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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

湿度(19)




チャンミンが会社に出て、2日ほど経った頃から


ユノからの連絡が途絶えた


会社ではまったくユノの話を聞かない

それとなく、いろいろな人に探りをいれたけれど

「ユンホは研修だろ?」

その答えしか返ってこない

でも、毎日のように送られて来た
画像もピタリと止んだ

さすがに不安になったチャンミンは
部長にも探りをいれた。

「ああ、ユンホね、移動してるんだよ」

「え?移動?」

「なんか、やりたいことがあるらしく
特別に頼んで、もう少し奥地に行ったはずだよ」

「奥地…」

「個人的に連絡がとれないのか?」

「あ、はい、そうなんです」

「たぶん、ラインとかは繋がらないかもな」

「そうなんですか?」

学生たちといる場所は繋がっていたのに…

「政治的に」

「えっ?」

「遮断されてると思うよ、通信はみんな」

「あ、じゃあ、どうやって連絡をとるんですか?」

「都会に出たついでに、連絡してもらうことになってるから心配ないよ」

そんな…

政治的に通信が遮断されるようなところと、都会を簡単に行ったり来たりできるものなのか。


チャンミンは不安になった。

部長がそんなチャンミンの様子を心配した。

「シム・チャンミン、ユノからは定期的に連絡は来ているから心配すんな」

「はい…」

そうはいっても…


チャンミンは久しぶりにミナに会った
なんだか、1人でいると不安が増大しそうだった。


「ユンホさん、そういう子供たちのことも関わりたいって言ってたんでしょう?」

「うん、そうなんだけどね」

「それで、きっと奥地へ行ったんじゃない?」

「だけどさ、研修なのにそんな行動が許されるのおかしくない?」

「ん…っていうかさ、チャンミン。企業がそんな政治的に危険なところへ社員をやるかしら」

「そうだよね…」

「何か、特別な司令を受けてるとか」

「いや、そこまでするような大きな会社でもないし」

「そうか…」

「………」

「とりあえずさ、新居でも探してユノさんからの連絡を待とう?会社には連絡がはいっているんでしょ?」

「うん…」


結局、ユノは約束の1ヶ月が過ぎても帰ってこなかった。

「部長、ユンホさんはいつ戻るのでしょう?」

チャンミンは努めて、仕事上の話、という体で尋ねた。

「なんだか、なかなか連絡がとれなくてな。
こっちも困っているんだよ」

「…なにか…あったんじゃないんですか?」

少し大きな声になったチャンミンをソンヒがちらりと見た。

「そのことは私に任せて、君はユノの仕事を少し肩代わりしてほしい。今、君にできるのはそれだよ」

「…はい」

社員と連絡がとれない、というのに
なんでこんなにのんびりしているんだろう

何かがおかしい


ユノが帰ってくるはずの日をすでに10日も過ぎていた

チャンミンは気を紛らわせるつもりもあって
休みの日には、マンションをひとりで見に行っていた

ボーナスも貯金もユノに会うために使ってしまい
チャンミンは契約金を払うお金がなかった。

でも、ユノのためになにかしていないと自分自身でも不安で。

何軒かまわった中で
とてもいい物件が見つかり、
チャンミンは仮押さえをしてきた。

初めてクレジットカードを使って
契約金を払った。

ユノが帰ってきたら、この部屋に住むんだ

くじけそうな心に喝をいれて
チャンミンはまっさらな玄関に
ユノに買ってもらった白い象を置いた

絶対にまた会える

お金の問題もあって、住んでいるところを引き払いチャンミンは先に引っ越してきた。

この家でユノを待つんだ

家具はそれから一緒に買おう

心配させられた罰に全部ユノに買ってもらって
でも、選ぶのは僕なんだ

そんな風に考えて、想像して


チャンミンは微笑みながら泣いた


泣くのは会えてから。
そう思っていたのに…


不安はどんどん募り、
自分が探しに行けたらいいのに、とまで思った。

でも、もう海外へ行くお金はなかった。


会社に入っているユノの情報で
何かわからないものか。

探ろう
部長のパスワードは自分が変えたのだ。

チャンミンはオフィスのPCでデータ作成の仕事をして、最後に部長のファイルを探ろうとした。

え?

パスワードが変わってる

「あの…」

チャンミンは部長に掛け合ってみた

「先日の資料、数字が違っていたところがあって
修正してもらえませんか?」

「あーそうなのか。わかったやっておくよ」

「お忙しそうですよね。ほんとすみません。
なんなら僕がやっておきますよ。」

「いや、パスワード変えてるから
うん、やっておくから」


これではファイルが開けない…

チャンミンは焦った


だけど、部長のパスワードはいつも自分が変えていて、それには一定の規則性があった。

やってみよう

全員がいなくなった夜のオフィスで
チャンミンはPCを開けた

部長のパスワードと思われるアルファベットと数字を入力する。

そして最後の数字を想像したものに変える

ヒットした!

チャンミンは姿勢を正して、PCに向き直った

えっと、社員のスケジュールから
ユノのファイルを…

あ、あった

ユノ…これだな

ユノのファイルを開いた


!!!!


[移動、現在地不明]


どうして、隠すんだ

行方不明なのに、どうして隠すんだよ!


警察に行こう。

何かある。

明日、部長と、必要であればその上の人間とかけあって…ユノを探してもらうんだ

もうユノが研修に行ってから2ヶ月がたってしまう


会いたくて…たまらない
このままでは、どうにかなってしまう





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湿度(18)



その日は2人で市場をブラブラして、

屋台でランチを食べ

民族雑貨の店を見て歩き過ごした。

手を繋いで歩いたって
誰もなにも言わない


ココナツの実を割ってストローを刺した飲み物を
チャンミンは大事そうに持って歩く

両手で抱える姿が可愛くて

ユノはチャンミンの頭を抱えて何度もキスをしてしまう

チャンミンも最初は恥ずかしがっていたものの
やがては自分からユノの耳元にキスをするようになっていた。

「僕たちはずいぶんイチャイチャしてるね」

チャンミンがニコニコとうれしそうだ。


「いいじゃないか、外国ならではだよ」

「そうだよね」


ふと入った雑貨屋で、白磁でできた小さな象があった。

チャンミンはその白くて丸くて小さい象を手のひらに乗せて喜んだ

「これ、可愛い」

「うん、この国で象は神格化されてるけど
これはなんだか惚けててかわいいな」

「買っちゃおうかな、こんなの買って行っても結局邪魔になるかな」

そう言い終わらないうちに
ユノはその象をレジに持って行き会計をしている。

簡単な紙に包んでもらって
ユノはそれをチャンミンに渡した

「ありがとう!ユノ」

「帰ったら、引っ越して玄関に飾ろう」

「あ…僕たち一緒に住んだら…その部屋に?」

「そうだよ、だから俺が帰るまでチャンミンが持ってて」

「わかった…だから早く帰ってきてよ」

「毎日頑張ってるから」

「あと…3週間もないよね?」

「そうだな」

そう言ってユノはチャンミンの肩を抱いて店を出た。

何か買って、家で食べようかとも思ったけれど
美味しそうなフォーの店があって、2人はそこで夕食をとることにした。


店に入るなり、ユノは眉をしかめた

席を案内してきたのは、明らかに子供だった。

こんな小さな子供が…働いているなんて

学校の帰りに親の手伝いをしている
そんな雰囲気ではなかった。

明らかに他人の店で労働力として仕事をしている。

ユノはその子が怯えた目で注文を取ろうとすると
優しい笑顔でゆっくりと注文した。

そうして、辺りを見回してから
その子供のポケットに小さく畳んだ紙幣をそっと入れた。
そして、キャンディをひとつ続けてポケットに入れる。

少し驚いたような子供に、しーっと黙っているようにジェスチャーをするユノ。

子供はポケットをおさえたまま、店の奥に消えた

なんだか、ショックだった

「これがこの国の実態だ」

「うん…話には聞いていたけど」

「本当は今みたいに金をやるだけじゃ
なんにも解決しないんだよ」

「うん…」

「だけど、あの紙幣で、あの子の家は明日1日ご飯が食べられる」

「あの子の稼ぎじゃダメってこと?」

「ただ同然だよ」

「そうなんだ…」


そもそも今のプロジェクトが
彷徨う学生を企業にマッチングさせるという企画で
ユノにとっては自分ができないボランティアを
なんとか利益に繋げてカタチにしたものだ。


だから、こういうことが気になるんだろう
ほうっておけないんだろうな。


その子供がさっきより笑顔で仕事をしている。


ユノは少し複雑そうではあったけれど
安堵した様子で食事をした。


ユノのホテルへと戻る夜道

「僕さ…」

「ん?」

「ユノの手伝いができるように
仕事がんばるよ」

「ああ、そうだな。頼むよ」

「ユノ、部長に僕を頼むって言ってくれたんだってね?」

「え?そんなこと言ってないよ」

「??」

「俺が誰にだって?」

「部長に」

「そんなこと言ってないよ」

「そう…なの?」

「部長なりの励ましなんじゃないか?」

「…そうか」

「ごめん、それじゃお前がっかりだよな。
部長には言わなかったにしても、俺はそう思ってるよ実際」

「へへ…」

照れるチャンミンにユノはまたキスをする

「なぁ、チャンミン」

「なに?」

「今夜はやめとくけどさ」

「うーん、そうだね」

「一晩中キスしてたい」

「フフフ…それじゃ我慢できなくなっちゃうかもしんない」

「それはその時考えよ」

「考える余裕なんて、僕はないよ」

「おまえー!そうやって煽るのかよ!」

ユノはチャンミンの首をその腕に抱えた

2人の笑い声が蒸し暑い夜道に響いた



そして、翌朝

ユノはチャンミンを空港に送りに行った


「結局、ホテルとったの意味なかったな」

「………」

チャンミンは口をきかない

「何か飲むか?」

「……」

俯いてしまったチャンミン

もしかしたら、泣いているのかもしれない。

ユノはそんなチャンミンの腰を抱き寄せた

そして、俯くチャンミンの顎を少し上向きにすくい上げ、キスをした。

「来てくれて、ありがとな。
忘れられない思い出になった」


チャンミンが自分の身体を受け入れてくれて
ひとつになれた初めての夜


忘れない


もういちど、その可愛い耳元にキスをする。


「うん…ユノも身体に気をつけてね」

やっと喋った、俺の可愛いチャンミン


「部屋、見つけといてくれ、な?」

「そうだね」

やっぱり泣いていた

その長い睫毛が濡れている


キリがない…
離れられない

ユノは決心したように、チャンミンのスーツケースを持って、ゲートへ歩き出した。

やがてチャンミンが早足で追いついて

「自分で持つ」

そう言って、ユノからスーツケースを奪った


元気でね

すぐに会えるさ

待ってるよ、連絡してね


笑顔で…


今は笑顔で別れよう



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湿度(17)




ユノはもう、そんなことできない、とか
お前にツラい思いをさせたくないとか

そんな言葉は口にしなかった


僕たちは、この国の熱気と湿度に頭が少しやられているのかもしれない

熱帯の異国、ということで
心も開放的になったのかもしれない。


ユノは自分の家にチャンミンを連れていった。

すでに夜の帳が降りて
空には見たことがないほどの星が瞬く


「わぁ!星がすごいよ!」

「ああ、これ、お前にみせてやりたかったんだ」

ユノがチャンミンの肩を抱く。

チャンミンの瞳はこんな星空より輝いてきれいだ

ユノはそっと、その頬にくちづけた。


チャンミンの覚悟をユノは感じた。

そのつもりで会いに来たのだろう
はるばるこんな遠い異国まで。

そんなチャンミンの情熱を思うと
ユノはなぜか切なくなった。

抱いてしまっていいものかどうか

そんなこと、そもそもできるのか

シャワーから出て来たチャンミンの熱い湿気を持った眼差しに

そんな愚念は吹き飛んだ


それはもう、ユノに抱いてもらおうと
すべてを委ねる決意に溢れ

その喜びを享受したくて、期待に満ちた瞳

ユノはそっとチャンミンを抱き寄せた


「最後に聞くけど」

「うん…」

「途中でやめられないけど、いいのか」

「いいよ」

「たぶん、準備もいるだろうし」

「してきた」

「え?」

「……今、シャワーで…してきたよ…」


ユノの心にチャンミンへの思いが溢れる

なんていじらしいことを言うのだろう

俺はこれ以上、どうやって愛してやったらいいのか。


麻のサラリとした肌触りのシーツの上で

2人はひとつになった。


粘った水の中に放り込まれたように
息もできず

耳も聞こえず

全ての音は歪んで耳から頭へとゆったりと入ってくる。

快感は腰からスパークするように身体を駆け抜け
新たにエネルギーが生まれるような
電流が身体に渦巻くような

スピードがあるのに
身体の隅々にじんわりと広がっていく


麻のシーツをぎゅっと掴むと
その手を上からユノが握ってくれた


チャンミンは澱みながら思った

ぼんやりと霞む頭で…


僕たちは最初からひとつだったのかもしれない

だから、側にいないと何かが欠けているような気持ちになるのかもしれない

今、ひとつになれて、それがわかった。


僕のかけらがユノだと

ずっと前から知っていたんだ

そんなかけらが側にいるのだから
くっつきたくなって当然なんだ


だからさ、ユノ…

僕たちは離れないでいようね?


ずっと一緒にいようね



チャンミンがユノの側にいられるのは
ほんの2泊だった。

翌朝、ユノはチャンミンをジャングルに連れていってくれるという

「ジャングル??」

チャンミンの顔が少し不安そうだ。

「ジャングルは言い過ぎだな
ごめん、国立公園だよ」

「え?ライオンとかいるの?」

「いないいない、像とかに触れるんだよ」

「へぇー」

「どう?」

「…うん…いいけど」

「いいけど、なに?」

「ユノと…いられれば、なんでもいいんだ」

「……」

「あ、うん、いいよ、国立公園」

「やめた」

「え?」

「後でこの辺散歩するだけでいいか?」

「あ…」


怒らせたかな

せっかくこの国ならではのところに連れて行ってくれようとしたのに。

「あ、ごめん、ユノ」

「………」

「違うんだ…僕を楽しませてくれようとしてるんだよね、うれしいよ」

「………」

「だから、一緒ならなんでもいいって意味」


「俺、やっぱり人のいるところに行きたくないかなって、気が変わっただけだよ。怒ってない」

「?」


「チャンミンがそれでいいなら、ただ一緒にいたい」


「ユノ…」

「実はそれが本音」


普通じゃないかもしれないけど

遠い異国へ来て、なにもしないなんて

でもね…


「実は僕も…へへへ」

照れ臭そうに笑うチャンミンを
ユノが真剣な表情で見つめる。


「明日は帰るんだよな?」

「あ、うん、そう…」

「買い物に行こう、な?」

「うん!そういうのがいい!」

「そういうの?」

「買い物とかさ、散歩とか、なんでもないやつ」

ユノはニッコリと笑ってくれた

「じゃあ、朝ごはん作ってやるから
ゆっくりしてて」


ユノに簡単なサラダとトーストの朝ごはんを作ってもらい、一緒に食べた。

ユノはこの国の話をした。


「仕事を与えることが助けることじゃないんだって実感したよ。まずは教育だ。」

「そこから改革しないとダメってことか。」

「みんな頭がよくて、真面目で。
そこをアピールできたら、需要は多いはず」


自分のやりたいこと、仕事のこと

そんなことを一生懸命に話すユノは
とてもカッコいい

それを自分に熱く語ってくれることも
チャンミンは嬉しかった


楽しいことは2倍
嫌なことは2分の1




僕たちはそんな2人だよね?




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湿度(16)




最初は何も不思議なことはなかった。

ユノは空港に着くと、現地のスタッフがカタコトの英語で迎えてくれた。

ムッとした湿気
亜熱帯の空気が尋常ではない

ここでユノは発展途上国の人たちが
就労のためにどのような勉強をして資格をとっているのか、そんなことを学ぶ事になっていた。

主に学校をまわり、一緒に授業を受けたりする。
なんだかんだ言っても、そんな学校に通えるのは
その国でもある程度の階級より上の人間だ。

学び多い日々。
ユノは現地の学生とすぐに仲良くなり
一緒に勉強したり、部活なども楽しんだ

夜は学生たちとビールを飲みに行ったりもしたけれど

圧倒的にユノにはチャンミンが足りなかった


チャンミンの肌を知ってしまった以上

会いたい、という理由にはいろいろな感情が含まれて

ユノは夜になると、チャンミンと暮らすことを想像しながら眠りについたりした。



チャンミンの方はなかなか連絡のとりにくいユノに
イライラしていた。

もう10日間、まだ10日間…

連絡は入ってはいるものの
それは時差のせいもあって、すべてチャンミンの仕事の時間だった。

まわりの景色の写真が送られてくることもあったけれど、

たまにユノを慕う現地の学生が写り込んだりしていて、チャンミンをヤキモキさせた。

会いたい

ユノに…会いたい


ユノの欲情する姿を目の当たりにしてしまった今

チャンミンの心はもちろんのこと
身体もユノを欲しがっている

自分としては、もうユノを受け入れる覚悟は出来ている。

どんなに欲を解き放しても
やはりユノとひとつになってみたかった。


我慢ならなくなったチャンミンは
作戦を実行した。


オフィスでチャンミンは部長の補佐をしていた。

「チャンミン、悪いけど
メールを確認しておいてくれないか」

部長の絶対の信頼を得ている自信もあった。

「パスワードはいつものでいいですか?」

「月が変わったから、パスワードを変えておいてくれ」

「はい」

部長のファイルから、ユノの宿泊先を探した。

それをコピーして、チャンミンはエアとホテルを押さえた。

そして、ソンヒと部長が打ち合わせをしているところへ行く。

「どうしたの?チャンミン」

「あの、週末から来週にかけて休みをいただきたいのですが。」

「休みを?」

「はい。人数がいないところ申し訳ないのですが、親戚で具合の悪い者がおりまして。
ここで一度会っておこうかと。」

「あら、それは行った方がいいわね」

「来週末になると少し忙しくなるからな、
休みも今週ならいいぞ」

「ありがとうございます」


チャンミンはユノに連絡をした。

[今週末、そっちに行くよ!
休みをとったよ。ウソついた(^◇^;)
10時に空港着くから迎えにきてね]

2時間ほどして、返信があった。

[チャンミンが?
ほんとに?
ウソでもいいや、10時に空港に行ってるから]


チャンミンは猛然と仕事をこなし、
やっと週末を迎えた。


ユノがいる国までは直行便がなく
トランジットを経て、15時間もかけて辿り着いた

空港はじっとりとした湿気に包まれている

ユノはどこ?


あたりを見回すと、チャンミンの視線がある一点で止まった

この国の人々が好んで着る、腰に鮮やかな布を巻いたスタイル。

素足に革のサンダル

黒いタンクトップから陽に焼けた、逞しい肩があらわになっている。

浅黒くなった顔はより端正に男らしく見えて

そこには、野生的で、あまりにも美しいユノが立っていた。

薄っすらと笑みを浮かべて
愛おしそうにチャンミンをみつめている


泣いてしまいそうだった

僕を置いて、あなたはなぜこんなところで
笑っていられるの

ユノに会えた喜びと、
僕を思って泣き暮らしてはいなかったユノへの怒り


そして、そんなに美しくセクシーな姿を晒して

僕が虜になっているのをお見通しのような、そんな瞳


「チャンミン」

「なんなの、その格好」

「変か?」

ユノは自分の腰巻をつまんで笑った

「すごく変!」

チャンミンはユノに会えた喜びを素直に出せず
戸惑って天邪鬼になっていた。


美しいユノがゆっくりと歩いてきて

チャンミンの手をとった。


「よく来てくれたな、こんなところまで」

「……会いたかったんだ」

「うれしいよ、マジで」

ユノはチャンミンの腰に手を回して抱き寄せた

「こんなところで…ユノ…」

「誰も気にしないよ」

ユノはゆっくりとチャンミンを抱きしめて
その力は次第に強くなっていく


やっと会えた…


ほんの10日間だったかもしれないけれど
あなたのいない日々は想像以上につらくて

会いたかった…

チャンミンはユノを抱きしめて
その温もりを全身で感じていた

僕はやっぱり…

ユノとひとつになりたい…

ユノがなんと言おうと。


「なんか食うか?」

「うん、お腹空いたよ」

「いいとこ連れてってやるよ」


ユノはタクシーを待たせてあり
チャンミンを乗せてホテルに寄り荷物を置かせた。

いかにも東南アジアの屋台街といった風情の街に繰り出して、ユノは行きつけの屋台でチャンミンにご馳走した。

「ユノ、すごく美味しい」

「だろ?ホテルのレストランよりうんと美味しいんだよ」

地元のビールなども飲みながら
2人はお互いの近況を話した

「こっちはなんとも普通。部長がかなり力を入れてくれて、僕やスンホは前より楽させてもらってる」

「なんだよ、俺じゃないほうがいいのか」

「スンホはそうかもね」

「チャンミンは…やっぱり俺がいいか?」

「さあね、どうだか」

「なんだよ、可愛くないなぁ」

そんな言葉とは裏腹な優しい瞳

「ユノは?充実してそうだよ」

「ああ、こっちの人はみんな純粋でいい人ばかり。
すごく勉強熱心でさ、俺、研修が終わっても少し関わりたいと思ってるんだよ」

「え?こっちに住むってこと?」

「それはないよ」

「………」

「だって、俺たち一緒に住むんだろ?」

「あ、忘れてなかった?」

「俺が言ったんだぜ?忘れるわけない」

ユノの指がチャンミンの唇をそっと撫でる


チャンミンはそっと目を閉じた

キスされたい

そっとチャンミンが目を開けると
ユノは熱を孕んだ瞳でチャンミンをみつめている。

「ユノ…」

「なに?」

「今日は朝まで一緒にいる」





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湿度(15)




ユノが研修に行く日が近づいた

部長は見事に引き継ぎを完了させていて
ユノはさすがだと思った

「よろしくお願いいたします」

「ああ、今後、必ずお前のためになる研修だと思ってる」

「はい、そう伺ってます」

「大きくなって戻ってくることを期待してるぞ?」

「ほんの1ヶ月ですけどね」

「たかが1ヶ月、されど1ヶ月だよ」

「そうですね、はい」


1ヶ月、1ヶ月と呪文のように唱えている可愛い存在がもうひとりいた。

出発の日が近づくにつれて
ため息は大きくなり、その眉が八の字になる


「耐えられないかもしれない」

ランチのリゾットをグチャグチャとスプーンでかき回しながらチャンミンがボソッとつぶやく

その姿がユノには可愛くてたまらない

「連絡は毎日するよ」

「……時差があるでしょ」

「だから…お互い起きてる時間をねらって…」

「ユノ、調べたの?
その時間は僕、会社なんだよ?」

「そう…なのか?」

「なんにも考えてないよね?」

拗ねてワガママを言う姿がたまらない

「お前に会えなくて耐えられないのは
俺の方だよ、チャンミン」

「……そお?」

「お前がスンホと遊びに行って
お互いそんな気持ちになったらどうしようとかさ」

「え?」

「お前がミナちゃんと、何かの拍子にそんな関係になったらどうしよう、とか」

チャンミンは笑った

「ないない!そのどれもない!」

ケラケラと笑いながら、大きく手を振る


「チャンミン」

「ん?」

「今日はその笑顔が見れてよかったよ」

「………」

「なんとか現地に着くくらいまで、心が持ちそう」


その言葉にチャンミンがフンと横を向いた

もう泣きそうだ

「そんなの、その先どうするの!」

ユノもへへへと笑った

「ほんと、どうしようかなぁ」

「………」

「一緒に写メ撮ろうぜ」

「うん…いいけど」


チャンミンも2人の画像がほしかった…

毎朝、毎晩ながめていたら耐えられるだろうか


その夜、チャンミンはユノの部屋へ荷造りの手伝いに行った。

「ホテル住まいなら何もいらないよね?」

「たぶんね、発展途上国とはいっても都会だし」

「じゃあさ、昼間言ってた写メ撮ろ?」

「ああ、いいよ、おいで」

ユノは片手にスマホを持つと
チャンミンの肩を抱いて

インカメラで何度も撮った

ユノもチャンミンもTシャツ1枚

「脱ごうぜ、服着てないのがいい」

「ユノ、何考えてるの?写真でなにするつもり?」

くすぐったそうに微笑むチャンミンが
どうしたらいいかわからないほど可愛い

「何をするかなんて、お前と同じことだよ」

そうチャンミンの耳元に囁けば
またクスクスと笑う

ユノは結局チャンミンにキスの嵐を浴びせ
チャンミンは荷造りなんてまったくできず

熱を吐き出すことにお互い夢中になり
朝を迎えてしまった。

ユノはしっかりと写真を写真紙に印刷して
パスポートに挟んだ

スマホの画像なんて
バッテリーがいくらあっても足りない

それくらい見つめているだろうと思っていた。


ユノのいないユノのプロジェクト。
ソンヒと部長でなんとか切り盛りできそうなところまでカタチはできた。

「企業に学生を紹介するスタイルから抜け出すっていうのはいいね。」

部長はユノを褒め称えた

「ユンホさんが個人的にやりたいことだったらしくて」

ソンヒも自分の主張を控えめにユノを立てた

ユノに振られたカタチになっているのに
ソンヒさんはすごいな

チャンミンは感心した。

ミナが好きになるだけある
素晴らしい女性だな

部長が微笑ましくチャンミンを見た

「ユノからはね、チャンミンをよろしくと頼まれていてね」

「僕ですか?」

「ああ、ユノがいない間、鍛えてほしいと」

「はぁ…」

「自分の右腕にしたいんじゃないか?将来的に」

チャンミンは微笑んだ

仕事でもユノの手伝いができたら。。
そう思うと心が踊った

ユノはそこまで考えてくれていたんだ。

「ユノは今回の研修で見聞を広げて帰ってくる
それくらい有名な研修だ。人生感が変わってくるやつもいるくらいだからな」

そこまでだとは、知らなかったけれど

将来を期待されている社員しか行かれないとは聞いている。

チャンミンはユノが誇らしかった



そんな日が何日か続き、
とうとうユノが旅立つ日がやってきた。
チャンミンは空港にユノを送りに行った

最後まで…拗ねた

寂しくて寂しくて…たまらない

「向こうでキレイな人がいたらどうするの?」

「チャンミン…」

「連絡くれないと、僕だって何するかわからないからね」

「そんなこと言うなよー心配でたまらない」

「1ヶ月なんてさ…」

「そうだな、チャンミンの髪が1cm伸びたころ
帰ってくる感じだろうな」

出発のアナウンスが空港に響く
ユノの飛行機が案内される。


「とにかく身体に気をつけてね
変なもの食べないようにさ」

「わかってる」

「ユノ、大好き」


「チャンミン」

「なに?」

「愛してるよ」


ユノ…


大きく手を振って、出国ゲートへユノは消えて行った

たった1ヶ月の研修旅行

1ヶ月で戻ってくるはずだった研修旅行だった




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湿度(14)




2人とも、収まりどころがなかった

のぼりつめた感情と興奮はどこで終わりなのか
2人は探りあぐねていた


どうしたらいいの

出口が見つからない


答えはひとつなのだろうか。

ユノはそれだけはしたくなかった

チャンミンは弟だという感情が心の奥に潜んでいて
突っ走ってしまう気持ちを抑えた


ユノは荒い息を整えて
チャンミンにシャツを着せてやった

チャンミンはじっとそんなユノの目を見ている
じっとりと汗ばむような視線

そしてボタンを止めようとするユノの手を押さえた

「終われないよ、ユノ」

「そんなこと言うな」

「僕は大丈夫」

「大丈夫じゃないよ」

「ユノは辛くないの?」

「なにが?」

「こんな中途半端な…」

「大丈夫だから、何か飲もう」

チャンミンはユノのスラックスのベルトを掴んだ

「チャンミン…」

チャンミンはユノのベルトを外そうとしている

「ダメだよチャンミン…」

「僕がいつも自分でするような感じでいい?」


ユノは抵抗できなかった

あまりにチャンミンは可愛く、色香に溢れ

守ってやらなきゃ、という思いと、
制してやろうとする気持ち

相反する2つの感情を行き来している

チャンミンの手が
いとも簡単にユノを高めていく

ユノはその綺麗な喉を晒し、喘いだ


お前の手が俺をとんでもないところへ連れていこうとしている

もうこれ以上は耐えられない

ユノは身を翻すと、チャンミンを床に倒し
その上に跨った


「あ…」

あっという間にチャンミンは裸同然にされてしまい
恥ずかしさに思わず顔を腕で覆った


見上げれば、自分がユノに征服されているのがわかる

その豹のようなしなやかな身体が自分を押さえ込みそれに反した繊細な手が、チャンミンを的確に捉える

じっとりと湿度の高い空気が2人を取り囲み
チャンミンはユノに翻弄され、我を失っていた。


自分だけが落ちていくわけにはいかないのに

快感で目もくらみそうになりながらも
チャンミンはなんとか半身を起こした

ユノにと向き合う形でやっとお互いを高め合うかたちになった。


見たことのないユノの表情
晒したことのない自分の喘ぎ声


こんなに長く一緒にいたのに
こんなあなたを初めて見る

きれいでどうにかなりそうだよ、ユノ



細く白いうなじを晒して
快感を逃そうとするチャンミンに
ユノは自分が理性を完全に失ったことを知る

愛しいだけのお前にこんなに翻弄されるなんて

今まで俺はお前の何を見ていたんだ

いや、知っていた

だから、他の人間がそれに気づいたらどうしようかと

自分はいつも嫉妬と闘っていたんだ

お前に対して理不尽な行動をとる自分に悩んでいたんだ。


俺はバカだね、チャンミン


チャンミンのきれいな首に片手を回し
その可愛い顔を引き寄せる

快感に耐えるその唇は信じられないほどの色気を放ち、ユノを誘う

食らいつくようにくちづけると
そのぬめった感触と熱さが脳天を貫き

2人ともほぼ同時にすべてを解き放した




「もう、ユノヒョンは…」

2人とも放心状態で天井をみつめていたけれど

やっとチャンミンが口をきいた


「ん?」

「ここ、玄関なのに…」

「ほんとだ」

フフとユノが笑った

「お前がおかえり、なんて言うからだよ」

「なにそれ?フツーでしょ?」

「いろいろあって疲れて帰ってきた時にさ
大好きなヤツにおかえり、なんて微笑まれてみろ」

「?」

「たまんないに決まってるだろ」


チャンミンは納得してにっこり微笑んだ

「なぁ、俺が研修から帰ってきたらさ
一緒に住もうぜ?」

「おかえりって言って欲しいから?」

「ああ」

嬉しくて飛び上がりそうだったくせに
チャンミンはわざと大きなため息をついて見せた

「どうしようかな?」

「なんだよ、ダメ?」

意外そうにユノが言う

不安そうなその表情もたまらない


「そういえば、ソンヒさんは…」

「ああ、うん、そのこと報告に来たのに」

「……」

「俺なんかより、うんと男前だったよ」

「そう…」

「プライドもあったのかもしれないけど」

「……そうだろうね」


「とりあえずシャワー貸して」

ユノが起き上がった

チャンミンも我に返った

「ああ、そうだね、もうなんとかしなきゃこれ」


やっと状況に気がついたようなチャンミンに
ユノが愛おしそうに目を細めた





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湿度(13)



チャンミンはどういう顔をして会社に行けばいいのか、少し迷った

首をかしげて考えてみたけれど
幸せすぎて、すぐに頬が緩む

昨夜のキスが忘れられない

夢にまで見た…ユノとのキスは
想像以上に甘く、意外にも激しく。

ユノにきつく抱きしめられた感触が
まだ身体に残っている


「おはようございます」

オフィスに入ると
すでにユノは出勤していて、ソンヒと打ち合わせをしていた。

「おはよう」

いつも通りの挨拶

いつも通りの朝。

それでも、ユノの視線はチャンミンからなかなか外れない

ユノの視線を追って、ソンヒがチャンミンを見た。

さっと視線を逸らすチャンミン。

自分とユノとだけが持つ秘密を
晒してはいけない

でも、

申し訳ないけれど、ユノヒョンは僕のもの

もう自分にはそれを言う権利があるのだ

そう思うと、すべてに余裕ができたようで
昨日とはまったく別の世界にいるように感じた。


仕事中も正直言って、上の空だった。

ユノは自分とはまったく違って
研修に行く前の仕事でバタバタしているようだったけど、

スーツ姿の広い背中を見ているとドキドキする

あの背中に抱きついていいのは
自分の特権なのだと。

そんな調子のいいことも考えていた。

今までずっと耐えて我慢していたんだ。
今日くらい調子に乗ってもいいよね。

スンホが肘をついてきた

「なーんですか?ニヤニヤしちゃって」

「なんでもないよ、ちょっといい事があってね」


ユノがチラリとこちらを見る

嫉妬したかな…


「彼女ができたのは知ってますけどー」

「彼女なんていないよ」

「そうなんですか?あれ?」


ユノがこっちをしきりに気にする

ソンヒが振り返ってチャンミンたちを見て
ユノの顔と見比べる…


「たまにはゲーセン行きたいな」

スンホはそんなことを呟くと


「チャンミン、ちょっと」

ユノが呼んだ

「はい」

「指示書作ったから、関係部署に周知しておいて」

「わかりました」


チャンミンは大きな複合機の前で
書類の読み込みをしていた。

そこへユノが後ろから近づいてきて
背中ごしに小さな低い声で呟いた

「今夜、ソンヒと話す。
その後会いたい」

ドキッとした

会いたい、という言葉は今まで何度も言われたのに
今は以前とはまったくちがう意味を持つ言葉だった。

「どこにいたら、いい?」

「家にいて。行くから」

「……わかりました」

体の奥から熱が上がってくる

今夜、ユノと会う。

ソンヒさんと別れてフリーになったユノと。


打ち合わせを兼ねて、という雰囲気を漂わせ
ソンヒがユノをランチに誘った。

「もうすぐ研修ね」

「ああ」

「さみしいわ」

「……」


「この間も、私同じこと言ったのよ」

「え?」

「あなたが研修に行ってしまうのはさみしいわ、と」

「……」


「ユノはこう答えてくれたわ。
1ヶ月なんてすぐだよ。すぐ会えるよって」

「………」


「今日は言ってくれないのね」

「ソンヒ」

「チャンミンくん?」

「え?」

「チャンミンくんへの気持ちに気づいた?」

「何言ってるんだよ」

「わたしはとっくに気づいていたわよ」

「なんの話だよ」


「意外とずるいのね。
あたしを切り捨てるならもっとばっさりといったら?」

「………」

「どう?」


「ソンヒはなにも悪いことしてない」

「…ユノ」


「だから、傷つけたくない気持ちが先に立ってる」

「……」

「だけど、ソンヒの言うとおり、
かえってそう思うほうが残酷だよな」

「……ユノ」

「なに」

「ごめん…無理に結果だすことないわ」

「ソンヒ…この関係は終わりにしたい」

「……」

「ソンヒはなんにも悪くない…ごめん」

「わたしに魅力がなかったってことよ」

「………」

「だから、私がまったく悪くないって言うのはないのよ」

「……」

「以上」

そう言ってソンヒは席をたって、店を出て行った。


今夜ゆっくり話そうと思っていたけれど

これでいいんだ。

ゆっくり話そうが、早く話そうが
結果は一緒だ


ユノは伝票を掴んでレジへ向かった。


それなりに罪の意識を感じたまま、ユノはオフィスへ戻った。

デスクで資料とデータを照らし合わせているチャンミンの一生懸命な姿に癒される。


今まで付き合った女たちの、誰にも感じなかった興奮と、涙がでそうな想いをチャンミンに強く感じているユノだった。


ユノに気づいたチャンミンがなぜか
慌てて身支度を始めた。

「あ、あの役所提出書類を出してくるので
そのまま直帰しますね」

そんな慌てるチャンミンとは裏腹な
落ち着いた態度のソンヒが部屋に入ってきた。

「いってらっしゃい」

その声にチャンミンがビクッとしている

「はい、行ってきます」


チャンミンはソンヒと顔を合わせづらくて
このまま家に帰ってユノを待つことにした

これから、死刑宣告を受けるであろうソンヒさんに少しだけ申し訳ないと思う。


チャンミンはミナに連絡をとって事情を話した。

ミナは喜んでくれた。


「たぶん、今頃ソンヒさんはユノに…」

「あ、オンニはもうその話知ってるんじゃない?
今夜これから飲みに行くのよ」

「え?飲みに行くの?」


チャンミンの部屋のインターフォンが鳴る

え?

まさか、ユノ?


モニターを確認すると
そこにはスーツ姿のユノが見える


ユノだ!


チャンミンは勢いよくドアを開けた


「おかえり!」

チャンミンの元気な声に
ユノは驚いて後ずさりした

「あ、ただいま…」

「とりあえず入って」

そう笑顔で促すと

ユノはなんの遠慮もなく押し入るように部屋に入ってきて

チャンミンの腕を引っ張った


!!!


チャンミンは玄関の壁に背中をしたたかに打ったと思ったら

その反動でユノの胸に抱き込まれた


あまりの激しいユノの行動に
頭がついていかない


それでも、心は喜びに溢れ、
体はもうコントロールできないほど興奮している


チャンミンもユノにしっかりと抱きついた

「お前に会いたかった」

「会いましたよ、会社で」

「昨日みたいなお前に会いたかったんだよ」

「…ユノ」


「今日も俺を好きだと言ってくれよ」

その甘く低い声

ユノの唇がチャンミンの首筋を這う

荒い息が耳元にかかると
チャンミンは気を失いそうになる

「好き…ユノが好きだよ」

「俺も…お前が好きだよ」


ユノはチャンミンのジャケットを、スルリと脱がすとそのシャツに手をかけた

思わず、チャンミンはシャツの襟元を掴む

「嫌?」

「そうじゃないけど、ちょっとだけ怖いよ」

「お願い、お前の肌が欲しい」

ユノは性急だった。

自分はジャケットもシャツも脱いでしまい
タンク一枚になってしまった

セクシーなユノが
自分を求めて興奮している

その様は匂い立つような色気と
獰猛さを兼ね備えてチャンミンに襲いかかろうとする

頭がクラクラして

その美しさに酔いつぶれてしまいそうだ


チャンミンも自らシャツを脱いだ

僕の肌が欲しいなら
いくらでもあげるよ


ユノはひどく興奮していたけれど
チャンミンを苦しめるのはいやだった

そういう行為はなくてもいい、

そう自分に言い聞かせていた。

だからこそ、肌を触れ合わせたかった。

「おかえり」といわれて
チャンミンがどんなに自分の人生に必要なのか
悟った気がしていた




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湿度(12)



チャンミンはユノのシャツを握りしめたまま
固まった


見られてしまった…

一生知られたくなかった…


息もできない

心臓の音だけが、ドクドクと身体全体に響き渡るようだ

じっとりとした空気を纏い
氷のような冷たい汗が背中を伝う

この世の全てが停止したような感覚


終わった


ユノが怖がっていないか、気になった

そっと瞼だけを上げてユノの目を見た。

さっきまで泣いていたせいか、
残った涙がツーっとチャンミンの頬を伝う。


ユノは入り口のドアのノブを掴んだまま

なぜこの時間に会社に戻ってきたのか
そんなことはどうでもいい

ユノの目は見開いていた


ヒョン

僕から逃げる?


「ユノ、ごめん…」


なぜかわからないけど、
とりあえず、謝った


「………」


「気持ち…悪いよね…」

チャンミンはへへっと笑って見せた

そんなことでごまかせるような事態ではない


ユノはゆっくりと近づいてきた

引っ叩かれるのだろうか


チャンミンは動かずにいた


ユノがチャンミンの目の前に立つと
チャンミンはギュッと目を瞑った

ユノは、ゆっくりとチャンミンの手から
自分のシャツを取った


そして、チャンミンの腕をとったかと思うと
思い切り引き寄せて、自分の胸に抱き込んだ


!!!!!

え?


あっという間に抱き込まれ
チャンミンの視界には、ユノがはいってきたドアがその肩ごしに映る

この状態がよく飲み込めない

抱きしめられている


抱きしめられたのは初めてではないけれど

あんなところを見られて

そして…今

ユノの手はチャンミンの体を撫で回しながら
時折きつく抱きしめる

うなじにあたるユノの唇から

熱い息を感じる

背中を突き抜けるような快感が
せり上がってくる

膝がカクンと抜けそうになり
思わずユノの肩を掴んだ

頭の中が沸騰しそうだ

ユノは少しだけ身体を離し
至近距離からチャンミンを見つめた

その逞しい腕は
がっちりとチャンミンの腰を抱きかかえて離さない

ユノの濡れた瞳は真剣だ

困ったような、悲しいような
そんな漆黒の瞳

「ヒョン…」

チャンミンの声は掠れていた


「何泣いてんの…お前」

ユノの低い声が小さく囁くように聴こえる


「僕、こんなこと…」

ユノの手がチャンミンの頬を撫でる

「ごめんね、気持ち悪いよね、シャツなんかに」

「気持ち悪いなんてこと、あるもんか」

「………」


どうしたら、いいの?


「僕…ごめん…」

「なんで謝るの」

「だって!」

「だって、なに?」

「こんな風にされたいって…ずっと…」

「………」

「僕はね…あなたが思ってるような…可愛い弟なんかじゃないんだ」

チャンミンの大きな瞳に涙があふれる

「もっとね?…気持ち悪い存在なんだよ…」

「なにをしてほしい?」

「え?」

「こんな風にされたいってさ、もっときつく抱きしめていいの?」

「ユノ……」

「なにしても…いい?」

「………」

ユノは…どうしちゃったんだろう…

「僕がなにしてたか…」

「………」

「ユノは…わかってる?」

チャンミンの声に少しだけ涙が混じる


「…俺こそ…」

「……」

「ヒョンなんて…慕われる資格ないんだよ」

「え?」

「お前のこと…いやらしい気持ちで見てた」


「……まさか」


「怖がらせたら…いけないってさ…
自分がお前になにするかわからなくて…」

「怖がったりしないよ…」

チャンミンはユノの頬に手を添えた

「なにされたって…ユノになら…」

ユノの唇が近づく

「なにされたって…本望だ…よ…」


鼻がぶつからないように

ユノは顔を傾けてくれた

そっと重なったユノの唇は

想像以上に柔らかく

そのねっとりとした舌が

僕を解放する


想いを伝えるというのは
言葉だけではなく

こうやって、行為で伝えることができるんだね


ユノの舌が…僕を欲しいと言ってくれてるようで
唇を…頬を…耳を…

これ以上どうやって伝えたらいいのだろう

湧き上がる熱を

完全に反応してしまった自分の身体が
やっぱり恥ずかしい

ユノの胸をそっと押して腰を引く

ユノは意外そうな顔で眉を顰める

「やっぱり…嫌だった?」

珍しく自信のなさそうなユノの顔

「違うよ…」

「………」

「僕…大変なことになってるから…」

「だから?」

「恥ずかしいよ…」


ユノはフッと微笑んだ

妖艶で美しく…雄の湿度を孕んだ微笑み

「じゃあ、俺は大変じゃないと思ってるのか…」

「……ユノ…」

ユノはフーッとため息をついた


優しく微笑み、チャンミンの髪を撫でる

「お前のことが…好きだ
悪いけど…弟なんかじゃない」

ユノ…

やっぱり言葉でも伝えなきゃ

「僕も…ユノのことがずっと好きだった」

「チャンミン…」

「伝えたらいけないって…ずっと…我慢してた」

ユノはもういちど、チャンミンを抱きしめた


こんな風に抱き合うことが
いいのか悪いのかなんて

誰が決めるんだ

僕たちがいいなら、それでいいんだ

僕はユノの温もりが欲しい


このまま離れたくないと思った

だけど、それ以上どうしていいかわからなかったし
その時はそれが精一杯で

僕たちはどうにか冷静になって

オフィスを後にした


「今日はお互い家に帰ろう」

「うん…」

「今の俺は危険極まりないよ…」

そう言ってユノは笑った

「いいんだよ、危険なヒョンで」

「お前、そんなこと言うけど。」

ユノが長めの前髪をかきあげる

「煽るのはやめてくれ」

困ったように微笑むユノが大好きだ

チャンミンは思わず、ユノの指に自分の指を絡めた


暗い夜道を歩いた

本当は電車で3駅もあるのに

こうして2人で手を繋いでいたくて
線路沿いの道を歩いた

「お前、いつからそんな気持ちになってたんだ?」

「高校生くらい…かな」

ユノのキスシーンを見たことは、黙っていた

「俺は…気づいたのは最近だけど」

「………」

「今まで変な話、お前にムラムラきてて、そうすると彼女作ってたんだと思う」

「で、僕に彼女の友達をいつも紹介して…」

「だって、それなら一緒にいられるから」

「そんなの…」

「サイテーだよな、それで嫉妬してたんだぜ、俺」

「そういうことか…」

うれしくて、ユノの指をぎゅっと握る

「自分が勝手すぎてウケる」

ユノもチャンミンの指を握り返した

どこか後ろめたい気持ちがなかったわけじゃない
でも、やっと解放された気持ちに

他のことはなにも考えたくなかった


「俺、ソンヒとは別れる」

「………」


誠実なユノヒョンらしい

そんな段取り…


「ゆっくりね、無理せず」

「無理するさ」

「なにそれ」

チャンミンはうれしくて笑った

その笑顔をユノは愛おしそうに見つめた


チャンミンのアパートの前に着いた

家に招き入れるのは、やっぱり怖かった

そういうことになるのは、まだ怖い


そんなチャンミンの気持ちを察してくれたユノ

「いつか、泊まりにきて…俺のところに」

「………」

「自然に…そういう気持ちになったら…で」

「うん…すぐになると思う」

「俺はもうその気だから」

そう言って、ユノはチャンミンの肩を抱き寄せて
くちづけた

あまりに甘い行為に、
チャンミンはこれだけで生きていけるのではと思った


「おやすみ、チャンミン」

「おやすみ、ユノヒョン」




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湿度(11)



帰りの車で、やたらはしゃぐチャンミンに
ミナは憐れむような笑みで応えている。

ユノは困惑し、ソンヒは不思議そうだった。

ユノは、順番としてミナを先に下ろし、ソンヒを下ろし、そして最後もう少しチャンミンと話をしようと思った。

観覧車では自分が結婚の話なんかして
チャンミンの抱える悩みを断ち切ってしまった感があった。

それなのに

ミナが降りる時、チャンミンも一緒に降りてしまった。

「え?チャンミン…」

ソンヒがユノの肘を軽く小突いた。

「邪魔しないの」


あ…

そう…だよな

「じゃあ、また会社で」


そうやって、2人は当たり前のように連れ立って
歩いて行った。


ユノはバックミラーでそんな2人の仲睦まじそうな様子を見ていた。

「いい感じだわね、あの2人」

「ああ…うん…」

「観覧車の中で何を話していたの?」

「うん、何の話ってこともないけど
悩み事があったみたいで、そこをうまく聞いてやれなかった」

「ミナが聞いてくれるわよ」


なにげないソンヒの言葉が、ユノの心の奥を鋭く傷つけた

ユノの目つきが変わった

「何いってんだよ」

「え?」

「ミナがチャンミンのすべてをわかるわけないだろ」

「ユノ…」

ユノは車を止めた

「俺にしか、わかってやれないことがあるんだ。
チャンミンには俺にしか話せないことがあるんだ。
何にも知らないくせに、適当なこと言うな」

「……」

「……」

「あ…ごめんね、ユノ…」

ソンヒにあたってしまった…

「…いや、大きな声出して悪かった」

「あなたとチャンミンには、私にはわからない世界があるわよね、適当に言っちゃって…」

「……」

「深い意味はないのよ、ごめんなさい」

ソンヒは悪くないんだ

無性にイライラした…

「俺こそ、怒ったりして…ほんとごめん」

そう言っていきなりユノはソンヒに口づけ、車のシートに押し倒した




ミナがチャンミンの様子を気にする

「チャンミン…」

「うん…」

さっきまであんなにはしゃいでいたチャンミンが
車を降りればすっかりふさぎ込んでしまい。

「観覧車、あんまり楽しくなかったみたいね」

「ヒョン、ソンヒさんと結婚したいみたい」

「え…」

「ごめん、ミナ。言わないでおこうかと思ったけど。僕がミナなら知りたいかなって」

「うん、言ってくれて、いいよ…そうなんだ」

「ミナは観覧車楽しかった?」

「うん、久しぶりにオンニと2人で話ができた。
昔から憧れていたってことは告れたよ」

そう言って静かにミナは微笑んだ。

「ソンヒさんはなんだって?」

「嬉しいって抱きしめてくれたわ」

「よかったね、ミナ」

「どうなんだろ。辛いよ、それでも」

「そりゃそうだけど」

「チャンミン」

「なに?」

「チャンミンは私の立場とは違うと思うのよ」

「どういうこと?」

「うん、うまく言えないんだけどね…
ユノさん、チャンミンと同じ気持ちなんじゃない?」

アハハハとチャンミンは高らかに笑った。

「ずっと僕だけのヒョンでいてくれるらしいよ」

「そう…」

「そうやって距離を置かれた」


「もしかしてだけど」

「うん」

「苦しいんじゃないのかな?ユノさん」

「至って、穏やかそのもの」

「そうなのかな」


それからも、ユノとチャンミンは会社では普通に過ごし、表向きは何事もなく過ぎていく

ユノはひとり焦っていた

チャンミンへの思いをどう断ち切るか
元のヒョンとしての自分をどう取り戻したらいいのか。

誰にも相談できないこの気持ち

自分で昇華するしかない…


プロジェクトの途中だったけれど
ユノに研修の話がきた。

部長からは無理をするなと言ってもらえたけれど、できれば参加してほしい口ぶりだった。


ユノは1ヶ月の海外研修を受けることにした。

「1ヶ月、プロジェクトを進めない、というわけには行かなくて」

「本社からのオファーでしょ?将来のためにも参加するべきだわ。後は私たちにまかせて」

ソンヒは大賛成だった。


その日久しぶりにユノはチャンミンをランチに連れ出した。

いつもなら、あれが食べたい、これが食べたいと
甘え放題のチャンミンがユノにメニューを任せる。

「好きなの頼んでいいのに。店だってお前が選んでよかったんだぞ?」

「特になかったからさ」

「しばらく会えないから…って言っても1ヶ月だけどね」

「聞いたよ、研修に声がかかったなんて
さすがユノヒョンだね」

「仕事は部長が相談役で入ってくれるから
ソンヒやスンホとその間頼むな」

「大丈夫だよ」

「チャンミン…」

「なに?」

「気になってたんだ…お前、なにか悩みがあるんじゃないのか?」

「悩み…そんなの…ないけど」

そう言いつつ俯いてしまうチャンミン

「俺さ」

ユノの声に、少しチャンミンが顔をあげた

「お前の悩みを解決できるのは
俺だけだと思ってるから」

ユノの瞳は真剣だった

「ありがと」

そう言ってチャンミンは笑った。

「なにかあったら、相談するよ」


チャンミンはランチから戻っても
なにか思いつめたような、そんな様子が消えることなく

ユノは心配だった。
このまま、研修に行ってしまうのが心残りだった。

それはヒョンとしての気持ちと、
そしてひとりの男としての気持ちとが混ざり合う
なんとも鬱陶しいものだった。


その日はそれぞれが珍しく残業なく帰れそうで
部長はみんなを誘って飲みに行こうとしていた。

それでもチャンミンだけが、部長へ今夜は失礼すると断りの挨拶をしていた。

「チャンミン、行かないのか?」

「どうしてもやっておきたい事があってね」

「そうか…早く終わったら連絡しろよ?」

「うん!行けたら行きます」


部長はいつもより、ちょっといい店に連れて行ったくれた。
頼もしく、仕事のできる部長をユノも尊敬していたし、部長もユノの仕事ぶりを買ってくれていた。




その頃チャンミンはなんとか仕事をかたづけ、
帰ろうとしていた。

部長の飲み会に行ってもいいのだけれど
今夜は帰りたい

そうチャンミンは思っていた。

ロッカーを開けるとき、ユノの椅子にシャツがかかっているのを見つけた

着替えたのかな…だらしないなぁ

チャンミンはそれを拾い上げて
ユノのロッカーに入れようとした

その時、少しだけ…ユノの匂いが鼻をくすぐった

ロッカーに入れようとしたそのシャツを
チャンミンは見つめる

ユノの温もりが感じられるような気がして
たまらない想いがこみ上げた

ユノ…

僕だけのヒョンでいてくれようとしているね

このまま何もなければ
ユノはソンヒさんと結婚をして
僕をずっとそばに置いてくれる

弟として…ね。

それはね、だけど…

僕にとっては拷問と同じなんだ

チャンミンはユノのシャツを抱きしめた

愛しいユノ…

そのシャツに顔を埋めれば
まるでユノに包まれているような気がして
チャンミンは頬ずりをした

抱きしめもらった時の温かさ
そして力強さ…

ごめんね、僕は…

それ以上の気持ちを抱いてしまっているんだ

悲しみと愛しさが溢れてくる

チャンミンはそのシャツを抱きしめて泣いた


その時だった


カタ、という小さな物音に顔をあげると


まさか


そこには驚いた顔のユノが立っていた



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百海です。

「湿度」どうでしょうか。
すっきりしない、ぬぐいきれない想いを抱える2人のお話です。
そろそろお話が動きます。

昨夜は誤解を招くようなコメントをしてしまい、
すみませんでした。
批判コメントについての事なので、気にされないでくださいね^ ^
温かいお言葉もいただき、嬉しかったです
いつもありがとうございます

湿度(10)



ミナとソンヒを先に観覧車に乗せ

ユノとチャンミンがその後の観覧車に乗った。


「結構高くまで上がるらしいよ」

「チャンミンは高いところ好きだからな」

「ヒョンは苦手だよねー」


ユノは微笑みながら
外の景色を眺めている


ユノが変だ


チャンミンは昼ご飯を食べようとエントランスでユノを見つけてから
その様子がおかしいことに気づいていた

なにがどうおかしいかと言えば


ユノがチャンミンの目を見なくなったのだ


いつも、いや今朝までは
ユノはしつこいほどチャンミンに執着し
世話を焼いて

チャンミンの一挙手一投足で
すぐに怒ったようになったり、急に喜んだり

そんなユノが実はチャンミンには嬉しかった

それなのに、急に穏やかになったかと思ったら
チャンミンを見なくなった


「ヒョン」

「なんだ?」

「僕の目を見ないね、ヒョンは」

「……」


それには答えないで
ユノは眩しそうに目を細めて、遠くを見る


「僕、なにかした?」

「してないよ」

「じゃあ、どうして」

「どうしてって…何もないよ」

「僕さ、ユノヒョンに構われるの結構好きなんだよ?」

「構ってた?俺」

「うん」

「お前も小さなチャンミナじゃないのに
構われるとかないよな」

「そんなことない」

「チャンミン」

「なに?」

「ミナちゃん、いい子で良かった」

「………」


急になんだよ

これは拒否だ、そうチャンミンは感じた


「大事にしてやれよ」

ユノが笑う

少しだけ近づいた太陽の陽を浴びて
輝く笑顔が眩しい

こんな小さな入れ物に乗って
2人きりなのに

今、太陽に2人で少し近づこうとしてるのに

ユノは僕に他の人と仲良くしろなんて言う

2人きりで観覧車なんて
そんな夢のような時間

結局はこれが現実だ

そして、さらに現実はチャンミンを打ちのめした


「俺さ…そろそろ結婚しようかと思って」


「は?」


「そんな驚くような事じゃないだろ。
結婚が早すぎる歳でもないよ」

「ソンヒさんと…だよね…」

「ああ…」


外の青空とは裏腹に
チャンミンの心に真っ黒な雲が立ち込めていくようだった。

「…そんな話聞くために、一緒にこれ乗ったんじゃないよ」

「え?」

「最近、ちゃんとヒョンと向き合ってなかったから
2人きりで話がしたかったんだ」

「…チャンミン」

「小さい頃の話とか…ううん、そんなんじゃなくて
…えっと…」


自分たちの絆を確かめたかった…
もういちど。


そんなチャンミンを
ユノは抱きしめたいと思った

でも、もうチャンミンへの気持ちを自覚した今
抱きしめるだけで、自分は終われない

「これからの話も大事だろ。
俺たち、もう子供じゃないんだからさ」

「……ヒョンは勝手にいろんな方向に行っちゃうよね、ほんと」

「……」

「たまに、ついていけない」

「そんな思いをさせたなら、あれだけどさ」

「うん」


「俺はお前を離さないよ、なにがあっても」


チャンミンはドキッとした

期待している意味では、ないだろう

たぶん、兄と弟、という意味だろう


「だから、安心しろ
いつも側にいるからさ」

そう言って、ユノはチャンミンの頭をクシャクシャと撫でた

「お前のヒョンは俺だけ」

そう言って笑った

ユノの白い歯があまりに爽やかで

自分の湿度の高い鬱陶しい想いが
拭いたいのに、どうにもならず

ユノは泣きそうな言葉を言ってくれているのに
それは自分と距離をとる言葉にしか聞こえない。


「ずるいよ、ほんと」

外の爽やかな景色と、
この小さな箱の中の湿度に

あまりにギャップがありすぎる

自分は結婚するのに、離さないとか
お前には俺だけなんていって、それはヒョンとしてだとか。

なんだよ

「ずるい、とか意味わかんないよ、チャンミナ」

「チャンミナなんて呼ぶな」

「………」


届かぬ想い…

「構ってほしいとか言ってみたり
チャンミナって呼ぶなって言ったりさ」

「……」

「お前もなんだかわかんないよ」

そう言ってユノは笑った


「たぶんね…」

「ん?」

「ヒョンが結婚するのが、寂しいんだと思う」

「だからーずっと俺はお前の…」

「もういいよ…」

「チャンミン」

「こんな話するために、乗ったんじゃない」

「……」

「こんな雰囲気になるために乗ったんじゃないよ」

ふーっとユノがためいきをついた

気づけば、観覧車はもうすぐ地面に着く。

ソンヒとミナの観覧車が地面についているのがわかった。


たまらなく悲しい

ユノヒョン…


自分たちの観覧車も地面に届こうとしている


「ヒョン」

「ん?」

「僕、めちゃくちゃでごめん」

「チャンミン?」

「わけわかんないこと言って
困らせてごめんね」

「困ってないよ」

「ソンヒさんと幸せに」

「え?」


やっとそれだけ言えた

ガタンと音がして、観覧車のドアが開き

ありがとうございました、と係の人が
観覧車を押さえてくれる

外にでれば

さっきまでの湿度が嘘のように爽やかだ。


外の世界はこんなにカラッとしているんだ

チャンミンは伸びをした


「思ったほど楽しくなかったね」

そう言ってチャンミンは笑いながらユノに言う


先に降りていたミナが複雑な顔になった

「チャンミン…」

「もう、帰ろ?」

下を向いたら涙がこぼれそうだ

ミナにはすべてお見通しかもしれないけれど

チャンミンは笑いながら
空を仰いだ

「あー窮屈だったなー観覧車」


ソンヒだけが不思議そうな顔をしていた

「チャンミン君、なにかあった?」

ユノは返答に困った

なにかあったのだろうか。
自分になにか悩み事でも話したかったのか

その悩みがとてもネガティヴなもので
自分が結婚なんて言ったから言えなくなってしまったのか

だけどね、チャンミン

お前の恋の話だったりしたら

俺はあの密室で耐えられそうにない

ごめん




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こんばんは、百海です。

いつも読んでいただいてありがとうございます

コメントにお返事していなくてすみません。

時間的な問題より
いくつか、お返事に困るコメントをいただいていまして(^◇^;)

つまずいてしまい、滞っております。
抜かしてお返事するのもどうかと思ったりして。

たくさんの方に読んでいただいている証なのだと
そこは前向きにとらえております。

不義理をしまして、すみません。

でも、毎日コメントくださる方
こう、読んでいてたまらず、といった感じでコメントくださる方

またおひさしぶりです、ということで
あ、読んでいただいていたんだな、とうれしく思ったり

はじめまして、で思いをぶつけてくださる方。
たまに、ラブレターのようなものもいただき
くすぐったい思いもさせていただいています。

ほんとうにありがとうございます

励みにさせていただいております。

これからもよろしくお願いいたします



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