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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

憧憬(10)

〜〜チャンミンside〜〜


僕はちょっと焦っていた

卒業したら、ヒョンの会社に入りたい。
その時、僕たちが別れているのなら尚更


ヒョンの会社概要を大学で調べてみたら
人気があり、入るのが難しい会社だった。

シム家の人間だからって、コネ入社なんかイヤだし。
それじゃ意味がない。

実力をヒョンに認めてもらって
秘書室で働かせてもらいたい。

インターンシップでまずは正面から入りたいし
そのためには実力をつけなきゃ

僕は今まで大学は遊び友達を見つけるところだと
思っていたけど。

目標ができた今、
別の意味で大学へ行くのが楽しくなってきた。


焦っていた、というか…
ヒョンと別れてしまうということを
忘れたかったし

離れるのはイヤだと
素直に言えない僕は…

なんとかヒョンの方から離婚なんて
思いとどまってほしくて

僕がヒョンに必要な人間だと思ってもらおうと
ジタバタしていた…


授業に出ると、先月金を貸していたジフンが僕のところへ来た
ジフ二ヒョンは3年も留年しているITオタクだ。

僕は高利貸しみたいなことを学内でしている。
ジフ二ヒョンはその常連で、しかも借りた金を金で返せたためしがない。
だから貴重な代理品で返済している。

今度はなんだ?

「チャンミン」
「あ、ジフ二ヒョン」

「あ、あのさー金なんだけど…」

「うん、来月になる?利子は複利だけど大丈夫?」

「金の代わりに、別のもので返してもいいかな」

「今度はどんなもの?」

「ここでは話せないけど….たぶん絶対喜ぶと思う。
これからも役に立つはずだよ」

なんだろう?

少し興味があって家に来てもらうことにした。





〜〜ユノside〜〜




いろいろ考えて
チャンミンとは将来的に入籍を解消することに決めた。

土地を譲って貰えない事は
俺がチャンミンを抱き込めば済む話だ。

でも、10歳の俺がそれを邪魔する
チャンミンには誠実でいろと、25歳の俺に言う。



「何も持って来なくていいから一緒に住もう、って
言って欲しかった」



あの言葉がトゲとなって俺の心に突き刺さったまま
まだチクチクと痛む。

そんな思いがあるのに、自分がビジネスに利用されるのをわかってて俺のとこに来るなんて……

残酷すぎるだろ…

俺の野望に巻き込むわけにはいかない

あいつはなんだかんだ言ってても
今でも俺の後をついてくるチャンミナのままだ。

しかも……困ったことに


ちょっかいを出すだけのつもりが
チャンミナとキスをすると俺に火がつく…

裸の女に抱きつかれてキスされても
コントロール可能な俺が。

止まらなくなるとか、ありえない

小さなチャンミナに邪な気持ちを抱いているようにも思えて、とにかく始末が悪い…

もう触れるのはよくない、と思いながら
あの縋るような眼差しで見られるとガマンできない

一線を超えてはダメだ….ほんとにシャレにならない


でもそんなチャンミナと一緒にいられるのは
あまり長くないのだから
一緒の間はいろいろ楽しませてやろう
とも思う。


思い立って執事のジテに連絡した。

「今夜、レストランの予約をいれてくれ。
俺とチャンミンだ。どこでもいい。
あーっと、じゃなくて…たくさん食べられるイタリアンで頼む」

少しばかり、テンションが上がり
午後の仕事はすこぶる順調だった

俺も…いつまでもヒョンなんだな




仕事が調子良かったせいか、
早めにマンションへ戻れた。


さっき帰宅時間をLINEで聞くと
チャンミンはいつも通り帰ってくるらしいので
そのまま待っている。


でも…なかなか帰ってこない…

とうしたんだろう

ジテが来た
「お車の用意ができましたが、チャンミン様は?」

「たぶん、もうすぐ帰ってくるだろ
待たせておいて」

「かしこまりました」


遅い….

俺がお前の帰る時間を聞いてくるなんて
珍しくて何かあるとは思わなかったか?


食事に行こうと話しておけば早く帰ってきたんだろうか。
サプライズじゃないのだから言えばよかった

と、その時

マンションの玄関が開いた


俺は思わず玄関まで出迎えに行った


が……….そこにあらわれたのは
チャンミンと見知らぬ男



「ヒョン?」

「あ、お邪魔します…同じゼミのパク・ジフンです」

ヒョコヒョコと頭を下げる、チャンミンと同級生にしては大人っぽく落ち着いた男。


イラっとした…


「ヒョン早いね、どうしたの?」

「……いや、別に」


不思議そうな顔をしたまま、
チャンミンはジフンとやらを連れて
自室に入っていった。


はぁーーーー

なんだよ…誰だあいつ…


「ジテ、食事、キャンセル」

「おやおや、チャンミンさまにお食事の予約されたこと、お話にならなかったのですね?」

「ああ」

「それはそれは…ご存知なら
飛んで帰ってこられたでしょうに」

「どうかな?誰か一緒だし
どのみち今日はダメだったんだろ」


俺はなぜかリビングから離れられずにいた。

いつまで2人だけで部屋に籠るつもりなんだろう。

部屋に入る、なにかいい口実はないか。


そんな事を考えていたら
2人が部屋から出てきた

「お邪魔しました」

丁寧にお辞儀をしてヤツは帰った


「どうしたの?ヒョン」

「なにが?」

「スーツのままでさ。
テレビもつけずにリビングにいるなんて」

「………」

おれは黙って寝室に入り
ウォークインクローゼットの中で着替えていた。

下着だけになったところで
鏡に映る自分を見た


お前はいったい何がしたいんだよ…


しばらくそのままで腕組みをして突っ立っていた


突然クローゼットの扉が壊れるかと思うほどの勢いで開いた

振り向くとチャンミンが血相を変えて
クローゼットに飛び込んできた

「どうした?」

「ヒョン!」

「なに?」

「なんで店を予約したって!
僕に言わないの?!」

「…………」

爺のやつ…


「言ってくれれば、飛んで帰ってきたのに!」

俺の肩をつかんでゆさぶるチャンミン


「いいんだよ、ただの思いつきだからさ」

「ヒョンには思いつきかもしれないけど!」

「……」

「僕にとってはさ!」

「チャンミン….」



「……いや…….いいんだけど
思いつきだったら、それで…」

チャンミンは俯いてしまった


そんなに….おれが2人で食事しようと思ったことは
うれしかったのか?

俯いたその顔を顎をすくって上を向かせた


泣いてる?!

「チャンミン…」

チャンミンは俺に抱きついてきた

下着一枚の俺に…

この狭いクローゼットの中で…

その涙が俺の裸の肩に落ちるのがわかる

チャンミンは嗚咽をガマンせずに泣いた

泣きじゃくった


クローゼットの鏡に映るのは、困惑した顔の
ほとんどハダカの俺がチャンミンを抱きしめている姿。

チャンミンが泣きながら、俺の胸に唇を押し付けている

その柔らかい感触に、ふわふわとした髪の毛が絡む

やめてくれ、頼む……

拷問だ






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みなさまいつも読んでいただき
ありがとうございます
年末どうお過ごしですか?
お話は大晦日と元旦はお休みをいただき
2日から11話を始めたいと思います。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。
よいお年をお迎えください

憧憬(9)

〜〜チャンミンside〜〜



夜になって…

実家に帰るわけにもいかず

僕はあのタワーマンションに戻った。

とりあえずはヒョンに謝ろうか

どう考えても、ヒョンは何も悪くない…



部屋に入ると、リビングは真っ暗だった。
でもヒョンがいる形跡はある。

仕事部屋かな?

ノックしてみたけど返事はない

でも耳を澄ますと、部屋の中から女の笑い声が聞こえる。
重なるようにヒョンの低い笑い声も聞こえる

そっと、ドアを開けてみた。
鍵はかかっていない…

ノックしたんだから、いいよね?

仕事部屋の真ん中には大きなデスクがあって
リクライニングチェアを最大に寝かせた状態で
ヒョンが座っている、というか寝ている。

その腰のあたりにまたがるハーフのキレイな女。

キャミソール一枚で、豊満な胸がもう少しで
全部見えそうなくらい、肩のストラップが両肩とも落ちている。

女は笑いながら、ユノヒョンのネクタイをはずし、
床へ落としている。

僕は入り口に寄りかかり、腕組みをしてそれを眺めていた。

ゆっくりとヒョンのシャツのボタンをはずす女。

ヒョンは女に触れるでもなく
両手を首の後ろで組んで、させるがままにしている。

開いたシャツから、女は両手をいれて
ヒョンの胸を撫で回している。

次第に前のめりになり、
ヒョンの鼻やおでこにキスをしている…

僕は腕を組み替えた

すると女は僕に気づき、「キャッ」と小さく声をあげた。

首の後ろで手を組んだままのヒョンが
チラッとこっちを見た。

切れ長の瞳が一瞬細められる

「お帰り」

「あ、もしかして結婚相手?
可愛いじゃない!
ねぇ、一緒にどう?
よかったら友達も呼ぶわよ」

「今度ね、お友達によろしく」

僕は丁寧にお断りした。


「今日はもう帰って」

ヒョンが女に優しく言った

「えー!来たばっかりなのに」

女はこれ以上グズると、ヒョンに嫌われることを知ってるのだろう

「じゃあ、今度はチャンミンもね♫」

女はウインクをして、服を着た

「オリヴィアが帰る、車寄越して」
ヒョンが執事に電話した。

やる事が嫌味なほどスマートに決まるヒョン。

女はそんなヒョンにキスをすると
明るく帰って行った。




ヒョンはまだチェアに寝たまま
今度はお腹の上で手を緩く組んで
天井を仰いでいる


「邪魔だったね、ごめん、いいところだったのに」

「いいよ、別に。」

「いいオンナだったし。
あの状態なら反応してたでしょ?」

「ああ、勃ってた。チャンミナは?」

「反応してました」

オンナにじゃなく、あなたに…

シャツをへそまでボタンをはずさせて
露わになったその首からずっと下の方まで

晒された筋肉がきれいだ。

天井を仰ぎ、少し上げ気味の顎
絶妙なラインで鋭角に、でもなだらかに胸元まで続く。


「ヒョン、昼間はごめん」

「いいよ…」


僕はチェアに寝るヒョンに近づいた。

近づく僕を優しい目でみつめる。

お腹に乗せてた手を僕に差し出すヒョン。


「おいで」


僕はたまらなく泣きそうになって
その手を取ると上からヒョンに抱きついた

ヒョンはしっかりと僕を抱きとめ
優しく背中をトントンと叩いてくれた。

「……」

「チャンミン…」

「はい?」

「大学はあと何年行くんだ?」

「2年…かな。なんで?」

「シム家にさ、大学は俺が卒業させるって約束したからさ。」

「だから?」

「大学卒業したら、離婚してやるよ」

「は?」

僕は思わず起き上がってヒョンの顔を見下ろした。

「解放してやる」

「なんで?」

「もうこれ以上お前を傷つけたくないよ
チビのチャンミナがいきなり現れるから困る」

「チビの僕?」

「お前、たまに5歳にもどるだろ?」

「今日みたいに?」

「そう…俺、耐えられない。もう罪悪感ハンパない」

「へぇ、そんなタイプ?」

しばらく黙っていたヒョンだけど
突然起き上がり、肩をつかんで
僕をチェアに押し倒した。

上からヒョンが僕を見下ろす

真剣な瞳

長い前髪がその瞳に影を作り
まるで木陰から獲物を狙う豹のようだ

美しすぎるその鼻先が斜めに傾いたかと思うと
奪うようにくちづけられた

あっという間にくちづけは深くなり
ヒョンの温かい舌が入ってきた。

その動きが……

ヒョン…キスが上手い…

キスだけで、快感が脳を突き抜ける

角度を変えて何度もその舌が入ってくる

もう…ダメ…

「ヒョン……ダメだよ…」

「でも…もう止まんない…」

ヒョンのくちびるが僕の首筋を愛撫しだした。

「離婚…するんでしょ…」

ヒョンの動きが止まった

「だったらさ…一線越えたら…ダメでしょ…」

僕はもう息も絶え絶えだった…

ヒョンは起き上がって
僕の顔を見下ろした

「そうだな…」

フッと優しく笑ってヒョンはチェアから降りた

急に離れたその温もりが恋しくて
僕はそのままチェアに寝て、ヒョンと同じように天井を仰いだ。

文書書き換えたりとか、
何してたんだろ


「あ、家に言ってもいいけどさ。
心配させるなよ。
土地は何もせず、俺がしばらく借りるようにしておくから。」

「わかった…
あ、でも僕の就職はどうなんの?
チョン・ホールディングスの秘書室」

「能力があったら雇うよ」

フッと笑うユノヒョン。


離婚なんて…嫌だよ、ヒョン

どんどん変わっていく僕たち
やっと取り戻せたのに

僕は離婚なんて…嫌なんだ



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憧憬(8)

〜〜チャンミンside〜〜



僕はユノヒョンが、いやチョン・ホールディングスが用意してくれたタワーマンションへ引っ越してきた。

最上階ワンフロアすべてが僕たちの住まいだった。


広いリビングとダイニング
たぶん使われることのないキッチン。

僕の寝室と勉強部屋

ユノヒョンの寝室と仕事部屋

他のフロアに執事の部屋と客間。




寝室は別なんだ。




小さい頃
ジイさんの別荘は夏になるとよくカミナリが鳴った。
夏休みで別荘に泊まりに来る子供達は
それに悩まされた。

僕は夜カミナリが鳴ると
ユノヒョンの寝る部屋の前で泣いていた


「ひょん、ひょん…うっうっ…」

「チャンミナ?どうした?カミナリ怖いか?」

「うん…うっ…一緒に寝てもいい?」

「もちろん。だからもう泣くな
ベッドの中においで」

僕はユノヒョンのふところで猫のように
丸くなって眠った

あんなに安心できる場所は他になかった…



このマンションよりずっと……



マンションには
カン・ジテさんという執事のおじいさんが常駐していて
とても感じのいい人だった。

この部屋を見に来た時にもいてくれて

ユノヒョンが「爺」と呼ぶと「はい、坊っちゃま」
と答える。

ヒョンが「坊っちゃまはやめてくれないか」
と言うと
ジテさんは「爺と呼ばれますと、どうも坊っちゃまとお答えしてしまいます。」
と目を細めて答える。

そのやりとりが楽しくて
ヒョンのバツの悪そうな顔が可愛かった。

ユノヒョンが小さい頃からいる執事なんだろうな。



僕は広いリビングの大きなソファーに座って
窓からの絶景を見ていた。

とは言っても、この辺りで一番高いタワーマンションの最上階では見えるのは空と雲。

かえってそれが良かった。


目をつぶってウトウトしかけたころ、
目の前が暗くなったような気がして目を開けた。

目の前にはユノヒョン

わんぱくだけど優しいヒョン

ユノヒョンだ!うれしいな!

あれ?

「ユノヒョン…」

夢心地な世界から覚醒した僕は
ここがどこだか把握するのに3秒くらいかかった。

ソファーの前に仁王立ちになって
僕を見下ろしているユノヒョン

僕を見つめたまま、固まっている

僕は伸びをした。
「うーん、待ってたよ。。。ん?なに?」

「あ…いや…お前…笑ってたからさ」

「だから?」

「別に…ただそれだけ…」

「僕の荷物はほとんど運んできたから」

「あぁ、わかった。
あ、それでだな」

「?」

「チャンミン、これから一緒に住むのに
ルールを決めたい」

「え?ルール?」

「必要だろ?
今まで別々の生活だったんだし」

「そして、これからも…ね」

「チャンミン…」

「うそうそ!さあ、どんなルール?」


「うん。
基本お前の友達や恋人、誰をこの部屋に連れてきても構わないよ。俺も同じく。」

なるほどね…恋人か…

「でも、リビングやキッチンには入れるな。
メインのバスルームもだ。
使わせるなら寝室のシャワールームを使え。」

「僕がヒョンの部屋に行くのは?」

「え?」

「僕がヒョンの寝室や仕事部屋に入るのは
いいの?」

「あ…あぁ、それはいいだろ別に。
ノックさえしてくれたら。」

「わかった」

「あと、これは…
なんていうか…」

「?」

「保護者…そういう立場で言わせてもらうけど」

「保護者…ね」

「とにかく
大学を卒業するまでは
勉強がいちばん大事だ。

卒業したら、ウチに入社して、秘書室に入ってほしい。
この間の文書偽造は犯罪だけど
悪くないな、と思ったよ。

将来、俺の右腕になってくれると助かる。

好きなことは何をしても自由だけど
勉強の支障になると判断した事は
俺が排除する、いいな?」


正直、すごくテンションが上がった…
僕はユノヒョンに認められたのか?
将来はヒョンの右腕…

あまりにうれしくて、僕はソファーから
勢いよく立ち上がってしまった

「なんだ?どうした?」

「いや、あの、
とりあえず卒業できるようにがんばるよ」

「あぁ、うん。
大学に対しては俺は口利きしないからな?
単位が危なくても俺を頼るな。」

「わかった!」

「ハハ…なんだよ。その元気な返事…」

ユノヒョンが苦笑した。

「後…これだけは絶対守ってほしい」

「なに?」

「夜遊びだろうがオンナだろうが
好きに遊んでいいけど
クスリだけはダメだ。わかったか?」

「しないよ、そんなの」

「だったら、この間会ったテミンには近づかないほうがいい」

「売人なの?あの子」

ユノヒョンは黙ってしまった。

まあ、いいけど。


「後な…」

「なに?まだあるの?」


「俺に必要以上の役目を求めるな」

「え?」

「俺はもう10歳のユノヒョンじゃない」

「………」


「わかったよ…」

「………」


「僕のルールもいろいろあったんだけどさ」

「なんだ?」

なぜだか僕のイライラは止まらない

ガマンできずに早口でまくしたてた。

「おはようとお休みのキスは必ずすること。
1日1回は愛してるよと言ってくれること。
記念日には仕事を休んで1日一緒にいてくれること!」
「チャンミン!」

「それとカミナリが鳴る怖い夜は
ヒョンのベッドにいれてくれること!」

「チャンミン!いい加減にしろ!」

「以上!僕からのルール!
守ってくれなかったら、あの土地は一生ヒョンには
あげないから!」


僕は部屋を飛び出した

悔しくて悲しい…


僕はどうしたんだろう…

なんでこんな風になってしまったんだろう
もっと醒めていたのに…

この入籍に、なにも期待してなかったのに

普段は昔の話なんて、思い出したりしていなかったのに…

ユノヒョンがエントランスまで追いかけてきて僕の腕を掴む

「お前、どうしたんだよ!
親に何を聞いてこの話受けたんだよ」

「だからわかってるって言ってるじゃん!」

「全然わかってないだろ?!」

「僕の前からいなくなったくせに!
現れたと思ったらさ…あんな…あんなこと」

「あんなこと?」

「中学生の僕にキスなんかしやがって!」

僕はヒョンの手を振りほどいて、マンションを出て行った


僕は自分の気持ちがイヤというほどわかった。。

ユノヒョンに拒否されてこんなにショックを受けている。

僕はたまらなくヒョンが大好きだったんだ

ずっと

昔からずっと






〜〜カン・ジテside〜〜


チャンミン様が引っ越しておいでになり
無彩色の空間に色がつきはじめました。

ひと段落して、坊っちゃまの帰りを待っている
チャンミン様はソファーでうたた寝をされているようでしたので、
お風邪を召されてはと、この爺が毛布をお持ちしたのですが…

陽の当たるソファーに深く座り
その長い脚を投げ出して眠る姿はまるで天使でした。

白いシャツが開いて、長い首から胸元まで晒されて

柔らかな巻き毛に包まれたお顔は
ほんとうに可愛らしくて

透き通る肌に長い睫毛、彫りの深い顔立ち
ピンク色のまるい頬

夢をご覧になっているのでしょうか

うっすらと微笑むその寝姿は
ヨーロッパの有名な絵画のようです。

なぜだか爺は毛布をかけるのがもったいなくなってしまい

このお姿を是非、ユンホ様にお見せしたいと思いました。

でもこれでは風邪を召されてしまうし、

そんな時、インターフォンでユンホ様のご帰宅が知らされ、
爺は毛布を片付けてしまいました。

ユンホ様はリビングに入られますと

ソファーにチャンミン様がうたた寝されているのに気づき、
起こそうとされましたが、

その寝姿に見入ってしまわれたようです。

ソファーの前に棒立ちになって
驚いたようにチャンミン様を見つめておられました。

あんなに可愛らしいチャンミン様を目の前にしたら
いたしかたございません。

どのような美しい令嬢が現れても
微動だにしないユンホ様のそんな姿に

爺はうれしさを隠せません

しかしながら、早くも仲違いをされたようで
チャンミン様は飛び出してしまわれましたが

後に残されたユンホ様はかなり長いこと考えごとをされていたようでした。

お相手が怒って飛び出す、などという場面は
正直申し上げて飽きるほど拝見してまいりましたが

まさか追いかけて行かれるとは。

このようなユンホ様のお姿ははじめてのことでございます。




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憧憬(7)

〜〜チャンミンside〜〜



ユノヒョンにしばらく抱きしめられていた後
僕たちはホールへ戻る道を歩いていた。


「チャンミンも…不安だったよな?
いろいろとさ」

「まあね…1人だし」

「1人?俺がいるだろ」

「………」

「俺は……頼りにならないか」

「そうだね。
あなたといると余計に孤独感が増す感じ」

「そうか…」

「でも、わかってるから。僕は全部わかってる」

「チャンミン…」

「ユノヒョンが欲しいのは僕じゃない」

「だからさ、名義はそのままでいいって」

ユノヒョンの言葉に
僕はゲラゲラ笑いだした
涙を流して笑った

「ヒョンさ…それってさ…
欲しいのは土地ですって自分で言ってるよ?」

「だよな」

苦笑するしかない僕たち。

「あー笑っちゃうね」

「チャンミン…お前がそんなはっきりと、
そういうこと言うとは思ってなかったよ」

「暗黙の了解?」

「って言うかさ、お前もメリットあるからさ」

「僕じゃなくて、僕の家ね?メリットあんのは」

「チャンミナはそうは思ってないのか?
シム家にとっては良いことなんだぞ?」

「僕はね…僕自身はさ…」

「……」

「何も持って来なくてもいいから、一緒に住もう」

「チャンミナ……」

「そう望まれたかったかな…」

「……」

「なーんてね!」

僕はヒラヒラと手を振りながら、ユノヒョンから離れて歩いた。

ユノヒョンは困った顔をしていた。

手を焼かせて困るって
そう思ってくれたらいいさ。

どうせあなたの手の平の上でジタバタしてるだけだ。

それって嬉しいような、ひどく寂しいような
複雑だな…


ホールでは暫し主役の不在だったにもかかわらず
パーティとしては盛り上がっていた。

ユノヒョンがまた挨拶にまわるのを横目に
僕は女性陣と写メを撮りまくっていた。





〜〜ユノside〜〜


何かと滞っている…
予定通りにコトが進んでいない

チャンミンのまさかの土地共有拒否宣言。
天の邪鬼ぶりを発揮してくれた。

もしくはお坊っちゃまの反抗期か?

ここで無理に話を進めないほうがいい。
名義を変えるのはいつでもできる。


でもなぜか、心のどこかで
罪悪感が生まれてきている。

それだけではない、もっとやっかいな感情も…


いきなり抱きつかれてきた時は
この間みたいにキスなんてできなかった

抱きしめてやらないとダメな気がして

あの時俺の腕の中にいたのは
5歳の小さなチャンミナだった。


可愛い顔をして、ニコニコしていて
いつも俺の後をついてきていた。

弟が産まれたばかりで親も相手してやれず
かと言ってまわりの子供達より歳がいかず

俺が遊んでやらなかったら
1人ぼっちだった

自転車の後ろに乗せてやると
小さな手で必死に俺につかまり
すごく喜んでいた。

俺は俄然やる気がでて、
いつも一番で走り抜けてやった。

俺を憧れの目で見つめ
俺の言うことは素直になんでも聞いた。

俺だって、その笑顔のためなら
なんだってしてやろうと思っていた。


そんな胸を締め付けられるような思い出を
俺は封印したのに

あの土地は「あなたと遊んだ思い出です」

そんな事をぬかしやがって。。


あそこはリゾート地になるんだよ
巨大な金を生むんだ。

それなのに…

「何も持って来なくてもいいから、一緒に住もう」

そんなバカップルのプロポーズみたいなのを
期待してたなんてさ…


この俺が…そんな事を言うはずがないだろ


俺に10歳のユノヒョンを求めるのはやめてくれ


もう俺たちは大人だ。
嫌になるくらい、大人なんだよ。




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憧憬(6)

〜〜チャンミンside〜〜




ほどなくして、僕たちの披露宴が行われた。
例のジイさんの別荘で。

形はガーデンパーティがいいな、と思っていたけど
室内の立食だった。

僕の希望は聞かれもしなかった。


たぶん、この機会を利用してみんながビジネスの話をしやすいように、という配慮だろう。


僕とヒョンはお揃いのタキシードを着て
胸には蘭の花を飾っていた。

何百人もの人と挨拶をして、

女性客は僕たちの間に入って写真を撮りたがった。

みんなから賞賛を浴びて、
ずっと微笑んでいることに疲れ、ホールからこっそり出た。

出る時にユノヒョンをチラッとみたら
精力的に挨拶をこなしていた。

ほっといていいよね。


僕は庭に出て、しばらく歩きガーデンベンチに座った。

ここから、この敷地が見渡せる。

どこまでも続く広大な敷地。
ユノヒョンの後ろに乗って、駆け抜けた丘。

ヒョンの欲しいのはこの土地だ。

カイに言われなくたって
最初から知ってるよ。

さっきもリゾート開発の社長がユノヒョンに挨拶にきていた。
この土地を、金を生む施設にしたいんだよね。


ふと、人の気配を感じて振り返った。

そこには綺麗な少年が立っていた。

小柄で華奢な体にタキシードが貴公子のようで。
可愛い顔立ちに金髪に近い巻き毛。
でも東洋人だ。

ポケットに手を入れて、ニッコリと微笑んでいる。

人懐こそうな笑顔の、その目が笑っていないことに
僕はすぐ気づいた。

警戒すべき人間かな。

「はじめまして。イ・テミンです」

丁寧に挨拶をされたけど

「僕のことは知ってるでしょ」
ぶっきらぼうに答えた。

テミンはクスクスと笑っていた。
「うん、だって今日の主役だもんね」

彼は了解を得ずにベンチの隣に腰掛けた。

「挨拶ばっかりで疲れたでしょ」

「うん、まあね」

テミンには不思議とリラックスできる雰囲気がある。
人を油断させるテクニックを持っているのだろうか。

「でもさ、すごいじゃん、ユノヒョンと入籍なんてさ」

あーユノヒョンのそういう相手か?

「ヒョンと知り合い?」

「面倒みてもらってたよ。わかるでしょ?」

この子が?綺麗だけど、ユノヒョンの心を惹くタイプではなさそう。

「捨てられたけどね、こっぴどく」

なるほど

ヒョンにしたたかさや、欲を出したか。

「捨てられたのに、今日は呼ばれたの?」

「他の男の連れとしてきてるよ。」

「あぁ、そうか」

「愛し愛されての入籍じゃなさそうだね」

「あたりまえでしょ。ヒョンは僕とじゃなくて
この土地と結婚したんだよ。」

「だね。でもいいじゃん、戸籍上パートナーでしょ?
ホールに行って、そこアピールして来なくていいの?
みんな狙ってるよ、ユノヒョンの隣」

「ホールには…
僕らを祝おうなんて人間は1人もいない。
ウチの両親や、当のヒョン本人でさえ、
これはめでたい結婚じゃなくて、ビジネスだよ。」

「チャンミンは違うんだね」

「え?」

「ビジネスじゃないんだね」


打ち解けすぎたかと、少し焦ってテミンをみると
その長い睫毛を伏せて悲しそうにしていた。

同情してくれてるのか…

その顔を見ていたら、僕もなんだか悲しくなってきた。

「でも、土地は手放さなかったって聞いた。
わかるよ、手放したらヒョンにとって自分の価値がなくなっちゃうもんね。」

ズバリと、でも優しく言われて
この言葉は僕の胸にすんなりと入り込んだ。

「僕はなんでこの入籍を受け入れてしまったのかな
…」

「ヒョンが好きだからでしょ」

「かな?」
僕はフッと自虐的に笑った。

「チャンミンて!綺麗だね!」

「そう?ありがと」

「ユノヒョンの前で笑った?」

「さあ、どうかな…」


「覚えておいて。その笑顔は武器だよ。
この土地に匹敵するくらいのね」


テミンは意味深に微笑んだ。

「そういえば、テミンはなんでヒョンに…」
「チャンミン」

突然ベンチの後ろから、ユノヒョンの声が低く響いた。

後ろを振り返ると、ヒョンの視線は隣のテミンに釘付けだった。
睨みつけるようなその視線。

テミンは気まずそうに目を伏せた。
いや、気まずそうなフリをしただけだ。

「チャンミン、戻れ」

その物言いに反発を感じた僕はヒョンを見ずに言った。
「もう少しここにいるから」

「お前は俺と戻るんだ」

なんだよ……

「ヒョンはビジネスに忙しいでしょ。
早く戻ったらどう?」

「いいから、俺と…」
「ほっといてよ!」

僕は思わず声をあげた。

テミンが面白そうに僕を見上げてる。

テミンはその視線をヒョンに移した
「お久しぶりです。ユノヒョン」

「誰のお供だよ」

「パク会長さん」

「さすがテミン。大物釣ったな」
嫌味たっぷりに笑うユノヒョンは、
無意味な色気を醸し出している。

「はーい、褒めてくれてありがと」
テミンは無邪気に笑った。

ユノヒョンは僕に向き直った
「チャンミナ、行こう」

そう言って僕に片手を伸ばした

その手をとれ、というのか?
子供じゃないんだから!

僕はこれ見よがしに隣に座るテミンの肩を抱いた。
テミンがニヤッと微笑んだ。

「チャンミン!」

ヒョンの大きな怒号に驚いて飛び上がった



それはいつか……

「チャンミナ!」

蜂の巣を触ろうとしたぼくに
後ろから怒鳴ったユノヒョン

あの10歳のユノヒョンと同じ目だ

その切れ上がった綺麗な瞳には
僕を守ろうとする強さと優しさが宿る

真剣なそのまなざしを久しぶりに見た…


ユノヒョンはテミンを抱いていた僕の腕を引っ張りあげて
タキシードの襟首をつかみベンチから引きずり下ろした。

僕は派手に転び、そんな僕の肘を無理やり持ち上げて立ち上がらせた。

「馬鹿力!!!」

僕は怒鳴りながらヒョンに引きずられて歩く


………チャンミナ怒鳴ってごめんな?
あれは蜂のおウチなんだ

触ると中から蜂がでてきて、触ると刺されちゃうんだよ……
泣きじゃくる僕の頭をなでるヒョン……


かなり歩いたところで
やっと僕を放した


「チャンミン、乱暴にして悪かった」

「なんだよ!」

「あいつには近づくな、わかったか?」

その目はあの日、僕を心配してくれたヒョンの目。
僕は慌てた…


「指図は受けないから」

ユノヒョンはその大きく節くれだった手で
僕の襟元を直した

「それでも…近づいちゃダメだ」

僕はそれ以上何も言わなかった

僕を守ろうとしてくれている…
そこだけはなぜか信じられた

ヒョンの伏せた長いまつげを見つめていたら
なぜか泣きたくなって

僕の襟元を直すその手を思わずとった
驚いて僕を見るヒョン

その手にキスをすると
僕はヒョンの首に抱きついた

しばらく固まっていたユノヒョンだったけど

やがてその手は僕の腰と背中にまわり
そっと背中を撫でてくれた。

僕は体を離してヒョンを見た。


ヒョンは優しい顔をしている
僕の頬を優しくなでて

「怖がらせたな…ごめんな」

そう言うと、今度は強く僕を抱きしめた


その様子を遠くからテミンがじっとみつめていた




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憧憬(5)

〜チャンミンside……2度目のキス………



シム家とチョン家で
入籍前の顔合わせの席が設けられた

ホテルの貴賓室

だだっ広い部屋にお互いの家族と秘書達も揃っていた。

ユノヒョンはスリムなスーツを着ていた。

インナーには白いTシャツのようにみえて、
でもそれは上質なカットソーで。
短めのパンツと素足にモカシン


しかし、こちらシム家は「カジュアルで」と言われても
スーツにしっかりとネクタイ。
こういう風に堅く整えてしまうのだ。


このあたりの柔軟性が、両家の違いだ。


会食の時間、ユノヒョンはそつなく会話をこなし
適度に話題をこっちに振ったりして

ここでもさりげないリーダーシップを発揮していた

爽やかな笑顔と落ち着いた低い声
たまに明るい笑い声を発しながら
その場をうまく盛り上げていた。

向かい合って、マジマジとユノヒョンを見たのはひさしぶりだ。

カッコ良くなったなぁ

顔立ちが整っているのは
もちろん変わらないけれど

なんていうか…色気がある…

すっきりと細いアゴのラインから
その広い肩へ続くなだらかな首筋をみてると
ドキドキしてくる。

笑うと弓なりに細められる切れ長の瞳
黙っていると、近づきがたい硬質のイメージが
その笑顔で途端に緩む

長い前髪から、男らしい眉が見え隠れしている

意外にもよく動く表情。


モテるわけだ。


あなたを取り合って、流血沙汰のイザコザもあったっていうけど…

ついこの間も、僕はあのバレエダンサーの胸ぐらを
思わず掴んでしまったしね。

罪だね、ヒョン…



「さて、そろそろお食事も終わりに近づいたところで」
ユノヒョンの秘書がたくさんの書類を抱えて
みんなの顔を見まわす。


心臓がドキドキしてきた。

今日の本当の目的は、これだ。
お互いのいろいろな決め事の確認。


「事前に書類はこちらでチェックさせていただきましたので、後はいくつかの大事なサインをいただきます。」

ほんとにチェックしてんのかよ…


秘書はユノヒョンにいくつかの書類を渡した。


ヒョンは気づくだろうか……


ヒョンは秘書がいろいろと説明するのを制して
自分で書類をチェックしはじめた。

ドキドキする…
心臓が口から出そうだ!


一枚一枚チェックしていた書類を持つヒョンの手が止まった。


ヒョンは書類に落としていた視線をゆっくりとあげ
僕を睨みつけた

僕はヘビに睨まれたカエルのように動けない。


「チャンミン」

ヒョンは僕から視線をはずさずに、低く静かに名前を呼んだ

「はい」

声が震えるのをなんとか抑えた。

「別荘の土地だけは、俺との共有財産ではイヤか?」

「イヤです」

お父様、お母様、シム家の全員と
チョン家の全員がどよめいた

お母様が慌てた
「チャンミン!なに?!どういうこと?」

秘書がユノヒョンの元へ何人も走ってきた。

「別荘の土地だけが《共有にしない》という書類になっている。」

ポツリとヒョンが言った。

視線は僕から外さない。

秘書がヒョンに平謝りしている
「チェックはしたつもりだったのですが
申し訳ありません!」

「書類にサインがしてあっても
その内容が譲渡しません、という文書になっていることもあるよな?チャンミナ」

「……」

「どうしてだ?」


ユノヒョンの目的が、
あの土地だけだって、あいつが言うから…


それにあのジイさんの別荘は僕にとって…

「思い出が…たくさんある場所なので」

「思い出?」


「あなたと…たくさん遊んだ思い出です」



ざわめいていた貴賓室が一瞬にして静まり返った

みんな狐につままれたような顔をしている。


ユノヒョンは一瞬驚いたように目を見開くと
フッと口角を片方だけ上げて微笑んだ。

「俺との思い出の土地なら
2人の財産でいいじゃないか?」


「僕だけの、大切な思い出です。」


お母様が大慌てに慌てた
「チョンさん!すみません!なんだかこの子ったら。
もう一度この件は、きちんとこちらで整えますから…
どうかこの話をなかったことには、しないでいただきたいの」

「大丈夫ですよ。入籍はしますから安心してください」

「ありがとうございます!」


「少し、チャンミンと2人にさせてもらえますか?」


ユノヒョンの一言でみんなはザワザワと退席して
執事に案内されて、帰って行った。


長い大理石のテーブルを挟んで、向かい合う僕とユノヒョン。

微動だにせず、固まったまま座る僕と
テーブルに肘をついて緩やかに微笑むヒョン


「お前、やるな。結構賢いじゃないか」

「………」

「チャンミナは反抗期か?」

「はい、たぶん」

「まわりの言いなりになるのがイヤだったか?」

「どうでしょうか。わからないです」

「俺と籍を入れるのがイヤか?」

「僕は、それはうれしいです」

「へぇー?そうか、うれしいか?」

「意外でしたか?」

「意外だな。せめてもの抵抗に書類を差し替えたのかと思った」

「抵抗なんてしません」



試したんだ、僕。
土地がなくても、あなたは僕を選ぶかどうか。



「これ、立派な公文書偽造ってやつだぞ」

「……」

「まあ、いいよ。この土地はお前が大事にしろ。な?」

「ありがとうございます」



ユノヒョンは立ち上がると、ゆっくりと大理石のテーブルを回り、こっちへ歩いてくる


僕のとなりの椅子に腰掛け
まっすぐ前を向いてる僕の耳に息をふきかける

僕はゾクゾクして肩を竦めた。

「可愛いな、チャンミナ。
まさか、こんなに綺麗になるなんてさ」


「ありがとうございます。」
僕は平然とさらっと答えた。



無表情の僕の耳にヒョンが低く囁く


「お前、俺が欲しいか?」

その言葉に僕はユノヒョンにゆっくりと向き直った

「覚えてます?僕のファーストキスはあなたに奪われたんです」


「知ってる」クスクスと笑うユノヒョン


「あんまり美人になっててびっくりしてさ
純情そうで、思わずな」

「僕がほしいですか?」

真顔でユノヒョンの顔をまっすぐ見つめた。


笑っていたヒョンは黙り、
真剣な顔で僕を見つめた。


その瞳は雄のそれだ


「あぁ、すげぇ欲しい」

そう言い終わらない内に、ヒョンは座っている僕の腕を強引に強く引っ張った。

僕はバランスを崩し、椅子ごと転びそうになるところを
ヒョンは僕の後頭部をつかみ、肩を引き寄せ、
噛み付くようにくちづけてきた。

僕はヒョンの腕の中にいて、

その甘く激しいくちづけを受け止めていた。

溺れてしまいそうになるのを
必死で堪えた。

少したってくちびるが離れて見つめあった。


「僕は…ヒョンを欲しくない」


「そうか。残念だな?」

フッと笑うユノヒョン



「あなたなんか、欲しくない」



欲しくない……



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憧憬(4)

〜〜チャンミンside〜〜



甘ったるい香りの中で目が覚めた


頭が痛くなるほどの香水


隣には見知らぬ女が眠っていた


えーっと…

あ、そうだ。


昨夜、飲みの席でとなりに座った女。

この女はユノヒョンの噂話をよく知ってて
どこのコか知らないけど
そのまま話が聞きたくて連れて帰ってきたんだ。


この匂い、なんとかしてくれ。



ユノヒョンのお母様の死には
いろんな事情が絡んでいて

ヒョンは実父への敵討ちを目論んでいるらしいと。


ふぅーん


カッコいいね………

あなたは、ほんとに…

ドラマか?って話だ…


女が身じろいで、寝返りを打つ拍子に
僕の首にその白い腕をまわそうとする


おっと…もう勘弁してくれ

僕はその腕をかわしてベッドから起き上がり
シャワーを浴びた。


支度をして、大学へ行かなきゃな
今日の講義落とすとヤバい。

ふとベッドを見ると、まだ女がいた。

「チャンミン、アタシの連絡先、
登録しといたからね♫」

僕のスマホを笑顔で振っている


「は?何勝手なことしてるの?」

「え?だって…」

「連絡することとか、ないでしょ?」

女はムッとして黙った。

「まさかの彼女ヅラとは驚きだね
わかってるコだと思ってたよ。
少なくとも、昨夜はね?」

僕はニヤッと微笑んでみせた。

「あなたとチョン・ユンホ、お似合いだわね」

「そりゃどうも」

「その軽くてサイテーなところがピッタリよ」

「お祝いのお言葉としてありがたくいただきます」

「おせっかいだとは思うけど、ユノってね…」

ユノ?

軽々しくユノなんて呼ぶな


「ユノは何にも持ってない純粋なコが好きよ
清貧で健気なコ。
あなたみたいに、なんでも持ってるくせに
いつも不満そう、みたいなのが一番キライだと思うわ」

アタマの中にかつて見たバレエダンサーの姿が浮かんだ。

ユノが世話を焼いていたあのキレイな青年カイ。

心がチリッと痛んだ…

「ほんとにおせっかいだね?
女として質を問われるね。残念だけど」

女は怒りで顔が赤くなっている。

「じゃ、僕はお勉強に行ってくるから
あとは適当に」

コンソールの上にタクシー代としては
かなり多めに金を置いた。

情報代ってことで。
悪いけどセックスは覚えてないから



大学へ行くと、
今日は講義が違う教室だということで
あまり来たことがない敷地内の街路樹を歩いていた

前から歩いてくる人影に気づき
なんとはなしに顔をあげた


あ……こいつ……あのカイってやつだ。


カイもハッとして歩みを止めた。

僕は一瞬躊躇したけれど、特に話すこともないし。
そのまま通り過ぎようとした

「あ、あの…」

「?」

声をかけられて僕は立ち止まった。心臓がドキドキしている。

「いきなりすみません…
僕は…バレエ学科のカイといいます…」

「僕は経済学科のシム・チャンミンです」

「は、はい…存じ上げてます」

「そうですか?僕を知ってます?」

「あ、あの…今度ヒョンと結婚する…
雑誌で拝見しました…」

「結婚?」

「違うのですか?ユノヒョンと結婚って」

「入籍だけど…まあ、結婚といえば結婚ですね」

僕はいじわるな気持ちを抑えられない

「これから人生を共に歩んでいくというか。
いろんな意味でパートナーとしてね」

「あの!」

「はい?」

「ヒョンは!ヒョンはそうは言ってませんでした!
土地が…土地がほしいだけだからって!」


僕を奈落の底に落とすには十分なその言葉


「そうですか?そうだとしたら、なにか?」

「いえ…あの…」

どんどん俯いてしまうカイ…

「ヒョンを…返して…」

は?

「ユノヒョンを返してほしいんです
僕の元へ……」

僕は衝動的にカイの胸元を掴み上げた

「それは…こっちのセリフだよ?」

驚いて僕を見るカイ



「僕は…ヒョンのパートナーなんだ…」




涼しげな瞳に少し厚めの唇

綺麗な顔だ…

こいつがユノヒョンの心を捉えているというのか?

こいつはヒョンに「結婚しないで」と泣いてすがったか?

そうしたらヒョンは「土地がほしいだけだから」と

心はお前にあるとでも、そう言ったのか?


僕はその胸ぐらを突き放した


カイは僕の手を取りすがってきた

「じゃあ、約束してください!」

「なに?」

「ユノヒョンを…幸せにしてください…」

「あんたさ、ユノヒョンのなんなの?
そんな上から目線でさぁ」

「面倒みてもらってます…
どん底にいた僕を拾いあげて、もう一度夢を見させてくれました。
僕が夢を叶えることが、自分の夢だって
そう言ってくれました」

「言われなくても、ヒョンは僕と入籍すると
いろいろ幸せなんだよ」

僕はポケットに手を突っ込むと、街路樹をさっさと歩き出した




小さい頃から
ユノヒョンは僕だけを大事にしてくれていた

「純粋なコが好きよ、健気なコ」

なるほどね

みんなの中で一番小さくて
それでも遊んでもらいたくてついてきた僕は

純粋で健気だったね

だから、面倒みてくれたんだ
あのカイのように

カイはきっと大学の学費なんかもヒョンに出してもらっているのだろう


だけど


今の僕だって…純粋なんだ
ユノヒョンに対してだけはずっと変わらない


政略入籍なのは知ってる
シム家のブレーンを欲しがってるのも知ってる
土地の共有が目的だってことも知ってるさ

でも…それでもユノヒョンは
僕と家族になることを

それはそれで

喜んでくれているものだと…

心のどこかでそう信じていた。

少なくとも僕は…

ユノヒョンと家族になれることを
うれしく思ってる

大好きなユノヒョンと一緒に…



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憧憬(3)

〜〜ユンホの苦悩〜〜



「ユノ?…ユノヤはどこ?」

「母さま、ここだよ」

「母さまね、目が見えなくなってしまって
ユノヤがどこにいるのか、わからないの」

美しかった母が日毎におかしくなっていくのを
俺は何もできずに、ただ見ているしかなかった。

「暑いわね、どうしてこんなに暑いのかしら」

「母さま、外は雪だよ、
そんな格好で風邪ひいちゃうよ!」


なにかが変だ。

いつから母はこうなっただろう?

俺は思い返してみた
細かいことから、できるかぎり思い出される全部を。


医者が変わってからだ


母は喘息を持っていたけれど
それに悩まされるほどではなかった。

今の医者の行動を観察してみた。

その医者は母に薬を打つと
そのアンプルを即座に処分した。

俺は割れたアンプルが入っていた袋を
そっと拾ってとっておいた。

小学生の俺にできるのはそれくらいだった。


でも中学生になると
薬の袋からその種類を調べ

それがとんでもない物質だということがわかった

新しい医者を仕向けたのは
父の正妻だ。


俺は大勢の人間が集まる夜を待った。


そして、チャンスの夜が来た。


みんなが集まるホールへ

なるべくにこやかに出て行った


「これはユンホおぼっちゃま!」

「ますます大きくなりましたね!」

みんなの中から、薬学に強いパク先生を探し出し
父もその正妻もそばにいることをしっかり確認した。

「パク先生!ちょっとお伺いします!」

俺は大勢の人がいるホールで
わざと遠くから大声で話しかけた

「おぉ、なんだね?大きな声で?」


「カンナビノイドという薬は注射じゃなくて、飲み薬はないものですか?」

「え?…」

パク先生は驚いていた。

まわりも俺の大声に何事か?と気にしてくれている。

「何を言うんだね?カンナビノイドは
いわゆるドラッグのようなものだよ。

そんなもの注射したり飲んだりしたら
廃人になってしまうよ

まさか、友達から手に入れたなんていうんじゃないだろうね?」


俺は笑った


「ドラッグ?そんなわけないでしょ?
大奥様が呼んでくださったお医者さまが
母に毎日のように打ってくださる注射ですよ?」

まわりがざわめいた

パク先生も「しまった!」という顔をして
正妻へ怯えたような視線を送った

「廃人になるような薬を大奥様の推薦される方が使うわけないでしょう?ほら、これ。」

俺はあくまでも穏やかに
そのクスリの袋をみんなの前にだしてみせた。


「母が注射が辛くて、飲み薬にしたいというので。
お医者様にもう一度聞いてみますね!
お騒がせしました。」

父は強く目を閉じて震えているのがわかった。
その正妻は真っ青になって、その目はあちこち泳いでいる

俺はざわめくホールを後にした。


が、しかし………


間に合わなかった……




もっと俺が早く動き出していれば…

母は亡くならなくてもすんだのに。

俺も助けられなかったけど

殺したのはあのガマカエルのような正妻だ。
そしてそれを見て見ぬ振りをした父。


母は父を心から愛して、信じていた。

「ユノヤ、お父様は素晴らしい方なの。
何も持っていないお母様みたいな人間に
とても優しくしてくださって。」

なのに……


親父の会社なんてぶっつぶしてやる


そのためには俺は手段を選ばない
利用できる人間はだれでも利用する。

甘い汁を吸い尽くしたら捨てるだけだ。

だれも信用しない

どうせ、まわりは自分の私利私欲のためだけに
微笑み、俺にいい顔を見せる連中ばかりだ。


親父は俺に小さな関連企業をひとつ任せて
おとなしくさせようって事だろうが。


そうはいかない。



母の墓前で夫婦で俺に土下座させ、その頭を地面に踏みつけてやる。



そういえば


今度はあのシム家から
広大な土地を携えて、人質が自らやってくる。


大歓迎だよ、シム・チャンミン!


あの小さかったチャンミナが
俺にプレゼントを抱えてやってくる


ロータリークラブに華々しくデビューさせるから
その強力なパイプも引き寄せてくれ

シム家の広大な土地と、各方面へのつながり。

どれもこれも宝の持ち腐れなんだよ。

存分に活かしてやるから
早く俺のところへ来い




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憧憬(2)

〜〜執事カン・ジテの憂鬱〜〜



ユンホ坊ちゃん…

いや、ユンホ様が入籍することになりました。

同性婚が認められるようになって
巷では元々その志向があった方にはもちろん、

富裕層にも喜んで受け入れられたようで。
いまや、政略結婚にその制度は便利に使われています。

ユンホ様は父のチョン・ジホ様の直系ではありません。
ジホ様が愛人に産ませた子供でした。


シム家などをはじめとする昔からの財閥は土地などの財産を多く所有していましたが、
今や、それを維持するのが難しい状態です。

チョン家などの新進企業系の富裕層は
財閥ほどの土地家屋はありませんが、かなりのお金を動かすことができます。

由緒あるシム家も、その土地を手放すことは出来ず
共有という形でチョン家に泣きを入れてきました。

ユンホ様がシム家のチャンミン様と結ばれることで
土地は両家の共有財産ということになります。


大奥様にしても、ユンホ様が女性と結婚されて
また相続権をその子供にとられるよりはと、
この入籍には大賛成です。


ユンホ様はその辺の事情や
ご自分の立場もよくわかっていらっしゃるようで
ジホ様の提案をあっさりと受け入られたようです。


ユンホ様は小さい頃から、利発なお子様でした。
まわりも「この子は大物になる」と噂しておられました。

小さな貿易会社を国を代表するような企業までに育て上げた先代のチョン・イグテ様と息子のジホ様。


その素質は直系のボンシク様ではなく
愛人の子、ユンホ様に受け継がれたようでした。

大奥様は昔から、ユンホ様のその並々ならぬ利発さを怖れ、何かと不遇を与えてユンホ様をないがしろにしようとしていましたけど、

いつも先を読んで、うまく避けていくユンホ様に
さらに脅威を感じていましたし、
まわりもその様子をみて「この子は」と一目置かせてしまうという有様でした。

ところが、ユンホ様の実母、ユジン様が亡くなられてから
ユンホ様は様子が変わられました。

ユジン様は表向きには病死でしたが、
実際は自殺だったのです。

ジホ様の寵愛を一身に受けていたユジン様は
大奥様に苛め抜かれた上での自殺でした。

ユンホ様の素行の悪さは目を覆いたくなるものがあり
ケンカや金銭のトラブルは元より
その恋愛関係の始末の悪さは最悪でした。

年齢を追うごとに美しく凛々しく成長するユンホ様。

10代の終わりにはすでに成熟した男の色気さえ備わっていて
男女問わずその手中に収め、遊び尽くすと無残に手放されるという…

それでもユンホ様を忘れられない輩たち同士での
血をみるトラブルも後を絶たず

これにはジホ様も頭を抱えていらっしゃいました。




ユンホさまのお相手、チャンミン様といえば、

シム家の別荘でよくサロンが開かれていたときに
ユンホ様を慕い、ユンホ様もチャンミン様の面倒をよく見ていて
なんとも微笑ましいお二人でした。

女の子みたいなお顔と可愛い笑顔、
よくユンホ様の後をついておいででした。

そのお二人が入籍されるということで
私としても、なんとも嬉しい出来事で。

ただ、チャンミン様はユンホ様に負けるとも劣らずの悪いウワサが多く
こちらも男女問わず、トラブルが絶えないようであります。

この間お見かけしたところ
チャンミン様はなんとも美しく成長しておられ
すっきりとした長身に、モデルのように服を着こなされ、
フワフワとした明るい巻き毛からのぞくお顔は
ヨーロッパの貴公子のようでした。

やはりその瞳はどこか拗ねたような、
暗い光を放っておいででした。

ユンホ様は、それでも
チャンミンさまをチョン家に迎える準備を
私どもには命じずに、
ご自分でいろいろとされていました。

チャンミン様は今年で20歳
サロンにデビューする歳です。

デビューの支度は伴侶のユンホ様の仕事であります。

今はジホ様から新しい子会社を全面的に任された
ユンホ様。
多忙を極めておられますが、やはりチャンミン様との生活を楽しみにされているのでしょうか。

ただ、ユンホ様はサロンにデビューされる頃には
その素行は収まりましたが

いまだに続く男女のトラブルが収まる様子はなく
そこだけが私の頭の痛いところであります

入籍されることで
お2人のそれが治るといいのですが。

そのためには仲良く暮らしていくことを
楽しんでいただかないといけませんね。


ユンホ様をみつめるチャンミン様のあの瞳は
憧れを超えたものだと、わたくしは信じております。



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憧憬(1)

〜〜チャンミンside〜〜



お父様たちが集まる日
それはユノヒョンに会える日!


おじいさまの大きなお庭で
みんなであそんでいいっていわれてる



待って待って!


「チャンミナ、お前はチビで邪魔だから来るな!」

「チビじゃないもん!」

何人ものヒョンたちに邪魔されながら
僕は走る



僕だってユノヒョンと遊ぶんだから!




もう10歳のユノヒョンはみんなを率いて
きっとあの裏山行くんだ

あの楽しい裏山へ。



たしかに僕は一番小さいけれど
ユノヒョンは僕と遊んでくれるはず


だって僕は裏山のひみつをたくさん知ってるしね


でも、ヒョンたちの背中はどんどん遠くなり

僕はどんなにがんばっても
追いつかない


がんばりすぎて、足元が絡まって
ハデに転んでしまった

あんまり疲れて、悲しくて悔しくて

僕は大声で泣いた

なんで僕だけ、一番チビなんだ…



すると前からヒョンたちをかき分けて
ユノヒョンが現れた

「チャンミナ、だいじょうぶか?」

「ユノヒョン……うう…」

「泣くなチャンミナ、男だろ?」

「泣いてないもん!」

「うん、泣いてない、泣いてない
えらいぞチャンミナ!」


がんばって立ち上がった僕の膝は擦りむけて
たくさん血がでていたけれど
ユノヒョンがきてくれたから
もうだいじょうぶ

ユノヒョンはハンカチで僕のヒザをきつく縛ってくれた。

「こうすると、早く血がとまるからな?」

そして、ほんとうに血がとまったんだ。

ユノヒョンはやっぱりすごい。




それからみんなで自転車に乗って。

僕はもちろんユノヒョンの後ろに乗せてもらって。

「ちゃんとつかまってろよ、チャンミナ」
「うん!」

僕はユノヒョンの背中にしっかりつかまり

いじわるなヒョンたちをどんどん抜かして
一番先頭を走る


ユノヒョンの背中はあったかくて

どんなにスピードがでても、全然怖くないんだ

だいすき!ユノヒョン!





でも、そんな大好きなユノヒョンを
お父様もお母様も「なりきんの子」って嫌う

「なりきん」ってなに?

なんでみんな嫌うの?
悲しくなっちゃうよ……………





………「というわけで、お前の入籍が決まった」

眉間にシワを寄せて俯く父。


僕が…入籍。


「チャンミンにこんな身売りみたいなマネさせて!
あなたに才覚がないばっかりに!」

母は取り乱しているけれど…

「やめないか!チャンミンの前で」


僕は逆にゾクゾクするよ


「あんな成金一族にチャンミンを売るなんて」


身売りって…

身売りなんて言われると興奮するね。
ヤバいなぁ、そういうことも含めての入籍…だよね?

期待しちゃうな、ユノヒョンは僕を買ってくれるのか…

この家にとっちゃ、
遊び人で出来損ないの僕なんか、
売っちゃったほうがいいんだよね。

僕がいたらきっと、ご先祖さまからの財産、
一代で使い切るよ




小さい頃、ロータリークラブ、大昔でいう社交界?
そのサロンに金持ち連中がよく集まった。

ウチのジイさんの別荘に集まるときは
ユノヒョンが来ることが多くて
前の日から僕は眠れないほど楽しみだった。

その時間、子供達は外で遊んでいいことになっていて
ジイさんの敷地は広大だったから、
みんなで敷地内の裏山まで自転車で行かなければならなかった。

でも、それが楽しくて楽しくて。


ユノヒョンはみんなのリーダー格で
他の子息たちもユノヒョンと遊べるのを楽しみにしていた。

僕は一番年下だったから
ユノヒョンは何かと世話を焼いてくれて

自転車の後ろは僕の特等席だったし
鬼ごっこだって足の遅い僕は
いつもユノヒョンと一緒に逃げたり追いかけたりしていた。


みんなの嫉妬と羨望の的だった。

しかも、ジイさんの裏山は僕が一番詳しかったから
ユノヒョンに重宝されるのがたまらなく嬉しくて。
裏山の秘密はなんでも教えてあげていた。



でもいつしか、ユノヒョンは現れなくなった。


風の噂だと、ユノヒョンの母親が亡くなって
それから悪い仲間と遊ぶようになったって。

ユノヒョンの情報にはいつもアンテナを張っていたから

その素行が次第に取り返しがつかないほど悪くなるのもわかっていた。

あるとき、僕が中学生でヒョンが20才を迎えたころ

ロータリークラブにデビューするユノヒョンを見かけた。

僕の記憶の中のヒョンとは変わっていることは予想していたけど

ジイさんの別荘でみかけたヒョンは
神々しくて声もかけられないほどだった。

かなりの長身にピッタリフィットしたタキシード
長い手脚に広く張った肩幅。
その上に乗る小さな頭。


まるで雑誌から抜け出たようなカッコよさだった。

あぁ、こんな人に着られたら
高価なタキシードも本望だろうな、と

そんなバカなことを考えた僕だった。

僕は呆然と屋敷の車寄せに立ち尽くして

玄関で他のメンバーと握手をかわすヒョンを見ていた。

あれがユノヒョンだと教えられたわけではないのに

僕は一目でその美しい青年が彼だとわかった。

緩やかにあげた前髪が
すっきりと整った鼻筋に一房降りている。

男らしい眉毛と、少しだけ厚めの下唇くらいしか
少年の頃の面影を残していなかった。

その瞳は何かを見据えたように鋭く光り、
むかしの無邪気なユノヒョンはいなかった。

それでも…

まわりの名だたる財界人の中で
若きヒョンはまるで皇帝のようなオーラを放っていた。

誰もが従わずにはいられない、そのリーダーだけがもつオーラ。


デビューだからと謙虚に振舞っているつもりだろうけれど
それはとても隠せるものではなかった。

それはジイさんの裏山でみんなを率いてた頃から
ユノヒョンだけが持っている光だった。


それぞれが車に乗るのを見送るユノヒョンが
人気が少なくなったせいか、僕に気づいた。


ニヤッと口角を片方だけあげて微笑む
「へぇー」と軽く驚いたように、面白がるように
挑むような視線で僕を見据えて近寄ってきた。

歩いてくる様はまるでショーのウォーキングのようだった。

僕の目の前で止まると

「シム家のチャンミナ?あのおチビさんの」

すっきりと細い顎を少しあげ
見下ろすように僕を見た。

そのキレイな奥二重が優しそうに見えなくもないけれど

僕は緊張して、声がでなかった。

ユノヒョンは僕の顎をその長く細い指先ですくうと

鼻をくっつけんばかりに顔を寄せてきて

「ずいぶんキレイになったな」と囁いた。

するとその端正な顔がゆっくりと降りてきて

僕は……くちづけられた…


ユノヒョンの柔らかい唇の感触を感じると

僕の身体は電流が走ったように動かなくなり
完全に固まってしまった

「可愛い顔はそのままだけどね」

そう言い残して、ユノヒョンは屋敷に消えた


僕はもう……それからどうやって
両親と帰宅したのか…

まったく記憶になかった…



それから、僕の両親はなぜかギクシャクしだして

家にいるのが苦痛になった僕は
悪い仲間と遊びだした。

無意識にユノヒョンと同じような世界が見たかったのかもしれない



僕の評判はガタ落ちとなり、
両親はほとほと困っていた。

姉たちも僕のことを疎ましく見るようになり、
両親はシム家の一切を弟のミノに期待するようになっていた。


そんな中、ある時僕は両親の「面倒な付き合い」というやつで
バレエの観劇という、死にそうに退屈な場所に来ていた。

まるで興味のない催し物に
ゆったりとした特等席に身体を沈め
さあ、寝ようという時に

僕の頭の中に閃光が走った


斜め前の席に今、まさに座ろうとしている

それはユノヒョンだった…


上質のスーツを着こなして、
周りに眩しい笑顔で応えていた


だけど…だけどそのヒョンの横には

キレイな青年がいた

恥ずかしげに俯く人見知りの激しそうな青年。

その腕はユノヒョンの腕に絡められていた。

ユノヒョンはその青年をいたわるように
席に座らせ、自分もその横に座り
話しかけたり、何かと世話を焼いてるようだった。


そこは僕の席だ


咄嗟にそんなことを思った。

ヒョンが構うのは、一番マンネの僕だ。
言いようのない焦燥感にかられた。


母がユノヒョンの姿を見て隣の婦人に囁いた
「成金のチョン家の息子だわ。
男も女も見境ないってウワサはほんとうね」

「あの子は最近お気に入りのカイよ。
バレエダンサーでいろいろ面倒みてるらしいわ」

僕はいてもたってもいられず、
気がついたら劇場を飛び出していた。


「チャンミナ、俺と一緒にいたらいいんだぞ?
わかったか?」


なんだよ!嘘つき!


僕はしばらく街の中を走り

裏の路地まで走って、民家の壁にもたれて
息を整えた

次第にメチャクチャ可笑しくなり
大声で笑いだした

僕はバカか。

いつまでも、子供のころの憧れでヒョンを追っていたのか?
今じゃ僕だって相当な遊び人じゃないか

もう大人なんだ

お互いに……

それから僕の素行はユノヒョンを上回るほどに
ひどくなっていった






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