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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

籠の鳥〜あとがき〜

百海です

「籠の鳥」最後まで読んでいただき
本当にありがとうございました

ユノとチャンミンにこんな映画にでてほしいな
という私の妄想の元、描かせていただいたお話です。

でも、今描き終えてみると

現在、陸軍軍楽隊と義務警察に別れてしまっている2人への想い。
私はそれををカタチにしてみたかったのかも?
なんて思っています。


前回の「ひだまりの匂い」は
チャンミンに思い出してほしいユノさん

今回はユノに思い出してほしくないチャンミンでした。


私は韓国ノワールの世界が大好きで
元々は香港ノワールも好きだったこともあり

ワクワクしながら楽しんで描かせていただきました

いつくかの銃を使うシーンや、相手の隙をつくシーンなどは、そんな映画から拝借しています

でも、いつになく
何度も何度も描き直しをしたお話でした。

表現が気に入らなくて、というのではなく
話の筋をどんどん変えてしまいました。


最初はダークサイドなミンを描きたくて
故意にユノを陥れる設定だったのです。


でも、話が進んでいくうちに
ユノがチャンミンを許すシーンが上手く書けなくて
なんだかしっくり来ないのです

ユノは優しくて寛大だけれども
何をされても許す、というタイプではなさそう。

私のユノに対するそんなイメージがそれを邪魔したのかもしれません。

そして、最後は2人を高飛びさせる予定でした。
無事にソウルを去った後、カン刑事がやれやれと言った感じで見送る、みたいな。

お話としては
たぶん、その方が面白かったと思うのです


でもリアルなユノとチャンミンは
過去から逃げる、というよりは
過去を乗り越えて力強く生きていくイメージがあって

こんな終わり方にしてみました。

妄想といえども、やっぱりリアルなイメージが
どうしても先行してしまうものですね💦

最後の2人の24時間を3回に分けて書いてみましたが
この3回の空気感は自分でとても気に入っています

寒い夜明けと初雪と夜景。

せつなくて大好きなモチーフです。

ちなみに、ソウルタワーには
私は行ったことはないのです(笑)


それと、映画的というところで
場面のスピード感やドキドキ感が
うまく伝わっているかどうかもかなり不安でした

なにしろ、文章力が足りなくて。。💦

結構勢いで書いてしまい、もう見直ししないように
した場面もありました💦

やっぱり難しいですね💦


そして、

たくさんのコメントや拍手、ほんとうに
ありがとうございました!

いつものお話にくらべて
叫び的なコメントが多くて、とてもうれしかったです!

本当に励みになります(T ^ T)

私自身も、コメントへのお返事が
かなりくだけて書けるようになった気がします。

最初は自分の書いたお話に、誰かが感想を言ってくれるなんて
少し、信じられない気持ちもあって
かなり固い感じのお返事が多かったように思います

最近は皆様が、お話の感想だけでなく
普段の生活が垣間見えるようなコメントもあって

とても楽しくお返事させていただきました


このお話を書いている途中で
熊本で大きな地震があり、

読者様の中にも度重なる揺れを感じられた方も多くて、とても心配でした。

被害に遭われた皆様、心よりお見舞い申し上げます。

早く、日常生活が戻ってきますように
微力ながらお祈りさせていただきます。

そして、この「籠の鳥」に
拍手と非公開コメをいただいた

よん@@様、ゆの@@ま様、れ@様、@ぅ様、
R@@@☆様、e@@様、子@ゲ様、た@ご様、ne@@o様、
み@@@ン様、Mo@@@o様、きょ@@様

お返事できなくてごめんなさい
いつもありがとうございました



そして、次のお話ですが
はじめて続編を書かせていただきます

最近書いたばかりの「ひだまりの匂い」
その後の2人をそんなに長くはならないお話になりますが、今、書いています。

お話はハッピーエンドだったのですが

まだ足元ふらつく生まれたてのバンビのような
そんな2人の関係だったので、そこをもう少し。

ハピエンでめでたし、めでたしの後でも
現実はそれなりにいろいろあるよね?
というお話です。

2〜3日のうちには、アップします

もしお時間あれば、また遊びにきてくださいね!


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籠の鳥(完)

〜〜チャンミンside〜〜



すっきりと晴れ渡った5月の青い空の下

その重い扉が開く



「シム・チャンミン、もうここに戻ってくることのないように」


「はい、今までありがとうございました」

僕は丁寧にお辞儀をした。


「身元引受人はカン・ドンジュで良いのですね」

「…はい」


「迎えがないようだけど、大丈夫ですか?」

辺りを見渡した刑務官が聞いた

「…はい」



半年ほど前からユノに会えてない…


最初は何かと面会に来てくれたのに


この半年、ユノがほとんど面会に来れなかったのと

来てくれても、僕が会うことができない時もあった。



代わりに毎週手紙が届き


その長い手紙は全部の内容がわからなかったけれどかなり忙しい、というようなことだけは読み取れた。

最初の手紙は看守に読んでもらっていた。

でも文末の「愛してるよ、チャンミン」まで
しっかり読まれるのが恥ずかしくて

後はわかる言葉だけ自分で拾い読みしていた。


どうしたんだろう。

他に好きな人でも出来たのだろうか…


ユノのことだ。

言い寄ってくる人間や誘惑はたくさんあっただろう


僕の身元引受人はカン刑事だった。

いや、もうかなり前に刑事はやめた、と聞いている。


僕は3人の刑務官から見送られ、

塀の外にでた。


もう一度、僕はお辞儀をして
振り返って辺りを見渡した


ほんとに、迎えは誰も…いない…


僕はずっと夢見ていたのに

ユノが両手を広げて僕を迎えに来てくれる夢


それを生き甲斐にまじめに生活をし、

異例の早さの仮釈放だった。


それなのに…


僕は胸に荷物を抱え、
明るい陽射しの中、トボトボと塀に沿って歩き出した


何台かの車が行き交う中
急に僕の横で一台の車が急ブレーキをかけてとまった


その音にびっくりして振り返ると


「ユノ!」

「チャンミン!なんだよ、早かったな」


白い車の窓を開けて、ユノが身を乗り出した


僕は咄嗟のことに何も言えず…

頭の中には言いたいことがたくさんありすぎて
まるで詰まって出てこない


「1時だったろ?オヤジからそう聞いてたぞ?」

「ちがうよ、12時だよ?オヤジって、カン刑事?」


なんだよーとユノは頭を掻いて、クルマから降りた


ジーンズに紺色のカットソーで
胸にはサングラスを引っ掛けている


しばらくぶりに見るユノはやっぱりカッコよくて
僕は言いたいことが言えなくなってしまい
うつむいてしまった


「もっと映画みたいな出迎えをしようと
思ったのにさ」


「12時って言ったもん」


僕も期待していたような出迎えではなくて

なんだか拗ねてしまった…


「なぁ」

「ん?」



「おかえり、チャンミン」

その声に顔を上げると、
ユノはその優しい目を弓なりに細め
にっこりと微笑み

両腕を広げてくれていた


僕は、しばらくモジモジとした後
飛び込むようにその胸に抱きついた


ユノは少しばかり後ずさりしたものの
しっかりと僕を受け止め、頭を撫でてくれた


ああ、ユノだ…


僕のユノ…


僕はユノのがっしりとした肩に
頬を乗せた


「会いたかったよ、チャンミン」

「僕も…でも、全然面会きてくれないんだもん」


「ごめんな、仕事忙しくてさ
お前の仮釈決まってからは、もうバタバタで」


「こういうのを、塀から出た時にやってほしかったの!」

僕はなんだかすごくワガママになっていて
拗ねて拗ねまくってユノを困らせた


「とりあえず、クルマに乗って、な?」


ユノはバックミラーで後ろから何も来ないことを確認すると、クルマを発進させた。


その一連の動作がカッコ良すぎて

僕はさらに照れからか、素直になれない


「車も買ったんだ」

「買ったのは車だけじゃない」

「ユノはカン刑事と住んでるの?」

「一緒に住むなんてしないさ」

「親子…でしょ?
養子になったって言ってたよね」


「言いくるめられた感じもあったけど
その方が何かと都合よくてさ。」

「車の免許もとれたり、とか?」

「ああ、そうだよ
車あったほうがいいだろ?」


「そうなんだ…
あ、刑事辞めたとか聞いたけど」


「ああ、探偵やってるよ、俺も」

「え?そうなの?」

「手紙に書いたよ」

「そこまで読めないよ」

「看守に読んでもらえるって聞いたから
細かいことまで書いたぜ?」

「だって…」

「わからなかったら読んでもらえばいいのに」

「やだよ…」

「なんで?」

「愛してるとか書いてあると恥ずかしいから
読んでもらってない」

「え、書いたよ?」

「だから!読まれたらイヤじゃん」

ユノは笑った。

「どのみち配達された手紙は読まれるぜ?」

「はぁー恥ずかしい。模範囚だったのに」

「模範囚か、いい子だったんだな」


ユノは運転してない手で僕の手を握った


「面会あんまり行かれなくてごめんな」

「うん…好きな人ができたのかと思った」

「はぁ?」

「だって…誘惑だってあったでしょう」

「そりゃあったさ」

「………」

「貞操守ってもう爆発寸前」

「は?!///////」

「今夜は覚悟しろよ?チャンミン」

爽やかな顔にニヤリとワルい笑み


あまりにカッコいいユノに

僕はたぶん顔が真っ赤だ


僕は窓を開けた

頬を撫でる風が気持ちいい

「こんな気分、久しぶり」


「そうだろうな」


「あー久しぶりじゃなくて
初めてかもしれない」


「お前が出てくるって聞いて
俺、はしゃぎ過ぎて…」

「そう?…そうなの?」

「ああ」

「お前と住む家も…用意したんだ」


「…………ほんとなの?」


「ああ、いい家だぜ?
金つぎ込みすぎて、俺はもう高飛びできないからな」

「見てみたい!」

「今からお前を連れて帰る」

「わぁー楽しみ!」


「その前に寄りたいところがある
いいか?」

「いいよ」



車は高速を降りると少し走り
小高い丘の上まで来て停まった。


「景色が良さそう。降りていい?」

「ああ、飲み物買ってくる」


ユノはジュースを買ってきてくれた。


こんな広々とした景色を見たのは
何年ぶりだろう


ユノがポツリと話し出した


「ここはな、お前が服役してた間、俺がよく来てた場所だ」

「そうなの?」


「お前に会いたくなった時…よく来たんだ」


ユノが目を細めて遠くを見た


「なんとか都合をつけてやっとお前に会いに行っても」

「………」

「なんだかんだと会わせてもらえなかったり」


「…………」


「俺がどうにも約束守れなかったり」


「………」


「気持ちがどうにもならない時、ここに来てた」

「ユノ…」


「ここからだと、小さいけれど刑務所の塀が少し見えて、そしてソウルタワーも見える」

「うん…」


「あそこにチャンミンがいるんだなぁとか、
ソウルタワーには、俺たちがかけた鍵があるんだなぁとか」


僕は喉の奥がツーンと痛くなって
思わず目を細めて遠くを見た


「そんな風に思いながら、耐えてた」


「嬉しい…そんなに会いたいって思ってくれて」


「でも、俺はもうここへは来ない
今日が最後だ」


「フフ…僕が戻ってきたから?」


「もうどこへもやらないからな」

「離さないでいてくれたらね」

ユノは僕を抱きしめた。


いっつもまわりを気にしないんだから…

僕はユノの腕の中で苦笑した。



ユノはそんな僕の顎を、その綺麗な手ですくう。


「俺の感触を忘れてないよな…」

「忘れちゃったかも…」

「じゃあ、思い出せ」


甘くて低い声

近づくその端正な顔立ち

久しぶり過ぎるキスに僕の心臓は騒ぎ出す

冷たい唇なのに、僕の心は熱い

「ユノ…会いたかった」

「俺も、会いたくて変になりそうだった」


ユノの舌が入ってきそうなその時

見計らったようにユノのスマホが鳴った


ユノは「チッ」と舌打ちをして
スマホを切ってしまった

「どうしたの?」


「カンのオヤジだよ!」

「それが?」

「チャンミンはまだかって、うるせぇ」

「え?僕?」

「今、来てるんだよ、俺たちの新居にさ」

「そうなんだ!じゃあこれから会えるね!」


「あのな、チャンミン」

「なに?」

「ひとつ言っておく」

「うん」

「オヤジな、お前の父親気分にもなってる」

「フフフ…」

「ふふふじゃねえよ、かなりウザいから。」

「そうなの?」

「あれはムスメ溺愛の典型!」

「え?ムスメ?」

「チャンミンを待たせると誰かに連れて行かれるだの、どっかの誰かが言い寄るだのウザいよ、かなり」

「ぷっ」

僕は思わず吹き出した

「嫁入り前の娘のお父さんみたい?」

「ああ、俺がいるだろって話」


「心配してくれて、嬉しいな」

「俺にもさ、チャンミンを不幸にしたら
許さないとかさ」

「いいお父さんだね」


「不幸にするわけ、ないのにさ」

ユノはそう言って、僕の頬を温かい手で包んだ

綺麗に切れ上がったその漆黒の瞳は
陽の光に煌めいて、あの夜見たソウルの夜景のようだった


「幸せにするよ、今までの人生差し引いても
お釣りがくるくらい」


僕は照れくさくて
手の甲で口を隠して笑った

「俺、真剣なのにそんなに笑わない」

ユノが顔をしかめて言う


僕はユノの首に抱きついた


「僕はね…ユノに会いたくてたまらなかった時」

「うん…」

「紙にね、ユノってたくさん書いたよ」

「…そうか」

「そしてね、壁にはソウルタワーの切り抜き写真を貼ってた」

「………」


僕を抱きしめるユノの腕に力がこもった

「同じだね、ここに鍵かけたんだからって
そう思って耐えた…」

「チャンミン…」


「あ、耐えてなかったかな、
よく泣いて、看守に声かけられてた」

「よく我慢してたな…ほんとに…」

「だから我慢してないんだよ、泣いてたんだから」


「やっと俺の元に帰ってきた…
面会したって、お前には全然触れられなくて」

「うん…」

「やっとこうやって抱きしめられる」

ユノの声は震えていた


「もう絶対離さない…」


僕は、さらにユノにきつく抱きつく

そしてユノの耳元に囁いた


「ただいま、僕のユノ
もう、絶対離さないでね」

「ああ」

と、その時、またユノのスマホが鳴った


「ああ!もう!」

「フフフ…出てあげて」

ユノはイラつきながらスマホの通話をタップした

「あ?もう引き取ってきたよ
今から帰るところ!
となりにいるから……

え?チゲ作ってるって?!

人んちの新しいキッチンで勝手なことすんなよ!

だいたいオヤジ、チゲなんか作ったことないじゃんか!」

ユノは勝手にスマホを切ると、そそくさと車に乗り込んだ

「チャンミン、俺たちの新しいキッチンが
大変なことになっていそうだ」

「それはちょっと困るね」

「かなり困る。
何張り切ってんだろうなぁ、もう。

あのキレイなキッチン
まずお前に見せたかったのに…」


僕たちは車に乗り込み、丘を後にした



もうユノはこの丘には来ないと言った



だって、僕たちはこれから寂しい思いをすることなんてないんだから


いつでも隣を見れば、ユノがいるんだ

ユノの隣には僕。


僕は、また窓を開けて空を仰いだ

真っ青な空を気持ちよさそうに飛んでいく小さな鳥が見えた

太陽をいっぱいに浴びて飛ぶその鳥は

それはまるで今の僕だね


ユノという青空の元、自由に羽ばたいている

僕はそんな幸せな鳥だった


これからもずっと


ユノの側に…




「完」

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今まで読んでいただいて、本当にありがとうございました。 百海

籠の鳥(37)

〜〜ユノside〜〜



俺はそれから、
3回ほどチャンミンに会えた

チャンミンはいつでも会えるわけではなく

俺はいろいろあるからカン刑事が一緒じゃないと
面会に行かれない

結果、俺が都合をつけないと
チャンミンに会いに行かれない


俺は皿洗いの仕事をサボるようになり
店長から呼ばれて説教をされたりしていた

俺みたいにワケありの人間ばかりが
働くこの店で

店長は割とよくしてくれていたのに
俺はその信用もなくしそうだった。

金がないワケではない。

ただすでに死亡したことになっている俺は
もうこれ以上稼ぐことができない。

できれば、生活する金くらいは
稼ぎたかった

今のところ、唯一稼げる場所だった。


3度目の面会にもなると

チャンミンはもう泣くようなこともなくなり

面会室に入ってくると
ニッコリと笑うようになって

たった10分ほどだと言っても

こんなにしょっ中会えるなら
満足だと思うようになった。


それにチャンミンも笑顔を見せてくれるようになった


その帰り、俺はカン刑事と飯を食っていた


「お前、仕事はいいのか?」

「いいんだよ、俺1人いなくったって
どうにでもなるさ」

「店にはなんて言って出てきてるんだ?」

「腹が痛ぇって言ってる」

「サボりじゃないか」

「いいんだって」


親父気分か?

でも、それがそんなに悪い気分ではないことに
自分でも軽く驚く


「………チャンミンはどうだった?」


「字も勉強してるし
何か習い事みたいのがはじまったらしい。
なんだかんだ言って結構楽しそうだ」


「楽しそう?」


「テレビも見れるし
慰問が来たりするらしい」


「それは…チャンミンが言ったのか?」


「いや、テレビが見れるのはネットで見た。
さっき、掲示板みたいなのがあって
そこに慰問がどうとかって書いてあった」

「…………」


「楽しそうだよな。
俺なんて、朝から晩まで皿洗いでさ
こっちの方がムショみたい………」

突然


俺は前が見えなくなった


目の前のカン刑事に
水をぶっかけられたことに

すぐには気づかなかった


「なっ…」

「バカ野郎!」


まわりの客が一斉にこっちをみた。


「なんだよ!」


カン刑事は姿勢を低くして
絞り出すように声をだした


「チャンミンが楽しそうだと?」

「…………」

「チャンミンは今、独房だ」

「………」

「テレビや慰問なんて見られない」

「あ…」


「危険なんだよ、パク・ギョンスを殺ったんだから
いろんな意味でムショでは注目の的なんだ」

「そんな危険はないって言ったろ?!」

「最善を尽くしてるだろ
その為の独房だ」

「そんな…話がちがうじゃねぇか」

「じゃあお前はチャンミンを守りきれるか?このシャバで。
自首の前にあんなことがあったばかりじゃないか」


「…………」


「チャンミンは無理して笑ってんだ
そんなこともわからないのか」

「無理して?」

「寂しくて怖くて…最初の頃に言ってたのが
本音だよ。
教育がはじまったら、自分の罪と真っ向から立ち向かわなきゃなんない

精神的にもきついはずだ。

それを楽しそうだなんて、
お前の皿洗いとは比べものになんないんだよ。

お前、初めの頃の、自分もチャンミンと懲役くらうぐらいの勢いはどうした?

事態はなんにも変わっちゃいないんだ」


「…………」


「チャンミンの胸に貼ってはる札を見たか?」

「囚人番号か?」


「お前のいないところで
チャンミンは番号で呼ばれてるんだ」

「………」


「それなのに、お前はなんだ
こんなのはおかしいっていってたくせに
仕事サボりやがって」

「そうしないと、会えない…」


俺の前髪から、ぶっかけられた水が水滴になって
テーブルに落ちていく


「お前、チャンミンが出所したらどうするんだ?
チャンミンにおんぶに抱っこか?
チャンミンに生活させてもらうんでいいのか」

「そりゃ、俺だって…」


「今は仕事サボって頻繁に会いに行くことより、
やらなきゃいけないことがあるだろ?」

「………」


「お前、ちょっとこれから付き合え」


俺はカン刑事に車に乗せられた。


どこへ行くか聞かされなかったけれど
その場所へ近づくにつれて、俺はなんとも言えない気持ちになった

そこは俺の両親の墓だ

カン刑事は花を買うと、慣れた足取りで墓のある場所へ歩く。


しょっ中来てくれてるんだ


俺なんか、何回かしか来てない

とてもじゃないけど、父親に合わせる顔がなかった

警官の息子なのに、殺し屋なんて…

この今も、できれば墓前には行きたくない


「ユンホは来れないよな、とてもじゃないけど」

「ああ…」

「だけどな、これがチャンミンと同じように
お前も自分に向き合うことなんだぞ。」

「………」


カン刑事は墓前に花を手向けると

俺の父親に報告するように言った

「私は刑事を辞める」

「え?」

「そして、ユンホを私の養子にしようと思う」

「は?」

「私の…罪滅ぼしだ…」


このオヤジは…なんの罪もないっていうのに
なんでそんなに背負いこもうとするんだよ

俺は胸が熱くなった

養子にすると言われて

俺はこのオヤジが仮にも父親になることが
まったく嫌ではないことに気づく

むしろ嬉しかった

叱って小言を言ってもらえるのが
心地よかった。


「今日は署長にそれを報告にきた」

「だけど…そんなことできんのか?
俺、死んでるんだぜ?」


「ああ、刑事として最後の職権乱用だ。」

「どんな?」

「この間、違法賭博の疑いがあるやつがいて
そいつが児童院の施設長でな。
賭博では上げない代わりに、児童の書類保管不備で
起訴させてもらう。
世間の目が全然違うからな。喜んでたよ」

「その児童が俺か…」

「ああ、これでお前は身分が保証される」

「…………」


「チャンミンの為に、家も買ってやって
そして出所の時はそれなりの車で迎えに行ってやれ」

俺は胸に何か熱くて大きな塊が
詰まったような感覚になり

言葉が出てこない…


「俺は刑事をやめたら、こじんまりと
探偵事務所でもやろうと思ってる」

「探偵?」


「ああ、浮気調査とか家出人捜索とか
そんな程度だ。
今から、部下が情報たかられるんじゃないかと
ビクビクしてるよ」


カン刑事は笑った


「でな、お前も手伝え」

「え?俺?」

「皿洗いをいつまでやってんだよ
チャンミンを守っていくんだろ?」


「………」


うれしいくせに
俺は反抗期のガキみたいに、礼のひとつも言えない

そんな俺の肩をたたいて

「署長、こいつは任せてください。
俺が署長の代わりにしっかり監視してますから」

そう墓前に言って笑った


「なんだよ、ガキ扱いしやがって」

「お前もお父親さんとお袋さんに誓え」

「もうさっき誓ったよ」

「そうか?ふん」

「なぁ」

「あ?」


「ありがとな…」



「何言ってんだ…」

カン刑事は俺のアタマをクシャクシャにして
墓前から去っていった


そして、しばらくして俺がカンのオヤジの息子になって

俺はチャンミンに会いに行った


いろいろ報告もしなければ
いけなかったけれど

何しろ、10分の面会時間だ。

その日はチャンミンの話を聞くので精一杯だった。

最後に一言だけ。


「ちょっと俺、これから忙しくなるんだよ」

「え?そうなの…」

「手紙に詳しく書くよ。
実は今まで仕事サボって会いに来てた」

「そうなんだ…」


チャンミンは途端に悲しい顔になった
その頬を撫でてやりたい

いろんな話はいつか出所してから
サプライズ、ということにしよう


今の監視状態ではできる話と出来ない話があるし

それまでは面会の時は
チャンミンの話をたくさん聞いてやろう


俺はそう思って、その日の面会を終えた


しばらくしてチャンミンから手紙が来た

一生懸命に書いたであろうその手紙に
胸が熱くなった


「ユノの生活がんばって。
あんまり会えなくても、僕は自分の事を
がんばるよ」


チャンミン…

お前、頑張り屋になったな

俺もお前に負けないように、頑張らないとな





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「籠の鳥」いつも読んでいただいてありがとうございます。
このお話は明日が最終回となります。

籠の鳥(36)

〜〜ユノside〜〜



俺はイライラしていた

チャンミンの刑が決まらず、
全然会えない…

いったいどれだけ待たせるんだ

俺はカン刑事に八つ当たりをしていた


「なんでこんなに時間がかかるんだよ
チャンミンの様子もまったくわかりゃしない」

「普通だよ、これくらい普通に時間かかるから」

「留置所から刑務所に移る時になんで会えなかったんだよ」

「1日に何人もとは会えない」


「俺より弁護士が優先だなんて
どういうことだよ!」

「ユンホ!いい加減にしろ!」


「………」


「気持ちはわかる…」

「………」

「チャンミンだって耐えてるよ
お前も耐えろ…」


「会いたい…」


俺がそうつぶやくと
カン刑事はため息をついた


「チャンミンに会いたい…」


「わかってるから…もう少し待て。な?」

俺は頭を抱えた

まるで駄々をこねる子供だ…

でも

チャンミンに会いたくて
気が狂いそうだ


もう季節も変わってしまった…

チャンミン…


俺は中華料理の店でそのまま働いて
俺たちのアパートで暮らしていた。

アパートには
ウサギともう銃の入っていないトランク

そして壁には白いシャツで笑うチャンミンの写真が何十枚も貼ってあった

ここに来るのはカン刑事だけ。
カン刑事には店に来ないでもらっていた。


「まるでストーカーの部屋だな」

壁のチャンミンを見て苦笑していた


「なんと言われてもいい」

俺は相変わらず不貞腐れていた


「なんだよ、今日はいいニュースを持ってきたっていうのに」

「え?もしかして?」


不貞寝していた俺は飛び起きた

「そのもしかして、だよ」

「チャンミンに会えるのか⁈」


「まずはな、チャンミンの罪状は傷害致死と銃刀法違反になった。殺すつもりはなかったってやつだ。」

「早く出てこれそうか」

「予想していたより、うんとな」

「そうか!」

「で、やっと面会できる」

「いつだ?!」


「来週の木曜日」


来週の木曜日に…チャンミンに会える!


それからの俺は

仕事中も興奮して、俺は皿を何枚か割ってしまい、
弁償させられたりしていた。


バカか?俺は


でもなんでもいいさ、
とにかくチャンミンに会えるんだ


そして、待ちに待った木曜日が来た


俺はカン刑事と刑務所に行った。

差し入れは下着と本を少し。
中を調べられ、書類にサインをして待った


かなり待たされて俺は呼ばれた

「外で待ってる。行ってこい」
カン刑事がニヤリと笑った


「ああ」

ドアを開けると、壁一面が格子になっていて

話す窓口だけ透明だ。

側には受話器のようなものがある。
これで会話するのか

ずいぶん旧式なんだな

よくテレビでみる放射状に穴が空いたアクリルの
壁…
あのタイプではないのか。


俺は椅子に座って待った

もうあの初雪の日から待ちすぎて
正直気持ちが持ちこたえられず

俺の心は情けないけれどヘトヘトだった


しばらくすると、格子の向こうのドアが開いた


チャンミンが入ってきた


会いたかった…俺のチャンミン…


俺は思わず立ち上がってしまい、
壁を叩いてしまった。

「チャンミン!」

俺は叫んだ

チャンミンは俺を見るなり泣き出してしまった


「ああ、チャンミン…」

チャンミンの泣き声は聞こえない…

チャンミンは手の甲で口元を押さえ
泣きじゃくりながら椅子に座った

俺の側にいた看守が

「会話はその受話器で。10分間です」

そう事務的に話す

俺はチャンミンから目を離さず

チャンミンは口元の手をようやくはずした


お互いほぼ同時に受話器をとる

チャンミンは眉が八の字に下り
泣いてしまって赤ちゃんみたいな顔だ


「チャンミン元気か…」

「元気じゃない…毎日ユノに会いたい」

「うん…俺も会いたかった」

「うっ…うう…」

言葉にならないチャンミン

「イヤなことや、困ったことはないか
何かひどい目にあってないか?」

「ここは寒いよ」

「あったかくできないのか?」

「わかんない…」

「嫌なヤツがいたら言えよ、ん?」

「わかんない」

10分しかないのに、何を話したらいいのか
わからない

話そうと思ってたことはたくさんあるのに

「ユノ…」

「ん?なんだ?」

俺は思わず身を乗り出してしまう

チャンミンはゆっくりと受話器を持たない方の手を
あげた。

そして透明の壁に手のひらをあてる

俺もすぐにその手に重ねるように
手のひらをあてた。

それでもチャンミンの温もりは感じられない


「僕…本当はたくさん話すことあったのに…
ユノの顔見たら、全部ふっとんじゃった…」


「チャンミン、俺もだ…
顔見たら、頭の中真っ白だ」

「ユノ…寂しいし怖いよ…一緒にいたい」

「チャンミン…」


俺たちは、手のひらを合わせながら

見つめあった


少し痩せたチャンミン

白い顔に大きな瞳
唇はへの字になってしまっている。

俺はたまらない気持ちになった


「それと、僕ね…」

そうチャンミンが話し始めると
いきなり受話器から声が聞こえなくなった

チャンミンは気づかず話している

俺が「チャンミン」と声をかけると
チャンミンも話が通じてないことに気づき
狼狽えた


「面会は終わりです」


もう…終わり?

チャンミンはグッと唇をかみしめた

ああ、そんなにしたら
唇が痣になっちまう

その唇に俺の指をはさんでやりたかった

チャンミンは看守に促され席を立つ


「チャンミン…」

チャンミンは諦めたような寂しそうな顔をして

振り返って俺に手を振った

その唇が「バイバイ」と言っていた

笑顔はない…


俺は壁に手のひらをあてたまま

その姿をドアが閉じ切るまで見送った


なんてことだ

こんなのが面会なのか

これからもずっとこんななのか


俺は楽しみにしていた面会があまりにもあっけなく
愕然としてしまった

俺は長い廊下を戻り、出口から外に出ると
カン刑事が待っていた

俺の様子はおかしかったのだろうか?


「ユンホ、大丈夫か?」


「全然大丈夫じゃない」

「?」

「チャンミンは全然大丈夫じゃなかった」

「ユンホ…」


「何か…おかしくないか?これ」


「………」

「なんで…なんでチャンミンばっかり、こんな事になってんだよ…閉じ込められてさ」

「…ユンホ…」

「なんで俺だけ、普通に生活してんだ?
俺だってムショにぶち込まれて、一生出られないくらいの事してんだろ?」

「………」

「おかしいだろ!こんなの!」

俺はカン刑事の肩を掴んで揺すった

カン刑事は優しい顔で俺を見ている


「本当にこんなんで…良かったのかよ?」

その顔が涙で滲んでしまう


「おかしいだろ…」

「………」

「チャンミンばっかり…こんな…」


俺はカン刑事の肩を掴みながら
泣き崩れた…


「まだはじまったばかりだぞ、ユンホ…」



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籠の鳥(35)

〜〜ユノside〜〜


今日はやけに冷え込む

チャンミンが自首する朝、いやもう昼か。

俺はチャンミンに粥を作ってやっていた。

チャンミンは身の回りの物をまとめて
いつもの布の肩掛けカバンにキチンとしまっていた。

「冷めないうちに食べろ」

「ありがとう、ユノ」


昨夜までの別れがたい激情は

ともすれば、またその蓋を開け
俺たちを瞬く間に包んでしまいそうだったけれど


俺たちは堪えて、必死で耐えて
前に進もうとしていた。


すっかり準備が整っているのに

俺たちはそのどちらとも
家を出ようとはしなかった。


チャンミンは今にも泣き出しそうな顔をしている。

歯を食いしばり、目を強く閉じる姿が
いじらしくて…


でも、今抱きしめたら

俺はチャンミンを連れ去ってしまう

そんな先にいい人生が待っている訳はない


俺たちは決めた。


逃げない。


この韓国で、生きていく。
堂々と陽の光を浴びて歩くんだ


チャンミンはキャメルのダッフルコートを
着込み、座っていた

俺は革ジャンを羽織ったまま。


意を決して、俺は立ち上がり
チャンミンに手を差し伸べた

「行くぞ、チャンミン」


チャンミンはハッと顔をあげ、
涙の溜まった大きな瞳で俺を見上げた

そして、こっくりと頷くと
俺の差し出した手をとった。



外に出てみると

空から、はらはらと白い雪が舞いおりてきた

グレイの街に、光るような白いその雪は
すべてのものを美しく輝かせていた

「チャンミン、外に出てみな」

ソウルに初雪が降る朝


「うわぁー!ユノ!雪!」


チャンミンはとびきりの笑顔になって

両手を挙げて降ってくる雪に触れようとしていた


なんて可愛い笑顔なんだ


それでも俺たちは…



「ユノ!ほら!」

「ああ」

「すごいね!初雪の時に好きな人といられるなんてさ!恋が叶うんだよ?」


俺たちは今日でしばらくお別れだ…



神様…

この別れの朝に、この笑顔をみせてくれて感謝します…

初雪を降らせてくれてありがとうございます


俺は感謝せずにはいられなかった


初雪にはしゃぐチャンミンを見ていた

この可愛い姿を、愛しいこの存在を
俺は自分の心に焼き付ける


「チャンミン、行こう」


チャンミンは空を仰ぎ、目を閉じて

その透き通るような白い顔に
まあるい頬に

舞い降りる初雪を感じている


初雪はチャンミンに勇気をくれた


「うん、ユノ、行こう」



そして、地下鉄を乗り継ぎ
とうとう警察署の前まで来た


この目の前の横断歩道を渡ったら、
警察署の階段だ。


俺たちは何度信号が変わっても、お互いの手をしっかりと握りしめ、動かなかった。


どれくらいたっただろう。


チャンミンのダッフルコートのフードには
雪が積もっている


チャンミンが大きくため息をつく。
吐く息は白く

それはチャンミンを煙るように美しく見せた


信号はまだ赤だった。

「ユノはここまでね。
ついてくるなって言われてたから」

「ああ」

「次に青になったら、僕、行くね」

「………ああ」


俺はなんにも気の利いたことが言えずに

最後なのに…


面会ができるって言ったって
それは1番早くていつだよ?

ここまで来て

俺の張り詰め過ぎた糸はプツンと切れそうだった


そして信号が青に変わったその途端


俺はたまらずにチャンミンを抱きしめて
そしてキスをした。

チャンミンの長いコートがひらりと翻る


まわりのびっくりした目なんか
全然俺たちには関係なかった


チャンミンは俺の頬を冷たい手で包んだ


「愛してるよ、ユノ」

「チャンミン、愛してる。
待ってろよ、迎えに行くから!」


俺はもういちど、チャンミンにキスをした


「じゃあね!」


そう笑顔になって
チャンミンは俺に手を振り

横断歩道を走って渡った


そしてもう2度と振り向くことはなく

そのまま、警察署に入っていった


それは本当に
あっという間の出来事だった


あっという間にチャンミンは
俺の腕をすり抜けて

離れてしまった…


わかってる…わかってるよ


お前は自分で決めて
自由を掴みに行ったんだ


でも取り残された俺は…

なんて情けない…



俺は雪の舞う横断歩道の前で何時間も立ち尽くした


中でチャンミンがどうなったのか

その薄茶色の建物は何も物語らない


すっかり夜になって

いつの間にか雪は止み

仕事帰りのラッシュが始まるころ


俺はその人波の邪魔になってる事にやっと気づき

警察署とは反対方向へ歩き出した


どうやって、地下鉄に乗ったのかもわからず

俺はマンションではなく、
チャンミンの暮らしたアパートへ戻った。

ドアを開けると、布団しか残ってない部屋に
ウサギだけが俺を迎えてくれた


今朝までここにチャンミンがいた

まだ、部屋のそこかしこに
チャンミンの温もりがあるような気がする


昨日の今頃は
俺たちはソウルタワーにいたんだ


24時間でなんでこんなにも世界が変わってしまったんだろう

俺は震える手で、ウサギを手にすると
それを抱きしめ、誰もいない部屋で泣き崩れた

それまで精一杯ガマンしていた何かが
決壊した

これでほんとうによかったのだろうか

俺は正直自信がない…


ソウルの夜景に目を輝かせるチャンミン

初雪にはしゃぐチャンミン


会いたい…もうすでにこんなに会いたいんだ

会いたくてたまらない…


ふと窓の外を見るとまた雪が降っていた
俺は外にでて、少し外を歩いた

店や建物の間から、
遠くにソウルタワーが見えた

ソウルタワーにも俺にも、優しく雪は降った

チャンミンはこの雪を見てるかな

だれかチャンミンに教えてやってくれ

外は雪が降っていて
俺は寒い中お前を思って、雪の中にいる
ひとりでソウルタワーを見てる

バカだねって、だれか言ってやってくれ



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