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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

続・ひだまりの匂い〜あとがき〜

「続・ひだまりの匂い」を最後まで読んでいただき
本当にありがとうございました^ ^

続編というより
前回のお話の完結編というほうが正しかったかもしれません。

続編を書くのは戸惑いがありました。

前回のお話を壊してしまうのではないか
という不安があったのです。

でもこのお話に関しては
書いてよかったと思っています。

前回、少しブチ切ったように終わった感じもあって
今回でそこが上手く収まった感じです。

いずれも自己満足のコトなので
読んでくださる方はどのように感じられたか
難しいところなのですが💦

私はTREEのライブで「Wedding Dress」という曲が好きで、
今回そればっかり聴きながら書いていたので

噴水も出てきますし
歌詞をかなりお借りしてしまいました💦

気づかれましたでしょうか?

私の個人的なイメージでは
ユノは、見た目ほどメンタル強くないのでは?
というのがあって。

いえ、強いんですけど、なんていうか
本当は繊細なのにそれを隠すという
メンタル強いからこそ、逆にそれができてしまうのかもしれないですね。

必ず誰かがそこをわかってあげて
そばにいてあげてほしいな、と。

たまたま一昨日の夜、
日テレプラスで東方神起のドキュメンタリーを
再放送していて

ユノとチャンミンがお互いを語るシーンがあったのですが、

そこでチャンミンがまさに同じようなコトを
ユノに対して思っているようで

ちょっとウルッとしてしまいました。

チャンミンがユノの側にいて
本当によかった。

そしてそのあと、サムシンのカムバ番組なども続けて見ていたのですが

日本での優しいユノと韓国のオッパユノ

顔つきからして違う💦
メイクのせいかな?

2人は日本だと優しいお兄ちゃんとやんちゃな弟ですが、
韓国だとヒョンとナムドンセンな感じでまたこれもいいですね。

何が言いたいかと言うとですね💦

実は次のお話はこの韓国オッパユノと可愛いチャンミナのお話なのです。

舞台ははっきり申し上げて
少女漫画の世界です(~_~;)

最初から茶化してすみません💦

良家のご子息チャンミナとその教育係のユノが
今回の役どころ(?)です

キャラとしては、クールでストイックなユノと
おぼっちゃま育ちの純粋培養なチャンミン。

ユノが今までとは少し違うかもしれません

途中からキャラが崩壊するかもしれませんが(~_~;)


しかしながら、内容は「身分違いの恋」という
切ない系だと思われます。

よろしかったら、覗いてみてくださいね。


そして、今回もたくさんの方にお話を読んでいただき、励ましていただきました。

本当にありがとうございました。

やっぱりですね、いくら自己満足のサイトとは言っても
コメントをいただいていなければ、正直、毎日の更新は難しかったかもしれません。

お返事は落ち着いてしたいと思うので
時間を置いてからになるのですが(すみません💧)

実はアプリでコメントの通知が来るとソッコーで読んでいます(笑)

みなさまそれぞれ大変な毎日の中、
この20時が励みです、と書かれますと
それはこちらが励みになっているんですよぅ!と
感涙に咽ぶ自分です。


正直申し上げて、誹謗中傷も少なからずあります。
でもそんなこと気にならないほどの励ましに
本当に感謝しています。

拍手コメでお返事が書けないみなさま
いつも心打たれております。

よん@@さま、ラ@@@スさま、ゆの@@まさま、e@@♫さま、ne@@@oさま、み@@ャンさま、子@ゲさま、wa@@さま、る@さま、きょ@@さま、Mo@@@oさま、ら@さま

稚拙なお話なのにも関わらず、熱い励ましをありがとうございました。

システム上お返事ができなくて
ほんとうにすみません

また絡んでいただけると
うれしいです。

次のお話も楽しんでいただけますように♫


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続・ひだまりの匂い(完)

〜〜チャンミンside〜〜


「ユノさん、最近夜中に目が覚めなくなりましたね」

「そうだな、忙しすぎて疲れてるからかな」


ほんとに忙しい

あの情報誌のせいだ。

おかげでヒチョルさんに
新婚旅行は却下されてしまった…

楽しみにしてたのに…


いつもの静かな夜
ユノさんはミィにご飯をあげている


僕は中庭を見ていた

あれは手術の前、
花火がしたいとワガママを言った僕。

ユノさんは小さな花火をたくさん買ってきてくれて
ここで火をつけてくれたね。


ウェディングプランナーのキムさんの話だと

「チャンミンは大勢の人が苦手だから
結婚式はふたりだけのほうがいい」

と話してたらしい。


でも、あなたはそうではないでしょう?

僕は知ってるよ

あなたはみんなに祝福されて
結婚を受け入れてほしいと思ってる


明日はあなたが主役だからね



翌朝、見事に晴れ渡った空

ヒチョルさんがやってきた


「ユノ、チャンミン、早く乗って」

市長さんに挨拶に行かなくてはと
スーツで乗り込む僕たちに

今のところ違和感はない


でも、途中でユノさんは気づいた


「市庁はこっちじゃないぜ、ヒチョリヒョン」

僕はドキドキした

気づくの早いんじゃない?

そして無言で車を走らせるヒチョルさん

ねぇ、なんか言って!


「ヒョン!道が違うって」

「ああ、わかってるよ、今、修正中」


車はたくさんの木がある公園をぐるっと回り
するといきなり視界が開けて

目の前に大きな教会が現れた

そして、その裏手で車は停まり
ヒチョルさんは走って教会の中に入っていった

教会のまわりの公園は緑が多く

たくさんの噴水がキラキラと陽の光に煌めいている




さあ、ここからだ。


とりあえず、車からユノさんを下ろして


狐につままれたようなユノさんの
上着を脱がす。そして僕も脱ぐ。

「なぁ、チャンミン」

狼狽えるユノさんにさっさとタキシードの上着を
着せると、腕を掴まれた

「なぁチャンミン、これって」

「想像通りですよ?」

僕はにっこりと微笑んで、ユノさんの襟元を正す。


真っ直ぐに僕を見つめるユノさんの
漆黒の瞳が揺れている


「嘘ついてごめんなさい、ユノさん
市長に会うなんてウソなんです」

「チャンミン…」

「あなたが選んでくれた教会でしょう?」

「………」

「キャンセルなんかしちゃダメですよ」

「あ………」

「僕はすごく気に入ったんですから」

「…………」

僕はユノさんの両手を取って
その不安そうな瞳を真っ直ぐに見つめた


「僕と結婚してください、ユノさん」

「チャンミン…」

「僕たち、いままで泣いた分笑顔になりましょう」

「…………」


「ダメ?」


「ダメって…それは俺のセリフなのに…」

「そんなの言ったもん勝ちですよ?」

ユノさんは苦笑して、空を仰いだ


「どうなんです?」


「はい…
これからもずっと100年後まで守ってあげます」


「やった!」


僕はタキシードが似合いすぎるユノさんに抱きついた。

ひだまりの匂いがする

最近消えていた、僕の大好きなあなたの匂い


僕の目には今、噴水とユノさんしか映らなくて
心には幸せが溢れていた

この想いが空に届け

そしてずっと先の未来へ…




「さあ、みんなが待ってますよ!」

「みんな?」


僕はユノさんと教会の扉の前に立った。

すべてを察したユノさんが僕を見つめる

「チャンミン、なんて言っていいかわからないけど」

「何にも言わなくていいんです」

「…………」

「僕を横に置いてくれたらそれでいいんです」

フッと微笑むユノさんの瞳に
公園の噴水が映り込んですごく綺麗だ。

「幸せになろう、チャンミン」

「はいっ!」



〜〜ヘジンside〜〜


高い天井には、天使のフレスコ画が施されている
綺麗な教会。

私たちは牧師さまからお話をいただいていた。


「愛に垣根を作ってはいけないとわたしは思っています」

そんな話を、隣に座るちょっと怖い感じの男性が
大きく頷いていて聞いている

この方は、そうだチャンミンの叔父様…

シム先生の息子さんだ

参列者には知った顔がたくさんあって

チャンミンを手術されたキム先生

リハビリ施設の担当だった方

1人、ぽつんと座る優しそうな男性は
ユノさんのお兄様だろうか。

ちょっと強面の団体が後ろの方に居心地悪そうに座っている

チャンミンの患者さまだった飼い主の方もいる

そして、次回の主役であろうミンスちゃんとヒチョルさん

可愛らしいテミンくんとホジンくん

そしてこれまた可愛いナレちゃんと
お店の常連さんらしい女の子3人組

また少し離れたところに
モデルさんみたいな綺麗な男の人

チャンミンの話していたパティシエの方かもしれない


そして、わたしの膝のゲージには、ミィがおとなしく入っている


この子は、実はシム先生なのではないか、
と思うことが何度もあって

どうしても今日は連れてきたかった


オルガンの演奏が始まると

教会の扉が開き、みんなが振り向いた。


そこにはお揃いのタキシードを着た長身の2人

ため息がでるほど、素敵だった。


ユノさんは少し戸惑った表情であたりを見渡し
チャンミンがユノさんの腕に自分の腕を絡めると

2人はお互いの顔を見つめあった

チャンミンがにっこりと、うなずくと

緊張したユノさんが少し微笑んだ

そして、腕に絡められたチャンミンの手を握り

2人はゆっくりと歩き出した


ユノさんはキョロキョロと参列者を見て
驚いた顔や恥ずかしそうな顔をして。

チャンミンは少し下を向いて微笑んでいた。


祭壇の前に立ち、牧師さんからお話をされた後

2人は向き合った


「僕はユノさんを心から愛しています
これからもずっと側にいさせてください」

堂々としたチャンミンに参列者から
感嘆のため息が漏れる



「俺も…チャンミンを心から愛してる
俺から離れず、一生そばにいてほしい」

すっかり落ち着いたユノさんは
チャンミンの頬に手を添えて

優しくキスをする


まるで絵画のように美しい2人


2人の言葉で2人で誓い合う

なんて素敵な結婚式なんでしょう


同性しか愛せないと悩んで閉じこもっていたチャンミン。

家族を失って、一切の表情を失ったチャンミン。



今や自信たっぷりに、しかもこんなに大勢の前で
愛を告白するなんて

そのチャンミンの姿に思わず視界が滲んでしまった


参列者は外階段で2人を待ち受ける


たくさんの噴水が2人を祝福するように
青い空に勢いよく水しぶきをあげている


その中をライスシャワーが幸せな2人に降り注ぐ

強面の団体がこれでもかと、ユノさんに
ライスシャワーを投げつけたりして

「いてぇよ!オメェら!」
屈託のないユノさんの笑顔

みんなの笑い声が青い空に響き渡る

みんなに祝福され、笑顔の2人。


ユノさんを見つめるチャンミンの瞳は輝き

そんなチャンミンを包み込むユノさんの笑顔はどこまでも優しかった。


ユノさん、ありがとう

チャンミンはあなたのおかげで変わりました

チンピラだったあなたも、チャンミンのおかげで
変わったと思っていいかしら


そんな風に心で思いながら

私は賑やかな輪からゆっくりと抜けて

公園に向かって歩き出した


ヒチョルさんが小走りでやってきた

「これから、店でパーティなんです
よかったら来てください。ケータリングの料理であれなんですど」

「せっかくなんだけど、私はここでお別れするわ。
シム先生や天国のご家族に報告に行こうと思って」

「あー」

「またお邪魔させてね」

「はい、是非」

「次はあなたとミンスちゃんかしら?」

「そうですよ。お呼びしますから
その時は最後までいてくださいね」

「はいはい、楽しみにしてますね」

ヒチョルさんは2人の輪に戻っていった


少し遠くなったその輪では

煌めく噴水の中、ユノさんが胴上げをされていた

嫌がるチャンミンも次は胴上げされるのかしら。




私は雲ひとつない真っ青な空を仰いだ


シム先生

幸せなチャンミンが見えますか?


あなたが最期に言いたかった言葉はきっと


「幸せになれ」


ですよね?


チャンミンはあんなに強くなって
幸せになれましたよ


2人は絶対に離れないでしょう


青い空に先生の安心した笑顔が見えるような気がした。


2人ともありがとう…





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続・ひだまりの匂い(14)

〜〜チャンミンside〜〜



「…………」


「あっ、あの…」


「…………」


「あのですね…」


「はっきり言わんか」


その低い声に
思わず、ひっ!と僕は息を飲んでしまう

いつまでたっても、ニガテな叔父


膝の上に置いた僕の手が震える


そんな僕をみて、叔父はふーっと呆れたように
ため息をつく


「で、身体の方はどうなんだ」

「あ!それは、はい、大丈夫です
あの、あ、おかげさまで」

「私じゃなくて、ユンホのおかげだろう」

「あ…………」


「大変だったんだぞ?
あいつはお前が施設にいるとき、憔悴しきってた。
でもな、弱音吐かずにひとりがんばってた」


「はい…………」


「で、なにか2人のことで相談か?」


「はい…そんなわけで、ユノさんにずいぶんツライ思いさせてしまって…」

「ふむ」

「恩返しをしようと思って」

「ほぅ…チャンミンが人に恩返しか」

「あの、来月のはじめに、ユノさんには内緒で
結婚式考えてるんです」

「内緒で?」

「だって、話したらまた自分で全部やっちゃおうとするし…」

「やらせたらいいじゃないか、
ユンホの好きなように」

「僕のいいようにって、それしか考えないから。
ダメなんですよ」

「あーなんかアイツらしいな」

「全部僕がやってあげようと思ってるんですよ
あ、他の人の力も借りますけど…」

「ほぅーそれで?」

「出席して…もらえませんか?」

「私なんぞが出席していいのか」

「是非!…ユノさん喜ぶと思うんです」

「ふむ」

「…………」

「顔だすだけでいいか?スピーチとかは困る」

「そんなのないんですよ。教会で式あげて
あとは店で飲み食いするだけなので」

「教会だけなら、いいぞ」

「いいの?ほんとにいいんですか?」

「ああ」

「あ…よかった!ありがとうございます!」

「………」

「とてもじゃないけど、ムリだと思ってました」

「どうしてだ」

「いや…男同士の結婚式なんて
絶対出席してくれないかと…」


「もうそんな状況は越えただろうが」

「じゃあ、認めて…くれますか?」


「思うんだが…」

「?」

「ジイさんは、認めるだろうと思うんだ」

「ジイちゃん?」

「ああ」

「そ、そうかな?」

「ユンホといるようになって
お前は変わった」

「僕、変わりましたか?」

「ああ、変わったよ。
もちろん、いい方にな?」

「あ、ありがとうございます…」

「ユンホを認めないわけにはいかない
たぶんジイさんはユンホに感謝してると思う」

「そうかも…しれないですね、うん」


「ま、あれだな」

「はい?」

「あー」

「?」

「その…」

「…?」



「幸せになれ…」



「叔父さん…」

「…………」



「ありがとうございます」

僕は頭を下げた

怖かった叔父に…

謝罪のお辞儀しかしたことなかったけれど、

はじめて感謝の意味で、頭を下げた。


叔父は照れからか
途端に忙しなくなった

「あれだ、ほら、教会だと
ご祝儀とかどうしていいかわからん」

「いや、そんなのいいんですよ
もう出席してもらうだけで、ほんとに」

「そういうわけにはいかんよ
あ、これくらい持ってけ、祝儀袋もないが」

叔父さんは財布から何枚もお札を出して
ぶっきら棒に僕に渡した。

「あ…」

「足りなかったらいつでも言え」

「叔父さん」

「なんだ」


「ほんとにありがとう」


「礼を言われるほどの額じゃないから」

「ううん、お金だけじゃなくて、
今までのこと、全部」

「全部?」


「ジイちゃんだち、亡くなってから
ずっと…」

「もういいって」


「これからもよろしくね、叔父さん」


照れくささから
まともに僕を見ることもできない叔父さん

そんな叔父さんがなんだか可愛く見えるなんて
ほんとうに僕は成長したかもね




そして、いよいよ明日は結婚式だ。


計画は順調


ユノさんはなんにも知らずに
今日も店で奮闘している。

明日、どうやってユノさんを教会へ連れていくか

ヒチョルさんやスヒョクさんと綿密な打ち合わせ
をした。

ひととおり、確認が終わって
僕は家に帰ろうとすると

ふとスヒョクさんに呼び止められた


「なんですか?」

「チャンミン、俺さ
留学しようと思って」

「え?どこに?」

「フランスに」

「は?」

「もっとデザートを突き詰めてみようかと思ってさ」

「えっ、じゃあブリュレは誰が作るんですか?」

「チャンミン、これから勉強しないか」

「ブリュレを?」

「ブリュレを含めたスイーツ全体を勉強してさ
店のメニュー増やせ。
ブリュレだけじゃいつかは飽きられるよ」

「スヒョクさん…」

「チャンミンがひととおり学んだら
俺、留学するから」

「すごい時間かかりますよ、きっと」

「そんなには待てない。だからがんばれ。」

「えーやっと色つけだけなんとかってところなのに」

「そうしたら、ユンホの隣にずっといれるぞ。
ユンホの力になれるし」

「そうでなくても、ずっといますけどね」

「あーそうか。ハハハ、悪かった」

「でも、うん、前向きに考えてみます
っていうか、やってみます」

スヒョクさんは妖艶な笑みを浮かべて
店に戻っていった。


もう獣医には戻れなくても
パティシエになら、なれるだろうか。


そんな思いをめぐらせてる僕の横で
ヒチョルさんがユノさんに電話を入れてる

「明日は市のお偉いさんとこに顔だしてから
店に行くぞ
とりあえず、いつものツナギやTシャツはやめて
スーツで来い。いいか?」

なにやら電話の向こうで、
ユノさんがブツクサ言ってるのが聞こえる

ヒチョルさんは僕にウインクをした



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「続・ひだまりの匂い」を読んでいただきありがとうございます。
明日でこのお話は最終回となります。

続・ひだまりの匂い(13)

〜〜ユノside〜〜


ヒチョリヒョンが朝から忙しそうだ


この店がネットのクチコミで話題だってことで、今日は地元情報誌の取材があるらしい。


朝から店の徹底掃除が行われ

俺とスヒョクとチャンミンは揃いの白い調理服に長いエプロン。
そんな格好をさせられている。

シェフじゃなくて
チキン揚げてる俺なんだけど

でも、チャンミンもスヒョクもよく似合っている

2人とも韓国人離れした顔立ちだから
このチキン屋がヨーロッパのカフェになったようだ。


フロアのホジンとテミナは白いシャツにチノパン
そして短めのカフェエプロン

若さが引き立って爽やかだ。

ホジンはヒチョリヒョンからメガネをとるように
いわれ、今、ほとんど何も見えない状態だ。

メガネをとると、かなりのイケメンなホジン。
なんでコンタクトにしないかなぁ

ま、そこがホジンのいいところなのかもしれないけれど。


そこへナレが半泣きで俺のところへ来た。

「オッパ!ひどいのよ!
ナレは今日の取材に参加しちゃダメだって!」

「え?なんで?」

「知らない!ヒチョルさんがダメだって」

「ユノさん、ヒチョルさんに言ってください
ナレちゃんかわいそうですよ」

たしかにそりゃないだろう
チャンミンの言うように可哀想すぎる


「ヒチョリヒョン、ナレもいつも頑張ってくれてる
仲間なんだぜ?
なんでナレだけ外すんだよ、かわいそうだろ」


ヒチョリヒョンはため息をついた

「おめーらはなんにもわかってないな
自分たちのその格好を鏡で見てこい」

「なんだよ、変か?」

「変てさ、お前…ああ、もういい」


ヒチョリヒョンはナレに何か耳打ちした

ナレは俺たちを一瞥して
納得したように大きく頷いた。

「オッパ、私、キケンな目に会いたくないから
やっぱり取材はいいや
でも、様子はみさせてね」

「キケン?」


「そう、オッパ達よく見たら
私、一緒に働いてます、なんてヤバくて言えない」

「なんだよ、失礼なやつだな
俺たちと働いてるのがヤバイって」


そして、取材がはじまった

なにかインタビューされるのかと思い
いろんな質問を想定して挑んだのに

ほとんどが写真撮影だった。


俺がチキンを揚げてる姿なんて
絵になるのか?

「ユンホさん、そこで笑って」

バカみたいにニヤケてチキンを揚げてる俺。

店の売り上げが落ちないか心配だ。


撮影風景をチャンミンが見ている

なぜか機嫌が悪い


「チャンミン、どうした?」

「僕、やっぱり取材ってどうなのかなって思い始めてきました」

「どしたの?今朝からすげぇ乗り気だったじゃん」

「そうなんですけど…」

「だから俺、嫌だって言っただろ?
お前がはしゃいでるから、仕方なく乗ったんだぜ?」


「ユノさん、カッコよすぎなんですよ!」

「は?俺はお前らと同じ服でメッチャ劣等感だよ」

「何が劣等感なんだか…
これで店にまたあなたのファンが溢れるんです」

「それはお前達のファンだろ?
ニヤケながら揚げるチキンなんて美味くなさそうだ」

ヒチョリヒョンを中心に、腕組みをした俺たちが囲む

激しく笑顔を要求され、顔がつりそうだ。

そんな全体写真を撮って、やっと撮影、じゃない取材が終わった。


「あー早く顔洗わせてくれ」

なんだか目の周りにアイラインなどいろいろと施されてる
なんで食品扱う俺にメイクするかなー

洗面所まで来ると、後ろからチャンミンも来た

「ユノさん、メイク落としちゃうの?」

「ああ、気持ち悪い」

「その前に、もう一度よく見せて」

チャンミンは俺の頬を両手で包むと
まじまじと俺の顔を見つめた。

「ユノさん、アイラインがすごく似合うね…」

うっとりしてるチャンミンも
うっすらとアイシャドウの入った目元が
色っぽくてたまらない。

「チャンミンも、すっげぇキレイ」

チャンミンはそのまま俺の顔を引き寄せ
軽くキスをしてきた。


フフッと笑うチャンミンが可愛すぎて
どうにかなりそうだ


俺はチャンミンの後頭部を抱えて抱きしめ
深く口付けた。


誰かに見られたって構わない。

こんなとこでも見せておかないと
誰がかっさらっていくかわかんないし



それからしばらくして、
その情報誌が売り出されると

店は空前の忙しさとなった。

俺は、厨房で料理しながら
しょっちゅうフロアに呼び出され

チャンミンやスヒョク、気づくとみんな
お客と一緒にカメラに収まる光景が繰り広げられている。

なんの騒ぎなんだか
仕事以外のところで酷く疲れる

チャンミンも毎日午後に帰宅するわけにもいかず
疲れないか心配だ。


ナレが事務所に顔を出した

「オッパ、店にお客さんきてるよ」

「またか」

「ううん、スーツ着た男の人
名乗らないの」

男の客に呼ばれることも、珍しくないこの数日

やれやれと思い、店に出ると


その姿に俺は固まった



「ヒョン?………」


「ユノ…」


店の片隅でひとり
優しく微笑むのはなんと義兄だった

ヒョンは立ち上がり、俺を見つめた


変わらない、落ち着いた優しい笑顔

大好きだったヒョンがそこにいた。


「どうして…」


「探してた…ずっと探してたんだよ」

「でも…」

「情報誌でここを見たんだ。
あーやっと探し出せた」


思わず、俺はヒョンの首に抱きついた


遠くで客と写真を撮っていたチャンミンが
不思議そうにこっちを見てる


「ユノ、元気にしてたか?」

「この通り」

「すごいなぁ、やっぱりユノは」

「ヒョンは元気だった?」

「なんとかやってるよ。
でも、前より会社は縮小になった…
ユノが社長なら違っていたと思うよ」

「ヒョン…」

「でもさ、自由にやってる
もう義父さんの言いなりはやめたんだよ」

「…」

「いろいろと悪かった
俺はほんとに子供で、弟のお前にすがったりして
兄としてダメなやつだった」

「そんなことないよ」

「本当にごめん」

「ヒョン、俺はヒョンが大好きだったんだよ」

「お前は大好きな人間のために
いっつも犠牲になる」

「犠牲だなんて、思わないさ」

「だってさ…」

俺はチャンミンを呼んだ


ずっと俺とヒョンを気にしていたチャンミンは
飛んできた

「ユノさん…」

不安そうな顔が可愛いチャンミン


「ヒョン、俺の大事な人」

「えっ?!」

「ユノさん!」


「チャンミンっていうんだ
籍も入れたんだよ。
こっちは俺の義兄さんだ」

「え?お兄さん?!」

チャンミンとヒョンはお互い照れながら
挨拶をした。


ずっとわだかまっていた心が解れた

なんだかんだ言って
俺はヒョンにごめん、とひとこと言ってほしかったのかな

自分のほんとうの気持ちって
自分では気づきにくいのかもしれないな


「ありがとうな、ヒョン
仕事がんばって」

「お前もな?ユノ」


まだ恥ずかしげなチャンミンがやっぱり可愛い

「もう、さよならでいいの?」

「ああ、いいんだよ
お互いがんばってることがわかって
それで十分だ。」

「兄弟は大事にしないとね、ユノ」


いっぺんに何人もの兄弟を失ったチャンミン

「わかってるよ。
でも、お前のことはもっと大事なんだ」

「フフッ」

「早くこの騒ぎが落ち着かないかなぁ」

「ほんとですね」


この騒ぎっぷりは思った以上に盛り上がって
落ち着きをみせることはまだまだないようだ





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続・ひだまりの匂い(12)

〜〜チャンミンside〜〜


「チャンミン…チャンミン?」

「はいっ?!」

僕はベッドから飛び起きた


その拍子に激しい頭痛に襲われ
頭を抱えた

昨夜はさすがに飲みすぎた…


「俺、仕事行くからさ、チャンミン
今日は寝てろ、な?午後から医者行こう
昼に戻るから」


「何言ってるんですか」

僕は頭を抱えてベッドからでた

「医者なんて行ったら
ただの二日酔いって言われるだけです」

「だけどさ…」

「ユノさん」

心配そうなユノさんの顔

「言ったでしょう?僕はあなたのおかげで
普通の生活ができてるんです。
だから、普通にただの二日酔いで頭が痛いんですよ」

僕は痛みを堪えて、にっこりと微笑む

「幸せなことですよ?ね?」


ユノさんはフッと安心したように微笑んだ

「わかった。じゃ、行くぞ?」

「はいっ!あ、お弁当作れなかった」

「いいよ、俺、今日は業者行かないといけないし」

「そうなんですね」

「だからヒチョルとテミナが代わりに行くから」

「はい、僕もすぐに用意します!」


僕は猛ダッシュで歯を磨き、顔を洗い
ユノさんの車に乗り込んだ



「おれ、すげぇうれしかった」

「え?」

「昨夜」

「ああ、僕、やっちゃいましたね
みんなドン引きですよね」


「俺、お前のことで頑張ってよかったと思った」

「ユノさん…」

「こうやって、二日酔いだなんてさ
たしかに幸せだよな」

「そうですよ、ユノさんが僕にくれた
幸せです」

「だけどさーチャンミンは酔うと
すげぇ破壊力だな、可愛すぎる」

「へへへ…そうですか?」

「あれじゃ、1人で飲み会参加は禁止だ」

「じゃ、飲み会は必ず2人で参加しましょう
僕だって気が気じゃないんですから」

「え?」

「なんでもないです」



店につくと、ユノさんはヒチョルさんと打ち合わせを簡単にした後、出かけて行った。

僕はいつものように、バーナーを片手に作業に入ろうとした時だった。


裏口に来客だった。


「どちらさまですか?」

「おはようございます。
私はウェディングプランナーのキムと申します」

「え?ウェディング?」

「はい、チョン・ユンホさんはいらっしゃいますか?」

「仕事で出ていますが…」

「あ、あの、失礼ですが、チャンミンさん?」

「え?、はい、そうですが…」

「ナイス!」

「はい?」

「いえ!なんでもありません」

変わった人だな…


「よかったら、中へどうぞ」

僕はキムさんに事務所の椅子に座ってもらった

事務所の中にはヒチョルさんもいた。


「あのですね、ここ大事なんですが
わたくし、サプライズとか内緒とかという
お話は聞いておりませんので、隠さずお話します。
そこよろしいでしょうか。」

「は、はい」

「ユンホさんが、ウェディングプランのキャンセルをおっしゃられてですね」

「ウェディングプラン?!」

「はい!チャンミンさんとのウェディングです」

「僕とのウェディング?!」

ヒチョルさんが仕事の手をとめ
近寄ってきた

「同性同士の結婚を承諾してくれる教会も確保してありますし、その後は新婚旅行に行かれるとかで
行き先を決めようとしている最中でした。」

「あ………」

僕はそこから、声がでなかった…

ユノさん…

2人のウェディングを考えてくれてたの…


「ユンホさんは、とにかくチャンミンさんの
喜ぶようにと、それだけいつもおっしゃっていて」


僕の涙は、昨夜の酒の席で
枯れ果てたはずだったのに…

またもや、涙腺が決壊寸前…


僕が喜ぶようにって

それだけだなんて

あ…でも…

「キャンセルしたっておっしゃいましたよね?」

「そうなんです」

なぜか残念そうなキムさん

「キャンセルの理由ってなんですか?」

「チャンミンさんはウェディングを喜ばない
と急におっしゃられて…」

「え?」

「それまで一生懸命だったんです。
どうしても教会できちんとやりたいと。
そこはユンホさんのこだわりだったようですけど。
でも、急に….チャンミンさんは喜ばないんだとおっしゃられて。」

「そうなんですか………」

なんで…キャンセルなんて


「今日はそのキャンセル手続きの書類をお持ちしたのですが…」

「はぁ…」

「実はですね、私、これらの予約は
まだひとつもキャンセルしてないんです」

「え?そうなんですか?」

「はい…わたくしの独断で申し訳ないんですけど」

「それはどういう?」

「ほんとにユンホさん…チャンミンさんを
愛しておられて…」

「………」

「私、いろんなカップルを見てるはずなんですけど
ユンホさんには感動してしまって」

「そうでしたか…」

「個人的にぜひとも、式をあげられたらいいのにって思ってまして、キャンセルできなかったんです」

「………」

「あ、もちろん、あの、これにサインいただければ
後はわたくしの方でキャンセルはきちんといたしますけれど」

僕は渡された書類を見た

「タキシードまで借りてるんですか…」

「はい…」

ユノさん…

「どういたしましょうか。」


ヒチョルさんが書類をのぞいてる

「このまま、続行しちゃえよチャンミン」

「ですよね!ここからは僕が対応させてもらっていいですか?」

「はいっ!」

キムさんはなんだかすごく嬉しそうだ

「すみませんが、僕が対応するのは
ユンホには内緒にしてください」

「わかりました!サプライズイベントに切り替えますね」

「金に関することは俺が引き受けますから」
ヒチョルさんが頼もしい

「ユノのとお前の給料から差っ引くから」

ヒチョルさんは僕の頭を撫でる



しばらくすると、ユノさんが戻ってきた。

「おかえりなさい」

「おぅ、ただいま」


厨房に入る支度をしているユノさんを
僕はじっと見つめた


あなたって人は本当に

どこまで素敵なんだろう…


「チャンミン、頭痛は治ったか?」

「治りましたよ。ただの二日酔いなんですから」


ユノさんは優しく笑った

優しく弓なりに細められる
きれいな瞳

真っ白な歯がその笑顔からこぼれる


こんなに素敵な人と
僕は一緒にいてもいいのだろうか


僕はゆっくりとユノさんに近づく

「どうした?チャンミン」

そして、その小さく整った顔を
両手で挟む


「な、なに?チャンミン」

「いいから、黙って」

僕はうろたえるその唇に優しくキスをした




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続・ひだまりの匂い(11)

〜〜チャンミンside〜〜


いろんなことが空回りの毎日で
とてもイライラする


ユノさんへの感情をまっすぐにぶつけてくる
スヒョクさんやホジン君

僕よりユノさんを理解しているヒチョルさん

そして何にもわかってなかった僕


そして、いまひとつ理解できないユノさん


僕は店からの帰り道、ひさしぶりに
ヘジンさんと待ち合わせてお茶を飲んだ


お互いの近況をひととおり報告しあって
僕はユノさんの事を相談した



「ヒチョルさんに医者に見せろって言われてるんです」

「そういえば、ミンスちゃんがそんな事言ってたわね。夜寝れないとか」

「ああ、そうですね。
なんていうか、ちょっと心が疲れてるみたいで」

「医者って、心療内科みたいなところよね
そんなに様子がへんなの?」

「うーん…」

「?」

「僕、わからないんですよ
大事なユノさんのことなのに」

「ヒチョルさんより、チャンミンの方が
側にいるんだから」

「そうなんですよ。それなのに、です」

「そう…」

「僕の事を心配しすぎてるんですよ
再発するんじゃないかって。

逆にこの間、僕にちょっかい出してきたヤツがいたんですけど、お似合いだ、なんて言ってるし。

僕の事を心配するのが負担になって疲れてるのかな」


「また、チャンミンはそんな事言う」

「………」


「僕も毎日やることなくて、仕事したいなんて言ったら、家にいたらいいって。」

「過保護?」

「ええ、もうすごく。
話にならないから、他の人に相談したら怒るし。
よくわからない」


「ユノさん、大変だったからねぇ
あなたが施設に入った時なんか、見てられなかったわ」

「やっぱり?」


「隠してたのよね、その大変さを。
もっと弱音吐いたらいいのにって思ってたわ。
性格なのかしらね」

「性格ですね、きっと」

「それとチャンミンへの想いね」

「………」

「あなたを失いたくないのよ」

「はい…それは…」


「ねぇ、チャンミン」

「はい?」


「ユノさん、置いてけぼりになってるんじゃないのかしら」


「置いてけぼり?」

「あなたへの想いも強すぎて、我慢しすぎてたから
戻ってこれなくなっちゃったんじゃない?」

「は?」

「ユノさん、
簡単に気持ちが切り替えられなくなってるのよ」

「自分の気持ちを押し込めすぎたんですかね」

「もう、ほとんど大丈夫なのに
不安が消えないんじゃない?」

「どうしたらいいんだろう
やっぱりカウンセリングとか医者?」

「チャンミンはそんな大変な時のユノさんの様子を聞いて、ユノさんになんて言いたい?」

「…謝りたいかな…で、安心してほしい」

「うんうん…」

「でも、安心させるような事はなるべく言ってあげてるんだけど…」

「そうなのね…」


「あ!」

「なに?!」

「お礼言ってない…」

「お礼?」

「たくさん謝ったけど、いろんなことしてくれたのに、お礼は一言も言ってない」

「ああ、なるほど」

「………違うかな…」

「チャンミン…」

「はい?」

「それ、いいかもしれないわ」

「そうですか?」

「ユノさん、あなたに"ありがとう"って言ってもらえることで、終われるかもしれないわね」

「悪夢がね?」

「そう」


その時はヘジンさんと盛り上がってしまったけれど
よく考えたら

そんな簡単な話ではないような気もしてきた


とりあえず、今日はこのまま店に行ってみることにした。

ユノさんと一緒に帰ろう。

なんだか無性にユノさんに会いたい


夕方の忙しい時間に行ってしまい
僕は事務所で待っているしかない

やることがなくて
椅子に座りデスクの壁に貼ってあるカレンダーを見るともなく見る

仕事のスケジュールが書き込んである中

ブルーのペンで僕の事が書き込まれているのが
わかった。

" 薬が切れる、注意"

"チャンミンの検診"

"チャンミンの野菜入荷"

"チャンミン朝、頭痛あり"
これには赤ペンで大きく○がついていた。

"チャンミンの…"


チャンミン、チャンミン、チャンミン…

最後は涙で滲んでしまい
よく読めなかった


ユノさんて、僕の事ばっかり

こんなにも…こんなにも僕の事を考えてくれてるのに
僕は「ありがとう」のひとつも言えてなかったなんて。


僕は手術後、目が覚めた時のことをふと思い出した


白いモヤがかかったような視界の中
ユノさんが目に涙を溜めて、僕をみつめていた


「俺がわかるか?チャンミン…」

「ユノさん…でしょ?」

ぱぁーっと笑顔になったユノさんは
とっても綺麗だった。

だけど…

その翌日、ユノさんが僕の頬にキスをしようとして
僕はびっくりして仰け反ってしまった。


「あ、ごめん、チャンミン…」

「なんでそんなことするの?」

「なんでって…」

「ユノさんは僕のお兄さんなの?それとも先生?」

そう聞いた僕に
ユノさんの顔が悲しそうに曇った

僕はユノさんと知り合いなのはわかったけど
どういう関係なのかは思い出してなかった。

時間がすぎて、僕からユノさんにキスを
迫るようになっていたけど

それはセクシーなものではなくて
戯れ程度のものだった。


ユノさんはじっと待っていて

愛していたことを僕が自分で気づくまで
ずっと見守ってくれていたんだ


海辺の散歩道を車椅子に乗せてくれて
ユノさんと散歩するのが大好きだった僕

僕が波打際まで行きたがると
ユノさんは僕をおんぶして浅瀬に入る


僕がぬいぐるみを診察すると、
その飼い主役をよくやってくれた。


ずーっと、ユノさんは不安を隠して
頑張っていたんだ


僕は自分が良くなったことで
それですべての恩返しができたと思っていたんだ


ユノさんはずっとあの海辺に
ひとりで取り残されているのかもしれない


今度は僕がユノさんにいろんなことをしてあげて、

そして、ユノさんを悪夢から覚まさせてあげなきゃ

もう大丈夫だ、とわかってもらおう



事務所にスヒョクさんが入ってきた

「あれ、チャンミン…」

「お疲れ様です、スヒョクさん」


続いてホジン君も入ってきた

「あれ、どうしたんですか?」


君は本当に僕の事を邪魔な目でみるね…
ま、いいけど

「閉店したら、ユノさんと一緒に帰ろうと思って」

「あ…」

ホジン君がバツの悪そうな顔をする

「あの…今日は店の慰労会っていうか、
そんなのをやろうって」

「え?」

そこへナレちゃんとユノさんが事務所に入ってきた


「チャンミン!どうしたの?」

「………」

「なにかあった?」


「今夜は慰労会なんですか?」

「え?慰労会?」

「僕も…この店の一員のつもりだったんですけど」


その場にいたユノさん以外のみんなが

ハッとした顔をした…

ナレは小さく「あっ」と言って口に手をあてた

ユノさんがホジン君を見て聞く
「慰労会ってなに?」


「あの….夕方急に決めたんです。
今夜は1人だからどうしようかなって、ユノさん言ってたから。」


ふうん、そういうことか。


「ヘジンさんと会うのは昼間だって、僕、言いましたよ」

「そう…だったのか…」


「僕はたいした仕事してませんからメンバーに入ってなくても仕方ないですね、すみません」


自分の口がへの字になっているのがわかる…


ホジン君がスマホを取り出した

「チャンミンさん、大丈夫!
あの…予約人数追加しておきますね
一緒に行きましょう!」

「チャンミンごめん
その場のメンバーで、ついさっき決めちゃったんだよ
俺の仕事を肩代わりしてもらってるんだから
一緒に行こう」

スヒョクさんの慌てた笑顔が引きつっている


ユノさんは知らなかったのか


いつもの僕だったら
拗ねてここで帰るだろう

だって、こんなにプライドがキズつくことってある?

僕だって頑張ってブリュレの仕事覚えようとしてるのに。

それに僕がいない隙に、ユノさんをお酒の席に
誘うなんて…


でも、僕は一呼吸おいた。


「では、僕も仲間にいれてください。
一応少しは売り上げにも貢献しているつもりです。」

僕はできるだけニッコリと笑った。

あまりにも意外な僕の反応に

逆にみんなが面食らった

ユノさんだけが優しく微笑んでいた。


予約してあったのは
創作料理の洒落た店だった。

半個室の座敷の席で大きなテーブルをみんなで囲む。


なぜか僕1人がテンションが高いようで
やたらと喋り、笑った。

完全なお邪魔ムシだとわかっているから
余計にそんな行動にでてしまった


僕はユノさんの隣をしっかり確保して
料理を皿にとったり、なにかと世話を焼いていた

みんなは若干引き気味だったけど

ユノさんは世話を焼く僕を嬉しそうに見つめる

まわりとも打ち解けようとする僕のことも
微笑ましく見てくれる


そのうち、みんなもお酒が入ると饒舌になり

仕事のグチやらお客さんの噂話などで盛り上がってきた。

僕はだんだんと話に乗れなくなって
ユノさんの隣でおとなしく呑んでいた。

手持ち無沙汰でかなり呑んでしまった


「ユノさん、地方にも店舗出す予定はどうなったんですか?」

「あー、無しになったよ。その話」

「なんでですか?チャンスだったのに」


「僕がいるから無しになりました!」

酔っ払った僕は、生徒のように元気に手をあげた

「………」

一瞬静かになる酒の席


「出張とかになると、僕が1人になっちゃうから
それはダメなんだよねーー」

僕はユノさんの首に両手を巻きつけた

「チャンミン」
ユノさんが小さな声でたしなめるように囁いた


「チャンミンって酔うと可愛いー」
ナレちゃんが大喜びだ


「チャンミン、かなり呑んでるな」

ユノさんが心配そうな顔をしている

「大丈夫れす!」

僕はよろよろと立ち上がり席を移動した

頭がフワフワとして、壁伝いに歩くと
ユノさんが心配して立ち上がった

「チャンミン、ここにいろよ!
足元危ないだろ」

「大丈夫れす!」

僕はユノさんに片手を挙げると少しよろめいた

ユノさんはたまらず、こっちへ来ようとするのを、僕は手で制した。

「ユノさんは来ないでっ!」

僕はスヒョクさんとホジン君の間に
無理やり座り込んだ

その様子を見たユノさんは座ったけれど
すかさずナレちゃんがユノさんの隣に座った

僕はナレちゃんを睨んだ

「なに?チャンミンこわいよ」

「ナレちゃん?」

「なに?」

「ユノさんは僕のだから、ダメれす」

「ぷっ 可愛いなぁチャンミンて。アタシもその
可愛さ見習わなきゃ」


「みんな聞いてーーー」

僕は大声を出して両腕を挙げた

「とにかく、みんな、ユノさんはダメっ!」

「…………」

「ユノさんは僕のだから、ダメれすっ!」


ふーっとホジン君がため息をつく


「ユノさんはね…」

「………」

「僕の為に…
たくさんのくるしい思いをしましたっ」

「………」

「いやーちがうなぁ…
くるしい思いをさせてしまいましたっ!」

僕はスヒョクさんの肩をバンと叩いた
じっとしていてくれるスヒョクさん


「それでもぉー僕はね…
なんとしてもぉー戻ってきたかったのぉ…」

僕は、スヒョクさんの肩におでこをつけた

突然体の奥から大量の涙が溢れ出して
激しい嗚咽と共に涙腺が決壊した

「ううっ…えっ…うっ…」

静まりかえった席に、僕の嗚咽だけが響いていた

「僕は…うぅっ…死んでもよかったんだけどね
この世にね…うっ…うう…どうしても未練があって」

「………」

「ユノさんのいるこの世にね
戻ってきたかったの…うぅっ…う…」

「チャンミン…」

ユノさんが静かにつぶやいた…


「絶対に戻ってきたかったの…う…」

「………」

「ユノさんのおかげで…僕は今日…
こうやって…みんなと…うっ…楽しく…うう
お酒を飲めてるってワケなんれす…」

「………」


「ユノさん…大好き…
ほんとにありがとう…」



そうぽつりぽつりと話す僕に
抗えない強力な眠気が襲う


「おかげで…戻ってこれました…
ありがとね…ユノさん…愛してるよ…」


そう言って僕は、スヒョクさんの首に抱きつく

「抱きつく相手が、派手に間違ってるよ」

「へっ?」

スヒョクさんが指差す方向をみると

ユノさんが泣いている…

その綺麗な手で目を覆い
嗚咽を堪えて泣いている


おまけに隣でナレちゃんも大泣きしている

ホジン君はうつむき、静かに微笑んでいる


「ユノさん!だって、ほんとに大好きっ!」

僕はふらつく足で立ち上がった

「あぶないよ!チャンミン」

スヒョクさんとホジン君も立ち上がり
僕を支える

「ううっ…ユノさん…ありがとう…」


僕はユノさんに向かって両手を伸ばして、そのままテーブルを跨ごうとした

「チャンミン!あぶないから!」

泣き顔のユノさんは困って、僕の伸ばした手を押し戻した

「待って、そっち行くから」

「うぅ…ユノさん…」


ユノさんはスヒョクさんとホジンくんから
僕を受け取ると、その胸に抱きしめてくれた

「チャンミン…」

「ユノさん…うぅっ…」

「…………」

「僕を…元に戻してくれて…ありがとう」

「チャンミン…よかった…」


それからの僕の記憶はないけれど

とても幸せな夜だった


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続・ひだまりの匂い(10)

〜〜ホジンside〜〜




誰もいない閉店した店内

ユノさんは上得意のお客さんのところへ
頼まれて直接チキンを届けにいっている


客は、完全にユノさん目当てだろう


あんなにカッコいいユノさんが
自分の為にチキンを届けてくれるなら
誰だって余計にお金を払うに決まってる


僕はフロアのモップ掛けをする。


昨夜は大変だった

あのスヒョクさんとチャンミンさんが
キスしていた

あれは事故だったんだろう

チャンミンさんに後ろめたさは
感じられなかったし


でも、ユノさんは怒った
ジイちゃんのところに来て、脅しをかけていた
あのユノさんとは全然違った

本気のユノさんだった…


ユノさんが、チャンミンさんを見つめるのを
僕はいつも横から見ていた

ユノさんは愛おしそうに
可愛くてたまらないといった風に、チャンミンさんを優しく見つめる


チャンミンさんが入院している間
施設でリハビリをしている間

ユノさんはすべての思いを封じ込めて
仕事をがんばっていた。

僕はそんなユノさんをずっと見てきた


チャンミンさんが施設に入った晩のこと

僕は事務所に携帯を忘れたことに気づいて
店に戻ると

事務所のドアが開いていて

中から低い嗚咽のような声が聞こえた

なんだろう?
少し怖くなって中を覗くと


ユノさんが壁にもたれかかってひとり泣いていた

その大きくて綺麗な手で顔を覆うと
小さなユノさんの顔は片手だけでほとんど
隠れてしまう

もう片方の手には、なにやらノートの切れ端のようなものを持っていた。

なにが書いてあるのかはわからないけれど

ユノさんはそれを見つめて、また泣いてしまう


僕は衝撃だった。


あの強いユノさんが
どうしようもなく泣いている

駆け寄って、抱きしめてあげたかった

でも


僕はチャンミンさんではなかった


ユノさんは僕に抱きしめられても
嬉しくなんかない

ユノさんを心底笑顔にできるのは
あのヒトだけなんだ…

気づいてるのだろうか
自分がどれだけ稀有な存在なのか

ユノさんから本気で愛されるなんて
そんな奇跡…

僕だったら…
僕がそんな存在だったら

他のヤツにキスされるなんて
そんな隙をみせたりしない


ユノさんの表情を曇らせるなんて
そんなこと絶対にしない…



ドアの鍵をガタガタと開ける音がして
ユノさんがトレイや他の荷物を持って帰ってきた


「ホジンまだいたのか?もう帰っていいのに」

優しさから言ってくれるその言葉が
なぜか悲しい

帰っていいのに…って。

「大丈夫ですよ」

「今度こそ大学受からないとな
俺、お前のジイさんに顔向けできないよ」

「あのギャンブル爺ちゃんこそ
ユノさんに顔向けできませんよ」

アハハハ…
とユノさんは可笑しそうに笑った


「ホジン、それでもさ…」

「はい?」

「今度はマジで合格しろ、な?」

ユノさん…

ユノさんは僕に背を向ける格好で
持ってきたものを棚にひとつずつ収めていた

動くたびに盛り上がる筋肉

広い背中…

ガッシリとしたその後ろ姿が
ユノさんの「男」を物語っている


僕は本当に衝動的に


その背中に抱きついてしまった


後先なんて…考えなかった…


「おっと…」
不意打ちをくらって少しよろめくユノさん


「ホジン?」

作業をしていたユノさんがその動きを止めた


「ユノさん…」

「ん?」

「ちょっとだけでいいから
こうしてていいですか?
ほんの少しだけ…」


ユノさんはフッと微笑んで
その腰に回した僕の腕を優しく解き
僕の方へ向き直った


やっぱり抱きつくなんて
許されないんだ

そう思った僕の身体を

ユノさんがぎゅーっと抱きしめた

僕は突然のことに
すべての思考回路がストップした


「ホジン…つらいのか?」

「………」

つらいですよ…つらすぎて、もう泣きそう…


「大変かもしれないけどさ
今やってることはお前の未来のためだ」

「………」

「金稼ぎながら勉強するなんて
誰もができることじゃない。つらくて当然だ。」


「………」


「誰も見てないから、少し泣いていいぞ」

ユノさんは僕の頭をなで

もう片方の手で背中をトントンとしてくれている


温かい胸…夢にまでみたユノさんのハグ

それはほんの弟に対する行動だけれども

もう少しだけ…このままで



翌朝、出勤すると
すぐ後にユノさんとチャンミンさんが出勤してきた

一緒に住んでいる2人
そんなのわかってる…でも、やっぱり胸が痛い


ユノさんが事務所に入ると、

僕はチャンミンさんのところに言って挨拶した。


「おはようございます」

「あ、ホジン君おはようございます」


「昨夜は遅くなっちゃって
ユノさんに送ってもらっちゃったので
帰りが遅かったでしょう。すみませんでした」

「ああ、聞いてます、大丈夫ですよ」

「なんで遅くなったかは聞いてます?」

僕は意地悪だ…

「え?」

「あ、聞いてなければいいんです…すみません」

意地悪がとまらない….

こんなこと言いたくないのに…


チャンミンさんは一瞬怪訝な表情になったけれど
すぐに破顔して、独特の可愛い笑顔になった

「ユノさん、心配してましたよ
ホジン君のこと」


「えっ?!」

ドキッとした


「受験勉強と仕事の両立が上手くいってるのかどうか、心配してました」

あ…

「応援してますよ、大変だろうけれど。
僕たちはホジン君を応援してます」

心が痛かった

なんでも話すんだね…
当たり前か

それとも

これはチャンミンさんの牽制?

あくまでも「僕たち」という名の一人称


その言葉は僕を打ちのめすには
十分な破壊力があった…



いつもの店の、いつもの忙しさがあって

午後になり、チャンミンさんは帰って行った


途中まで送りたがるユノさんと
それをなんとか制するチャンミンさん

そんな2人の攻防戦はよく考えればいつものこと。


夕方前の少し空いた時間


「ホジン、出来たぞ、食べちゃえ」

ユノさんが賄い飯を作ってくれて
僕は厨房へ行った


作業台に向かうユノさんの背中

昨夜は思わずこの背中に抱きついてしまった


ふと厨房を見渡すと

シンクには、チャンミンさんがユノさんの為に作ったお弁当の空容器

その隣にキレイに畳まれたギンガムチェックのナプキン

僕の足元には、たくさんの有機野菜がダンボールに入っている

これはユノさんがチャンミンさんのために
特別に仕入れてるもの。

コンロの側には
配達されたばかりの新しいガスバーナー

「超軽量」と書かれているそれは
ブリュレの焼き付けをはじめたチャンミンさんのために
ユノさんが質の良いものに買い換えたのだろう


気づけばどこもかしこも

ユノさんとチャンミンさんの愛で溢れていて

息苦しいくらいだ。


僕は…自分で自分のことが
可笑しくなった

なにやってんだか、僕は…


こんなにも、2人は愛し合ってるのだ


僕の意地悪なんて
チャンミンさんには、蚊に刺されたほどでもない

僕の入る隙間なんて1mmもないじゃないか


抱きついたら、思わず抱きしめ返してもらえて

僕はなにか勘違いをしてしまったのかな



そこへスヒョクさんが書類を届けに来た

僕は軽く睨む

スヒョクさんはそんな事、お構い無しで
ユノさんもこの間のことは忘れたようで
2人で談笑している


なんだよ、スヒョクさん…

ユノさんのことが好きなくせに

そんなスヒョクさんも、僕と同じように胸が苦しいのかもしれない


スヒョクさんが僕に気づいてやってきた

「せっかくの賄い食べないのか?」

「あ…食べます…」

スヒョクさんは優しい瞳で僕を見つめた


「大丈夫?」

「なにがですか?」

「1日中、ユンホの側にいて大丈夫?」

「言ってる意味がよくわからないです」


「俺はたまにどうしようもなくなる」

「………」

「自分で自分の気持ちを認めるんだよ」

スヒョクさんの言葉に涙がでそうだった

「そして耐えてる自分を褒めてやれ」




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続・ひだまりの匂い(9)

〜〜ユノside〜〜


昨夜は久しぶりに夜中に目が覚めなかった


その夜見た悪夢のような光景を
無意識に自浄しようとしたのかもしれない


キスをしようとしての事ではなかったのだろう
少なくともチャンミンは。


でもああいった戯れがいつどんなキッカケになるかわからない

そういう意味で俺の不安は募った


実はこのところ、あまり良く眠れていない夜が続いていた


拭っても拭っても心に襲いかかる不安

チャンミンがほぼ元に戻ってかなり経つのに
なぜこんなにも不安なのだろう


チャンミンがリハビリをしている間
俺は一本の糸が張り詰めるような感覚で生きていた


なんにも覚えていないチャンミンは
幼い感じになり

元に戻って欲しくて
思い出させようとすると

激しい頭痛に襲われ、あまりの苦しそうな姿に
俺自身が寝込んでしまいそうになることもあった


俺はすべての感情に蓋をして
チャンミンを見守ることに決めた


苦しみや痛みを全部代わってやりたい


もう元には戻らなくて構わない

生きていてくれるだけでいい


そう思う中に葛藤もあったりして

俺はいろんな思いを封じ込めすぎたのか
元に戻ったであろうチャンミンを受け入れてない

いまだに病気や死が
チャンミンを連れ去ってしまうのではないか
そんな不安と戦っている

それにもまして

俺にはない大人の余裕を持った男が
チャンミンの前に現れて連れ去ろうとする

俺は誰よりも臆病だ

そんな俺より強くて安心できる男が現れて

愛するチャンミンを連れ去ってしまうのではないか



現にチャンミンは俺の元から出たがっている

俺の為に生きることに満足していない…


チャンミンが俺の側にいたくなるように
いろいろしてやっても

チャンミンは出て行こうとしている


俺たちのウェディングで
嬉し涙を流すチャンミンを想像していたけれども

実はそんなに嬉しくないのかもしれない

実際、そんなに喜ばないかもしれない

きっと自分の世界を作るほうが嬉しいのではないだろうか。

だったらウェディングなんて、そんなことは
やめたほうがいい

チャンミンが喜んでくれなかったら、俺は壊れてしまう

所詮、2人のウェディングなんて
俺の自己満足以外の何物でもないのだろう



「キャンセルですか?」

「はい…あの…たくさん相談にのってもらって
申し訳ないんですけど」

「そんなことはいいのですが
ケンカでもしましたか?」

「ケンカっていうのではないんです。
相手があまり喜びそうになくて」

「チョンさん」

「はい」

「自分にウェディングを企画して用意してくれるなんて」

「…はぁ」

「企画する私の立場でこんなことをいうのはヘンですけど
内容なんかどうだっていいと思います。
もうチョンさんがそれをしてくれたってだけで
お相手の方はうれしいはずです」

「いや、そんなことは…ないと思います」

「ウェディングの前に一度キャンセルなんて
ほんとによくあるんです。」

「そう…なんですか?」

「復活させるときは
また私にやらせてくださいね」

まるで復活が前提のキャンセルだな…

「いろいろすみません」

「キャンセルによるお支払いなどは一応書類だけお持ちしますので、また考えが変わったらその時
おっしゃってください」

「はい」

「チョンさんのお相手、拝見したかったです」

「はぁ」



俺は2人でのウェディングを励みに
仕事していたようなところもあったけど

これでよかったのかな?

最近、自分で自分のしていることが
わからない時がある


とりあえず、店に向かった


今日も仕事だ



〜〜チャンミンside〜〜


僕は今日からブリュレ担当なのに

ヒチョルさんが話があると
家にきた。

ミンスと連れ立っている

まるで雰囲気の違う2人だけれど
今や愛し合ういい関係の2人なのだ。


「ユノはどうだ」

「寄るところがあるって
もう出勤しました」


「チャンミンは気づいているかわからないけど
ユノ、様子がおかしいぞ」

「え?」


「家で変わったことはないか?」

「そう言われてみたら
夜中起きてますね、ひとりで」

「そうなのか…」


「眠れてないんじゃないの?ユノさん」


「あ…どうなんだろ…でも…」


「わかっているだろうけど
あいつは見た目より中身は意外に繊細だ」


繊細…そうかもしれない…


「そして、頑張りすぎる」

「………」

「チャンミンが入院したり施設にいた時は
見てられなかったよ」

「大変だったとは思うけど
どんな感じだったんですか?」

「取り憑かれたようだった
朝から晩までチャンミンで…」


「そう…ですか…」


「俺はあの時正直言って
チャンミンの手術がうまくいかなかったら
ユノはもうダメだと思った」

「ダメって…そんな」

「立ち直るのは無理だと思った」

「まわりには気丈なところを見せてたから
チャンミンがどんな状況かわかってない人間も多かったけど」


「僕はそんなの知らずにユノさんに甘えてばかり」


「甘えていいんだよ、そのほうがあいつは喜ぶ。
頼りにされないと自分の存在価値を感じられない
ある意味かわいそうなヤツだ」

「ちょっとヒチョル、ヒドイ言い方」


「出会った時から、
俺に頼れって、いつも言ってました…」

「だろ?」


「チャンミン、ユノさん、きっと心が
疲れちゃったのよ
チャンミンが戻ってきても、なかなかそれが当たり前だと思えないでいるんだわ」


「どうしたら、いいのかな…」


「俺としては、カウンセリングとか医者にみせるとかしてほしい」


「医者ですか?!」

「今や普通だぜ?ちょっと落ち込んだら
みんな心療内科行ってるって」


「そこまで…」


「甘く見ないほうがいいって
ユノは隠すから、まわりに気づかれにくい」


ユノさんのことを本当によくわかってる
そんなヒチョルさんに僕は少し凹んでしまった

僕はユノさんのことを
なんにもわかってないじゃないか

過去の事や家族のことばかりではなく

本当のユノさんのことも
わかってないなんて…


こうやって他人に言われないと
気づけない自分が情けなかった

ユノさんは気持ちが疲弊しているのだろうか

突っ走りすぎて
ゴールを過ぎても、脚が止まらずに走ってしまってるのか

ユノさんを落ち着かせてあげたい

僕にできることはなんだろう




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続・ひだまりの匂い(8)

〜〜チャンミンside〜〜



僕は考えるより先に口を開いていた

「ユノさん…おかえり
今のは…誤解だから…ね?」


僕からゆっくり離れるスヒョクさんを

ユノさんは静かに目で追った。


でも、ユノさんはふと目を伏せてしまった

代わりに
ホジンくんが声を荒げた


「2人とも、最低!」


やけに静かな厨房の空気を
ホジンくんのまっすぐな叫びが切り裂いた


「なんで…ユノさんを裏切るの」

ホジンくんはまっすぐに僕を睨む


「裏切ってなんかないよ
僕が顔を上げたら、唇が当たっただけ!」


僕の話にホジンくんは呆れて天井を仰ぎ
うつむいていたユノさんは笑い出した

「すげぇな…唇が当たっただけ…」


「ユノさん…本当なんです
取り繕ったように聞こえるかもしれないけれど
本当だから、そうとしか言えない」


「なぁ、スヒョクはどう取り繕うんだ?」

ユノさんがまぶしそうな表情で遠くのスヒョクさんを見つめる

僕たちに背を向けるスヒョクさんの背中を見ていたら

僕は気づいてしまった


この人は…

ユノさんのことが好きなんだ


どうしてそう思ったのかわからないけど

なぜかそう確信した



それにしても…こんな事態なのに
ユノさんは冷静だ

いつもならきっと、激昂するだろうに

そして僕もいつもなら
ここで思い切りスヒョクさんのせいにして
逃げるだろうに


ユノさんが怒らないからかもしれない

それはとても恐ろしいことに思える。


スヒョクさんがゆっくりと向き直り

「どう取り繕うって、接触事故って言うしか
ないだろ?」


ユノさんは静かにスヒョクさんを見つめる


「チャンミンが好きか?」

「いや、ちょっとイタズラしてみただけだよ」

「それなら、指一本触れるな」

「じゃあ本気ならいいわけ?」

その言葉に突然、ユノさんがスヒョクさんに
飛びかかった

厨房にある様々なものをぶちまけて
ユノさんは突進していった


スヒョクさんの襟首を掴みあげると
鬼のような形相で、地を這うような低い声を出した

「ぶっ殺してやる
簡単に本気だなんて言うな!」

そして、スヒョクさんを床に叩きつけ
倒れたスヒョクさんに馬乗りになった

僕とホジン君は必死で2人の間にはいろうとする

「俺から奪ってみろ
やれるもんなら、奪ってみろよ!」

ユノさんはまたスヒョクさんの襟首をつかむ

「ユノさん!やめて!」

大きな体格の男2人を僕とホジン君で
抑えるのはほぼムリだ

スヒョクさんは自分に馬乗りになるユノさんを見上げた

「俺の…気持ちが少しはわかるか?」

「あ?」

ユノさんへ訴えるような悲しい目を向けて
スヒョクさんが縋る


「目の前で、愛する人間をかっ攫われる気持ちがわかるか」

「なに?…」

「そいつにとって、唯一無二の存在が
俺を押しのけて、さらって行くんだ…
誇らしげに…」

「は!言ってることがまるでわかんねぇよ」


チンピラの時に戻ったようなユノさんは
スヒョクさんを殴ろうと腕を振り上げた

「バカか!オメェら!」

僕の目の前を金髪の何かが走った

ユノさんはスヒョクさんから
引き剥がされ、後ろに倒れた

「ユノさん!」

僕はユノさんに駆け寄って
抱き起こそうとしたけれど

その手を振り払われてしまった。。

「触んな」


2人を止めに入ったのは、ヒチョルさんだった

「なんだ、おめぇらは。
明日の仕込みが届かないっていうから来てみたら、グチャグチャじゃねぇか!」


項垂れるユノさんと
寝たまま、天井を仰ぐスヒョクさん


「取るの取られるの言ってる暇があったら
きちんと働けよ!」

厨房がシーンとなった。


僕がまず口を開いた


「スヒョクさん、明日から焼き目は
僕が1人でやるので。
配達だけお願いしますね」

返事はなかった…


「ヒチョルさん、すみませんでした。
ユノさん連れて帰りますね」

ユノさんの荷物を取りにヒチョルさんの横を通った

「チャンミン、明日時間くれないか」

「あ、はい昼間なら」

「じゃ、こいつ連れ帰って、寝かしつけてくれ」

「はい…」



家に帰るとミィがユノさんにまとわりついた

ユノさんは薄く笑うとミィを抱き上げ
自分のパーカの中に入れてひとり寝室へ向かう

結局店からずっと黙ったままだ。

いつものユノさんだったら
僕を責めまくるだろうに

何も言わないのが、もう弁解の余地がないのでは
ないか、と不安になる。

でも僕は確固たる自信があった

後ろめたいことはないんだ

話さなくては

ぼくはユノさんを追って寝室に入る


「ユノさん、聞いてください」

「何も聞きたくない」

「さっきのことは、ほんとになんでもないんです」

「キスしてたこと?」

「キスしたつもりなんて、ほんとにないんです
そんな風にはみえなかったかもしれないけど」


「百歩譲ってそうだとしても…
なんかお似合いだったぜ?」

「ユノさん…」

「………」

「そんなこと言わないでください」

「………」

「まったくもう」


どうして、ぼくを責めないんだろう

責めてくれたほうが、スッキリするのに

お前が油断している、とかいろいろあるでしょう

その諦めたような表情が一番不安になる


ふとみると、ユノさんはミィを抱いたまま、
眠ってしまっていた。




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続・ひだまりの匂い(7)

〜〜チャンミンside〜〜


夜中に目が覚めて
ふと横を見るとユノさんがいない


キッチンに灯りがついている


「なにしてるんですか?」

「チャンミン」

「はい?」

「ダメだよ、寝てないと」

「あ…あの、でも…ユノさんはこんな夜中になにしてるんですか」

「ちょっと目が覚めただけだから」

「眠れないんですか?」

「そんなことないよ、心配すんな」

フッと微笑むユノさんは
あきらかに疲れている表情だった


「昨夜も夜中起きてませんでしたか?」

「水が飲みたかっただけだよ」


「………」


「隣に俺がいないと目が覚めちゃうのか?」

「そうですよ、隣にいつもいてください」

フフフと嬉しそうに微笑むユノさん


「体温の高いユノさんがいないと
布団が寒いじゃないですか」

「なんだよ、俺は湯たんぽかよ?」

「フフフ…カッコいい湯たんぽ」

なんだよーと、ユノさんは僕に抱きついた


そして戯れながら2人で布団に潜った

ユノさんは僕を引き寄せて
自分の胸に抱き込み、布団をかけ直す


「やっぱりあったかい」

「そうか?」

「うん」

「なあ、チャンミン」

「なんですか?」

「もう、どこにも行くなよ」

「行かないですよ、ずっとそばにいます」


「まだ、思い出せないことがあるとしたら、なんだろうな」

「どうですかねぇ、ユノさんがデートクラブの仕事してたの、覚えてるけど」

「あーーそういうことは思い出さなくていいのに」

「そんな都合のいい話はありません」

「そんなうまくはいかないか」

「はいっ」
僕はユノさんに抱きついた

「もう寝ないとな、体に良くない」

「はい……」



翌朝も僕は出勤した。

僕はブリュレの焼き色つけることをマスターして
ユノさんを手伝うことに決めた

ユノさんはスヒョクさんのことが気になるようだけど、しぶしぶ承知してくれた。


僕がスヒョクさんから教わる時は
ユノさんもそばを離れない


「スヒョク、バーナーなんて危なくないのか?」

「ユンホさんはいつも使ってるじゃないですか
大丈夫なの、わかるでしょ」

「でも、チャンミンはさ…」

「僕だって、重いもの持つのは大丈夫です」


ユノさんは少し驚いたように
そして安心したように微笑んだ


そして、僕はその日はずっと、ブリュレの色つけに
専念した。



それは閉店するころだった。


明日の食材を運んでくれる業者から電話があり
途中で車のエンジンがかからなくなってしまったと。

仕方ないので、ユノさんはホジンくんを連れて
その現場に食料の引き取りと、業者を助けに行くことになった。


「レッカーか何か呼んだら帰ってくるから」

「気をつけてね」


閉店後の店内は僕とスヒョクさんの2人きり

ユノさんは僕とスヒョクさんの顔を交互にみて
少し困ったような顔をした。


「ユノさん、気をつけてね」

僕は安心させるように言ってみた


2人が出て行くと

厨房は静かになった


「ユノさんが帰ってきたら
僕はユノさんと帰りますから」

「だから?」

「スヒョクさんももう帰ってください」

「ふうん」


スヒョクさんがなにか言いたげだ

「チャンミン…」

「なんですか?」

「ユノさんって、いい家の子なんだって?」

「え?」

「まさか、知らなかったの?
お父さん、ちょっとした企業の社長だよ」

「………」

お父さんが社長?

知らなかった…


「高校までだけど、小学校から東方学園だよ」

「え?あんな坊ちゃん学校に?」

「そんな話もしてないの?」


家出少年って話だけで…

僕が昔を語ろうとしないから
ユノさんも話そうとしなかったのかな


「ユノさん、学のある例え話とかよくするよ」

「それは気づいてましたけど」


「ヒチョルなんか、よく知ってるみたいだけど
昔の話…」

「………」


「なんか2人ってさ…」

「あー!それなら」

僕はスヒョクさんの話をさえぎった


「僕が一切聞きたがらなかったんです。
ヤキモチやくから」

「ヤキモチ?」


「昔の話はしないでって」

「へぇ、でも入籍してるんでしょ」

「してますよ。でも書類とか見たことないし」

「気にならないの?ユンホさんの家族とか」

「僕は…僕は自分の事で精一杯だったんです
家族のことはユノさんが話したい時に聞きます」


僕の動揺が、スヒョクさんに伝わってはいないだろうか。

スヒョクさんは試すような視線で
僕をみつめる


「ちなみにもう少し話すとね
お母さんは継母で、連れ子の男の子に
ユンホさんは社長の座を取られてる」


そんな…

そんな話…


「ユンホさんは、ああ見えて
自分の辛いことはみんな隠しちゃうよね」


僕は…今まで側にいて何をしてたんだろう


スヒョクさんが動揺する僕に近づく

そして僕の両肩に手をかけた

その美しい顔が僕に近づく


ずっと側にいながら、
僕はなんでユノさんの背景を気にしなかったんだろう

僕の事をご家族は知っているのだろうか


「あの!」

僕が言葉を発するのに顔を上げた瞬間


スヒョクさんの唇が僕のそれに触れた

それは事故だと言っていいくらい
感情のない、ただの接触だった


僕が目を大きく見開いたのと


厨房の入り口でなにかが落ちる鈍い音がするのと
ほぼ一緒だった。

僕はハッとして入り口を見ると


ダンボールを落としたのはホジンくん

その横で呆然としてるユノさん


ユノさん…



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