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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

はじめまして

はじめまして。

ここに書かれているお話しはすべて百海のアタマの中の空想・妄想からなるお話です。

主人公はアジアのスター、韓国の人気男性デュオのお2人ですが

名前とイメージのみで実在の人物とはまったく関係ございません。

そんな2人が愛し合うという、BL小説です。

お2人のイメージが崩れる、BLがわからない、嫌い、許せないと嫌悪される方、
または18歳以下の方は閲覧されないようお願いします。

他にも同事務所のアーティスト様や韓国の俳優さん、女優さんのお名前が出てきますが
同じくご本人とはまったく関係ない空想・妄想の人物になります。

キャラ設定もお話しによってさまざまです。

ご自身が傷つきそうであれば、閲覧されないようお願いいたします。


世知辛い世の中、辛い現実、刺激のない毎日、
そんな日々をこの美しいお2人で癒されたい、と私と同じようにお考えの皆さま、
私、百海の妄想にお付き合いいただければ幸いです。

しつこいようですが、百海固有の空想・妄想のお話しです。
お話しの内容にクレームをつける、誹謗・中傷はご遠慮願います。

性描写が描かれる場合はパスワードによる閲覧となります.
パスワードに関するお問い合わせもご遠慮ください。





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パランセ 終




チャンミンはむっくりと起き上がった

横では、ユノが豪快な格好でまだ寝ている

チャンミンはしばらくボーっとしていたけれど
身体に寒さを覚えて、ブランケットを羽織った


このブランケットは…

手触りのいい、高級なミルク色のブランケット

チャンミンは優しくその柔らかい生地を撫でた

これはユノと一緒に暮らすことになったとき、
一緒にデパートで買い求めたものだ

ユノは何種類ものブランケットを
チャンミンの肩にかけては、はずして
難しい顔をしながら、選んでいた

その内、店員がやってきて相談に乗ると言われた時

「この子が一番綺麗に見えるのがいいと思って」
とユノはサラリと言ってのけたのだ


ちょっ!

それって何を意味するか、わかってるの??


最初は動揺していた店員も
次第に真剣になってしまい、他の店員まで呼んでくる騒ぎ

僕は何十枚もブランケットを肩にかけ、
みんなから、品定めされるかのように見つめられ

結局、満場一致でこのミルク色のカシミアに決まった

この部屋にあるひとつひとつに

たとえば、昨日コンビニで買ってきた缶ビールひとつにしたって

僕たちの、僕たちだけのエピソードがある

ふとユノを見ると

仰向けになり、口を開けて眠っている

あられもない姿だけれど

男らしい眉の下に切れ長の瞳


その表情をみているうちに
チャンミンの気持ちは次第にハッキリと形を成すようになった

僕は迷わない

僕は自分の意志で…


チャンミンはユノの口元のホクロをそっと人差し指で触れると

うん…と言ってユノが身じろいだ

やがて、薄っすらと目を開ける姿は
最高にセクシーで素敵だ

「ユノ…もう昼近い」

「うーん…そうなの?」

「なんか食べる?」

「腹減った…食べる」

そう言いながら、また目を閉じてしまう


「ねぇ、ユノ」

「ん…」

「僕…フランス行くの…やめていい?」


「えっ?!」

その言葉にユノが飛び起きた

空高く上がった冬の日差しを背に
驚いたユノがとても綺麗だ

チャンミンは微笑んだ

「行きたくないんだ」

「チャンミン…」

ユノはぼーっとしつつも
頭の中を整理しているようにその瞳が泳いでいる

「やめるって…お前…俺…昨夜のはそう言う意味じゃなくて…」

「うん、知ってる」

「じゃあ…」

「僕は料理で偉い人になりたいわけじゃない…
ユノが美味しいって言ってくれたらそれで満足なんだ」

「チャンミン…」

「2年間離れて勉強するくらいなら
一緒に過ごして、小さな思い出を積み重ねたほうが幸せなんだよ」

「………」

チャンミンが本気で話していることは
ユノはよくわかった

「正直、そこまでして料理を極めたいわけじゃない…でも…」

「……」

「そんなこと言うの
ユノにとって重いかな、とか、ウザいかなとか…」

「………」

「つまんない人間だと思われるかもしれないけど、
これが僕なんだ、ユノ」

「チャンミン…」


しばらく、2人の間に沈黙が流れた

やっとユノが口を開いた

「チャンミン…だけど…
今後はもう訪れないチャンスだよ」

「後で…惜しかったなと思うかも、うん」

「だったら…」


「でも、行きたくない。
自分で決めたことだから
それは後悔しないよ」

「………」


「ごめんね、こんな僕で。
でも、ユノの側にいたくてたまらないんだ」


真剣な、それでも切なく澄んだ瞳に
ユノの胸が本当に焦げるかと思うほど熱くなった

「シウォンの店で十分満足。
仕事はほんと一生懸命やってる…
やりがいあるし…」

どこまでも正直で真っ直ぐなチャンミン

「いい話だとは…思ったけど
僕はユノと過ごす2年間と比べると」

「………」

「ユノと過ごすほうが、大事なんだよ」


なによりもユノといることを優先して
それを自分の幸せだと言う


チャンミン…


よく…わかるよ


正直に言えて、お前のほうがうんと立派だ


今、俺は猛烈に恥ずかしく
猛烈に感動している


「チャンミン…」

「……」


不安そうなチャンミンの瞳

「俺ね…
なんで転職したいって言ったか覚えてる?」

「えっ?転職?」

「そう」

いきなりなんの話かと拍子抜けしたチャンミンだったけれど

うーんと考え始めた

「えっと…大きな会社の枠にハマらずに
小さい会社で自分の力を試したいって」

「よく覚えてたね…でも、半分以上ウソなんだ」

「えっ?!」

チャンミンの肩から、ハラリとミルク色のブランケットが落ちる

それをユノはゆっくりとかけてやって

優しくチャンミンを見つめた


「辞令が出てたんだ」

「辞令……?」

「転勤だった…そこには昇進のポストが待っていたんだけど」

「……」


「でも、1人で寮に入ると言われて」


「1人で…?」


「イヤだったんだよ俺
チャンミンと離れるのが。だから断った」

「え?ええっ?」

「みんなから反対されたよ
すごく悩んだ…
でも、チャンミンと暮らすために、頑張ってこのマンション買ったのにさ」


「まって?僕と離れるのがいやで?
それで…」

「断ったら…もうそれまでっていう会社だったし」

「ユノ…」

ユノは恥ずかしそうに下を向いた


「でも、なんか男としてだらしない気がして…言えなかった…ごめん」

「………」

「俺もさ、仕事は一生懸命やってる
前も今も…やりがいあるし…俺に合ってるし」

「知ってる…
ユノはどんな仕事も一生懸命…」


「でも、お前みたいに、ちゃんと自分の気持ちが言えない。カッコばっかりつけてて…ダメだな」


そう言って自分の髪をクシヤクシャと掻きむしってユノが笑った


「ユノ…ダメだなんて…そんなこと全然思わない
嬉しくて泣きそうだよ」

「おいおい、昨日も泣いてたのに」

「だってさー」

「アハハハハ」

「ねぇ、ユノ」

「ん?」

「じゃあ、僕、行かなくていい?」

「ああ、もうやめろ、遠いところなんて行かなくていい、俺の側にずっといろ」

「ほんと?!」

「誰に何言われたっていいさ」


僕たちの幸せは、僕たちだけのもので

誰かの物差しや、世間の常識では測れない


ユノ…大好きだよ


ただ、ずっと一緒にいたいだけ

それでいいじゃないかって…思う


チャンミンはたまらずユノに飛びついた

「おっと…」

あまりの勢いに、ユノがチャンミンを抱きとめて
ベッドに仰向けに倒れた

「大好き!大好き!ユノ、ほんとに大好きだよ!」

「アハハハ」



シウォンの呆れ顔が眼に浮かぶ


ミルク色のブランケットがベッドの上でくるくるに渦巻いて

そして、ミルク色の海になった


そんな海で

2羽のパランセが楽しそうに歌う


そんな2人を、冬の日差しが優しく見守っていた


これからもずっと

新しい年も、その次の年も

僕たちはずっと一緒だ






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こんばんは!百海です

無事にたどりつけば、今頃私はソウルにいるはずです!
ボッチのクリスマスです(^◇^;)

うまく通信できるかわからないので
お返事が出来ていないかもしれません(^◇^;)

今回は、サラッと短編でしたけれど
いかがでしたか?

お互いを高め合い、刺激し合って前進する2人もいいけれど、離れたくないならそれでよし。

そんな肩の力を抜いた2人のお話でした

家族や友達、恋人同士

永遠に続くと思われる時間は
実はそんなに長くないのだと思います

ちょっとそう思わせる出来事がこの秋私にありました

だから、一緒にいることで満足だと
ほっこりする2人を眺めていたい年末です

みなさま、今年はここに遊びにきてくださって
ほんとうにありがとうございました

拙い私のお話を楽しみにしてくだると聞くと
ほんとうに嬉しくて

ただ、私が読みたい!と思えるお話しか書けなくて
それがみなさんの満足度と比例するかどうか謎なのですが…

こんなお話ばかりですが
来年もまた遊びに来てくださると嬉しいです

どうぞよいお年をお迎えください

パランセ 6




「チャンミン、少し早いけど
クリスマスの食事をしにいかないか?」


テーブルを拭いているチャンミンに
ユノが話しかけた


「えっ?今年も僕が料理とケーキを…」

「それはクリスマス当日の楽しみにすることにして。
チャンミンにご馳走したいんだ」

「うん…いいけど」

「明日の夜、バイト早く上がれる?」

「店長に頼んでみるよ」

「シウォンには俺から話すから」

「そう?ありがと」

チャンミンは嬉しそうに笑った


翌日、チャンミンが出勤すると、シウォンがやれやれと言った表情で笑う

「おはようございます」

「おはよ。今日は5時になったら速攻で帰ってくれよ」

「え?あ、もしかしてユノが?」

「そ。絶対残業させるなってさ」

「フフフ…」

「なぁ、チャンミン。
あんなウザい男のどこがいいの?」

「ウザくないですよ?嬉しくてたまらないです」

「もう長いこと一緒にいるのに束縛されて
俺はイヤだなぁ」

「店長は長く誰かと付き合ったことあるんですか?」

「いや、ないけどね」

そう言ってシウォンは笑った


「今夜はユノがご馳走してくれるんだって」

「ああ、もうすぐチャンミンは出発だもんな。楽しんでおいで」


出発…

チャンミンは俯いた

そうか、僕が出発だから
ユノはご馳走してくれるだなんて言ったのか

フランス行きの準備をユノとシウォンに任せっきりにしているせいか
チャンミンは今ひとつ実感が湧かないでいた

「チャンミン、休み時間にでいいから
この書類だけ今日中に書いてくれないか?」

シウォンに一枚の紙を渡された
その書類のタイトルをチャンミンは読んだ

「勉学への志?」

「ああ、そこだけは本人が書かないといけないらしい。適当でいいと思うよ。やる気ある感じで書いておいて」

「……志」

ランチの後のちょっとした時間
チャンミンは事務室でその書類と向き合っていた

僕はなぜフランスまで行って料理の勉強がしたいのだろう

実は、毎日そのことばかり考えているのだ

学校がとても有名なところで、
招待してくれるというから

うーん…

そもそも僕が料理を好きになったのは…

それはユノと付き合いはじめて間もないころ、なにげなく作ったチャーハンをとても褒めてもらって

食べているユノがとても幸せそうだった
あのユノの顔が忘れられなくて

たくさんの人を僕の料理で幸せにできれば。
そして、それが仕事になれば、たしかに嬉しい

でも…

僕はユノが好まないものを作る気はまったくない

それが誰もが美味しいという料理でさえ

僕は…


「書けた?」

シウォンが覗いた

「あ、なんて書いていいか、わからなくて」

「いいよ、適当で」

「なんだか、本当に留学したいのか
わからなくなってきちゃいました」

「おいおい、チャンミン
また、そんなこと言って、ビクビクするよ」

「うーん…」

「ま、不安なんだよな、仕方ないよ」

「不安は不安だけど」

「ユノが女と遊ばないように
俺がちゃんと見張ってるから、安心して」

シウォンがニヤニヤしながら
チャンミンの背中を叩いた

「ユノに限って、そんな心配してませんよ」

「そーだよな、はいはい」

「もう…」

「後はもういいから、今日は帰って
ユノがうるさいからさ」

「はい、ありがとうございます」



************


チャンミンは待ち合わせの15分前に駅まで来た。

ユノに今日は絶対遅れないようにと言われて、
早く上がれたのに思わず急いでしまった

ま、しばらく待っていよう

チャンミンほ吐く息が真っ白だ


しばらく待っても

当のユノはまだ来ない

ふと

遠くから、白い息を吐きながら
ユノが走ってきた

まわりよりひとつ頭が出ている
長い脚に広い肩、トレンチコートが嫌味なく似合う

あまりにカッコよくて
チャンミンは頬が緩んだ

ゼイゼイと荒い息をして、ユノがやってきた
冷たい風を切って来たのか、鼻の頭が赤い

「ごめんな!俺が遅れるなとか言っておきながら」

「いいよ、ユノも早いじゃん」

ユノは腕時計で時間を確認した

「ちょうどいい時間だな、チャンミン、こっち」

そう言って、ユノがチャンミンの手を引いた

「どこのお店に行くの?」

「その前に見せたいものがあるんだ」

「?」

チャンミンはユノに引っ張られ
転がるようについて来た

「どこ行くの?」

「いいから、いいから」


高い塀の建物を抜けると


「あ……」


目の前が開けて
そこは輝くイルミネーションに彩られた
市庁の並木道のスタート地点だった

ヨーロッパの建物を模したイルミネーションのアーケードが続く

「うわ…きれい…」

薄っすらと開いた口元から白い息がこぼれて、チャンミンはぽかんとその輝きを見つめた


なんて、なんてキレイなんだろう


色とりどりの灯りが、眩しいくらいに夜空を照らす

一度見てみたいと思っていたこのイルミネーション

まさかこんなにキレイだなんて…


ユノはそんなチャンミンの横顔を愛おしそうに見つめていた

「綺麗だろ?」

「うん…ほんとに…キレイ」

「一度見てみたいって言ってたよな」

「…覚えてたの?」

「こっちに来てごらん」

ユノはチャンミンの手を引いて
光のアーケードの中を市庁の建物に向かって歩いた

チャンミンはユノに手を引かれながら
上を見たまま、不安定に歩いた

あまりにキレイで目が離せない


ふとユノが立ち止まって
チャンミンが我に帰ると

チャンミンの目の前には市庁のレンガ造りの建物があった

そのレンガの壁をモニターにして
誰かの手紙の写真が大きく浮かび上がるように映し出されている


なんだろう

「チャンミン、次だから、よく見てて」

「え?」

「ほら」

ユノが市庁の壁を指差す

すると

そこに、見覚えのある温かい字が浮かび上がった


「俺のパランセ
サランへ…チャンミン…
この愛は永遠だ」


「………」


じっと見入るチャンミンの
柔らかな前髪が風に揺れる

そこから覗く大きな瞳が、どのイルミネーションよりもキラキラと輝く

これだけの灯りを集めても
このチャンミンの瞳の輝きには勝てない

ユノはそう思った

来週には自分の元から離れてしまうチャンミンの

この綺麗な横顔を
ユノは自分の胸に焼き付けようとした

市庁の壁には次の人の誰かへのメッセージが浮かび上がる

もう、ユノのメッセージは終わった

それでもチャンミンは市庁の壁を見つめたまま、まったく動かない


ユノはどうしていいか、困ってしまった

いつもなら、何か感想を言うとか
嬉しくて抱きついてくるとか

何かしら反応を見せてくれるチャンミンなのに…

「チャン…ミン?」

そっと声をかけてみると

チャンミンがゆっくりとユノに向き直った


その大きな瞳には涙の膜が張り
そこにイルミネーションの輝きが映って

この世の物とは思えない美しさだった

きれいだ…ほんとうに


「あ、これさ、あの…
市役所に勤めてる、同僚の妹さんが企画しててさ
この間、チャンミンが見たのは…その…このお願いを…俺が…」


「ユノ…」

やっとチャンミンが口を開いた

「うん…」

「僕ね…」

「……」

「もっと言葉をたくさん知っていればよかった…」

「?」

「今の気持ちを…表す言葉を…」

チャンミンの大きな瞳からとうとう大粒の涙がこぼれて落ちた


「僕は…なにひとつ表せなくて
この気持ちをどう…」


「チャンミン…」


ユノが優しく微笑んだ

チャンミンも微笑むと、もうひとつ涙がこぼれた


「この気持ちを表す言葉を
僕は知らない…」


そう言って、チャンミンは天使のように微笑んだ


「十分だよ、チャンミン
その笑顔だけで…俺は十分だ」

「ユノ…」

チャンミンがユノの首にそっと抱きついた

周りの人がチラリと2人を見たけれど


ユノとチャンミンには目に入らなかった

そこにあるのは

輝くイルミネーションと
2羽のパランセと
その愛

それ以外は2人には関係なかった


メリークリスマス


最高のプレゼントをありがとう







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明日は最終話となります
メリークリスマス!

パランセ 5




チャンミンのフランス行きの準備は
ほとんどユノがシウォンと話し合いながら進めていた

招待生とは言っても、準備にはそれなりにお金がかかった。

すべてをユノが負担して準備していた。

シウォンにその過保護ぶりをたしなめられたりもしたけれど

ユノはそうすることで
チャンミンと離れる寂しさを紛らわしてもいた


チャンミンはといえば
もう寂しくて寂しくて

自分はフランスに行ったら死んでしまうのではないかと不安になった

でも一生懸命、自分のために準備をしてくれるユノを見ていると

自分は「夢に向かって頑張るチャンミン」になるべく、そしてそれはユノの目に魅力的に映るに違いないという思いのもと

寂しさを押し殺して毎日を過ごしていた


そんなある日

シウォンの店にディナーで2名の予約が入った

メニューは入店してから決めたいとこのことで、チャンミンが一応コースの内容をいくつか伝えて、席だけの予約とした


「いらっしゃいませ」

「こんばんは」

その夜、店に現れたのは
可愛い女性が1人だった

ん?

前にも客として、この女性をもてなしたような気がする

チャンミンは記憶を辿った


「覚えてます?」

女性はニコニコとチャンミンに微笑みかけた

「すみません。一度こちらをご利用いただいてませんか」

「はい、去年の今日です」

「あ…」


思い出した

2人で予約していたディナー

でも、連れの男性が来なくて
しかも連絡もとれず

寂しそうに帰って行った

あの女性だ


「そうです…フフ…あの夜
約束をすっぽかされた…私です」

「あ…そうでしたか」

チャンミンは2人席に女性を通し
椅子をひいてやった

あの後の事が気にはなったけれど
まさか聞けるわけもない


「あの後、どうなったか」

「はい?」

メニューを広げて見せるチャンミンに、女性はいたずらっぽく微笑んだ

「あの後の事が気になりますよね
私、すっぽかされて怒って」


怒るというより、悲しそうだった

「いや、正直気にはなりましたけど」

チャンミンは苦笑した


「そうよね、彼はここです」


そう言って、女性はバックから
小さなフォトフレームを出した

小さな白いフレームの中には
爽やかに微笑む、凛々しい顔立ちの青年

え…

まさか…

チャンミンは一瞬固まってしまった

亡くなったの?


「あの…向かいの席に…これを置いたら
お店のご迷惑かしら」


チャンミンは女性を真顔でみつめ
そして微笑んだ

「お向かいの席に置いてあげてください」

「………」

「迷惑だなんて、そんなことないです」


「ありがとうございます」

女性の目尻にキラリと光るものが見えた気がした


チャンミンはお水のグラスを2つ持ってきて
写真の前にひとつを置いた

ナイフとフォークもそのまま2人分置いた


「お飲み物はどうされますか?」

「ワインをお願いします」

「お連れ様は何になさいますか」

チャンミンの言葉に、女性がハッと顔をあげた

「………」

「同じワインになさいますか?」

チャンミンがニッコリ微笑むと
女性がこっくりと頷いた

それから、女性は写真を眺めながら
1人で料理をゆっくりと味わった

シウォンがチャンミンにデザートのプレートを2つだした

「これは店からのサービスだって言って」

「はい」


チャンミンが女性にそれを告げて
デザートを並べた


「ほんとにありがとうございます
今夜、ここに来てよかった」

「こちらこそ、来ていただいて
ありがとうございます」


女性は優しげに写真を眺めて
ぽつりと話した


「あの夜…」

「………」

「彼が来れなかったのは…
救急病院に運ばれていたからなんです」

「え…あの夜…?」

「はい…私へのプレゼントを買って急いでたみたいで…」

「………」


「あの日、付き合って8年目の記念日で。
レストランの予約なんて、もっと10年目とかそういう時でいいのにって言ったんですけど」

「………」


「8年目だって10年目だって
同じくらい大事なんだって」


「………」


「言われてみたら、毎年何かしら
サプライズには一生懸命な人でした」

「2人で記念日を迎えられることは
何より素晴らしいことですね」

「小さな事を大事にする人でした。
毎日、一生懸命生きていました。
だから神さまは、もう十分だと天国へつれて行ってしまったのかな」

「………」

女性は静かにため息をついた


「彼は…いい人生でしたね」

女性はチャンミンを見上げて微笑んだ

「そう思います
本当に普通の人でしたけど
そんな彼の人生の8年間を一緒に過ごせて私も幸せでした」

「はい、とても幸せそうです」

「ありがとう」

「来年もまた来てくださいね」

「………」

女性の顔が少し歪んだ

「いいんですか?また来ても」

「もちろんです」

思わず女性の声が震えた

「ごめんなさい。
あの…そんな風に言われたの初めてで」

「はじめて…ですか?」


「まわりは…早く忘れて新しい人生をと。
私を思ってくれての事だってわかるんですけど」

「………」

「でも、私…忘れたくないんです
彼の事思うと今でもとても幸せで
それでも、忘れなくちゃいけないんでしょうか」

「そんなことないですよ」

「…そう…です…よね
私、忘れなくても…いいですよね」


チャンミンは微笑んだ

「誰がなんと言おうと、彼を思うことが一番の幸せなら、それでいいのだと僕は思います」

女性はニッコリと微笑んだ

「あ、なんか、僕、偉そうに」

チャンミンは自分の発した言葉が急に恥ずかしくなった

「そんなことないです
また来年ここへ来ます」

「お待ちしてます」



************


店が終わって、チャンミンは片付けと明日の仕込みをしていた

「チャンミン、書いてほしい書類があるから、後でデスクの上みてくれる?」

「…はい」


すべて終わり、チャンミンは着替えて
事務室へ行った

シウォンも後から部屋に入って来た

「これこれ、これサインしてほしいんだ」

「フランスの…」

「そう、明日役所に届けてくるから」

「シウォン…」

「ん?」


「僕、やっぱり行きたくない」


シウォンは目を大きく開けて驚いた

「はぁ?」

「…………」

「あのね、チャンミン。
ユノがほんとに自分の事みたいに、今一生懸命準備をしてくれてる」

「………」


「そんなこと言ったらさ…」

「………」

「後から、あの時行っておけばよかったって。そう思う日が来るよ?」

「………」

「行かなきゃ良かったって話にはならないよ」

「………」


「チャンミンは、あのお客さんの事が気になったんだろうけど」

「………」

「いつ何かあって、ああいうことにならないとは限らない。だけどあの彼だって、未来に向けて何か頑張っていることがあったと思うよ」

「…うん…」


「もう一度、話し合うか?」

「うーん…」

「チャンミンは不安なんだよ
きっとユノより、新しい世界に飛び込むチャンミンの方がそりゃ大変だからね」

「………」


「でも、絶対チャンミンのためになる
それは間違いないよ」


「わかりました…」


チャンミンは書類にサインした


今日のお客さんと自分は、なにも共通点がないのに

チャンミンはなぜかとても心に引っかかった

たかだか2年離れてることなんて
長い人生の中でほんのちょっとの時間で

その中で自分が成長できたなら
それはきっと僕たちに必要な2年間だ

でも…

長い人生って…どれくらいなんだろう

僕はいつまでこのシウォンの店で働くのだろう

僕はいつまでユノと一緒に住むのだろう


永遠に続くように思えるこの生活は
実は期間限定なのだ

ユノと一緒に暮らす時間は
永遠には続かない

だから、ユノとの時間は1分でもムダにしたくない


僕のやりたい事ってなんだろう

有名な学校に行って、能力を発揮することは素晴らしいことだ。

それはわかる

でも、僕にとってそれは

ユノと毎日を大切に過ごすことと
どちらが大事なんだろう


僕は…高みを目指さないといけないのだろうか


サインをする手がふと止まり

チャンミンはため息をついた






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百海です
全然5話では終わりませんでした(^◇^;)

パランセ 4



「おはようございます」

今日は学校が休みなので
チャンミンは朝からシウォンの店に出勤した

「おはよう、なんだ元気ないじゃないか
ユノとケンカでもしたか?」

「えっ?」

「おいおい、図星かよ
どうせ、大したことない痴話喧嘩だろうけど」

「……女の子といるところ見ちゃって」

チャンミンは黒いカフェエプロンを纏いながら、泣きそうな顔でつぶやいた

「え?ユノが?」

「そう」

「まさか」

「でも、見ちゃって。
ユノも認めました」

「認めたって…ただ一緒にいただけだろ?
会社の同僚かなんかで」

「そう…言ってました…」

「あーそんなの気にすることないよ
アイツがチャンミン以外に気持ちが行くことなんて有り得ないよ」

「そんなの…わかりませんよ
なんかすごく…フワフワと可愛い女の子で僕と…全然違う」

「フワフワ?」

「うん…なんていうか…そんな感じ」

「自分は男の硬い身体だから?」

ズバリ言われて、チャンミンは驚いた

「あ…うん…まぁ…そんなところです」

「わかってないねぇ
メイクの下に隠された下心と、
チャンミンのそのスッピンのフワフワ笑顔とさ。比べようもないのに」

「?」

チャンミンはキョトンとした


その何もわかってないところが
ユノの心どころか、魂まで掴んで離さないでいるっていうのに

シウォンはユノのベタ惚れぶりを思い出して苦笑する

チャンミンをバイトとして雇うにあたり
あの娘を心配するウザいパパのようなユノ

「絶対手を出すなよ
身体にも指一本触れるなよ」

「悪いけどね、業務上仕方ないことは勘弁してくれよ」

「必要ないだろ?!身体に触れるような業務ってなんだよ」

「た、と、え、ば、の話だよ!」

あーウザかったなぁ

今、目の前でシュンとしているチャンミンに、見せてやりたい

動画でも撮っておくんだったな…

そこでシウォンはハッとした


「あ!そうだ、今朝一番に知らせてやりたいことがあったのに
変な話するから、忘れるところだったよ!」

「なんですか?」

「これこれ」

シウォンはポケットから、一枚の封筒を出して見せた

「ん?ル・シャンティール?」

「そう!先月、コンクールに出ただろ?
最優秀賞だってさ」

「え?ほんと?」

「すごいな、チャンミン!」

「うれしいです!」

チャンミンが一気に明るい笑顔になった

「がんばったもんな」

「ユノに知らせなくちゃ
あ…だけどどうして学校じゃなくてここに届いたんですか?」


「学校にも届いてるはずだよ
だけど俺、身元引受人みたいなものだから」

「身元?」

「紹介というか、後ろ盾がないと留学はできないんだよ」

「留学?」

「そう、フランスのル・シャンティールに2年の留学。こんな名門校に留学できる資格なんて、すごいよチャンミン。
しかも招待生だぜ?」

チャンミンはヒラヒラと手を振って大笑いした

「留学なんて…アハハ…しませんよ」

「は?だって、それが目的でコンクールに出たんだろ?」

「ユノが出てみたら?って言ったからです
留学なんてしたら、ユノと離れて暮らさなくちゃいけないじゃないですか」

「そりゃ…そうだけど…でも2年間だぜ?」

チャンミンは可笑しそうに笑う

「嫌ですよぉー2年も離れてるなんて
1日でも離れたくないのに」

ル・シャンティールに招待生として留学できる、ということの凄さを
笑いながら蹴るという

シウォンには…いや、たぶん料理に携わる者なら誰でも

まったくもって理解ができない話だ


シウォンは真剣な顔になってスツールに座り直した

「あのね、チャンミン、ちょっとここに座って?」

「はい」

チャンミンはその長身を折り曲げて
ちょこんと座った

「ユノと離れたくないっていう理由で
これを蹴ったらさ」

「はい」

「ユノはどう思うかな?」

「え?」

チャンミンは不思議そうな顔をした

「じゃあさ、たとえば」

シウォンは言葉を選んだ

「ユノが何か情熱を傾けてる事があって
そうだな、今なら仕事だよね」

「はい」

「その仕事で何かチャンスがあったとして
それをチャンミンがいるからとユノが蹴ったとしたら?」

「僕が?僕が理由でユノがチャンスを?」

「そう」

チャンミンは少し考えた


「それは…困ります」

「だろ?」

「うん…なんか、僕が邪魔してるみたいで」

「ユノだってそう思うさ」

「だけど…僕は…」

チャンミンは上手く言葉が見つからない

「それにね、チャンミン
自分の夢を叶えようと一生懸命な姿は美しいものだよ」

チャンミンはハッとして顔をあげた

「そんなものですか?」

「ユノが仕事に一生懸命になってる姿は
どう?」

「そう…ですね…たしかに…カッコいい」

「お互いを高め合える恋人同士って
素晴らしいと俺は思う
2人がお互いを見つめて向き合ってるのもいいけど
2人で一緒に未来を向いている恋人同士って最強だよ」

「見つめ合うんじゃなくて
2人で前を見るってことですか?」

「そう、お互いの夢を応援できる2人なんて
素晴らしいし、ユノはそういう奴だよ」

「ユノと離れたくないから行かないなんて、ユノは僕をつまらない人間だと思うかな…」

「つまらないとは思わないだろうけど
チャンミンを尊敬して、応援してくれるはずだよ。行かないなんて言ったら俺みたいにこうやって説得すると思う」

「うーん…」

「悩むような事じゃないと思うんだけど」

「とりあえず、ユノに話してみます」

「あ、うん…話してごらん?」



************



「すごいじゃないか!チャンミン!」

ユノは目を見開いて驚き、感激してくれている

「………」

そんなユノをチャンミンがじっと見つめる

「招待生だなんてさ、こんなの滅多にないんだろ?」

まるで自分の事のように瞳をキラキラさせているユノ

「そう…だね…」

「何か気になることがあるのか?」

「……2年間も離れる事になるけど」

そこで、ユノがグッと言葉につまった

「…………」

「僕は…そんなにユノと離れていられない」


俺も…という言葉をユノは飲み込んだ


ここで自分がそれを言ったら
このチャンスを逃させることになる


それはしてはいけない


チャンミンのいない生活なんて
想像するだけで頭がおかしくなりそうだ

だけど

「2年間なんてあっという間だよ」

ユノは少し無理をして微笑んだ

「……すぐに会えるような距離じゃない。
フランスだよ?仕事だって休めないでしょ?」

「チャンミン」

「なに?」

「それでも行くべきだよ
こんなに料理が好きで、それを認められたんだ」

「僕は…」

「たくさん勉強して、立派になったチャンミンを、俺は楽しみにしてる」

「ユノ…」

「俺もチャンミンに負けないように仕事頑張らなきゃな」

「僕が何かに頑張ると、ユノも仕事頑張れるの?」

「ああ、チャンミンも頑張ってるんだからって、お前が励みになるよ」

「……僕は…フランスに行ったら
もっと魅力的になれる?」

「今でも…十分魅力的だよ」

ユノは愛おしそうにチャンミンを見つめ
思わずその頬に触れた

チャンミンが目を閉じてユノの大きな手のひらに顔を預ける

まるで天使のようだ

ユノは両手でチャンミンの顔を掬うと
そっとその唇にキスをした

ゆっくりと目を開けるチャンミンの瞳が涙で膜が張っている

「僕…やっぱり、行きたくない」

チャンミンの唇がへの字に歪む

「チャンミン、大丈夫。
俺たちは少し離れたって大丈夫だ」

「ユノは…僕と離れても平気なの?」

「………」

真剣にユノを見つめるチャンミンの瞳

昔からずっと変わらずに
自分だけを見つめてくれるこの瞳に

どれだけ癒され、励まされ、頑張れたのか

今度は自分が、チャンミンを励ましてやる番だ

ユノは心の奥底から溢れ出る寂しさや悲しさに蓋をして耐えた

そしてチャンミンをギュッと抱きしめた

「寂しくないわけない」

「………」

「だけど、がんばるチャンミンを
俺は応援したい」

「がんばる僕をもっと好きになる?」

「ああ、もっと好きになるよ」


いつもチャンミンの心にあった不安

自分は本当にユノに愛されるべき資格があるのか

人生の伴侶として、いろいろな面で
自分は足りないところが多すぎて

けれど、少しでも、ユノに愛され続けられるなら

もっと魅力的だと思ってもらえるなら

きっと今までの僕たちは
おままごとの延長で

ただ一緒にいられればそれでよかった

僕はきっと、この先もそうなのだ

でも、たぶん、ユノは違う

シウォンが言うように
お互い高めあって

2人で未来を見つめるような…

ふーっとため息をついて
チャンミンはユノから離れた

そして、ニッコリと微笑んでユノを見つめた

「わかった、僕、フランス行く」

その笑顔がユノの心を息も出来ないほど締め付ける

チャンミンが…
自分の側から離れてしまう

2年間なんてあっという間だと言いながら
まるで何万光年も離れてしまうような感覚しかない

暴れ出しそうな自分の思いを
ユノは握り拳を作って鎮めた






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