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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

僕の太陽(30)

〜〜チャンミンside〜〜



あんな別れ方をした翌日から

意外にもいつも通りの日常だった

職員室でも特に気まずくなることもなく
仕事の事ではユノと普通に会話をしていた。

こんなもんなのか。

普通にユノの笑顔も毎日みれて

資料室で2人きりになるシーンもあったけど
あの生徒がどうだとか、
試験問題をどうするとか、

同僚としての世間話も普通にしていた。

意外だ…

ユノはもっともっと、僕にすがってくるものと
思っていた。

僕は何を期待しているのだろうか。

ユノのためとは言え、
あれだけ酷い裏切りをしたのは僕のほうなのに。

僕をシム先生としか呼ばないけど
それも当たり前のことだ。

いったい、僕は何を…

僕たちのことを知っていた他の先生も
キュヒョンから聞いたのか、
僕たちの話をまったくしなくなって
以前のとおりの職員室だった。

ありがたいような、拍子抜けしたような。


ある日のこと

僕は授業中に忘れ物に気づき
生徒に自習をさせて、職員室にもどった。

職員室には2年の担任はドンヘ先生しかいなかった。

「忘れ物しちゃって」
「ああ、大変ですね」

バタバタと資料をまとめて教室にもどろうとしたら
ドンヘ先生から声をかけられた。

「シム先生」
「はい?」

「こんなこと…おせっかいなんですけど」

「はあ…」

「ユノは戻りませんよ」

「え?」

心臓がドキッとした

「あいつは一度見切ったら
後ろは振り返らない。

そういうヤツです」



僕の心臓がうるさい…

「あ、じゃあ…教室戻りますね」
バタバタと職員室を飛び出した…

なんでこんなに心臓がドキドキするんだろう


僕は今までどおりの生活にもどる。
静かに生きていくんだ。

ユノに振り返られたら、それは困る

困るはずなんだ…





〜〜ユノside〜〜




親父から呼び出されて
俺はスジンと親父の会社の応接室に座っている

スジンはうるさく話しかけてくるけれど
俺はぼーっと考え事をしていた。




まさか、チャンミンが他の男に行ってしまうなんて

そんな別れが突然くるなんて

俺はその事実を受け入れるのに
何日も寝ないで自問自答していた

なぜだ…

いつからだ…

あんなにうまくいっていたのに

お互いがお互いを全身で必要として
愛し合っていたと

すべて俺だけの勘違いだったというのか。。


俺はあのジョンミンとかいうヤツに負けた?

長身で品のいい、優しそうな紳士
落ち着いた大人の余裕があった。


チャンミンはあいつの側なら
心穏やかに過ごせるのか

あいつはチャンミンの喜びも悲しみも
すべてを受け止め
癒し、幸せにするんだろう。

俺は役不足だったのかな。

全身で、俺の全てで愛したつもりだったけど
これからもそうするつもりだったけど

チャンミンは俺ではダメなんだ。


この間のミナちゃんの結婚式。

チャンミンは本当はあいつに側にいてほしかったんだろうな。

あいつなら、気の利いた言葉でなぐさめて
チャンミンをあんなに興奮させずに済んだのかもしれない。

そんなことを考えていたら
親父が入ってきた。

かなりやつれている。

「2人とも悪いね、忙しいのに」

「そんなお父様、気になさらないでください」

「実はな、ユンホはホジュンから少し聞いてるかもしれんが、

新しく広げようと思った事業が暗礁に乗り上げてしまった」

「えっ?!」

スジンの声が応接室に響いた

「2人には早く一緒になってもらって
会社を手伝って欲しいんだ。

家族で力を合わせれば、なんとかなる」

「どういうことなんですか?!」

スジンが興奮している

突然応接室のドアが開いて
ホジュン兄貴が飛び込んできた。

「父さん!」

「なんだ、ホジュンいきなり」

「ユノ、聞くことないぞ
親父のいうことなんか」

「何をいっているんだ」

「ユノは関係ないだろ!
ユノは、自分の道を歩んでるんだよ
夢破れたのに、立ち直って新しい夢をみつけたんじゃないか。
なんで親父はそうやって、自分のいいように
人を動かそうとするんだ。

いくら親だってそこまでの権利はないだろ」

そういうことか。

俺に教師をやめろって?
ふざけんな

ふざけんなよ………


願って努力すれはなんでも叶うって
いつも生徒に言ってきたけど

そんなにうまくいかないよな…

少なくとも俺はまったくうまくいかない
またひとつ、夢をあきらめなくちゃならないのか



隣を見ると、スジンは青ざめている

傾いた会社には興味ないか、ってか逆に迷惑か?

笑うよな…




「親父、わかった。会社手伝うよ。
学校は今すぐ辞めるってわけにはいかない。それはいいか?」

「ユノ、そんなこと言うな
俺と父さんでどうにかするから」

「ユンホ、助かる」
親父は相変わらずだ。

「ただ、親父が俺の条件をのんでくれたら、だ」

「なんだ条件て?」

「スジンとは婚約を解消する
今後、俺は誰とも結婚しない。
だから後継だとか、政略結婚とか
そういったことは俺は一切受け付けない

それでもいいなら、手伝う。

そして、もし会社が元に戻ったら
俺を完全に自由にしてくれ

俺のすることには一切何もいわないでくれ」

「ユンホ…」
親父は渋い顔をしていたけど

こればっかりは譲れない

スジンはいつものマシンガントークもなりを潜め
じっとしている。

よかったな、スジン、面倒くさいことから解放されて。


こんなことになっても、俺はまだ
チャンミンを思っていた

こんな時、ツライ事を決断しなければならない時

本当にそばにいて欲しかった

何も言わずに、ただ側にいてくれたら
それだけで俺はなんでもできる

あの可愛い笑顔が恋しい


こんなんだから

俺はダメなんだな。
捨てられるんだ


チャンミンがなぜ、あいつの元へ行ったのか
今ならわかる気がする

俺は頼りない男だ

車のキーにつけたバンビのどんぐりキーホルダーを、眺めた。

あぁ、あの時、銀杏の虎を買わなかったお前。
スジンとの話をすると、
「そのことはいいから」と大して気にも留めなかったお前。

今思えば、思い当たる節はいろいろあったんだな。

笑うよな…気づけよ俺
鈍感すぎんだろ


でも、ちょうどいい具合に
俺にはやるべきことがたくさんある。

恋愛はもういい
誰とも一生恋愛や結婚はしなくていい

裏切りや相手が何を考えてるかわからない恋愛
そんなのはもうたくさんだ。



翌日から、教師の仕事、フットサルのトレーナー
そして親父の仕事の手伝い

たぶん俺はわざと、考える時間ができないように
忙しく生活していた。

そうやって、少しずつ
俺の中からチャンミンを追い出して行った





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僕の太陽(29)

〜〜チャンミンside〜〜



ユノと会えない日が続いた

ユノは社会人のフットサルチームのトレーナー
を始める事になったらしく
よくはわからないけど、たぶんすごい事だ。

ユノには好きなことを思う存分楽しんでほしい

そんなユノを本当はずっと側で見ていたかった



ユノは僕をほうっておくのが可哀想だと思ったのか
そんな合間にも会おうとしてくれたけど


僕は決心していた

大好きなユノを、僕から解放してあげることを



優しいユノは勘違いをしている
僕がスジンさんから何か言われて離れようとしているのだと。

ユノはきっと簡単には別れてくれない

もう2度と、僕の顔なんてみたくないほどに
徹底的に僕を憎むように仕向けないと。

それは僕自身の為でもあるんだ



ユノが僕のマンションで待つとLINEが入り
僕は兼ねてから無理をお願いしていたジョンミンさんに連絡をとった


タクシーが僕のマンションの前に停まり
上を見上げれば部屋に電気がついている

ユノだ。

はじめてユノが部屋で僕を待っていてくれてる

それなのに…



ジョンミンさんがタクシーの中で心配していた

「チャンミン、ほんとうにいいの?」

「はい…」

「気持ちはわかるよ?偉いよチャンミン。
でも、少しやりすぎじゃない?
憎み合うことは、ないでしょう?」

「これくらいしないと、ユノは僕から離れないんです」

「それくらい愛されてるのに」

「僕を愛してたら、いつまでもユノは幸せになれないんです。

そのことに、ユノは気づくことはできません。

そういうヒトなんです。

だから、わかってる僕が行動を起こさないといけないんです。」

「でもさ、そんな別れ方って
チャンミンは何も報われないじゃないか」


「僕は…もしも…もしも
将来ユノが普通に家庭をもち、
幸せな生活を送っていて

幸せだな、とふと感じた時に

この幸せはあの時チャンミンが別れてくれたから
得られたものだって…
そう思ってもらえたら十分なんです」


「…つらいね。
でもそんなチャンミンの愛が報われるように祈るよ

でもね、チャンミンは自分がとことん悪モノになって憎まれて別れるって、
それができると思ってるだろうけど

想像以上にツライ事だよ?」

「はい…」

「うん…じゃ行こう。泣いたらダメだよ?」


僕はジョンミンさんを連れて
へやのカギを開け、玄関を開けた


そこにはユノが無表情のまま、仁王立ちになっていた。


まさに鬼の形相で、突然現れたジョンミンさんを睨んでいる


フットサルの帰りなのか、ユニフォームそのままで
そこにユノは立っていた


「あれ?ユノ」
………できるだけ、のん気に

「お前!なんだ!」
いきなりユノがジョンミンさんのネクタイを
掴み上げた

「ちょっと!やめてよユノ!
なんなの?送ってもらっただけじゃん!」

「部屋まで送らせるのか?!」

「ユノ、カッコ悪いよ?
口うるさい父親みたい!」

「チャンミン…」

ジョンミンさんがネクタイを直しながら
「彼は、ずいぶん乱暴なんだね
前にもこういうことされたけど」

後夜祭の時もトゥギヒョンの店で
ユノはつっかかったんだ。

「チャンミン、お前、他の男を家に上げるつもりだったのかよ?」

「僕の家ですよ?誰を上げようと僕の勝手でしょ?」

「とりあえず、僕は退散するね
チャンミンまたね」

「あ、ジョンミンさん、今日はありがとね」



ジョンミンさんが帰ると
これ以上ないくらいの気まずい空気

僕はユノに殴られるのを覚悟した。


それなのに…

「チャンミンごめん」

「え?」

「寂しかったんだろ?
俺、ずっと夜はフットサルの方で
全然ここに来れなかった」


「…ユノ…」


「さみしがってるんじゃないかって
気にはなっていたんだけど…

これからは、遅くなるけど
俺、毎晩ここに帰ってくるからさ

独り寝させてごめん。寂しかったよな?」




ユノは僕の頬に手を伸ばした
大きくて温かい手

ユノはジョンミンさんに送らせたことなんて
簡単にゆるしてくれて、むしろそれは自分のせいだと思ってる


最近少し痩せた細い顔。
黒目がちの切長の目を優しく細めて

まっすぐに僕の目をみつめる


その手が僕の頬に触れたら最後

僕はまた、ユノの首に抱きついてしまうよ

そうしたら、きっと元どおりの僕たち

僕はユノの首元に顔を埋め
ぎゅっとユノに抱きしめてもらうんだ

そしてキスをして
今夜は朝までずっとユノの腕の中に



もう2度と僕はユノと離れようなんて
考られないだろうね



だから……

僕はユノの手を….払いのけた



ユノの目が見開く

ユノの手は行き所を失って、力なくさがった。


ユノの目を見るんだ、シム・チャンミン


「なにか、勘違いしてませんか?」

「…チャンミン…」

「気づきませんかね?」

「…何を?…」


「僕が独り寝してたと思ってますか?」


「…なに?…」


僕の頬を撫でようとして拒否されたその手は
握りこぶしとなり、震えている。


ユノの眼光が今まで見たことがないほど鋭い

長い前髪も震えている

「どういう…こと?」

僕はため息をついた


「わざわざ言わないとだめですか?」

「言ってくれないと…俺は…わからない…」

可哀想なくらい、その瞳も唇も震えている

ごめんねユノ

「さっきのジョンミンさん、ずっとつきあってるカレなんですけど」

「つきあってる?」

「僕、やっぱり彼の元にもどりたいんです」

「うそ…だろ?」


ユノ…ごめん…

「ユノにチャンスニからグイグイ来られて
なんだか引きずられるままに、こんな付き合いになっちゃったけど」

一生、片思いのはずが…ね

「正直言って…そろそろ疲れてきちゃったんです」
「お前、ウソつくな」

「ユノ、ほんとすみません」


「おまえ、この間資料室で
強がり言って泣いてた」

「そりゃ、ずっと一緒にいたんですから
捨てるとなったら可哀想で」

「捨てる?…俺を…捨てる?」

「あ、すみません。
ジョンミンさんはオトナでね
僕がユノと楽しんでる時も、余裕で見守っててくれてたんです。

ユノが僕との行為にハマってくるのが、僕楽しくて
しばらくユノといいかな?って
許してもらってたんです。

そろそろ戻ってくるか?って
そう言われて…

やっぱりもうジョンミンさんが恋しいんです」

「うそだ!…だってお前、俺のこと愛してるって何度も」

「ハハハハ!」

「なんだよ…」

「かわいいですね、ユノ。
そりゃ何度も言いますよ。盛り上がらないじゃないですか」

「盛り上がるって…」

「ユノはどうなんです?
ユノだって、婚約してるんだから
僕のことは本気じゃないでしょ」

僕は卑怯だ…

「違う!…それは…でも、俺…そのために、今…毎日」

「僕の為に婚約破棄とか、重いんです」

「重い?」

「そんな責任、負えませんから
婚約破棄とか困るんです

僕、別れなくていいって、何度も言いましたよね」

「何か言われたんだろ?
スジンから何か…」

「ユノ、僕は…そんなに犠牲的じゃないですよ
たしかにスジンさんからお金の話も聞きました
困りますよ、責任負えません」

「チャンミンにそんな責任負わせるわけないだろ
それなら、もう大丈夫だから」

「それはよかったですね、安心しました。
だったら、なんのわだかまりもなく
僕はジョンミンさんのところに戻っていいですね」


「そんなに…あいつが好きなのか」

「大人なんです…フフ」

「今も…俺より好きなのか?」

「はい。申し訳ないですけど」

「それ…本気で…言ってるのか?」

ごめん…ユノ…ごめん

「俺、自分でわかってる。
すぐキレるし、テキトーだし、不器用だし
チャンミンの望みも聞かずに、振り回すし
セックスだって、がっつくし…

それになにしろ…子供だし

あいつに比べたら、全然ダメなのはわかってるよ

でも………」

ユノ…それ以上言わないで……


「チャンミンを俺の全部で愛してる」


ユノ……


「それだけはあいつに負けない…

誰にも負けないよ

俺はチャンミンが他の男と楽しむのを
見守るなんてできない

それってオトナの余裕なのかよ?」


僕はずっと顔を背けていたけれど
ゆっくりとユノに向き直り、その顔を見た。

ユノの見開かれた、黒い瞳には
厚い水の膜が張っている

それがあふれ出ないように、必死で目を見開いているユノ

真っ直ぐに僕を見ている

僕からどんな言葉がでてくるのか

怯えたように…期待しているように…


愛してる…ユノ…愛してるよ…心から

「だから、そういうのが重くてたまらないんですよ
僕の負担なんです。

あなたと僕は、生活スタイルも考え方も元々違う。

そういう熱くて必死な感じは、正直迷惑なんですよ。」

「迷惑?」

「とにかく、僕をそれだけ愛してるというのなら、ジョンミンさんのところに戻して。
もうそろそろ、お互い戻るべき場所に戻りましょう」


「チャンミン…
俺の戻る場所なんて…お前しかいない」

僕は大きくため息をついて見せた…
このため息が震えてることにどうかユノが気づきませんように。

「ウザすぎますよ、ほんと。
もっとスマートに別れてくれると思ってました。」

「スマートに別れるって、なんだよ」

「そうやって、僕に縋らないってことですよ
それくらいのこともわかりませんか?」

ユノは両手を握りこぶしにしたまま、
うつむいて。

わすがに前髪が震えている。
その前髪からのぞく端正な顔立ち
うつむくと鼻筋が高いのがよくわかる


沈黙はしばらく続いた



「悪かったな…ダサくて、ウザくて、重くて?」

ユノは目に涙をいっぱいに溜めながら
口角を片方だけあげて、ニヤリと微笑もうとした。

でも涙をこらえるために、口元に力が入ってしまい
どうしてもへの字になって震える唇

僕は…僕の決心は崩壊寸前だった…


「とにかく、もう帰ってもらっていいですか?
合鍵は返してくださいね、それと…」

言い終わらない内に…ユノは僕の横をすり抜け
部屋を出て行った

ドアが派手に閉まる音が部屋に響いた

しばらく、そのままでいた

これで…よかった?…

あんなに傷つけて…あんな顔させて…

あの見開いた悲しそうな瞳が目に焼きついて離れない

ユノ…ユノ…

嗚咽と共に、涙が次から次へと溢れ出てきて
ユノが出て行ったドアが霞んで全然見えない

ユノ…

これでいいんだ…いつかこの傷も癒えて
ユノはあの公園でみた風景のような未来へ

さようなら…僕の太陽…僕のユノ…

僕は立っていられなくて、
崩れるようにその場にひざまずいた…

僕は子供のように大声で泣いた

誰にも遠慮せずに大きな声で。

ユノ…さようなら








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僕の太陽(28)

〜〜ユノside〜〜


俺はいろいろと焦っていた

兄貴に公園に呼び出されたのは
俺の顔が見たかったからじゃなかった

親父の仕事が少し危ないらしい……

元々、中小企業だったし
いろいろな影響は受けやすい状況だ。

親父が新しい事をしようとしていたのは
知っていた。
そこにスジンが加わりたがっていた。

兄貴はかなり困っている

ここで俺がスジンと婚約破棄して
マンションだのなんだの、金がかかることになると
マズイ…

自分の分くらいなんとかしないと。

俺は、社会人フットサルチームのトレーナーのバイトを紹介してもらって、夜バイトすることにした。

結構いい金になりそうで。
分割になるけれど
少しずつスジンに返していくしかない。

でも、女々しいことを言うようだけど
チャンミンと会えないのはツライ

だから会える時はなるべく会いたかった

なのに、自分の生活を大事にしたいとか言い出したチャンミンと、タイミングが合わない。

気持ちもすれ違っている。


でもそれはスジンがチャンミンを探し出して
何か仕掛けていたのが原因だったようだ。

どうしたのかはしらないけれど
スジンはチャンミンが俺と別れると言っていると
得意そうに連絡してきた。

チャンミンは丸め込まれてしまったんだ

今日は強がりばかり言って。
でも、チャンミンは泣いていた。

早くしないと、
素直なチャンミンはどんどん丸め込まれてしまう

俺は焦っていた…

だけど本当は

そんなことよりもチャンミンをしっかり
繋ぎとめておかないといけなかったのに

どんなに人の温もりに飢えているか
どんなに寂しさに耐えてきたのか

ミナちゃんの結婚式で
俺は十分認識していたはずだ。


嫌がられても、毎晩押しかけるべきだった。
毎晩押しかけて、甘やかして可愛がり
朝までずっと俺の胸に閉じ込めておけばよかった。


チャンミンの心に1ミリの隙間も開かないように
寂しさの入り込む隙間のないように…


俺はバイトをはじめてから
チャンミンのマンションに行かれなくなった。

なぜバイトをするのかは、言わなかったけど
それを話したら、快く了解したチャンミンに拍子抜けした。

「社会人チームのトレーナーなんてすごいじゃないですか?
教師との両立は大変かもしれないですけど
がんばってくださいね」

ああ、頑張るけどな?

俺が来なくなる事は寂しくないか?

お前は俺を思いやって、笑顔でそう言ってるんだよな?

チャンミンは甘えてはくるけれど
ワガママは決して言わない

それにしては、どこか安堵を感じるその笑顔が、とても気になる。。




それはバイトをはじめて数日経った頃
その夜は練習が早めに終わって時間が少しできた。

毎日の仕事でかなり疲れていて
本当は今夜こそ早めに寝たかったけれど。

それよりチャンミンに会いたい気持のほうが強かった。

LINEで今夜行くことを伝えたのに
既読にはなったが、連絡はなかった。


俺はチャンミンのマンションに向かった
エントランスでインターフォンを鳴らしたが
チャンミンはいない。

俺は以前渡されていた合鍵をはじめて使って中に入った。

基本いつもチャンミンが待っててくれたから
俺は合鍵の必要なんてなかったんだ

きれいに整頓された室内。

チャンミンの匂い。

仕事の疲れも吹き飛ぶようだ。

早くケジメをつけて一緒に暮らしたい

結婚という形はとれなくても
俺は一生チャンミンと一緒にいるんだ。


そんな思いで俺は風呂の準備をし、
チャンミンを待った。

こんな時間になっても帰ってこないのは
飲みに行ってるんだろうか。

最近のチャンミンの行動は把握できていない。

と、マンションの階下でタクシーが止まる音に続き
誰か降りたようだ。
チャンミンかな?でも話し声がする。

俺は玄関で待った。

クスクスと笑うチャンミンの声、
ヒソヒソとした話し声が近づいてくる。

俺はイヤな予感しかしなかった

握りこぶしが震える

額に脂汗が浮いている

チャンミン…お前は誰といる?








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僕の太陽(27)

〜〜チャンミンside〜〜



「本当にいいのか?」
「うん」

「……」

キュヒョンは腕組みして、ため息をついた

カウンターの中でトゥギヒョンもため息をついている

なにやら考え深そうにしていたジョンミンさんが
口を開いた。

「うん、わかった。
私、一役買いますよ」

「すみません…」

「チャンミンさん、あなたの愛は究極ですよ
正直心打たれました。

ユンホさんに殴られたら、かなり痛そうだけど
がんばってみます」

「そんなことには、ならないようにしますから」

「冗談ですよ、なにか話をするような場面があったら
いつでも言ってください」

「すみません…ありがとうございます」


そして僕は、数週間前からしょっ中かかってくる
あるひとつの電話番号…

無視しつづけていたけれど

ようやく通話をタップした

「もしもし」
「あーーやっと繋がった!
シム・チャンミン先生ですよね?
ユノの同僚の」

「そうですが」

「私は、キム・スジンといいます。
一度カフェでご挨拶させていただいた事があるんですけど、覚えていらっしゃいます?」

「はい、覚えています」

「お忙しいとは思うんですけど
一度お会いしたいの。
どんな話がしたいかは、先生の方がよくおわかりかと思いますけど」

キツく含みのある言い方だった

早速次の日に会う約束をした。


学校の廊下でユノが声をかけてきた
「今夜行くね、ちょっと遅くなるけど、」

「うーん、今日はだめ」

「なんで?」

「理由ってユノに言わないとだめ?」

「え?いや…そういうわけじゃないけど」

「ごめんね、また今度ね」

「……」

ごめんね…ユノ…

心が痛い…

この痛みにも慣れないとな…

僕は後ろを振り返らずに職員室に戻った




放課後、学校からかなり離れた駅で降り、
指定されたカフェに入った

スジンさんはもう待っていた

「お待たせしました」

「忙しいのに悪いわね」

「いいえ」

「シム先生ってほんとに綺麗ね
ユノが好きになるのもなんとなくわかるわ

そっちのテクニックもかなりのものなんでしょうね。
あの淡白なユノを溺れされるんだから」

スジンさんは真っ直ぐな長い黒髪を揺らして
綺麗に微笑んだ

僕はユノを馬鹿にされたような気がして
腹がたった

「淡白?ユノは淡白なんですか?
フフ…少なくとも僕の時はそんなことないから
あなたとだけ、淡白なんじゃないんですか?」

その綺麗な目が光った

「ま、いいわ。なにを言っても…
所詮先のない非生産的な関係なんだから。

ユノが好きな人ができたっていうけど
誰だか全然言わなくて
悪いけど調べさせてもらったの
いつも車が同じ場所に停まっていて、わかったのよ」

「調べていたんですか…」

僕の問いかけに答える様子はなかった

「事務的な事を言うとね、
もうマンションの契約もしてるし。

ここで婚約破棄なんてことになると
お金もたくさん発生するし
ユノのお父様のお仕事関係にも影響するの」

「ユノのお父様の?」

「わたし、用意周到なのよ」

「あなたはどうしてユノと結婚したいんですか?」

「単刀直入に聞いてくるわね!
そうね…
ユノと一緒に幸せになりたいの
幸せな家庭を築きたいのよ

それがわたしの夢なの」

羨ましかった…スジンさんが…

堂々と言えるその立場が羨ましい。

「ユノはね、基本自分しか愛せない人なの
長いことつきあってきてるから、よくわかってる

わたしが相手なら、彼は自由になんでもできるのよ
彼は大好きなサッカーの事だけ考えていられるの
他のことは全部私がやってあげるから

そして、うるさい事言わないユノが相手なら
私も好きなことができるの

だからこうやって多少の浮気も目をつぶることができるのよ。
相手があなたって知って驚いたけど

でもね、今あなたに出てこられると
結婚式やらその他のことが全然進まないのよ」

「……」

なんだか…スジンさんの言うユノって
誰のことだろうってほど
違和感があったけど…

たしかにこの人が奥さんなら
ユノはなにもしなくても、今までどおり
自由に生きられるのかな
そしていつか……

公園で子供と遊ぶユノの姿が目に浮かんだ

「大丈夫ですよ、心配されなくても
もうそろそろ別れるつもりだったので」

「え?そうなの?」

「はい」

「あら、なんだ。
それをユノに話した?」

「まだ…です」

「じゃ早くお願い。いろいろとタイムリミットなのよ」

「わかりました…」



神様が早く早くと言ってるのだろうか

まわりが一気に動き出したように感じる

このままではまったく動かないと思われてるのか
僕を急かすように状況は、動く。


さあ、どうしたものか…


スマホの履歴にはユノからの着信が何件もはいっていた。

僕はそれを全部消去して、その夜は眠りについた


翌日、登校すると
ユノは怒っているのか、僕の目を見ない

ジワジワと、こういうふうに時間をかけていかないと、いけない…

僕はいくつか、このタイプの別れを経験していた。

相手の奥さんに泣かれたり
相手が僕との関係に悩み出したり

そんな時も僕はわりと冷静だった

付き合っている時から
そこは一線をひいていたから

ただ、ユノに関しては
僕は近づきすぎて、溺れすぎた…

こんな思いをするのが、わかっていたのに


今思うと、好きになった時から
ユノは違ったのかもしれない

一生片思いを貫く覚悟なんて、今までしたことがなかった

それがこんな関係になってしまい
僕は浮かれすぎて…


ユノは陽の当たる世界へ戻らなきゃいけない


あの公園でみたユノの未来予想図を
僕が奪うわけにはいかないんだ

自然にその時が訪れるまで
一緒にいたかったけど

神様が今がその時だと僕に告げられたんだ

ふと僕の肩をトントンとたたく指

振り返るとユノ

「ちょっときて」

僕は誰もいない資料室へ連れて行かれた
資料室の奥までドンドン歩いて行って
くるっと振り返ったユノ

「今夜そっち行くから」

切れ上がったその美しい目は真剣だった

その目をまともに見ることができずに僕は
天井を仰いでため息をついて見せた

「約束できませんよ、ユノ」

「なんで?」

「ユノと付き合いだしてから
僕はトゥギヒョンの店に行かなくなってしまって
ちょっとした疎外感も感じてるんです
少し自由にしてくれませんか?」

「今夜もあのバーに行くのか?」

ユノは来てしまうだろう…

「違いますよ。ちょっと知り合いと飲みたいんです」
「じゃお前の部屋で待ってる」

僕はハハハと馬鹿にしたように笑った

「ウザい女子ですか?ユノ」

「あ?」

ユノの声には怒りが含まれていた

「チャンミン」
「はい?」
「俺の目を見ろ」
「なんでですか…説教ですか…」

僕は下を向いてクスクス笑っていたのを
襟首を掴まれて顔を上げさせられた

「チャンミン…なにがあった?」

ずいぶんと手荒く襟首をつかんだ割には
心配そうなユノの優しい瞳

きっとそれは…

僕の目から、ガマンしていた涙が耐えきれず一筋頬を伝って落ちたからだ。

「何も…」

「スジンから何を言われた?
会ったんだろ?
金のことを言われたか?」

ユノはそのいつも変わらぬ温かい胸に
僕を抱き込んでくれた

その大きな優しい手が、僕の頭をやさしく撫でる

「ごめんな、俺が頼りないせいで
イヤな思いさせたな…」

ユノ、謝らないで…

これ以上、優しくしないで…

「大丈夫だよ、俺いろいろ考えたから
もう心配すんな、な?」

早くしないといけない

こんな優しい人が取り返しのつかないことをする前に…

でも今だけ、今だけユノの胸にいたい







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僕の太陽(26)

〜〜チャンミンside〜〜



変な匂いで目が覚めた
何か焦げている


僕はばっと飛び起きた


隣で僕を抱きしめていたユノがいない
イヤな予感しかしなくて

そばにあったシャツを羽織り
恐る恐るキッチンへ行ってみた

そこには案の定ユノがいた。

グレーの霜降りスウェットを腰履きして
上半身裸の上に黒いパーカーを前を全開で羽織っている

喉元からおへそまで丸見えで
それは超絶セクシーなのだが

でも

「ユノっ!なにやってるんですかっ?!」

「あ、朝ご飯作ってやろうと思って」

「何を作ろうとしてるんですか?!これはなに?!」

「あの…野菜炒め…今頑張ってるから!」

「ふつう朝から野菜炒めなんて作らないですよ!
なんの野菜だかわからないくらい真っ黒じゃないですか?!」

「あーごめん、でも野菜と肉を一緒に採れるかな?なんてさ」
「しかも、こんなにたくさん、何人分作る気だったんですか?!」

僕は急いで火を止めた。

「座っててください。僕が何か作りますから」
「いっつもチャンミンが作ってるから
今朝は俺が、と思って…」

ふとユノと向かい合った

気まずそうな顔で俯くユノがなんかいじらしくて

「気持ちはうれしいです」
「うん…」
「この、焦げてない部分を拾って食べましょう
結構な量があるし。ね?」

僕はユノのスッキリと細い顎を撫でた。
僕の人差し指は、露わになっているユノの胸からおへそへと自然と降りていき、

そっとユノの顔を見上げると
その色気のある黒曜石の瞳は、すでにソノ気だった

僕の両手はユノのハダカの腰にまわり
ユノの手は僕の後頭部にまわる
そっと唇を合わせようとした時

テーブルの上のユノのスマホが着信を知らせた

「ユノ、電話」
「いいよ、そんなの」

ユノは僕を抱き寄せて口づけ
その表情はすでに臨戦モードだった。

それでも鳴り止まない電話に
「ユノ、気になるから出て」
「もう!」

ユノは何も悪くない電話の相手に
八つ当たりしていた
「もしもし!兄貴っ?!なに?!」

「ああ…うん…」
テンションは次第に落ち着いた。

ほどなくして会話を終え、スマホを置くと
うーんと伸びをするユノ。

短いパーカーから覗いた腰は意外に細くて
余計にその肩幅を広く見せていた

「チャンミン、今日はどうするの?」
「別になにも…3連休の最終日なんて
どこも混んでるだろうし」

「今さ、兄貴から電話だった
俺が実家に寄り付かなくなっちゃったから
心配してる
顔見たいから公園に出てこないかって。

チャンミンも行かないか?
兄貴の奥さんがお弁当作ってくれるってさ」

「僕は遠慮しますよ
ひさしぶりにお兄さんとゆっくりしてきてください」

「俺、チャンミンと行きたいんだよ
兄貴にチャンミン会わせたい」

「でも…」

「もちろん、いきなり恋人です、なんて言わないから。
ここから近いしさ
それに俺、夕方から部活あるから、
そんなに遅くならないし…ね?いいだろ?」

懇願されてとりあえず行くことにした

僕たちはユノの作った野菜炒めの食べれそうなところを食べて、出発した。

着いたところはこの辺りで市民の憩いの場となっている大きな公園。

僕はユノのお兄さんに会う、というので
少し緊張していた。

やがて、木の向こうから
穏やかそうなユノのお兄さんと
その奥さん、そしてまだ小さい男の子の兄弟が2人
ユノを見つけて手をふっていた

僕は初対面の挨拶をした。
お兄さんのホジュンさんは整った顔立ちをしていたけれど
ユノとは違うタイプだった。
あまり似ていない

奥さんはシネさんという可愛らしい人で、本当に仲のの良さそうな家族だった。

特に男の子たちのユノとの再会はそれはもう熱烈で
兄弟でユノを取り合い、ケンカになっていた。

「兄貴、彼は俺の大事な…」
「後輩のシム・チャンミンといいます
チョン先生にはいつもお世話になっています」

やっぱり、ユノがしようとした紹介の仕方はちょっと…恥ずかしい

「こちらこそお世話になっています。
こいつがだいぶご迷惑おかけしてるでしょうに。」

はい、ほんとに。今朝もキッチンをめちゃくちゃにされましたしね。

「ユノくんもだけど、シム先生カッコよくて
女生徒から大人気でしょう?」
奥さんが擽ったい事をいう

「こいつ、その辺の女生徒よりうんと綺麗だからさ」
「そうかもしれないわね!」


僕たちは楽しい時間を過ごした。

僕はシネさんを手伝って、お弁当を広げ
みんなが食べられるように用意をした。

「シム先生、ほんとステキだわ」
「いや、そんなことないです。
学校ではチョン先生の方がうんと人気ですよ」

「ユノ君も早く身を固めればいいのにね
婚約者もいるのに」

「あ…そうですよね」

「でもなんだかね、ユノ君他に好きな人ができちゃったらしくてね、
結婚話も暗礁に乗り上げてる感じよ」

「あ…」

「ここだけの話、その好きな人のこと、シム先生知ってる?」
「…いえ、知らないです」

「正直言うとね、私その婚約者ってあんまり好きじゃないの。
だから他の人と結婚してくれるといいなぁって。」

「はぁ…」

「ユノ君、いいダンナさん、いいパパになると思うのよ。先生もそう思わない?」

「…そう…ですね」

「早く幸せになってほしいわ」

僕はなぜかいたたまれない気持ちになって
その場にいるのがツラくなってきた

「あ、僕、そろそろみんなを呼んできますね」
「そうね、お願いね」

僕は子供用の遊具がある広場へ
みんなを呼びに行った。




それは………

あたりまえすぎる日常の風景……だった……


すべてがスローモーションで
ゆっくりと動いて見えた


下の子を片手に抱っこしながら、
上の子の滑り台遊びに付き合うユノ


そのうち、上の子もユノに抱っこをせがみ
ユノは2人を軽々と小脇に抱えて遊具を移動する


もう2人とも大喜びで、その嬌声がここまで聞こえてくる

ユノは子供が好きなんだ



青い空と木々の緑、日に焼けた肌に真っ白い歯が溢れるユノの笑顔

その子供に向ける笑顔がまぶしすぎて…

僕は目が眩んだ…


あたりまえすぎる風景に

あたりまえのように溶け込み…

それでもすべての「幸せ」を象徴していた


その最上級の幸せを

僕はユノに与えることは…できない…

こんなに、この風景にユノは溶け込んでいるのに

僕はその風景に、ユノの隣に存在することは
不可能だった…



僕は知っていた…


知っていたんだ…

でも、知らないふりをして
その事実に蓋をしていた…


今、そのパンドラの箱が開いた


認めなければならない事実が…

しなければならない事が…

次から次へとその箱から溢れ出て

僕を取り囲んだ



子供たちをあやすユノの風景から

父さんの声が、聞こえた

「チャンミン…おまえは神に背いているんだ」


背徳を生きる僕と
子供をあやすユノとは

永遠に平行線なのだ


それでも僕は…ユノを愛している…

僕は….ユノを幸せにしたい…


もう気づいてない振りはできなかった

僕のやるべきことは、ひとつしかなかった


それは身を切られるよりも
はるかに辛いやり方しかない


それでも、先送りしていた決断の時なのだ

ユノ、愛してるよ









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僕の太陽(25)

〜〜ユノside〜〜



日曜日の朝、俺は車でチャンミンを迎えに行った。

なんとなく昨夜は泊まりに行かないほうがいいのかな、という気がして。

でも、たまらなくなって連絡をしても、なんの返信もなかった。

それはそれでとても気になる。

どこにいたんだろうか。

俺に家族の事を触れさせないようにしたチャンミンは
どこかになんでも話せる、そんな場所があるのではないかと、
俺は少し寂しい気持ちになっている。

なんでも俺に一番に話してほしいし、
なんでも俺に頼ってほしい。

俺はこれでもかと、チャンミンを甘やかして
俺がいなければ生きていけないくらいにしたい

俺のどこにそんな凄まじい独占欲があったのか
今まで付き合った女の子が聞いたら笑うだろうな。


チャンミンがマンションのエントランスから出てきた。

参列できなくても結婚式なのだ、という事なのだろうか、
白いシャツを首元までキッチリとボタンをとめて
黒い細身のパンツに黒いニットの襟付きカーディガンを羽織っていた。

スタイルが良くて、歩いてくる様はモデルのようだ。

でもその柔らかい髪と白い肌、天使のような容貌と
その清楚な服装が相まって
聖歌隊の少年のような清らかさだった。

「おはようございます」
とニッコリ笑ったチャンミンは、いつもと変わらぬ
俺のチャンミンだ。

俺だけのチャンミン。

「乗って」

ふわりと助手席に乗り込んだチャンミン

抱きしめてキスしたいけど、ここは我慢…

昨夜の俺の着信やLINEに気づいてるはずのチャンミンが
何か言ってくるだろうか。

「じゃ、行こうか」

俺はダッシュボードの上にキュヒョン先生から預かった
教会までの地図をだして確認した後、車を出した。

「ユノはナビを使わないんですか?」

「え?これくらいなら使わないよ」

「初めて行くところでしょ?」

「そうだけどさ…必要ないよ、簡単な道だから」

「動物的カンってやつですかね…フフ」

「お前、バカにしてんなー俺の事」

「してないですよ、尊敬してるんです」

「この間、女生徒に、チョン先生はノーキンと言われた」

「ノーキン?」

「脳まで筋肉でできてるみたいだからノーキンだってさ」

「アハハ…」

珍しく可笑しそうに笑うチャンミンに
俺はみとれてしまい、

後ろの車に鳴らされて信号が変わったことに気づいた。

「脳は元々筋肉でてきているんだよっ!って言ってやった。あってるよな?」

「アハハ…たぶん…そしたら?」

「いやーん、先生ムキになって可愛いーだってさ」


たわいない話をしてるうちに
その教会についた。

教会に向かって右手に駐車スペースがいくつかあって
花屋などの運搬車が駐車されていて
その影になる位置のスペースが空いている

なるほどここなら、向こうからは見えにくいだろう。

ちょうどいい具合に駐車して
俺達はその時を待った。

俺は何を話していいかわからず沈黙していた。

ふとチャンミンが口を開いた

「昨夜は連絡くれてましたね?
キュヒョンたちと飲んでて。
連絡せずにすみませんでした。」

「ああ…うん…」

あのバーか。

「連絡に気づいて…すぐ帰ったのに」

「帰った?」

「ユノが来てるかと思って」

「あ、そうなのか」

「昨夜は会いたかった」

「マジか…あー行けばよかったな。なんなんだよ俺」

「今度ユノの家に行きたい」

「ゴミ屋敷はごめんだって言ってたじゃん」

「僕が会いたい時はしかたないでしょ?」

チャンミンがメチャクチャ可愛い事を言う
そんなに連発されると、ヘンな気になるからやめてほしい。

ふと見ると、教会のまわりに人が増えてきた。
その格好からしても、参列者に間違いない。

新郎新婦を出迎える準備だろうか、
出口を左右対象にならんで、
真ん中に通り道を作っている

それを見たチャンミンは一瞬身を潜めた。

俺たちは黙った。

そのうちに歓声が聞こえて
新郎新婦が出てきた。

するとチャンミンは急に身を乗り出し
ダッシュボードに覆いかぶさるようにして
ガラス越しに教会を見ようとした。

俺は向こうから見えてしまうんじゃないかと
ハラハラしたけれど、

チャンミンを止めるつもりはなかった。

「あ!ミナだ!ユノ、あれがミナです!僕の妹」

チャンミンは興奮していた。
わかるよ…ウエディングドレス着てるのがそうだろ?

「可愛いな、チャンミンに似てる」
「小さい時は泣き虫で…僕の後ばっかりついてきて…」
「へぇーお兄ちゃんっ子だったんだな」

「綺麗だと思いませんか?ミナ、綺麗ですよね?
僕はこんな綺麗な花嫁さん見た事ないです
それに…それに…とっても幸せそう
そう思いませんか?
ミナ、幸せそうですよね」

チャンミンは興奮している、というより
取り乱していた。

俺はチャンミンの手を握りしめた。

「とっても幸せそうだし、すごく綺麗だ。
ミナちゃんもチャンミンに見てもらえてよかったな」

チャンミンは僕の手を痛いほど握り返してきた。

「みんなから祝福されてますね!
祝福されてますよね!」

「ああ、祝福されて幸せな結婚だ」

「あ!母さんだ!父さんも…
あんなに嬉しそうだよ!ユノ!」

「今日は本当に佳き日だよ」

チャンミンはいきなり俺の手を振りほどいた。

「ユノ、ここ開けて!お願い!」
チャンミンはドアロックを外して外に出ようとした

「チャンミン!」
「やっぱりおめでとうって言わなきゃ
僕が…僕が言ってあげないと可哀想だ」

「チャンミン!ダメだ!」
俺は興奮しているチャンミンを抱きしめた

可哀想なチャンミン…

「ユノ、離して!お願い!」
それでも俺はチャンミンを離す訳にはいかなかった。

ここにチャンミンが登場してはいけないんだ。

それはダメなんだ…

「ミナ……」

俺の腕の中で、チャンミンの力が抜けていく…

「うっうっ…」
とうとう泣き出してしまったチャンミン

嗚咽の中、小さな子供のように泣きじゃくるチャンミンを
俺は自分の胸に強く抱き込んだ。


俺がいるから…お前の側には俺がいるから
いつでもこうやって抱きしめてやるから

頼む….そんなに泣かないで…

こんなに感情を露わにしたチャンミンを見るのは
はじめてだった

俺はチャンミンの抱える闇の深さが
想像を遥かに越えたものであることに戸惑っていた

チャンミンの闇を取りこぼしてないか…
俺はチャンミンを守れているのか…

自分でも不安になりながら
だけどそれを打ち消すように

チャンミンを強く抱きしめた


しばらくして、教会もまったくひと気がなくなり
俺たちは車の中で抱き合ったままだった。

チャンミンは少し落ち着いたようで、
泣きはらした顔が子供のようにあどけなく見えた。

「帰るか?」

「…はい」

俺は車を出した

もう夕焼けが綺麗な時間になっていた。

「なんか食ってくか?」
「はい」

俺は近くのイタリアンの店に車を停めて
2人で中に入った。

俺はパスタやサラダを頼んだけど
チャンミンはコーヒーだけ

「腹へってないなら、そのまま帰ったのに」

「でも、ユノはお腹すいたでしょ?」

「俺になんか気を使わなくていいんだよ」

「フフフ…でもコーヒーは飲みたかったんです」

「ならいいけど」

ほどなくして、料理が運ばれてきて
俺が食べる様子をチャンミンがコーヒー飲みながら見ているという、なんとも間抜けな図だった。

食事が終わり、俺もコーヒーを注文した。


「僕、たくさん泣いちゃいました」

「うん…」

「びっくりしたでしょ?」

「別に?びっくりしないよ」

「それに僕、外に出ようとしちゃって」
「チャンミン」

「はい?」

「もう…いいよ。大丈夫だから」

「ユノがいてくれてよかったです」

「そうか?」

「はい、ほんとに」

「それならよかった」

チャンミンにやっと笑顔が戻った

この笑顔を守りたい
いつでも笑顔でいられるように
もうあんなに悲しむことがないように…


俺はその夜、チャンミンのマンションに泊まった

俺にしては珍しく
優しく包み込むようにチャンミンを抱いた

なのにチャンミンは何度も俺の名前を呼びながら
涙を流して泣いていた

そんなに泣かないで…俺のチャンミン








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僕の太陽(24)

〜〜ユノside〜〜



移動教室の下見から帰ってきて、報告書だなんだと忙しく、
サッカー部のリーグ戦もはじまり
俺はチャンミンとはあまり会えずにいた。

それでも暇を見つけてはチャンミンのマンションに行き、チャンミンと愛し合った。

こんなにも誰かに夢中になったことがない俺は
自分を見失いがちになり、怖くなることがある。

肝心のスジンとの話は一向に進まず。

恋人同士としては完全に崩壊しているこの関係を
どう考えたら結婚に結びつくのか
まったく理解に苦しむところなのに

スジンは俺の婚約者という立場を捨てるつもりはない。

そんな相変わらずのストレスの中、

移動教室の決起集会と称して
2年の担任で集まり飲み会が開かれた

もうなんだかんだで、
みんな俺とチャンミンのことは知っていて

ある意味気持ちは楽だった。

みんなはチャンミンの性格を知っているからか
からかったりする事はなく、
ごく自然な事として、俺たちを受け入れてるような
ムードを作ってくれた。

学園の愚痴やら移動教室の話など学校関係の話題が
ひととおり済むと
ボア先生とドンへが帰って行き、男3人で飲んでいた。

ふとキュヒョン先生が口を開いた

「あ、そういえばチャンミン。ミナちゃんが結婚するって…聞いてる?」

「え?!ミナが結婚?」

「ミナちゃんって誰?」
「あ…僕の妹だけど…」

あぁ、前に妹がいるって言ってたな
チャンミンは親から縁を切られてるって
だから妹の結婚を知らなかったのか

「それでさ、チャンミン…
ミナちゃんから伝言なんだけど…」

「キュヒョンのとこに伝言?」

「うん、これ」

そう言って、キュヒョン先生は一枚の地図を出した。

「今度の日曜日、この教会で結婚式。
でさ、この部分の駐車スペースを予約してあるんだって。
ここからなら、教会から出てくる様子が見られるらしい。
車に乗ってれば誰にもわからずに。

ミナちゃん、お前に見て欲しいって
ウエディングドレス姿…」

「キュヒョン!ユノの前でそんな話…」

俺はそのチャンミンの言葉に無性に腹がたった。

なんだよ、
俺には家族の話はできないってことか。
俺がチャンミンのそういう部分に入りこむのは
ダメなのか?

俺はその地図をひったくってチラッと見ながら聞いた
「俺が車出す。で、何時?」

かなりぶっきら棒な言い方をしてしまった。

「ユノ、いいよ、サッカーもあるでしょ?」

「土曜日はダメだけど、日曜日は大丈夫。」

ほんとうは日曜日も練習だけど
他の顧問に任せよう。

キュヒョン先生が俺に頭を下げた
「すみません。お願いします」

「キュヒョン!」
「方法ないだろ?俺たち車ないし」
「でも、こういう事、ユノに頼むのはいやだ
ユノ関係ないし」

「関係ない?」
俺は思わず声に怒りを含ませてしまった。

チャンミンは口を真一文字に引き結んで
うつむいている。

「チャンミン、俺は関係ないってなんだよ」
おさまらない俺。

キュヒョン先生はため息をついた。
「チョン先生、よろしくお願いします
ここは僕、帰りますから。

チャンミン、お前もう少し素直になれよ」


キュヒョン先生も少々ムッとした表情のまま
席を立ち、自分の勘定を置いて帰っていった。

俺たちは2人残された。

しばらくなんとも言えない沈黙の中
チャンミンが口を開いた


「ユノ、ごめんなさい…
気を使ってくれたのに、関係ない、なんて言って。」

俺は黙ったまま。

チャンミンはいつもこうだ。
俺を突き放したり、近づけないようにするクセに

そのことをすごく素直に詫びてきたりする。

「謝るなら、最初から言うな。」

「ユノに迷惑かけたくなくて」

「迷惑?なにが迷惑なんだよ。お前の大事なことに
関わるのが迷惑ってずいぶんだな。」

チャンミンは斜めにひざまづいて座り
俺の方を見ない。

「なんていうか…」
「…」
「そこは僕の暗い部分だから…」
「…」
「ユノに見せたくないっていうのが本音」

チャンミンの言いたいことは
わからなくはない

「俺たち、そんな薄っぺらい関係じゃないだろ?」
「……」
「ただ会って、セックスしてさ、
お楽しみだけの付き合いじゃないつもりだけど
少なくとも俺は。」

意地悪な言い方だった。
まるでチャンミンは俺とは遊びだと言ってるみたいだ。

チャンミンがふと顔をあげて俺をみた。

哀しそうな大きな瞳

「チャンミン、俺はお前の全部を引き受けて
いろんな嫌な事からお前を守りたい。
幸せにしたいんだよ。」

「ユノ」

「なに?」

「スジンさんとお父様に、好きな人がいるって
きちんと話したって言ってたけど」

「話したよ」


「その相手は男だと、言えましたか?」

「……」

何かで頭を殴られたような
いや、心の腐っていた部分を抉られたような
俺にするどい衝撃が走った

「言えなかった…でしょ?」

チャンミンは何かから解放されたような
安堵の笑みをその綺麗な顔に浮かべた

「それは事を、スムーズに運ばせるために
言わなかっただけで、
後からはもちろん言うつもりだったよ。
言えなかったんじゃない、まだ言わなかったんだよ

それは男だ女だっていうのは関係ない」

「ユノ….それはね」
「親父もスジンも…お前に会わせろと言った。
でも断わった。
それはお前が男だからじゃない!
お前を守りたかったからだ」

俺は声を荒げてしまって、
まわりの客がチラチラとこっちを見ていた

俺は両手で顔を覆い、テーブルに肘をついた。

伝わらない…
どうしたら伝わるんだ…

ただ愛してるだけなのに…
それだけじゃダメなのか…


「ユノ…もうわかりました。
ほんとにありがとう
僕なんかのこと、そんな風に…」

「でも、お前、信じてない…」

「今度の日曜日、お願いします。
妹の晴れ姿、見たいんです。
一緒にいてくれますか…」

チャンミン…

俺は思わず、両手から顔をあげた。

「あ…もちろんだよ…
一緒に見よう…俺たち2人で祝福してやろうな?」

「ありがとうございます」

それでもまだチャンミンの笑顔は哀しそうだったけど

とりあえず笑ってくれた事に
急浮上するっていう、
なんとも単純なつくりの俺だった。









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僕の太陽(23)

〜〜チャンミンside〜〜


あれから、何度繋がったのか…

僕たちは向かい合い、横向きに抱き合って眠っていた

僕はユノに包まれて、夢と現実の間をふわふわと
微睡んでいた。

ユノは僕の髪を梳いていて、何度も頭にキスを落とす

「チャンミン、何度も俺の名前呼んでた…」
「…ん?」

「ユノ、ユノってさ…」

「んーーだってさ、僕…」
「?」

「ユノがどこにいるのか、わからなくなっちゃってさ」
「ハハハ」

ユノの乾いた独特の笑い声

「なんだ、じゃあそう言ってくれればいいのに」
「なんて言うの?ユノ、どこ?って?」

「そうだよ、そうしたら "ここだよ" って
お前の手を掴んでやったのにさ」

「掴まれてたけど…痛いほど…フフフ」

「俺がどこかへ行ったんじゃなくて
お前がどこかへ飛んでいったんだろ」

「フフフ…そうだと思う」

「んーーそんなに良かったか」

「ユノ!そういうことは朝になって言わないんだよ!」

「ごめん、ごめん」

そう微笑んで、ユノは僕の髪をクシャクシャにした。

僕はまだ布団で微睡んでいたけれど
ユノは走りに行ってくるという

トレーニングウエアを持ってきていたんだね

さっさと身支度をするユノ。

タオルを巻いて、パーカのフードを被り、
ランニングシューズの紐を結びなおした。

「じゃ、ちょっと行ってくる」

「うん」

鍛えられた身体に程よくフィットしたトレーニングウエアがよく似合う。
広い肩幅に長い脚。

いっつもジャージ姿のユノだけど
それでもカッコいいのはユノだからだ

女生徒がよく言ってる
「チョン先生はジャージなのにエロい」

ほんとに、エロいよ

ここで僕も一緒に走りに行ったりすればいいんだろうな。

ユノと僕の住む世界は本当に違いすぎて…

僕は起きて洗面をして、荷物をまとめた

ユノが戻ったら食事をして、宿舎を出なきゃ。


結構な時間が過ぎて、ユノは戻ってきた

息が整わないままに、またその場でどんどんウエアを脱いでいく。
パンツ一枚になったと思ったら、それも脱いで
露天風呂に入っていった。

もう…

僕は苦笑しながら、ユノの脱ぎ捨てたものをひろって
袋にいれていく。

ユノの着替えを出そうとして、ふと手がとまった

そこまですることないか。
僕は奥さんじゃないんだし

こんなことしていたら、本当に離れられなくなっちゃう

少し寂しく思っていたら
露天風呂から大きな声がした

「チャンミーン、着替えとタオル!
だしといてー」

「はーい」

僕はそれでも喜々として、着替えを整えた。


食事をすませ、施設の人と最終確認を終えると
ユノが荷物を車に積み込み、車を出した。

朝の森林はまた違った美しさを見せて
僕は思わず、車の窓を開けて少し顔を出した。

こうして目を瞑って風を受けると
本当に気持ちいい

「チャンミン」

「ん?」

「お前、ほんとに綺麗だな」

「あ、そ、そお?」

真剣な顔で前を見て運転するユノ。

「お前の事好きなやつ、他にもいるだろ」

「どうかな?いるかもね」

「離さないよ、俺。絶対誰にも渡さないから」

ユノは見えない相手に挑むように
前を見据えている。

あまりにカッコいいその横顔に僕はみとれた。

こんなユノが、僕を離さないって言ってくれてるなんて…

僕だって離れたくないよ
決まってるじゃん


ほどなくして、移動教室で予定されている
みやげ物店に立ち寄った

この地域の名産品やそれを使用したお菓子など
品揃えは充実していた。

店の人に日程を伝えて
在庫の確保をお願いした。

車に乗る前に
ふと僕は立ち止まった

その広場の角に、寂れたお店がある。
この店舗ができてしまい、
客足が遠のいてしまったのだろう

活気のようなものはまったくなく、
店がやってるのかどうかも、怪しい。

でも、その店頭には
小さい頃、こういう観光地に来ると
よく親が子供に買ってやるようなおもちゃがあって
まるで地域に関係ないような、そんなおもちゃ。

僕は懐かしくなった。

「ユノ、ちょっとあの店に行きたい」

「え?あ、いいけど」

僕は走り寄り、懐かしくそれらをみていた。

いつの間にかユノも来ていて、
「お前、その飛行機ほしいのかよ?」
「違うよ。懐かしくってさ」

「うん、よく家族で旅行すると
買って欲しくてダダこねたな」

「アハハ、ユノがダダこねる様子
目に浮かぶようですね」

「たぶん、想像通りだと思うよ」

ユノはそう言いながら、置いてある売り物を見るともなく見ていた。

店番をしているのは、お婆さんが1人。
寝ているのか起きているのか、よくわからない。

突然ユノが何か気になるものを見つけたらしい。

「チャンミン、これ!」
「なに?」

それは本物のどんぐりで作った、バンビのキーホルダーだった。

「これ、チャンミンそっくり」

「こっちはユノそっくりですよ」
僕は銀杏で作ったトラのキーホルダーを手に取った

2つとも、温もりのある手作り品だ
ストラップではなく、キーホルダーというのがまたいい。

「記念に買おうぜ、両方。
俺、バンビ持っとくから、チャンミンはトラ持ってなよ」

記念…

僕はユノとの何かを物に代えたくない。
記念に物を残すのはいやだ。

「いやですよ」

途端にユノが悲しそうな顔をした。
あまりに拒否感があっただろうか。

「僕は今度の移動教室で買いますよ」
「買ってやるよ」
「今度の時に自分で買います」
そう言って微笑んでみた。

「俺はバンビを買おうっと」

ユノはそのどんぐりのバンビを袋に入れてもらって
お店のお婆さんに丁寧にお礼を言っていた。

ユノは俺様キャラに見えるけど、自分より弱い人に
とても優しい。

ごめんね、ユノ…


僕たちはそのみやげ物店を最後に
今回の下見を終え、家路についた。

車の中でもとりとめなく話は続いた。

「俺、チャンミンのこと、ドンへに言った」

「え?うそ?!」

「だって、キュヒョン先生も知ってるんだろ?」

「キュヒョンは…キュヒョンはもう学生の時から…」

「ドンヘは大して驚いてなかったよ。
ボア先生なんて、チャンスニとのキス写真を
揉消すのに一役買ってたらしい」

「え?!ボア先生まで?!」

「だから俺たち、もうさ…」
僕はユノの言葉を遮った

「ユノ、教師っていうのはリベラルな考えをする人が多いから、
受け入れてくれる人もいるかもしれない。

でもね、世間では完全に異端なんですよ?
表に出したら生きにくくなるんです。

みんなが両手をひろげて歓迎してくれる訳ではないですよ。」

「わかってるよ」

「わかってない!ユノは全然わかってない!」

僕は思わず声を荒げた

車中に沈黙が流れた…


「ごめんなさい、大声あげたりして。」

「いや、俺もスジンの事が片付いてないクセにさ」

「それは…ユノ…」

片付けなくていいんだよ…


雰囲気はよくないまま、車は高速を降りて
僕のマンションまで来てしまった

ユノはエンジンを止めて、僕の手を掴んだ

「ユノ?」

「なんて言っていいか、わかんないけど」

「……」

苦悩したユノの辛そうな顔が…
電灯に照らされて、影を作っている。

「チャンミンお前さ、余計なことは考えんな」

「余計なことって?」

「俺とチャンミンがお互いを好きかどうか、
それ以外のことは全部余計なことだ」

「ユノ…」


そう思えたら、ほんとにいいのにね。

喉元まで言葉が出ていたけれど。

仕方ない…
ユノは真っ直ぐに生きてきたんだ。
僕の苦悩を知らない。。
理解しろというのがムリなんだ。

僕はため息をついて、ユノの手を握り返した

「でも、移動教室の決起会では
イチャイチャするのはやめてくださいね?」

「うーん、どうかな?なるべく気をつけるけど」

さっきまでの真剣な顔が破顔して
口角をあげてニヤッと微笑むユノ

「それじゃ、僕降りますね。
運転全然変わってあげられなくてごめんなさい」

そういうと、ユノは僕の首に手を伸ばし引き寄せて
口づけた。

そしてぎゅっと僕を抱きしめて

「うん、おやすみチャンミン」

その低く甘い声が僕の耳をくすぐった

僕はユノの顔を見ずに、ユノを振りほどいて
ドアを開けて車を降りた

そのまま真っ直ぐにマンションのエントランスまで
歩き、最後に振り返って車に向かって手を振った

車の中で手を振ってるのはわかったけど
ユノの顔まではわからなかった。

きっとユノも今の僕の泣き顔は見えないだろう









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僕の太陽(22)

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僕の太陽(21)

〜〜チャンミンside〜〜


僕たちは公園を出ると、車に乗り込み宿泊施設へと向かった。

国道沿いは、夕焼けに木々が影絵のように投影されて
幻想的な景色だった。

運転するユノの横顔は
夕暮れが影を落とし、その端正な顔立ちを際立たせていた。
開けた窓から心地よい風が入って
ユノの髪が後ろに流れる

その様は凛々しく爽やかで、
ユノが話の途中で大きく笑うと、
太陽のようなオーラが溢れ出る。

僕の太陽

僕のユノ

ユノは今僕の隣で、夕陽色に輝いている

できたら、このままずっと一緒にいたい…
永遠に側にいられたら。

僕はふいに涙が出そうになって、
ぷいと窓の方に身体ごと向き直った。
そして外の景色を見てるふりをしていた。

ユノはそれでも、何やら可笑しそうに
いろんな話をしていた。

程なくして、空が闇に包まれるころ、
宿舎に到着した。

研修やこういった学校の移動教室に使われる
しっかりした造りの大きな建物だった。

通された設備はどこも清潔で明るかった。

窓の外には自然が溢れていて
とてもいい施設だった。

それぞれの部屋は2段ベッドが左右の壁に一台ずつつけてあって
4人が過ごせるようになっていた。

ユノが僕に耳打ちした

「まさか、俺たち2段ベッドで寝んのかよ」
「し、仕方ないでしょ、下見なんだから」

その話が聞こえてしまったのか、
係の人が僕たちに言った。

「あ、先生方には
離れが用意してあります。
一般客用で部屋に露天風呂もあります。

打ち合わせが終わったらお連れしますから」

「そうなんですか!
なんかすみません。ありがとうございます!」

ユノがとても嬉しそうだ
係の人が部屋を出ると、いたずらっ子のような笑顔で僕を見た。


あらかたの打ち合わせを終えて
その離れに案内された。

木造りの瀟洒な離れは
落ち着いていて、とてもいい感じだった。

奥には大きめのベッドが2つ並んでいて
それを見たら、ドキドキしてきた


「お食事をお持ちしますね」

係の人が離れを出ると
待ち構えていたように、ユノが後ろから僕を抱きしめた。

「ユノ…びっくりするじゃん!」
「もう2人だけだよ」

ユノは後ろから僕の頸にキスをした。
軽く食むようなキスに僕の肌が震える

「食事が運ばれてきちゃうよ」
「じゃあ、食べてからゆっくり」
「もう!エッチなことばっかり言う!」
「え?ゆっくり風呂って意味だけど?」

「….….」

「チャンミンは何を想像したんだ?」
クスクスとユノが笑う。

そのうち可笑しくてたまらない、というように
お腹を抱えて笑いだした

「チャンミン、エッチだなぁ〜〜あーウケる」

「…ユノ?」

「あ?」
なんとユノは涙を流して笑ってる…

「僕は移動教室当日の事を考えて、
やっぱりあの2段ベッドで寝ますね」

できるだけ、ニッコリ笑ってみた。

「あ、チャンミンそうじゃなくて…」
途端に慌てるユノ

「あくまでも僕たちは下見ですからね。
やっぱり生徒と同じ目線になるべきです」

「待ってチャンミン!」

「何を待つんですか?」

「俺はもっとエッチなこと、たくさん考えてました!
ほんとすいません」
ぺこりと頭を下げるユノが可愛かった。

僕は思わずその下げた頭にキスをしたら

突然、施設の人が食事を持って入ってきた

僕はすごくびっくりしてしまい
ユノはその様子をみて、また笑いだした

なんだか悔しいけど
ユノの笑顔は大好きだから


僕たちは美味しく食事をして
楽しくいろんな話をした。

こんなにユノと長く一緒にいて
いろんな事話したのは初めてで

僕はユノの事がどんどん好きになっていく

なぜか僕は、言いようのない不安にかられた
理由はわからない

もうユノと離れるのが怖い…

様子が変だったのか
ユノが心配そうに僕の顔を覗き込んだ

「チャンミンどした?」

「ううん、なんでもない」

「今日は疲れただろ。結構歩いたし」

「ユノだって、ずっと運転してて
疲れたでしょ?」

「俺はこんなんで疲れないよ
普段から鍛えてるからね」

「そうだね…フフ」

「俺、露天入ってこよ」

ユノはその場でスウェットを脱ぎ、Tシャツとパーカーも脱ぎ、ボクサーパンツ一枚になって、
作り付けの露天風呂に入っていった。

お湯を流す音がしばらくした後、静かになった。

僕は脱ぎっぱなしのユノの服を軽く畳んでから
自分も服を脱いだ。

タオルを腰に巻いて、そっと両手で露天風呂の引き戸を引いた。

立ち昇る湯気の中にユノがいた。

ユノは露天風呂の縁に両手を大きく広げて
ゆったりとお湯に浸かっていた。

僕が引き戸を開けると、ユノは睨むように僕を見据えた。

湯気の中のその人は
すでに妖艶な色香を漂わせて

もう冗談を言っても、笑ってくれそうにはなかった

僕は猛獣に睨まれた小動物のように
捕らわれる覚悟を決めたそれのように

ゆっくりとユノの入っている湯船に
片足から入った

ユノは僕の一挙手一投足を狙うように見つめて、
いつ襲い掛かってくるかわからない虎のようだった。

僕はゆっくりとユノに見せつけるように
ユノの目を見ながら湯船に沈んだ。

と、その途端、
ユノはまさしく襲い掛かってきて、
僕はあっという間に捕らわれ、その胸に抱き込まれた。
露天の湯が激しく跳ねた。

ユノの胸に捕らえられた僕は
じっとユノの目を見あげた。

「なんだよ、チャンミン…
お前、今日はなんなの」
ユノの声が掠れている

「なにが?」

「俺を挑発してるだろ」

「してない…してないよ…」

僕は、ユノの鎖骨に手を添えて
その首筋にキスをした。

「ただ、ユノとしたくてたまらないだけ…」










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