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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

そこに愛はあるか〜完〜



あれだけクールに調査をかわしていたチャンミンが、
まるで子供にかえったように甘える姿

まわりの調査官はあっけにとられてその様子を見ていた

最初に対応した係の男が怪訝な顔をして部下に聞く

「なんでいきなりシム・チャンミンを解放したんだ?」

「だって…長官のことを…」

「ハッタリなんだよ」

「そんなぁ…言ってくださいよ。
あの長官のことだら、アリかと…私はマズイと思って…」


ユノがチャンミンの肩を抱きながら
まわりの調査官をにらみつけた

「随分と長いこと拘束してくれたな?」

すると、チャンミンをずっと尋問していた男が
ユノの前に出てきて正面から向き合った

「なんだよ」

ユノが臨戦態勢だ

その男はゆっくりと深呼吸をして
手元のバインダーにメモをとる。

「チョン・ユンホさん
あなたが身元引受人でいいですか?」

「ああ、いいよ」

「調査は終わりました。
というかとっくに終わってました」

「?」

「インサイダー取引の様子もなければ
詐欺も働いていない」

「当たり前だ」

「逆に…これから大変だと思います。」

「は?」

チャンミンがびっくりした顔をする

あれだけ悪態ついて対峙してきた調査官がどうしたのだろう

「彼は何も出来ませんし
待遇についても布団がどうとか文句ばかり」

チャンミンがキッと調査官をにらんだ

「ウラは完璧でした。たしかに。誰も陥れてない。
だけど多くの資産を失ったことに変わりはない」

「………」


「ま、大抵ここでヤケになって何かやらかすんです」

「お前…」

一歩前へ出ようとするユノをチャンミンが押さえた。

「ところがね…愛とかなんとか、そんなのがあるようで」

「?」

ユノが怪訝な顔をすると、チャンミンがクスッと笑った

調査官がそんなチャンミンをみて
やれやれという顔をした

「ユンホさん…
これからどうするんです?可愛いだけのこんなワガママな男を」

ユノがたまらず前へ出た

「は?!可愛い?!何言ってんだお前!」


「ユノ、いいからっ!」

「なんでこいつはお前のことを可愛いとかいうんだよ!」

「なんでもないから、ねっ?」

「なんでもないのに、可愛いとか言うか!
どんな取り調べだったんだよっ!」


ユノを押さえながら、チャンミンの心には温かい何かが溢れる

嫉妬に狂うユノがチャンミンはとても嬉しい

サロンに通っていたころ

ユノはそういう独占欲をまったく見せてくれなかった

チャンミンが誰と親しくしていようが
元カレや元カノといちゃついても我関せずで。

その度に、ユノが欲しいのは自分ではなく
その地位やコネなのだなと

そう気づかされては寂しい思いをしていた

そんな日々がもう遠くに感じる

今、この胸に溢れる温かい想い…
それはきっと愛だ

僕たちの間には愛がある

チャンミンは子供を嗜める母のような瞳で
ユノを愛おしそうに見つめた



ユノは頭に血が上ってしまい
調査官に摑みかかり、その勢いが止まらない


「ユノ、落ち着いて、ね?」

宥める言葉とは裏腹に
チャンミンがなぜか嬉しそうにユノに抱きつく

気づけば、ユノはチャンミンの前でこんな風に感情を露わにしたことはなかった

嫉妬なんて、バカにされ、呆れられ
ウザいと捨てられてしまうのでは、と。

それが怖くて、嫉妬する自分をクールに隠し通して来た

それが今はどうだ

我に返ると恥ずかしいほどの今の俺を
嬉しそうに見つめるチャンミン

こんなにも独占欲をあからまにしたって
ウザがるどころかニコニコと嬉しそうだ

俺の肩を優しくポンポンと叩いて笑っている

その笑顔を見ていると
心に温かい何かが湧き出てくる

これはきっと愛だ

もう隠さない

俺たちには愛がある
大好きな気持ちを隠すなんてしない


落ち着いたユノと、宥めるチャンミンは
いつかお互いを愛おしそうに見つめ合っていた


ソクジンが調査官に尋ねる

「なぜ取り調べが終わっているのに
解放してくださらなかったんでしょうか」

ユノたちの姿をみて、呆れたような調査官が
さっさと書類を片付け始める

「肝心なところは最後まで黙ってたんですよ、彼。
それで調査が終われるのに」

「なぜでしょう?」

「あのユンホさんが迎えにくるのを待つんだ、とね。
こちらから呼ぼうとしたのですが、彼から来てくれるのを待つと」

「あ…」

「だから、硬いベッドと不味い食事に耐えてました」

「そう…ですか」

「そんなの耐えるくらいなら迎えに来いと言えばいいのに、めんどくさいですね、彼は」

「ユンホ様はきっと…
そんなところを可愛いと思っていらっしゃるのだと思います」

「わかります」

「は?」

「あ、いや、なんでもありません」

調査官は持っていたバインダーで狼狽える自分の顔を隠した

ソクジンは穏やかに微笑んで調査官にお辞儀をした


外ではすでに
ユノは車にチャンミンのちょっとした荷物を積んでいた


「さあ、帰ろう」

「うん」


もう何にも持っていないけど

ここからもう一度はじめればいい

何もなくったってそこには愛があるから

大丈夫


「爺!早く乗ってー」

「はいはい、今参ります」


大旦那様…

周りの方に甘えながら助けられながら仕事をされていた大旦那様をなぜか思い出します

あなた様と同じ力をぼっちゃまは持っていらっしゃるようですね


わたくしは、ぼっちゃまの将来が楽しみです



************



「あ、コーチ!おはようございます!」

「なんでこんなに早く来てるんだ?」

ジャージ姿のユノが、タオルと飲み物を持って
体育館に現れた

選手たちがベンチを拭いたりしている

「掃除なんかして…もしや、お前ら」

ユノの顔が険しくなる


「だって、コーチ!
今日は王子…いや、オーナーが来るんでしょ?」

「だからなんだよ、家を掃除してから来るから
まだまだ来ないよ」

「コーチ!オーナーに掃除させてるんですか?!」

「悪いか?」

少し得意げな顔のユノ


「おはようございます」

そこへ、爽やかにチャンミンが現れた

ブルーと白の細いストライプのシャツに
白いコットンパンツ

どちらもスーパーで買ったものなのに
恐ろしく高級に見える

手にはたくさんの飲み物を抱えていた

チャンミンを見た選手たちの顔が上気する

「オーナーおはようございます!」

「おひさしぶりです!」


選手たちの瞳がハートだ


うーーーーー!

面白くない!


楽しげな空気の中、ユノだけが落ち着かない

ユノのイラだちなどお構いなしに
チャンミンがにこやかに微笑む

「差し入れ持ってきました
あとでみなさんで召し上がってください」

「はいっ!」

「シュート10本連続で決めれなかったやつは無しだから」

ユノが憮然とした表情で言い放つ

「えーーー」

すると、大勢の選手の中から
一番若手の選手が前に出て手を上げた

「僕、オーナーのために10本決めます!」

チャンミンが嬉しそうな顔をすると
ユノの怒りも倍増する

「お前は100本決めても無し!!」

「ユノ、そんな…」

前のめりになるユノをチャンミンが笑いながら
宥める

ユノの嫉妬に狂う姿は、選手たちの大好物だ

みんなが笑いをこらえて2人を見守る

ユノのことが選手たちは大好きで

綺麗なオーナーのことはもっと大好きで

自分のために、そして大好きな人のために頑張る

そんなだから

このバスケチームはどんどん成績をあげていった



みんなの笑い声が…青い空に響き渡る


なんにもなくったって
愛に溢れた毎日があれば人生は十分

チャンミンは青空を見上げてそう思った



end




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百海です。

今回も最後まで読んでいただいて
本当にありがとうございました。

最初は10話程度の起承転結のない軽いお話を描こうと
思っていたのですが、なぜか15話に膨らんでしまいました。

強がりで、思い込みの激しい2人でしたw

前回のお話から間が空いたので
もう忘れられているかと思っていました。
でも、みなさんがすぐに戻ってきてくださって
ほんとに嬉しかったです

次のお話はもう筋書きはできているのでそんなに開かないとは思いますが、またぜひ遊びにきてくださいね

今夜からSMTOWNですね
私はライブビューの参加ですが
台風に負けずに応援しましょう!

そこに愛はあるか〜15〜



取り調べとはいえ、犯罪者というわけではなく
微妙な立場のチャンミンを
調査官たちはどうやって責めようか、考えあぐねていた。

当のチャンミンは動じることなく
平然と椅子に座り、まわりの調査官を見渡す

ともすれば、傲慢と思われてしまいそうなその態度

精神的な攻防戦がはじまった


************


ユノは1人別荘に残り
しばらく呆然としていた。

チャンミンがいなくなったことを
自分なりに受け止めようとしていた


いい方向に行っているんだ

ユノはそう思えるように
様々なことを考えていた



付けっ放しのテレビでは
シム家の経営について、評論家が好き勝手を語っている。

しばらくそんな時間が過ぎて

チャイムが鳴って、ハッとしたユノの元に訪れたのは
ソクジンだった

「ぼっちゃまをありがとうございました」

「俺は何も…1人で行ってしまったよ」

「はい、テレビで拝見いたしました。
立派なお姿でした」

「…うん」

「堂々としたお姿は大旦那様にそっくりで」

「大旦那様?」

「ぼっちゃまの曾祖父様です。
お見かけしたのは、私がかなり若い頃ですが。
今のシム家を作られた方です。」

「チャンミンは今までお気楽な三代目って感じだったけど、今日は風格があった」

「変わられたんですよ、ぼっちゃまは。」

「相変わらず可愛いけど」

「それはユンホ様の前だからで…」

「え?」

「いや、なんでもございません」

ユノはためいきをついた

「チャンミンは戻ってこれるだろうか」

「そんなぼっちゃまですから、大丈夫ですよ
意外にお強いんです」

「書類を見た限り、罪に問われるようなことはなさそうだけど」

「旦那様は、今回の暴落で誰かが路頭に迷うようなことはされてません。だからこそご自分が犠牲になり、
家族がバラバラに…」

ソクジンは声をつまらせた。

「ああ、さすがだと思った。
チャンミンはもう贅沢はできないけれど
生きていく糧は残してくれて」

「はい…しかしながら…あまりにぼっちゃまが可哀想で…」

「ソクジンさん」

「はい」

「俺ね、チャンミンに何も持たない人生の楽しさってのも教えてやりたいんだ」

「はぁ」

「自由だろ、少なくとも」

「ぼっちゃまはそういうのに慣れておりませんから」

「これからは普通の生活をしなくちゃいけないんだし」

「そうでございますね…ユンホ様だけが頼りです」

「俺は…なんか嬉しいよ」

「は?」

「いや、たしかに大きなトラブルだけどさ
俺たちにとってはね、怪我の功名」

「どうかよろしくお願いいたします」

ソクジンは丁寧に頭を下げた




チャンミンと調査官との攻防戦は
2日目を迎えていた

「仮眠室とやらのベッドはなんですか?あれ」

チャンミンは腰を押さえながら文句を言った

「人間が寝る場所ではありません」

「……」

昨日から散々毒舌を吐いて
調査官の怒りスイッチを押しまくっているチャンミンだった。

「シム・チャンミン。今日はあなた自身の資産その他について、確認します。」

「お調べいただいた通りです」

「なぜバスケチームがあなたの所有に?」

「私が生活していく術です。
私が所有しても誰にも迷惑をかけない資産です」

「………」

ユノと数日間、ただキスして抱き合ってたわけではない

書類を丹念に調べ、ユノが調査官に突っ込まれた時の
かわし方を考えてくれた。

運動神経がいいと頭もいいのだろうか。
書類を一瞥しただけで、その中身を理解し、
ほかの事情と組み立てて考えることができる

惚れ惚れするユノの頭の回転の良さ

もう、本当に大好き

思わずチャンミンはユノを思い出し微笑んでしまった


「うまく話を組み立てたなぁ、シムさん。
あのバスケ崩れの色男の口添えですか?」


その言葉にチャンミンの中の何かが切れた


「今、なんと言いましたか?」

「一緒に暮らしてるんですよね?
わかってますよ」

「あなたは調査官の割に、人の言ったことが理解できないようですね。
なんと言ったか?と聞いてるんです」

「えっ…」

「もう一度言ってください。
そして、そこの書記官は今言った言葉はもちろん書き留めてますよね?」

書記官が慌てた

「まさか?昨日から散々民間人の私を罵倒した言葉を
まったく書き留めていないのですか?」

「そっ、それは…」

チャンミンは調査官に向き直った

「さあ、もう一度はっきりと言ってください」

「何も言ってないよ。
だから、書記官は何も書いていないんだ」

調査官は得意げに言い放った


チャンミンは大きくため息をついた

そして、アスコットタイの中から
小さな録音機器を取り出してスイッチを入れた


" うまく話を組み立てたなぁ、シムさん。
あのバスケ崩れの色男の口添えですか?"

先ほど言った言葉が再生されて
調査官は青ざめた

「昨日は私の父についても、調査官らしからぬ
表現をされてました。お聞かせしましょうか?」

「………」

「まあ、いいでしょう。
調査官の言葉を録音するようにというのは
その色男の口添えです。」

「え?」

「けれど、バスケ崩れと言ったことは
チームのオーナーとして、彼のパートナーとして
許せません」

「どうするっていうんだ」

「訴えます」

「は?何言ってるんだ
これから、貴様が訴えられる立場なんだぞ?」

「それではお伺いしますが、昨日から今日にかけて
お話してきた中に、私の落ち度はありましたか?」

「それは…これから…」

調査官の額に脂汗が浮かぶ

「あなたは私を虐めたいだけ。
なぜだかわかりますか?」

「………」

「あなたは寂しい人なんです
哀れです」

「さ、寂しい?なんで俺が?!」

思わず立ち上がった調査官を、書記官が慌てて止めた

チャンミンはゆっくりと調査官を睨む

「あなたには愛がないんです」

「は??愛??」

「愛と聞いて、そんな変な声が出るほど
あなたに縁遠いものなんですね」

調査官の額に血管が浮かぶ

「見ていろ!絶対吊るし上げてやる」

「それなら、あのベッドを変えてください。
そうしたら、私は何日でも付き合いますよ?」

「くっ……」

「隅々まで調べたって何も出てきません
なにしろ、あなたと違って、私には愛がありますから」

「何をわけのわからないことを…」


それから、何日もチャンミンはユノの元に帰らなかった

ユノとソクジンはさすがに心配になって

チャンミンが隔離されている施設へ行った

対応した係の人間の対応は冷たかった


「拘束理由を教えてください」

ユノが真正面から向き合った

「まだ調べが終わってないんですよ」

「では面会を」

「それは許可できません」

「なぜ?」

「入れ知恵されるようなことがあっては
困ります」

「俺が?」

「そうです」

「お前に入れ知恵してやろうか」

「何を言ってるのか理解できません」

「俺はお前の上司に会ったことがある」

「上司?長官ですか?」

「ああ、そうだよ。
会員制のサロンでね」

「………」

男の視線が少し泳ぎ
後ろにいた部下が部屋から走り出て行った。

こりゃ相当ウラがある上司なんだな


ユノが男の耳元に口を寄せた

「そのサロンで何があったか
毎晩、何が繰り広げられていたか、知りたくないか?」


「ユノ!」


いきなり大きな声で呼びかけられて
ユノはびっくりして振り向いた

「チャンミン!」

そこには仁王立ちで睨むチャンミンが立っていた

ユノの顔がぱーっと笑顔になった


「ユノ、何してるの、その男と」

「え?」

チャンミンは俺に会えてうれしくないのか

「好み?その男」

係の男がびっくりして、ユノから離れた

「おいおい、とんでもないこと言うなよ
俺はチャンミンを解放してもらうために
ハッタリかましてたんだぜ」

ハッタリと聞いて、まわりの男たちは一様に悔しそうな顔をした。

「チャンミン!」

ユノは手を広げた

むぅっとムクれるチャンミン

「ほら、会いたかったよ!
抱きしめさせてくれ」

満面の笑みでチャンミンを包み込もうとするユノ

ムクれていたチャンミンの口元が大きく歪んで
眉が垂れ下がり、その大きな瞳から涙がポロポロと流れ落ちた

「チャンミン…」

「もう!早く迎えにきてよっ!遅いよっ!」

チャンミンがユノに体当たりするように
その胸に抱きついた

「そんなにぶつかってきても、俺はびくともしないよ」

ユノが泣きじゃくるチャンミンの髪を撫でた







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百海です。

このところ20時にアップ出来ない日があり
申し訳ございません。

明日は最終回になります。

台風が近づいているようです。
皆さま、気をつけてくださいね

そこに愛はあるか〜14〜



正々堂々と、それはやってきた

書類を持参し、正当な理由を持っていた

やっとユノと素直に愛を語れるようになり
甘い時間を過ごしていたチャンミンを外に引っ張り出す力を持っていた。

「事情聴取」だった

「逮捕じゃないんだから、な?チャンミン」

「うん…」

「悪いことなんてなんにもしてないって
身の潔白を証明するいい機会なんだぞ?」

「……」

不安そうなチャンミン

一緒にいてやりたい…

ユノは切なくて、チャンミンがいじらしくて
耐えられなかった

それでもここを切り抜ければ、光は見えてくるはずだ。

「話すべきことと、黙っているべきことは…」

「それは…うん…大丈夫」

準備は整えた

明日は、調査官がチャンミンを連れに来る日だ

二人はやっと構築した日常生活をいつものように過ごした

甘く、優しく信頼に満ちた時間。
まさに「蜜月」だった

明るく楽しく昼間を過ごすことができたのに

夜になえば…つい本音が出た

先に崩れたのはユノだった

チャンミンを抱こうとして、いつもの余裕が持てず
チャンミンがむせ返るほど強く抱きしめてしまったり

暴走する気持ちを抑えられず
思わずチャンミンの服を裂こうとしてしまったり

そんないつもと違うユノがチャンミンの決心を揺るがす

離れるのはいやだ…
やっぱりこのまま…一緒にいたい

とうとうユノは行為を中断した

「ごめん…抱けない…チャンミン」

「ユノ…」

「明日から、お前がいないなんて…考えられない」

ユノの苦悩に満ちた横顔に汗が光る

チャンミンはユノの体の下で、ユノを見上げて優しく微笑んだ
そしてそっと手を伸ばし、ユノの唇をそっと指で撫でた

「僕ね…ユノ」

「……」

「こんな事になって…よかったと思ってるんだ」

「チャンミン…」

「明日から…ちょっとユノと会えないかもしれないけど
そんなにさみしくないよ?」

「そう?」

「何もわからず、ユノと付き合ってた頃のほうが
もっとさみしい思いをしていた気がする」

「会えなくても…ユノはずっと僕を思ってくれてるはずだし」

ユノは自分の唇に触れるチャンミンの指を甘噛みした

「思ってるよ…いつだって…」

「だから…大丈夫」

「ほんとに大丈夫か?」

チャンミンの目が潤んで泳ぐ

「たぶん…」

そう言ってチャンミンはユノの首に抱き着いた

「抱いてユノ…僕が大丈夫って思えるように…」

ユノは切なくて…
チャンミンと離れることを思うと
こんなに密に過ごしてしまってよかったのかと
後悔しはじめていた。

でも…

ありったけの想いを
お前に残してやるから

胸をはって、明日は堂々と行け

ユノはチャンミンを丁寧に抱いた
ユノの唇は雄弁にチャンミンへの思いを表す

チャンミンの肌を優しくついばみ、噛みつくように吸った

二人の唇はキスをしているか「愛している」と語るかのどっちかだった。

休むことのない愛の表現

外は桃色に白み始めていた




今朝は半端ないマスコミの数だった

チャンミンは落ち着いてシャツのボタンを閉めると
手慣れた手つきで首にアスコットタイを巻いた

髪を整え身支度を済ませたその姿はまさに貴公子

チャンミンは鏡の中の自分を見つめた

以前の自分とは違う

チャンミンは自分の胸をトントンと叩いた
だってここには愛があるから

ユノとの愛に包まれているんだ

チャンミンは鏡の中に自分に向かって微笑んだ


ユノはテレビを見ていた

外の様子を中からうかがえず、こうやってテレビ中継を見るのが一番わかりやすい

カメラは外からこの別荘をとらえていた

やがて、スーツを着た数人の男たちがこの別荘に近づいて来るのが見えた

ユノは思わず、チャンミンの傍へ行く

「来たぞ…チャンミン…」

「うん」

こういう時にびしっとした装いをするのは、とてもチャンミンらしいと思った

「かっこいいよ、チャンミン」

「ユノはテレビを見て、僕を見送ってね」

「…ああ、しっかり見届けてやる」

「……」

「……」

「ユノ…」

チャンミンはユノに抱き着き
ユノの頭を抱えてキスをした

「愛してる。ユノ」
「俺も愛しているよ」

「早く帰るからね」
「すぐ帰ってこい」

玄関のチャイムが鳴り、二人はもう一度キスをした

「行ってくるね」
「行っておいで、負けるなよ」
「うん!」

チャンミンがドアを開けると外のマスコミの声が轟音のように部屋になだれ込んできた

テレビ画面のそれとうまくリンクして
立体で映画を見ているようだとユノは思った

画面に凛々しい若き皇太子のようなチャンミンが映る

自信がみなぎり、堂々として
押し寄せるマスコミにびくともせず
悠然と階段を下りていく

下で待ち構えていたカメラに向かって
いきなりチャンミンがニコリと微笑んでガッツポーズを取った。

テレビ画面にカメラ目線で映るチャンミンの笑顔
ユノはそれを見て泣きそうになったけれど

テレビに向かってガッツポーズを取った

がんばれ!チャンミン


階段を降りるチャンミンの腕を調査官が掴もうとする

「触るな」

チャンミンが低く囁いて、調査官を睨みつけた

「ここから逃げようなんて
思ってません」

少し若めの調査官が捨てゼリフを吐く

「今まで隠れてたくせに」

チャンミンが横目で睨む

「あなた方がなかなか迎えに来なかっただけです」

調査官が悔しそうな顔をすると

チャンミンは微笑んだ

胸を張って堂々と



チャンミンがマスコミの波に飲まれて行くのを
ユノはテレビ画面で見送った





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そこに愛はあるか〜13〜

「大丈夫か?チャンミン」

ユノが泣きじゃくるチャンミンの耳元で囁く

「うん」

「不安だったんだろ?」

「………」

「昨日…あんなに怖がってたのに
俺、気づかなくてごめんな」

「ごめんね、会社とか本当にごめん」

「大丈夫だよ」

「大丈夫なわけない」

チャンミンの目からポロポロと涙がこぼれる

「全部自分で背負い込まないで
俺が一緒に考えてやるから」

「もう僕はなにもユノに与えてあげられなくなっちゃった」

「チャンミン…」

「喜ばせられない…もう何もない…意味のない僕だよ」

ユノはぎゅーっとチャンミンを抱きしめて
深いため息をついた。

「昨日、俺があれだけ言ったのに
なんにも伝わってないね」

「だってさ…外を見たでしょう?
みんなが僕を責めてるんだよ」

「だから?」

「だから…」

「世界の全員がお前の敵でも
俺はお前の味方だよ」

「ユノ…」

「アハハ…カッコいいな、俺」

「………」

「大丈夫。もう1人じゃないよ」

「もう僕には何もないのに?」

「俺たちには愛ってヤツがあるんだ
それでなんでも解決できる」

「あんな付き合い方だったのに
愛なんて…」

「俺にはあったよ。
お前にもあっただろ?」

「………」

「世界に5個しかない時計なのに
あんな風にメッセージ入れちゃって」

「あ…」

「あの一流ブランドにワガママ言ったんだろ
メッセージ入れろって」

「だって…」

「お前がシム家の御曹司だからって
あのブランドが言うこと聞いてくれるわけないよ。」

「だって…」

「ああいうところは金じゃなくてプライドだ。
どうやって押し通したの」

「ユノの事を話したの」

「え?」

「なにがあってもメッセージは絶対入れられないって言われて」

「うん」

「ユノの事がどれだ好きなのか話した。
ブランド担当者に3週間くらい毎日」

「3週間?!毎日?!」

「そう。もうデパートの外商や営業が役に立たなくて
自分で直接言いに行った」

「相手は折れたのか」

「最後は…職人を紹介してくれた。
でも笑ってたよ。今度そのユノさんに会わせてほしいって言ってた」

「どうしてそこまでして…」

「ユノが初めてモノに興味を示したから」

「え?そう?」

「うん、はじめて、これいいなって…そう言ったんだ」

「そうなのか…」

「そういうの買ってあげるしか、僕はできなかったから」

ユノがチャンミンの髪を撫でる

「今はもう…それさえできないけど…」

「俺はチャンミンがチャンミンなら他になにもなくていいよ」

見上げれば、ユノの優しい瞳がチャンミンを包む


少し…歩き出してみようか…

今朝からずっとマスコミが外を張っていて
チャンミンは怖くて震えていた…

ユノには一切迷惑をかけないつもりでいたけれど
こうやって抱きしめてもらっていると、心から安心できて
恐怖感が波がひくように消えていく

「俺、バスケのコーチの話、引き受けるから」

「ほんと?」

「人気のチームにして見せるよ。
お前がせっかく残してくれたんだし」

「ありがとう…ユノ…」

「騒ぎはきっとそう簡単には収まらない…
しばらくここにいよう」

「でもお父様が矢面にたたされているのに
僕だけが何もできないなんて…」

「……」

「じゃあ、表にでてみるか?」

「えっ?」

「外に出たらバンビを襲うハイエナのように
マスコミが押し寄せるぞ」

「……」

チャンミンに父親から連絡があった。

しばらくしたら「事情聴取」という形で
外にでなくてはいけないようだった

マスコミと違って正々堂々とチャンミンを奪いに来る

それなら今は…少しだけユノと2人だけで過ごさせてほしい

話を聞いているユノはとても不安そうで
チャンミンは怖くなったけれど

ひと通り理解すると、ユノは覚悟を決めたように微笑んだ

「事情聴取なんて怖くないよ
知らないことは知らないと正直に言えばいいだけだ」

「知ってることは?」

「言う必要ないよ」

「……わかった」

それから二人は常に体を離すことなく一緒に過ごした

料理をするユノの背中にはチャンミンがしがみつき
テレビを見るチャンミンをユノが後ろから抱きしめる

ともにシャワーを浴び、夜になれば愛し合い
昼間は長い時間語り合った

密度の濃い時間…

「最初からこんなふうにユノと過ごせばよかった」

チャンミンは唇をへの字に曲げる

そんなチャンミンを世界一かわいいと思うユノ

そしてそんなユノが世界一大好きなチャンミン

幸せな二人のもとに、現実の足音は聞こえなかった




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そこに愛はあるか〜12〜



ぼっちゃま特有のワガママを振りかざし
強引に要求を通そうとする

チャンミンのやり方で

チャンミンはユノを愛した

チャンミンの精一杯はまったくユノに理解されず

それでもチャンミンはユノを責めなかった


ユノはすべての後悔を背中に背負って


黒い腕時計を抱きしめて泣き続けた


チャンミン…


信じてやれなくて…理解してやれなくて
本当にごめん

心の奥に隠していた孤独

ユノへの思い

未熟な俺たちは…強がりばかり

臆病な俺たちは自分が傷つくのを恐れて

だけどそれほど、愛していたんだ

そこには臆病モノと寂しがり屋の愛がちゃんとあったんだ

なんにも気づかず…チャンミンが先に気づいた。


だけど…きっと
このことに巻き込まないように…
強がって俺を引き離そうとしてる

お前ばっかりカッコいいじゃねぇかよ

そうは行くか!

ここに愛はあるんだ

今度は俺の愛し方でチャンミンを愛する

サロンでシャンパングラスを持ってくる俺は
本当の俺じゃないんだ

嫌がられようが、ウザがられようが
もう関係ない

ユノは、とりあえず涙を拭くと
腕時計を丁寧に箱に戻して

チャンミンからもらった書類をもういちど見直した

バスケチームのコーチへの辞令にサインをする。
マンションを引き払うための書類は保留にし
そのほかの書類をひとつひとつ丁寧に確認していった

ユノは集中した。

元々こういうことの処理能力は高く
そこがいくらコネとはいえ、課長を務めることができるユノだった。

チャンミンの父は出来る限りのことを
チャンミンにしてやりたかったのだろうけれど

それがいかに難しかったかが書類でわかる。

これからチャンミンの糧になりそうなものは
バスケチームくらいだった。
その運営で細々と食べて行く感じだ。

俺が立て直してやる

決めた

もう、ウザがられてもなんでもいい
好きなヤツに俺が良かれと思うことをしてやるんだ。

チャンミンが俺をどう思うかは、その後でいい


ユノは車に乗り込み、
昨日チャンミンと過ごした別荘へと急いだ

待ってろ

チャンミン


別荘に近づくにつれ
マスコミらしきバンがいくつか停まっているのが見える

チャンミン…

予想通り、チャンミンの別荘をマスコミが取り囲む

ユノは離れたところに車を停めて
様子を伺がった。

後ろから自転車を漕ぐ音がして振り返ると

1人の初老の男が自転車を漕いでくる

よくみると、その男はソクジンだった。

いつもビシッとしたスーツなのが、その辺のおじいちゃんといった雰囲気にすぐにはわからなかった。

ソクジンがユノを見てそっと人差し指を自分の口にあてた。

そして小さく手招きをする。

「ソクジンさん!」

「しっ!静かにしてください。
ここで野次馬のフリして話しましょう
ユンホ様を待ってました」

「チャンミンは?」

「中にいます。
もうどうにもなりませんで。
ユンホ様が中に入って、ぼっちゃまと一緒にいてあげてください」

「どうやって?」

「私が、おとりになります。
ぼっちゃまを乗せてるがごとく車を出しまして
マスコミの注意を引きます。」

「その隙に俺が家に入る」

「できますか?ユンホ様」

「元バスケ選手なんだけど。
人をかわすのは得意だよ」

ソクジンは安心したように微笑んだ

「では、頼みます。
これは鍵」

ユノは鍵を受け取った。

「で?その後はどうしたらいい?」

「旦那様の嫌疑は晴れます。
それまで一緒に。食料はある程度買ってあります」

「わかった」

ソクジンはそっと自転車を降りて
別荘の裏手に回った。

程なくして、黒塗りの車がスピードを出して
裏から走り出てきた

やるな、爺さん

別荘のドアに張り付いていたマスコミが
一斉に車を追った

「シム家の御曹司が別荘からでた!」

ユノはその人波をかき分け
ドアに向かった

ユノに気づいたマスコミがユノに摑みかかろうとしたけれど、ユノはそれを突き飛ばしながら、なんとか鍵を開け、急いで中に入った。

「チャンミン!」

ユノは玄関ホールで叫んだ

返事はない

誰もいないキッチンやリビングを抜けて
寝室に入ると

チャンミンがブランケットに包まって
泣いていた

「チャンミン!」

「ユノ?」

泣きはらしたチャンミンの瞳が
ユノを見上げる

「ユノ…」

ユノの顔を見て安心したのか
チャンミンの顔が大きく歪んで

ブランケットの中からユノに飛びついた

いつもなら、面食らったユノが受け止めてよろめくのに

今は、ユノから手を差し伸べて
そしてしっかりとチャンミンを抱きしめた





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