に入って
ヒョンに孝行するからね」

「な、なに言ってんだよ、俺をオヤジ扱いすんな!」

「だから長生きしてよ?」

「だから!オヤジ扱いすんなって!」

ユノはチャンミンとテホから離れてしまった。

「感動して泣いてるよ、きっと」

チャンミンがニヤニヤした。


「もっとオヤジくさいよねー」

「ほんとだね」

「早く受験終わらないかなー」

「後もう一息だから、がんばろうね」

「先生も、ほんとにありがとう」

「テホくん…」

「こんな大変な兄弟をお世話してくれて」

チャンミンの鼻の奥がツンと痛くなる

「まだまだ油断したら、ダメだよ」

チャンミンは上を向いた


ほんとに

大変な兄弟だよ

だってさ

僕は2人がいて、生きていてよかったとさえ思えるんだ

そんな気持ちにさせるなんて
なんて大変な兄弟なんだ



秋は深まり、あっという間に冬になった。


街はクリスマス

残念ながら、テホにとっては追い込みでそれどころではなかったけれど

ユノとチャンミンは綿密にクリスマスの計画をして
その日を楽しみにしていた

「あのさ、チャンミン」

「ん?」

「クリスマスイブは店が忙しくて
とてもじゃないけど、会えない」

「うん、知ってるよ、だからその後にって計画してるでしょう?」

「うん、なんかさ、クリスマスが終わったら
バイト先のママ、少し休みとるんだって」

「そうなんだ」

「実家に帰るんだよ。
亡くなった息子さんの命日もあって」

「ふぅん」

「だから、レストランだと高くつくし
俺が何か作ってやるのはどう?」

「え?いいよ!!それがいい!」

「ケーキだけ買ってきてさ」


チャンミンは喜んだ

なかなか2人っきりになる機会がないから
閉めた店内なら、ユノと2人で何も気にせず過ごせる

「そうか?レストランとかの方がいいならそれでもいいけどさ」

「2人っきりになれるほうがいい」

「そう…だよな?」

「ね!じゃあさ、レストランの浮いたお金で
何かお揃いの物を買わない?」

「お揃い?」

「なんでもいいんだけど」

「いいよ、いつも身につけていられるものがいいな」


2人はクリスマスを前に
街へ出て、お揃いで持てるものを探した。

「キーホルダーじゃ、なんかイマイチだなー」

「なぁ、ネックレスとかダメか?」

「え?」

「学校だって、つけてるやつたくさんいるし
シャワー浴びる時も、寝るときもつけられるしさ」

「いいね!」

「それがお揃いだったからって、目立たないだろうし
チャンミンは制服きっちり着てるからわからないだろ」

「うん!それがいい!」


2人で選んだそれは、シンプルなデザインで
でも良くみると繊細な造りのいいものだった。

でも

レストランの浮いたお金じゃ、とても買えない金額だった。

他を探してみたけれど、
やっぱりこのネックレスがいい、という話に落ち着く。

結局、この店に戻ってきてしまった。

「これ、いいのにね」

「ちょっと待ってろ」

ユノが、店員と交渉している

値切れるわけないのに

チャンミンは不安になった

マケてくれない店員に、ユノが怒るのではとハラハラした。

ユノは店員と笑いあって
チャンミンの元へ帰ってきた


「値切ってたの?」

「バーカ、そんな恥ずかしいことするかよ」

「買えないよね、とてもじゃないけど」

「あー、ま、ほかのこと考えよ。
まだクリスマスには少し日があるしさ」

「そうだね」


それから、しばらくして
チャンミンはユノと放課後、なかなか連絡がとれなくなった。

ユノは店が忙しいとしか言ってくれなかった

まさかユノが

あのネックレスの為に

バイトを掛け持ちしてくれてたのを知ったのは
2人のクリスマスだった






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
検索フォーム
ブロとも申請フォーム