プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

はじめまして

はじめまして。

ここに書かれているお話しはすべて百海のアタマの中の空想・妄想からなるお話です。

主人公はアジアのスター、韓国の人気男性デュオのお2人ですが

名前とイメージのみで実在の人物とはまったく関係ございません。

そんな2人が愛し合うという、BL小説です。

お2人のイメージが崩れる、BLがわからない、嫌い、許せないと嫌悪される方、
または18歳以下の方は閲覧されないようお願いします。

他にも同事務所のアーティスト様や韓国の俳優さん、女優さんのお名前が出てきますが
同じくご本人とはまったく関係ない空想・妄想の人物になります。

キャラ設定もお話しによってさまざまです。

ご自身が傷つきそうであれば、閲覧されないようお願いいたします。


世知辛い世の中、辛い現実、刺激のない毎日、
そんな日々をこの美しいお2人で癒されたい、と私と同じようにお考えの皆さま、
私、百海の妄想にお付き合いいただければ幸いです。

しつこいようですが、百海固有の空想・妄想のお話しです。
お話しの内容にクレームをつける、誹謗・中傷はご遠慮願います。

性描写が描かれる場合はパスワードによる閲覧となります.
パスワードに関するお問い合わせもご遠慮ください。





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初恋〜完〜



「熱いから気をつけて」


あーんとチャンミンに向かって口を開けるユノ

腕を骨折している為に上手く食事ができなかった。
それでもリハビリだと言って、他人の力を借りようとしていなかったユノなのに。

なんて有様だろう

テホは苦笑していた。

ひと口ずつ、ユノに食事を食べさせるチャンミン

「ゆっくり」

「うん」

チャンミンは、毎日ユノの病室へ通っては
なにかと世話を焼いていた

「あのさ、ユノ」

「なに?」

「…毎日、来ちゃってるけど、迷惑じゃないかな」

「なんで?」

「いや、ほかにユノの世話を焼きたい人がいるとか」

「そんなわけない」

「あ、うん、それならいいんだけど」

「毎日、チャンミンが来てくれ」

ユノが爽やかに笑った

チャンミンの顔がパーっと輝く

勘違いを…してしまうよ、ユノ

「うん」

恥ずかしそうに俯く姿は
年月を感じさせない清純さがあった

そんなチャンミンを眩しそうに
見つめながら、ユノは不思議な気持ちになっていた

このまま、また2人で一緒にいよう

もう、自分たちは立派な大人で
まわりを説得しながら、自分の生き方を貫いてもいいだろう。

遠回りをしたけれど
会うことができなかった20代はきっとお互いに必要な時間だったのだ。

ユノに迷いはなかった

17歳の自分に叱咤激励されたことが
ユノの勇気になっていた


それはまた本来の自分でもあった。


「ユノ…」

「ん?」

「ひとつ、提案が…あるんだ」

「提案?」

「あ、えっと、今後のこと」

「あ……」

「なんていうか、あの、これは、
もしユノが楽になるならってことでさ」

「……」

「ユノにもいろいろと今までの生活とか
考えとか、あると思うんだけど」

「……」

「あ、えっと、テホくんからも言われてて」

「チャンミン」

「え?」

「俺と一緒に暮らそう」

「……」

「あ…えっと」

チャンミンはごくりと唾をのんだ

「あの」

「……」

「……一緒に住まないかなって、僕も言おうと思ってて」

「それはよかった」

「あ!なんていうか、退院してもまだ大変だし
それにテホくん、彼女ができたとかで、あの…」

「テホなんかいいんだよ」

「あ…うん」

「俺が、チャンミンと住みたいんだから」

チャンミンが赤くなって俯く


「なんだよ、あいつ彼女と住むのか
じゃあ俺、チャンミンのところに住むか」

「それは!ほんと、なんの問題もないんだ
母さんは再婚して、僕はひとりだし。
ユノと住むことは、母さんには僕がきちんと説明する。
説明するっていうか、説得する」

「ありがとうな、チャンミン
一緒に住まわせてくれ、一緒にいたい」

チャンミンは震えるようなため息をついた

「よかった…」

「説得は、俺も一緒にするよ、大丈夫」

大丈夫

ユノがかつて、よく言ってくれた言葉

「なんだか、僕、緊張して
出会った頃みたいだね」

「そうだな、また初恋のやり直しだな」

「初恋?」

「知らなかったか?チャンミンは俺にとって初恋なんだよ」

「ユノは絶対違うでしょ、僕にとっては初恋だけど」

「こんなに好きになったやつはチャンミンがはじめて」

「……そういう…こと?」

「そして、最後」

「………」

ユノは優しく微笑む

「ユノ」

「ん?」

「もう、死なないでよ?」

「え?」

「僕を1人にしないでよ」

「わかった、大丈夫」



柔らかな風は少しだけ湿り気を帯びて

2人が出会った季節がまたやってくる


木々の青さがその色を濃くする頃
ユノは退院の日を迎えた


テホとチャンミンがユノの身支度を整え、
医師や、看護師に挨拶をすませた


「ユノの蘇生について、学会で発表したいって
医局ではちょっとした話題だよ」

「ドンへも登場させていいなら、いくらでも」

「フフ、そうだよね」


テホがいたずらっぽく2人を見た

「先生、ヒョン、2人に渡したいものがある」

「?」

「なんだ?」

「いいから、そこに2人並んで」

ユノが松葉杖を操って、チャンミンの横に並んだ

「なんだよ」

「これ」

テホは、荷物の中から紙の筒を出した

「あ!」

チャンミンが小さく叫んだ

「そう、これはシム先生から高校の卒業式の後
ヒョンに渡してくれって僕が預かったもの」

「卒業証書を?」

ユノが不思議そうな顔をする

「そうだよ」

そう言いながら、
テホは筒から丸くなった卒業証書をとり出した。

「これみて?」

2人の前にバッと広げられた証書には

シム・チャンミンの名前のところに
「チョン・ユンホ」とマジックで書かれていた。


「これ…」


「シム先生はヒョンと2人で卒業式を迎えたかったんだよね」

「……」

「あの時の先生から、そんな想いを感じたんだ」


チャンミンは唇を噛み締め

ユノは真顔になった

「ヒョンたちを引き離そうとした大人たちへの
反抗だったんだよね、これは」

「テホ」

ユノの低い声

「なに?」

「ちょっと目を瞑ってろ」

「え?」

言うなり、ユノは松葉杖を一つ床に落とすと
いきなりチャンミンの顎をすくって顔を近づけ、キスをした

「あー」

テホは広げた卒業証書で、自分の顔を隠した


ユノはその日、夢を見た


ソウル駅の雑踏の中
17歳のユノは、改札でチャンミンを待っている


一緒に行こう

そう約束はしたけれど

チャンミンはすべてを置いてこれるのか

ユノはずっと考えていた

改札の時計を見上げると、約束の時間はとうに過ぎている…

チャンミンが悪いんじゃない…

ユノはため息をついて、荷物を持って歩き出そうとした

その時

「ユノ!!!」

その声に振り向くと、チャンミンが満面の笑みで
こちらに手を振っていた

「チャンミン…」

「遅くなってごめん!」

「お前…」

「こんなに遅くなっちゃって!ごめんね!
何年待った?」

「遅いよ!12年も待ったんだぞ!」

チャンミンは驚いたような顔をして
そして笑った

「さあ!行こう!」

ユノはチャンミンの肩を抱いて
改札を抜けた


ユノが待ち続けていた改札の柱の陰から

ドンへが2人を見送っていた

やれやれといった笑顔で

ドンへもスーツケースを持って、別の電車に乗っていった。


もう一度チャンスをもらったのだ

ユノの命も

2人の愛も

少し遠回りしたけれど

まだまだこれから






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百海です。

「初恋」最後まで読んでいただきありがとうございます

温かいコメントの数々に励まされ
今回も最後まで描き終えることができました。

ありがとうございます。

このお話に対しての皆様のコメントが
高校生の2人を見守るヌナ的発言が多く

しかもとても親身になっている様子が伺えて
とても嬉しかったです。

また、次のお話でお会いしましょう!








初恋36




チャンミンは走った

肺が痛くなるほど走った


こんなに一生懸命走ったのは
あのリレー以来ではないだろうか。


それはテホからの連絡だった

部屋で寝ていたチャンミンの元に

テホから電話がかかってきた


「先生!ヒョンが、目を覚ました!」


集中治療室まで走ってきたチャンミンは
テホの出迎えにも話すことができないほど、息を切らしていた

「ヒョンが…目覚めました…」

「そう…よかった…」

担当医がチャンミンの元に来た

「知り合いだって?」

「はい、そうなんですよ…偶然に」

「奇跡だね、あんなに長いこと心肺停止だったのに
今のところ、皮膚の感覚と記憶は特に問題ないみたいだ」

記憶と聞いて、チャンミンは少し緊張した

自分のことを覚えているということか


「骨折箇所が多くて運動機能は確認できないけれど
痛みも感じるみたいで、ほぼ問題ないかもしれない。
もうすぐ一般病棟でよさそうだ」

「そうですか…本当に奇跡ですね…」

ガラスの向こうでユノは、今は眠っていた

起きている時に会いたかったのにな…

それでも静かに眠る顔に
チャンミンは安心した

治療室にテホが来た

「連絡をありがとう」

「いえ、あー残念だな、今寝てますね」

「うん、そうなんだよ」

「先生、走って来たの?」

「うん…いや、目覚めない可能性の方が
高かったからさ、びっくりして。」

「先生」

「ん?」

「お願いしたいことあるんです」

「?」

「ヒョン、今、僕と住んでいるんですけどね」

「そうだったの」

「僕、彼女と住みたくて」

「テホが彼女??」

「あの、もう28なんですけど」

「そうか、それは彼女がいないと寂しいね」

「でしょ?それにヒョン、退院してもいろいろ大変だから、また、先生にヒョンのお世話をお願いできないかなって」

「それは…」

「大変だろうけど、よかったら引き取ってください!
ヒョンのこと」

「テホくん…無茶だよ」

「いいでしょう?先生にしか、ヒョンの世話なんて頼めないんですよ。僕の彼女がヒョンの世話をする羽目になりそうで。」

「じゃあ、それはユノの了承を得てから、ね?」

「それでいいので、お願いします」

「たぶん、難しいと思うから期待しないで」


「面倒みてくれなんて言ったけど
2人がこれからどうするかは、2人で決めるでしょう?」

「うん…まだ何も話をしてない。
このまま、黙って退院されちゃうかもしれないし」

「でも先生、やり直すでしょ?ヒョンと」

「……」

「もう、ヒョンを1人にしないで…ください…」

「…テホくん…」

「先生も…どうか、もう1人で苦しまないで…」

「……」

「2人とも、十分苦しんだでしょう?」


そう…だね

どれだけ涙を流して
どれだけ苦しんだだろう

それでも、やっぱり忘れられなかった



やがて、ユノは一般病棟に移った

食事もできるようになって
心肺停止による影響はほぼないとされていた

あとは事故による骨折箇所を治療するだけ


その日、ユノは病室のベッドで背を起こし、窓の外を見て考え事をしていた…

ずっと働き続けてきた

こうやってもう特に心配のいらない入院となれば
それは長い休暇のようで、ユノはゆっくり休むのもいいかもれないと思っていた

コンコンとドアがノックをされた

「はい」

ドアが静かに開くと、そこにはチャンミンの姿があった


「あ……」

「こんにちは、ユノ」

チャンミンは少し緊張した面持ちで
静かに病室に入ってきた

「調子はどう?」

「あ、えっと…」


ユノはチャンミンの座る椅子を探した

チャンミンはそばにあった丸椅子をベッドサイドまで引き寄せて座った。

「食事はできてる?」

「ああ、出来てる」

「そう…よかった」

「今日は休みか?」

「そう」

「………」


2人の間に沈黙があった

いきなり、昔のようには話せない

もう12年もたったのだ


「あ、チャンミンが、俺の心臓を動かしてくれたって
テホが…」

「そう、僕が生き返らせた」

「そうか…」

ユノが苦笑した


チャンミンはその笑顔をみて
泣きそうになった

この人が生きてて、こうやって笑うのが見れて
ほんとうによかった


「ありがとう、チャンミン」

ユノが顔をあげて、チャンミンをまっすぐ見つめた

「実は僕、動揺して何も出来てなくて
ドンへに背中押されたんだ」

「ドンへに?」

「ユノを迎えに行けって」

「そうか…」

「亡くなってたんだ、ドンへ」

「ああ、去年」

「残念…だな」


「あいつ、俺にこっち来るなって言ってた」

「え?心肺停止の間?」

「たぶん、そう。チャンミンが迎えに来るからって」

「…そう…なんだ」

「あいつ…俺がちゃんとしないから
心配で天国にも行かれないな」

「僕たちを…心配してくれてるんだね」

「昔から…だ」

窓から優しい陽が差し込んでいる

ユノは窓の方にまぶしそうに顔を向ける


「ユノ」

「ん?」

「あなたが生きててよかった」

ユノがチャンミンに向き直った

チャンミンが自分の襟元から
シルバーのネックレスを引き出して、指にかけ
ユノに見せた

「チャンミン…」

「ずっとしてたわけじゃないんだ」

「……」

「ユノを忘れなきゃと思っては外し
やっぱり忘れられないって悟ってはつけるっていう」

「……」

「そんな繰り返しの12年間だった」

「………」

「わかってるだろうけど、僕はいろんな人とつきあって
幸せになろうって頑張ってみた」

「……」

「だけど、全然無理で、最近は開き直ってこれずっとつけてた。」

「それは、お前、自分を責めすぎ」

「……」

「あの時のお前が全てを捨てて、俺についてくるのは
どう考えても無理だった。
来てくれても、上手くいかなかったと思う。」

「……何もわかってなかった…
幼すぎて、ユノを傷つけた」

「もう、自分を責めるな。
俺も幼かったんだよ」

「あの時、先生もみんなわかっていたんだろうね
僕たちが幼すぎて危険だと」

「……チャンミン」

「……」

「今となっては、僕は、あなたと過ごせてよかったと思ってる。いい想い出をほんとに感謝してる」

「俺は…」

「……」


「俺は…申し訳ないけど、そんな風には思ってない」


「え?」

ユノの言葉に打ちのめされそうになるのを
なんとかチャンミンは持ちこたえた


「俺は、まだ、ソウル駅でお前を待っている」


チャンミンが不思議そうな顔でユノを見た


「待ちくたびれたけど、お前、来てくれたんだな」


チャンミンの目にみるみる涙があふれた


「お前、相変わらず泣き虫だなぁ」

チャンミンは自分の胸をおさえ
シルバーのネックレスに触れた

「………」


「ユノ、あなたを裏切ってしまったことで
僕はたしかに自分を責めたけど」

「……」


「ほんとうは、僕はあなたの元へ行きたくてしかたなかった。」

「チャンミン…」

「あの時、僕は」

「……」

「どれほど、あなたの待つソウル駅に行きたかったか」

「……」


「チャンミン、俺…」

「……」


チャンミンが顔をあげた

「……」

「あの時、お前が来ることは…すぐに諦めた」

「……」

「でも、最後に一目、会いたくてたまらなかった。
会えなかったことが悲しかったよ」


チャンミンの唇がわなわなと震えている

「僕を…」

そのうち、チャンミンの瞳からボロボロと涙が落ちた

「僕を…憎んでなかった?」

「憎めたら、こんなに辛い思いをせずに済んだ」

「ユノ…」

「年月が経つにつれて
お前に全てを捨てさせてテジョンへ連れて行くことが、どんなに無茶かもわかるようになって」

「……」

「いろいろ折り合いをつけて
俺も…お前を忘れて幸せになろうとした。
だから、ネックレスも外したり、つけたり」

チャンミンが真剣にユノを見つめる

「事故の時はネックレスをつけてくれてたよね」

ユノがフッと笑った

「最近は肌身離さず、身につけてた。
もうチャンミンほど誰かを愛せないってやっと気づいて、開き直ってた」

「ユノ…」


「もう一度俺についてきてほしい」

もう

ユノの綺麗な顔が…涙で見えない

「悪いけど、お前の意思は問わないよ」


あの日

一緒に行かれないと

やっとの思いで告げた

身を切られるような思いで、すべてを諦めた


だけど

ユノは迎えに来てくれた

12年目にして僕を迎えに来てくれた






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明日は最終回となります
ありがとうございました!

初恋35




処置室が開いて

チャンミンが出てきた

その瞳は輝いていた

まるであの頃のシム先生だ

「先生!」

テホと同乗者の男が駆け寄ってきた

「ユノ、帰ってきたよ…」

微笑んだチャンミンは輝いていた


「あ……」

「ありがとうございます!」

「先生…本当にありがとう…」


「ドンへにも知らせなきゃ…」


「え?」

テホが驚いたようにチャンミンをみた


「ドンへさ、ここの警備員やってるんだよ。
偶然に会ったんだ。きっと心配してるはずだ」


「先生…」

「ちよっと警護室に行ってくる」



「ドンへさんは去年、亡くなったよ…」

「……」

「たしかに警備の仕事してたけど…」

「え」

チャンミンはへへっと笑った

「そんな…はずは…ないよ」

「……」


「だって…さっき…」


「先生…」


「ウソだよね」


「最期はヒョンが看取った」


「……そんな…」

「30歳まで生きられたのは…奇跡だったって…」

「……」


ドンへ…

ユノをここまで連れてきてくれたのは…君?





ユノは川沿いの道を歩いていた…

ヒューヒューと風が吹いて、とても寒い

あれ?

ここはどこだろう

どうしたんだっけ

あ!テヒョンのやつが、発注ミスをして
急いで納品しなきゃいけないんだ

ユノはあたりを見回した…

あ…

ふと目の前を見ると

ドンへが岩の上に座って微笑んでこっちを見ていた

「ドンへ!!」

「久しぶり,ユノ」

「お前!どうして…」

「悪かったな、いろいろ面倒かけて」

「そんなこと言ってるんじゃないよ、俺を1人にしやがって」

「お前は1人じゃないよ」

「なあ、戻ってこいよ」

「俺は、もう戻らないよ」

「じゃあ俺がそっちに行く、
なんか寒くてさ、お前に近寄るとあったかい」

近づこうとするユノを
ドンへはキッパリと拒絶した

「ダメ」

「なんだよ」

「お前はこっちに来たらダメ」

「なんでだよ」

「チャンミンがお前を迎えにきてるよ」

「チャンミン…」

「ああ、お前と同じように首にチェーンぶら下げて
迎えに来てるよ」

「そんなわけないよ…ドンへ」

「よく耳を澄ますんだな」

「……」

その時、遠くでユノを呼ぶ声が聞こえてきた
風の音と川沿いに揺らめくススキの音に消えそうだ


「ユノ!!!」


でも、それはハッキリとユノの耳に届いた

「チャンミン?」

「ユノ!!」

風に消え入りそうな声

でも、確かにあの声は懐かしいチャンミンの声だった

「まさか…」

「お前、チャンミンを1人にするのか?」

「……」

「ずっと待ってたんだろ?チャンミンを」


ずっと待っていた…

あの日、ソウル駅の雑踏の中

改札の前で、チャンミンが来るのを

待っていたんだ


あの日から、俺はずっと待ち続けているのかもしれない

俺は、心をあの駅の雑踏の中に置きっぱなしにしてきたのかもしれない


チャンミン…


けれど

「昔の話だ
俺も大人になった」


「なに言ってんだよ、ユノ
なにがオトナだよ」

ドンへが苦笑した

「あの頃のユノが今のお前を見たら泣くぜ」

「え?」

肩をポンポンと叩かれ振り向くと

そこには17歳の自分がいた。

オレンジに色を抜いた髪

今のユノを睨みつける瞳はギラギラとしていた


「お前は…」


「しょうもねぇ大人になりやがって」

はすっぱな口調が自分でも懐かしい

「お前は…あの頃の…オレ」

「ちっぽけな大人になりやがって
つまんねぇの」

「なっ…」

「チャンミンをお前にやらなくてよかったよ!」

「なに言ってんだ!ガキのくせに
なんにも知らないくせによ!」

「ああ、なんにもしらねぇけどな、ガキだけど、
チャンミンを好きな気持ちは
お前なんかに負けねぇ」

「お前になにがわかる
チャンミンを愛するのがどういうことか
お前なんかにわかるか!」

「だったら!アホヅラして寝てねぇで
とっとと起きろ!」

「あ?!」

「チャンミンをほったらかしにすんな!」

17歳のユノにドンとど突かれた


ユノは深い穴へ落ちていくような感覚に陥った





チャンミンは1人夜中のロビーのソファに座っていた

体はひどく疲れていて
そのまま横になりたかったけれど

頭は妙に冴えていた…

ドンヘは…自分が長く生きられないことを知っていたのだろうか

いつも穏やかで、そして前向きだった

僕に、ユノを迎えに行けと言った…

迎えに行って…いいのだろうか…

ユノはまだソウル駅で僕を待っていてくれるだろうか…

2人のチケットを持って待っていてくれるだろうか

ユノは目覚めない

もしかしたら、このまま目覚めないかもしれない

それでもいい…

僕がずっとそばにいるんだ

チャンミンは集中治療室で眠るユノを、透明なガラス越に見つめた

あなたをこの世から失ってしまうことを思ったら
僕はなんでもできる

あなたに罵倒されても
結果、僕は嫌われてしまっても

あなたが生きていればいい。

あたりまえのことなんて、なにひとつとしてこの世にはない

だから、こうやって再び会えたチャンスを
僕は逃したくないんだ

ユノ…

僕のはじめて恋した人

そして、いまだに恋している…大事な人






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初恋34



< 現在 チャンミン30歳 >


この仕事についてから

人の生き死にというものに感覚が疎くなったと感じていた

病院では、毎日のように子供が生まれ
毎日のように誰かが亡くなる

生物として当たり前だ、くらいに思っていたのに

こんなにも

動揺している…

あなたが…この世からいなくなるなんて

これまで側にはいられなかったけれど

遠くで頑張っているであろうあなたに
いかに自分が支えられていたのか

そして、まだ想いがこれほどまでに強く残っていたのか

今、震えるこの身体が物語っている



慌ただしく、人が出入りしている

チャンミンは壁にもたれたまま、天井を見上げていた

全身の震えがとまらない


ユノが…

亡くなってしまったなんて


僕たちはなんて

なんて残酷な運命なんだろう


器械を外されるユノなんて

とてもじゃないけど、見れない…

どうしてユノの最期を僕に看取らせるような
そんな残酷なことをするの

神さま…

ひどいよ…

背中を壁につけたまま、泣き崩れるチャンミンに
警備員の制服を着たままのドンへがやってきた。

「チャンミン」

「あ、ドンへ…ユノが…もう」

チャンミンの目に涙が溢れる


「ユノを迎えに行ってくれ、チャンミン」

「え?」

「チャンミンしか、迎えに行かれないんだ」

「僕いやだ…ユノの最期なんて見れないよ」

「早く、間に合わなくなるから」

ドンへは座り込むチャンミンをひっぱり上げた

「いやだ!」

「そんなこと言わずに」

子供のように泣きじゃくるチャンミンを処置室まで引っ張っていくドンへ

そこには

管をひとつずつはずされようとしているユノと

まわりにはテホや、ユノと車に同乗していた男が
泣きながら、その様子を見ていた


「大声で名前を呼んで、ユノを起こすんだ」

「そんな」


「会えなくなるんだぞ?
いいのか?」


「………」


「ユノはまだ、ソウル駅で待っているんだよ」


え?


「ユノはチャンミンを、ソウル駅でずっと待っているんだ」


ドンへが後ろからチャンミンの背中をそっと押した


ユノ…


そこには

眠っているような綺麗なユノがいた


僕の…

愛しいユノ…

ずっとあなたを想って生きてきたんだよ


「ユノ?」

チャンミンは点滴だらけのユノの腕に触れた

懐かしい、その肌の感触に
ユノへの想いが溢れてくる

パク医師が気をきかせてくれた

「知り合いなんだよな?
チャンミンが綺麗にしてやって」

ふと

側にいたテホが、ユノが着ていたジャケットを腕に抱えている。

ふと、その中に鈍く光るチェーンを見つけた

「それ…」

泣きじゃくるテホがその声にチャンミンを見た

「これ?…うっ…いつも……ヒョンが…
外さなかった…ネックレス…」


外さなかった?


まさか


チャンミンは思わず、自分の首にある
同じネックレスに触れた


「ユノ?!」

チャンミンが突然大声をあげた

「ユノっ!!!」

そして、ユノの体を激しく揺さぶった

「シム、どうした?!」

パク先生がチャンミンを止めようとした


「ユノ!!!!」

グラグラとユノの体を揺さぶった


「先生…先生!ちょっと!」

機械を見ていた看護師がパク医師を呼んだ

「なんだ」

「あれ!」

心臓のリズムを示す細い線が、ほんの少しかすかに動いた

「そんなことあるわけない。
たぶんシムが揺らし過ぎて、誤作動起こしてるんじゃないのか?!」

「そんなことないですよっ!」

「だ、だよな、でもありえない」

「でも…」

また、その線が動いた

数字も表示されている

「時間が経ち過ぎているのに!」

「でも、先生!」

看護師たちが騒然とした


「ユノ!!!」

チャンミンも狂ったようにユノを揺り起こした


間に合うなら、もう一度

あなたが待っていてくれるのなら



「もう一度これを打って」

突然医師としての冷静さを取り戻したチャンミン

「はい!」

看護師たちが慌ただしく動き出す

パク医師とチャンミンは無駄のない動きで
もう一度ユノの蘇生に挑戦した

テホたちは看護師に外に出された

「あの!ヒョンは!」

「再び心臓が動き始めました。
一旦ここでお待ちください」


同乗者の男が泣き崩れた

「どうか!ユノさんを助けて!
俺が発注ミスなんかしなきゃ、ユノさんはあんなにスピードを出さなくてすんだのに…」


「ヒョン…」

テホはチャンミンの表情を変えたそのネックレスを
思わず握りしめた


ヒョン

起きないといけないよ?

あなたがずっと恋い焦がれて
想い続けてきた、その人が

今、あなたを救おうと懸命になっている

会いたかったでしょう?

僕はずっとヒョンの気持ちをわかってたよ

どんな綺麗な女性に言い寄られても
長続きしなかったヒョン

あなたが選ぶ人はその誰もが
どこか先生に似ていた

ため息をついて、空を見上げるヒョンは
見ているこっちもつらかったよ

真面目に働くようになったヒョン

でも時に爆発したように自堕落になる姿をみて
先生がいてくれたら、って思ってた

僕を大学にやるために
きっとヒョンは先生と別れる道を選んだはず

僕はヒョンにしてあげられるのは
たったひとつ

先生とヒョンを祝福してあげることなんだ


ヒョン

ヒョン、みた?

先生の首に、このネックレスと同じものが光ってた

2人ともお互いを思い続けての長い年月

そんな風に、寝ている場合じゃない



看護師がテホの元へやってきた

「お兄さんの心臓は少し動いては、また止まってしまうんです。今はなんとも言えません。ここでお待ちになりますか?」

「はい、待ってます。
兄が起きたら、渡すものがあるので」


同乗者と看護師が驚くようにテホを見た

でも、看護師は微笑んだ

「そうですか、じゃあ、渡せるよう
最善は尽くします」

「お願いします」


処置室では懸命な蘇生措置が行われていた

チャンミンが合図をしながら
ユノの心臓にショックを与える


「開胸します」

「シム!落ち着け、無茶するなよ」

「準備お願いします」

「もし、万が一蘇生したとしても
脳がどれだけ損傷しているかわからないんだぞ」


「そうしたら、僕が一生面倒みます」

チャンミンがキッパリと言った


「シム…」

「お願いします、力を貸してください」

「……」

「僕の…大事な人なんです」

「……」

「……」

「準備ができた、急ごう」

「ありがとうございます!」



チャンミンは思い出していた

はじめて会った教室
ニヤリと笑うユノ


体育祭の砂ほこりの中、ユノにバトンを渡すあの瞬間

図書館の帰り道に見た夕陽

夏の夜の花火

打ち寄せる夜の海

そして

あなたの唇の感触

空を舞う粉雪

あなたのいない教室

ひとりで迎えた卒業式


ユノ…あなたと過ごしたあの日々だけが
僕の人生だった


それからの僕は、ほんとうにダメだった


でも、もういちど2人で見たあの美しい景色を
あなたに見てほしい

傍に僕がいられないなら、それでもいい


「来た!」

チャンミンが叫んだ

「もう少しだ、安定してくれ…頼む」


ユノが戻ってきた…

ユノの心臓はまたリズムを取り戻した

意識はなかったけれど


ユノが…

チャンミンは大きくため息をついた


早く…安定してくれ…


戻ってきて…許してもらえるなら
どうか僕の元へ…






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