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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

ひだまりの匂い(37)

〜〜ユノside〜〜



ヒチョリヒョンが視察にきた。

一応オーナーだからな。

「なぁ、店舗構えようぜ?いい物件みつけたんだよ
金も貯まっただろ?」

「店舗?」

「ああ、いい話があってよ。
上手いブリュレ作ってるヤツがいて
それだけで店構えられなくてさ。
そいつのブリュレ販売してくんないかって。
物件はいいの押さえてあるらしくて。」


「おぅ、いいね!
チキンとブリュレか。ブリュレってなんだかしらねぇけど」


「やだなぁ、ユノヒョン。
プリンぽいやつだよ。女子高生のファンがたくさんいるのに、知らないの?」


「うるせぇよ、テミナ」


「なんだよ、ユノヒョンなんか発音も怪しいよ!
ブリュレだよ、ブ・リュ・レ!」



チキショー!バカにしやがって


ランチの客が捌けた頃、
ナレがやってきた。


「オッパ、こんにちは」

「おぅ、今日はどれにする?」

「ユノオッパにします」

「は?」

「ユノオッパをひとりお願い」

「なんで俺の名前…」

「バンの権利証に書いてあるでしょ?」

「ああ、なるほど」


「ちょっとデートしてよ、ユノオッパ」

「あ!そうだ、じゃあさ、アレ美味しいとこ知らないか?」

「アレ?」

「えーと、なんかプリンぽいやつで…」

「ブリュレ?」

「あーそれそれ」

「いいよ!フフフ…今日これから?」

「普通の日は忙しくて行かれねぇから」

「明日の土曜日なら、午後からいいよ?」

「そうか、悪いけどブリュレつきあってくれ」

「もちろん、楽しみにしてるね」




〜〜チャンミンside〜〜



「というわけで、長い間、ご苦労様でした。」


ヘジンさんを解雇することになった。


叔父からの援助がなくなり、
これからは、事故の補償金と病院だけでほそぼそと
やっていかなきゃならない。


病院はほとんど、収入のない状態で
現実的には、補償金の切り崩しでの生活だ。


「遊びに来るだけなら、いい?」

「遊びに?」

「そう。家には定年したダンナがいるから
あんまり一緒にいたくないのよ」


「かわいそうに…フフ」



「だから、たまに来るわ、お弁当持って」

「どうぞ。いつでも。」



「ユノさんとは…別れたんだって?」

「はい…別れました」


「いい人だったのにね、残念ね」


「僕、ユノさんに頼りすぎちゃってね。
結構無理させちゃって…」


「嫌がられちゃったの?」


「うん…」


「頼る内容が悪かったのかもね」

「内容?」


「ユノさんがチンピラだったのは、チャンミンも受け入れたけど、
これが結婚とかだったら、どうだった?」


「逆の立場だったらってこと?」


「そうよ。ユノさんが他の人と結婚するけど、
そのまま付き合ってくれって言われたら」

「…………」

「理屈じゃないわよ、恋なんだから」


「ヘジンさん…」

「わたしね、恋してたのよ」

「へぇー誰と?」

「あなたのお爺ちゃんに」

「じいちゃん!?」


「そう、片思いだったけどね。
シム先生は、優しくて穏やかで、でも芯は強くてね

チャンミンはシム先生にそっくり。」



「そうなんですか…」




突然目眩が襲ってきた…


「先生?大丈夫?」


「はい。たまにね、急に目眩がするんですよ」

「医者は行ったの?」

「はい。ストレスだって言われました。」

「ひどくなるようなら…………」



「え?なに?」


聞こえない…


ヘジンさんは何か話しているのに
途中からいきなり聞こえなくなった


不安そうになるヘジンさんの顔。

心配させたらいけないな…


「ちょっと疲れたので、今日はこれで。
僕、ひと眠りしますね?」

笑顔で、だけど一方的に話をして
僕はヘジンさんを追い返した。



僕の耳は聞こえない…


テーブルを指でノックしてみたけど、
その音も聞こえない。


どうしたんだろう、僕の耳…



急に不安になった。

叔父にはひとりで生きていくって宣言したばかり。

そんな矢先にこれじゃ困る…




ユノさん…

こういう困った時に、思い浮かぶユノさんの顔。


そんなふうに頼ってばかりだから
いけなかったのに…



[俺を解放してくれ、チャンミナ]



あの言葉が今でも僕の耳に焼き付いている


苦しそうだったユノさん
僕は知らない間にユノさんを追い詰めていた


でも…ユノさん…助けて…

声に出しちゃいけない僕の叫び



それでもひと眠りしたら、耳は聞こえるようになっていた。
なんだったのだろう

三半器官が悪いのかもしれない。

ひどくなったら、もう一度診てもらおう。


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ひだまりの匂い(36)

〜〜ユノside〜〜



暖かくなって、すっかり春だ。

チキン屋は繁盛しすぎて、毎日長蛇の列。

常連さん、というのもできた。


いつもの女子高生4人組。

とにかく、すげぇ食べる
その食べっぷりは気持ちがいい


「オッパ〜♫チキンくださいっ!」

「おぅ!今日も食欲旺盛だな!
若いんだから、腹減るよな」

「あたしたち、チキンだけ食べに来てるわけじゃ
ないんだよぉー!」

「じゃなんだ?」

「この恋心も満たしてもらおうと思って」

「テミナか?あいつは止めといたほうがいいぞ
小悪魔だから」

「私たちはオッパのファンなのぉー!
気づかなかったの?」

「そりゃ嬉しいな。じゃチキンおまけしてやる」

「ねぇーオッパ」

「ん?」

「あたし達と1度カラオケ行かない?」

「カラオケかー全然行ってないなぁ」

「じゃ行こうよ!ねっ?!」

「ダメダメ。女子高生連れてカラオケなんて
逮捕されんだろ」

「私服になったら、アタシたち大人なんだよっ!」

「わかった、わかった!オトナだよな?」

「もう!全然相手にしてくんないし!」

「あと5年たったら、俺とつきあってよ」


「オッパはどんはタイプが好きなの?」

「俺の好きなタイプ?」



こういう時、いまだにチャンミンの顔が浮かぶ


「儚くて、可憐な感じ…かな」



「あーー!そういうのってね
性悪が多いんだよ。顔は清純でね…」


一瞬にして女子高生たちが黙った


彼女たちの後ろから

これまた常連の女子高生がひとり現れたからだ。



「オッパ、こんにちは」

「おぅ」



この常連さん、とにかく、すげぇ可愛い。

このまま芸能人としてすぐテレビや映画に出れそうだ。


透き通る白い肌に、肩にかかる艶やかな髪。

大きな茶色の瞳を長い睫毛が縁取る。

小さく整った鼻筋から桜色の唇
少しポテッとしたそれが意外にも官能的だ。

微笑むとそこだけ花が咲いたようだ。


「オッパ、今日はバジルのチキンを頼んでみようかな?」

にっこりと微笑まれると、可愛すぎて心臓がドキドキしてくる。

「バジルな?オッケー」


「あたしたち、帰るね?」

いつもの4人組はこの可愛いコが来ると面白くなさそうに帰ってしまう。

制服を見ると同じ高校なのに
仲が悪いんだろうか

「ほら、女子高生、ひとつオマケしてやったよ」

「私はそんなに食べれないですよ」
クスクスと笑う姿が、どうにかなりそうに可愛い。

「そうなのか?女子高生ってのは
たくさん食べるもんだと思ってたけど違うのか」

「それにね、オッパ」

「なんだ?」

「私の名前は女子高生じゃなくて、ナレっていいます」


ナレは蕾がほころぶように微笑んだ



〜〜ミンスside〜〜





叔父さんに土下座をするチャンミンが可哀想なくらい震えている


結婚式場決めなどを迫られ
いよいよ逃げきれなくなったチャンミンは
私と一緒に叔父さんへの弁明に来ていた


「自分が何を言ってるのか、わかってるのか」

「あ…は、はい…あの…ほんとに…ごめんなさい」

「ごめんなさいとはなんだ!そんな言葉で事が済むと思ってるのかっ!」


叔父さんはチャンミンの胸倉を掴みあげた


「おじさん!おねがいやめて!」


「ミンスちゃん、こんなんで、申し訳ない
頼りなさすぎるだろうが…」

「おじさん、私の意志でもあるのよ」

「ミンス、いいから」

「そんなわけないだろうが!
チャンミンはミンスに何を言わせるんだ!」


「やめろっ!!」


チャンミンが、叔父さんの手を振りほどいた



叔父さんは呆気にとられて、チャンミンを見つめてる


チャンミンのこんな姿、初めて見た…


叔父さんに対して、強い態度に出るチャンミンなんて…


「ご、ごめんなさい…」
我に返ったチャンミンがまた頭を下げる


叔父さんは動かない


「感謝…してます…
叔父さんがいなかったら、僕はここまで生きてこれなかった。

でも、結婚とか、そういうのは
そこまで決められるのは…やっぱりイヤなんです」


「………」


「そんなこと…言えた義理じゃないんですけど…」



「勝手にしろ…
そこまで言うなら、お前はひとりで生きられるんだろう。
動物病院に入ってる業者だってな、
あんな金額で納めてもらってるのは
私が口を利いてやってるからだ。」



「僕の大学卒業もそうだった?」


「あ?」

「単位も教授に口きいてくれましたか?」


「だったらなんだ?デキが悪いおまえは
あのままじゃ卒業なんてできなかったんだ」


「…………」


「おじさん、だからってチャンミンを縛っちゃダメでしょ」



「こいつがな…こいつがウソつかなきゃ、あの時、みんなで来ることになれば、車じゃなくて、電車で来ようって話になったんだよ」


「おじさん!それ言っちゃだめよ!」

「そうしたら、事故なんか…」

「おじさん!」



チャンミンは項垂れたまま、膝に押し付けた握りこぶしを震わせている


可哀想で見ていられない



「チャンミンも辛かっただろうけれど
私だってな、いっぺんに両親と弟、姪や甥を亡くしたんだ…」


「わかってます…」


「チャンミンのせいじゃないよ
自分を責めちゃダメよ!」

「…………」

「おじさん!チャンミンだって、あの頃、みんなに責められて傷ついて、もう十分苦しんでるの。
いまだにその傷が癒えてないのよ!」




「だろうな…
私もチャンミンが悪いんじゃないってわかってる…
私が面倒みることが供養だと思ってるんだ。
一人前にして、結婚させて…それが…」


「みんながツライの。
だから、誰かを責めたりしないで、
慰めあって生きていってよ、ね?」



「僕が…ひとりできちんと生きていけることが
きっと供養になるし…
叔父さんも…納得するでしょう?」


「…………」



「1人でがんばってみます。誰にも頼らずに…
叔父さんにはこれまで本当にお世話になりました。

いろんな思いがあったでしょうに…

それでもここまで本当に…
ありがとうございました」



「大変だぞ…どこまでできるか…」



「チャンミン。がんばろ?
私、これからも友達としてそばにいるよ」


「ミンスは…誰かいい人見つけて早く結婚しなさい。私たちに関わらず」

叔父さんに薄っすらと笑顔が戻った。


いや、叔父さんの笑顔なんて、初めて見たかも。


「もう、私は何も手伝わない…
お前の土地の税金も私が払うのは打ち切るぞ?
大丈夫か?」

「大丈夫です…」


「だったら、やってみたらいい
そんなチャンミンみたら、爺さん、喜ぶぞ」


「はい…ありがとうございます」



叔父さんの家からの帰り道、チャンミンは晴れ晴れとした顔をしていた。


「チャンミン」

「なに?」

「もっと早く、叔父さんにこう言えたらさ
ユノさんと別れなくてすんだんじゃないの?」


「ユノさんと別れたから、
少しだけ、強くなれた気がするよ…」

「そうなの?」

「ユノさんは大きくて優しいから
僕は頼っちゃって…なんでもしてくれるってさ
僕のことはなんでも許してもらえるって」


私はずっとチャンミンが好きだった

優しくて穏やかで

自分を主張しないところが弱いと見られちゃうこともあるけれど

何事もまわりのせいにしないで

自分で全部受け止めてる


なんでユノさんはそこがわからなかったのかな

私は少しだけ、ユノさんに怒りを覚えた

それは裏返せば、嫉妬なんだろうけれど




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ひだまりの匂い(35)

〜〜チャンミンside〜〜








僕は部屋を暖めて、コーヒーを淹れた。

朝になるまで、2人で黙ったまま、なにもせずにいた。


何かが変わるかもしれない…

時間がたつにつれ、その期待はしないほうがいいのだと、僕は諦めた…


ユノさんが僕から離れて行くということが
現実の事としてじわじわと僕に迫ってきた



僕は焦った…

ユノさんは本気だ…

どうしよう…



朝日がこのダイニングに差し込む頃には
結局飲まなかったコーヒーが冷たくなっていた。


ユノさんは何かを決意したように立ち上がると
荷物をまとめ出した。


中くらいのボストンバッグとミィのゲージ


ゲージの中からミィが鳴いている声が聞こえる。


僕はそっとユノさんに近づくとその足元に座り込んだ

ユノさんは一瞬身構えた。

僕はそんなユノさんに気づかないふりをして
座ってゲージの中を覗いてみる



「ミィ…さようなら…元気でね」


ミィはその黒くてつぶらな瞳でジッと僕を見る


さようなら


誰もが僕の元を離れていく
僕はなにも変わらずここにいるだけなのに


誰とも付き合わなければ
こんな思いをすることもない


誰かが僕を傷つけることもない



ユノさんが、僕の顔をジッと見る


「チャンミン…」


「なんですか?」

できるだけ笑顔で…


「ごめんな…」


「いいんですよ。
今まで、本当にありがとうございました。」

最後は笑顔で…



「チャンミン…」


「ユノさんから別れるのに
そんな未練がましい顔しないでください」

僕は笑った


そうして…僕たちは別れた



誰もいなくなったダイニングで
ひとりでお茶を飲んだ


そういえば、患者さんはこの何日か
誰も来ていないな




「最近、強くストレスを感じることがありました?」

僕は近所の内科に来ていた。

「はい、ありました…」

「たぶんストレスによる頭痛と目眩でしょう
他に何か強い症状はないですか?」

「他は思い当たりません」


ストレスか…


ユノさんは僕にとってストレスだったのかな?


フフフ…

笑いがこみ上げてきた


笑いと同時に涙がとめどなく溢れてきた…


これから僕が帰るのは

ユノさんのいないあの家


この毎日がずっと続くんだ…


これからもずっと


内科からの帰り道、
僕は泣いたり笑ったりしながら
ゆっくりと帰った



〜〜ユノside〜〜



「ふぅ〜ん、別れちゃったんだ」

「なんだよ、テミナはユノに戻ってきて欲しがってたじゃねぇか」

「そうだけどさ、ヒョンが血だらけだった時の先生思い出すとさ」

「俺たち、怒鳴られたよな?車くらいあるでしょ?!って」

「ヒチョリヒョンもテキパキ指示されてさ」

「ああ、ガーゼを切れとか、湯を沸かせとか」

「………」



「ま、別れるにしても、おめぇも感謝しねぇとな、先生のおかげで足洗えたのは確かなんだからよ」


「あー言ってないな、感謝とか」


「だからって、理由つけていちいち戻るなよ。
もう会いに行くな。フったのはおめぇなんだからさ」


わかってる


チャンミンを守りきれなかった小さい俺。


もう惑わせたらいけない…




俺のチキン屋はまず公園に停めたバンから始まった。

たまに可愛いテミナが手伝ってくれることもあって
客足は上々

とにかく、女の客が多い
9割は女だ


俺はヒチョリヒョンの指示で
Tシャツにジーンズ、スニーカー
それにエプロンというスタイルで
ヒョンが言うところの「さわやか」なイメージ。


ある時、ランチ時の忙しさがひと段落したとき

公園の木の根元に
この場所とはまったく合わない輩が数名ひしめき合っていた。


元弟分達だった

俺をボコボコにした奴ら



しょうがねぇなぁ


俺はくすぐったいけれど、嬉しくて
悪態をついた


「帰れよ!おめぇら!営業妨害だ!」

俺の大声が合図になったように
みんなバンまで走り寄ってきた


「ヒョン!お久しぶりっす!」
「元気そうでよかった」

中には涙ぐむヤツもいた


「ほんと、マジ俺たち…」

「わかってるよ、もう何も言うな」

「いや、でも悩んだんです
命令だからって、やりたくなかった」


「したくないことだって
状況によっちゃ、やんなきゃなんないこともあるだろ…」


あれ…?



「ほんと申し訳ないっす」


したくない事もしなきゃなんなかった


こいつらも…そしてチャンミンも?


一瞬そんな考えが頭をよぎった


いや、違う


ふと浮かんだそんな考えを振り切った


「お前ら、今日はおごりだ。
好きなチキン持ってけよ、必ず宣伝すんだぞ!」



たまにふとチャンミンの顔が浮かぶ

俺から別れたからって
あんなに好きだったんだ

落ち着くまではしばらくかかるな…




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ひだまりの匂い(34)

〜〜チャンミンside〜〜




ユノさんはまた僕を抱いてくれるようになった


もう婚約の事も何も言わなくなって
僕たちには穏やかな時間が戻ってきた


昼間はチキン屋の準備で忙しいだろうに
毎晩優しく愛してくれて

幸せだった…


ある晩、僕は頭痛で目が覚めた


ふと横を見るとユノさんがいない。
広いベッドの上には僕ひとり。


ユノさんはトイレかな?


僕は痛み止めを飲まないと、この頭痛が治りそうになくて、キッチンへ行った。


キッチンにはほのかに灯りがついている。


ユノさん?


そっとキッチンを覗くと

ユノさんはダイニングテーブルに頬杖をつき、
スマホの画面をじっと見つめていた。


広くがっしりとした背中が少し傾き、
頬杖をついた手に、その小さな頭を乗せていた。


後ろから覗くと

その画面には、僕の笑顔がひろがっている


僕の画像を見つめているユノさん

なんだかくすぐったいような
変な気分。



「ユノさん?」


スマホの画面からスッと視線をはずし
こちらを振り向くユノさん。

「どうした?」


あれ?鼻声?


「うん、頭が痛くて、今薬をね…」

「そうか…おいで」

「え?」

「こっちへおいで」


ユノさんが大きく手をひろげて僕を呼ぶ。


ユノさんは僕の手をとり引き寄せ、僕を膝に乗せた。


「なんか、子供みたい…フフフ」


ユノさんは後ろから、膝の上に座る僕を抱きしめた。

そしてその大きな手で僕の頭を撫でてくれる。


「頭痛いのか?」

「うん、でもユノさんに撫でてもらったから
少し良くなりました。」

「医者行ってこい、な?」

「はい」

「最近、めまいとか頭痛とか、お前多いだろ?」

「そうだね。明日予約して、医者に行ってきます」


「素直でいい子だ」

「フフフ…そうですか?」

「俺のチャンミナは素直でいい子だ」




「ユノ…さん?」

「なんだ?」



「泣いてる…の?」


ユノさんは少し鼻をすすって 僕を見上げた




「………さよならだ、チャンミナ」



「な…に…?」



さよなら?



「別れよう」



「…なに….言ってるんですか」



「結婚して…幸せになれ」


「ユノさん…まだその話を…」

「…これからの話だろ」


「籍はいれても、僕はこのままですよ?
別れる必要ないです」


「………」


「さよならなんて…言わないで…」


「………」


「僕、どうしたらいい?」


「………」


「どうしたら、ユノさん離れないでいてくれるの?」


僕はユノさんの膝の上で、ユノさんと向かい合った



「俺を………解放してくれ、チャンミナ」


解放?


随分と…ひどい言い方だね?



「僕がイヤなの?」


「俺なりに頑張ったけど、もう無理だ」


解放してくれ……その言葉がショックだった



「今まで…無理して抱いてたの?」


「そうじゃないけど…
これ以上一緒にいたら、俺、すげぇイヤなヤツになる」



そうか…



「自分がキライなのは…よくないね…」

「チャンミン…」


「僕は弱虫でズルいから…そんな僕と付き合ってることが許せないんでしょう?」


「そうじゃない…お前の全部を引き受けられない自分がイヤなんだ」



「僕から逃げるんですね」



「え………」



「わかりました」



ユノさんも…僕から逃げていく…


こんなこと、はじめてじゃないから大丈夫



家族みんな、一瞬にして僕から離れていって…


あの夜一緒にいた友達たちも
なにやら気まずくて…みんな僕から離れていった


ソンモさんも、僕が僕だけを見てくれることを望んだら離れていった


病院の患者さんたちも、駅前にいいクリニックができたら離れていった


みんな離れていく


親戚やミンスも、僕が自分の意志を伝えたら
離れていくんだろうな


こうしてユノさんも、僕のことがイヤになって
離れていく…


ユノさんだけは、僕がどんなヒドイ人間でも


離れないで側にいてくれると思っていた


ユノさんが良くない仕事をしていても
面と向かってやめて、と言えなかった


だって離れていったら、イヤだから


でも、僕の気持ちを察してやめてくれた。


ユノさんだけは唯一絶対と信じていた

でも…そうじゃなかった



ユノさんもみんなと同じだ



みんな、みんな離れていけばいいんだ


僕はひとりで大丈夫だから


「いいですよ。別れましょう」



「チャンミン…ごめん」


「いいんですよ…大丈夫だから」



なぜだか泣き虫な僕は
こんな状況なのに、涙がでなかった



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ひだまりの匂い(33)

〜〜ユノside〜〜


法事の席は俺とチャンミンとは離れていた。


俺の隣にはショッピングモールであったあの男、
ソンモとかいうエリート野郎。

やたらと話しかけてきてウザイ

俺はそれどころではなくて
チャンミンがいつ婚約破棄を宣言するのかドキドキしていた。


チャンミンがそれを言ったら
俺はすぐに助け舟を出しに行くつもりだった。

こんな場で、婚約破棄なんてきっと大騒ぎだ。
チャンミンひとりに背負わせるわけにはいかない

だからいつでも出ていけるように
覚悟していた。


「そんな態度をされるってことは
私とチャンミンのことでいろいろ勘繰っているのでしょうけど」

ソンモの明らかな挑発

「は?なんの話?」

「ユンホさんの想像通りですから」

「想像通りとは?」

「気が向くと寝るっていう仲でした」

「………」

「いいでしょ?チャンミン。最高ですよね、わかります」



腸が煮えくり返るって、よくヒチョリヒョンが言うけれど
こういう感情のことか…


殴りそうになる手を必死で抑え
握り拳を震わせていた
ヤツの顔が視界に入らないようにして耐えた。

今はチャンミンを助けることに集中しよう



「皆様、よろしくお願いいたします」


ふとチャンミンの声がした


なに?

なにがよろしくだって?チャンミン


チャンミンを見ると、皆に拍手をされてお辞儀をしている。
その隣にはにこやかに微笑むミンス。


俺はもうソンモが何を言っても耳に入らず


とりあえず、この場を立ち去ることしか
考えられなかった


今はチャンミンにも
正直会いたくなかった


それは嫌いになったからではなくて
嫌いになりたくないからだ。



帰りの電車は行きとはまったく雰囲気の違うものになった。


「ユノさん、こういうのはイヤかもしれないけど、
僕がカタチだけミンスと結婚しても
今のままで上手くやれると思うんです。」


チャンミン…何を言ってるんだよ


「上手くやれる?」


「僕たちは変わらないってことです」


「言ってることがよくわかんねぇ」

「僕は、やっぱり叔父には義理もあって
今更、迷惑かけることはできそうにないです」

「じゃあ、このままミンスと結婚して
一緒に住んでいい家庭を築けよ」

「だって、僕はユノさんが…」

「お前はなんにもわかってない。
叔父さんに迷惑かけたくないんじゃなくて、
自分が非難されたり、傷ついたりしたくないんだろ?
そのために、俺やミンスは傷ついたっていいって事かよ?」

「僕を愛してたら
僕のそんな事情も丸ごと引き受けてくれても
いいでしょ?!
僕、困ってるんですよ?
僕が困っててもなんとも思わないの?」


「なんとも思わないね
俺はそこまでお前を愛してない」



すべてがそこで止まった



観光帰りの乗客でごった返す電車の中、
俺とチャンミンの、静かながらどうしようもない言い合いには誰も気付かなかった。


そんな喧騒も、俺もチャンミンも、俺たちの愛も

すべて止まった


売り言葉に、買い言葉だった…



隣に座るチャンミンの
白く透けるような肌が青ざめている

そのフワフワとした柔らかいクセ毛だけが
止まった時の中で静かに揺れていた


俺を見つめる大きな瞳と
それを縁取る長い睫毛

甘えたような唇


可愛い…なんて可愛いんだ…


笑うともっと可愛くなることを
俺はよく知っている


愛してないなんて…俺はよく言うよ



突然、チャンミンへの愛情が溢れるほど湧いてきて

自分でもどうしたのかと
ここ最近の冷めっぷりはなんだったのかと思うほどに

突然、愛おしくてたまらなくなった


全部ひっくるめて、愛してやればいいじゃないか

俺が全部引き受けてやればいいんだ


そんな気になって

思わず俺の手が動いた
チャンミンに触れようとして


「僕たちは元々合わないですからね」

その一言に、俺の手が止まった


その冷め切った表情は
さっきの可愛いチャンミンなのか?

「僕はユノさんとは違う
そんな真っ直ぐには生きられないです
だって僕は…」

そこまで言うと、チャンミンはぐっと唇を噛み締めた。

俺はその次のチャンミンの言葉を待った

だって僕は…なんだ?

それによっちゃ

俺はこのたくさんの人の中で
お前を抱きしめてくちづけるかもしれない


「ソンモさん、隣だったでしょ?今日」

「え?ソンモ?ああ…」

意外な言葉が出て…

「聞いたでしょうけど、付き合ってたんです。
ソンモさん、僕の婚約してる事実を受け止めてくれたのに、
僕が彼の結婚してるってことを
受け止めてあげられなかったんです。」

「それ以上言うな。」


それ以上言ったら、俺たちはおしまいだ


「僕は…ユノさんを受け止めたつもりです。
デートクラブだって受け止めて、それでもユノさんを愛してる…でも」

「わかった。俺が悪い」

「ユノさん…」

「頼むから…頼むから、それ以上言わないでくれ」

「あ、僕…」

「黙れ」

「ユノさん…」

泣きそうに震えるチャンミンの声…

今は俺も泣きそうなんだ

チャンミンを愛したいのに


愛させてくれ…頼むから


俺は両手で頭を抱えた

「ユノさん…大丈夫ですか?」


チャンミンは何もわかってない

悪気はないんだ

悪いのは俺ってことで、それでいい



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ひだまりの匂い(32)

〜〜チャンミンside〜〜



ユノさんにバレてまずかったのは


ミンスのことではなくて

僕のズルい生き方だった。


昔から言われてた


彼氏との関係が冷めても
僕からは別れを言わない

相手から言うように仕向ける


だって、悪者になりたくなかったし


自分で始末をつけなくても、
知らないふりしてれば、誰かがやってくれる


それが、僕だった



それでも

僕の家族の法事には
ユノさんも行ってくれることになった。


電車の中では、一緒に美味しいお弁当を食べたり
窓の外を流れる田園風景を楽しんだりして過ごした


それはとても幸せな時間で



確実に冷め行く、ユノさんの僕に対する気持ち。
手に取るようにそれがわかって
この数日はどうしていいかわからず悩んでいた



ユノさんの眩しい笑顔を久しぶりに見た


ユノさんは法事ということもあって
黒いスーツを着ている。


その逞しい大きな肩は
幅も厚みもしっかりとあって

それが細い腰から長い脚に繋がり


まるでスーツを着こなすための身体
そう思わせるほど、よく似合っていた


「安物だぜ?」

あなたはそう言うけれど
それがなに?


上質な生地やしっかりした仕立てなんて
自分に自信のない輩が、己をワンランク上に見せるための助けでしかない。


そんなものを必要としない
ユノさんだけが発する光


それがすべてだった




出迎えた叔父は、ユノさんを一瞥すると
呆れたように僕をみた。


ユノさんの男前ぶりに、すべてを察したのだろう

その目は「今度はこいつか?」と言っていた
だからいきなり機嫌が悪い


僕はいたたまれず俯いてしまい
なんとか挨拶するのがやっとで

ユノさんを紹介することもできず


「はじめまして。チョン・ユンホです」

ユノさんに自分から挨拶をさせてしまった


本当に昔からこの叔父が苦手だ

悪い人じゃないんだ、と
父さんも母さんも言ってたけど

アドバイスという名の支配

本家の長男ということで
どうしてそこまで管理するのかわからないけど

そのガマガエルのような風貌も相まって
ただの脅威でしかない


「誰なんだ?この男は」

「あ、僕の…」

「お前の?」

「あ、えっと…」

「一緒に暮らしてます」


叔父を真っ直ぐ正面から見据えて
ユノさんが少し大きな声で言った。



「ふん、男の恋人か?」

「そうです。」

「ち、違います!」


いたたまれなくて…思い切り否定した僕。

こんな最初っから、迎撃することないじゃないか。
ユノさんは何を考えてるんだ


ユノさんはその真っ直ぐで強い視線を
そのまま僕に向ける


ユノさんの顔を見ることはできなかった


「ふん」

叔父は腕組みをして、
一呼吸おくと、突然怒鳴った


「法事はもう始まっとるんだぞ
こんな時に遅れるヤツがあるか!
遠足気分でバカたれが!」


「ごめんなさい」
「すみませんでした」

俯いてボソッと謝る僕と
毅然と頭を下げるユノさん


僕たちに背を向けて歩き出す叔父に
トボトボとついていきながら

僕はユノさんを睨んで小声で言った

「話すのには順番ってものがあるでしょう?」

ユノさんは僕に答えず、真っ直ぐ前を見据えて
歩いている。


先が思いやられる…


法事の場所に行くと
総勢何十人なんだ?というたくさんの人、人

それぞれの親戚の大事な他人というのも来ていて
ユノさんもそのひとり。

ミンスやソンモさんも血縁ではないけれど
この場所にいた。

一通りの儀式を終えた。

僕は僕の家族の法事だというのに
その想いに浸る余裕はなく

とにかく叔父がみんなの前で怒鳴らないように
ユノさんが地雷を踏まないように

その心配で頭はいっぱいだった。


会食の時間になると
色とりどりの料理が並ぶ中、


僕は血縁席、ユノさんは来賓席と別れた


僕はもうユノさんが変な行動をするんじゃないかって気になって仕方ない。
料理どころではなかった


ユノさんはソンモさんの隣になっていて
僕のストレスは最高レベルに達した

ユノさんを連れてこなければよかった。


しばらくすると、叔父が席を立ち
みんなに注目させるように大きく手を叩いた


「我が弟一家が不慮の事故死を遂げて10年。
ここに来て私共も、新たな一歩を踏み出すべく
みなさんにご報告申し上げたいことがございます」


終わった…


僕の婚約発表だ…


ここで叔父への反旗を翻すなんて
僕にはやっぱり無理なことだった。


「わが弟の忘れ形見、シム・チャンミンと
我が恩師キム・ソジュン氏のお孫さま、キム・ミンス嬢がようやく結婚することとなりました。

チャンミンとミンス、前に出て挨拶しなさい」


ミンスが来賓席から出てきた。


僕のとなりに並んだミンスはにこやかに挨拶する
「未熟な私達ですが、よろしくお願いいたします」

「あの…………」

僕は結婚するつもりはないんです
キム家には申し訳ないんですけど


言えない…

だって、みんながどんな顔をするか


ユノさんは真っ直ぐ前を見据えたままだ


思ったより人が多く、こんな状況で
僕が婚約破棄なんて言えるはずない。
さすがのユノさんもそこはわかってくれるはず。


とりあえず、ここは仕方ないよね


「皆様、よろしくお願いいたします」

僕が言えたのはこの一言だけ。


婚約破棄とか…どう考えたって言えるわけがない


ユノさんが初めて僕を見た


ユノさん…………


遠くからでもわかる美しい切れ長の黒い瞳。
そっと微笑む唇に相反して

その瞳にはあきらめと軽蔑と怒り



僕は何もできずに、宴を終えた。


席がお開きになると、
ユノさんはさっさと席を立ち
何か話しかけるソンモさんを無視して会場から出た


僕はそれを追って、急いで会場を出る


ミンスが話しかけてきたし

この場面を叔父がみたらどうしようかと
ひどく気になった



駅でやっとユノさんに追いついた。

「ユノさん!」


ユノさんは振り向かずに立ち止まった


「ごめんなさい!
あの状況じゃ、僕ちょっと言えなくて。
でも必ずきちんとします。
せっかく来てくれたのに、ごめんなさい」

「いいよ、うん」

ユノさんは優しく微笑んでくれたけど
張り付いたようなその笑顔を見て


僕は急に怖くなった


まずい…………

ユノさんを失う…

今初めて事の重大さに気づいた



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ひだまりの匂い(31)

〜〜ユノside〜〜



チャンミンが、今までとは違ってみえた。


ただひたすら可愛く、純粋だと思って溺愛していたチャンミンが


俺に隠し事をしていた…


婚約していたことを黙っていたのが
イヤなんじゃない


むしろ、相手がいるのに俺を愛して苦しんでいて
それを誰にも言えずにいた、

そんなのだったら

俺は迷わず奪う




だけど…

親戚に押し付けられた婚約をその気もないのに引き受けて
その場ではいい顔をして、影でうまくやっていたチャンミン


表向きは素直にみえて
裏で上手くやる

俺はそういうしたたかな人間が大嫌いだった。



チャンミンがきれいで儚いほど
その天使のような笑顔が、媚びて見えてくる



そうじゃないんだ、と

チャンミンには事情があったし
叔父さんに対して義理もあった


そう考えようと努力した


チャンミンは何も悪くない

その言葉をずっと繰り返し唱えていた


チャンミンとは離れられない
愛してるんだ…


でもそんな思いは次第に


愛してる、という思いが、愛さないといけない


そんな風に変わっていった


チャンミンが俺にしてくれた、様々なことを考えて
思いとどまろうとした。


チャンミンはそんな俺の心の変化を
わかっているようで


俺の様子を伺うような素振りが多くなった

それがまた…
俺をイラつかせた



俺は自分の感情が冷め行くのを止めることができなかった。


でも、今まで経験したことのないようなこの恋。
失いたくないのも、また本当の気持ちだった。



俺なりに努力して


脚のギブスはとれ、普通に生活ができるようになり

それもこれもチャンミンのおかげなんだと
自分に言い聞かせて。


「本当はリハビリをしなくちゃいけないんですけど
間違った方法だと逆効果だから、どうしようかな」


専門書を読みながら、ひとりブツブツと言っている


医者らしい振る舞いをしているチャンミンを見ると
ホッとした。

あと、ミィを面倒みるチャンミンも好きだった


そこにはなんの計算もないようで
ひたむきで可愛くて純粋で


でも、あの日から
あのミンスっていう子が来た日から


俺はチャンミンを抱いてない


チャンミンも俺にそれをせがまなかった


今の俺には、正面からぶつかって来ないチャンミンがズルく見えてしかたない


俺はチキン屋の準備に没頭して
気持ちを切り替えようとしていた


でも、心に重く頭をもたげる黒い感情を
取り去るには不十分だった



こんな悶々としていてはダメだ。


俺は自分の気持ちを、チャンミンに対してどう感じているかを

正直にチャンミンに言った。



陽のあたる午後、
春を思わせる光がこの大きなダイニングテーブルにあたって
古い木肌を温めていた。



チャンミンはまっすぐに椅子に座り

俺の話を俯いたまま、聞いていた。


「だけど、特にどうしようとは俺は思ってない。
勝手な言い分だけど。
でも、この気持ちを正直に言わないといけないと思った。」


「わかります…ユノさんの言っていること」


「そうか?」


「僕はずるい人間です。
今まで、そうやって生きてきました。」

「チャンミン…」


「獣医になったのも、じいちゃんへの罪滅ぼしといいながら
結局は叔父が引いてくれたレールだし。

実は卒業できたのも、ある程度口利きがあったのかな、とも思います。

それらのこと、全部
僕は気づかないフリをして

ミンスの心にもまったく気付かなかったのか?
と問われたら、自信がない」



「………」


「僕も、そういう自分がイヤだと思うことも多かったけど」


「そうなのか…」



「でも、これだけは確かなんです

僕はユノさんが好きです。愛してる。
離れたくない

抱いてくれなくてもいいです。
側にいさせてくれるだけで、それで十分。」



俺は胸がぎゅーっと苦しくなった


「俺、何様なんだろな
こんなこと、チャンミンに言って…

バカだよな」





「ユノさん…僕を愛してますか?」


「………」


即答できなかった

なんでだ


「僕を愛せないって、嘘つかないところが
ほんとうにユノさんらしい」


「愛せないんじゃない…そうじゃない…」




うつむくチャンミンのテーブルに涙の水たまりができていた。




愛してるのに受け入れられない
惚れているのに好きになれない


ガッチガチな俺の欠点をも
受け入れてくれるチャンミンなのに


「わかった。もう泣くな
俺がチャンミンと別れられる訳ないだろ?」


「ユノさん…」


「信じてるよ…お前は俺には正直だって、そう信じてる…」


「ユノさんも…法事に来てくれませんか?
僕がみんなに紹介します。ね?」


「無理するなよ…」



「無理なんかしてません。
だって僕は結婚なんかするつもりないんだし
ユノさんとずっと一緒にいたいんです」



「…………」



「僕がもう少しきちんとできたら
堂々と正直でいられたら、
ユノさんはまた、僕を愛してくれる?」



チャンミンの瞳は必死だった


「愛してることはかわらないよ」


あまりのチャンミンの悲壮感に、
俺は自分の気持ちを話した事を後悔した



かわいそうな事をしてしまった

だんだん冷めてきてる、なんて
相手から言われてどうしろって言うんだよな


俺は、チャンミンと一緒に法事に行くことにした


何か変わるような気もして。
離れたくない気持ちは本当なんだから。



法事の場所はチャンミンの叔父さんの家。

ここから電車で2時間くらいかかる。


極力泊まりたくない、ということで
朝早く出かけて、日帰りで帰ってくる予定だ。



その日の朝、チャンミンは頭痛がして、
薬を飲んで治るのを待ったりしていたら

出かけるのがかなり遅くなってしまった


「大丈夫か?なんだろな。疲れ?」

「ストレスですよ、きっと」

「そんなに緊張する相手なんだ、叔父さんて」

「僕にとってはね。小さい頃から。
とにかく威圧的で」

「俺、ケンカになったらどうしよ」

「なりませんよ。フフ…ほんとにコワイから」


俺は初めてチャンミンと遠出をするっていうことで
テンションがあがっていた。


電車に乗って、弁当を食べたりして


よく笑うチャンミンが可愛かった


俺はチャンミンを愛する気持ちがどんどん戻っていくようで、ホッとした。


こんな可愛いヤツを、どこが計算高いとか
ズルいとか思っていたんだろう


「チャンミン、もしかしたら俺たちさ、
もっといろいろ楽しんだらいいのかもな」


「楽しむ?」

「こうやって遠くに行ったりさ」

「僕はそうしたいです
ユノさんといろんなところへ行ったりしたい」


チャンミンを受け入れられない、
そう思っていた自分が今はウソみたいだ


駅に着いた。


のどかな田園風景がひろがる気持ちの良い場所だ。


俺は大きく伸びをして

改札から出ると


目の前にガマガエルのような
大きな人間が現れて、驚いた


「あ、叔父さん…おひさしぶりです…」


この人がチャンミンの叔父さんか…


ホントにコワイ…………



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ひだまりの匂い(30)

〜〜チャンミンside〜〜



「婚約者といっても、お互いそんな気はなくて
親戚の間で、とりあえずそういう話になっているだけなんです」


「婚約者って結婚の約束をしてるんじゃないのか?」

「親戚の間では…」

「前置きはいい!
結婚の約束をしてるのかどうか聞いてるんだ!」



「あ…あの…」



なんて言えばいいのか…


戸惑ってる僕のかわりにミンスが答えた


「そんなに怒鳴らなくてもいいでしょ?
チャンミンの話、最後まで聞いてあげなさいよ」

男勝りのミンスが、ユノさんに食ってかかる

イラついた様子のユノさん


どうしよう



「あの………はい…婚約してます。
それは確かです。
今まで黙っててごめんなさい。でも…」


「信じらんねぇ。すっげぇ騙されてたな、俺」


「違うんです…そこは勘違いしないでください」


「チャンミン、こいつ、あなたの話聞こうとしてない。馬鹿にしてんのよ。
そんなだから、ソンモさんにもいいように扱われちゃうのよ!
しっかりしてよ、チャンミン!」


「ミンス!ソンモさんは関係ないよ」


「まだ誰かいんのか。
この婚約者の他にソンモってやつもいるのか」


「ユノさん…」


もう怒りで僕の話なんてまともに聞いてくれそうにない


ユノさんの目の前のチキンが
どんどん冷めていくように


ユノさんの気持ちも冷めていっているように
思えた。



ユノさんの鋭い視線は

今までのいいかげんな僕を射抜いているようだった。



面倒なことは後回しにして、争いや主張、そんなことから逃げて蓋をしてきた僕の生き方を

鋭く射抜くようだった


ユノさんに僕の言葉が伝わるとは
思えなかった。



でも、でも失いたくない

ユノさんを失いたくない…


それだけは確かなんだ



「ユノさん、僕、ユノさんと離れたくない」



突拍子もないことを言っているのはわかっていた。


「は?」


「ユノさん…ごめんなさい…でも」


「チャンミン、あなたが悪いわけじゃ」
「帰ってミンス」


「え?」


「悪いけど、帰ってくれないか」
僕の声は震えていた


「………」


「ごめん」


「じゃ、伝言だけ。それ伝えに来ただけだから。
来月の法事にね、みんなに婚約発表するから
挨拶考えておくようにってさ」


「そんな…急に…」


「みんなにとっちゃ、長すぎた春って感じだと思うわよ。急な話じゃない。」


「だけど…」


「じゃあ、チャンミンは叔父さんから私のこと聞かれて、今まで否定したことあった?
伝えなきゃ、みんなわからないわよ
何聞かれても、曖昧に返事してきたんだもの」


「…………」



「私はね、本当に結婚してもいいと思ってる」

「ミンス!」



下を向いていたユノさんが、ミンスの言葉に初めてゆっくりと顔をあげた。


その切れ長の瞳は光を失い、醒めたように
僕たちを見据えていた。


「じゃ、帰るわね」



ユノさんのオーダーしてくれた引き戸は
以前ほどの音を立てることなく


ミンスは叩きつけるように閉めて出て行った




僕が起きてきた時とは
180度変わってしまった気まずい空気の中



先に言葉を発したのはユノさんだった





「あの女、いろいろ爆弾落として行きやがって」

ユノさんが腕組みをしてフッと笑う



「びっくりしましたよね?ごめんなさい」



「そりゃな。いきなり俺のチャンミンの婚約者だとかさ」


俺のチャンミン、と言われて泣きそうになった


僕はあなたの、ユノさんだけの僕。


僕は椅子に座るユノさんの後ろから
その太く長い首に抱きついた


「ユノさん、ごめんなさい。
黙ってたわけじゃないんです。
どうでもいいことすぎて、普段忘れていたんです。」


「そんなこと、あるかよ」


ユノさんは首に巻きついた僕の腕をほどきながら
微笑んだ

その目は笑っていない。



「一緒に暮らそうってのにさ。
お前に恥じないように生きようかって時に」


僕は腕を解かれてしまったことが悲しくて


拒否されてしまったことが悲しくて…でも


「…事情があるんだろ
お前が俺を騙したり、そんなことしても
なんの得にもなんねぇしな。」



「僕、家族を亡くして
いろいろと叔父の世話にならなきゃならなくて。

叔父の恩人の娘さんと婚約しろって
それがミンスなんですけど。

叔父は昔から上から押し付けるタイプだったから
反抗するのが面倒くさくて…

その気はないとミンスに打ち明けたら
ミンスも同じで

それから2人で叔父のことはテキトーにあしらっておこうって。」


「あの子は、チャンミンが好きだぜ?
わからなかった?」


「わからなかった…

ユノさんを好きになる前は、
表向きはミンスと結婚して、
お互いそれぞれの生活を楽しむのもいいかな、
と思ったけど」


「それぞれの生活って、お前にとっちゃ
ソンモってやつか。
前にショッピングモールで会ったあの男か。」


違うって言い切れなかった…


「世間的にあの子と結婚して
影であの男とうまくやろうって、そんなとこか」


「でも、それはユノさんと会う前で」


「あー、俺、すごいやだ、そういうの」



「ユノさん」


僕はたまらなくなって
ユノさんの腕に触れた


「僕のことがイヤになりましたか?」


「…………」


「イヤにならないで…」


僕は、今、なんの嘘もつかない
プライドも何もない



「ユノさんと離れたくない

もし、僕のことがイヤになっちゃったなら
また好きになってもらえるようにがんばるから

お願いです

僕と離れるなんて、言わないでください」



ユノさんはひどく困った顔をしていた



「俺もチャンミンとは、離れられない」


「ユノさん…」


「今度、挨拶があるんだろ?
そこではっきりしてこい。

お互いにすっきりきれいになってはじめようぜ?」



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ひだまりの匂い(29)


〜〜チャンミンside〜〜



目覚まし時計が鳴って、僕は半身を起こした

寝心地のいいベッドだな
これ買ってよかった


となりではユノさんがまだ寝ている


僕とユノさんの間にはミィが丸くなって眠っている


幸せな光景だね


これから僕たちはこのままずっとこうやって
幸せに生きていくんだね



頭がクラクラする

昨夜はちょっと…僕は乱れすぎたみたい


ふとユノさんが起きた


「ん?チャンミンどした?」

「んーなんか目眩がします」

「お前、そりゃ目眩もするさ」

「それ以上言わないで」


僕は布団に潜ってしまったけど
そっと覗くと

ニヤニヤしているユノさんが見える


「このまま寝てる?」

「うん…患者さんが来たら起こしてもらえますか?
多分ヘジンさんが今日は来てくれると思うし」

「わかった。じゃ今日は寝てな」

「うん」



誰かと一緒に住むって、いいな。


こうやってちょっと体調悪い時なんか特にね


ずっとずっと1人だったから

この感覚がなんだかくすぐったい




すごくいい匂いがしてきた。


少し目眩も治まってきたから
キッチンへ行ってみようかな


ユノさんは何をしているのだろう



ユノさんはキッチンの椅子に腰掛けて、
綺麗に揚げたチキンをひとつずつ
タレに漬ける作業をしていた。


タレの入ったトレーがいくつかあって
色とりどりで美味しそう


「おぅ、チャンミン、大丈夫か?」

「うん、チキンの試作?」

「ヒチョリヒョンがいろいろ準備しててくれてたらしくてさ、
メニュー決まり次第、いつでも商売できるって。」

「急ピッチですね」

「あの人、新しい商売考えつくと早いんだよ」



「すごく美味しそう〜♫」


「ああ、食べてみて
これはハニーマスタード、こっちは普通のヤンニョム、これはバジルソース」

「結構、オシャレな味付けなんですね?」

「デートクラブで相手した女の子たちに
しっかりリサーチしてたんだよ」

「ふぅーん。あれですか?
チキン屋さん、オープンするのが夢だとか語りましたか?」

「ああ、オープンしたら是非来てって誘っといた。
ヒチョリヒョンのところにも
俺のチキン屋がいつオープンするのか問い合わせあったらしいよ」


「すごいですねぇ。さっすがユノさん」

「なに?その顔ww 面白くない?」

ニヤッと笑うユノさんを横目で睨んだ

「いいんじゃないんですか、別に。
僕、関係ないし」

「怒るなよぉ〜チャンミン」


僕は本当に面白くないから、話を変えた



「患者さんは来ませんでしたか?」

「ああ、ヘジンさんもさっき事務仕事済ませて帰ったよ」


「最近、ぱったりと患者さん来ないんですよ」

「うん、そう思ってた。なんでだ?」

「駅前にペットホテル付きのクリニック出来たから。
ウチは最新設備もないし。みんなそっちへ行っちゃいます」


「そうか…そんなんで、生活大丈夫か?」


「事故の…事故の時の賠償金を切り崩してます」

「あ…」

「でも、底ついてきちゃったから、ぼくもちゃんと働かないとね。
ユノさんのチキン屋さん、お手伝いしようかな?」

「そうだな、それがいい。ずっと一緒にいられるし。
あ、でもやっぱりダメ」

「なんでダメ?」

「お前にファンがつくから」

「フフフ…僕たちお互いにそこが気になって」

「そうなんだよ。ほんとそこ」


そう言うと、ユノさんは僕の後頭部を片手で抱えると突然キスをしてきた。



と、そこへ



「チャンミーン♫おっはよー♫」


いきなりミンスが入ってきた


「ミ、ミンス!」

僕たちはばっと離れた

「キャ!ご、ごめんなさい!」


ミンスはクルッと後ろを向いた


「ミ、ミンス、こっち向いて話してよ、ね?」



ユノさんといえば黙ったまま、目を見開いてミンスを見つめている


えっと…紹介しないとね



あ、でも…なんて紹介したらいいの?


「だれ?」

ユノさんが先に口を開いた


「あ!あの…ミンスといいます!」

ミンスはクルッとこちらを振り向いた




「…チョン・ユンホです」

「えーっと、あの、私はチャンミンの婚約者で」

「ちょっとミンス!!!」

「え?あ、あの、婚約者って言ってもですね、あの…」

「婚約者?」

ユノさんのキレイな顔が歪められる



まずい…


あまりにも、まずい…


ミンスは本当に親友で…
確かに親戚の中では婚約者になってるけれど


お互いにそんなつもりは無さ過ぎて


ユノさんへの罪悪感なんて、まったく感じてなかった。


でも、ユノさんにはきちんと言うべきだった

僕の事情を…

なのに、いきなりこんなカタチで…



「婚約者って…どういうこと?」

ユノさんの瞳が射るように僕を刺す


ついさっきまでの
甘い雰囲気はかき消えてしまった




「あの…あのですね、婚約者って言っても…」

「チャンミンに聞いてる」



ミンスを遮るユノさんの声が…こわい

ユノさんはミンスを見ることはなく、
僕から視線を外さない


どうしよう…


ごまかしは効かない…


ユノさんに嘘つきたくない


でも…


なんて説明したらいいんだろう


仕方ない…



「ユノさん、婚約者のミンスです」



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ひだまりの匂い(28)

〜〜チャンミンside〜〜



庭の物置きから、懐かしい松葉杖を探し出した

母さんとのやりとりを思い出す



[チャンミン、あなた一番長くしてそれ?]

[うん…でもこれじゃ低すぎて腰が痛くなるよ]


体育の授業で脚をケガをした僕は
知り合いから松葉杖をもらったのだけど

その頃から身長185cmを越えそうな勢いの僕にとって
伸縮する松葉杖を最大値にしても
低くて使いづらかった

それをおじいちゃんが上手く固定して
僕に合うように作り直してくれた



「そんな大事な松葉杖を俺が使っていいのか?」

「もちろんですよ!大事なものだから
ユノさんに使ってほしいです」



これでユノさんはベッドから出て、
ある程度は動き回れる


2階への行き来はできないけれど、
1人で外へも出れる。


「脚以外で、まだ痛いところはないですか?」

「ないよ、大丈夫。脚も痛みはないよ」

「それはギブスしてるから。一ヶ月はしてないとダメです」

「もうーーー飽きたよ、この状況!
チャンミンもいないのに、ずっとベッドの上!」

「しかたないじゃないですか。
子供みたいな事言わないでください」

「俺、せっかくお前の誕生日には
カタギになって、って思ったけど
無職じゃ意味なくねぇ?」

「だって、仕事できないでしょ?」


「それなんだけど、俺さ、やっぱりチキン売ろうと思う」

「いいですね!ユノさんのチキン、最高です」

「店は持てないけど、ヒチョリヒョンが
食べ物屋やる資格もってるから、オーナーになってもらって、バン借りて公園かなんかでさ。」

「うわー!なんか、すごくいい!」

「だろ?」

「でも…………」

「なに?ダメ?」


「オフィス街かなにかでやったら儲かりますね。
ユノさんカッコいいから、女子社員の間でウワサになって、きっと長蛇の列ですよ…」

「ヤキモチ?チャンミン」

「知らないです」

「アハハハ!勝手に想像して、勝手にヤキモチってなんだよ、可愛いなぁもう!」

「だって、絶対そうなるもん」


「こっちおいで、キスさせて」


僕は突進して、ユノさんをベッドに押し倒した


「おいおい、まだケガ人なんだぜ?」

「しらないです!」


僕はユノさんに覆いかぶさって
キスでその口を塞いだ


そして、ユノさんの首筋に顔を埋めて
ぎゅっと抱きしめる


「チャンミン、苦しー」

「ユノさん、いい匂いがする」

「汗臭い?」

「ひなたぼっこした後のミィと同じ匂い」

「あーわかる!ミィはひなたぼっこした後
ホコリ臭いよな?
でも、あの匂い、俺大好き」


「フフフ…おひさまの匂いですよ、ひだまりの匂い」


「でも、俺、太陽に当たってないぜ?」

「ほんとですね…なんでだろ」

「ホコリ臭いのか、やっぱり」


「フフフ…太陽にあたってないのに
ひだまりの匂いがするなんて、ユノさんの人柄の匂いですよ、きっと」


「そんなワケあるかよ、
俺はホコリっぽい性格なのか」



ユノさんは僕をぎゅっと抱きしめた



だって、ほんとうに
ユノさんの匂いは、僕をホッとさせる…


もうこのまま眠ってしまいそう…


「チャンミン、寝んのか?」

「寝ないですよー」

そう言いつつ、目をつむってウトウトしてしまう



「なぁチャンミン」

「はい?」

「ベッド買いに行こうぜ、でかいベッド」

「別々の部屋にしなくていいですか?
部屋ならいくつかありますけど」

「寝室は一緒だろ?」

「フフフ…ですよね?」

「高いのは無理だけど、買える範囲でデカイのにしよう」

「はい!」

勢いよく飛び上がったせいか、目眩がして

少し休んでから、松葉杖のユノさんと
買い物に出かけた。


「ベッド以外にも、少し生活雑貨買いましょう」

「金ないからいいよ
ベッドは俺が買いたいし…」

「じゃマグカップは新しいのを僕に買わせて?」

「いいねー!新婚生活だな?」

「ほんとにユノさんて、たまにオヤジっぽいです」

「シャレになんないから、言うな」


ユノさんと2人で買い物なんて
もしかしたら、初めてだね




ショッピングモールはすごい人だった。


「こんな人混みでユノさん松葉杖、大丈夫かな?」

「平気、平気。こんなところ久しぶりだな
テンションあがるぜー」


ユノさんと2人、家具屋さんでベッドを見て回った


「ベッドって結構高いんだな」

「大きいの選ぼうとするからですよ」

「これいいんだけどなぁ
もう少し安くなんないかな」

「やっぱり?!僕もこれいいと思ってたんです」


それはあの古い家に合いそうな
少しダークな木肌のフレーム



「じゃ、布団は今までの使うことにして
今回はベッドだけ買いましょう。
そうしたら、これ買えます」

「うーん、そうだな」


「工場から直送させていただきますので
2週間でお届けできますよ」

「え?!2週間もかかるのか」

「そ、そうですね、急がせても10日はかかりますね」

「この展示してあるのでいいんだけど
これなら今日届けられない?」

「ユノさん、今日じゃなくても…」

「これでいいのですか?
もうかなり展示してあって、木肌の色が変わってますが」

「あ、もしかして、工場から来るのは
新しい木の色なんですか?」

「そうです、新品ですから」

「それなら余計にこの展示の方がいいんですけど」

「でしたら、お値引きいたしますよ。
トラックが空いてるか確認してみますね」


「ユノさん!よかったですね!」

「ああ、とにかく今日届くならよかったな」

「なんですか、それ」

なんだかイヤーな予感


その予感は的中して


運よくその日のうちにベッドは届き


ユノさんは大喜び


大きなベッドだから吊り上げて入れたりと
大変だった



「この部屋、ベッドしかない部屋になっちまったな
ドア開けたら、そのままベッドにダイブだ」


いきなり松葉杖を放り投げて、僕を抱き込み、
ベッドにダイブしたユノさん


すぐに僕はひっくり返され
ユノさんに組み敷かれてしまった


上から僕を真剣に見つめるユノさんの凛々しい顔。
切れ長の瞳から溢れる漆黒の光


彫刻のように整った顔立ちに
なんとも言えない色気が立ち昇り

僕はドキドキした


こんなユノさん、久しぶりかも


脚が気になるけど

今のダイブが大丈夫なら平気かな?

平気だよね?


ゆっくりと降りてくるユノさんの唇を
僕は甘く受け止めて、
そこからはもう2人とも、自分を止めることはできなかった


ユノさんの脚を思い
僕はユノさんに馬乗りになった



僕は、僕のためにここまでしてくれたユノさんへの
言葉にできなかった思いを

存分にぶつけた


ユノさんは僕のその思いに
淫らで甘美な声で応えてくれる



ユノさん…愛してる

ユノさんへの思いが溢れて止まらない



このところ、そんな思いを交わす時間がなかったし

僕は少し乱れすぎてしまったかも…




「チャンミン…」

「………はい」

「今日のチャンミン、すげぇ」

「………」


やっぱり…言われちゃった



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