FC2ブログ
プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い月(完)




ガンスが小高い丘に戻った時

チャンミンは地面に跪いて泣いていた



ああ、ユノさん…あなたはやっぱり


ガンスはチャンミンの肩にそっと触れた

「ユノさんは…」

チャンミンは嗚咽をこらえ顔をあげた

「ユノね、人間に戻れたんだよ」

「そうか…」

「これで…いいんだよね?」

「そうだな」

「僕ね、覚悟してたんだ」

「チャンミン君…」

「あんなに愛情深いんだもん
魔物なんかじゃない」

「そうだな…魔物なんかじゃない」

「魔物から解放されたんだ、やっとね」

「そうだよ、粛清なんかじゃない
これは解放だ」

「だからね、笑顔を見せてあげようって
やっぱり泣いちゃったけどさ」

「そうか…」

「いつも側にいてくれるって」

「……」


「いい人生を…って言ったんだ」


「……」

「一生懸命生きて…輝けって…」

「…そうか」


ガンスは泣いた

ユノが愛おしそうにチャンミンを見る姿が想像できた。


チャンミン君はわかっていたんだな


「チャンミン君」

「……」

「ユノさん、本当に幸せだったはずだ」

「……」

「君に会うための長い命だったんだ。
私はそう思う」

「僕に…会うために…」

チャンミンはもう

嗚咽を我慢せず…泣いた…





「チャンミン!こっち!ほら!」


大学4年の夏
チャンミンは国が管轄する遺跡の調査団の活動に参加していた。

Tシャツにカーキ色の短パンをはき
汗だくになって、森の中の土を掘っていた

チャンミンを呼ぶ声に顔をあげる

ユノが側にいた頃のチャンミンとは
その顔つきが変わっていた

精悍な感じが加わり
男らしく成長し、知性的でもあった。

「なにかありましたか?」

「もしかしたら、チャンミンの言う通りかもしれないよ」

「え?」

「ここで闘いがあったのかもしれない」

団員の手には、刀の竿と見てとれる物体があった。

チャンミンはそのひとかけらを手にして
ルーペでよく観察した。


ユノのものだ

チャンミンは確信した。


ユノが自分の軌跡を記した巻物をチャンミンに預けようとした。

あの時は断ったチャンミンだったけれど
ユノがいなくなり、チャンミンはその巻物を手に
今はその軌跡を辿っている

両班だったユノ

兵士だったユノ

何か発掘されると触って感じてみた。
それがユノのものだと、触ればすぐにわかった。

まったくそう感じない時もあったので
これは気のせいではない。

遺跡がユノに関するものだとわかる時
やっぱりユノが側にいるのだと感じることができた。

「またもや、すごい発見だね」

「勘だったんですけど、よかったです」

そのかけらを丁寧に包み、団の専用ケースに収める寸前に、チャンミンはそのひとかけらをポケットにいれた。

誰にもわからないように。


ユノの軌跡を感じたものを少しずつ自分で集めていた。

ユノ…


ユノのぬくもりを追って
僕は生きているよ、一生懸命にね


そうして、また桜の季節がやってきた。


チャンミンとミノは蕾膨らむ桜の木の下で
ガンスに写真を撮ってもらった

2人して角帽と黒ガウンを身に纏い微笑む

「あのさ、チャンミン、ちょっと他の子とも写真撮ってくる」

「ん?スヨンだろ?」

「あーうん…」

照れたようなミノ

スヨンは可愛いミノの彼女だった。

「行って来いよー」

チャンミンはミノの背中をバンと叩いた

ガンスがそんな様子を見て笑っていた

「チャンミン君」

「はい?」

「チャンミン君は彼女とかいいの?」

「僕にはユノがいますから」

スッキリとチャンミンは微笑んだ

「君はまだ…若いのに」

「もったいない、と言いたいですか?」

「うん…結婚してない私が言うのも変だけど」

「僕は、ユノに懸命に生きろ、と言われたんです」

「うん」

「いい人生を、と」

「うん」

「みんなが結婚して家庭をもつから、なんて
そんな理由でたった一度の人生を決めたくないんですよ」

「え?」

「ずっとユノを思って、その軌跡を辿ることが
今、一番やりたいことなんです。」

「………」

「やりたいこと、一生懸命にやります」

「私みたいになるよ?」

「ガンスさん、後悔してるの?
超常現象を追う生活」

「うーん」

「?」

「してないかな?」

ぷっとチャンミンが噴き出した

春の空に2人の笑い声がひびく


そしてチャンミンは桜の木をみた


あの入学式の日、あの木の下で
僕はユノに甘えていた

入学式でユノが隣に座ってもらえないと拗ねて
僕は子供のように駄々をこねていた


優しかったユノ

会いたいよ、もう一度


卒業式の学長の挨拶は
「いい人生を」で締めくくられた

きっとユノが言ってくれてるんだ


おめでとう!

卒業おめでとう!


卒業生全員の角帽が空高く舞い上がる


チャンミンは空を見上げた


ユノ…

愛してるよ

これからもずっとね




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村


ここまで読んでいただき
ありがとうございました。

ハッピーエンドでなくてすみませんでした。

楽しんでいただければいいのですが。

ヴァンパイアはホラーだけれど、とても切ない面を持っていて。
そんな甘く哀しいお話を描いてみたかったのです。

このお話のチャンミンは
このまま、ユノを思って一生を過ごします

そういうのは良くないと、
ユノのことを過去の思い出にしつつ
新たな世界に飛び出し、家族も得て幸せになるのがいい。
一般的にはそういう流れになるかとは思うのですが
このお話のチャンミンにとって幸せはユノなのです

それが一番幸せだと思うのなら
そこから出なくてもいいよね、と
幸せは人それぞれだしね、と

今回はそんな風に思いました


次回ですが。。
次回のお話は私自身のストレス解消のために
書かせていただきます( *`ω´)

なんの事だかわかる方もいらっしゃるかと思いますが、チャンミンに憑依して描かせてもらおうかなと。
中には不愉快に思われる方もいらっしゃると思うので、そこは無理されないでくださいね

それではまた近いうちに♫

本当にありがとうございました!

蒼い月(19)



食事が終わり、デザートが運ばれて来た。

アイスクリームに数種類のナッツが乗って
見栄えもいいものだった。

ユノはチャンミンに自分のデザートを譲った。

「いいの?」

「ああ、いいよ」

「それじゃ、遠慮なく」

本当に美味しそうに食べるチャンミン。

ミノがそれを微笑ましそうにみて
自分のデザートを差し出した

「まだ食べれるならこれもいいよ」

「ミノくん、いいよ、君が食べるといい」

ユノが遠慮した。

「チャンミンがあんまり幸せそうで」

ミノは微笑んでいる

「いらないなら、もらうね」


みんなから愛され構われ
そんなチャンミンの姿を優しげに見守るユノ。

レストランの外には夜の帳が訪れ
街灯が程よく庭を照らす

ユノは窓の外を眺めてつぶやいた

「ここまで高台に来ると、夜は寂しいね」

チャンミンはユノの横顔を見つめた

この人が寂しいなんて、今まで言ったことがあっただろうか。

その綺麗な横顔はたまらなく哀しく切なくみえた。



食後のコーヒーを飲み
4人は店を後にした。


ここまではガンスの車で来ていた。

駐車場まで薄暗い中を歩いていると
ミノが突然声をあげた

「あっ!蛍!」

「えっ?」

チャンミンが振り返って思わず声を発した
「あっ、それは」

ユノの顔が険しくなった

それは蛍ではなかった

先日ユノがチャンミンに見せた人の魂

でも、輝きはどんよりとして
懸命に生きる者のそれではない

輝きがない分、蛍に見えなくもなかった。

ミノはその光につられて道を外れた

チャンミンがそれを追う

「ミノ!それさ、蛍じゃないから」

「2人とも危ないよ、そっちは崖だから」

蛍に似た怪しい光は
柵を越えてミノを誘う

チャンミンがミノの肩を掴んだ

「そっちに行ったら危ないよ」

「大丈夫。ここなら来たことあるから」

「でも」

瞬間、蛍が舞い上がったと思ったその時

3人の視界からミノが一瞬で消えた

「ミノ!!!」

先に飛び出たのはユノだった。

あっという間に崖の下の暗闇へ
ミノは吸い込まれてしまった

ユノは滑り降りるように崖を降りて行った

「ユノ!」

「チャンミン君、柵の外に行ったらダメだ」

ガンスはチャンミンを引き戻し
急いで緊急車両を呼ぼうとスマホを出そうとした

「しまった。」

スマホはミノのリュックの中だった。

チャンミンが慌てて自分のスマホをだしたけれど
その顔が悲しく歪んだ

そのバッテリーはあと2%しかないことを
電池マークが知らせている。

これでどうにか…

チャンミンがスマホをタップして耳に当てた途端
スマホは真っ暗になってしまった。

「ミノのリュックにあるから大丈夫」

ガンスはチャンミンを宥め、自分も柵を乗り越えた

「ガンスさん!」

「チャンミン君はそこを動かないで!」

チャンミンが荒い呼吸をひとうふたつした頃
ユノがミノを抱えて崖の上に…
まさに舞い降りたようにみえた。

「ミノ!」

ミノはぐったりとして、その顔は青白かった。

「肋骨が折れてる」

ユノが低い声で言った

ガンスの顔が心配そうに歪んだ

「頭も打ってるのか」

「折れた肋骨が内蔵を傷つけていると思う」

ユノはそっと、ミノを地面に下ろした

ガンスは急いでミノのリュックからスマホを取り出そうとした。

「間に合わないですよ、ガンスさん」

「え?」

「救急車か来るまで待ってたら、ミノ君は間に合わない」

「そんな…」

そう言って、ユノは横たわるミノの胸に手を当てた

「ユノ!」

チャンミンが悲しく叫ぶ


ここでユノが…
ミノを治すようなことをしたら


せっかく自転車を盗んだのに
これからも悪いことをして、そして…

ずっと一緒にいようと思ったのに


でもミノが……


チャンミンの目からポロポロと涙がこぼれた


ガンスは何も言えず
それでもユノの肩を思わず掴んだ

「ユノさん…それじゃユノさんが…」


ユノは優しく微笑んだ

「何も言わなくていい」

「……」

「そんな辛い決断をあなたにさせませんよ、ガンスさん。」

「ユノさん…」


「あなたは友達だからね」


ガンスはその場に座り込んでしまった。


ミノを助けるために…

こんな人をだれが魔物だなんていうのか

ユノの手のひらからキラキラと光る光がミノの胸へと流れる

ゆっくりと優しく

ユノは首をかしげた

「大丈夫かな、俺、もうほぼ人間に近くて
力が出せるといいんだけれど」

それでも、ユノから溢れるその光は次第に眩くなっていき、ミノがゆっくりと目を覚ました


「ミノ!!」

「大丈夫?!」


ミノは目覚めたかのように辺りを見回して
ゆっくりと立ち上がった

「ガンスさん、一応病院に連れて行ってあげて
致命傷は治したから」


「ユノさん…私ね、ミノを病院に連れて行ったら
戻りますからね、ここに。」


「お願いします。チャンミンを送ってやってください」


「ユノさん、あなたのこともね」


覚悟を決めたユノがにっこりと笑った。
笑ったけれど返事はなかった


ガンスは泣いてしまいそうになり
ミノを連れて車に向かった


「チャンミン、ここにおいで」


ガンスはそんなユノの言葉を背中で聞いた


思わず泣いた…ガンスは泣いた


ユノさん…

こんな哀しいこと…許せない

空を見上げると月は闇夜に溶けそうに蒼かった

その月をガンスは睨みつけた



チャンミンはユノを見つめた

「チャンミン、ここにおいで」

ユノは優しくその両手を広げて微笑む

「うん」

涙を堪えて、チャンミンはユノの胸に飛び込んだ

ユノは一旦チャンミンを強く抱きしめると
体を離して、その可愛い顔を両手で包み込んだ

「チャンミン、俺さ、すごく幸せだ」

「ユノ、人間になった?」

チャンミンは涙の止まらない瞳で
ユノの優しい漆黒の瞳を見つめた

「たぶんね。」

「よかったね?ユノ。
人間になりたかったんでしょ?」

「そうだよ、人間は素晴らしいからね」

「なら…よかった…」


「チャンミン」

「……うん」

「笑顔を見せて、笑ってよ」

「うん!」

チャンミンは泣きながら笑顔を見せた

ユノの心にいつまでも残るように
最上級の笑顔をみせようと思った

「本当に可愛いなぁ、チャンミンの笑顔」

チャンミンは笑って見せた


あなたの大好きな僕の笑顔を
たくさん見せてあげるんだ


「大好きだよ、チャンミン」

「僕もユノが大好きだよ」

「いい人生を」

「ユノ…」

「俺はいつもお前のそばにいるからね
姿なんか見えなくたって、そばにいるよ」

「ううっ…ユノ…」

「一生懸命に生きて、輝くんだ」

「うん…わかった…」

ユノは優しく微笑んだ

「ユノ…愛してる…」

「愛してるよ、チャンミン
側にいてくれて、ありがとう」

どちらからともなく、2人はひしと抱き合った


ユノは愛おしそうにチャンミンを見つめ

チャンミンも笑顔でユノを見つめた

そっと近づくユノの唇

チャンミンはそれを受け止め
優しくキスをした


ユノの感触が薄れてゆく


それはあっという間だった


一瞬のことだった


チャンミンの腕の中で、ほんとに一瞬に

ユノは弾けるように煌めく塵となった


夜空にキラキラと輝く塵が舞った


「ユノ!待ってよっ!」

チャンミンはその煌めく塵を一粒たりとも逃さないようにもがいた

これでもかともがいて、その塵を全部つかもうとした

「ユノ!!!」


泣き叫んだ


「いやだよ!ユノ!」


チャンミンは大声をあげて泣いた


心に…決めていたんだ

最後は笑顔をみせてあげようと決めていた


ユノは人間にもどりたかったのだ


最後に人間として自分を愛したかったはずだ


これでよかったのか
今はとてもそんな風に思えなくて

どうして自分はディアブロにならなかったんだろうと、そんな後悔しかない


だけど、ユノの笑顔がそんなことは望んでいなくて

あんなに綺麗に散ったユノ

これでよかったの?


チャンミンは大声で…泣いた

誰か教えて…答えてよ…


いつも、側にいてなんでも答えてくれたユノは
煌めく光になってしまった





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

明日は最終回となります

蒼い月(18)



チェ・ガンスはユノとチャンミンの住むマンションを見上げた

そして大きくため息をついた。

インターフォンでユノの部屋番号を押す

「はい、あ、ガンスさん?」

モニターに自分が気難しい顔をして写っている。

「すみません、お忙しかったですか?」

「大丈夫です、どうぞ」

ガンスは部屋に通されて
ソファに座らせてもらっても、しばらく黙っていた

話したいことがあって来たのに
その態度はとても失礼だと自分でもわかっていた。

それでもユノはそんなことを気にすることもなく、
何も聞かずに、コーヒーを淹れた。

「申し訳ありません」

「何も謝ることなんてないですよ」

「正直、自分でもなんで来てしまったのかわからないんですよ」

「俺の顔が見たくなったわけではないでしょう」

「何か話そうと思ったんですけど」

「もう、あんまり教えられることはないなぁ」

「あの…」

「はい」

「ディアブロとして優秀ならいいんですよね」

「……」

「魔物として優秀だったら、粛清されることなんて
ないんですよね」

「テミンは優秀でした」

「……」

「その辺のジャッジは結構シビアです。
いままでにも何人も粛清を見て来ましたけど」

ユノは自分のコーヒーカップを両手で包見込みながら、じっと1点を見つめながら答えた

綺麗に整った顔だった。

「聞いていいですか?」

「どうぞ」

「両班だったんですよね?」

「そうですよ。大昔ね」

「どんな両班?」

「どうって…」

ユノは下を向いて微笑んだ

「世間知らずでしたね。剣の腕はそこそこ良かったと思いますけど」

「調べたら出て来ますかね」

「どうかな。調べたいんですか?」

「いえ、そんな事はどうでもいいんですよ」

「……」

「助かるんじゃないかと思ってね」

「……」

「人間としてね」

「ガンスさん」

「はい」

答えるガンスの瞳は真剣だった。

「そんな可能性はゼロです」

「……」

「この身体は何百年もたってるんです。
生きながらえてるのは、蒼い月の力です」

「……」

「ガンスさん」

「はい」

「ありがとう」

ガンスは顔をあげてユノを見た

そこには

スッキリと全てを受け止め、覚悟を決めた男の顔があった。

そして綺麗に微笑んだ。

「チャンミンも、あなたも俺を悪者にしようとするんです」

「え?」

「悪いことをしろと、2人に言われて
なんて幸せなことかと、思ってます」

「ユノさん…」



カタッとリビングの入り口から小さな音がした。

ガンスとユノはハッとして音のする方を見た。


入り口から俯いたチャンミンが顔をのぞかせた


「チャンミン!」

ユノが駆け寄って、思わず抱きしめる

あまり聞かせたくない話だった。

抱きしめられたチャンミンがぎゅっと目を瞑り
唇を引きむすんでいる。

泣くのを我慢しているのだろうか

ガンスも思わず椅子から立ち上がり
何か声をかけようとした。

でも

「おかえりチャンミン、お邪魔してます」

ごく普通にガンスは答えた。
なにも特別なことなんてない、そんな風に装った。

チャンミンはペコリと頭をさげた。

「チャンミン、挨拶は?」

ユノもなんでもない風に
普通にチャンミンを窘めた

いつものように

なにも特別なことなんて、起きないように

「腹減ったか?何か食べに行くか?」

「……」

ユノが明るく振り返った

「ガンスさんもどうですか?
ミノ君も呼んで」

ガンスにまったく躊躇がないと言ったら嘘になる

ユノは自分の尊敬する先輩を殺めた魔物で
そんなバケモノと食事だなんて

ガンスは、それでも
ユノと食事に行く理由を見つけていた
自分へ説明するために、そんな理由を見つけていた。

「そう…ですね。」


「ガンスさん」

ユノの瞳が優しい

「無理…しないでください」

「……」

「行きます、ミノがきっと喜ぶ」

ガンスはそそくさとミノに連絡をした。

ミノが…行きたいだろうから

ユノはじっとガンスを見つめた


4人で、郊外にあるレストランに入った

軽めの食事と楽しい会話

主にチャンミンの小さい頃の話や
ミノの恋愛話に花が咲いた

幸せな時間だった。

誰にとっても幸せな時間だった。

月はもうすぐ満月を迎えようとしていた

その蒼さは光り輝き
冷たい怒りを含んでいた




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

百海です。
設定まちがえてすみません。

拍手コメントやコメントにまったくお返事ができていません(^◇^;)
ほんとにごめんなさい。

新しく読んでいただいた方、
連載がはじまったことを気がついてくださった方
泣けそうに熱く感想を語ってくれる方
毎日拍手コメントをくださる方。

本当にありがとうございます。
不義理をしてすみません。

毎日繰り返しコメントは読ませていただいています

お返事ができない理由は言い訳を含めていろいろあるのですが、励みになっています。

蒼い月(17)



月はだんだんと丸くなり
その蒼さを増していった。

ユノは店に行く事をシウォンに禁じられていた

「お前を見て、俺に情が湧いたら困る
粛清されるわけにはいかないからな」

「そうだよな」

「お前を助けたい気持ちになったら、俺はマズイ」

「わかってる」

「月の色が落ち着いたら、また出勤してくれよ」


俺が出勤する日なんて来るのだろうか


シウォンの本心は
ユノとチャンミンが一緒にいる時間を作ってやろうという気持ちもあったと思う。

そんな情は危険だ。


それでも

チャンミンは喜んだ

「もう店に出なくていいの?」

「ああ、経営権だけで生活できそうだ」

「じゃあ、ユノ。これから悪い事をしに行くよ」

「……わかった」

なにが悪いんだか、可愛すぎて全く悪さなんて感じられない


外はもう真っ暗だった。

ユノは近くのサイクリングコースに行って
貸し出し用サイクルの倉庫へ行った。

「ユノ、なにするの?」

「自転車を1台いただくのさ」

「盗むの?」

「ああ、そうだよ。今日は自転車泥棒だ」

「大丈夫かな?」

「なにが?」

「あ、えっと」

泥棒、なんて、結局チャンミンにはできない。

「捕まるかって?」

「いや、いいんだけどさ。」

「チャンミンはここで待ってて。
俺はあの防犯カメラには映らないから」

「そうだよね!」

「だから大丈夫」

ユノは軽々と自転車1台を倉庫のチェーンを切って持ち出した。

「これでどっか行こう」

「どこに?」

「チャンミン、後ろに乗って」

「いいよ!」


ユノは後ろにチャンミンを乗せ、
真っ暗な公園を走り抜けて行く

もうどれくらい走っただろうか。

高速道路を横目に見ながら
どんどんと都会を離れて行く

夜の高速を走る長距離トラックの灯りがまるで流れ星のようだった。

反対側を見ると、街の灯りが遠くにぼんやりと見えている

たぶん

この速度とこの距離は

普通に自転車を漕いでいるものではないだろう

ユノが自分のもうひとつの力で
チャンミンをどこかへ連れていってくれるのだろう


どこでもよかった


ユノと一緒ならどこでもいい


地獄の底だって、2人なら幸せだ


目の前の広い背中にそっと頭をつけて
高速道路の灯りを見つめていた


チャンミンが少し眠くなったところで
やっと自転車は止まった


チャンミンはブレーキの金属音に目を開けた

「寝ちゃったよ」

「あ、つまらないな、夜景きれいだったんだぞ」

「見たよ、高速道路のトラックがすごく綺麗だった」

「こっちにおいで。もっときれいだから」

ユノに誘導されて、小高い丘の上に立った。

見おろすと街の灯りが眼下に見える。

「さっきの高速道路の方がきれいだけどな」

ユノが後ろから手を回して、目隠しをした。

「フフッ…何にも見えませんけど?」

「俺が手を離したら、そっと目を開けて見て」

ゆっくりとユノの手が離されて
チャンミンはそっと目を開けた

「うわぁ」


さっきまで普通に見えていた眼下の町が

まるで

蛍が何千匹と飛び交う川のように輝いている

まぶしくて、思わず目を細めた


「ユノ、これは蛍?」

「これは人間の魂」

「え?」

「懸命に今日を生きる、人間の魂だよ」

「魂って、こんなに輝くものなの」

「きれいだろ?」

「すごくきれいだ。なんだか涙がでそうだよ」

「限りある命で今日を生きているんだ…
懸命に生きているから、こんなに輝くんだよ」

「こんなにたくさん…」

「チャンミン」

「……」


「人間って素晴らしいんだ」

「……」

「わかるだろ?」

「……」

チャンミンは眼下の眩しさに
その輝きに心を打たれていた


「ユノだって、懸命に生きていたでしょう」

「今も、そうだよ。
懸命にチャンミンを愛してる」


ハッとしてチャンミンが顔をあげた

「ユノ!そんなこと口にしちゃダメだ」

「嘘なんかつきたくない」

「ユノ!」

「愛してるよ、心から」

ユノは何も怖れることなどないように
優しく微笑む


「ユノっ!いやだ」

チャンミンはユノにしがみついた


このまま、ユノが
塵になってしまったらどうしよう


チャンミンはユノをしっかりと抱きしめた



チェ・ガンスはミノとテラス席のあるカフェに来ていた。

「気持ちのいいテラスだね」

「この間、チャンミンと来たんだよ」

「チャンミンは…元気か?」

「今ひとつ…かな」

「そうか…」

「調査団の活動が今ひと段落してるから
落ち着いた生活なのかもしれないけど」

「ふむ」

「お兄さんは仕事やめたって」

「え?」

「うん、そう言ってたよ」

「ユノさんは調子でも悪いのかな」

「そんな感じでもないみたいだけど」


ガンスはあんな別れ方をした後
ユノの事が気になっていた。

すべてを諦めたような表情

自分の過酷な運命を誰のせいにするでもなく
淡々と生活をしていたユノ

魔物として生きて行かなければならず
しかもその終わりはなかった。

ユノは誠実で裏表の無い、いいやつだ。

ガンスは悲しくなった。

尊敬していた先輩の幸せを壊したユノを
許そうとは思えない

たとえ、その習性がそうさせてたとはいっても。

だけど、そんな罪を犯したんだから
粛清されなくたっていいじゃないかと

そんな矛盾した気持ちになっていたのも事実だった。




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

蒼い月(16)




「ユノ、起きて」

眩い朝日の中で、
ユノは目を覚ました

顔をあげると、チャンミンが微笑んでいる

ユノはたまらない気持ちになって
チャンミンをベッドへ引き込んだ

バランスを崩したチャンミンは
ユノに引っ張られるままにユノの胸に収まった

「ユノ、僕、大学に行かなきゃ」

「なんだよ、もう行っちゃうのか」

ユノがチャンミンの頭を抱えて
その髪にキスをする

「うーん」

どっちつかずな返事をするチャンミンの髪を
ユノが優しく撫でる

「行っておいで
今夜は誰かと飯を食うのか?」

「いや、食べないよ」

「じゃあ、何か作っておくから」

「うーん」
ユノの胸の中でチャンミンが難しい顔をしている。

「なに?どうした」

大学に行く時間だと、そう言ったのはチャンミンだ。
それなのにユノの胸でグズグズしている。

「具合が悪いのか?」

ユノは自分の額をチャンミンの額に当てて見た。

お互いの鼻が軽くぶつかる。

熱はない

チャンミンはクリクリとした大きな瞳で
至近距離のユノの瞳をみつめる。

可愛い

「熱はないかな」

ユノはそう言って額を離し、顔を傾けてチャンミンに口づけた。

「熱あるよ」

「ん?そうなのか?」

「だから今日は休もうかと思う」

「え?」

「大学は休む」

ユノはフッと微笑んだ

「サボりたいの?」

「ユノといたいの」


「チャンミン…」


チャンミンがバッと飛び起きた

その拍子に掛けていた白い毛布が宙を舞った

その中で微笑むチャンミンは
まるで空から羽を広げて舞い降りてきた天使のようだった

「なんだよ、俺も起きるのか?」

「出かけるよ!」


チャンミンに急かされて洗面をし
歯を磨くユノ

チャンミンはとっくに着替えて
コーヒーを淹れている

「早く食べてね」

「どこか出かけたいところがあるのか?」

「うん、隣町にカフェができたんだって」

「へぇ、そこに行きたいの?」

「テラスが気持ちいいらしくてさ」

「そうか。」


チャンミンがそんな風にどこかへ行きたいと言うのは珍しかった。

いつも「今日はどこへ行くの?」とユノに尋ねることが多かった。


訪れたカフェはオープンしたての割には落ち着いているように見えた。

でもよく見ると、テーブルはほぼ満席。

敷地が広くテーブル同士の間隔が広いので
落ち着いて見えているようだった。

「テラス席は空いてますか?」

チャンミンが率先して店員に聞く。

「ごさいます。
こちらへどうぞ」

案内されたテラス席は
緑の公園を見下ろし、気持ちの良い風の吹く
とてもいい感じの席だった。

「ここって、あの公園の裏手になるのか」

「そうなんだよ」

2人は腰をおろした。


「チャンミン」

「なに?」

「来てみたいって言ってたけど、オープンしてから、ここに来たことあるんだろ?」

「え?」

「はじめてじゃないだろ?」

「………」


「いいんだよ、変なこと言って悪かった。」

「ミノとね、この間来たの」

「そうか」

「そのときにね、ユノを連れて来たいって思ったんだ」

「そうか、うれしいな」

「っていうかさ」

「?」

「最初にユノと、一緒がよかった」

「どうして?」

「このテラス席が綺麗で、感動したんだ。」

「うん」

「ユノとはじめて訪れて、一緒に感動したかった」

「うれしいけどさ、ミノと感動するのもいいじゃないか、な?」

「……」


頼んだコーヒーが運ばれて来た

チャンミンは俯いたまますっかり黙ってしまい
その様子を見たユノはため息をついた

「チャンミン」

チャンミンは返事をする代わりに
上目遣いにユノを見た。

「不安になってるよな、
テミンのあんな姿を見て」

「見てないよ」

「……」

「僕は何も見てない」

「…そうか」

「ユノ」

「ん?」

「僕、昨夜、いろいろ計画をたてたんだ」

チャンミンが目を輝かせて微笑む

「計画?」

「ユノを悪者にする計画」

「……」

「そして、長い間、一緒にいる計画」

「チャンミン」

「あのね」

チャンミンは、ユノの問いかけを無視して、
小さく折りたたまれた紙を出してテーブルに広げた。


盗む
襲う
暴力を振るう
1日1回争う
言葉はいつも悪く
……

チャンミンの「計画」が、びっしりと小さな紙に書き込まれている


「なにこれ」

「うん、だからね」

ひとつひとつ、それこそ一生懸命に説明をはじめるチャンミン

ユノはそんな懸命なチャンミンの表情を見つめていた

昨夜、ほとんど寝ないで…きっと寝ないで考えたのだろう

ユノが粛清されないように

テミンのあのような最期を目にして
傷ついていないわけがない

きっと恐ろしくてたまらないのだ


かわいそうに


「それでね、ここまできたらさ、ユノは僕を噛んだらいいんだ」

「それはしない」

「まって、最後まで聞いて?」

「チャンミン、俺はそれはしないんだよ」

「それのメリットをこれから説明するから。
考えが変わるからさ、あのね」

ユノはテーブルの上でチャンミンの手首をつかんだ

「チャンミン」

「……」

チャンミンの顔が強張った

「どんな説明をされようが、それはしない」

ユノの強い言葉に
チャンミンのキッと引き結ばれた唇が震える

「少しは…」

「?」


「僕の話を聞いてよ!」


チャンミンがユノの手を振りほどいた
その拍子にコーヒーカップが大きな音をたてて
床に落ちて割れ

まわりの客が何事かと、こちらを見た。

「チャンミン!」

店員が飛んできた
「お客様、大丈夫ですか?」

「すみません、大丈夫です。
もう会計したいので、いいですか?
カップの分も弁償させてください」

ユノがその場を取り繕った。

ユノが会計を済ませている隙にチャンミンは
店を出てしまった

慌てて後を追ったユノだったけれど
すっかりチャンミンを見失ってしまった

探したいのに、以前のように感覚だけでチャンミンを探せない。

それから長い時間ユノはチャンミンを探し回り
もしやと思い、一旦、マンションへ戻ってみた。

玄関にはチャンミンの靴があり、
それを見たユノは大きくため息をついた

「チャンミン」

廊下を進み、リビングに入ってもチャンミンはいない。

寝室を開けると、チャンミンはベッドの上に
座り込んでいた。

「探したよ、チャンミン」

「ごめん」

ユノはベッドに座って、チャンミンを抱きしめた
ユノの温もりがチャンミンを包む

チャンミンはたまらなくなって
自分を抱きしめるユノにしがみついた。


「お願いだから、僕を噛んで」

「チャンミン」

ユノはチャンミンを抱きしめる腕に力を込めた。

「そうしたら、僕も立派なディアブロで
ユノも魔物として務めは果たした事になるでしょう?」

「……」

「そうして、月の色が落ち着いたら
僕とユノは愛し合うんだ。
100年の間は…次の蒼い月までは…」

「……」


もう誤魔化せない

大丈夫だ、なんて

気休めを言うような段階ではない


「あのさ、チャンミン」

「……」

「100年は長い」

「……」

「100年後に一緒に消えるとは限らないんだ。
お前だけが残ってしまったら」


たぶん、俺は今回で消えてしまうだろう


「……」

「俺は耐えられない」

「努力する」

チャンミンの顔は真剣だ。


どうにもならない事実に
真摯に向き合おうとするこの存在が
死ぬほど愛おしい

真面目で純粋で

こんなお前が魔物なんかになれるわけない
させてたまるもんか

「お前にひとつ頼みがあるんだ」

「なに?」

「もしね」

「うん」

「もし、俺が残念ながら粛清されてしまったら」

「そんな話は聞かない」

チャンミンはユノの胸から離れて
ベッドに潜り込んだ

ユノはこんもりと盛り上がった毛布を撫でた

「せっかく遺跡の調査団にいるんだから」

「……」

「俺の軌跡を辿ってほしいんだ」

「……」

「俺は、年表をつけてある。
この世界で起きた大きな事と、その時自分がどこに住んでいたのか」

「……」

「ベッドサイドの引き出しの一番下に入ってる」

「……」

「それを元に…」

突然ガバッとチャンミンが飛び起きて
ユノに抱きついた

不意を突かれて、ユノはチャンミンを抱きとめたまま、ベッドに倒れた。

「なんでそんな、残酷な事を言うの…」

チャンミンは泣いていた
小さかった頃のように声を上げて泣いた

チャンミンはよく泣く子だったな、と
なんとなくユノは思った。

自転車になかなか乗れなかったり
きらいなものを食べなければならなかったり

注射が嫌だとあまりに泣くので
いつもユノが自分の魔力で治していた

いっつも…泣いて

「チャンミン、ごめん、残酷だよな」

「だから、そんな話は聞かないからね」

「わかったよ」

「僕の計画通りにお願いね」

「……」





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
検索フォーム
ブロとも申請フォーム