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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

籠の鳥(25)

〜〜チャンミンside〜〜


店に警察が来たことから
僕は中華料理店から出入り禁止になったので
アパートで篭りっきりになった。

ユノが仕事に行ってくれないと
寮であるこのアパートに住めないので

僕は毎朝、ユノを見送って簡単に家事をして
後は家でじっとしている。


まさに潜伏だった。


後は本を読んで過ごしていたけれど
1人でいるといろんな考えが思い浮かんできて
頭がおかしくなりそうになる。


僕の様子が変だと思ったのか
ユノが地元のフェスティバルに行こうと言いだした。


「フェスティバル?」

「今日店でそんな話を聞いたんだ。
お祭りだよ。人混みなら大丈夫だろ」


「大丈夫かな」


僕のところへなぜ警察が来たのか
ユノはもう僕に聞く事はなかった。

「家に篭ってばかりで気持ち的にもよくない」

「ユノ…」

「気分転換にどうだ?」

「うん…行こうかな」


そんなわけで、僕たちは人混みの中
夕方から地元のフェスティバルに出かけた

ユノと出かける、ということが
僕の心を上らせる。


連れてきてくれて、うれしいよ。


ユノは僕の手を握り、人混みでも離れないように
してくれた。

屋台がたくさん出ていて
昔ながらのゲームや、遊び場などもあって
思ったより大きなお祭りだった。

ユノは、ふとある遊び場で足を止める。


おもちゃのライフルで
狙った景品を撃ち落とす、というものだった。


「これやってみる」

ユノが殺し屋だった事については
僕たちの間で話題になることはなかった。

ユノがどこまで覚えているかわからなかったし
なにしろユノがそのことには触れなかった。


正直、この遊びをしてほしくなかった


どんなつもりでこれをやろうと思ったのか。


ユノは小銭を払い、見た目はリアルなライフルを受け取り、スポンジの弾を詰める。

「チャンミンどれが欲しい?」

並んでいる景品はどれも子供のオモチャだった。

「僕は欲しいものはないよ」


それよりも、この遊びをやめてほしかった


「じゃあ、あの一番上のをとってやる」

一番上の難しそうなところには
ウサギのぬいぐるみがあった。

クタッとしているけれど、背中にしっかり台があってその隙間を狙わないと倒せなさそうだ。

ユノはライフルを構えた。


肘をきちんと張り、
肩とライフルが一線に揃い
低い位置で狙いをつける。


その姿は素人のそれではないことは
誰が見ても明らかで


まわりにいたカップルや子供が遊びをやめて
ユノに注目していた。


真剣な目をしてウサギを狙い、
パンと乾いた音がするとウサギが倒れた。

まわりから拍手が起こった。

ユノは少し得意そうに微笑んで僕を見た。

持っている弾を使いきり
すべての弾でなにかしらの景品を獲得していた。

まわりはもう羨望の眼差しで
店のおじさんは怪訝な顔でボソボソと愚痴っていた

ユノはウサギを僕に渡すと
他のオモチャをまわりの子供にあげていた。

「お兄ちゃん、ナニモノ?
軍人さんだって、なかなかとれないんだよ」


「俺?スナイパーだよ」


僕はドキッとした。

どういうつもりで言ったのか。


僕は手にしたウサギをギュッと握った

そんな僕の思いには気づいてなさそうで

「初めてのプレゼントだな」

明るくユノは言った

「そうだね、ありがとう」

言われてみたらそうだ。
ユノからの初めてのプレゼント


手のひらのなかのウサギを見ると
真っ白でフワフワで可愛い顔をしている。

首にはブルーのリボンをつけて
景品のわりには、良いものだった。


「大事にするね」

また僕らは歩き出し、おでんを食べたり
出店を覗いたりした。

フェスティバルの会場も終わりに近づくと
またさっきと同じようなライフルの露店があった。

「もう一回やってくる」

ユノはその露店に近づいた

「ユノ、もういいよ」

「………」


ユノは僕の話は聞かずに、もう小銭を払っていた。

どうしたのだろう
銃の感触を思い出したのだろうか。

僕は不安になった…

ここでも次々と景品を落として
まわりの注目を浴びていた。

撃ち終わって、ライフルをお店の人に返すと
店員は取った景品をユノに渡した

「景品はいらない…」

ユノはそう言って、それを返した

「いいんですか?そりゃどうも」

「もう一度やらせて」

ユノはまた小銭を払った

「ユノ、もう行こうよ」


僕は気が気ではなかった。
ユノがすべてを思い出してしまいそうで。


ユノはライフルを受け取ると
狙いを景品に定めた

でも、そのままユノは動かなかった。

「ユノ?」

「………」

「ねぇ、ユノ」

僕は肩に手をかけると、ユノはハッとしたように
振り返った

「遊ばないなら行こう?」

「ああ、そうだな」


ユノは結局、何もせずライフルを置いて
露店から離れた

自分の手のひらを見つめるユノ。


「どうしたの?」

「いや、なんでもない」

「何か…思い出した?」

僕は不安になる気持ちを抑えて訊ねた。


「いや、何も思いださないよ」

ユノは僕に微笑んだ。

それはまるで、思い出してないから安心しろ、
と言っているようだった。


僕たちは今のこの生活が気に入っていて
本当は変化を望んでいないのかもしれない。

それは僕の甘い幻想なのだろうか。

「ユノ…」

「なに?」

「この間、ユノは先の事を考えるって言ってたけど僕たちはこれからどうなるのかな」

僕は切り込んだ…

「…………」

「ジヨンさんには、なんて言われてたの?」

「高飛びに失敗して、狙われてるから
熱りが冷めるまで隠れるからって話。
聞いてないのか?」

「…詳しくは聞いてないよ」


「そうなのか…」

「住んでいたところとかは覚えているの?」

「転々としてたから、最後の住まいはわからない
危険だからそんなところ戻れないだろ」

「そうだよね。とりあえず記憶が戻らないとね」

僕は心にもない事を言い
家に着いた。


鍵を開けようとしたら、感触が変だった。
すでに開いてる


「ユノ、鍵開いてる」


「こっちに来てろ」

ユノは自分の背中に僕を隠すと
そっとドアから中を覗いた


するとユノがため息をついて、
普通に、部屋へ入った

なんだろう?


「ジヨン!驚かせんなよ」


部屋にはあのジヨンがいた。




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籠の鳥(24)

〜〜チャンミンside〜〜


「お前はいったい誰なんだ?」


正直にすべて話して、僕は自首をすればいい

ユノはテミンにまかせれば
ジヨンに会わせるくらいはできるだろう。


それが一番いい方法で、
それしか道はなかった。

なのに、僕はユノと離れたくない
その気持ちが何より勝った。


「驚かせてすみませんでした。
僕もこんな稼業でいろいろとあるんですよ」

「7月2日ってあの刑事が言ってたけれど、
それ、俺が事故った日だぜ?」

「僕なんて、何月何日と言われたら
全部ヤバイですよ」


「そうだろうけどさ」


「そういえば、あの刑事はユノの事知ってたみたい」

どうにかそこから、ユノの興味を逸らしたかった


「俺もあの刑事を知ってる…」

「そうなの?」

「小さい頃、よく遊んでもらったんだ」

「そうだったんだ…」

「で、お前は7月2日、どこで何をしていたのか
俺には言えるよな?」

「…………」


「俺を前から知ってるのか?」

「知ってますよ、有名だったもん」


「…………そういう意味?」


「あの刑事は誰かと勘違いしてるのか、
僕がその日誰と会ってたかなんて思い出せないけど
どのみちターゲットは僕じゃなさそう…」


「いや、ターゲットはお前だよ、チャンミン」


ユノは正面から、僕をまっすぐに見つめた


「なんで?」

「カン刑事は、お前を狙ってきたんだ。
それくらいお前だってわかっただろ」


「…………」


「俺にも言えないのか」

僕はもう返す言葉がなく
ユノの興味をそらすこともできず


「なんであなたに言わなきゃなんないの?
僕のことなんてどうだっていいじゃないですか。
ただの仲介人なんだし」

「チャンミン…」


僕はぷいと横を向いた。

逸らした僕の視線の先には
破れた壁紙。

その中にはあなたのトランク。


「俺は…少なくとも
それ以上の感情をお前に抱いているよ」

「…………」


今、それを言うの?ユノ…


「欲だけで抱いてるんじゃない」

「…………」


「お前が欲しくて抱いてる」


「ばっかみたい」

僕の吐いた捨て台詞は
ほとんど毒を持たず…
シャボン玉のようにゆらゆらと舞ってパチンと消える

破れた壁紙が涙で滲む


「僕を抱くのに、いちいちそんな理由つけなくて
いいんですよ」

「理由なんかない」

「…………」

「理由がなんにもなくて、困ってるんだよ」


「どうだっていいじゃないですか、面倒くさい」

「ああ、ほんと面倒くさい」


そう言うユノの手が僕に伸びる

それだけで僕の身体は震える
心はもっと震える…


優しく僕の腕をとると

いとも簡単に引き寄せられて

僕はユノの温かい胸に収まった


「今セックスするんですか?笑っちゃいますね」

「しないよ、こうしてるだけ」

ユノは僕をぎゅーっと抱きしめた


いっそのこと、乱暴なことをしてくれたらいいのに


「お前は誰なんだろう」

「…………」


「今日みたいに
お前が誰かに連れて行かれるのかと思うと
冷静さを失うよ、俺」


「ほんと…ダメだよ、あんなの」


「俺だって、サツの前に出て行ったらダメなのにな」

「そうだよ」


僕はユノの胸の中でギュっと目をつむっていた

涙が出てこないように…


「最近、同じ夢をみる」

「どんな?」

「お前が図書館みたいなところで
泣いててさ」

「図書館?」

「ごめんねってさ」


僕の心はユノの夢の中にまで入っているのか
そう思うと可笑しくなった

でも…

きっとユノが目覚めるのは時間の問題だ


「ユノ…全部思い出したい?」

「うーん、どうかな」

「別に思い出さなくてもいいって思ってるの?」


「たまに言いようのない怒りが湧き上がってくることがあって。
それが、俺を裏切ったヤツへの怒りなのかと思うと
自分でも怖いよ。
俺は何をするかわからない」


「そう…」


「俺は…でも…」

「でも?」

「この生活が気に入ってる」

ユノはチラッと僕を上目づかいに見た。

僕もチラッとユノを見た


「僕との生活が気に入ってるって思っていいの?」

ユノはフッと笑った


「そうだよ、皿洗いの仕事じゃなくて
チャンミンとの生活が気に入ってるんだよ」

僕は頬が緩んで、下を向いてしまった。


ユノは下を向いた僕の顎をその綺麗な指ですくい上げた

「思い出すかどうかは別にして
お前とのこれからを、俺は少し真剣に考えてる」

ユノは真顔になった。


「お前もそれでいいと、俺は思ってるけど」

「ユノ、すごい自信」

「ああ、自信過剰だ」


そう言って、すくった僕の顎を
そのまま自分の方に引き寄せて

優しくキスをするユノ。



心は泣き叫びそうになっていた。




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籠の鳥(23)

〜〜チャンミンside〜〜


ユノとの穏やかな生活が続いていた

僕は自首なんて考えられなくなっていて
なにより、ユノと一緒にいたくて。


ユノは仕事が終わると、本を読んでくれて
字を教えてくれた。

ユノの声は低くて甘く
その時間が僕はほんとうに好きだった。


僕は少しずつ難しい本も読めるようになり
店に行っても、食糧品の名前もすんなり読めるようになった。


夜は熱く抱いてくれて
ユノは激しく甘く優しかった。


何度も「好きだ」と言ってくれるのに
僕はそれには答えられず

でもユノは何も言わなかった



僕とユノはあんな事故なんか
まるでなかったかのように暮らしていた。

僕は考えなければいけない事をすべて後回しにした

毎日の幸せをそのまま感じて、現実から目を背けていた。


そんなある日のこと。

厨房でいつものように泡にまみれて
ひたすら皿を洗っていた。

そこへ店長がやってきた。


「チャンミン、お前のところに警察がきてる」

心臓が止まるかと思った。。

ユノが皿を洗う手を止めて僕をみてる


「わかりました」
僕は小さく答えて、手を拭いた。

「チャンミンなんて、そんな名前の人間はいないって言ってある。早く裏から逃げろ」

「あ、はい」

僕は躊躇した。

ユノが…どう思うか、気になった

ちらっとユノを見れば、
怪訝な顔で僕を見つめていた。

とりあえず、ここを出なきゃ


厨房を出たところで
ユノに腕を掴まれた

「なんでお前のところに警察がくるの」

「なんでだろうね…
わからないけど、いいことなさそうだし
店長もああ言ってるし」

僕はしどろもどろになって、
ユノの手を振りほどいた。


「チャンミン、待てよ」

店の裏口まで、ユノはついてきた。

そのドアを開けたところに…


小太りの中年男と、若い部下のような男が2人。

警官じゃなくて、刑事か…

小太りの方が「ソウル警察のカンです…」
と言って、胸ポケットから何かを出そうとしたところに

ユノが来た。

カンという男はユノをみると目を見開き
固まってしまった。


「署長…」

そう小さく呟いたカン刑事。

署長?


ユノは眉をひそめている。

「あ、チョン署長の息子さんじゃないか?
そうだろ?」

ユノはなにも答えない。

「あまりにも生き写しで…」

「…………」


「まあ、あれか、いろいろあるわな。
カンタンには名乗れない事情も…」


ユノはカン刑事に詰め寄った


「何の用?俺?」


「ユノ…ちょっと」
僕の前に立ちはだかろうとするユノを咎めた。

「ユノ?そうか、君はチョン・ユンホか…」

「だから何の用だよ」

「シム・チャンミンに話を聞きたくてね」
後ろの若い刑事がサラッと話す。

「君はシム・チャンミンだね」
カン刑事はやっとユノから視線を外し、僕に確認する

「違います」

「6月2日の夜はなにをしていた?」

「覚えていません」

「じゃあ6月15日は?」

「わかりません」

「シム・チャンミンはその両日とも
三清洞のレストランにいたんだよ」

「へぇ」

「誰といたかわかるね」

「シム・チャンミンという人間が
その日どこで誰といたかなんて
僕には関係ないので」


これ以上、ユノの前で僕の話をしないで。

僕は自分が捕まるとかそんなことよりも
ユノに僕の事が知られるのがイヤだった。

「今度は7月10日の話を是非聞かせて欲しいな」


それは僕とユノが漢江で落ち合ったあの日


「まったくわかりません」

「シム・チャンミンを知らないなら
君の話でいいから」

「話すことは、何もないので」

「ま、いいさ」


思い出したような素振りで
カン刑事が僕たちに言った

「そういえば、君たちは仲がいいね。
この間、料理屋で絡まれてた君を助けてたのは
チョン・ユンホか」

つけられてたのか…


僕はのほほんと生活していたけれど
警察の手は迫っていたんだ。

「今日のところは帰る。
逃げようなんて思うなよ」

蛇のような目をしたカン刑事。

2人は僕らに背を向けて、帰って行った。


しばらく長い時間

僕とユノはそこに立ち尽くしていた。


店長が様子を見に来た

「どうした?」

「あ、すみません。」

「悪いけど、もうここには来ないように。
他のヤツもいるんでね。
警察にウロウロされると困る。」

「はい…」

「しばらくあのアパートは住んでていいよ」

「はい…」

「悪いな。テミンには話しておくから」

「わかりました。」


僕とユノは早くにアパートに帰った。


僕たちは何も食べていなかったから
途中でトッポギとおでんを買ってアパートで食べた。

僕たちは何も話さない。


口を開いたのはユノだった。

「チャンミン…」

「はい?」


「お前はいったい誰なんだ」



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籠の鳥(22)

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籠の鳥(21)

〜〜チャンミンside〜〜


ユノにキスをされてから
なんとなく、毎日の生活に甘さが出てきたような気がする。


それからも、キスはした。

挨拶とかそんな軽いのではなくて

何かの拍子にユノがたまらなくなって
口づけてくる、という感じだ。

僕は僕で、急に不安が襲ってきたり
警官が僕を見ているような錯覚を起こしたりすると

その日は少し抱きしめてもらったり
頭を撫でてもらったりする。

そんな甘い生活だった。


今日も仕事が大変で、かなり疲れて家路についた。

ユノは体力があって、あまり疲れた顔をみせない。


「チャンミン、おいで」

「なに?」


僕は手を広げてくれるユノの胸に収まった

「疲れた顔してる。今日は忙しかったからな」


気づいてくれてたんだ。

ユノの大きな手が僕の頭を撫でてくれる



「ごめんね、ユノ」

「チャンミン」

「ん?」

「こうすると、お前、いつも謝ってばっかりだな」


僕はハッとして顔を上げた。

「あ、ユノも疲れているのに、と思って…」

「必ず謝るよ?ヘンなの」


ユノは薄く笑って
僕にくちづけた…

ユノの手が、僕の体を弄りだす。

くちづけが深くなっていき
ユノの舌が入ってくる

ユノの息づかいが荒くなり、

僕はユノの勢いに、立っているのがやっとになる。


ここまで…

僕はそっとユノの肩を押した。


やっぱり一度キスをしてしまったら
箍がはずれる

その先も欲しくなる


「男とは経験ないか?」

「あ…うん…」

「そうか…俺、怖いだろ、ごめん」

「謝るのは僕のほうだよ」


ユノは大きくため息をつくと、僕の頭をクシャクシャと撫でた。

我慢してくれているんだ。

ユノ…


僕も抱かれたかった。
でも抱かれたら、あなたと離れないために
僕は何をするかわからない

それが自分でも怖かった。



ある日、僕は油断をした。

あまりに平和な日々に、油断をした。


その日は天気もよく、店は定休日だった。

僕はユノを食事に誘ってみた。

「ちょっとさ、何か食べに行こうか」

「目立たないところなら」

「もちろん」


僕らは連れ立って、わざと人混みの中を歩いた
この方がかえって目立たなくていい。

僕はパーカをかぶり、ユノはキャップを被っていた。

「いつも俺に付き合って、こんなコソコソさせてごめんな」

「え?」

「俺とじゃなきゃ、もっと普通にさ」

「ユノ、僕はあんまり自分の事、話してこなかったけどね」

「うん」

「僕もあんまり日向を歩けるような人間じゃないんだよ」

「仲介人なんて、そうだろうな」


雑居ビルの一階に大きな食堂があって
いろんな韓国料理がバイキング形式で食べれるようになっている。

「チャンミンはキライな物はないよな?」

「ないですよ、食べたことないものは
あるけど」

「取ってくるから、待ってろ」

僕はテーブルで待っていた。


僕とユノが話している時に
興味深げにジロジロと僕を見ている男がいた。

ユノは気づかなかっただろう。

ユノが席を立つと、ソイツは待っていたように、
こちらへやってきた。

面倒くさそうな男だ。

さりげなく、隣のテーブルにつき話しかけてきた。

「あんた、可愛いね」

僕は無視をしていた。

いかにもそのへんのゴロツキという感じで
脂ぎった雰囲気が気持ち悪かった。

「あんなヤサ男より、俺の方がうんといいぜ?」

僕は大げさにため息をついて見せた。

「なぁ、あのニイちゃんが帰ってこないウチに
俺とイイところ行こうぜ?」

とうとう、ソイツは僕のパーカの袖をつかんだ

しつこいな
どれだけ自分に自信があるんだ?

僕はその手を離そうと、腕を引いてるのに
しつこく、袖を掴んでくる。


ガシャン!と大きな音がして

僕とソイツは、前を見ると

ユノが料理が乗ったアルミの盆を
テーブルに叩きつけ

野性の豹のような獰猛さを湛えて
ソイツを睨んでいた。

「離せ」

「あ?」

「その手を離せ」

男が反撃の様子を見せた


「ユノ、落ち着いて」

僕の小さな声は聞こえないようで

ユノは男の襟を掴み上げ
壁に向かって、投げ飛ばした。

辺りの食器やテーブル、そんなものを
跳ね飛ばして、男が派手に倒れこむ。

倒れたその男に更に掴み掛かろうとするユノ。

「ユノ!落ち着いて!」

これでは、目立ちすぎる


店員が何人か来て、「やめてください!」
とユノを咎めた。

僕は店員に「この男が僕にちょっかい出してきて」
と訴えると、

店員は男の方に行き、なにか揉め始めた。

トラブルを起こす常連客のようだ。


ユノはその様子を見届けると
僕に向き直った

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫」


「食べよう、な?せっかくだから」

「はい…」

緊張して、よく味がわからないまま食べた。
僕達は何も喋らずにひたすら食べた。


その様子を、新聞の影からじっと見る視線があったことに僕は気付けなかった


僕たちは店を出て、家に帰った。

その間もユノはずっと黙っていて
僕は少し不安になった。


「せっかくの…外食だったのにね」

それでもユノは前を見据えたまま、黙っていた。


そしてアパートに着くやいなや
ユノにきつく抱きしめられた。


「ユ、ユノ…」

「チャンミン…」

「ユノ…どうしたの?」


「俺さ…」

「ん?」

「お前があんな目に合うと
たまらなくイヤだ。

他の男がお前に触ってくるなんて
許せない」


「あ…うん…ありがとう、嬉しかったよ」

「チャンミン…」

「うん」


「俺はお前が好きだ」


僕の心が…止まった…


「ユノ…」

「弟とか、そんなんじゃない
気持ち悪いかもしれないけど、そういう意味で
好きなんだ」

「気持ち悪いなんて…」

「………」

「そんなこと、思うわけないでしょう」

僕はユノを抱きしめる腕に力が入った

「チャンミン…」

「僕はもっとずっと前から…」


あなたの事を愛してます


これを言ったら、ずっと後で
僕もユノも苦しむ…

でも、愛してる…ユノ…大好き


僕は自分からユノにくちづけた

ユノは一瞬驚いたようだったけど
すぐに受け止めてくれて

僕を強く抱き返した。


ユノは僕を押し倒して、
性急に服を脱がしにかかった。


ダメだよ…

本当はこんなのダメなんだ

なのに僕は…

僕は泣いてしまって、
うまく言葉になっていなかった…



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籠の鳥(20)

〜〜ユノside〜〜



俺は自分がどこへ向かってるのか
何をしようとしているのかわからなかった。

事故直後はなんにも覚えていなかったけれど

少しずつ記憶は戻り
事故の前後以外の事はほとんど思い出した。


俺は最後に大仕事をして、高飛びしようとしたのを
失敗したらしい。

誰かと一緒に逃げようとして、
そいつにハメられたとか。


俺を裏切った相棒とやらを
早く思い出したい。

なんとも言えない怒りと憎しみに心が支配され
大声を出したくなる時が時折訪れる…


たぶん、そいつへの憎しみは
相当なものなのだろう


それでも、そんな気持ちを抑えて
俺は毎日、何百枚という皿を洗い、
クタクタになるまで働いた

チャンミンと一緒に。

チャンミン…


俺を予定より早く迎えに来た仲介人。

ワケありの人間を
自分の生活に引き入れてかくまうなんて
変わったやり方だ。


そしてなにより

男のクセに、儚くて色っぽい

俺は男も大丈夫だったから
一緒に住むとなると正直ムラムラすることもあった。

押し倒してしまえば済む話だろうけれど


そういう感情とはまた違った思いを俺はチャンミンに抱いていた。


もっと切ない、大事にしたいような、
うまく言えないなにか…


たまにチャンミンを見てると泣きたくなるような
気持ちになることがあった。


品のいい顔立ちでごまかれそうになるけれど
裕福ではなさそうだ。


なにしろ俺なんかをかくまう仲介人だ
普通の経歴じゃないよな。



俺のチャンミンに対する気持ちは
弟…のような気持ちだろうか。


実際、俺たちは兄弟のように暮らしていた。


そしてこのまま、2人でひっそりと暮らすのも
悪くないとまで思えるようになっていた。



「ユノ、店で餃子もらってきたから
これを夕飯にしようか」

「ああ、じゃスープ作るか」

「買いに行かないと、何もないよ」

「裏通りの食品店くらいなら買いに出ても大丈夫だろ」

「そうだね、行こうか」


「帽子は忘れんな」

「ユノ」

「なんだ?」

「一緒に買い物なんて、はじめてだね!」

嬉しそうなチャンミン…

そんなに俺と買い物に行くのがうれしいのか


俺の頬が緩む
チャンミンは….可愛いな…


俺に寄り添い、俺に隠れるようにして
チャンミンはついてきた。

簡単なものだけを売る寂れたスーパーのような店

店内は誰もいなかった。


「スープにするならどれだろうな
どのダシがいい?」

俺はスープの素をいくつか手に取り
作り方や素材を見ていた。

「できたら魚介がいいな。そっちの棚に
魚介のダシがないか?」

困り顔のチャンミン…
どうしたんだろう

見当違いの棚を触ったりしている

「それはラーメンだよ、チャンミン」

「あ…そうだね。魚のイラストが描いてあったから、ダシかな?なんて…」

「?」

「…………」

「どうした?」

「あ、あの…」

「なに?」


「ユノ、ごめん…」

「なにが?」


「実は、字が読めないんだ。
どれが魚介のダシだか、わからない…」


バツが悪そうに頬を掻いて笑うチャンミン

その姿をみて
俺は心の奥からなんとも言えない感情が込み上げてきた。

これは同情ってやつか?それとも


「いいじゃん、別に」

「え?」

「そんなの、なんにも問題ないよ」

「あ、ありがと…」


この清らかで純粋な笑顔の向こうに
どんな人生があったのだろう

なんだかたまらなくなって

俺はダシや他の食料を買って
速足で店を出た。


「うわ、待ってユノ」

つまずきそうになりながら
チャンミンが店から出てきたところを

その手を掴んで歩き出した

びっくりしたのか
チャンミンは何も喋らず

でも俺の手をしっかりと握り返している

だんだんと温かい気持ちが俺の中に溢れてきた


この手を離したくない…
そんな気持ち。


アパートに帰ると、荷物をその場にドサッと落としたままで

俺はいきなりチャンミンを胸に抱きしめた


「ユ、ユノ…」

「悪いな…少しだけ…」


衝動的に抱きしめてしまったチャンミンは
俺の中で嫌がるでもなく、じっとしていた。



〜〜チャンミンside〜〜


ユノに抱きしめられ

僕は思わず天井を見上げた

そうしてないと、涙がこぼれそうだった。


力強く僕を抱きしめてくれるユノ

温かい…あなたの胸はこんなにも温かい


あなたの抱きしめているそんな僕は

結果、あなたを罠に誘き寄せ

あなたの人生をメチャメチャにした

そんな人間なんです…


「ごめんね…」

「チャンミン…」

「ん?」

「なんで謝るの」

「なんかこんな僕で…」

「字が読めないから?」

「それも…あるし」

「恥ずかしくなんかないよ」

「ユノ…」

「字なんて俺が教えてやるよ」


ずっと前も、そう言ってくれたね。


「ありがとう。お願いします」


餃子とスープを夕飯にして
僕は少し昔のことを聞かれた。


「北のコッチェビ(浮浪児)だったのか?」

「いえ、ソウルにもそういう場所があるんですよ
あの江南区の近くにね」

「父親から聞いたことがあるな…」

「お父さん…」

「警官でさ…死んだけど」

「あ…」

殺されたんでしょ。。

「殺されたんだけどね」


あ…そこは覚えてるんだ


僕たちはこんな世界に住んでいたから
2人で一緒に逃げようとしたんだよ

僕がダメにしちゃったけど

たまらない悲しみに、ふたたび支配されそうになった。


「ユノ…」

「ん?」

「たまにでいいんだけど」

「なに?」

「さっきみたいに抱きしめてくれないかな」

「チャンミン…」


「あ、なんていうか…
すごく安心できるっていうか…」

「おいで」

「え?」


ユノは僕を抱き寄せると
優しく抱きしめて、頭を撫でてくれた

このまま…

どうかこのまま…時間がとまってくれたら

僕はユノのシャツをぎゅっとつかんだ。

ふとユノが身体を離し、
僕の頬を両手で包んで、真剣な顔で僕をみつめる

ユノの顔がためらいがちに近づいてきた

その唇が僕のそれに触れると

僕の心は泣いた…大声で泣いた



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籠の鳥(19)

〜〜カン刑事side〜〜


「パク・ギョンス殺人事件本部」

そう書かれた紙を貼った会議室。

紙という適当感がみんなのヤル気のなさを
物語っている


定例会議で各自が捜査報告をする。

これがまったくもって盛り上がらない。

人が1人殺されて、盛り上がらないというのは
変な話だけれども

あの男が死んでも、まず悲しむ人間がいない
むしろ、喜んでいる輩の方が多いのではないか

けれど、この捜査はかなり大掛かりにしている風を
装っている。

なぜなら、他で事件が多発するのを防ぐためだ。

パク・ギョンスが死んで、悲しくはないけど困るヤツというのが大勢いる。

主に金絡みで。

すでにキナ臭い話が充満していて、
むせ返るほどだ。

ソウルでドンパチされると市民が巻き添えを食う。

そんなのを防ぐために
病源は押さえないとならない。

ヤツに関係する人間は全部ぶち込んで
街にださなければ、ソウルは平和だ。

しかしながら…

今日の会議は少し進展がみられて
俺の興味をひいた。


パク・ギョンスは1発で殺られていることから
利腕の側近の仕事だと思われていた。

目撃者のレストランのスタッフが
かなり混乱をしていて、捜査が難航していたのもある。

でも、使われた銃がとても小さいもので
しかもかなり古い型。

護衛の側近が持つようなものではなかった。

そして、事件の後、
パク・ギョンスのタワーマンションから
1人の人間が消えている事がわかった。


シム・チャンミン


社会保険番号はない。

俺は部下と共に、そのタワーマンションへ行った。

シム・チャンミンはかなり広い部屋をあてがわれていたようで
クローゼットには上質のスーツが並び

アクセサリーや時計はきれいに整頓されていた。

不必要に広いベッドと
写真の可愛い顔立ちを見ると

それらがシム・チャンミンの立場、役割がどんなものだったか、よくわかる。


変態ジジィが…

反吐がでそうな部屋を後にして

部下と昼飯をとるために食堂へ入った。


「カンさん、この事件、上層部がそろそろ切り上げるようにってムードらしいですよ」

「ああ?なんだそりゃ」

「パク・ギョンスの関係者と警察のお上は繋がってるんでしょ?」

「関係ないね、このまま野放しじゃ
ソウルが蜂の巣になりかねない。
それにな、俺はそういうワルと繋がるお上っていうのが、大っきらいなんだよ」

思わず、箸をテーブルに叩きつけてしまった。

まわりがヒソヒソとこちらを見ている


「カンさん!落ち着いてくださいよ」

「俺の尊敬していたチョン署長はな」

「わかってます、わかってますよ
圧力に屈せず、上層部の不正を暴いたんでしょ?
もう何回聞かされたか…」

「ばーか、暴ききれなかったんだよ
とっ捕まえる前に、殺されたんだ」

「強盗でしょ?」

「違う…あれは殺されたんだ
署長には息子さんがいて…俺が小さい時よく遊んでやったあの子に仇を…」

部下はあきれて、もうほとんど聞いていなかった

可哀想に、あの子に署長の仇をとらせてしまった

ふいにそんな事を思い出して、胸の古傷が痛んだ。


それにしても、シム・チャンミン


どこかで聞いたことがあるような名前だったけど
思い出せない。

護身用のコルトで撃ったのか?

なんのために?

自分を慰みモノにしていたパク・ギョンスへの恨みだとしたら

なぜ、このタイミングで?


俺はいろんな考えを巡らせたけれど
とにかく情報が少な過ぎた



〜〜チャンミンside〜〜



ユノとの生活は穏やかに続いた。

昼間は中華料理店の厨房で働き
夜は寮とされているアパートへ戻る

そんな毎日のある晩

ユノが料理をしてくれて
カボチャを切っていた。

それを横で僕は手伝っていた。


なんでもない、日常だったけど
僕にとっては至福の時間だ。

ふと、ユノがカボチャの一部を
切って捨ててしまった。

あ…食べられるのに…


「ユノ、なんで今の捨てるの」

「色が変わってたからさ、ここだけ」

「腐ってたわけじゃないよ、
それにこんなに皮を捨てるけど、
皮は…」


ハッとして僕は自分の口を押さえた

いつもパク・ギョンスに言われていた。

" 食べ物のことをチマチマ言うんじゃない
コッチェビを拾ってきたのかと思われるじゃないか "

「チャンミン…」

「ごめんなさい…」


しばらく僕を見つめていたけれど

ユノは今捨てたカボチャを拾って洗った。
そして、捨てていた皮も全部洗って刻んで鍋にいれてくれた。

「ユノ、ごめん、僕余計なことを」


「チャンミン、お前の言う通りだよ、
カボチャは全部食べられるよな」

「ユノ…」

僕は思わず俯いてしまった。


「だれでも、ガマンならない何かってのがあるだろ」

「あ…」


「俺に隠さず見せていいから」

「………」


そんなふうに
優しくされると胸が痛む


「…ありがとう」


僕は…こうやって苦しくなることが
これからもあるんだろうな。



「そういえばさ、チャンミン」

ユノは思いついたように言った。


「なに?」

「俺、かなり金が貯まっていたはずなんだ。
事故の前に」

「お金?」

「ああ、茶色の使い込んだトランクがあって。
その底に詰め込んでたんだ。ジヨンから聞いてないか?」

「それは…聞いてないです」

「そうか…誰が持って行ったんだろう」


心臓がドキドキしている。

今までウソをつくなんて全然平気だったのに。


夕飯が出来上がった。
店で残った野菜を使ったチゲ

「お前さ」

「はい?」

「俺をかくまって、いくらもらえんの?」

「え…」

「そもそもジヨンとヒチョルの依頼だろ?
あいつらばっかりに金負担させるわけにいかない」

「そんなに高い金額ではないですよ」

「だけど、お前、俺につきっきりじゃないか」

「………」

「普通、仕事紹介してバイバイだぜ?」

「イヤですか?」

「は?」

「こうやって、つきっきりはイヤですか?」

「いや…そういうわけじゃないけど…
かなりの金額なんじゃないかってさ」


僕は何を言ってるんだろう

どう考えたって、こんなの不自然なのに

僕が一緒にいることを、
喜んでくれるなんて、そんな事もありえないのに。


僕はあとどれくらいユノにウソをつかなくては
いけないのだろう。

そしてどれだけ僕は傷つくのだろう

ユノのキレイな横顔をじっと見つめながら
壁の裏側に隠してある、トランクを思った。



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籠の鳥(18)

〜〜チャンミンside〜〜



季節は夏の終わりから秋に向かい
少し涼しい風が吹く頃となった。


鍾路にある寂れた古いアパートの僕の部屋は
誰も住んでいないかのように荷物が少なかった。


布団とユノのトランクと布の肩掛けバッグに
服が少し。

昼間は明洞の中華料理屋で、一日中皿洗いをして働いた。
この店はワケありの人間ばかりが働いていて
干渉することなく、お互い名前も知らなかった。

その日、店長から呼ばれた。

これから連絡をとる為に、携帯電話を持て、という。

身分証明もない僕はもちろん普通の店で契約ができるわけもなく
指定された店で受け取るだけでいい、と言われた。


その指定された店は

あの日訪れた病院の側だった。


僕は携帯電話を受け取ると
その建物に自然と足が向いた


あれから1ヶ月くらい経つだろうか。

ユノは退院したのかな。

建物を見上げる僕の心臓が煩い


少しだけ…

退院したかどうかを確かめるだけ。


僕はキャップを目深に被り
病院の正面玄関から堂々と病棟に入った。


エレベーターで3階に行く。

廊下の奥の霊安室。


さすがに霊安室となると、
見舞客や患者は近づかないのか、
まわりは静かだった。


そっとノックをしてみた。


すると意外にも「はい」と男の声で返事が返ってきて

僕は驚いて後ずさりしてしまった

どうしよう…まさか返事があるなんて


躊躇していたら、霊安室のドアが開いた


ユノ…


僕の目の前には…ユノの姿があった…

事故の前のいつものユノだった。


ストライプのシャツを着て
ジーンズを履いている。

患者には見えない


会いたくてたまらなかったユノ…



ユノは怪訝そうな顔をして僕を見つめる

その綺麗に切れ上がったアーモンドアイが懐かしい


僕は言葉を探して、視線を泳がせた

「あ、あの…」


「だれ?」


え?

だれって…

僕は被っていたキャップをとって
胸に抱きしめた

「僕は…」


「ジヨンの知人?
俺を引き取りに来た、仲介の人?」


僕は髪をかき上げた。

この1ヶ月、僕は働き詰めで
風貌が変わってしまっただろうか。


「用意はできてるから
いつでも出れるけど」


もしや、記憶が、ないのか?

よくわからないけれど、
それならば…



「では出ましょうか」

咄嗟に僕は言った。


なぜそんなことを言ったのか、
自分でもわからない。

自分が何をしようとしてるのか
わからない


ユノはなんの疑問もなく頷いて
綺麗に片付けられたベッドから
紙袋を持つと

僕の後についてきた。

心臓がドキドキして口から出そうだった。


何も考えず廊下をエレベーターに向かおうとする僕の腕をユノが掴んだ。


「聞いてない?
俺、こっちからじゃないと出られないんだけど」

そう言って、非常階段へ向かうユノ。


僕がユノについていくカタチとなった。


広い肩幅とスッキリした長身。

僕のユノだった…

嬉しさに涙が溢れてきた

ユノ…僕の…僕だけのユノ…


ユノの状況はまったくわからなかったけど

このまま、ユノと離れるつもりは今はない。


誘拐でもなんでもいい
恨まれても、罵倒されてもいい

その時の僕に後先の事を考える余裕はなかった。


あるのはユノと一緒にいたいという思いと
その覚悟だった。


病院を出ると、僕は目深に帽子を被る。

ユノもサングラスをかけた。
自分がどういう立場の人間かわかっているようだ

僕は次第に落ち着いてきた。
この状況をラッキーだと考えよう


「お腹すいてませんか?」

「すいてる。病院を出る前に食事が出るって聞いてたから」

「では、何か食べましょう。」

「ダメだろ?外で食事なんて」

「待っててください」

さっき、教えてもらったばかりの操作で
携帯から通話をした。


テミンが怪訝そうに電話にでた。

「テミン、チャンミンだよ」

「え?携帯どしたの?」

「店長が持てって。」

「よかった。携帯持つのあんなにイヤがってたからさ」

「早速なんだけど頼みが…」

「いいよ、なに?」

「2階のカフェを借りたい」

「そんなのお安い御用だよ
人から見られない席用意するから
誰かと一緒?」

「うん…」


「誰とだか言わなくていいよ、そのまま来てね」


僕は携帯を切った。
とても、ユノを誘拐したなんて言えなかった

ありがとう、テミン


僕とユノはタクシーでカフェに行き
人から見えにくい席につき、パスタを食べた。


「僕はシム・チャンミンです。
正直あなたの事は詳しく聞いてなくて。」

「チョン・ユンホです」

ユノはあたりを警戒しながら
ボソボソと話した。

「入院されてたんですね?」

「ああ、事故で」

「もしかして記憶が失われてます?」

「少しね」

心臓が強く鼓動して苦しい

「少し…とは?」

「事故の前の…半年くらい前までは
ようやく思い出して…
でも一時的らしい。その内全部思い出すさ」

「なぜ事故に遭われたかは聞いてますか」


「ハメられたんです。一緒に逃げようとした相棒に裏切られて」

記憶がないはずなのに、実際に経験したように話すユノ。

僕は変な汗が背中をつたった。

「ハメられた?」

「ジヨンがそう言ってたから」

「ジヨンは…恋人?」

「恋人….なのかな」

「ジヨンと住むことになってますか?」


「隠れ家と潜伏先を紹介してくれるのが
あんたなんだろ?」

「あ、そう…です」

「そういえば、ジヨンから携帯電話を預かってるか?」

「え?」

「あんたが持ってきてくれて
その携帯でジヨンに連絡することになってる」

「あ、それが手違いで…今、ないんですよ」

「ふぅん。」

「僕の携帯から、連絡しますか?」

ジヨンに 連絡されたら最後だ。。
でも、連絡させないのも変だ。


「いや、番号わかんない
もらう携帯に番号登録してあるって言ってたから」

ホッとした…

ユノはジヨンと連絡はとれないのだ。


それなら


このまま、2人だけでどこかへ逃げられたらいいのに

でも、今はそうはいかない。


状況が許さないだろうし、ユノも納得しないだろう。

僕はユノの事を中華料理屋に話して一緒に働けるようにし、住まいは僕の部屋で相部屋となった。


僕は舞い上がっていた。

状況はどうであれ、ユノと暮らせるのだ。

それが2人にとってどんなに残酷なことか
僕は考えないようにしていた。


ユノの分の布団を部屋に入れると
少し外で待ってもらい

僕はユノのトランクを
壊れた壁板の中に押し込んで隠した

あの夜、ヒチョルに置いて行けと言われたトランク
ほとんど奪うようにして、持ち帰ってしまった。


「相部屋なんだけど、申し訳ないです」

ユノは部屋をぐるりと見回した。

「いいよ、ここなら隠れて生活するには
ばっちりだし。」

「困ったことがあったら、言ってください」


「よろしくな、チャンミン」


ユノが右手を差し出した。

僕は胸がぎゅっと鷲掴みされるような感情がこみあげてきて、泣きそうになった。

「よろしく、ユノ」

そう言ってユノの手を握る僕の声は震えていた。



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籠の鳥(17)

〜〜チャンミンside〜〜


頭に包帯を巻いた連れの男がジヨンを止めに入った。

綺麗な顔のこの男は
ユノの車を運転していた男か?


「ヒチョル!こいつよ!ユノを売ったのは」


やっぱり…この男だ

ジヨンの言葉に、その男は僕を睨みつけた
目が大きいせいか、凄みが半端ない

でも、僕はそんなのお構いなしに
ジヨンの手を払ってそのヒチョルという男に掴みかかった

「ユノは?!ユノはどうしましたか?!」


ヒチョルは僕の剣幕に少したじろぎ
すぐに訝しげに僕を見つめた

「これはユノのトランクじゃねぇか」

「そう…です…」

「お前…」


僕は更に詰め寄ろうとしたところで
ヒチョルに殴られ、

踊り場の壁にしたたかに背中をぶつけた

その拍子に僕の肩掛けカバンからコルトが飛び出した

ジヨンがコルトを拾って、意地悪そうな視線を向けた。

「へぇ、坊ちゃん、物騒なもの持ってんじゃないの」

そう言って、コルトをいじるジヨン

「触るな!僕がユノからもらった…」

ヒチョルが立ちはだかった

「ユノがどんな気持ちでこれをお前にやったか。
それなのに、てめぇはユノを売りやがって。
トドメを刺しにきたのか?」

「ちがう!」

「じゃあ、なんだ?」

「僕は…」

その時ジヨンがふいに声をかけた

「ヒチョル…」

「あ?」

「このコルト、使われてる…」

「え?」

「あんた、まさか…」

「………」

「パク・ギョンスやったの、あんた?」

「………」

「マジか?」


「自首…しますから…」

「なんで、あんた、パク・ギョンスを…」

なんで?


再び、心の底から喉を通って
悲しみがこみ上げてきた


「だって…ユノを…僕からユノを…奪ったから」


「やだ…」
ジヨンは口を押さえて、泣き出した

「じゃあ、なんでパク・ギョンスはあそこで待ち構えてたんだよ」
ヒチョルの目が光る。


「パスポートは?って聞かれて…」

「パスポート?」

「釜山で受け取るって、咄嗟にごまかしたら…」

「漢江から出るってバレたってワケか…
お前、ソウル駅に誘導しようと思ったのか」

「そう…です…」

「勝手なマネを…」

ヒチョルはため息をついた…



「それにおまえ、そのままヤツのところにいたって
少々仕置きがある程度で済んだんだぞ?」

「………」


「ユノのトランク抱えて…何やってんだよおめぇ」

ヒチョルの声が少し優しかった


僕は壁にもたれかかりながら
嗚咽をこらえた


何やってるのか、と言われたら

僕はほんとに、何をしているんだろう


「なんでここがわかった?1人なのか?」


「友達が教えてくれた…」

「友達って誰だ?」

「テミン…」

「テミン?」

「………」

「江南の…スリョン女史のペットか…」

「ユノは?…生きてますよね?
テミンが死んでないって言ってた」

「死んじゃいねぇよ、会うか?」

「お願いしますっ!会わせて!」

「会わせることないわよ!
結局こいつのせいで、ユノは…
ヒチョルだって、メチャクチャになったじゃないの」

「ジヨン…」

「あんた、ユノをどこへ連れて来ればいいか、
それだけパク・ギョンスに聞きに行ったんでしょ?
何聞かれたって、知らないって言えばよかったのよ。
なんにも出来ないくせに、釜山だとか言うから
尻尾つかまれたんじゃないの」

ジヨンは止まらなかった。

病院の冷たい階段の踊り場に
ジヨンの金切声が響いた


「パク・ギョンスを殺ったからって
なんの罪滅ぼしにもなんないのよ。
ユノもヒチョルももっと立場が悪くなったのよ!」

ジヨンの一言一言が、僕の心に響き渡る

僕はただの厄病神だった…
結局はそういうことだ…


「ジヨン、もうやめろ。
お前はこっちへ来い」

ヒチョルは僕を起こして、さっき降りてきた階段を
また上った。


鉄のドアを開けると、そこは普通の病院の廊下だった。

廊下の一番奥に霊安室があった

霊安室って…

ヒチョルはそのドアを開けて、僕を招き入れた

そこにはベッドの上で機械と管で繋がった
ユノの姿があった。

「ユノ…」

僕はベッドに駆け寄った

ユノはマスクやら、いろんなコードをつけられつ
眠っていた

ユノだ…

たしかにユノだ…

僕のユノ…

会えたのが嬉しくて、僕は泣いた

ユノ…ユノ…

会いたかった…生きてたんだね…よかった…

ごめんね、ユノ…


「車がひっくり返る前に、こいつは俺を運転席の外に突き飛ばしたんだ」

「………」

「ユノは横転する車の中にいた。
運良く、桟橋にぶつかったときに外へ弾き飛ばされた。」

「………」

「引っ張り上げて、どうにか逃げてきた」

「…………」

「でもな、ユノは目が覚めない」

「あ…」

「死体もないのに、俺たちは死んだことになってる
どういうことか、わかるか?」

「その方がこれから始末するのに都合がいい…」

「ピンポーン」

「………」

「それにな、お坊ちゃんがパク・ギョンスを始末してくれちゃったもんだから
ヤツが死んだら困る人間からも追われてる。
追っ手の数は倍だよ。」

「とんだ厄病神なのよ、あんた」


「というわけで、俺はもうソウルにはいられない。
お前は警察からも狙われるはずだ。
ユノのことは忘れて、熱りが冷めるまで隠れるんだな。自首もいいかもな」

「ユノは私が面倒みるから」

ジヨンが少し得意そうに言った。


僕はユノの頬を撫でた。

温かくて、生きていることを実感した。


「僕の事を恨んでいるかな…」

ポツっと呟いた僕にヒチョルが鋭い視線を向けた

「車に乗った途端、裏切りやがったって、言ってた」

鉛のように重い悲しみが僕の心に沈む

「信じてたのにって言葉が、最後だったぜ」

「ユノ…」

「ずいぶん悲しそうに言ってた」


僕の涙がユノの肩あたりに落ちたけれど
ユノは動かなかった


「ごめんね、ユノ。
そしてさようなら」



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籠の鳥(16)

〜〜チャンミンside〜〜


きらめくソウルのネオンの中、
建物と建物の隙間で、僕は夜明けを待った。


狭くて、汚なくて…
でも、こんな世界には慣れていた。

ユノがいない世界の方が何倍も辛くて悲しい


夜が明けるまで、
そんな場所で僕は泣き続けた…


ユノは足を洗って、のんびり生きていこうとしたのに

その夢を僕が壊した


僕なんか連れて行こうとしなければ
きっとユノは今頃、中国へ向けて出航してた頃だ。


ごめんね、ユノ…
ごめんなさい…


寂しくて悲しくて、
それでも僕はじっとしていた

悲しみに耐えようとしても溢れてくる涙

ユノに会いたい…



朝になって、僕は駅の売店へ行き
新聞を買った。


それを小脇に抱えると
小さな粥屋に入って奥の席に座った。

新聞を小さく広げてみると

まず第1面に大きくパク・ギョンスの事が出ていた。

「パクグループ会長、射殺される」

犯人はその場から立ち去った側近の1人と推測される、という。


ああ、飼い主は死んだんだな…
僕はまるで他人事のようにその記事を読んだ。


ユノの記事を探した。

それは、新聞のほんの片隅に小さく載っていた。

「漢江でワゴン車が横転炎上。2人死亡」


愕然とした…


まさか…


死んだの?

ユノは死んじゃったの?

そんな…

ユノは大丈夫だと、なぜか確信していた

たしかにそんなのは、なんの根拠もなかった…



僕は粥屋の片隅で、新聞で顔を隠して泣いた


そばにいたボロボロな身なりのアジョシが
くすんだコップに水を入れて、渡してくれた。

「いろいろあるわな?」

「ありがとうございます…」

「元気だせや」

「…」

「水じゃあ元気なんかでねぇやな?」

「そんなことないです、ありがとうございます」

その人は僕の持ってる新聞をチラッと見やった。

「パク・ギョンスが死んだか」

「………」

「泣くこたねぇぞ?あんなヤツは死んであたりめぇだ」

「………」

「犯人に乾杯だな」

その人は僕のコップに自分のコップをコツンとあてて、飲み干した。

まるで僕が犯人だと、知っているかのように。


僕は粥屋をでて、パーカのフードを深くかぶった。

ユノのトランクを持って
地下鉄に乗った。


ソウルの上流地区、狎鴎亭で降りて
瀟洒な造りの美容サロンを探した。

テミンは有名な女性美容家の世話になっている
彼もいわゆる、籠の鳥、だった。

ガラス張りの店内をのぞくと

テミンがいた。


少年と青年の狭間特有の美しさ。
柔らかい髪に白く細い顔、大きな茶色の瞳

まわりの女の客より、よっぽど綺麗だった。


テミナ…


テミンはふとこちらを見て、その瞳を見開いた。


僕はフードの影からじっとテミンを見つめた。


テミンは僕を見て軽く頷くと、
まわりの女性達に笑顔で何か話し、その輪から抜けて店を出た。


「ヒョン」

「ごめんね、テミナ」

「謝ることないよ。こっちへ」

僕はテミンについて、2階のカフェへ入った。


給仕の出入り口に近い、
壁で少し隠れがちな席をすすめられ座った。


「ひさしぶりだね、ヒョン」

「テミナは元気そうだね」

「生きてるよ、なんとかね」


「テミナ…今朝の新聞見た?」

「パク・ギョンス?」

「うん…」

「まさか…ヒョン」


「僕なんだ」


テミンは少し驚いたようだったけど
すぐに落ち着いて真剣な表情になった。


「…かくまってあげる。まかせて。」


「自首しようと思ってる」

「え?」

「これから警察行ってくる」


「ヒョン、いいんだよ、あんなヤツ
死んで当然なんだ。」


「もう、この世界になんの未練もないんだ」

「ヒョン…」


「大好きな人がね…死んじゃって…」

「大好きな人?」


僕は持っていた新聞を開いた


「その彼はこんな小さな記事なんだ。
パク・ギョンスなんかこんなデカく載ってて」


テミンはその記事に見入った。


「そういうわけだから、しばらく会えないと思って、そしてできたらこのトランクを預かってもらえないかと…」

「ヒョン」

「なに?」


「このユンホって人はわからないけど、
キム・ヒチョルって人は知ってるよ。僕の飼い主が
よく仕事を依頼してる。」


「ふぅん。死んじゃったよ、その人」

「そんなことない。ケガしてるけど生きてるよ
昨夜遅くに会ったよ」

「え?」


「ツレが重傷でって、内密に診てくれるところ
探してた」

「ほんとに?」

「直接聞いたから、確かだよ」

「ツレって…」

「チョン・ユンホじゃないの?」


「どこの病院かわかる?」

僕は思わず身を乗り出した

「うん、内密に診てくれるところなんて
いくつかしかないから」


ユノが…生きてるかもしれない…


「ありがとう、テミナ。今日ここへ来てよかった」

「自首はしないでいてくれる?」

「一度、ユノの無事を確認したら、また考える」

「ヒョン、少しの間でもどこかに隠れないと。
僕、住むところ探すよ」

「ありがとう。でも携帯ないから、連絡の取りようがないよ。」

「ちょっと待って。すぐ行けるように連絡してあげるから」

テミンは携帯ですぐにどこかへ連絡した。

そして、メモをとりだすと
地図を書いた。


僕と一緒で、テミンも字が書けない。

みんなが学校で字を習っている間、
僕らはあのゴミ山にいたからね。


ふとそんなことを、思い出した。


テミンは2枚地図を書いてくれた。


「ここは中華料理の店。
厨房で皿洗いをさせてくれるよ。
住込みだから、寝泊まりも大丈夫。
決して綺麗なところではないけど
隠れているにはピッタリだと思う。」

「ありがとう」


「そしてこれが病院。ウチが紹介したとしたら、ここしかないんだ。
でも、受付で聞いてもそんな人いないって言われるから。
僕の名前を言って?」


「………ここにいるんだ」

「わからないけど。会えなくても、状態くらいはわかると思うよ」

「うん…」


「何があったかはわからないけど、
生き抜いてよ?」


「………うん。何から何までありがとう」

「いいの。僕だって助けられたんだから
こんなこと、なんでもないよ」


「また、会えるね」

「ヒョン」

「なに?」

「すごくつらそうだけど
人間らしくなったね」

「そう?」

「好きなんだね、その人のこと」


「…大好きなんだ…」


自分で言って、鼻の奥がツンと痛んだ


「その人が無事なら、幸せになれるように
頑張って」

「僕、憎まれてるから、それはどうかな」

「憎まれてるの?」

「うん。でも生きていてくれるなら
それで十分」

「ヒョン………」


「とにかく、ありがとう
しばらく、ここで静かに生活させてもらうよ」


僕はその地図を頼りに、また地下鉄に乗った。


ユノの状態だけでも確認して
そして、自首するかどうか考えよう




テミンの教えてくれた病院は思ったより
大きくきちんとした病院だった。

救急の入り口から、そっと入って
警備の人に「イ・テミンですが…」と声をかけると
リストのようなものをチェックした後

「3階のナースステーションでもう一度声かけてください」

そう言われて、エレベーターではなく、
狭い階段で3階へ登った。

これは非常階段なのだろう


あまり人に会いたくなかった

それなのに、上から降りてくる男女の話声がした。

この狭さなら、すれ違うのにどちらかが
道を譲らないといけない。

僕は踊り場の角で2人が通り過ぎるのを待とうとした。

パーカを被り、下を向いていた


「どうも、すみません」

男のほうが僕に言った。

ふと、女の足が踊り場で止まった
僕の真ん前だ。

ピンクの派手なピンヒールが目に入った

「あんた…」


明らかに僕に話しかけているようで
少し顔をあげて、その女の顔を見た。


あ!


ユノの部屋に来た…ジヨン…

ハッとして、僕が下を向き終わらないうちに
襟元を掴み上げられた


「あんた…よくも…」


涙の溜まった怒りに燃える強い瞳

僕はその瞳をじっと見つめた



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