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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

片想い(29)



ごめんな、テミン…

ユノは泣きじゃくるテミンを乗せると
車を出した。


俺は浮かれていたんだ


チャンミンとテミンが一緒にモデルをしてくれることが俺は実はうれしかったんだろう

2人が俺のために尽力してくれたのがうれしかったし、
とても楽しそうな2人を見るのもうれしかった。


でも、子供がしなくていいようなイヤな思いをさせてしまった。

残酷な…思いを


マンションに着く頃には
テミンは寝てしまっていた

かわいそうに


ユノは車から降ろそうとテミンを抱き上げ
愛すべきテミンの可愛い寝顔に頬を寄せた

ん?

熱い…


テミンの頬は紅く
その熱さは普通ではなかった。

熱があるんだ

ユノはテミンを抱き上げたまま、
急いで部屋へ向かった。


テミンに熱を出されたのはもちろん初めてではない。

だけど、今回は完全に自分が悪い。


チャンミンとテファンのやりとりに嫉妬の炎を燃やし、テミンが薄着でいる事がわかっていたのに
俺はなにもしなかった。


テミンは2週続けて慣れないことをさせられて
心も身体も疲れていたに違いない

俺はそんなこともわからずに


大事なことはなんだ?
俺は何を優先させなければならなかったんだ

もう一度よく考えろ、ユンホ

ユノは自分を責め続けた


テミンを毛布で包み、おでこに冷却シートを貼ってショウガを絞り、はちみつを温めた
解熱剤は始めは使わないのがユノのやり方だった。

風邪かどうかはわからない。

テミンは疲れると一時的に熱を出すことがよくある。

とにかく、温めてよく休ませよう
水分もたくさんとって。

だけど…

傷ついた心をどうやって癒してやろうか。


誰が悪いわけではない。
でも、それでも誰かに傷つけられることもある。
そんなこと幼いテミンにはわからない。

テミンを起こすとぼーっとして目を覚ました

「はちみつだよ?少しでいいから飲んで」

「ん」

小さなマグを両手で包み
テミンはユノの作ったはちみつショウガを飲もうとした。

「ふーふーして。熱いから」

「ん」

頬を膨らませて、ふーふーするテミンが可愛い

思ったより飲んでくれた

「パパ、ぼくおねつあるんだね」

「つらいか?」

「だってはちみつつくってくれるときは
おねつあるんでしょ?」

「ああ、熱あると思う」

「じゃあ、またあれやって」

「なに?冷えピタなら、もう貼ってるよ」

「ぐるってつつむの。
おねつのとき、してくれるやつ」

「ああ、うん。してほしいか?」

ユノはテミンを抱き上げて子供部屋のベッドに連れて行き、自分は上半身裸になった。

テミンは力なくパチパチと手を叩く

「なんだ、それ。拍手?」

「そう」

テミンのシャツも脱がせて裸にさせると
ユノはテミンを抱き込んで毛布にくるまった。

裸ん坊の2人がくっつくと温かい

「あったかーい」


これがいちばんいい。
心も落ち着く


ユノのしなやかに筋肉のついた身体に
テミンはすっぽりと包まれていた

ユノはテミンのこめかみにキスをする

「パパ…」

「ん?」


「ないちゃった、ぼく」


「いいんだよ、泣いていいんだ
だって、悲しかったじゃないか。」

「さきにぼくたちがあげればよかったね」

「テミナ」

「んー?」

「あれ、あげようよ、せっかく選んだんだしさ。」

「でも、おなじやつだよ?」

「テミナが選んだって言ったら
先生喜ぶかもよ」

「カメラマンさんのじゃなくて
ぼくのしてくれる?」

「きっとそうだよ」

「でも…」

「ん?」

「シムせんせい、カメラマンさんとイタリアいくって」

「え?」

「おようふくきせてくれるひとが
だれかにいってた」

「じゃ、じゃあさ、イタリアいく前にあげなきゃね」

「せんせいはカメラマンさんのエプロンのほうがうれしいのかも。」

「そんなことないよ」


「んー」

少し熱が収まったのか、そのままテミンは眠った。

ユノは被っていた温かい毛布でテミンを包み
そっとベッドを離れた。


テミンの部屋を出ると
リビングになんとチャンミンが立っていた


ユノはびっくりして、思わず後ずさりした

「チャンミン…」

「あ…」


まさか上半身裸のユノが出てくるとは思わず
チャンミンは視線を逸らした。

「すみません。ここのカードキー返してないから
入ってきちゃいました。」

「ああ」

「心配で…」


ユノは裸の自分の身体をさすりながら
着るものを探した。


「あ、テミンだったら心配しないで」

「なにがあったんですか?」

「なんでもないよ」

「なにかあったはずです。
なんだか大人の世界でいろいろ無理させちゃったのかと…」

チャンミンはふと、冷却シートの剥離紙を見つけた

「え?テミンくん…」

「あ、熱出しちゃって…
たぶん、疲れてたんじゃないかな」

「熱はどれくらい?」

「そんなでもないと思う。
下がらなかったら、明日医者に連れていくから」

「僕が行きます。明日仕事でしょ?」

「一段落したから、明日は休みもらった」

「そう…ですか…」


チャンミンは手持ち無沙汰で
もじもじして立っている。


「あ、座って。
コーヒーいれるよ。インスタントだけどいい?」

「はい…」


ユノはキッチンに立ち、湯を沸かしていた。



「チャンミンは…モデルになるの?」


「は?」

「いや、みんなが素質あるって言ってたし」

「ああ、そう言っていただけましたけど…」

「いいんじゃないか?
誰でもなりたくてなれるものじゃないし」

「そう…でしょうか…」


「再来年でテミンも小学生だ。
シム先生と会えて、テミンはよかったと思うよ」

「それは…僕もです」

「誰かと出会って、道が開けるっていいことじゃないか」

「テファンさんの…ことですか?」

「チャンミンにとっては…ね」

「………」

「でも、テミンにはやりすぎだったな…
もう…こんなことさせない」

「こんなことって…モデルですか?」

「ああ」

「楽しそうでしたよ?」

「でも、大人の世界だ」

「そうですけど…」

「そこはちゃんとしてやりたい。
せっかくスヨンが命がけで産んでくれたんだ。
早くから大人の世界なんて…」


「………」


「小学校はソウルの学校に行かせようかとも思ってる」


「そういうのって…大きくなってくると
本人の負担になったりしますよ」

「え?」

チャンミンが意外な事を言う

「僕も…そうでしたけど
母が命と引き換えにあなたを産んだって
まわりから言われ続けて…」

「………」


「正直、すごくプレッシャーでした」

「チャンミン…」


「母の分も生きなくては、とか言われて
全然力が抜けなくてつらかった…」


「………」


「たしかに産んでくれた母には感謝していますけど
僕は僕で…そしてそんなにすごい人間でもない」


「なっ…なんてこと…言うんだよ…」


「前に….テミンくんと同じ境遇の僕に
いろいろ聞きたいって言ってたじゃないですか。」

「だけど…」


「今の僕は、20年後のテミンくんですよ」


「よくそんなことが…平気で言えるな」


「え?」


「スヨンが…どんな思いで…出産を選んだか…
テミンを産むために、もっと生きられたかもしれない命を捧げたんだぞ…」


ユノの声が震えている


「………」


「それを…迷惑だとかプレッシャーだなんて…」


「じゃあ、なんで今の僕が父と住んでいないかわかりますか?」


「なんだそれ…」


「もううんざりなんですよ!
母さんが…お前は母さんの命と引き換えに。
何かあるとそればっかり!」


「それだけ、愛されて産まれてきたってことだろ?」


「父もそれに縛られて生きている。
僕を産んで亡くなった母が偉大すぎて
前へ進むこともできない。
関心事は僕のことだけ…」


「縛られるって…
そういう言い方ないだろ…

神様だかなんだか知らないけど…
いきなりスヨンを連れてったんだ!
俺になんの断りもなく!」


「しかたないじゃないですか!
そうやって、スヨンさんに縛られて
あなたの20年後は僕の父のように1人ぼっちですよ!」

「お前に…俺とスヨンの何がわかる!」

「わかりませんよ!
僕にわかるわけない!わかりたくもないです!」


もう、2人とも止まらなかった


どうにもならない気持ちをお互い誤魔化し続けてきて、ここで決壊してしまったかのようだった。


「チャンミンは変わったよな?
みんなにチヤホヤされて、何か見失ってるんじゃないか」


「…………」


静けさの中、チャンミンのため息が震えている




「ごめん…」

少し間があいて、ユノが小さく謝った…



「チャンミンには…感謝してる
俺の窮地を救ってくれた…」

「…………」


「それなのに…勝手なこと言ってごめん」


「僕が…自分で決めてやった事ですから…」



「でも、よかったじゃないか…
素質を認めてもらえて…そうだろ?
道は開けたよな?」


「でも…僕は…」


「イタリア行くんだろ?
お母さんのプレッシャーから解き放たれるんじゃないか?
自分で思うように生きれて良かったな」


「ユノさん…」


「お前にはわからない
俺の苦しみなんかわからない!
もうほっといてくれ」


完全なる八つ当たりだった…

頭の片隅で…わかってはいた…


カタと音がして、テミンの寝室のドアが開いた。


「あ…」

チャンミンが口を手で押さえた。

泣きながら、小さなテミンが顔をだす
肩から毛布を羽織っている


「けんか…しないで…」


ユノが駆け寄った

「ごめんな、何か着ないと
こっちにおいで」

ユノは無理に笑顔を作ってテミンを抱き上げた


チャンミンがすかさずテミンの部屋に入り
引き出しから着替えを探す

泣きじゃくるテミンをユノがなだめた

「ごめんな…」


テミンに近づきたいチャンミンだったけれど

嫌いだと言われたことがショックで
少し離れたところから、愛おしそうにテミンを見つめていた。

もう泣きそうなチャンミン…

やっと泣き止んだテミンは目を豪快にこすっている

ユノがその小さなおでこに自分の額を当てて
熱の具合をみている


「まだ…熱ありますか?」

「さっきよりはいいけど
明日医者つれてくから」

テミンがリビングボードから
なにかを取り出し、チャンミンのところへ来た

チャンミンはすかさず、
テミンを抱きしめた

「ほんとだ。熱いね。お熱がある…
かわいそうに…」


「せんせい…これ…」

「?」

テミンの手には見覚えのある包み。

今日テファンからもらった包みと一緒?

「これなあに?」

「せんせいへのプレゼント…」

「え?」

「いらない?」

寂しそうなテミン

「ほしいです。あけていい?」

「うん…」

テミンは振り返ってユノを見上げた

ユノは優しく微笑んでうなずいてくれた。


チャンミンが包みを開けて

「あ…」

声にならない声をあげた


「もしかして…これ…あ…そんな…」


「さきに、ぼくとパパがえらんでかったんだよっ!
ぼくたちがさきなの…」

テミンの綺麗な瞳は必死だった。
熱で潤んだ瞳が真剣だ。

「テミンくん…」

「せんせいににあうからって
パパもぼくもそうおもったの」

「そうだったの…」


チャンミンの目から大粒の涙が溢れる…

「だけど…おたんじょうびじゃないから
いつあげたらいいか、わからなくて…」

「テミン…くん…」

チャンミンはテミンを強く抱きしめた


「ありがとう、せんせい、すっごくうれしい」

「でも、おなじのだよ?」

「そんなこと…ああ、かなしい思いをさせちゃいましたね。ほんとにごめんなさい」

「おなじのなの…」

「何をもらうかじゃなくてね…
誰からもらうかのほうが、先生は大事です」

「せんせい…」

「せんせいはね、テミンくんのほうが大好きだから
テミンくんからもらったこのエプロンを毎日します」

「ほんと?」

「ほんとです」

「せんせい…」

「ん?」


「きらいっていったのは…うそ」


チャンミンは目を閉じて嗚咽をこらえた


「ありがとう…ほんとにありがとう」


テミンが体を離してチャンミンを見た

「でも…カメラマンさんがかわいそうだから
これおせんたくしてるときに、もうひとつのしてたら?」

「それはいいアイデアですね」


ユノはひとりキッチンに立っていた。

だまって2人のやりとりを腕組みをして背中で聞いていた。


なんとも…複雑な気持ちで


イタリアに行くことを
モデルになることを否定しないチャンミン


やりあってしまった後悔と、
疑念がぶつかり合うユノだった



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百海です。
いつもありがとうございます。

今年ももう終わりですね。

せっかくの大晦日だというのに
お話はクライマックスを迎えてしまい
切なさもMAXで💦💦

空気の読めないアップとなってしまいました💦

それでも、これを読まれている方は
付いて来てくださってるということで
本当に感謝しています。

明日の元旦はアップをお休みいたしますが
2日からまた再開いたします。

今年はたくさんのコメントや拍手をいただき
本当にありがとうございました。

来年はいよいよ2人ともご帰還の年ですね

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

片想い(28)



その日も順調に撮影は進んだ。

チャンミンとテミンは水着になったり
夏休みのおでかけ、といったコーディネートがいくつか。

今日はかなり薄着の撮影で
スタジオは暖房を効かせて、テミンが風邪をひいたりしないように配慮された。

チャンミンが肩やその上半身を出す場面が多く
ユノにとって目のやり場に困るシーンも多々あった。

チャンミンの身体は普通に筋肉がついているのに
元々が華奢なせいか

とにかく色っぽい

まわりの誰か、例えばテファンが
それに魅了されてしまうのではないか、と
ユノは気が気ではなかった。


ユノはもう、自分の気持ちに気づいていた


チャンミンが好きだ


昨夜、チャンミンがマンションに来た
こめかみにキスをして帰っていったチャンミン

ひとり仕事をしている俺を
気にして来てくれたのだろう

その時わかった

チャンミンに会いたかった自分、
来てほしいと、待っていた自分。

もう、誤魔化しようがなかった。



だけど…俺は手を広げてチャンミンを抱きとめる事は出来ない。


スヨンは自分の人生を俺にかけてくれたんだ

あの時、みんなが赤ちゃんをあきらめろ
と言った。

もちろん俺も。


「ユノの分身なのよ。
ユノと私の赤ちゃんを授かったなんて幸せすぎる。
どうしてこんな幸せをあきらめろなんて言うの」

俺が子供好きで、
自分の子供を欲しがっていたことを
誰より知っていたスヨン。

俺は最後は反対できなかった…

だから…

俺がここに生きている意味は
スヨンに見守られ、テミンを育て上げることだ

俺だけ、心変わりなんて…許されない



テミンの撮影はほぼ終わった。

午後はチャンミンひとりの撮影が残っていた

週末の夜にグラスを傾けるってやつだ。

テミンはすっかり夏の恰好のまま、
温かいスタジオで遊んでいたけれど

そのうち眠くなってしまったようで。

バスローブを着てメイクをするチャンミンが
テミンを気にする

「あの…このシーンはどうしても必要?」

縋るような瞳で俺を見上げるチャンミン。

「必要だけど?」

「テミンくんが…なんだか眠そうで。」

「大丈夫だよ、そんなこと気にすんな」


順調に進んでいた撮影が
照明の具合がよくないとのことで
一旦休憩になった。

テミンを抱っこする俺は
ディレクターズチェアを借りて1人座っていた。

そこへテファンがやってきた。

「テミナは眠くなっちゃったかな?
疲れたよね」

「………」

もう眠くて返事もできないテミン


「テミナはもうすぐ小学校?」

「はい、来年になるのかな?再来年か…」

「そうか。その頃、俺はイタリアだな」

「へぇ、イタリア。
そういえば、一年の半分くらいヨーロッパなんですよね?」

「うん、ほとんど仕事だけどね
でも、今度はチャンミンが一緒に来てくれそうで
楽しみだよ」


「え?」


「もう、スタイリストもメイクもさ、
みんなでチャンミンにモデル業を勧めてる」


「イタリアにチャンミンが?」


「ショーなんかもだいぶ見る予定だし
何人かデザイナーも紹介できるし
アジアのモデルでチャンミンみたいなコは貴重だよ」


チャンミンがイタリアに…テファンと一緒に?


ユノは何かで頭をなぐられたような衝撃を心に感じた。


待ってくれよ…


寝そうで寝ないテミンの背中をなでながら
ユノはため息をついた


俺に何か言う資格があるか?


あの夜、チャンミンに心が欲しいと言われた夜
俺はチャンミンを拒否したんだ

何を今更…



やっと撮影が再開された

チャンミンは裸にバスローブを着て
ソファに座る。

テファンがカメラを片手に、
ソファの背もたれの方から声をかける

「チャンミン、振り向いてこっち見て。
背もたれに片腕乗せてこっち見て」

チャンミンは言われた通りに
ソファの背もたれに上半身を乗せてテファンを見る

今までの撮影と違うせいか
チャンミンの表情がぎこちない

「背もたれに置いた腕に、顎を乗せてみて
で、目線はこっちに」

必然的に上目遣いになるチャンミン

あまりの可愛い色気に
ため息を漏らすスタッフもいた。

ユノは眠ってしまったテミンを抱っこしたまま
チャンミンを見つめていた。

いや、チャンミンとテファンを見つめていた


このあたりからテファン独特の手腕が光る


「カメラを好きな人だと思って。
今日が勝負をかけられる最後の夜だよ?
どんなふうにその人を見つめたらいい?」

まるで催眠術にかかったように
チャンミンの表情が変わり、

カメラを、それを操るテファンを見つめる
なんとも色っぽいチャンミン。

そこで、テファンが何かを耳打ちした

スタッフがドキッとするようなその様子


「ユノなんか忘れちゃいな、望みはまったくないんだから」

テファンはそうチャンミンに耳打ちした

チャンミンは一瞬驚いた顔になったけれど
その後、目線が強くなり
挑むようにカメラを見つめている

さきほどまでの完全に受け身だった素人のモデルは
自分だけの写真集を撮っているのかと思える積極性だった。

顔の角度を変えてカメラを睨みつける


シウォンがヒューと感嘆して、
ユノに振り返った

そして驚いた

「おいユノ、テミン風邪ひくぞ、夏の格好のままじゃないか。もう暖房そんなに効いてないんだから」

「え?」

「だから、テミンが」

ユノはやっと気がついた様子で
テミンを抱き直した。

「抱っこしてるから大丈夫だよ」

もうその目線はチャンミンとテファンに釘付けだった…

「もう帰っていいよ、後は俺がやっとくから。
テミンかわいそうだぞ」

「………」

聞こえないのかそれでも動かないユノに
シウォンは羽織るものを持ってきて
テミンにかける。

そしてユノの顔を見ると
困惑してチャンミンとテファンを見つめている

目の前で好きな相手を易々と誰かに盗られるの図

それを指をくわえてただ見ているようなユノに
シウォンは心で嘆いた

なんだかな…

なんてやつなんだろう…



やがて、テミンは目が覚めて案の定、寒いと言い出した。

持ってきたセーターを着せたり
テミンの面倒をかいがいしくみるユノ。

支社長とパパとのギャップが
スタッフに最近人気だった。


少し時間はかかったけれど
撮影は無事に終了した。


これで全ての撮影が終わったのだ。


ユノとシウォンの窮地を救ってくれた
チャンミンとテミン、
そして予算のない中、格安で仕事を引き受けてくれたテファンに小さな花束が渡された。


みんなに拍手をされ、
小さな花束を喜ぶチャンミンがたまらなく可愛かった。

テミンもとても喜んで、その可愛さに女子スタッフから2ショットでの写真をせがまれていた。


少し落ち着いた頃、
テファンがチャンミンに近づいた。

「お疲れ様でした。
イタリアの話は忘れないで。
保育士でいる間も、僕の話を忘れないように
是非これを身につけていて。」

テファンはリボンのついた、包みをチャンミンに渡す。

ユノはそれを見て、嫌な予感がした。


あの店の包装紙だ。


「え?僕にですか?」

「そう、開けて見て」

ユノは立ち去ることもできず
思わずテミンの手を握りしめた

「わーなんだろ?」

チャンミンがその包を開けた時

ユノの悪い予感は的中した


あのデニムで動物の刺繍のエプロンだった。


「うわ、これってブランド物ですよね?
でも可愛い」

「男物なんだよ、一応」

「へぇー」

チャンミンはそのエプロンを身体にあてている


「パパ…」

テミンが悲しそうにユノを見上げた。

ユノはザワつく気持ちを抑え込み
テミンを見下ろし、微笑んだ

なんてことないよ…

そう言いたかったのに
言葉がでてこなかった…


テファンが今度は小さな包みを
テミンの元に持ってきた


「よくがんばったね。これはテミナに」


「いらないっ!!!!」


テミンはユノの脚に抱きついた


スタッフたちが驚いてこちらを見る
チャンミンが近寄ってくる


「すみません。」

ユノはどうにか笑顔でテファンに謝る

呆気にとられて状況が読めないテファン。


「パパ!なんであやまるのっ!!!」

テミンが泣き出した

「テミンくん」

バスローブのまま、チャンミンがテミンに声をかけた。

「せんせい、きらいっ!!!」

その叫びにチャンミンは息を飲んだ


ユノは大泣きしているテミンを抱き上げた

「シウォン、悪い。あとで社に戻るから
とりあえず帰る」

「あ、ああ、わかった」

「ちょっと待ってください。
何があったんですか?」

追ってくるチャンミンにユノは振り返った

「今はほっといて。頼む」

「え?ちょっ…ちょっと」


ユノはひたすら前を向いて、

テミンを抱きしめ、駐車場へ向かった。


バスローブのチャンミンはさすがに駐車場までは追ってこない。


ごめん

テミン

大人の世界へ巻き込んでしまった。

子供の世界なら言いたいことが言えたのに

それは僕が選んだんだと

チャンミンに僕がプレゼントするんだと…

それで堂々とケンカでもできたのに


それを押し込めさせてごめん


モデルなんかさせて俺は間違っていた


ごめん、テミン







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片想い(27)



テファンが案内してくれた店はとてもよかった

落ち着いていて、和めて、お酒の種類も多いし
食べ物も美味しい

みんなが楽しく歓談する中

それでもチャンミンは、うわの空だった


ユノさんは何をしているのだろう

1人でマンションに戻り、
黙々と仕事をしているのだろうか。



「チャンミン?」

「あ、はい?」

テファンに話しかけられて
チャンミンはビクッとした

「聞いてた?」

「すみません…ちょっとボーッとしちゃって」

「君はモデルとしてかなりの資質があるって話をしてたんだ。」

「はぁ」

「どう?プロとして十分やっていけるよ。
ランウェイも少し練習すれば大丈夫。」

「ランウェイ?」

「ほら、ショーなんかでさ」

「あームリムリ」

チャンミンはケラケラと笑いながら
目の前で手を振ってみせる。

「僕は子供が好きなんで」

シウォンがかぶりをふった

「そういうところが、またいいんだよなぁ」

「シウォンさん、何言ってるんですか」

スンヒョンは相変わらずうっとりとチャンミンに見惚れている。


「ねぇ、ひとつ確認していい?」

テファンが意味あり気にチャンミンを見つめる

「なんですか?」


「ユノさんのこと、どう思ってる?」


その言葉にシウォンが驚いてテファンの顔を見た

スンヒョンは「え???」と意味がわかっていないようだ

「どうって…」


テファンが挑むようにチャンミンを見る

「じゃあさ、質問変えよう
ユノさんってどんな人?」


「それは…」


この人は何が言いたいのだろう

随分と図々しいな


「あ、意外とユノさんのこと、知らないのかな」

テファンが意地悪な視線を送ってくる


「知ってますよ」

「ほぅ、で、どんな人?」

「ユノさんは…正直です」

「ふーん」

「自分にも相手にもウソをつかない…
一度した約束は絶対に守り通すんです」

「へぇ」

「純粋で愛情深くて、人を裏切らない
自分より弱いものを徹底的に守ろうとする
そんな…男らしさがある人です…」


スンヒョンが相槌をうつ。

「わかります!チャンミンさん。
僕はですね、最初はヒドイ上司だと思っていました」

「え?ユノさんを?」
チャンミンは驚く

「はい!仕事で失敗をすると
責めないけれど、無理難題押し付けて
その後処理をさせるんです。
自分のした事だからって。厳しくてイヤでした」


シウォンがそれを聞いてニヤリと笑う

「だけど実は…
裏でかなり手を回してくれて
僕の失敗が大ごとにならないようにしてくれていたんです」

「…………」

「僕はそれを自分で処理することで、すごくスキルが身について、結局後で自分の為になってる…」

「…………」

「育ててくれていたんです…陰で僕のことフォローして」

「へぇー」

「でもそれを絶対に僕に言わなくて…
僕の方からお礼を言ったら、知らないって」

「あいつはカッコつけ屋なんだよ」

「あ、そうかもしれませんね。
弱みとかみせないし」


「みなさん、それは違います」

チャンミンがきっぱりと言った

「ユノさんは…保育園でちょっと人目を引いちゃったことがあったんですけど」


あのくまちゃんのパンの一件…


「その時…誰が一番つらいか…
わかってあげられる人なんです…
自分がカッコ悪くみえても
全然気にしないで」


パンの前で、泣き出してしまったテミンを
優しくなだめ、
くまちゃんが可哀想だというテミンに
そうだよね、かわいそうだね、と
笑顔で同意してあげたユノさん…


「チャンミン、泣かなくってもいいじゃん?」

テファンの言葉にチャンミンはハッとした

思わず頬を触ると涙がひと筋流れていたようだ。

「あ、いや…あの」


テファンが落ち着いた様子で話す

「保育園で何があったか知らないけれど
あんなにいい男は久しぶりに見た」

3人とも興味深く、テファンの話に耳を傾ける

「カメラマンとして言うとね
とにかくセクシーだね。男の色気ってああいうのをいうんだな。」

チャンミンはドキドキしてきた


「あれは、姿カタチだけのモノではないね。
なにかこう、気持ちが男なんだろうなぁ」


チャンミンはなぜだか嗚咽がこみ上げそうになった


「中味は知らない。悪いけど。
でもテミンを見てると、あの子は愛情をたくさん受けてるのがわかる。ユノさんにすごく愛されて育てられてる。そこはすごいよ」


「そこは、って、他にもすごいところがいっぱいありますよ?」

チャンミンは少しムキになっている


「ユノさんに一旦愛されたら、最高に幸せだ。
でも、そう簡単にあの人の愛は得られないよ?」

「…………」

「それ、僕に言ってるんですか?」

チャンミンはいよいよムキになる

「まぁまぁ、そんなにチャンミン、ムキにならないで」
シウォンが場の空気を変えようとする


「誰も…ユノさんの愛なんて得られませんよ。
あの人の愛はテミンくんとスヨンさんのものです」


「チャンミン…」

シウォンがじっとチャンミンを見つめる



「チャンミンは片想い?」

テファンが真面目に聞く

「え?」

「やめなよ、つらいから。
片想いからは何も生まれない。
時間の無駄だ。
気持ち切り替えて、早く他の人と幸せになったほうがいい」


「ですよねー」

スンヒョンがぼーっとしながら
答えた

「お前もいろいろあんのか、ん?」

シウォンにポンポンと頭を叩かれているスンヒョン


やがて、お腹もそこそこ満たされたところで
お開きとなった。

明日も撮影があるし
一応チャンミンはモデルなので夜更かしは良くない

シウォンとスンヒョンは飲み足りないということで
どこかへ繰り出していった


チャンミンはテファンと2人でソウルの街を歩く

「つらくなったら、いつでも僕のところへおいで。
チャンミンのシェルターになってあげる」

「シェルター?」

「ユノさんを思ってつらくなったら
逃げておいで…いつでも大歓迎だよ」

「ユノさんを忘れさせてくれるとか言うんですか?」

「それもいいね。僕で癒されるなら」

「冗談でしょ」

「今日いきなり会ってさ、こんな話あれだけど
僕は来年一年かけてイタリアからヨーロッパを回るんだ。一緒に来ない?モデルとして。」

「は?」

「ショーも見て回るから勉強になるし、業界の人脈にも紹介できるいいチャンスだし。」

「僕が?ですか?
一緒にって、そういう事を望んでますか?」

「嫌なら、チャンミンに一切触れない。
メチャクチャ、君の存在に刺激されるんだ。
撮りたいんだよ。愛したいけど、それがダメなら
せめて撮らせて」

「は?何言ってるんですか?
行くわけないでしょ」

「それだけの容姿を持っているのは
ひとつの才能なんだよ?
それを活かすことを考えてみたら?」

「僕が今モデルをしてるのはね、
いいですか?
ユノさんを助けるためなんですよ!」

「…………」

チャンミンの大声にすれ違う人が振り返る

「あなたの芸術心を刺激するためじゃないんです!」

チャンミンはよろよろと通りを歩く

「勘違いしないでください!」

今頃になって酒が効いてきた



「僕は…」

涙で街路樹もただの茶色の塊に見える

「僕はユノさんのために…」

よろめくチャンミンはテファンに支えられて歩く

「自分の気持ちは…どこかに押し込めて…」


チャンミンは片手で顔を覆って泣き出した

「犠牲的な愛ってやつですよ!」


「チャンミン、もうそんなつらい恋はやめな」

テファンは優しいのかなんなのか

たしかなのは
良くも悪くも、この人には本心を言える

それだけは間違いない


「僕、やっぱりこれからユノさんのマンションに行きます」

「フられるよ?もし抱かれたら更につらいよ?」

「ユノさんは僕を抱かない…
あの人のこと、知りもしないくせに」

「チャンミン」

「なんですか?」

「結局君はね、僕とイタリアへ行くことになると思うよ」

「バッカじゃない?」

フフとテファンは笑いながら
酔ったチャンミンの様子に笑った

「送って行くよ」

「だから、ユノさんのマンションに行くの!」

「わかった。タクシー拾ってあげるから
こっちへきて。」

「タクシーなんか使いません
あなたとはここでさよならです」

じゃあ、と手をヒラヒラと振ってチャンミンはよろよろと通りを歩いていく。

テファンはため息をついた

「やる気にさせるヤツだなぁ、久しぶりだな
こんなに気になる存在」

そうして、ニッコリと笑ってチャンミンとは逆の方へ歩いて行った



チャンミンは財布から、カードキーを取り出した。

ユノから渡された鍵をまだ持っている

はーっとため息をひとつつくと
チャンミンはユノのマンションのエントランスの鍵を開けた。

そうしてエレベーターに乗り
ユノのマンションの階へあがり

その部屋の前に立った。


起きていたらどうしよう

勝手に入るなんてダメだよね…


でも、ここでチャイムを鳴らしても
追い返されちゃうだろうし…

チャンミンはそのまま、部屋に入った

暗い廊下を行き、リビングには灯がともっているのがわかる

そっと部屋をのぞくと


リビングのテーブルにはパソコンがあり
それに突っ伏すようにユノが寝ている


ユノさん…

あなたがこんなに仕事しているのに
僕は飲みになんか行って…


その寝ている顔を覗いた

あどけなく、セクシーな
その彫刻のような美しい顔

一瞬だけ、テファンさんを素敵だなんて
思ったけれど

そのときめきはと言えば
ユノさんに感じる物とは比べ物にならないよ


あなたが僕を選んでくれないのは
あなた自身の決め事だよね。

一生スヨンさんを思って生きていくと
そう決めた信念

自分への誓い。


そして、そんなあなたを好きになってしまった僕の哀しみ


側にあったブランケットを
そっとユノさんにかけた

しばらくその寝顔を見ていたけれど
チャンミンはそっとそのこめかみにキスを落とした

ユノがよく、寝ているテミンのこめかみにキスをする。

それのマネをしてみたんだ


なんであなたがテミンのこめかみにキスをするのか
わかったような気がするよ

愛おしいけど、その相手に何も期待しない

そんな時、こめかみにキスっていいね


少しだけ、その髪に触って
チャンミンは部屋をそっと出た。



翌朝、ユノは早めにマンションを出て、
テミンを迎えに行った。

昨日撮影が進んだおかげで
今日は少しゆっくりなスタジオ入り。

車で空いている裏通りをゆっくり走っていると
外を見ていた助手席のテミンが叫ぶ

「あ!」

「ん?どうした?」

「パパ、あのおみせにいきたい」


店の前に車を停めた

そこはつい先日ユノが訪れたあのエプロンの店

テミンは車から転げ落ちるように降りると
ウィンドウを指差し、ユノに笑いかける

「ねぇ!パパ!これシムせんせいにぴったり!」

ユノが買おうとした、デニムのエプロン。

「ああ、パパもね、これシム先生に似合うんじゃないかって思ってたんだよ」

「だよね!ねぇ、プレゼントしてあげようよ」

「なんのプレゼント?お誕生日?」

「うーん、なにかないとだめ?」

「買うの?」

「なんでもいいからプレゼントしたい」

「うーん…」

「ダメ?」

テミンが選んだってことなら、いいのかな。

「わかった、じゃあ買おうか」

「やったーー!」

そして、あのエプロンを今日はとうとう手に入れた。
プレゼント用に包んでもらって、リボンもつけてもらった。

テミンは大はしゃぎで店を出た

「パパ、まだいっちゃだめだよ?
おどろいてもらうんだから」

「わかったわかった」

そんなテミンの頭をなでながら、
ユノも少し楽しくなってきたような気がした。





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片想い(26)



ユノが部屋を出ていった。

ドアの閉まる音がなぜかためらっているように聞こえた

静かになった部屋で
チャンミンはぼーっとしていた。


終わりにしちゃった…

自分で…壊しちゃった…


このまま知らん顔していれば
この先もずっと抱いてもらえたかもしれない


僕は…期待したんだ

いつか…ユノさんは
僕に情が湧いて…愛してくれるかもしれないって。

でも…スヨンさんとユノさん…

2人の愛は揺るぎなく

僕の入る隙間なんか、これっぽっちもない…

それがわかったから

もう抱かれることが…今度は寂しくてたまらなくなった。もうそれはツラい行為でしかない…


これで…いいんだ…

ユノさんのために出来ることは全部やろうって
決めたんだし

こういう関係は終わりにして
正解なんだ。


元々、片想いで
僕はそれを楽しんでいたはずだ。

今日のユノさんはカッコいいとか
ユノさんが笑ってくれたとか

そんな事で楽しんでいた毎日に戻るんだ





週末になって、チャンミンはテミンとソウルまでやってきた。

シウォンとユノが出迎えた


ユノは先日気まずい別れ方をしたせいか
チャンミンに対して少しぎこちなかった。

「疲れただろ?まずは休ませたいんだけど
もうスタジオに入らないといけないんだよ」

ユノはテミンの頭を撫でながら言った
チャンミンの目を見ないユノ。

シウォンはいち早くそのぎこちなさに気がつく

「大丈夫だよ、少しなにか食べるくらい。
朝早かったんだし、ね?テミン、何が食べたい?」

「なんでもいいー」

テミンはもじもじとしている。
あんまり好き勝手を言うと怒られると思っているのか、ユノの様子を伺っている。

「電車の中で結構食べてきたんです。
もうあんまりお腹には入りませんよ。
スタジオ行きましょう」

チャンミンがテミンの肩に手を置いて
優しく微笑む


「そう…じゃあ行こうか。
カメラマンも待ちくたびれてるから」

シウォンがみんなを促した

4人は会社の駐車場に停めてあるバンに乗り込み、
若い社員のスンヒョンが運転することになった。

スンヒョンが遅れてバンにやってきた

「す、すみません…今、電話一本はいっちゃ…って…」

スンヒョンがチャンミンを見て固まる

チャンミンが不思議そうに首をかしげて
スンヒョンを見つめる


シウォンが面白がってスンヒョンをつついた

「なんだよ、この間、会っただろ?」

「あ、あの時は…背の高い人だな、と…」

「今日近くで見たら、可愛くてびっくりしたか」

チャンミンがクスッと笑う。

「いやー!いやいや、なんていうかその…」

スンヒョンがしどろもどろになる

「早く車出して。カメラマン待ってるんだってさ」

ユノがスンヒョンを急かした。

「あ、は、はい。すみません」

バンの中で、チャンミンはふてくされてしまったテミンをなだめていた。

「じゃあ、テミンくん、今からパスタとか全部食べれると思う?」

「おもわない…」

「でしょう?だったら…」

「あのぅ…」

スンヒョンが口を挟む

「はい?」

チャンミンがひょいと顔をあげる

「チャンミンさんは…モデルなんですか?」

「え?僕?」

いきなり話しかけられて、なんの話なのかと
テミンと話すのに夢中になっていたチャンミンは
不思議そうな顔をした。

「いえ、素人ですよ。モデルなんて
今日が初めてです」

「あ、そう…そうなんですか、
あ!でも…全然心配することないですよ!
僕たちがついてますから」

スンヒョンの異常に高いテンションがわかりやすくて、シウォンは笑いをこらえるのに必死だ。

「お前、笑いすぎだぞ」

ユノは憮然としてシウォンをつつく。

「だってさー、スンヒョンお前、直球だな」

チャンミンはそんなことお構い無しに
テミンにかかりっきりだ。

「だったら、終わってから美味しいもの食べたほうが、ね?」

「うん…」

「終わったら、シウォンさんにお願いしてみましょう?」

「うん」

「なに?俺?いいよ、ご褒美になんでも食べさせてあげる」

「こういう時、なんていうの?テミンくん」
チャンミンがテミンに耳打ちする

「シウォンさん、ありがとう」

「はい、いい子だね、テミンは。」

スンヒョンが一生懸命チャンミンに話しかける

「保育士さん…だそうで?」

「ええ、そうです。
普段はバンビのエプロンして、みんなとお遊戯してますよ」

「え…」

スンヒョンが言葉を失う

「アハハハハ…お前、妄想して萌えんなよー」

シウォンにからかわれても
うっとりした顔を隠す気もないスンヒョン


ユノは堪えた…

誰がチャンミンを気に入ろうが
関係ないのだ

俺はチャンミンを拒否した

誰がチャンミンに近づこうが
俺にとやかく言う権利はない

チャンミンがそれをいやがったりするなら
話は別だ。

だけど…チャンミンが受け入れるなら
俺は…何も言う権利はない。


ユノはそう自分に言い聞かせ
心を落ち着けようとした。


バンはスタジオに着いた。

スタジオは大きな白い箱、といった感じの作りだった。

テミンが不安なのか、チャンミンの手を握る

「テミンくん、楽しくお仕事しましょうね
先生、ずっと一緒だから」

「…うん」


スタジオの暗がりの中から
1人の男性が出てきた

黒いタートルのセーターにジーンズ

人懐こい笑顔で、こちらにやってくる


素敵な人だな…

単純にチャンミンはそう思った


「早くから悪かったねー」

その人はシウォンとユノに挨拶をして
チャンミンとテミンのそばに来た

「カメラマンをしてます、キム・テファンです
今日はよろしくお願いします」

まずはチャンミンに握手を求めた

「あ…は、はい…」

そっと手を出すと、その温かい手で握り返され
チャンミンはドキッとした

「こちらこそ、初めてで…
ご迷惑おかけするかと思いますけど」

「そんなこと、気にしないで
自然でいてくれたらいいんですよ」

整った顔立ちが笑うと優しくて
思わずチャンミンは頬を赤く染めた

そしてテファンはしゃがんでテミンに目線を合わせた

「はじめまして、テミンくん。
僕はテファンといいます」

チャンミンの後ろに隠れていたテミンが訝しげに
テファンを見つめる

「こんにちは…」

「お!いいご挨拶だね!こんにちは。
いつもそんなにきちんとご挨拶してるの?」

「こんにちは、は、きちんという…」

「そっかー!それができれば
ばっちりだね!」

テミンは少し微笑んだ…


こいつは挨拶を褒められることに弱いんだな
ユノは苦笑した

と、同時に自分の胸騒ぎが当たったことにも
苦笑していた


テファンがチャンミンの心を掴むだろうと
予想していた…


セクシーな大人の男
柔和な態度…

テファンはいい男だ



でも、もう…自分は関係ない

関係ないんだ…



そんな思いに捕らわれている間も無く

撮影がはじまった。


とにかく、2週間の週末ですべて撮り終えなければならない。

次々に用意される服

テミンとチャンミンはまったく同じデザインのアイテムでサイズ違いを着こなす

大人と子供服が同じデザインで揃えられる
というのがコンセプトだった。

2人はお揃いのボーダーのプルオーバーを着て
チノ素材のカーゴパンツも同じデザインだ。

メイクさんやスタイリストが感嘆のため息をつく

まっすぐ立つだけだったり
2人で少し遊んだり

撮影は順調だった

とにかく、チャンミンはどの服も完璧に着こなした

背も高いけれど、脚が長く頭が小さく
顔立ちも綺麗で。

そして、テミンはどこまでも愛くるしく
緊張していても、それがまたいい味になっていた。

女性のスタイリストがシウォンとユノのところにやってきた。

「完璧ねーどこで見つけてきたの?
素人なんでしょ?」

「ああ、俺の知り合い。保育士だよ」

「へぇー!でもあの完璧なスタイルだと
生まれながらにモデルなんだけどな。」

「言っておくよ」

「うん、お願いね!その気なら後押しするからって」


午前の撮影は予定通りに進みランチとなった。
各自、ケータリングのブッフェを好きにとって食べた。

テミンは好きなものをとっていい、ということで
大はしゃぎしている。

チャンミンがテミンに言われるがままに皿に食べ物をとってやっている


そんな光景をユノは椅子に座って眺めていた

そこへ、シウォンがサラダを盛ったプレートを持ってユノのところへ来た

「なにがあった?」

「え?」

「隠してもダメだ。何年の付き合いだと思ってるんだよ」

「…………」

「バンビちゃんと終わったか」

「始まってもないけど…終わった」

ユノは大きく伸びをした

「ふーん、テファンにとられるぞ。
テファンは百発百中だからね」

「なにそれ。チャンミンは狙われてんの?」
ユノは強がってニヤッと微笑んだ。

「いや、チャンミンのほうが満更でもなさそうだ」

「まさか」


「なんのまさか、だよ。
いつまでもチャンミンがユノにぞっこんだと
思ったら間違いだぞ」


「なんだよ、それ」

「テファンにかかったら
チャンミンなんて、骨抜きだよ」

ユノはイラッとした。

「俺には関係ないから」

「本気だと言われてお前は拒否したんだろ、
かわいそうに」

なんでこいつはこんなにお見通しなんだろう

ユノは笑った

「すげぇなーシウォンは。」

「いいけどさ。だったら、チャンミンが誰に付いて行こうと、ユノには関係ないからね?口出すなよ」

「わかってますよ、そんなこと」

「どうだかね。みっともないマネすんなよ」


ふと見ると、テファンがチャンミンとテミンを手招きして、自分のテーブルに誘っている


たった今シウォンに言われたばかりなのに、
すでにユノの目は3人に釘付けだった

「ほうら、みろ」

シウォンに言われて、ユノは席を立った。


そろそろ午後の撮影の準備だ。


午後もたくさんの服が用意され

とっかえひっかえで着替えて
撮影をした。

テミンが結構乗り気で撮影させてくれたおかげで
予定より早く終わることができた。

シウォンはテミンに話しかけた

「さあ、何食べる?
がんばったから、テミナの好きなもの食べよう」

「ごめんねーいかれないの」

「え?なんで?」

「おばあちゃんが、ぼくにあいたいって
でんわかかってきたんだ」

「そっかー。そうだよね、せっかくソウルにテミナが来てたら会いたいよね」


チャンミンが少し困ったような顔でテミンに聞く

「あ、じゃあ、テミンくんはおばあちゃんちに泊まるの?パパも?」

「パパはマンションにかえるって。
おしごとあるから」

自分はどうしたらいいのだろう。

てっきりテミンと一緒にユノのソウルのマンションに泊まるものだと思っていた。

こうなってしまっては、
2人きりでユノのマンションで夜を過ごすわけにもいかない。

キュヒョンのところでも泊まるかな。

そこへユノが来た。

「今日はスムーズに終わってよかった。
また明日、この調子でがんばりましょう」

爽やかに笑うユノ。

そしてシウォンがみんなに声をかける

「軽くいきますか?ね?チャンミンもスンヒョンも」


テファンが手を叩く

「いいねぇ、落ち着いて飲める店ならまかせて。
ユノさんもテミナを実家にまかせたら、おいでよ」

ユノは爽やかな笑顔のままだ。

「申し訳ない、仕事しなくちゃなんないから。
また最後の打ち上げにでも」

シウォンも残念そうだった。
「なんだー仕方ないな」

チャンミンが恥ずかしそうに口を挟んだ

「あの、じゃ僕も帰ります。テミンくんの保育士として雇われている身ですし」

ユノが優しく微笑んだ

「いいよ、今夜は実家へ送るだけだし。
保育士の仕事はお休みしてさ、
みんなと楽しんでおいで」

「ユノさん…」

「あ、ホテルとっておいたよ。
繁華街の近くだから、帰るのにも便利かも。
このホテルのシングル。」

そういってユノはホテルのカードをチャンミンに渡した

「でも…」

「いいじゃない。ユノさんもこう言ってくれてることだし。みんなで行こうよ、ね?」

テファンがチャンミンの肩を抱く

ユノはそれをチラッと見たけれど
なんでもない風に荷物をまとめ出した。

「じゃあ、お疲れ様!」

「あんまりムリすんなよー
もし来れたら来いよ」

「おぅ」

そんなやりとりの中、みんなは通りに向かって歩き出す。

チャンミンはユノとテミンが気になって
なかなか歩き出せなかった

ユノはテミンに服を着せたり
靴下を履かせたりしている。

「僕がやります、ユノさん」

思わずチャンミンは駆け寄ってしまった。

「大丈夫だから、みんなと行っておいで。
ほら、待たせてるぞ」

どこまでも、ユノは笑顔だった

支度を整えると
ユノはテミンを抱き上げた。

ユノは大きな荷物もいくつか持って

「じゃあ、また明日」

「せんせい、またあしたね!」

「…………」


そうして駐車場へと歩いて行った

なにやら楽しそうに話している2人

可愛くてしかたがないテミンを
それは大事に抱っこして、荷物も軽々と持つ頼もしいユノ。

チャンミンはその後ろ姿から目が離せなかった


僕の…愛おしい2人

僕はこの2人がなにより愛しい

チャンミンは泣きそうになった。

そんなチャンミンをテファンがじっと見つめていた







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片想い(25)



ユノは支社での月1回の定例会議のために
1日だけテミンとチャンミンのところに帰ってきた。

会議が終わると、そのまま2人の待つマンションへ寄った。


「パパーおかえりなさい!」

テミンがユノに飛びつく。

「ただいまっ!」

ユノは飛びついてきたテミンを軽々と抱き上げ
背中にかつぎあげた

テミンはキャーキャー叫んで大喜びだ


「ユノさん、お帰りなさい」

「ああ、ただいま。特に変わったことはない?」

「ないですよ。週末の撮影に少し緊張してますけど」

「お?そうなのか。大丈夫かな」

「緊張してるのは僕です。」

「チャンミンが?!」

「緊張しますよー!当たり前じゃないですか」

「大丈夫だよ、普通に立ってたり
遊んでたりするだけですぐ終わるよ」

「そんな簡単?」

文句を言いたそうに
口を尖らせるチャンミンが可愛い

ユノは思わず、その尖らせた唇にそっと触れた

チャンミンは目を見開いて黙っている
ユノも慌てて手を引っ込める

「あはは…ごめん…」

「いえ…」

「えーっと、じゃ俺、着替え用意してソウルに戻るよ」

「えっ?夕飯はウチで食べないんですか?
僕、チゲを…」

「あ…」

「ユノさんが好きだと思って、いろいろと…」

チャンミンの眉がハの字になって
そして、黙って俯いてしまった

「いや…あの」

ユノはそんな表情のチャンミンに慌てて何か言おうとしたけれど、うまく言葉が出てこない

パッとチャンミンが顔をあげた

さっきと違ってニッコリと微笑んでいる

「すみません。
何か運転中にでも食べられるような物があればいいんだけど…」

「いや…いいよ…」

「そうですか…」


テミンがふたりのまわりをパタパタとかけまわり
はしゃいでいる。


いつの間にか…気づけば…

2人は熱く見つめ合っている


もう…行っちゃうんですか…

チャンミンはそんな縋るような瞳でユノを見て

ユノは困惑したような、それでも劣情を孕んだ瞳でチャンミンを見つめる



「ソウルには…明日の朝帰る…」

「えっ?いいんですか?」

「うん…今夜はここに泊まる」


チャンミンは嬉しさを隠しきれず
思わずユノを見つめて微笑んでしまう


今日見てしまったスヨンとユノの姿が
心に焼き付いてはいたけれど


でもやっぱりうれしい。


ユノは嬉しそうにはにかむチャンミンから
目が離せない


どうしてこうも、気持ちと行動が一緒にならないのか…


ユノは困惑しながらも
今夜はもうソウルには帰る気はさらさらなかった


泊まってしまえば

チャンミンを抱いてしまうのに

それがわかっているのに…



チャンミンはテミンのベッドで
絵本を読んでやっていた


「今夜はひさしぶりだから
パパと寝てあげたら?」

「このあいだ、ねたからいいよ」

「そうなの?」

「だって、ソウルでもあえるし
おふろもはいってあげたし」


もう、テミンの瞳はうるうるして眠そうだ

テミンが眠ってしまってから
チャンミンはしばらくテミンの部屋でじっとしていた。

心臓がドキドキした…


部屋の外のダイニングには
ユノが何かを飲みながら座っている気配がしている


静かにスリッパの音が近づく…

そして、テミンの部屋がそっと開いて
外の光が部屋に入る

それに気づいたユノはドアを少し閉めて
隙間からチャンミンに小さな声で話しかける


「こっちに来て、チャンミン」


チャンミンは白いコットンシャツの胸をおさえた

「早く…おいで」


振り向くとユノの姿は見えず
声だけしかしない…

チャンミンはそっと立ち上がり
テミンの髪を優しく撫でてから部屋を出ると

ユノがチャンミンの腕を少し強引に引っ張り
自分の寝室へと誘う

チャンミンはシャツの襟を片手で掴みながら
そのまま、ユノの寝室へ引っ張り込まれた。


それからはもう…


昼間、お互いを思う時、
様々な理由をつけて拒否をするのに

泣いたりもしているのに


もうお互いなんの我慢もできず
きつく抱き合った

チャンミンは堪えられない思いが溢れ出し
涙が止まらなくなってしまった


「会いたかった…ユノさん」


ユノは抱きしめたチャンミンの後頭部を撫でた


「この間…ソウルで会ったばかりじゃないか…」


そんな事を言うユノの声も震えている

「ユノさん…」

お互いの手がお互いの身体を這い回る

ユノはチャンミンの頭を抱えて
激しくくちづける

腰からグラついたチャンミンを
しっかりと支え直すユノ

2人とも…息も絶え絶えに…抱き合う

でも…

チャンミンが泣いてることにユノは気づかない


「ユノさん…大好き」

「…僕は…あなたを…」

「あなたを愛してるんです…」


そこまで言うと、

ユノはさすがに身体を離した。

チャンミンの肩を掴み
その顔をまじまじと見つめた

チャンミンはシャツの前を全て開けられ
両肩も出ていた。

シャツはチャンミンの両腕だけにひっかかり
その手をすっぽり覆う袖口で、涙を拭った。

「泣いてるの…?」

「ユノさん…ごめんなさい
僕…うそばっかり…ううっ…」

「どうしたの、チャンミン…」

「本当は…僕…あなたの心が…欲しかったの…」

「チャンミン…」

「抱いてくれるのは…うれしい…でも…
うっ…僕は…いつのまにか…とっても欲張りに…
なっていて…」

「………」


「愛して…もらいたくなっちゃって…
…心も…まるごと…」


「………」


「僕ね…もう…疲れちゃった…
ウソつくことに…すごく疲れた…」


ユノはため息をついた…


そして、泣きじゃくるチャンミンのシャツを
ゆっくりと着せてやり、その前のボタンをひとつずつ留めてやった…


チャンミンは鼻をすすりながら
その動作を見つめていた


そして、ユノはチャンミンを優しく抱きしめた


「ユノさん…ごめんなさい……」

「謝らなくていい…チャンミンが謝ることない」

「うう…」

「悪いのは…俺だ…ほんとにごめんな」

「ユノさん…」

「俺はサイテーだ…」


ユノはゆっくりと腕を解き、
チャンミンの乱れた髪を直してやった

ゆっくりとその泣き顔をあげるチャンミン

可愛くてたまらない


スヨンを亡くして以来

こんなに俺の心をかき乱したのは

チャンミンだけ


まさか、こんな気持ちになるなんて
俺も驚いてる…


でも…

俺は決めたんだ…


俺に命をかけてくれたスヨン

スヨンを一生愛する


ごめん、チャンミン…


チャンミンはやっと泣き止み、
ぼーっとソファに座っていた


ユノはいつのまにかスーツを着て
腕時計をはめているところだった


「じゃあ、俺、行くよ。
週末は会社までこれるよね?」

チャンミンはゆっくりとユノの方を向き
こくりと頷いた


「あのさ…」

「………」

「この仕事…断っても…いいぞ」

チャンミンはフッと微笑んだ

「困るくせに…」

「……どうせ、困っていたんだ…
どうにかなるさ…」

「テミンくんはどうするの?
一緒に撮影するのが僕以外の人でも大丈夫なんですか?」

「う…ん…」

「あなたがソウルにいる間、ずっとお義姉さんにみてもらうのも大丈夫なんですか?」


「………」


「ごめんなさい…意地悪して…ユノさん…
カッコつけて…現実離れしたこと言うから」


「だけど…」


「大丈夫です。仕事はしっかりやります。
大人ですから」


「申し訳ない…ありがとう、チャンミン」


ユノはチャンミンに頭を下げた…


その姿をみて、チャンミン「はい」と言って、
こくりと頷いた…






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片想い(24)



チャンミンとテミンはソウルから戻って
いつも通りの生活を穏やかに送っていた。

また週末にはソウルに行かなければならない。

いよいよ撮影がはじまるのだ。


チャンミンはユノのマンションではなるべく早寝早起きに気をつけて、テミンを疲れさせないように気をつかった。


ユノといえば、平日は仕事に追いまくられ
週末から始まる2人の撮影のため、
絵コンテからすべての準備を整えるという、
気の遠くなるほどの仕事量をこなしていた。

それでも週末2人に会えると思うと、ユノは心が弾んだ。

やっと夕方にランチの時間を取ることができたユノは、いつもと違う店に行こうと、裏通りへ出た。

ふと、小さなセレクトショップのウィンドウを見ると

イギリスの食器ブランドが作ったエプロンが飾ってあった。

それはデニム生地でできていて、
いろんな動物の刺繍が施されている。
品が良くて子供っぽくなく、チャンミンに似合うと瞬時にユノは思った。

保育園で身につけるのにぴったりなのではないか

これをつけて園児を出迎えるチャンミンの姿まで想像できてしまい、ユノは気がつけば店内でその品物を手に取っていた。


買ってあげよう


いろいろとチャンミンの時間を拘束しているし
せめてもの償いに…

喜んでくれるだろうか…


ユノはそのエプロンを手にレジに並んだ

これを渡したら、驚くだろう
きっとあのバンビのような目を見開いて
そして、ふんわりと笑って喜んでくれるだろう

ユノはなんとも幸せな気持ちで会計の順番を待った。


ユノの前には母親とテミンくらいの男の子が並んでいた。


「お母さん、パパ喜ぶかな」

「そうね、パパによく似合いそう。
喜んでくれるわよ」

母親の手にはきれいなネクタイがあった。


その時、ユノの記憶がフラッシュバックした


" ユノ、ネクタイ買ってあげようと思ってたの…"

" いいんだよ…なんにもいらない…"

" 誕生日なのに…でも外出はダメだって
お医者さまが…"

" じゃあ、ひとつだけいい?"

" なあに?"

" そうやって、笑っていて…スヨン…"


医師からは、できるだけ穏やかに死を迎えられるように、もうそんな治療しか施されていなかったスヨン。

ユノはハッとした


なにやってるんだろう

こんなエプロンを手に浮かれている俺。

もうすぐ、スヨンの命日だって言うのに

誰かにプレゼントだなんて…


ユノは列から離れ、エプロンを元の商品棚に戻して
急いで店を出た…

こんなことしてちゃいけない。

何をやっているんだ…



ユノは結局パンを買って、社に戻った。


「あーユノ、ちょうどよかった!」

シウォンが品のいい男性とエントランスに立っていた。

「ん?なんだ?」

「今回、破格の金額で撮ってくれる事になった
俺の先輩、カメラマンのキム・テファンさん。」

「初めまして、キム・テファンです」

歳の頃、30代のいい感じに大人の男。

人懐こい笑顔に整った顔立ち。

カジュアルなダンガリーにジーンズが
いかにもカメラマンだ。

柔らかい雰囲気がモテそうな感じだ。

「あ、初めまして。チョン・ユンホです」

ユノはテファンから差し出された手を握り
握手を交わした。

「先輩はね、子供撮るのが上手なんだよ。
モデルを乗せるのがすごく上手い」

「そんなにおだてなくても、ちゃんと仕事するよー」

とてもいい人そうで…

テミンもこのカメラマンなら上手くいきそうな…

だけど…

チャンミンとこのカメラマンを接触させるのは
どうなんだろう…

なぜだか胸騒ぎがする

心がザワザワする


って、接触してなにが困るんだよ、俺。

でも…

ひどく気になりだして

挨拶もそこそこに、
ユノは撮影するコンテを探しにデスクへ戻った。

どんなシーンやカットがあるんだっけ。

えーっと

たくさんの絵コンテの中から
決まったカットのコンテを探す

そこには、チャンミンとテミンが仲良く
遊んでいたり、寛いでいたり。


あ…

あった…

チャンミンだけのカット。


「週末の夜、1人でグラスを傾ける」
殴り書きで、そんなタイトルがつけられている。

バスローブの撮影だ。


これは外すわけにいかないか…

え?

外すって…なんで外すんだよ


自分はなにを考えているのか。
何を不安に思い、躍起になっているのか。

チャンミンだけのカットがあるってことは
あのカメラマンとチャンミンは一対一になる。

それがどんな雰囲気の中で撮影が行われるか
ユノはよく知っている。

上手なカメラマンの前では
モデルの女性もその気になってヌードになったりしてしまう。

そんな流れでモデルとカメラマンが恋に落ちるのはよくあること。

チャンミンがそんな中で撮影をするなんて
なぜかとってもイヤだ。


だって、チャンミンは…

だって…

えーっと…

テミンの先生だからだ!


説得力ない…

チャンミンとカメラマンとの接触を拒もうとする
俺はなんなのだ。

プレゼントさえいけないと思ってるのに

やってることがメチャクチャだ。


そこへシウォンが入ってきた。

「ユノ、カメラマンいい感じだろ?
テミナも懐くよきっと。」

「ああ…そうだな」

「いよいよ撮影だな。なんか楽しみだ」

「それなんだけどさ、シウォン。」

「?」

「テミンとチャンミンは、あくまでも素人でさ。
マネージメントしてくれる人もいないから。
俺が後ろ楯っていうか…管理は俺がしようと思ってる。」

「ああ、いいよ。じゃあ撮影も立ち会ってくれ
助かるよ」

「うん…もちろん…」

「なんだよ」

「え?」

「なんか変だぞ、ユノ」

「ああ、なんか変なんだよ。
もうすぐスヨンの命日だからかな」

「もう、4年になるのか」

「まだ4年だ」


シウォンはユノの肩をポンポンと叩き
部屋を出て行った…




「せんせーせんせー」

「どうしたの?テミンくん」

「おかしのいえのほんがよみたいけど
たかいところにあってとれないの」

「はいはい、どれ?」

チャンミンはユノの寝室の収納棚を開けて
本を探した。

「テミンくんは自分のお部屋があるから
自分の本はお部屋に移動させたほうがいいですね。」

チャンミンはそう言いながら
お目当の本を取り出すと

うっかりその隣の数冊も引っ張り出してしまった。

バサバサッと落ちた本の中に
箱から飛び出したデジタルフレームがあった。

「いけない!割れちゃったかな」

チャンミンは慌てて拾い上げてよく見た。

デジタルフレームの液晶は割れてはいなかった。

壊れていないといいけど。

スイッチを入れてみると、まだバッテリーは十分にあり、
その後、チャンミンの目に鮮やかな画像が飛び込んできた。


それは…おそらく…スヨンさん。

テミンにそっくりだから、すぐわかった。


とても綺麗で可愛いひと。
透明感に溢れ、にっこりと優しく微笑んでいる

スライドショーになってる画像が次々に現れる


チャンミンはショックだった…


そこに映るユノとスヨンさん。

最初は2人で明るく笑って
なにやら楽しそうで

こんな明るい笑顔のユノさんは
見たことがない

今よりチャラくて、若いユノさんが
とても幸せそうに笑っている

仲間と一緒だったり、2人きりだったり

ユノはいつもスヨンさんを抱きかかえるようにして寄り添い、写真を撮っている

いろいろな季節にいろいろな場所で

2人が愛を育んできたことがよくわかる



そして

結婚式の…写真…

真っ白なドレスのスヨンさんと
グレーのタキシードのとびきり素敵なユノ。


この世のものとは思えない美しさのスヨンさんと
そんなスヨンさんを愛おしそうに見つめる王子様のようなユノ。


そこにあるのは2人だけの世界…

誰も邪魔することなんて…できるわけない

僕はなんて浅はかな…


そして、段々とやせ細っていくスヨンさんと
その笑顔に悲しみが宿るユノ。

ユノは、力なく微笑むスヨンさんを
しっかりと抱き抱え、無理してカメラに向かって笑う。

スヨンさんの胸には小さなテミン


ユノはスヨンさんを精一杯愛したのだ

ユノは必死でスヨンさんを愛したのだ

愛するって…こういうことだ

ユノの笑顔がそれを物語っている


たとえ、どんなに僕が

持っているテクニックを駆使して
この身体に溺れさせても

自分はこんなユノの愛を得ることはできない。


チャンミンはフレームを握りしめ、泣いた…

スヨンさんに勝とうとか、
そんな風に思ったことはない…

でも、ユノは永遠にスヨンさんのものだ。

ユノが自分のものになることはない…



チャンミンはひざまづき、テミンに気づかれないように嗚咽を手で押さえて泣いた


テミンが可愛い声で絵本をたどたどしく読む声が聞こえてくる。


僕は…大きな勘違いをしていた

ユノにも…自分にも…




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片想い(23)



ソウル駅の人混みの中、
チャンミンはユノとテミンを待っていた。

たくさんの人々が行き交う
指示されたチケット売り場の前。


「あのぅ?」

「はい?」

ふと誰かから声をかけられた
振り向くと、人の良さそうな笑顔のスーツの男性


「どこか事務所に所属してます?」

「なんの事務所ですか?」

「芸能事務所ですよ。素人さん?」

「芸能って…」

その時、いきなりグイッと肩を後ろに持っていかれ
チャンミンはバランスを崩して転びそうになり

倒れ込んだ場所はなんとユノの腕の中だった

「ユノさん!」


「なんの用?」

恐ろしく低い声でユノが男に凄む


目つきも鋭く、睨みつけるように光る

元々、甘い顔立ちではないから
怒るとかなり怖い…


「あ、いえ、すみません」

男はサッサと逃げるようにその場を立ち去った

チャンミンはユノに向き直って軽く頭を下げた

「ありがとうございます。なんですかね?」

「…………」

ユノはまだ去って行った男の背中を睨みつけている


「あの…ユノさん、ありがとうございます」

「こういうところで1人で立っているっていうのは
危険だよ」

「あ…はい」


待ち合わせなのに、じゃあどうすればよかったの?

無理な事を言うユノにチャンミンは苦笑した。

なんだか、うれしかったから。


「せんせい、しってるひとなの?」

テミンがユノの陰から顔を出した


「知らない人。こわいですね。」

「こわいね」

そして、チャンミンはしゃがんでテミンに耳打ちした。

「テミンは女のコじゃなくてよかったですね」

「どうして?」

「パパが大変なことになります」

「そうなの?」

「心配で閉じ込められちゃいますよ」

「ふーん」


ユノもしゃがんだ

「なに?」

「テミンが女のコだったら、ユノさん大変だろうなって話です」

ユノがやれやれと言った感じで立ち上がった

「チャンミンを女のコとして心配したわけじゃないよ」

「そりゃそうですよ」

チャンミンも立ち上がる


「ビジュアルのいい弟を心配した、みたいな感じだよ。田舎から出てきてスレてない弟をさ…」

「………」

「だから、テミナだって女のコじゃなくっても…
……チャンミン?」


ユノは憮然とした表情のチャンミンに気づいた


「僕は…ユノさんをヒョンなんて呼ぶつもりないですから」

「え?」


「すみません…なんでもないです」


寂しそうに微笑むチャンミン…

弟、弟って…
そんなに何度も言わなくっても


弟か…

それが嫌なら、じゃあ僕は何を望んでるんだろう




「ちょっと話がしたいんだけど
時間まだ少しあるだろ?」

「はい…」

3人はチェーン店のカフェを見つけて入った。


「あのさ、モデルの仕事の件だけど」

「はい…」

「テミナはやりたいんだよな?」

「うん!」

テミンはジュースの中をストローで掻き回し
ユノにストローをとられてしまった。

「テミンくんはどんな仕事か…わかってないから」

「わかってるよ、パパがおしえてくれた。
おばあちゃんがやってみてほしいんだって」

テミンはユノからストローを返してもらって
口を尖らせている


「でも…テミンくん、やってみてから出来ないって
言えないんですよ?」


「いい経験かもって思えてきた…
よく大人しい子を心配して劇団なんかに入れるだろ
あんな感じで。
最近ほんとにテミナは変わったよ。
なんでも積極的にやるようになってさ、親もびっくりしてた」

「…そうですけど」

「条件は細かくつけるよ。
寒い風の吹く日に外で夏物の服を着て撮影しなきゃいけないんだ。でもそんなことさせない。」

「どうするんですか?」

「全部スタジオで撮影するようなデザインにする」

「…………」


「撮影もカット数をできるだけ少なくして
2週くらいの週末で済ますようにする」

「…………」

「そうすれば、テミンの負担は最小限に。
楽しかったと思える範囲で収まるかなと」


「僕の意思は問わないんですか?
僕も写真撮られるんでしょ?」

「あ…ごめん…」

「勝手にどんどん決めるけれど…」


「せんせいはいやなの?
せんせいがいやなら、ぼくやらない」

「あ…」

「それならやめる」

「まって、ちがうの、そうじゃなくて」

「?」

「あのね…」

「うん」

「きれいに撮ってくれないとイヤだなって
思ったんです」

あー何を言ってるんだろう

適当に言っちゃったけど…


ちょっとユノさんに僕の事を心配してもらおうと…
テミンくんには関係のない僕のワガママ…


「それなら!だいじょうぶだよ!
シウォンさんのおともだちがすごくよくとってくれるって」


「そう…なんですね」


「それでもやらない?」

テミンがその綺麗な瞳で不安そうにチャンミンを見上げる


参った…


「じゃあ、やりましょうか」

「よかったー!」

「ほんとに助かる
これですべての見通しがついた…よかった」


ユノの表情が柔らかくなった

これまで本当に大変だったのだろう


僕があなたを助けることができるなら
よかったのかな

「でも…少しでもテミンくんに無理をさせるようなら、僕がストップを出しますから」

「それはもう、俺も同じだから大丈夫」

「…………」

「チャンミン」

「?」

「お前にも無理させるような事があったら
中止するから」


ユノさん…


「パパ!」

テミンが怒っている

「なんだよ、テミナ」

「せんせいをおまえっていったらだめ!」

「あ…」

「おなまえでよんで!」


「はい…ごめんなさいっ」

そう言ってユノはテミンを抱き込んでくすぐり始めた。

しっかりユノにホールドされてくすぐられているテミンは逃げ場がなく

キャーキャー叫びながらもがいている

「静かにしてください、ユノさん」

「騒いでるのはテミナだから…」

そう言いながら一緒にはしゃいでいるユノ…


チャンミンはこの一瞬がとても幸せに思えた


まるで本当の家族のような
なんでもない風景がとても幸せに…


でも、ここに自分はいてはいけないのだと

ここは自分の場所ではないのだと

そう悲しむ自分もすぐそこにいるのだった


そうして結局チャンミンはテミンと共に
ユノのアンテナショップの春夏用広告に登場することとなってしまった…




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片想い(22)



チャンミンはユノの腕の中で目を覚ました

目の前にユノの男らしく繊細な顔がある

目を閉じているその凛々しい顔は
あどけなくも見えて、チャンミンの心をたまらなくさせた。


昨夜はユノがリードをした


チャンミンが快感を得られるように気遣いをみせながらも、ユノは貪欲だった。

それこそ、チャンミンは猛獣に捕えられた小動物のようで

抱き込まれ、噛みつかれ、打ち付けられ

それでもキスは優しく甘く
髪を梳いて、愛おしそうに見つめてくれる

時として切ない表情で苦しそうに見える時もあった。

最上級にユノはセクシーで強く優しかった


ユノ…ユノ…ユノ…

ユノ…さん…

大好き…



何度もうわ言のように、その名前が口をついて…
チャンミンもユノを貪った


だけど…


ユノの口からチャンミンの名前が出ることはなく…

どんなに好きだとわめいても
その名を叫んでも


ユノは辛そうな顔をするだけだった



途中でユノが我に返りそうになった

「俺…」

チャンミンはその言葉を
キスで押さえ込む


何も言わないで


「なんにもいらない…
心が欲しいなんて…思ってないから…」


だから…

どうかこのまま、ずっと抱いていて


チャンミンは眠るユノの綺麗な輪郭を指でなぞった

誰がこんなに綺麗に造ったのだろう

神様なら、最高傑作だね


ユノがふと目を覚ました

切れ長の目がそっと開いて
漆黒の瞳が潤んでいるのが見える


ユノは「あー」と小さく掠れた声でため息をつき
再びその腕に力を込めて、チャンミンを抱きしめた


泣きたいほど…幸せ…


「あーチヂミが…」

「ん?」

「チヂミ食べようと思ったのにさ」

「あ…」

クスクスとユノが笑う

「腹減った…なんにも食べてないよな」

「ですね…」

「実家からトッポギももらったのに…
キッチンに置きっ放しだ」

「トッポギなんて聞いたら
お腹がなっちゃいました」


ユノはヒョイと起き上がって
チャンミンを見下ろした

そして真面目な顔になった


「俺…」

「?」

「またチャンミンの事、抱きたくなる…」

「ユノ…さん…」


「でも……」

「…………」


「すごく困ってる…」


「あ………」


喜んでいいのだろうか…

あなたを困らせているのが僕なら
うれしい…



「どこまでなら…いいんだろう」

「…………」

「どこまでなら…許されるんだろうな」


チャンミンをみつめながらも
その視線はどこか遠くをみているような

そして独り言のようにつぶやいている



「ユノさんは…誰に許しを請うの?」

「………」


「亡くなったスヨンさん?」

「ちがう…」


「じゃあ、だれ?」


「あの時、もう誰も愛さないと誓った俺」


ユノさんは…
自分で自分を縛り付けていた…


キツく縛りすぎて
身動きがとれない


「僕は…あなたの心なんか欲しくないんです」


チャンミンはユノの目を見ずに言った

「いいじゃないですか、こういう関係だけだって」

「チャンミン…」


「僕は全然構いません」

「不誠実なのは…いやだ…」

「だったら、もうこれまでです。
それでユノさんがいいなら。」


なんでこんなに、僕は強気なんだろう

ユノがこんなに辛そうな顔をしているのに


どうか僕を欲しがって…

欲だけでいい…


「ユノさん…」

「………」


「実は…僕もまた抱かれたくなっちゃうと思います」

「チャンミン…」


「相性が…合うのかもしれないですね
なんかこう…そういうのあるじゃないですか」


「そう…か?」


「きっとまた僕から誘っちゃうかもしれないので
その時また考えればいいじゃないですか、ね?」


「チャンミンは…そんな付き合いでいいのか?」


「そういう付き合いしか、した事ないですよ。
きっと普通と違うんです。
だから、深く考えないでください」


チャンミンも起き上がり
ベッドの上に座るユノと向き合い
その頬にキスを落とした

そして、ベッドから立ち上がるとリビングに行き

「うわー!ほんとにトッポギだー」

淀んだ空気を一掃するように
おどけて見せた。


ユノもリビングにやってきて
ニコニコしている。

ユノさん…どうか…何も考えないで


これからテミンを実家に迎えに行くというユノに
簡単な朝食を作ってやった。

コーヒーを入れるチャンミンにユノが話しかける

「例のモデルの話は、俺が潰しておくから
心配しないでくれ、な?」

「はい、お願いします」

「テミンがやる気になってるのが
気になるけど」

「撮影現場でやっぱりダメだった、なんてことになったら、もう大変でしょう?」

「それは非常に困る」

「僕からも話しておきますね」

「うん…頼む」

ユノはゆっくりとしてから、マンションを出た


「チャンミンはこれからどうするの?」

「友達と会います。」

「………」


「ダメですか?」


ダメだと言ってくれたら…僕は誰とも会わないのに…


「いや…ずっとチャンミンを独占してたから
悪かったね、楽しんできて」

そう言ってニッコリとユノは手を振る

「4時にはテミンを駅に連れて行くから」

「はい」


チャンミンはキュヒョンと会っていた

2人で近況報告をして
これからの自分達を憂いたりした。


「これでよかったのかな…」

「相手にされないより、よっぽど幸せでしょう?
ゼイタクだよ?」

「欲張りなのかも…」

「恋をしたら、みんなそうだよ
自分を責めずに」



ふとチャンミンのスマホが鳴る

みるとユノだった


「もしもし?ユノさん?」

「ああ、チャンミン。
実はテミンがさ…すっかりその気で」

「え?モデルの話?」

「両親も大喜びで、かなり盛り上がってたらしいんだ」

「え?それって僕もですか?」

「うーん、なにしろテミンがあんなに乗り気だとは
予想外で…」

「僕も…まずはテミンくんがダメだからと…」

「電車に乗る前に、少し話ができるかな」

「あ、わかりました…」

「さっきのモデルの話?」

「うん…」

「やってみなよ、いいじゃん。」

「なんか責任重大だよ」

「でも、ユノさんの為になるんでしょ?」

「うん…」

「助けてあげたら?」

助ける…

モデルか…

でも…助けたい

うーん…




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みなさま、メリークリスマス♬
本日設定まちがえて20時にアップできずすみません。
待っていてくださった方、申し訳ないです💦
お話はクリスマスまったく関係なく進んでいますが
みなさま、ステキなイブをお過ごしください

片想い(21)




ユノの仕事が終わるまで
チャンミンとテミンはソウルの街を少し探検し

おじいちゃんとおばあちゃんに
美味しいお菓子を買った。


そうして、ユノが働く社屋までブラブラと手を繋いで歩いていた。


「シムせんせいはどこにとまるの?」

「ホテルにしようかと思ったけれど
パパのマンションに泊めてもらうことにしました」

「よかった!」

「よかった?」

「うん、パパさみしくないね」

「…そう…かな?」

「パパね、よる、ないてるときがあるんだよ」


「え?」


「どうしてないてるのかは、しらない」

「かわいそうですね」


「たぶん…」

「?」

「ママをおもいだしてるんだとおもう」

「…………」

「…………」


「パパはママのことが…とても好きなんですね…」

「でも…」

「ん?」

「ぼくは…ママのこと…おぼえてないから」


同じ境遇だったチャンミンは
このテミンの気持ちが痛いほどよくわかった。


「ママの事、どう思う?と聞かれたら、覚えていないって言えばいいんですよ」


「ほんとのこといっていいの?」

「いいんですよ」



ユノさんが…夜中に泣いてるなんて…

その事が、チャンミンには衝撃だった。


今夜、マンションに泊まりに来い、というのも
単純に寂しいからなのかもしれない


自分がユノを慰めることができたら

でも

それは僕の役目じゃないことが悲しい



「あ!パパー!」

「え?」

チャンミンが顔をあげると、
目の前にユノが立っていた

街路樹の通りをトレンチコートを着込んでスッキリと立つ、まるでモデルのようなユノ

絶妙なバランスの小さくて整った顔は
こちらをなんとも優しい瞳で見ている

トレンチの襟を立てても、その顔は襟に沈まないほど長い首と小さな頭

素敵だった…

匂い立つような男の色気を纏い
ゆっくりとこちらへやって来る


こんな…こんなに素敵なあなたが

ひとりで泣いているなんて…


チャンミンは泣きそうになった


「遅〜い!」

ユノは腰を低くして、両手を広げてテミンを受け止めようとした。

満面の笑顔。

その胸にテミンは勢いよく飛び込んだ

全身を預けたテミンにびくともすることなく
ユノはテミンを抱き上げた。


「ユノさん…」

「仕事抜け出してきちゃったよ」

「いいんですか?」

「いいよ、もう。いくら考えたって話は進まないし」

「そう…なんですか?」

「さ、行こう。まずは俺のマンションにチャンミンを置いて、と」

ユノは2人を車に乗せて出発した。

そのマンションにはあっという間に着いてしまった

「じゃあ、実家に挨拶したらすぐ帰る」

「シムせんせい!あしたね!」

「はーい!おじいちゃんとおばあちゃんによろしくね」


2人を見送り、殺風景なマンションの中を見渡した

生活をしている様子のまるでない部屋

帰って寝るだけなのだろう。

クリーニングもマンションのサービスを利用しているようだ。


チャンミンはそっと寝室を開けた…

大きめなダブルのベッドと、
サイドテーブル

ふーっとため息をつくと、
チャンミンはゴロッとベッドに横たわった

この部屋でユノは泣いているのか

きっと息を殺して、目をギュッとつむり、
嗚咽を堪えて泣くのだろう

亡き奥さんを思い…

そんなユノの姿を想像したら
たまらなくなってチャンミンは泣いた…

ユノさん…

かわいそうに…




「チャンミン?」

んーーー

「チャンミン、起きて?
風邪ひくから」

「んーーー大丈夫」

「大丈夫じゃないよ?」


ユノはベッドに乗り上げて
チャンミンの肩をゆり起こした


ベッドの上で大きく両手を頭上にあげて、横を向くチャンミン。

まだ目を閉じて、ほとんど寝ているようだった。


テミンを連れてソウルまでやって来て
きっと疲れているのだろう

しばらくはそんな労いの思いで見ていたのに

いつの間にか、ユノはチャンミンを上から見下ろし晒されたその綺麗なうなじに見惚れていた

カラダの奥から劣情が湧いてくる
もしかしたら、心の奥から湧いてるのかもしれない。

衝動的、と言って済まされるのか

ユノはそのうなじにそっとキスを落とした


その拍子にチャンミンがパッチリと目を開けた


「!」


「……」


「あ、起きた?」


起きるよな、フツー


無言のまま、ムックリとチャンミンが起き上がった

怒ったかな…
とにかく言ってることと、やってることに
一貫性のない俺…


「あ…ごめん」

とりあえず謝ると
チャンミンがゆっくりとこっちを見た。

2人ともベッドの上に座って向き合っている


「俺……またキスとかしてるし…」

「……」

「ダメだね、なんか…一度でも…」

「ユノさん…」

「はい…」


いきなりだった

チャンミンはユノのネクタイを引っ張って
自分の方へ引き寄せた

バランスを崩して
ユノはベッドに倒れたチャンミンの上に覆いかぶさった。

重なる2人

お互い熱く見つめあった


「なんにも…考えないでください…お願い」

そう言ってチャンミンはユノのネクタイを手放した


ユノはチャンミンを熱く見つめたまま、
指をネクタイの結び目に差し込み、左右に振って
ネクタイを緩めた…

チャンミンはもう一度そのネクタイを掴むと
解けたタイミングを見計らって一気にユノの首から抜いた


「抱いてください…何もいらないから」


そう言ってチャンミンはユノの頬を手で包み

ユノはしっかりとチャンミンを抱き込んでくちづけた


組み敷かれ、抱き込まれながら
チャンミンはユノの激しいキスを受け止めた


そのキスはチャンミンの唇に留まらず

ありとあらゆるところを這い回り

チャンミンはもう、息も絶え絶えに
その愛撫を受け止めた


たったひとりでユノが泣く夜


その広くて大きい背中を震わせて


泣かないで…


その悲しみを分けてくれたら
一緒に泣いてあげるのに



その太陽みたいな笑顔の影で
たったひとり、悲しみを抱えているなんて


今は全部忘れて

悲しい事は全部僕が受け止めてあげるから


ユノはチャンミンに没頭した


頼もしい支社長の顔も

優しいパパの顔も

今はどこにもなかった…


そこにはユノがいる

色気に溢れ、誰をも魅了する
美しく貪欲なユノだけがいた…


今だけでいい…

今だけ、僕のものでいてください…







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片想い(20)



フロアのみんなが2人の姿に固まる中、


「こ、こんにちはっ!」

テミンが突然可愛い声でご挨拶をして、
サッとチャンミンの脚の裏に隠れた。

それで一気にフロアの緊張が解けた


「いやーん、可愛い」

「だれだれ?モデル?」


女子社員が色めき立ち、2人に近づいた


「あの…」

「あ、チョン・ユンホさんへ届けるものがありまして」

「え?支社長??あ、息子さん?」

女子社員がチャンミンの後ろのテミンを覗き込んだ


「可愛いわー!こんな可愛い息子さんがいたのね」

テミンは下を向いてしまって、もうダメだ。


ユノが女子社員をかき分けるようにしてやってきた。

「遠かっただろ、よく来たね。こっちへ」


ユノが2人を別室に通そうとした時、
シウォンがさっと、ユノの前に登場した。

「はじめまして。チェ・シウォンです」

「は?」

チャンミンはびっくりしている。

「おい、シウォン!」

「実は初めてではないんですけどね」

「え?どこかで?」

シウォンはそっとチャンミンの耳に顔を寄せる

「ユノをカフェに連れて行ったのは私です」


「!」


チャンミンの表情が固まった



「ちょっとシウォン!いいから!」

ユノはテミンを抱き上げると、みんなから遠ざけるようにチャンミンの手を引いてどんどん廊下を歩く

「あ…」

チャンミンはユノに手を握られていることに
頬を赤らめた

そんなチャンミンの可愛らしい様子を
シウォンはしっかりとチェックしていた


せっかくユノが別室に2人を隔離しようとしたのに
シウォンは当たり前のように部屋に入って来た。

「シウォン、なに?」

ユノのイラついた牽制など物ともせず、

「ここがお前のプライベートな空間ならまだしも
オフィシャルな場所でね。残念だけど」

シウォンはニヤッと笑った

そして、しゃがんでテミンにも精一杯の笑顔を見せて

「さっきはご挨拶とてもよかったよ。
だれも返事ができなくて大人はダメだね
こんにちは、テミン。シウォンといいます」


テミンは頑張った挨拶を褒められ
満更でもなさそうだ。


「パパのおともだちなの?」

「???…あ、そうだよ、うん、お友達なんだ」

チャンミンはシウォンのテミンへの対応に
好感をもった。


さすがシウォン…2人の心を掴んでるし

ユノはため息をついた…

でも、こんな騒ぎになるなら
書類はマンションに届けて貰えばよかった…
って鍵がないか。



「これは頼まれた書類です。
これでいいんですよね?」

チャンミンが柔らかな笑顔で話す度に
シウォンがチャンミンを気に入ってしまうのではないかと、ユノは始終ヒヤヒヤしていた。

そして、ヒヤヒヤする自分にも困惑していた。


テミンはソファに座りながらも
しっかりとチャンミンの手を握りしめ
それでもシウォンのことを興味深げにみつめている。


つかみはオッケーとか思ってるんだろうな
シウォンのヤツ。

シウォンが何を企んでいるのか、わかりすぎる。

でも、残念ながらそうはいかない。


しばらく、ソウルの話題スポットなどの話で盛り上がった後、

シウォンが話を切り出した。

「いきなりソウルに来られて、こんな話をするのは
どうかとも思うのですが」

「シウォン!」

ユノが察して、シウォンを止めた。

「いや、これは私どもを助けると思って…」

「シウォンやめろって」

「聞いていただけるだけでも」

「さあ、行こうチャンミン」

とうとうユノは席を立った。


「実は私もユノも大変な状況で!」


シウォンはかぶせるように叫んだ。


立ち上がりかけたチャンミンが
その言葉にもう一度座った。

「チャンミン、いいんだって。
シウォン、2人とも疲れてるからさ」


「ユノさんが…大変なんですか?」


チャンミンが不安そうだ。


ああ、可愛い…なんなんだろう
俺の大変さを理解しようとしてくれるのか。

いや、そんなことはどうでもいい。


「そうなんです。実は…」

「チャンミン、いいから。
これは俺の仕事の話だから心配しないで」

ユノはニッコリと微笑むと
チャンミンの頬が一瞬にして赤らむ。


「では、話を聞くだけ。
知りたいんです。いいでしょう?」


その表情にユノは何も言えなくなった。


シウォンは神妙な顔で
これまでの仕事のトラブルについて話した。

かなり盛ってる、うん。


「それで、僕とテミンがモデルにって話になるんですか?ポスターとか、パンフレットの?」


「是非!先程、このフロアに登場したお2人をみて
神の助けだと、思いました!」

「フフフ…」

大げさなシウォンの物言いに
チャンミンが花のように笑う

そしてテミンも楽しそうに微笑む。

まるでそこだけ、春が訪れたような…

シウォンの企てを更に煽る2人



「できません。申し訳ありませんけど」

微笑みながら拒否したチャンミンに
シウォンは怯まない

「もし引き受けていただけたら
それですべてが、救われるんです」

「モデルなんてやったことないですし、
まず、テミンくんが…モデルなんて。
僕は保育士なので、その仕事を放棄するわけにはいかないです」


ユノがうんうんと頷いている



「たすけてあげようよ、せんせい」



ふいにテミンが…予想外すぎる発言…


チャンミンが慌てた

「あ、あのね、たくさんの人の前で笑ったり
いろんなポーズとったり、お写真たくさん撮られるんですよ。大人がたくさんいるんです。みんな見てるんですよ?」


ユノも便乗してきた。


「そうだよ、テミン!
たくさん人がいるんだよ」

「でもぅ…パパのおともだちが…」

「いいんだよ!こんな友達なんてさ」

「ユノさんっ!」

チャンミンがユノの発言にダメ出しをした。


シウォンがその様子に笑いをこらえた。


「テミンくんもいい経験だと思います。
たくさんの人の前ですが、みんな褒めてくれますし、そうやって撮影は進んでいきます。自信にもなります」


「ぼく、やる!」


「ありがとう!テミンくん。
今日から、僕もテミンくんの友達にしてもらってもいいかな?」

「いいよ!もちろん!」


モデルがどういう仕事なのか
自分が何をするのか…まったくわかってないテミン

チャンミンは後でテミンを説得するつもりだった。

「とりあえず、今日はこれで。
テミンともう少し話をして、ユノさんに伝えます」

「いい返事を期待してます」

シウォンはテミンにウインクをした。

テミンはなぜか得意気な表情だ。


チャンミンはユノにチヂミの包みを渡す

「これ…チヂミなんですけど」

「助かる!メッチャ野菜不足だったんだよー」

「よかった…」

「今日、マンションに帰ってさっそくいただく♫」


チャンミンは微笑んで、部屋から出ようとした。


シウォンがすでにテミンの心をつかんだようで
手をつないでいる。

「テミンくん。美味しいお菓子があるから、
こっちへ来ない?」

テミンが許可をとるようにユノに振り向く

「ああ、お菓子もらっておいで」

シウォンはテミンを連れて行った


部屋にはユノとチャンミンの2人だけ



「元気…でしたか?」

「うーん、野菜不足」

「フフフ…」

「チャンミン、俺のマンションでこれ一緒に食べないか?」

「え?」

「ソウルのマンションのほうがうんと広いんだよ。
客用寝室もある。ホテルはとったけど、よかったらそのまま俺のマンションに泊まってくれても大丈夫だよ」

「今夜は友達とご飯食べようと思って。
それにせっかくだから、ホテルに泊まります」


「……」


「?」


「誰と会うの?」


「誰って…その…」

「あの時一緒だった友達?」

「そう…です。でもホテルに戻りますよ」

「………」

「ユノ…さん…?」


「いいんじゃない?じゃあ、そうすれば」

「あの…」


なぜか機嫌の悪いユノ。

ユノはパタパタと書類を片付けて
席を立つ。


「いや、俺さ、テミンがモデルやるかどうかの
相談をしようかと思っただけだから、うん」


「賛成なんですか?」

「わかんない、だから相談しようと思ったけどもういいよ。友達と会ってきなよ。俺チヂミ食べるから」

完全に機嫌が悪い

しかも手に負えない子供のようだ


チャンミンは困ってしまった。

だって、このままユノさんのマンションに行ったら僕はまた…ヘンな気持ちになる


って、え?もしかして、ユノさんもそれを望んでるとか? ?


それは…ないか…


でも、今は遊びでソウルに来ている訳ではなくて
保育士として来ている。

テミンがおじいちゃんのお家に泊まるとは言っても…だから自由時間というわけでもない。

「わかりました。ではユノさんのマンションに行きます。」

「いいよ、別にムリしなくても…」

ユノは相変わらずムスッとしている


は?


「さっきの件は僕のことでもあるので
ちょっと話をした方がいいですね」

「友達は?どうするんだよ」

「あ、まだ約束したわけじゃなくて…」

「そうなの?」

「僕がソウルにいる事知らないですよ」

「そう、じゃあウチに来るといいよ」


なんなんだろ?ユノさんて。


「どうしたら、いいですか?」

「テミンを実家に送っていくから
悪いけどこのチヂミ持って、俺のマンションに行っててくれる?」

そう言って、ユノは鍵を渡した。

心なしか嬉しそうなのは
気のせいだろうか…





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