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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

カナヅチの島(10)



チャンミンは久しぶりに自分の別荘に帰った。

二週間も帰らなかったけれど
連絡はしていたし、いつもの事でもあった。

親ともお互い程よく無関心で。
自分のことにも無関心だった。

だから、自分とユノの間にある事実にも
無関心だった。

「チャンミン、なんだかひさしぶりね」

「元気だった?お母様」

「んーなんだか…」

「?」

「チャンミン、色気が出てきたわね
年頃かしら、それとも」

「え?そう?」

「なにかあったわね?」

「へへへ」

「まあ、お相手はセリではないわよね。
あんまり派手にしないでね?」

「え?派手?」

「いいのよ、後2ヶ月近くあるんだから
それまでなら楽しむといいわ」

そう言って、お母様はウィンクをした。

それまでなら?

大きな冷蔵庫からビールを取り出しながら
チャンミンは神妙な顔つきになった。

そりゃ僕はセリと結婚するけれど
その後だってユノとは会うつもりだ。

セリだって、結婚したって誰かと恋をしたりするだろう。

だって結婚なんてただの契約。

マンションを買うのとなんら変わらないじゃないか。

「ねぇ、お母様」

「なあに?」

「あの、僕はね、結婚しても恋はすると思うんだ」

「そうね、いいんじゃない?
でもウェディングパーティが終わったら、あなたはこの島から出るでしょ?」

「あ、そういう意味?」

「ちがうの?」

「えっと…そうだけど」

あんまり深く考えていなかった。

でも

式が終わって、いろいろ済んだら
また会いに来ればいい。

あ、でも

その頃ユノもこの島にはいないのか。

あれ?

ユノも僕とはあと2ヶ月くらいだと思ってるのかな


なんだか

モヤモヤとした。


お母様がタブレットを持ってきた。

「チャンミン、どれがいい?」

「なに?」

「あなたたちの、写真よ。
パーティの時には、広間に飾るの」

「へぇ」

そこには穏やかに微笑む新婦セリと
ノー天気に笑うチャンミン

2人がタキシードとドレスに身を包んだ写真。

ろくに見もせずに選んだ


ま、そんなことよりも
ユノに言わなきゃ、僕がこれから結婚すること。
そしてユノと別れるつもりもないこと。

今まで大抵のことは自分の思い通りにしてきたチャンミン。

自分の希望が受け入れられない、という未来は想定外だった。


ユノの家に行くと
ユノはジョンとご飯を食べていた

「いらっしゃい、チャンミン。
カレー作ったけど食べる?」

「うん」

こっくりとした濃いめのカレーだった。

「美味しい!」

「そうか、いろいろ果物も入っているんだよ」

「あのさ」

「ん?」


ユノの漆黒の瞳が優しい

綺麗な形の鼻筋と少し厚めの唇

夜になれば、この唇が僕の全身を這う


「色っぽい顔をして、なに考えてるの?」

「え?」

「エッチな事考えてただろ。
ベッドに行こうか?」

「なに言うの!僕は花の世話に来たんだよ」

ユノが可笑しそうに笑った

チャンミンはイライラしたようにバルコニーへ行く。

そしてすっかり板についた手さばきで
水をやり、肥料を施す


食事の終わったユノがバルコニーへ来た

「チャンミン」

「……」

「泳ぎにいかないか?」

「行きませんよ、僕は…」

「あーごめん。言い方変えるよ
泳ぎを教えてやるから、海に行こう」

「教える?」

「すっげぇ、きれいなところがあるんだよ。
人がたくさん来ると嫌だから内緒なんだ」

「へぇ!行ってみたい!
でも泳ぎは嫌だよ」

「とりあえず、行こう」

飲み物と果物を持って
ユノの軽トラに乗る。

チャンミンは助手席に乗せてもらった。

今日はジョンはお留守番。

「ジョンはいいの?」

「あいつ、あんまり海好きじゃないんだよ」

「泳げないとか?」

「お前とか違って泳げるよ」

「ふん!」

拗ねるチャンミンがユノは可愛い。

子供をあやすように、チャンミンの頭を撫でると
チャンミンがますます口を尖らす。


「荷台がよかったか?」

「ユノの隣がいいよっ!」


怒りながら可愛いことを言うチャンミンに
ユノはたまらずその頬にキスをした

「もう、ちゃんと運転して?」


軽トラを道沿いに止め
2人は岩場の浜を降りて行った

「どこへ行くの?」

「いいからおいで」

波が荒いような気がして
チャンミンは少し怖くなった。

「海には入らないよね?」

「なんで海パン履いてきたんだよ?」

「え?濡れるからって言ったでしょう?
海には入らないって言ったよね?!」

「まあいいから」

一旦浜まで降りたはずのユノは岩場の上で文句を言うチャンミンのところまで登ってきた。

「おいで」

チャンミンは差し出されたユノの手をとり
岩場を降りて行った。

降りたそこには

大きな岩に波が永い時間をかけて開けた大きな穴があり
ユノはチャンミンの手を引いてその中へ入って行こうとした。

「すごいね!探検みたい
秘境だよ秘境!」

「いいだろここ」

「人類が足を踏み入れたことないって感じ!」

岩に波が打ち付けられる音が少し大きくて怖いけれど

ユノと一緒なら大丈夫な気がする。

大きな穴の中の岩壁には植物が生い茂り
いくつか開いた穴から太陽の光が差し込み
それが溜まった海水にキラキラと反射している

とっても、綺麗だった

穴の中は波がほとんどない。

チャンミンはユノに導かれて
少しずつ海に入った。

腰まで来て、ユノが穴から出ようとした時
チャンミンがユノの手を引っ張っだ

「ここから先はいやだよ」

「大丈夫」

ユノとチャンミンはすでに胸くらいまで海に使っている。

ここだけは波が穏やかだ。

ユノは怖がるチャンミンの腰を抱くと
チャンミンがユノの首に飛びついて来た

海水は2人の肩まで来ている。

「足がつくだろ?」

「つかない、つかない!」

至近距離にあるお互いの顔

チャンミンはため息をついた

「落ち着いた?」

「少しだけ」

「泳ぎを覚えるといいよ」

「うーん、そうだけど」

ユノが爽やかに笑う

「ねぇユノ」

「?」

「僕たちさ、ずっと会えるよね?」

「……」

「ダメなのかな」

「会えるよ、決まってるだろ」

「だよね?」

ユノは海の中でチャンミンを強く抱きしめた




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カナヅチの島(9)



毎日、ユノの家に通った。

ユノが自分の家で自分のウェディングの仕事をしているとわかっていたのに
なぜその事が気にならなかったのだろう。

たぶん、僕はユノが大好き過ぎて何も見えず
先のことなんてまったく考えてなかったのだ。

そこまで僕は酷かった
人間としてダメだった。

後から考えたら震えがくるほど、馬鹿だった。


ユノがいない間、チャンミンはジョンの散歩に行ったり、バルコニーの花の世話をして過ごした。

今日は料理にも挑戦する。

鶏肉を買ってきて
オリーブオイルとバジルと塩で
美味しい夕飯を作ろう

チャンミンがキッチンで鶏肉と格闘しているところに、ユノが帰ってきた。

「お帰りなさい!」

「何やってるの?鶏肉?」

「うん…あ、すぐできるからさ、シャワー浴びてて」

「すぐできないだろ、何を作ってるのか知らないけど」

ユノが不安そうにキッチンを覗き込んだ。

「あ、バジルとね、これから中にいろいろ詰めて」

「参鶏湯?」

「みたいなもの…」

「これで何か作っておくから
シャワー浴びてこいよ」

「はい…」

チャンミンはユノにあっさりキッチンを譲り
つまらなそうにシャワー室へ行った。

何かいつもダメだな…


シャワーから出ると、美味しそうなグリルができあがっていた。

少し落ち込んだ

ユノはパッパッと何か美味しいものを作るのが上手で、自分も何か作ってあげたくて。

そんなチャンミンの表情をユノは察知した

「得意な方がやればいいんだよ、なんでも」

「あーうん…でも…」

「ん?」

「へへへ…僕何にもできないよね」

悲しそうに、なのに無理して笑う

ユノが美味しそうなチキンをパソコン机に乗せる

「お前は美味しそうに食べてくれるから
作りがいがあるよ。
そういうの大事なんだぞ」

「えーそんなのが大事?」

「そうだよ。」


ユノがパラ・トリアムでまた何か果実酒をもらってきたようで、2人で飲みながら美味しい料理を食べた。

「チャンミン」

「ん?」

「お前さ、もう一週間も家に帰ってないけど
親御さんとか心配してないのか?」

「連絡はしてるから大丈夫だよ」

「あ、連絡してたのか」

「うん」

「なんて話してあるんだ?」

「なんてって…まさか男の人の家に転がり込んでるなんてさ、言えないでしょ」

フフフとチャンミンは楽しそうに笑った

「……」

ユノは少しだけ、複雑な気持ちになった。

チャンミンはきっと夏が終わったら
この島を離れる。

もしかしたら、今自分が手がけているパーティに顔を出すのが目的で来てるのかもしれない。

それは自分も同じで、この島には3ヶ月しかいないじゃないか。

深く考えるのはやめよう

ユノはその時はそう思った。


その夜もチャンミンは帰らず
当たり前のようにユノの家にいた。

なんにも考えてないようなチャンミン。

一緒にいる時間が長くなるにつれて
ユノはそんなチャンミンに違和感を抱き始めた。

だんだんとチャンミンに対して執着が生まれ始めているだけれど
チャンミンはなんとも思わないのか。

無邪気に鶏肉にかぶりつくチャンミンを
ユノは見つめた。



翌朝いつものようにバルコニーに水をやるチャンミンがユノを呼んだ

「なに?」

「前から思ってたんだけど、このスペースになにも植えられてないけど」

「ああ、何にしようか決めかねてたところだよ」

「ねぇ、それって僕が決めてもいい?」

「ん?何を植えるか?」

「うん。」

「いいよ、植えて育ててみるか?
蕾から咲かせてみたらいい」

「あ、うん!それやってみたい!」

「仕事で仕入れたヤツでバランスの悪いのがある。
それをやるよ」

チャンミンはユノに手伝ってもらって
少しだけ空いてるスペースに蕾のついた苗を植えた

水のやり方と、肥料のやり方を教わり
チャンミンは丁寧に作業をしていった。

いいかげんで、なにも真剣に考えたりすることのないチャンミン。

でも、一生懸命に何かをしようとする、
そんなチャンミンがユノは大好きだった。

水撒きも上手にできるようになったし
鶏肉も上手に焼けるようになってきた。


今朝もチャンミンはしゃがんで苗を見ている。

ユノはゆっくりと近づき
その頭をクシャクシャとなでた。

「蕾がなかなか大きくならないね」

「もう少しかかるさ。
さ、立ち上がって」

「どうして?」

ユノはチャンミンの腕を取り、引き上げ立たせた。

「キスするため」

「?」

そう言うと、ユノはチャンミンの頬にふれ
そっとくちづけた。

次第に深くなるくちづけに
チャンミンは酔いしれ、

ユノの首に腕を回す


バルコニーに出てきたジョンが
そんな2人の様子をみて、

やれやれと言わんばかりに
部屋へ戻った。




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カナヅチの島(8)




大きな音でバタンと木のドアが開き

寝ていたジョンはびっくりして顔をあげた

もつれ合うようにして入ってきたのは
ユノとチャンミンだった。

それを見たジョンは、安心したようにまた眠りに入った。

怖い思いをしたチャンミンに優しくしなければと
ユノは気遣いをしたいのに

ユノのシャツを引き裂きそうに脱がそうとするチャンミンに翻弄されている始末

くちづけて、唇を離して見つめ合い
そしてまた激しくくちづける…

さっきから何十回とそんなことを繰り返して

やっと家までたどりついた

もつれあって転がるようにベッドへと倒れこみそうになるのを

ユノがなんとか制した

「シャワー浴びよう、な?」

「じゃあ一緒に、ね?」


なんて可愛いことを言うんだろう

ユノの中に抑えようのない熱が生まれる

服を脱ぐ時間も惜しい

全裸でシャワー室に入っても
2人のくちづけはとまらない

チャンミンはすべてにおいてコントロール不能だった。

熱いくちづけ

滑らかな肌

巧みなユノの舌

唇を離せば、その切れ長の瞳に射るように見つめられる

なんてセクシーなユノ


その形のいい顎のラインから
長い首へとそっと指を這わしてみる

ユノの瞳は熱く、そして真剣だ。

シャワーから出て、体を拭くのもそこそこに
ベッドへともつれこんだ

お互いにこれ以上ないくらい
限界を迎えていた

荒い息づかいの中でなんとか声を出して見た

「ねぇ、ユノ…」

「なんだ…」

掠れた低い声がセクシーすぎてたまらない

「ユノ、大好き」

「……」

全ての動きが一瞬止まったかに思えて

そしてすべてにスイッチが入った

止まらないユノと
逃さないチャンミン

開けたバルコニーからいい風が入ってくる

聞こえるのは2人の艶かしい声と
波の音だけだった。



ぐっすりと眠るチャンミンにジョンが尻尾を振って近づく。

顔を舐め回して起こそうとするのだろう

「ジョン、だめ」

キッチンからユノが低く小さな声でジョンを制した。

ジョンはそれならばと、ユノに飛びかかる
ユノは舐められ、甘噛みされ、しかたなく構ってやる。

「今朝はチャンミンがいて、お前もうれしいか」

ハァハァと舌を伸ばしてユノに甘えるジョン

「俺もうれしいよ」


大きなベッドの上でチャンミンが寝返りを打った

そろそろ起きるだろうか。

ユノはパソコン机の上にコーヒーと簡単な朝食を用意した。

迷彩のトランクスを履いただけのユノが
ベッドに近づき、寝ているチャンミンを見下ろした

薄っすらと口を開けた、見ようによっては
マヌケな顔。

韓国人ばなれした彫りの深い顔立ち
長い睫毛が少しカールしている

丸くてピカピカしているその頬にそっと触れてみると、

「うーん…」

そう呻いて、チャンミンが目を開けた

「おはよ、チャンミン」

寝ぼけ眼でユノを見ながら、
チャンミンはクスクスと笑い始めた

「なんだよ」

「だって…こんな風に目が覚めたらユノがいるなんて」

「いたらなに?」

ユノはベッドに腰掛けて、チャンミンの柔らかい髪を撫でる

「へへっ」

くすぐったそうに笑うチャンミンが可愛い

ユノはその前髪をかきあげて
綺麗な額にキスをした。


「くすぐったいなぁ」

額から続いて、こめかみ、目尻とキスを落としていく

そのまま首筋までキスしていくと
チャンミンが熱く震えるため息をつく

また始まってしまう

あんなに求めあって

チャンミンは今日歩けるかどうかっていうのに。


「朝ごはんだよ、起きれるか?」

「うん」

2人でコーヒーを飲んでたわいない話をした。

「ユノはテレビを持ってないの?」

「ないよ、観ないから」

「ふぅん」

「新聞もない」


「今日は仕事?」

「ああ、仕事。適当に好きな時に帰ってて。
鍵はかけなくていいから」


「うん…」

「なに?どうした?」


「帰りたくないかなーなんてさ」


「……」

「なーんて」


「あのね、チャンミン」

「はい」

チャンミンは姿勢を正した。


「グイグイ来るね。
俺、お前が思ってるより真面目なんだよ」

「はい」

バツが悪そうに俯くチャンミン。

だから、弄ぶようなことはやめろ、と

ユノはそう言っているのだろうか。

きっとそう言っていたはずなのに
どうして僕はなんにもわかっていなかったんだろう

それまでの人生をいかに適当に過ごしていたか

僕はなんにもわかっていなかった。


「バルコニー行っていい?」

「ああ、いいよ。
良かったら水まいてくれよ」

「そんなことしていいの?」

「いいよ?どうして?」

「だって、ユノはプロだし。
あんなに綺麗に植物を植えてるのに僕なんてさ」

「誰でもできるよ、水まきくらい。
それにここの花は仕事のじゃないから」

「じゃあ、やってみる!」


ユノは水道にシャワーノズルのついたホースを持たせてくれた。

バルコニーには一面の色とりどりの花。

チャンミンはほとばしるシャワーの水に驚いて後ずさった。

空に飛び散った水滴が青空に光って
小さな虹を作る

「ユノ!みて!虹!」

「そんなに勢いつけたらダメだ」

シャワーをユノに奪われて
水のまき方を教わる。

「こうやって、根元に、葉にも少し。
あんまり花にかけないで」

「なんだ、やっぱり適当じゃダメじゃないか」

「すぐ覚えるよ、ほら」

シャワーをチャンミンに持たせて
ユノが後ろから抱きかかえるように
シャワーに手を添える

「こうやって」

「…」

ユノの目の前にあるチャンミンのうなじが
陽にあたって産毛が金色に輝いてる

そこにそっとキスをすると
チャンミンの肩がヒクッと震えた

「……」

そのまま動かないのをいいことに
ユノはうなじにキスをいくつも落とした

たまらなくなったチャンミンがホースを投げ捨て
いきなり振り向いてユノにくちづけた


可愛いのに大胆で、意地っ張りなのに素直

チャンミンのキスを受け止めながら

ユノは久しぶりに、心が捉われるのを感じた


くちづけあう2人の後ろで
ホースから飛び出す水が噴水のように輝き
夏の太陽に綺麗な虹を作っていた





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カナヅチの島(7)




ユノッ!!!!

チャンミンの叫び声が聞こえた気がして
店の外に飛び出したユノだった。

車の後部座席から、あの酔った男と、チャンミンの脚が絡まってはみ出しているのを見た瞬間、
ユノは冷静さを失った


ユノ、ユノと無我夢中で自分の名前を呼んでいたチャンミン。

究極の恐怖を感じた時に、まず俺が浮かんだのか。

光栄すぎて、どうしたらいいんだ。


誰もいなくなった駐車場で、
ユノは泣き止まないチャンミンを抱きしめていた

「うっ…ひっく…えっ…」

「怪我はない?」

チャンミンが自分の耳を触ってみせた。

「耳がどうかしたか?殴られた?」

「うっ…耳を…えっ…舐められ…」

「は?!」

ユノの頭に一気に血が上った

舐められた?

「体も…うっ…えっ…触られて…」

「あいつ、ぶっ殺してやる」

思わずそんなセリフが口から出た

自分らしくない、と思った。


腕の中で転んだ子供のように泣きじゃくるチャンミン

愛おしくてたまらない


そんな言葉しか見つからないけれど
もっと深いものがユノの中にはあった。


チャンミンは、いつもなら決して惹かれたりしない種類の人間だった。

世間知らずのカッコつけ坊っちゃん
薄っぺらな中身、見かけだけの綺麗さ

それでも

トラックの荷台で気持ちよさそうなその笑顔が
ユノの心を捕らえて離さない。

いろんな世界を教えてやりたいなと
思ったのは確かだ。

小さな価値観に雁字搦めになっている感があって
解放してやりたい思いがあった。

チャンミンの右手はがっしりとユノの肩を脇の下から抱え込み、肩に顔を押し付けて泣いている

左手は控えめに、ユノのシャツの胸元に添えられていた。

チャンミンはあまりの恐怖に
小刻みに震えていた

たまらなくなったユノがその左手をとると
身体を離されると思ったのか
ユノの手をふりほどき、左手はユノの背中にまわった。

よりしっかりと抱きつかれてしまった


どうしよ

キスしたい


耳を舐められて泣いてるヤツに
キスなんかしちゃダメだよな

ユノはチャンミンの髪を優しく梳いた。
柔らかいくせ毛が指に絡まる

この島に来てから誰も抱いていないことに今更気づき、ユノはため息をついた。

このままでは、自分もさっきの男と同じになってしまう。


「チャンミン?」

「ん?ひっく…うっ…」

「帰ろうか、送っていくよ」

「いい」

そう言ってチャンミンは首を振った

「いいって、よくないだろ?
シャワーを浴びて、今夜は早く寝るといいよ」

「ユノの家にいく。こんな顔で家に帰ったらお母様が心配するし」

お母様、か。

顔を覗き込めば、あどけない泣き顔に甘えた声

いつものチャンミンと全然違う
これが本当のチャンミン?ヤバすぎるだろ

「ウチはマズイよ」

「どうして?」

「いや、なんていうか」

理性が崩壊しそうです、なんて
それこそカッコ悪くて言えない。

困ったな

「じゃあ、俺ん家でシャワー浴びて
落ち着いたら帰るんだぞ」

こくりと頷くチャンミン。

真っ暗なビーチに白い波が立つのが見える。

夜の海を見下ろしながら、ユノはしっかりとチャンミンの肩を抱きながら歩いた。


波音だけが聞こえている


まだ嗚咽の治らないチャンミンは
震えながらユノの腰にしっかりと手を回す。

トボトボと堤防の上を歩いた

ここはユノとチャンミンが出会ったあの堤防

よろめくチャンミンをユノは抱き直す

「しっかり歩かないと、また落ちるぞ。
泳げないんだろ?」

「うん」

小さな子供のようで心のヘンなところがくすぐられる。

どうか、そのウルトラ素直モードを解除してくれ…

ユノはため息をついた。


チャンミンがやっと顔をあげた

「大丈夫か?」

こくりと頷いて、海からの風に髪がなびくと
濡れた瞳と濡れた長いまつげが月明かりに光る

その澄んだ瞳には暗い海が映る

泣きすぎたのか鼻が赤い。


「僕さ、ばかみたい」

「ん?」

チャンミンが遠くの海を眺める

「かっこつけて、こんなジャケットなんか着て」

「いいジャケットじゃないか」

「こんなのの助けがないと、あんな店、入れないんだよ」

「大丈夫だよ。
そんなに怖れる店じゃないだろ?」

「そんなことない」

「MAISON の入店チェックにパスするほうが
よっぽど凄いぞ?」

「違うよ、MAISON なんて服しかみてない」

「そんなことないさ」

フワフワとした髪が海風になびく
少し厚めの唇が拗ねたように突き出している


何が気に入らないの?

そんなに可愛くて綺麗なのに。

自分に自信を失ってるみたいだけど

なんにもわかってないね、お前は


「チャンミン」

「ん?」


そう言って、あどけない顔で俺を見る
泣きはらした瞳

そっとその頬に触れる

少し驚いたような顔をしたね。

でもごめん…もうダメ

「お前はそのままでいいんだよ」


ユノはそっとその可愛い唇にくちづけた

チャンミンはユノのシャツをギュッと掴み
そのくちづけを受け入れる

甘く優しく

ユノのくちづけが次第に深くなっていくと
チャンミンの喉の奥から、声にならない声がした




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カナヅチの島(6)




それからチャンミンはユノを避けた。

昼間はユノが家に来て作業しているので
外のカフェにいたりして、
夜は家でじっとしていた。

連絡先を交わさなくてよかった、と思った。
わかっていたら、思わず連絡してしまいそうだから

それなのに

ユノが家に来てないとわかると
その行動が無性に気になる。

チャンミンはフラフラとビーチに出たりして
自然とユノを探していた。


自分が何をやっているのか
誰か、説明してほしい!


ムシャクシャする

ひさしぶりにセリと遊ぼうか、と思った

セリに連絡をとると、「いいわよ」と
大して嬉しくもなさそうに返事をされた。

ドライブと思ったけれどそんな気にもなれず
2人でダラダラとカフェにいた。

結局セリといるのが一番落ち着くんだよな。

「ねぇ、チャンミン」

「ん?」

「ユノさん、あなたの家に出入りしてるんでしょ?」

「うん」

「抜け駆けしないでよ」

「は?バレるだろ?家で会ったらさ」

「あ、そっか。誰だかわからなくても、
そこの家の息子のウェディングってことはわかってるもんね」

「そうだよ。だから昼間は外にいなきゃいけなくて
面倒なんだよ」

「私はね、毎日連絡取り合ってるわよ」

「え?そうなの?
あの人、連絡先なんかカンタンに教えるの?」

フフフと意味ありげにセリが微笑む

「スマホ奪って番号登録しちゃうのよ」

積極的というか、強引だな。

チャンミンは少しの勇気を持って聞いてみた


「ベッドまで…いった?」

その答えを聞きたいような、聞きたくないような。

「それがさ」

セリのけだるい言葉に
チャンミンはゴクリと唾をのんだ

「ダメなのよ、ほんとにゲイよ」

「あ…そうか」

少し…ホッとしている自分

「なにか作戦考えないとね。」

「作戦?」

「まずは寝てしまうことだと思うの。
すべては身体でオンナの良さを知ってからだわ」

「ハダカで家に忍び込む?」

「そう。それもあり。
まずは家がどこだか調べないとね」

あの背の高いヤシの木がそびえる部屋を思い出す

「連絡取り合って、会ってるの?」

「まだ4〜5回よ」

「え?そんなに会ってるの?」

「会っても、あんたの事ばっかり聞かれるの」

「ぼ、僕?」

心臓がドキドキした

「狙われてるのかもね、チャンミン。
やだな、私負けたくないわ。他でも賭けてるのよ」

呆れるけれど、これがセリだ。


ユノが自分の事ばかり聞いてくる、と。

その言葉が心に響く。


その夜、チャンミンはパラ・トリアムへ行った。

服をいろいろ考えたけれど
やっぱりジャケットの力を借りないとダメだ。

ユノみたいにラフな格好でオトナを演出するのは
悔しいけれどチャンミンにはムリだった。


麻のジャケットを羽織り
パラ・トリアムのドアを開けると


「いらっしゃいませ」

この間のマスターが出迎えてくれた。

「1人なんですけど」

「こちらへ」

さっと店内を見渡した


いた!

ユノだ!

ユノがMAISON に連れて来てた、あのヒチョルと一緒にカウンターにいた。


ユノもすぐにチャンミンに気づき
嬉しそうに微笑んで席を立った

ゆっくりとチャンミンに近寄ってくる。


なんでもない風に、さりげなくしなくちゃ

「チャンミン、久しぶり。
こっちに来て一緒に飲まない?」

「1人で飲みたいんで、すみません」

「なんかあった?」

「いや、そういう気分なだけです。」

「そうか、ならよかった」


あっさりとユノは立ち去ってしまい
拍子抜けしてしまった。

近づく作戦はどうしたんだ、シム・チャンミン…


ふと、視線を感じて逆側を見ると
日に焼けた1人の男がじっとチャンミンを見つめている

少し酔っているようだ。

思わず目があってしまうと、その男がスツールから
立ち上がってチャンミンの方へ来た。

チラとユノを見ると、険しい表情でこちらを見ている

いいね、この流れ

独占欲があるのはどっちだか
思い知らせてやる。

チャンミンの隣にその男が座った

「坊ちゃん、可愛いね」

坊ちゃん、と言われてイラっとしたけれどガマン

「こんな店にカッコつけて来ちゃって、オトコが欲しいの?」

「そういう趣味はないんです」

ユノからは親しく見えるように
にこやかに答える。

遊ぶにしても、コイツはごめんだ。

「ふぅん、オトコもいいよ?
試して見るといいよ」

「考えておきます」

「だったらさ、これから俺と」

その男の手がチャンミンの太ももに触れた。

全身の毛が逆立つのでは、と思うほど気持ち悪い

「もう帰らなきゃ」

気色悪い。もうここにいるのはイヤだ

チャンミンは席を立ち、店を出た。


外の風が気持ちいい

あーあ

ユノは今のを見てなんて思っただろうか。

男に言い寄られて、ビビって逃げた。
そんな風に見えただろうな。

凹みつつ、歩道に出ようとした時だった。

ぐいとジャケットの襟元を掴まれたと思ったら
後ろから手で口を塞がれた

!!!!!!

耳元でさっきの酔った男が囁く

「一度味わってみなよ」

「!!!!!」


助けて!!!

ユノ!!!


すごい力で駐車場まで引きずり戻され、
車のキーロックが外れる音がした

怖い!

ユノ!!!!


「ほんとに可愛いなぁ」

男がべろっとチャンミンの耳たぶを後ろから舐めた


吐き気がした

気色悪いのと、怖さとで吐きそうだ

チャンミンはそのまま車の後部座席に押しやられた。

一瞬塞がった口が開き、一度大声を出したけれど
すぐにまたそのゴツい手で塞がれた

精一杯もがくけれど、足を相手の足が抑え込む

男の手がチャンミンのジャケットを引き剥がし
身体を直に触り始めた

助けて…ユノ…

涙がでた

もがきながらも、ユノの優しい笑顔が目に浮かぶ…


その時、急に男の身体が後ろに飛ぶように離れた

一気に自由になったチャンミンは大声を出した

「ユノっ!!!!助けて!!!!」

また男の手がチャンミンの腕をグイと引っ張った

「やだー!!やめろっ!!!ユノ!!助けて!!」

「俺だよ、チャンミン」

「え?!」

泣きはらした目でハッと見ると
ユノが険しい顔でチャンミンの腕を引っ張って
車から引きずり出した

ユノの後ろには、さっきの酔った男が
うずくまって倒れている。

「…あ」

店から、マスターとヒチョルが出てきて
男をつまみあげた。

ヒチョルが男を2〜3回蹴るのが見えた。


ユノ…


「大丈夫?なんともない?」

ユノが心配そうだ


怖かった…

嗚咽だけで、何も話すことができない

チャンミンは倒れこむようにユノに抱きついた

ユノはビクともせずチャンミンを受け止めて
しっかりと抱きしめてくれた。

ユノの大きな手がぽんぽんと宥めるように
背中を軽く叩く

チャンミンはユノの逞しい肩に顔を押し付けて泣いた

泣きじゃくった



カッコばっかりつけて

少しでもオトナに見せたくて

なにやってるんだろう


そんな思いが心の中から一気に溢れ出てきて
それは全て涙となって

ユノの肩に吸い込まれていった





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カナヅチの島(5)




母がよく冷やしたカモミールティを作ってくれて
小さなミントを浮かべてくれた。

「ミントだ」

「そう、これもね、庭師の方が植えてくれて。
どんどん増えるから料理にどうぞって。」

「ふぅん」

ユノが植えたミントをつまんで口にいれてみた。

歯磨きのニオイ

そして噛むと苦い


「今日はどこかへお出かけするの?」

「ああ、ちょっとね。」

「明日はウェディングの写真を撮るから
日に焼いたりしないでね」

「わかったよ」


チャンミンは意を決して
ユノの家へ行こうと思っていた。

行く口実はある。

服を返してもらい、ユノの服を返す

きれいにラッピングしたユノの服を
チャンミンは少しドキドキしながら手提げのペーパーバッグにおさめた。

車で行こうと思ったけれど
なんだかそれは違うと思い、自転車で行くことにした。

坂を降りてビーチ沿いの道を自転車で軽快に走る

気持ちいい

いつもどこに行くにも車で
こんなふうに風を感じることはできない

オープンカーならそんなことないのでは?
と思われるけれど


そこは大きく違うんだ


ユノの家の玄関に自転車を停め
木戸を開けてみる

少しドキドキする


そこにはこの間と変わらぬユノの部屋


誰も…いない…

ふと見ると、パソコン机の上に
チャンミンの服が畳まれて置いてある

まるでさっさと持っていけと言ってるようだ。

ここでこれを持って帰ってしまったら
もう会う口実がない。

でも、待ってるのもなんか変だし
っていうか、それはカッコ悪いからしたくない。

うーん

どうしようかな。


チャンミンは持って来たペーパーバッグを机の上に置いてバルコニーを覗いてみた。

燦々と降り注ぐ太陽が眩しく
目の前に広がる海は真っ青だ。

ふと、足元を見ると、
小さなピンク色の花が地を這うように咲いていて
その上にハート形の葉っぱが生い茂り
白い花と黄色い花が生い茂っている

きれいだな

海の青さとどれもがぴったりだ。

バルコニーから海へ出られるようになっていて、
ちょうどその境のところにそれらの花が植えられている。

小さなスペースに
まだなにも植えられていない部分があった。

これからデザインするのだろうか。

土が肥やされている状態のようだった。

僕だったら、なにを植えるかな

じっと考えているチャンミンの耳には
波の音だけが穏やかに聞こえていた。


のはずが…


ハッとして振り向くと

ユノがバルコニーを覗いていて
チャンミンを見てニヤニヤしている。




ユノ…

チャンミンは照れくさそうに
でもムッとした表情で頭を下げた。

「ほんとに鍵かかってなくて
勝手に入ってきちゃいました」

「いいんだよ、全然」


ジョンが部屋の奥から飛び出して来た

「あ、ジョン」

ジョンはチャンミンを見るなり
尻尾を振りながら飛びついた


かわいいな

「ウハハハハ…僕に会いたかった?」

ジョンは狂ったようにチャンミンの
いたるところを甘噛みする。

その様子をユノが腕組みをして、
眩しそうに見つめている


大きな犬と戯れるチャンミンは
まるで子供のように素直で可愛い

ピンクのチェックシャツがよく似合っている
白い短パンから伸びたまっすぐな細い脚

眉が下がってしまう可愛い笑顔に
ユノは見惚れていた


「あー僕に会いたかったんだねージョン!」

チャンミンがクシャクシャとジョンの頭をなでた。


「やっと来たね、待ってたんだぜ」

やっとジョンから解放されたチャンミンは
ユノの声にまた無表情になった

「服を…とりあえず…」

「何か飲んで行ってよ」

カーキのタンクにベージュの短パンから
日に焼けた脚が伸びている

そんなユノがジョンを伴ってキッチンへ行った。

チャンミンもその後について部屋へ入った。


「どこへ行っていたんですか?」

「ジョンの散歩だよ、前のビーチで少し遊んだ」

「ふぅん」

「そこ座って」

この部屋でひとつしかない椅子に
チャンミンは座った。

用意された飲み物は、先日パラ・トリアムでだされたオレンジ色のカクテルに似ている

「あ、これって」

「チャンミンも飲んだだろ?
美味しかったから、マスターに頼んで譲ってもらった。」

「あのマスターが自分で作ってるんですよ?
そんなに何本もないのに譲ってもらうなんて」

「チャンミンが美味しそうに飲むからさ
服を取りに来た時、出そうと思って計画してた」

「け、計画って…」

落ち着いたユノと違って
チャンミンは慌てていた。

なんとか呼吸を整えて
チャンミンは反撃に出ようとした。

「そういえば」

「なに?」

「セリはどうでしたか?」

「どうでしたかって?」

ユノはグラスの中を覗き込みながら
なんでもないように言う。

「お持ち帰りしたんじゃないんですか?」

皮肉を込めて言ってみた


ユノはグラスの肌に浮かぶ水滴を
その綺麗な指ですくいながら真剣な顔になった

「下品な言い方するんだな」

チャンミンはドキッとした

「そんな…そんな言い方、みんなしますよ?
ユノこそ先生みたいな言い方」

「気になるの?チャンミン」

「は?」

「ヤキモチ?」

チャンミンは慌てた
心の中をかき乱されたような気がして焦る


「独占欲を刺激された?」


ユノがゆっくりと近づいてくる


「何言ってるんですか!
どうして僕が男のあなたに独占欲なんか!」

ユノはニヤッと口角を片方だけあげて微笑む


「セリに独占欲、って言ったつもりだったんだけど」


!!!

どうしよう!!


チャンミンはガタガタと椅子からブザマに立ち上がり
机の上にあった自分の服をつかむと、急いでユノの家を出た。


どこをどうやって歩いているのか
チャンミンはよくわからなかった

心臓がバクバクと音をたてている


失態だ!
僕の失態だ!

もうダメだ



ちょっと待って

チャンミンは歩きながら少しずつ冷静さを取り戻していた。


所詮、ユノなんて
賭けの対象じゃないか。

僕は結婚するんだよ?

ユノは勘違いをしてカッコつけてるけど
後でバカをみるのはユノなんだ



チャンミンが出ていったドアに向かって
ジョンが寂しそうな声を出した

「行っちゃったねぇ、チャンミン。」

「クゥン」

ユノはチャンミンが置いて行ったペーパーバッグを見た。

綺麗にラッピングされて飾りのリボンまでついている

ユノはクスクスと笑った

「なんだこりゃ。リボンまでついてる」

寄ってきたジョンの頭をユノはクシャクシャと撫でた。


「チャンミンは可愛いねぇ。
そう思わないか?」

ジョンが嬉しそうに尻尾をふる。






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カナヅチの島(4)




朝陽がかなり暑くなってきた。

チャンミンは仲間たちとバーベキューに出かけようとしていた。

ウヨンが運転するランドクルーザーがチャンミンを迎えにきた。
肉や飲み物は業者に手配をさせてある。

身軽な格好で車に乗り込むと
チャンミンの家に見覚えのある軽トラが入って行く

あ!

ユノの車だ。

なんで?

チャンミンは固まった

洋服を届けに来てくれた?

まさか、だって家がどこにあるかなんて…


そうか

僕のウェディングに携わっている庭師って
ユノのことなんだ。


ユノも3ヶ月しかこの島にいない、と言っていたし。

そうなんだ…



車内では相変わらずユノを落とす賭けの話で盛り上がった。

チャンミンはセリに言った

「ユノって、僕たちのウェディングに関わってる人だったみたい」

「うそー?!」

「庭師だからさ、彼」

ウヨンがニヤニヤしながら
こっちを向く

「大丈夫。誰もお前たちのウェディングの話はしないよ。業者にもご法度だろ?」

「たぶんね、今は」

「最後にあたしたちが結婚するなんて知ったら
ちょっと楽しそうね」

「え?」

「チャンミン、バカにされてるみたいだったから、
たいしたタマだと思われるわよ」

「そう…かな」


二股かける余裕

そんなのをチラつかせるのもいいかもしれない


あなたが思ってるより
僕はたいしたヤツなんですよ?

「アタシは今夜から作戦にでるからね」

「え?」

「ユノさんが出入りしている店、調査済み」

「え?どこ?」

「ライバルに教えるわけないでしょ」

「なんだよ、正々堂々とやろうよ」

「いやよ、そんなのコソコソやるに決まってるじゃない。もしかして、私が彼に惚れ込むとでも?」

「はぁ?セリが誰かに惚れ込む?
そんなことあるの?」

「フフフ…私のことをよくご存知で。
大好きよチャンミン。やっぱりあなたは私のパートナーだわ。」

完全に上から目線のセリだけど
昔からこうだから、なんとも思わない。

面倒くさいことは人に任せたい自分は
セリといると楽だった。

でもそれは愛や恋ではないことなんて
お互い百も承知だった。


でも

ユノの行きつけの店ってどこだろう

チャンミンはバーベキューの間中そのことを考えていた。


家に帰ると、母がとても機嫌よくて。

「おかえりなさい。
今日ね、早速庭師の方がいらっしゃって
バルコニーの下にいろいろ植えていただいたのよ」


「庭師…」


「ウェディング用よ。だんだん育っていくと
バルコニーからお花が覗くようになるんですって」

「庭師ってどんな人だった?」


「それがね」

母の顔がパッと華やいだ。

「ステキな人でね!ほんとにカッコイイのよ」

「そう…」


やっぱりユノだ

「どんな感じの人?なんていうか、
どんな店に行きそうな人?」

「店?」

「そう、夜なんか、どんな店が合いそうな感じ?」

「そうね…MAISON じゃちょっと子供っぽいかしら」

「……」

「パラ・トリアムなんてどう?」

「なるほど」


チャンミンには少し敷居の高い大人の店

格調の高さならクリアできるけれど
その敷居の高さはそういった類いのものではなかった。

ある程度経験を積んだ、でも十分に若くて鋭い
そんな大人の男

チャンミンに持ち合わせていない
そんな雰囲気が必要だった。

それでもなにも考えずチャンミンはその店に向かった。

短パンにタンク、そして麻のジャケットを羽織った
このジャケットが少しは自分を大人に見せてくれるのでは、と期待して。

そう考えると、ユノのMAISON でのスタイルは完璧だったな、と思った。

あくまでもカジュアルで
でも昼間のそれではなく、これからお酒を飲んで
楽しもうとする大人の男だった。


チャンミンはパラ・トリアムのドアを開けた

「いらっしゃいませ?」

ダンガリーシャツの髭を生やした店主が出迎えた

「おひとりですか?」

訝しげにチャンミンを見て言った

「そう」

できるだけ、落ち着いた感じでクールにさらりと。

「失礼ですがお酒を飲める年齢?」

「は?身分証明書かなにかいるの?」

「失礼いたしました。こちらへどうぞ」

チャンミンのイラだちなど気にしないような店主は
にっこりと微笑みチャンミンを案内した。

まったく、なんだよ
バカにしてさ。

フロアはとても静かで、優しくジャズが流れていた。

カウンターにセリとユノがいる。

心臓がドキドキした。


ユノがチャンミンに気づいた

「チャンミン?」

その声に、ユノの隣でカクテルを飲んでいたセリがこちらを向いて驚いたような顔をした

「やだ、チャンミンじゃないの」

ユノがセリとチャンミンを交互に見る

「2人知り合い?」

「そうよ、遊び友達」

セリの視線は自分のカクテルに戻った


「こんばんは」

チャンミンができるだけ落ち着いて挨拶をすると
店主が気をつかった

「ご一緒されます?」

「いえ、1人で飲みたいので」

「じゃ、こちらで」

チャンミンはカウンターの隅に案内された

ユノがこちらを見ている


なんだよ、女に興味がないとか言って
セリに引っかかってるじゃないか


なぜかイライラした

賭けなんてどうでもよかったけど

この後、この2人はどうするんだろう

そして自分は…

セリが作戦に出るときいて、なにも考えず来てしまったけれど、自分はどうするつもりだったんだろ


バカみたい…

なにやってるんだか。

なにも注文しないのに
店主がチャンミンに淡い色のカクテルを持って来た。

「ウチで栽培してるオレンジでつくったリキュールなんです。試飲してもらえませんか?」

「あ、いいんですか?」

「他にも注文あれば。
サーモンが合うのでお持ちしようかと思いますが
いかがですか?」

「ありがとう。サーモンお願いします」

いい店だな、と思った。


さすがユノ。


MAISON なんか紹介して
恥ずかしい…


俯くチャンミンの横を
セリとユノが横切った。

店を出るのか。


気になった。2人はどこかへ行くのだろうか。


あのユノの家に?

大きなヤシの木のある、あの家に?

壁に頭をつける形で大きなベッドがあったことを
思い出した。

そんな…

チャンミンはバッと席を立った。

「すみません、帰らなくてはいけなくて。
お会計してもらえませんか」

「サーモンはまだお出ししてないので
本日は会計はないですよ」

「でも…」

「また来ていただけたらうれしいですよ。
次はカクテルとサーモンをご注文いただけたら、それで。」

「またすぐに来ます」

「お待ちしてますね」


チャンミンは店の外に出た。

外には一台のタクシーが止まっていて
拗ねているセリをユノがなだめているようだった。


タクシーのライトがチカチカと点滅して
後ろからは夜の波の音が聞こえていた。


ユノがチャンミンに気づいた

「あ、ほらチャンミンと一緒に乗って帰ればいいよ」

「ユノさんと一緒にいたいって言ってるのに」

セリは怒ったような顔をチャンミンに向けた。

「残念だね。ウチには怖くて大きな犬がいてさ。
よそ者に吠えるんだ。な?チャンミン」

セリはユノの家に押しかけようとしたのか。

「セリは結構いいですよ、ユノ」

精一杯

カッコつけた


「は?」

「連れて帰れば、わかると思います」

自分で言って、自分で傷ついていた。


こんなこと言って
ユノがセリを連れ帰ったらどうしよう

なにを怖れている?


婚約者のセリがユノにとられてしまうこと?
賭けに負けてしまうこと?

そのどちらも違うことを
チャンミンは認めるわけにはいかなかった。





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お詫び



百海です。

関東は突然暑くなりましたが
みなさまの住むところはどうですか?

今回間違えて、新しいお話の第3話だけをアップするという、しかも書きかけ。。
しかも丸一日以上放置。

今までいろいろヤラかしてきましたが
今回は本当に凹みました。

たしかに仕事も忙しく
毎日帰宅も遅いのですが、そんなのは理由になりませんね。
そういう問題ではないですね。

ほんとうにすみません。

読者様のコメントで気づいて
なんとか第3話まですべてアップしてまいりました。

教えてくださった読者様、意味不明な第3話に拍手コメをくださった読者様、
ほんとうにありがとうございました。

りょ@@@ん様、教えてくださったのに
コメント消えてしまいすみません💦



今回のお話は私のストレス解消のために書かせていただくとお伝えしてましたけれど

結局、全然違うお話を書かせていただいております。
少し、リアルを混ぜたものにしようと思っていたのですが、なかなか進まず…
やはりパラレルで、お話の中の2人は別世界の2人
というほうが私には合っているようです。

今回のお話は恋愛もののひとつのパターンで
かなり王道です。

なのでストーリーの顛末もみなさまの想像通りではありますけれど

チャンミンをかなりいじらしく可愛く
そして切なく描いてみたいと思っています。

よろしければお付き合いいただけると
うれしいです。

またヤラかしてしまうかもしれませんが
許してください(^◇^;)

そして更新中心にさせていただきたく
また不公平にならないようにするため
コメントもほぼお返事できないかと思いますが

みなさまの感想は繰り返し読ませていただいてます

仕事帰りの電車の中で
食洗機のスイッチを入れた後で
湯船の中で
ベッドの中で

うれしく読ませていただいてます。
とても励みになっております

ありがとうございます



カナヅチの島(3)




夕暮れになり、ユノはジョンと帰宅した。

空腹のジョンをなだめるため、とりあえず餌をやる。

洗濯の終わったチャンミンと自分の服を夕陽の当たる裏庭に干した

チャンミンの服の質の良さに少し驚いた。
見た目も品が良くて育ちの良さは感じていたけれど。

「いい家のコだな」


ソウルに犬がいるとか言ってた。

本土のデカイ家に住むお坊ちゃんが
夏休みに別荘に来てる、そういうノリだ。

今回来た仕事も、そんなどこかのお坊ちゃんと
どこかのお嬢様のウェディングだった。

スマホが震えて、見るとヒチョルだった

「ヒチョリヒョン?」

「ああ、着いたか」

「先週とっくに着いてるよ
テーブルがまだ届かないんだけど」

「そうか。船便だから気長に待ってろよ」

「テーブルないから机でご飯食べてるよ」

「どうせハダカで食べてるんだろ?
写真撮らせろ」

「は?なんで」

「女子たちに売るから。儲けてやる」

「アハハハハ」

「悪いけどこれからそっちへ行く。
仕事だ。今回時間がないんだよ」

「わかった。ビール買って来て」


ヒチョルはユノの幼馴染で少し先輩

今はウェディングコンサルタントとして
このところ人気がある

ユノはヒチョルの手がけるガーデンパーティの手伝いをしていた。

今回は植栽から始める少し大掛かりなガーデンの創作で、しかも時間がなかった。

いつもの事で誰の結婚式かはシークレットだ。

ヒチョルの手がけるパーティは著名人が多く
ユノも自分が整えたガーデンが有名な芸能人のモノだったことを後で知る。そんな感じだった。


ヒチョルかギシギシと木のドアを開けて入ってくる

ジョンが狂ったように喜んでヒチョルに飛びついた

「元気だったか愚か者め」

「早かったね」

「ビールとチキンも買って来てやったぞ」

「ありがと」

2人は空腹を満たすと、夜中まで仕事の打ち合わせに集中した。

遊びと仕事をきっちり分ける
そんな大人な2人だった。

そんな日が数日続いた。



MAISON と書かれた看板はすっきりと都会的で
ドアの向こうから、騒がしい音楽と人々の笑い声が聞こえた。

そのドアが開く度に、チャンミンは入り口を見た。
そしてため息をついた。

別に待っているわけじゃないけど
遊ぶ店を知らないみたいだったから教えただけ

僕がいるのはイヤなのかな

他の店に行ったのだろうか。

この店はうるさいかな
ユノだったら、もっと静かな店が…

まわりの友達が一瞬静かになった





目の前のセリや、他の仲間の視線が入り口に集中している

あ!

入り口にはユノと、女性かと見紛う綺麗な連れ

すごく…目立つ2人がそこにいた

ドレスコードがあると話したから
どれだけめかしこんでくるかと思ったのに

ユノは首の詰まった黒いノースリーブのセーターに
カーキのカーゴパンツを膝まで捲っている
それに白いスニーカー

夏の夜に大人がカジュアルに遊ぶスタイル

自分のことも、その場所のこともよくわかっている
ユノのこなれた感覚はかなり遊んでいる男のそれだ。

隣の綺麗な男の人は誰だろう

ユノはゲイのようだから、
恋人なのかな

チャンミンの胸が少しだけチクっとした。

ユノは辺りを見回すと、チャンミンに気づきニコッと微笑んだ

陽に焼けた顔に白い歯がきれいな笑顔

チャンミンは思わず立ち上がってしまった

「チャンミン??」

急に立ち上がったチャンミンにセリが驚いた

「あ」

「なになに?あのイケメン知り合いなの?」

セリとその友達がチャンミンを突く。

「うん、ちょっとね」

「ねぇねぇ、こっちに呼んでよ!」

呼ばなくてもユノはゆっくりと余裕の足取りでチャンミンのところへ来た。

「よぉ」

「こ、こんばんは」

「チャンミン、服取りに来ないの?」

「え?」

「もう畳んでおいてあるよ。
ってか俺の返してくれる?ポロシャツってあれしかないんだよ」

「あ!あ、ですよね、なかなか忙しくて」

セリや仲間がユノとチャンミンのやりとりを興味深く見つめている

「じゃあね、また」

ユノは入り口へ戻ってしまう

「え?もう帰るんですか?」

「うん、せっかくだけど、この店うるさい」

「あ」

「それじゃ」

「あ、はい」


腹がたった。


「この店はうるさい」


チャンミンにとっては背伸びのこの店を
子供っぽいと言われているような気がして


おまけにチャンミンも子供だ、と言われているような気がした

「ちょっと、チャンミン、いつのまにあんなイケメンと知り合ってたのよ」

「うん、ちょっとね」


根拠なく、意味深に答えてみる


どこまでも背伸びをするチャンミン


セリは自分がチャンミンの婚約者なんてことは
関係ないようで、さきほどのユノに興味深々だった。

そしてチャンミンもそんなセリのことがまったく気にならない。


気になるのはユノにバカにされたことだ。


ため息をついたチャンミンがソファにもたれて
また酒を飲み始める

「あの人、ゲイだから女に興味ないって」

「え?そうなの?」

なぜか嬉しそうなセリ

「え?もしかしてチャンミン、あなたもう…」

「いーえ、そんなことありません」

「あたしがオンナの良さを教えてあげようかしら」


まわりがその話に乗ってきた

「賭けさせてくれよぉ
最近面白い賭けが全然ないから」

チャンミンがその友達にけしかけた

「俺だったらどうだと思う?」

「えーお前のほうが可能性高いな。
B専なんだろ?さっきの人」

「やーねぇ、あたしにかかればB専だってイチコロなんだから」

「よし決まった!」

友達のウヨンが賭けをとりまとめた

「さっきのイケメン、チャンミンが落とすか、セリが落とすか」


当たり前だけど

ほとんどがチャンミンに賭け
セリは大穴扱いだった。

他にも何人か面白がって参加し、

賭けが分散して、ちょっとしたお祭り騒ぎだった。


からかってやる

子供扱いがなんだか悔しくて

チャンミンは身の程知らずに
浅はかな海に飛び込んだ

僕はカナヅチだったのに…




「可愛かったな、さっきの子」

「ん?」

「服貸したの?」

「ああ、この間溺れてて助けたんだよ」

「へぇー」

「生意気な坊ちゃんだよ」

へへっと笑ったユノをヒチョルはニヤニヤしながら見つめる

「ああいうのは案外真面目だぞ」

「どうだか。雑食なんだってよ」

それを聞いてヒチョルはゲラゲラと笑った。

「いいね、雑食か」

「でもさ、なんか縛られてるんだろうな
自由に見えても」

「え?」

「そんな感じ。自分で自分を縛ってるって感じ」

「ユノ」

「ん?」

「解放してやれ」

ヒチョルの綺麗な横顔が月明かりに白く輝いていた。




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カナヅチの島(2)





シャワーを浴びて、用意されたタオルで1枚を腰に巻き、もう一枚を頭にかぶり部屋へ戻った。


改めて部屋を見渡した。


大きなワンフロアにキッチンとベッド、そして大きなパソコン机。

ソファーはない。

よく見ると中心のヤシの木の陰に隠れて白い柱が立っている。


サーカス小屋みたいな作りだな、と思った。


ユノはキッチンで飲み物を作っているようだ。

バスルームの横には洗濯機が大きな音をたてている。

「シャワーありがとうございます。
洗濯してもらっちゃってるんですか?」

「潮でベタベタだぜ?」

「あー、そうですよね」

「これ、飲んで。美味しいよ
俺もシャワー浴びて来る。」

「あ、ありがとうございます」

「そこに着替えおいておいたから。
たぶんサイズは大丈夫だと思うよ。後は適当に」


そう言ってユノはシャワールームに入っていく。
ジョンがシャワーまでついて来ようとして
ユノに止められていた。


用意されていたのは
シンプルなポロシャツとカーキの短パン

チャンミンは着替えずに裸のまま辺りを見渡した
ユノに拒否されたジョンがトボトボとチャンミンのところへ来た。

座るところもなく、仕方なくPCデスクのチェアに腰かけると、ジョンが足元に座り込む

かわいいな


飲み物は透明な炭酸の中にレモンとオレンジが入っている。

一口飲んで見ると

おいしい


さっきのトラックの荷台といい
この南国らしいボロ家といい

チャンミンはなんとも言えない開放感を感じていた。

風が吹き抜けていく感じがする

体にも心にも


そうやってぼんやりとしていたら
ユノがシャワーから出て来た


アスリートのようなボディにバランスが悪いほど
頭が小さい。

腰にタオルを巻いただけのユノが
チラとチャンミンを見た


「まだいたの?」

「え?」

「着替えて出て行ったのかと思った」

「あ」


なぜかチャンミンは少しだけ腹がたった


「いや、汗がひいたら着替えてもう帰ろうと。
あなたがシャワー浴びるの早いんじゃないですか」

ユノは冷蔵庫からチャンミンに作ったものと同じ飲み物を出して、ゆっくりとした足取りでこちらへ歩いてくる。


ドキドキした


褐色の肌


胸からウエストへぎゅーっと絞れるように線が細くなり、細い骨盤から長い脚が伸びている

歩くたびに膝の上の筋肉が動く


ユノはほんとうにセクシーな人だった。


「チャンミン、トラックの荷台よかっただろ?」

「え?」

ふいになんの話しかと、チャンミンはキョトンとした。

「すっげぇ気持ちよさそうな顔してた」

「あ、ああ、初めてだったから。
荷台に乗ったりしたの」

「いい笑顔だったよ」

「は?」

「可愛かった」

「ふぅん」

チャンミンはそんなことどうでもいいと言った感じで、口をへの字に曲げた。


「さっきも言ったけど」

少しイジワルな瞳でチャンミンはユノに話しかけた

「なに?モテるって話?」

「そう、どこで遊んでるんですか?
全然見たことない顔」

「ってことはチャンミンは相当遊んでるんだな。
店に来るメンツはほとんどわかってるってこと?」

「まあ、そんなところです」

「へぇ」

ユノは面白そうにチャンミンを見つめた。

「とは言っても、こんな小さな島だから
そんなに店もないけど」

「リゾート地だからそれなりにあるだろ?
チャンミンはなんて店にいるの?」

「メゾンです」

「即答だな。いい店なのか」

「可愛い子は結構いますよ。
島の子もいれば、ソウルから来てるお嬢様とか。
ユノなら、2〜3人お持ち帰りできるんじゃないかな」

「そうか、残念だな」

「残念?」

「俺、女のコに興味ないんだ」

「え?」

「だから、俺の前でいつまでも裸でいない方がいいぞ」

チャンミンは急に両手で自分の裸の身体を覆った


そんな様子を見てユノは大声で笑った。

「可愛いなぁ。余計ヤバイよ、そんなポーズ」

「からかってるつもりでしょうけど」

「ん?」

「僕は雑食ですよ。
たぶんあなたより、いろいろ知ってます。」


あながち、間違いではなかった。
昔から、かなり遊んできた自信はある。

負けず嫌いのチャンミンは
カッコいいことなら、なんでも試した。

みんなが憧れることは、片っ端から経験した。

超絶可愛い女のコや、超絶カッコいいイケメンとの遊び。
みんなが経験したことのない遊び。

男に抱かれる快感だって経験済みだ。
気持ちよければなんでいい、というスタンスは
とてもカッコいいものだ。

ユノは値踏みするようにチャンミンを眺めた。

「それならチャンミンから、いろんなことを
教えてもらおうかな?」

チャンミンはムッとした。

完全にバカにされてる


「……」


「まずはメゾンね?行ってみるよ」

「ドレスコードありますからね?」

「了解」

「……」


「俺、出かける。
チャンミンの服は乾いたら机に置いておくから、
適当に取りに来て」

「いつ?」

「いつでも。鍵かかってないから」

「は?」

「じゃあね」

ユノは黒いタンクをかぶるように着て
車のキーを手にチャンミンにヒラヒラと手を振った。

ジョンが嬉しそうにユノについていく。


「ちょっ!」


パタンとドアが閉まった


ここらどうやって帰るかは
なんとなくわかる。


でも、とことんバカにされた感じが悔しい

無性に悔しい

そんなに悔しがることなかったのに


カッコつけたりしなくたって
ユノは素のままの自分を受け止めてくれる


そんな度量は十分あったのに


夏の太陽とそのラフな生活スタイルと
いかにもな軽い口調に


その人間としての深みを見出すことができなかった。


子供だった自分を後で死ぬほど後悔した

自分は泳げないカナヅチだけど

ユノへの愛に溺れていたカナヅチでもあった




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