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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

月の王子さまーあとがきー

月の王子さま

最後までお付き合いくださり
本当にありがとうございました。

このお話は執事とお坊っちゃま、という
以前から書いてみたかった設定でした。

タイトルの通り、チャンミンのモデルはあの
星の王子様です。

優しくて純粋ですが、そのために傷つきやすく
そして無邪気な王子様。

そして、ユノさんですが
実はモデルはあのカン・ムソクなのです。
えーーー!ですよね(~_~;)

元特級戦士で、誠実、護衛の能力に秀でたユノと
朝鮮一の剣士で、忠義心厚いムソク。

ムソクに「キスが上手い設定」をつけたのが
このお話のユノさんなのですが、ムソクとは全然ちがうキャラになるんですねー(~_~;)

やはりムソクはストイックなのかもしれません。

終わり方はユノさんが頑固ぶりを発揮しましたが^ ^
大ドンデン返しや、サプライズ展開はつけず。

でもユノさんは
「やっぱりアメリカ行かない!チャンミンといたい!」とワガママ言うようなキャラではないので、
みんなの力を借りて、無理やり飛行機から降ろさせました^ ^

私はこのお話のユノさんがかなり好きな感じで
書いていてとても楽しかったです。

ジホ兄も本当は複雑な生い立ちで
いろいろある人なのですが今回は悪役に徹していたただきました。

そして…

いつも拍手コメやコメントでたくさん応援してくださってほんとにありがとうございました!

毎日毎日、感想を綴ってくださる読者様。
私がお話を書き始めた頃からずっと読んでいてくださっている読者様。
最近読み始めていただいて、一気読みをしてくださる読者様。
ポチをしてくださる読者様。
本当に感謝しております。

それなのに、中盤からほとんどコメント残せず
申し訳ありません💦

すぐにお返事した方がいいコメントもあるのに
やはり順番にお返事するべき、と思ってしまい
どんどん遅くなってしまう、という有様で💦

皆様のコメントに励まされているというのに
不義理をしています。

ゆっくりめにはなりますが
お返事させてくださいね


そして、今回はデータを消す、というとんでもない事をしてしまい、特にその際はみなさんの心遣いに助けられました。

あと、書きかけのお話を2時間くらいアップしてしまう、というコトもあったりして
反省しきり、でございます💦

毎回なのですが、
非公開の拍手コメには個別のお返事ができない設定で申し訳なく思っています。

勝手な言い分ですが、コメ返しないクセにコメントを楽しみにしていた私をどうか許してください。


そして、次のお話なのですが
たぶん短編になります。

申し訳ありませんが
全ページ鍵をかける予定です(~_~;)

なぜかというと
まず、ハッピーエンドではないのです💦
そして、病んでますし、闇です。
さらに18禁色が濃厚です。

今までの私が書くお話は
最後がハッピーエンドだからと、耐えていただいた部分が多かったと思われますが、

今回は正直、皆様の癒しにはなりにくいお話ではないか?と思われます。
タブーもいろいろ出てきます。
書き方も3人称になります。

たまにはそういうのもいいな、
と思われる方。
実はそういう方が好き、という方

そんな方には是非読んでいただければ
と思います。
なので、無理はされずにスルーするも良し
覗いてみてやめるも良し、
そのままハマっていただくも良し。

皆様それぞれの感覚にお任せしたいと思います。

ですが、2人の愛は汚い世界の中で
自分のことさえ見えない闇の中で
ガラスの破片のように鋭く
そして悲しく綺麗です。

救われるのはそこだけ、です。

実は私的にはハッピーエンドなのですけれど💦
わかりにくくて、すみません💦

そのお話の後になりますが
保育士チャンミンと、やもめパパのユノさんの
お話も予定していますので、それまで待っていただいてもよろしいかと思います。

今度のお話は、コメント欄は最終回のみ
オープンとなりますので
拍手コメのみ開く予定でいます。

誹謗・中傷は凹むので
なるべくしないでくださいませ💦
メンタル弱いので💦

お話が始まるのが10月になってしまうかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

季節の変わり目、まわりで風邪をひいてしまう方が目立っています。

みなさま、どうぞご自愛ください。

いつもいつも、ありがとうございます。


百海(ももみ)



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月の王子さま(完)

ーーユノsideーー



空港の警備と警察に散々調べられて、
それこそ全裸にされて調べられた

解放されたのは、もう夕暮れだった。

チャンミンがシム家の人間でなければ
俺は今日中に帰れなかっただろう

クタクタになって、スーツケースとともに
建物の外に出た。

そこでは先に出てこれたチャンミンが
笑顔で待っていた。

側に停まっている車には
スヒョク、テミン、そしてなぜかドンジュ様。

「ユノっ!」

ああ、チャンミン…

チャンミンは駆け寄ってきて、俺に飛びついた。

「みんな、店で待ってるんだよ
昨日のお祝いなんだから」

「あ、俺は人数入ってないから」

「追加しておきましたっ!」

「ああ、そうなのか。うん、ありがとうな」

俺はチャンミンの頭を撫でた

「おかえり、ユノ」

ドンジュ様…

「ドンジュ様もおかえりなさい」

「ああ、戻ってきた。
お前らのためだぞ。なーんてさ、よろしくな」


俺たちは車に乗った。

5人でギューギューの車内だったけど
楽しくて、幸せだった。

「僕たち映画みたいだったよねー
ユノったら、滑走路のど真ん中で
僕に激しくキスをしてくれたんだよ!
濃厚なやつ!」

「ひゅーーー!」

「やるなぁ、ユノ!」

「言うなよ、チャンミン!」

「たぶん、100人以上ギャラリーいたけどね」

ワイワイと俺たちを乗せた車はレストランに着いた。

子供達が出迎えてくれた

「ヒョーン!すごかったねー!
ニュースみてたよ!逮捕されたんでしょー」

「されてないよ!ワルモノじゃないからな?」

ふと、顔をあげると、
なんとそこには大旦那様…

俺は固まった…

ミナが察して子供たちを席につくように、予約してあった個室へと促した。

「あ、あの…」

大旦那様は完全なる無表情だった。

「チャンミンは席をはずしなさい
ドンジュもだ」

「お断りします。またお祖父様、ユノを隠すから」
チャンミンが口を尖らす。

「人聞きの悪いことを言うな」

「チャンミン、大丈夫だから、な?」

「でも…」

チャンミンは名残惜しそうな顔をしていたけれど
ドンジュ様に促されて、待合のロビーから離れた。

誰もいない小さなロビーは
俺と大旦那様の2人きり

なんとも気まずい…

でも、ここは俺から話すべきだ。

「大旦那様」

「うむ」

「一旦戻って参りました」

「一旦?」

「飛行機の座席も良い席を用意してくれて
ありがとうございました。」

「チャンミンは…あんな騒ぎを起こしやがって。
うまく収めるのに、どれだけ大変だったか」

「申し訳ございませんでした」

「そんなにユンホがいいのか、チャンミンは。
世間にみっともないとか、考えないのか。」

「私も、チャンミンがいいです」

「は?!お前が冷静な判断をせんで
どうするんだ」

「誰になんと言われようと、私はチャンミンがいいです。もう離れる気はありません。」

「なっ!!!」

「今回の空港騒ぎで、自分の気持ちがはっきりしました。」

「この騒ぎで冷静になるのが普通だろ」

「大旦那様がどんなにチャンミンが可愛いか
よくわかっているつもりです。
だからこそ。」

「だから、なんだ…」

俺は腰を90度に曲げて頭を下げた。


「私にチャンミンをください」


「は?!な、何をバカなことを言ってるんだ!」

俺は頭をあげて、大旦那様の目をまっすぐにみつめた。

「この人生をかけて守ります。
今のような贅沢はさせられないけれど、幸せにする自信はあります。」

「お前…」

「もし、許してくださるなら
チャンミンを連れてアメリカへもう一度
行かせてください」

「チャンミンも?」

「信じていただけないかもしれませんが、
大旦那様への義理を通さずに、私の幸せはないと思っています。」

「ユンホ…」

「ここまで私が成長できたのは
大旦那様のお陰です。
だから、チャンミンのことは諦めなければならないと思っていました。」

「………」

「でも、無理でした。
私はチャンミンと離れることはできません。」

大旦那様の拳が震えている
このまま、殴られるかもしれない…

「アメリカの事業は責任をもって
私が統制をとってみせます。
チャンミンが文化事業を行えるように
配慮もいたします。」

「簡単にくださいって、やるわけないだろう。
犬や猫じゃないんだ」

「でしたら…」

「だったら?」

「奪うまで、です」

「お前!」

「大旦那様への義理が果たせないのは
きっと死ぬまで後悔するとは思いますが」

「………」

「チャンミンの方が大事です」

「………」

「………」

「意外とお前は…」

「はい」

「意外と欲張りなんだな、あれもこれもと」

「いえ、チャンミンだけで結構です」

「わしへの義理はいいというのか?」

「欲張るな、とおっしゃるのなら
チャンミンだけがほしいです」

「飴かチョコかと聞いておるのでないんだ!」

「チャンミンが…いいです」

「チャンミン、チャンミンって…」

「申しわけありません」

「悪いなんて思ってないくせに」

「思っておりません」

「はーーーーっ」

大旦那様はうなだれた。

「すべては私の理解を超えている」

大旦那様は静かにため息をついた

「はい」

「それも時代なのか…」

「………」

遠くで子供たちのはしゃぐ声がして
この部屋は静寂につつまれていた。


「そんなにいいなら、連れてけ」

「大旦那様…」

「あんなやついらん。
この家にまったく役にたたない…」

「………」

「だがな。世間の風当たりが強いのは
お前じゃなくチャンミンなんだぞ」

「わかっております。」

「守りきれるのか?」

「守ります。」

「それがウソだったら殺すぞ」

「はい」

「だったら、さっさとアメリカへ連れてけ」

「ありがとうございます!」

「もう私は帰る」

俺は頭を深く下げた。


許しをもらえた…

もうチャンミンと離れなくていいんだ…

俺はその幸せに震えた

大旦那様がロビーのドアを開けると

なんとそこにはチャンミンが
涙でグシャグシャの顔で立っていた

「チャンミン!」

「お、お祖父さま…」

「な、なんだ、どうした?」

チャンミンがクシャッと泣き顔で笑おうとする

「ありがとう、お祖父さま…」

チャンミンは大旦那様に抱きついた

「お、おいおい…」

大旦那様は大きなチャンミンに
抱きつかれ倒れそうだ。

「困ったやつだな…」

それでも、大旦那様は
孫のワガママを聞いてやる、おじいちゃんの顔だった。

「チャンミン…」

「なに?…うっ…」

抱きついたまま、しゃくりあげてるチャンミン。

「ユノは頑固だぞ?」

「知ってる」

「ついていけるか?」

「うん…飛行機だってとめたんだから」

「そうか…」

大旦那様はチャンミンの背中をぽんぽんと優しくたたく。

「ユノはあんなこと言うけど
幸せにしてもらおうなんて思うな」

「ん?」

「お前も、ユノを幸せにしてやるんだぞ」

「うん!」

またチャンミンは大旦那様をギュッと抱きしめた。

「く、くるしい…」

「あ!ごめん!おじいさま!」

「帰ろうと思ったがな、私は少し子供たちと食事することにした」

ミナが来た

「大旦那様、こちらへどうぞ
みんな待ってますよ」

大旦那様を見送ったチャンミンが
振り返って俺を見つめた

「ユノ、カッコよかった…
僕を守りますって…奪うって…」

「盗み聴きは良くないな」

「録音しておけばよかった!」

「チャンミン」

「なに?」

「アメリカに俺と来るか?」

「うん!」


チャンミンは笑った

世界で1番可愛い笑顔。

俺だけの宝物だ

「さぁ、僕たちもご馳走を食べようよ」

「ああ」

連れ立って、ロビーを出ると
店の玄関にドンジュ様がいた。

これから、店を出ようとしている

「ドンジュお兄さま、もう帰るの?」

「ああ、忙しいんだ、俺」

「なんで?」

「スニを探し出して、屋敷に連れてくる」

「え?!」

「俺もスニを守るよ。今度は絶対だ。
そして、シム家の跡を継ぐから。
感謝しろよ、お前ら」

爽やかな笑顔でドンジュ様は
店をでた。

やっぱり、ドンジュ様は当主にふさわしい。

きっとスニもドンジュ様が忘れられずにいるだろう。

そして、テミンが部屋に案内に来てくれた

テミンはチャンミンの顔を笑顔でみつめた

「おじいちゃんは、きっと喜んでいると思います」

「僕もそう思ってる。きっとそうだよね?」

「はい」

部屋に入ると、様々なパスタが好きなだけ食べれるようにブッフェの形式になっていて
デザートやチキンなどもたくさんあった。

そんな中で意外に大旦那様は子供たちに人気で
たくさん皿に盛られては驚きながらも
喜んでいるようだった。

いろんなことがあった1日だった

だけど、俺たちはまだ始まったばかりだ。

そんな俺たちを祝福するように月明かりが照らしていた…


☆☆☆☆☆☆☆


「ユノー!1番前の座席だった。」

「ああ、足が伸ばせるな」

「でも、このシートは後ろの席も足が伸ばせるんだよ?」

「そっか。でもなんとなくさ」

「開放感がね?」

機長のアナウンスが聞こえる。

シアトルまでの到着時間を知らせていた。

シートに座ると、乗務員が新聞を持ってきてくれた。

あ、この間の女の子だ

彼女も気づいたようで「あ!」と小さく声をあげた。

「よ、ようこそ」

「あ、どうも」

またこの子は顔が真っ赤だ。

「あ、あのなにか必要なものがありましたら
お、お持ちしますので」

「ありがとう」

「は、はい。では、快適な旅を」

彼女はあたふたと席を離れた

あんなことがあったから
俺が乗るのいやだったかな

「ユノ…」

「ん?」

「今のCA、知ってるの?」

「ほら、この間の。
あの時、乗務してた子」

「ふーん、そんなこと、覚えてるんだ」

「うん、なんとなくね
印象に残ってて」

「………」

さっきの子が毛布を持ってきてくれた。

「もしよろしかったら…」

突然何を思ったのか、チャンミンが身を乗り出して俺に口づけた。

乗務員の子は固まってしまい
毛布を落としてしまった。

「あー、ありがと。毛布もらっておきますね」

俺の頬をその片手で包みながら
振り返って明るく答えるチャンミン。

「は…はい」

呆然と去っていく彼女

「見せつけちゃった」
意地悪そうに微笑むチャンミン。

「意地悪だなぁ。」

「けん制って言ってほしいな」

口を尖らすその顔が可愛くてたまらない

今度は俺がチャンミンの顎をすくいあげてキスをした。
「ユノ…ほんとに大好き」

「アメリカに着いたら今ほど贅沢できないぞ」

「ユノがいてくれたら、それでもうお腹いっぱい」

「なんだそれ」

浮かれる俺たちを乗せた飛行機。
今日は無事に滑走路から飛び立った




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「月の王子さま」最後まで読んでいただき
本当にありがとうございました。
明日はあとがき、と次回のお話について、となります。
よろしかったら、読んでみてください。

月の王子さま(41)

ーーユノsideーー



荷物を預けてしまうと、特にすることもなく
俺は免税店をフラフラと見て回った。

心にズッシリと重い石を抱えたようなこの気分を
どうにかしたかったけれど、なす術もなく…

ふと、あるブースの置物に目が止まった。

そこは陶器でできた、小さなオブジェを売る店のようで、ところ狭しと可愛らしい置物が並んでいる。

その中に童話の「星の王子様」の登場人物を集めたコーナーがあり

小さなクリスタルの台に主人公の王子様が
ちょこんと乗っていた。

昔読んだな、これ。

俺は自然と笑みがこぼれた。

たしか…ワガママなバラかなにかに翻弄されたりして、でもとても純粋で、愛情たっぷりなキャラだったような気がする。

なんだか、チャンミンに似てるな

見境なく相手に愛情を注ごうとするところとか。
純粋で、正直で。

どうしてるだろうな、チャンミン。

俺が留学をすると、大旦那様から説明を受けたんだろう。
黙って行ったことを怒ってるかな。

ごめんな…

今夜はみんなでパスタを食べて打ち上げパーティだな。

デザートの追加注文は昨日済ませたし。

忘れようとしていた悲しみが
また心に蘇ってしまいそうだった。


オブジェの横に小さなカードが差してあるのに気づいた。
これはカードスタンドになっているのか。

" 大切なことは、目には見えないんだよ "

え?

カードに書かれた言葉は
物語に出てきた言葉だ。

なぜかその言葉に心が震えた。
落ち着かせたと思った心がまた騒ぎ出しそうで

俺はその店の前から足早に去った。


飛行機は時間通りに離陸しそうだった。

ゲートに並び、読み取り機にチケットをかざして
ふと顔をあげると、係の女の子がポッと顔を赤らめた。

「ようこそ」とニッコリと微笑まれ
俺も微笑みを返すと、そのコは下を向いてしまった。

なんだろな。

座席は1番前の席だった。
前に誰もいないので足を伸ばしてゆっくりできそうだ。

大旦那様の、気遣いなのかな。

棚に収納する荷物もなく、俺の手荷物は足元で収まった。

乗務員の女の子が俺に新聞を持ってきてくれた。

あ、さっきの子だ。

「ありがとう」
そうお礼を言うと、その子はまたも赤くなり
「いえ、良い旅を」と照れたように言う。

俺の後ろの席の誰かが
「こちらにも新聞ください」と声をかけると
その乗務員があわてて新聞を渡していた。

俺はそんなに新聞を読みたそうな顔をしていたのかな?

飛行機はアナウンスと救命胴衣の説明の後、
ゆっくりと動き出した。

窓の外はまだ空港の景色だった。

今は何も考えまい。

後悔やら、寂しさを感じるなら
飛び立ってからにしよう。

今、そんな気持ちをぶり返したら
俺はさっきの子に「降ろしてくれ」と言いかねない。

大きくゆっくりと飛行機は滑走路をターンする。
これから真っ直ぐに進んでスピードをつけて
飛び立つのだろう。

俺は目を閉じた。

何やら、騒がしい

目を開けると、さっきまで姿のなかった
男の乗務員がいた。

乗務員の顔に緊張の色が走り
少し、慌ただしい動きがある。

何かあったのだろうか。

その異様さに、他の乗客も気づきだした。

やがて、飛行機が止まった。

そのうち、乗務員たちが俺の顔を見るようになり
コソコソと話し出した。

俺に何かあるのか?

やがて、さっきの子が来て
俺の隣の乗客に席を代わるよう話していた。

「あの」

とうとう俺はその子に話しかけた。

するとその子はビクッとして俺を見た。

「なんかさ、えらく感じ悪いんだけど、この飛行機」

「あっあの…」

「俺、なんかあった?」

隣の乗客が席を離れると
その子は俺に近づいてそっと囁いた。

「チョン・ユンホさん、ですよね」

「そうだよ?」

「正直申し上げて、私は信じがたいのですけれど」

「うん」

俺に話しかけるその子の後ろで
何人もの乗務員が固唾を呑んでその様子を
見つめている。

「一度飛行機を降りてもらわなければなりません」

「え?どうして?」

「お荷物に問題があるようなのです。」

「これに?」

俺は足元のバッグを指差した。

「はい。申し訳ありません。
降りるのがいやでしたら、もうしばらく
ここでお待ちください」

「ここで開けようか?」

「それは!ダメです!」

後ろの乗務員も突然あわてだした。

「降りるって、ここ滑走路のど真ん中でしょ?」

「はい、この機の下にお迎えが参りますので
お手数ですが、ご協力くださいますか?」

「いいけど」

俺、この中に何か入ってたかな。

やがて機長からのアナウンスが流れ
飛行機の出発が遅れることが知らされた。

俺はなにかとんでもない迷惑をかけているのか?
なんで?!

座席を立つと、男の乗務員が外と連絡をとっている声がした。

「いやいや、素直に降りると言っていますよ?」

なに?

「なんの話しだ?」

俺は乗務員に詰め寄った。

すると一斉に乗務員の動きが止まった。

みんな一様に怯えた顔をしている。


無線の中から「刺激するなよ!準備できたから」
そう話すのが聞こえた。

「なんの準備?」

するとさっきの子が俺の前へ出てきた。

「お調べする準備です。こちらです。」

なにやら乗客も騒ぎ出している。

飛行機のドアが開いて、俺は驚いた

タラップの下には何台もの消防車と、救急車、
そしてパトカーまで出ていた。

「どういうことなんだ?!」

すると滑走路の向こうから、
何人かの警備員に囲まれて…

え…

チャンミンじゃないか?!

チャンミンがこちらに歩いてくる。

どうして?

俺に気づいたチャンミンが満面の笑みで
駆け寄ってきた。


危ない!
ここは滑走路なんだぞ!

その時俺の頭にあったのは…
とにかくチャンミンが危ないということだけだった

消防車はまだ到着途中で走っていたし
何より他の飛行機に轢かれてしまったりしたら、と

俺はタラップを駆け下りた

「危ない!止まれ!チャンミン!」

するとタラップの下で20人くらいの警備員に押さえつけられた。

「離せっ!チャンミンを止めてくれっ!」

俺がもがけばもがくほど、
俺を取り囲む人数が増える

なんなんだよっ!!

チャンミンがそんな俺を見て、
泣き出しそうな顔になった

「やめてーーーーー!!!
ユノを離してーーーーー!!!」

駆け寄ってきたチャンミン

チャンミンは警備員を叩きまくり
大騒ぎをしている

後から何人もの警官がかけつける

「どっちがチョン・ユンホなんだ?!」

押さえつけられた俺の頭上でそんな声がしていた。

なんだか気を失いそうに頭がぼーっとしてきたかと思ったら

ふいに腕をとられて、立ち上がらされた

よろよろと立ち上がると
目の前には泣きはらしたチャンミンの顔


「チャンミン…」

「ユノっ!!!」

チャンミンは俺をしっかりと抱きしめた…

「お前…危ないよ…こんなところで走ったらさ」

「うっ…うっ…ユノ…」

あれ?

でもなんでチャンミンがここにいるんだろう

「チャンミン、どうしてここにいるんだ?」

「ユノのばかっ!!!」

俺を抱きしめていた腕を解いて
今度は俺を叩き出した

またギャラリーが慌て出す

「早くチョン・ユンホを落ち着かせるんだ!」

まわりがチャンミンを取り押さえようとする

「待って!チョン・ユンホは俺ですから!」

興奮するチャンミンに、まわりの警官たちは
困惑している

今度は俺が、チャンミンをしっかりと抱きしめた

「なんでなにも言わずに行っちゃうんだよっ!!」

泣きじゃくるチャンミン。

「ごめんな…」

「一緒にいようって言ったのユノでしょう?」

「うん…ごめん…」

「もう!なのにこんなことしたら、ダメじゃん!」

「うん…ほんとにごめん…」

俺は強くチャンミンを抱きしめた

愛おしいチャンミン

こんなに好きなのに
俺は離れようとしたなんて…

愛おしくてたまらない

抑えていた気持ちが溢れ出てとまらない

俺はチャンミンの頬を両手で包むと
顔を傾け、深くくちづけた。

警備員や警官の動きが止まった。

完全に固まってしまったギャラリーなんて
俺たちには関係なかった。


俺はバカだったね
離れて生きていけるわけないのにさ

愛してる…
ほんとにごめん…




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明日は最終回になります。

月の王子さま(40)

ーーチャンミンsideーー


僕は、遊園地の観覧車にきていた。

とは言っても、いつものアジョシには連絡をしていなかったから
こうやって閉園した門の前で、暗い観覧車を見上げている。

僕は何かあると、あの観覧車に乗って
いつも夜景を見おろしていたけれど

こうやって、下から見上げると
とても不思議な感じだ。

いかに、僕が人と違う生活をし、独特な人生なのか
わかるような気がする。

生まれた時から背負っているのだ

代々続くその名前。血。名誉。

僕の役割が、お祖父様の言うそれが
どういうもので、どれだけ特別なのか

こうやって、下から見上げてみると
わかるような気がする。

だけど…

どんなに立派なものでも、大切なものでも

ユノの前では、すべて色褪せ、チリと化す。

ユノを愛する僕の前ではなんの意味も持たない。

きっと僕は堪え性のない、我儘なトリョンニム。

自分の思い通りにいかなければ
気がすまないのだ。



車のエンジンを止める音が背中に聞こえた。

バタバタとドアが開き
スヒョクとお祖父様、ジホお兄さまが走り寄ってきた。

「チャンミン!」

その声に僕はゆっくりと振り向いた。

今夜は満月で…
月は僕らを明るく照らしてくれている。


「お祖父様…」

「チャンミン…バカなことを考えるな。
お前な…まだ若いんだ。これからだ。
ユンホがいいやつなのは、私も認める。
だがな…」

「お祖父様…」

「お前のユンホに対する気持ちは
ただの憧れなんだ…」

「お祖父様は僕に何を求めているの」

「え?」

「ユノがね、教えてくれたんだ
僕と本当に仲良くなりたい人は、僕に何も求めない
欲しがるのは僕の心だけって」

「チャンミン…」

「僕のまわりにはね、僕の持ってるものだけが欲しい人がたくさんいたんだ。
僕、全然気づかなくて…」

「………」

「ユノはね…何も欲しがらなかった。
逆にユノは僕といるといつも辛そうだった。
僕が笑う度、哀しそうな顔をしていた…」

「………」

「なんでだか…わかる?」

喉の奥から熱い塊がこみ上げてきた


僕はユノを思い出して泣いた…
おでこに片手をあてて、ぎゅっと目を閉じて

あふれる涙が次々とアスファルトに落ちていった

「時間がどんどん過ぎていくからなんだよ
僕と一緒にいれる時間が…なくなっちゃうから

ユノは言ったんだ…
先の事を考えるのはやめるって…

ユノはわかってた…
いつかこうやって引き離されてしまうって

追い詰められていたんだ。
お祖父様への義理と、僕を思ってくれる気持ちと」

そして、僕と一緒にいたいっていう
ユノの夢と…

「僕は…何にも応えてあげられなかった。
ユノはどんなにつらかったか」

「チャンミン…お前たち…」

「こんな悲しい思いをして守る伝統にどんな意味があるのか、僕にはわからないよ…」

「………」

「教えてよ…お祖父様…
肖像画にある僕のご先祖様たちは
何を守りたかったの…
こんなにユノを想う僕の気持ちを
捨ててまで守るものってなに?」

「誰か…教えてよ…」


僕は真夜中の遊園地で泣き崩れた


「ユノに会いたい…

ユノが大好きなんだ…

他にはなんにもいらない…」


会わせて…お願い…

ユノに会いたい…


ひとしきり泣き、みんなはただ黙っていた。

それでも…
結局僕はおとなしく屋敷にもどった。

車の中ではお祖父様もジホお兄さまも黙っていた。

僕は唇を真一文字に結び、一点を見つめていた。

屋敷に着くと誰とも口をきかず
まっすぐにドンジュお兄さまの部屋へ向かった。

もう明け方になろうというのに
部屋のドアを開けたら、お兄さまはテミンと話し込んでいた。

「チャンミン…」

「パソコン借りますね」

「あ、ああ…」

「ジホお兄さまが雑誌社への口止料とヒョナ嬢への慰謝料とかで、大金を支払ったと言ってるけど
ウソくさいです」


「だな。今それを話してたところだ。
ジホの口座を確認したいけど、何しろパスワードが」

「僕ならきっとパスワードを探せる」

「チャンミン…探せるか?!」

窓の外は白々とする頃、僕はジホお兄さまの口座を確認した。

お祖父様から大金が振り込まれたあと、
そのまま口座に残っていて、ちょこちょこと使われている。

大きくお金が動いた様子がまるでない。

僕はそのお金をすべて、教会の寄付用口座に移した。

そして朝になってヒョナ嬢に電話をした。
確認したかったからだ。

「あら、おひさしぶりです、チャンミン」

「ヒョナ嬢はお元気ですか?
お変わりなく?」

「ええ、実はね、私結婚することになって。
問題ないわよね?」

「おめでとうございます。
よかったですね。なんの問題もありませんよ」

「そうよね?チャンミンはユノさんだものね」

「知ってらしたんですか?」

「わかりますよ、あんなにデレデレしていたら」

「そうですか、お恥ずかしい」

「そんなの、今やなんの不思議もないですよ?
私のまわりにも、外国で式をあげるそういったカップルがいっぱいいますよ」

「そうですか、いつか参考にさせてもらおうかな」

「是非」

やっぱり慰謝料なんか請求した様子なんてない。


僕とドンジュお兄さまとテミンで朝食の広間に下りた。

テミンが給仕をし、僕たちとお祖父様が席に着こうとした時

ジホお兄さまがすごい勢いで広間に走り込んできた。

「ジホ!朝からなんだ!落ち着きなさい」

叱るお祖父様と
大きく肩で息をするお兄さま…

「チャンミン…俺の…金を…どうした?」

「慰謝料と口止料のことですか?」

「うっ…」

「支払われる様子がないので、寄付させていただきました。」

「なんの話だ?」

「お祖父様、ジホお兄さまはすごいんですよ
教会にたくさん寄付されたんです」

「ほほぅ」

「ね、お兄さま。これで教会の子供達も今年は楽しいクリスマスを迎えられると思います」

「………」

何も言えないジホお兄さまの顔をみて、
テミンが薄っすらと微笑んだ。

ユノを脅した罰だ。

昨日あれからテミンにいろんな裏話を聞いた。

ユノはいろんな事を1人で背負って行ってしまったんだね…

だけど…


「お祖父様。話の続きですが」

「なんの話だっただろうか?」

「それでユノはどこにいるんです?」

「お、お前はまだそんなこと…」

「僕の気持ちは昨夜、お話しました。
ユノに会いたいんです。」

「………」

「そもそも、僕の執事なのに
お祖父様が指示を出すなんて可笑しな話です。
ユノの責任は僕にあるんです」

お祖父様は、フォークをおいて、
ため息をついた

「チャンミン…」

「なんですか?」


「ユノの行き先はアメリカだ。今日の昼前には飛ぶ」

「え?!まだ国内にいるんですかっ?!」

「昨夜は空港のホテルに泊まらせた。
飛行機はシアトル行きのエアアメリカだ。」

僕は大きな音を立てて席を立った

行かなきゃ!

「後は自分で探せ。そんなに好きだと豪語するなら」

「好きですよ!探します!探してみせます!」

僕が部屋を出て行こうとすると
なぜかドンジュお兄さまとテミンも一緒に走り出てきた。

「ホテルより直接空港へ行った方が早い!」

ドンジュお兄さまが僕の腕を掴んで言った。

「間に合わないかもしれません。
あと1時間で離陸です」

テミンは調べてくれたのか…

「だって、昼前に発つって…」

「でも、今日エアアメリカでシアトル行きって
これと夜遅い便しかございません。」

「とりあえず行こう!
さあ、急ぐぞ!」

玄関を出た僕たちに、スヒョクが駆け寄ってきた
「乗ってください!空港へお連れします!」

「え?あ…でも…」

スヒョクはそんなに運転が上手くない
面と向かって言えないけど…

「全力で運転いたします!」

「スヒョク…」

「お手伝い…させてください!」

「わかった!じゃあお願いするよ」

きっとユノだったら
そう言ってスヒョクに任せただろう。

応援しようとしてくれるスヒョクの気持ちが嬉しかった…

僕たちは空港に向けて出発した。

ただ飛び出してきてしまって
何をどうしたらいいのか正直わからない。

道路は渋滞していた。

高速道路を降りて、一般道路に降りても
混雑はあまりかわらなかった。

僕はヤキモキしていた。

ドンジュお兄さまが、僕の手を握った。

「落ち着け、チャンミン
大丈夫、きっと会えるさ」

「うん…」

ようやく、滑走路の飛行機がいくつか見えてきて
空港に近づいてきた。

スヒョクは空港のゲートに1番近い場所で降ろしてくれた。

「駐車場でお帰りをお待ちしています!
さあ、急いで」

「ありがとう!スヒョク!」

僕は走った。

混雑している空港の中を
人の波をかき分け、一生懸命に走った。

ドンジュお兄さまとテミンもあとについて
走ってきてくれた。

とりあえずカウンターに行き、
受付をしている女性につかみかかるように聞いた

「あの!シアトル行きの便に乗りたいんです。
一枚お願いします!パスポートは今ありませんが
僕をご存知ではないですか?!
シム・チャンミンです!」

追いついたドンジュ様が
僕の腕をつかんだ。

「は?お前も行くのか?」

「だって、どこかで待ってたって会えるかわからないでしょう?だったら…」

「お客様、申し訳ございませんが
その便はもう、滑走路で離陸準備にはいっております…」

「ファーストクラスでもなんでもいいです。
滑走路から乗れるサービスのあるチケットをお願いします。」

「あ…そういったサービスはございません…
次は夕方の便になりますので、そちらでしたら」

「それでは意味がないんです!
シアトルについてからどこに行くのかわからない
ここでつかまえておかないと」

「そう言われましても…もう滑走路にある飛行機をお止めすることはできません」

「では、チョン・ユンホという人がその便に乗ってるかと思います!
その人を降ろしてください!」

「ですから…飛行機はもう…」

「あのですね、」

ドンジュお兄さまが受付の女性に食ってかかった

「チョン・ユンホは危険なんです。
荷物検査でひっかかりませんでしたか?」

「は?といいますと?」

僕は身を乗り出して囁く

「危険物を持ってます。
一見穏やかに見えますが、刺激すると興奮して
何をしだすかわかりません。
僕なら、彼をよく知ってるので収めることができます。」

「少々お待ちください!
もう少しお話を聞かせていただけますか?」

カウンターの中がザワザワしだした。

「あれが爆発したりしたら…」
テミンがさらに騒ぎに拍車をかける

「爆発物なんですね?!」

スタッフは電話や無線であちこちに連絡をしている

早く早く!

「確認できました!チョン・ユンホという乗客が乗っています」

「ああ!もうどうにかしないと!」


カウンターからスーツを着た男性が現れて
慌てた様子でこちらへ来た。

「シム・チャンミンさん?」

「はい、そうです!」

「あなたなら、刺激せずにチョン・ユンホを飛行機から下ろせるのですね?!」

「はい!彼は私の言うことしかききません!」

「では、こちらへ来てください!」

ドンジュお兄さまが僕の肩をぽんと叩いた

「がんばれよ!」

振り向くと
ドンジュお兄さまとテミンがニコニコしながら
手を振っていた。

ありがとう

力になってくれて
ほんとうにありがとう

僕はニヤッと笑ってそれに応えた



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月の王子さま(39)

ーーテミンsideーー


教会で、子供達とリサイタルの映像をリアルタイムで観ていた。

僕もスヒョクもミナも
ユノヒョンがいなくなってしまうことを聞いていた。

最後のチャンミン様の「ひまわりの約束」に
ミナは泣いていた。

2人にはどんな日々があったのだろう

誰も計り知る事のできない
幸せがあったに違いない。

それを奪う権利が誰にあるのだろう

チャンミン様が穏やかにギターを弾きながら歌うのを見て、僕はそう思った。

本家の大旦那様もチャンミン様を迎えに行きたいというので、
スヒョクの運転する車に乗せて会場まで行った。

スヒョクは大旦那様を乗せている、ということで
たいそう緊張していたようだけれど

僕は黙ったまま口をきかなかった。

気のまわらない執事だと思われたかもしれないけど
このジジィと話す気に、今はなれない。

車の中で大旦那様はずっとブツクサ言っていた。

ユンホの方が運転が上手いだの
ユンホならこんなところ、30分で着くだなどと。

スヒョクは額に汗をびっしょりとかいていた。

ドンジュ様も突然戻ってきたとあって
動揺もしているのだろうけれど

とにかく煩かった。

僕は本家を出るとき
ドンジュ様につかまった。

「テミン、ユノは?」

「あ…チャンミン様のリサイタルへ」

「そのあとユノはどこへ行くんだ?」

「ど、どこへって…打ち上げじゃないですか?」

「ウソつけ。ユノと連絡つかないぞ」

「だからリサイタルに…」

「ばーか。調べたらスマホが解約されてるってさ
お前、何を知ってるんだ」

ドンジュ様には勝てないんだ…いっつも。

でもすべてを話しても
「ふーん」と大して気にも留めない様子だった。

「ま、後はチャンミン次第だなー」

なんだ、何か助け舟でもだしてくれると思ったのに。
自分の駆け落ちの時、あれだけユノヒョンに助けてもらったのに、なんだよ。


それにしてもユノヒョンは今、どこにいるんだろう。


会場に着いて、僕とスヒョクが両手を前に揃えて
チャンミン様とソンヨクを待った。

会場の中から、笑顔で出てきた2人。
音楽家の方々と笑顔で会話をかわして、
挨拶をしていた。

いろいろうまくいったのかな。

ふと、チャンミン様が笑顔のまま
顔を上げて、僕たちを見た。

僕とスヒョクを見て、その笑顔が消えた。
まるで月に雲がかかるように笑顔か消えた。

悟ったのだろう…
ユノがなぜここにいないのか…

チャンミン様は立ち止まってしまい、
呆然とした真顔で僕たちを見た。

音楽家の方達に挨拶をすることもできず
そのまま、立ちつくしていた。

ソンヨクはそんなチャンミン様を不思議そうに見上げた。

チャンミン様が意を決したように
まっすぐにこちらへ向かってきた

あーもう。すっごくイヤな役なんですけど。

「お待ちしておりました」

「ユノは?」

即座に聞かれた…

「………」

「ユノはどうしたと聞いてるんです」

「あの…」

「聞こえませんか?ユノはどうしましたか?」

「チャンミン、落ち着け」

車の中から大旦那様が声をかけた。

ゆっくりと大旦那様が車から出てきた。

「ユノはな、留学させた。
シム家のためにな。」

「は?留学?」

「そうだ。決まっておったんだがな、
リサイタル前に執事が変わるとなると
お前も集中できないのではないかと、考慮したんだ。」

「考慮ってなんの考慮ですか?」

「お前を動揺させないための考慮だ」

「留学なんかで動揺しませんよ?」

「そんなこともないだろう」

「動揺する時はユノと引き離される時です。
まさか引き離そうなんてお考えではないですよね?」

チャンミン様の目尻がつり上がっている。

「お前まで、そんな事を言うとは何事だっ!」

「お前まで??ユノもそう言ったんですか?
ユノと何を話したんです?」

「お前は憧れとか、そういったものを
ユノに逆手にとられていいようにされたんだ!」

会場の車寄せで大げんかをする2人に
行く人々が何事かと見て通る。

「は?!何か勘違いされてませんか?
いいようにされたって、
嫌がるユノにキスをせまったのは僕ですからっ!」

「なっ!!!」

すごいセリフにとうとう立ち止まる人も出てきた。

2人ともソンヨクの存在を忘れていないか。

目をまん丸にして、大旦那様とチャンミン様を見比べているソンヨク。

「あの…公衆の面前ですし、
ソンヨクもいますので…」

僕はやっと口を挟めた

「とりあえず、チャンミンは屋敷に来いっ!
お前達が端から見たらどういうことなのか
見せてやる」

「どうぞ見せてください。
楽しみですねっ!」

とりあえず興奮している2人とソンヨクを車に促して
スヒョクは大急ぎで車を出した。

ソンヨクを途中教会で降ろした。

可愛く挨拶をするソンヨクに大旦那様が話しかけた

「ソンヨク?だな。今日は立派だったそうじゃないか。ご褒美に明日はフランス料理のコースをこの私がご馳走しよう。デザートもつけてやる」

「え?」ソンヨクが驚いている

「何言ってるんですかお祖父様!
子供がコース料理なんか喜ぶわけないじゃないですか。
明日は教会のみんなでパスタを食べに行くんですよ
ユノが予約してくれたんです!」


そこまで言って、チャンミン様は唇を噛んだ。


「ユノが…みんなでお祝いしようって
予約してくれたんです…」

「そうなの、おじいさん。
バスケのヒョンが連れていってくれるって約束したんだ。」

「ふん、残念ながら、ユンホは来れないぞ」

「このおじいちゃんがユノを隠したんだからね」

「なっ!!!」

「お2人とも、子供の前ですので。
ソンヨクくん、今日はぐっすりおやすみ」

「うん、おやすみなさい」

ソンヨクがいなくなると
今度は大旦那様とチャンミン様は
まったく口をきかなくなった。

気まずいムードの中、
車は本家へ到着した。

広間を通り抜ける時、ドンジュ様がチャンミンに声をかけた。

「おー!チャンミン!」

「ドンジュお兄さま!戻ってきてくれたの?!」

「おーよろしくな?で、ユノは?」

「お祖父様が隠したの」

「何を人聞きの悪い。
留学したんだよ。シム家のためにな」

「シム家のために、ね」

ドンジュ様はイヤミたっぷりに言うと
口笛を吹きながら歩いて行った。

「まったくどいつもこいつも。
テミン、ジホに私の部屋へ写真を持ってこさせてくれ」

「ジホお兄さまが何か関係してるの?」

僕はチャンミン様の横を通り過ぎるフリをして
そっとささやいた。

「ジホ様が脅したんです。
これからお見せするお2人の写真で」

「………」

「やぁ、チャンミンじゃないか。
リサイタルの成功おめでとう」

得意げな顔で広間に降りてきたジホ様は
数十枚に及ぶ写真を大理石のテーブルの上に広げた。

そこには、ユノヒョンとチャンミン様の仲睦まじい…また仲睦まじすぎる姿もたくさんあって。

思わず頬が熱くなってしまう////////

「チャンミン、よく見なさい
お前たちはこんな恥ずかしい姿を晒してたんだ。
男同士で寒気がする」

チャンミン様はその写真を見て、無言になった。

しばらく数枚の写真を手に取り
眺めていた。

やがて、ぽつりぽつりと語り始めた

「僕はユノにキスをされる時
こんなに幸せそうな顔をしてるんだね…」

ジホ様と大旦那様がびっくりして
チャンミン様を見つめた。

チャンミン様の目にみるみる涙が溜まっていく。

ユノヒョンがチャンミン様の部屋の入り口で
その柔らかそうな髪を触っている写真。
チャンミン様はくすぐったそうに笑っている。

その写真の上にポタリと涙が落ちた。

「いつもこうやって、僕のワガママを聞いてくれて
髪を乾かしてくれて…」


ユノヒョンが庭園からチャンミン様の手を引いて
連れ出そうとしている写真を、そっと指で触れるチャンミン様。

写真の中のユノヒョンとチャンミン様が夏の太陽の下、満面の笑みを浮かべている

「この時、ユノがとってもきれいな場所に連れて行ってくれたんだ。僕はそこがどこか、死んでもお祖父様には言わないよ。」

泣きながらフフッと笑うチャンミン様が悲しい。

なんで…こんな綺麗な2人が。
そう思うと、悲しみなのか怒りなのか
よくわからない感情が湧いてきた。

「ユノヒョンもとっても幸せそうですね」

僕がそう言うと
大旦那様、ジホ様が同時に驚いて僕を見た。

「テミン!お前はなんてことを言うんだっ!」

「失礼いたしました。」

でも僕は…ほんとにそう思うんだ。


「ユノに会いたい…」

下を向く、チャンミン様の肩が震える

「ユノに…会いたいよ…」

やがて、小さな嗚咽が聞こえてきて
広げた写真の上にポロポロとチャンミン様の涙が落ちた。

大旦那様は息をしてないかのように
固まっていた。

ジホだけが大きなため息をついた

「チャンミン、その戯れで
大旦那様は大変な散財をされているんだよ」

「うっうっ…」

「雑誌社への口止め料だとか、ヒョナ嬢への慰謝料だとか、大変なんだ」

「やめんか!ジホ!
チャンミン、正直言ってユノはこういうほとぼりを冷ますために留学したんだ。
きっと立派になって帰ってくるさ
だから、チャンミンもユノに負けないように…」


そこで、チャンミン様が泣くのをやめて固まった。

そしてゆっくり顔をあげると
まるで魂の抜けた人形のような無表情のチャンミン様がぽつりと呟いた。

「いつ?」

「は?」

「ユノはいつ帰ってくるの?」

「そ、それは…」

「帰す気なんてないんでしょう?」

「………」

みんなが顔を見合わせた

なんて答えるつもりなんだ…

「これで失礼します」

そうぶっきらぼうに頭を下げると
チャンミン様はいきなり部屋を出て行った。

「追いかけろ!あの様子だと、あいつは何するかわからんぞ」

執事たちが追いかけようとドアを開けると
ドンジュ様があっけらかんとしてそこに立っていた。

「何をするか、わからんって…」

さも可笑しそうに肩を震わせて笑うドンジュ様

「そこまで追い詰めたのは誰だよって話」

「なんだと!!」

「早く追いかけないと
チャンミン、死んじゃうぜ」

スヒョクの用意した車にみんなが乗り込んだけれど
僕は屋敷に残った。

広間に戻ると
ドンジュ様がテーブルの上の2人の写真を見ていた。

「幸せそうな2人だなぁ」

「ですね」

「ユノがこんな顔になるなんて、ちょっと驚きだ。
よっぽどチャンミンが可愛いんだろうな」

「愛してるんですよ、心から」

「そうだな…」

ドンジュ様はため息をついた。



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