プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

はじめまして

はじめまして。

ここに書かれているお話しはすべて百海のアタマの中の空想・妄想からなるお話です。

主人公はアジアのスター、韓国の人気男性デュオのお2人ですが

名前とイメージのみで実在の人物とはまったく関係ございません。

そんな2人が愛し合うという、BL小説です。

お2人のイメージが崩れる、BLがわからない、嫌い、許せないと嫌悪される方、
または18歳以下の方は閲覧されないようお願いします。

他にも同事務所のアーティスト様や韓国の俳優さん、女優さんのお名前が出てきますが
同じくご本人とはまったく関係ない空想・妄想の人物になります。

キャラ設定もお話しによってさまざまです。

ご自身が傷つきそうであれば、閲覧されないようお願いいたします。


世知辛い世の中、辛い現実、刺激のない毎日、
そんな日々をこの美しいお2人で癒されたい、と私と同じようにお考えの皆さま、
私、百海の妄想にお付き合いいただければ幸いです。

しつこいようですが、百海固有の空想・妄想のお話しです。
お話しの内容にクレームをつける、誹謗・中傷はご遠慮願います。

性描写が描かれる場合はパスワードによる閲覧となります.
パスワードに関するお問い合わせもご遠慮ください。





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ブリキの涙(32)



朝ごはんを家族で食べる幸せ

「今日は苦しくない?」と
そんな風に聞かれることもなく

チャンミンが人工心臓によって生まれ変わって
帰宅してから既に数日がたっている

母がチャンミンに話しかけた

「今日はどうするの?」

「うん…図書館でも行こうかな」

「隣駅の大きい図書館ね?」

「そうだね、ひさしぶりだし」

「そういえばね、チャンミンの図書館友達が遊びにきてくれたことがあったのよ」

「え?図書館友達?」

「あーそうね、友達ではないかもしれない」

「?」

「命日とされてた頃にね、来てくださったの」

「なんて名前?」

「たしかね、ユンホさん」

「ユンホさん?知らないな」

「あら、そう。
かなりカッコいい人だったのに
忘れちゃったの?」

「だいたい、図書館って本を読むところなのに
友達ができるって事、あんまりないでしょ」

「まあ、そう言われたらそうだけど」

「怪しい人だったんじゃないの?
なにか実験の情報探ろうとしたとか」

「そんな感じの人には見えなかったわ」

「カッコよかったとか言って、なんだかな」

「正直言うとね、あなたの恋人かと思ったのよ」

「恋人?!」

「その方がね、あなたをそんな風に思っているように見えたの」

「図書館で僕をいつも見てた、とかなのかな」

「それもあり得るわね」

「うわー気持ち悪い」

「でも、ほんとそんな感じではなかったのよ」

「それに僕には先生が…」

「ドンジュ先生?」

「うん…」

「本当に先生が好きなの?」

「うん…たぶん…あんなに振り回しちゃったし」

「振り回したから?付き合わなきゃいけないの?」

「好きだから、振り回したんだと思うよ」

「ずいぶんと他人事みたいに言うのねぇ」

「そう…かな」

母は笑いながら食器を片付けにキッチンへ戻った


他人事か…そんなつもりは…ない…

でも

ほんとにそう言えるだろうか

またそのユンホさんという人がいたら怖いので
図書館に行くのはやめた。


それよりも、ミノの会社へ行く事を考えて
少しスーツを新調することにした。


維持費として、かなりの金額が入金されているけれど、正直毎月余ってしまう。

少し贅沢にオーダーのスーツにしようか。

母と仕立て屋に出かけたその店は
昔ながらの仕立て屋さんだ。

「今ならいくらでもネットオーダーができるのに」

「やっぱりこういうところでキチンと作るほうが
いいのよ。せっかくだから」

「ふぅん」

身体の至るところを隈なく計られた
大体のデザインが決まる頃には疲れが出るほど。

身体に合ったスーツを作るのって大変だな

「では、生地を選んでいただきます」

まだ続くのか…

生地も本当に様々でこんなに種類があるのかと
うんざりしてしまう

もうなんでもいいんだけど…

「やはり、肌触りの良いものが高級とされています」

「そこまで高級じゃなくていいんです」

「そうですか。一応これが一番高級な生地なので
触るだけでも参考になります。」

チャンミンは面倒臭そうにその生地に触れた

その瞬間…

そのサラッとしているのに、きめ細かくハリのある生地の感触が…

覚えがある

触ったことがある

いつだったのだろう

なぜかこの生地を触っていると泣きそうな気持ちになる

いつまでもその生地に触れているチャンミンを
みんなが不思議に思った

「やはりいいですよね、その生地は」

「思い切ってこれにしてしまったら?
たまには贅沢してもいいんじゃない?」


母もチャンミンを盛り上げた。

でも、当のチャンミンは
むずかしい顔をしたまま、何かを確かめるように
生地を触っている

「あ、あのね、チャンミン」

いつまでも生地を触るチャンミンを
母が見兼ねて窘めた

「売り物をそんなに触ったら、お店の方に悪いわよ」

「え?あ、はい」

「どうする?その生地にする?」

「でも、すごい金額になるよ?」

「たまには、いいじゃない?」

「贅沢だな、なんか」

そう言いつつも、結局はその一番高級な生地でオーダーした。


自分はやはり一度危篤状態にまでなっていたらしく
少し記憶が失われているのかな、とそんな風に思った。

それは悲しいことだ。

アルバムを見ながら色々考えたけれど
やはり、大きく記憶が抜け落ちているような感覚もなかった。

ミノに相談してみた。

ミノはチャンミンの目を見ない


「チャンミン、あれだよ、ほら、誰だってそんなに細かいところまで覚えてないから。
その程度ならよくあることだよ。」

「そうかな…うん、そうかもね」


ミノは気になった。

ユノなら、高級な生地でスーツを作るだろう
その店で一番いい生地で仕立てたってまったく不思議ではない

チャンミンは少し記憶があるのだろうか

そんな、そんなはずはない


なんのタイミングが、チャンミンの母親から充電器の不具合について連絡があり

ミノはユノの元を訪れることになった

ひさしぶりに会うユノは少しやつれたようで
でも、チャンミンの事となるとこうやってスケジュールを合わせて来てくれる。

「特注なので修理が難しくて。かなりの金額がかかってしまいそうなんです」

「いいよ。一番いいのにしてやって」

「あ…はい」

「で?用はそれだけ?」

「はい…そうです。お忙しいのにすみません」

「何言ってんの。大事な事だよ」

「はい」

「じゃあ」

「あの!」

「なに?」

「元気ですか?ユノさん」

一瞬真顔になったユノが次の瞬間破顔した

「元気だよ」

とてもじゃないけどそんな風には見えないユノが
柔らかく微笑んだ






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ブリキの涙(31)



ユノには虚しく連続する日常生活がはじまり

チャンミンには、発作が起きて運ばれた日からの記憶が、いきなり今日につながって。

そんなチャンミンにとってはいつも通りの生活だった。

母も兄弟もそれは最初は驚いたけれど
実験としては成功したということで、結局はその幸運を喜んだ

身体も普通の生活ができるようになっていて、
ドンジュは離婚して自由の身だった。

環境としては以前よりうんと恵まれていた。

チャンミンはこれから仕事も探して、と思っていたけれど、やはり世間的に充電をしながら生きている、ということは今ひとつよろしくなく
ミノのところで働くことになった。

「ミノ、聞いていい?」

「うん、なに?」

「あの日発作が起きて、僕は病院に運ばれて
ここで処置されたんだよね」

「そうだよ」

「それからいままで、僕はどうしてたの?」

「……処置はそんなに簡単にいかないし
適応できるまで意識は…ない状態だったよ」

「そうなんだ」

「僕も聞いていい?」

「なに?」

「どうして、ドンジュ先生と一緒に住まないの?」

「あ……」

「先生、離婚してるしさ、いつでもチャンミンを迎え入れることができるように…準備してるよね」

「母さんに苦労かけたからさ、もう少し親孝行して」

「そのお母さんが気にしてたよ。」

「母さんが気にすることないのに」

「先生はなにも言わない?」

「うん…」

「つきあって…ないの?」

「つきあって…ない…」

「そうか…うん…ごめん、おせっかいだね」

「心配してくれてるんでしょ?ありがとう」

チャンミンは微笑んだ



夕食を家族で囲む、団欒のひととき。

母はチャンミンの好きなものを必ずひとつは盛り込んで、食卓に並べる。

このひとときを捨ててまで、ドンジュと暮らすつもりはなかった。

そもそもドンジュへの気持ちもそこまで盛り上がらないチャンミンだった。

もしかしたら、かつてはただ誰かに頼りたくて
それでドンジュに甘えていただけなのかもしれない

そんな風に思いはじめていた


ある日チャンミンはドンジュと散歩にでかけた。

「仕事はどうなの?チャンミン」

「まあまあ。違法行為にならないように工夫して
僕のこの機能をもっと広められるといいんだけどね」

「そうだね。」

「あの、ドンジュ先生」

「なに?」

「僕、あれだけ先生を振り回して
大変な目に合わせたのに」

「離婚のこと?」

「うん。それなのになんにもしてあげてなくて」

「いいんだよ。そのことは基本、私が悪いんだから」

「僕だって…」

「私の責任でこうなったんだ。
そうなりたくなかったら、チャンミンを好きにならなければいい話」

「……でも、準備してくれてるって」

「そうだけどね、それは本当。
だけど、無理やりは私もイヤなんだよ」

「………」

「それじゃ、フェアじゃないからね」

「フェア?」

「ある人にね、負けたくないんだ」

「ある人って?」

「いや、なんでもない」

「変なの先生」

「チャンミンは自然にいてくれていいんだよ。
私のことはチャンミンがその気になってくれたらで」

「先生、ごめんね、でもありがとう」


チャンミンはドンジュと別れ、散歩の帰り道に
美味しそうなパン屋を見つけた

店内を覗いてみると、美味しそうなパンが並んでいてチャンミンは思わず笑顔になった

いくつか見繕って、トレイに乗せていった

すると、店の奥から店長らしき人が出てきた

「いらっしゃいませ、あれ?」

「はい?」

「おひさしぶりです、今日は早いんですね」

「え?」

「もう、ブルーベリーの追加は用意しなくていい、と連絡もらってたので、今日はそれしかないんですよ」

そう言って店主はチャンミンのトレイに乗せられた
ブルーベリーのパンを指差した


なんの話だろう?


「お好きなんですよね?」

「あ、僕はこの店に初めて来たので…」

「え?まさか」

「あ、初めてです」

「そう…ですか…なんかすみません。
人違い…ってことですね」

「いえ、いいんです」


ブルーベリーがなんとかってなんだろう?

チャンミンは話の内容がまったくわからない状態でとりあえず店をでた

帰り道、袋からひとつパンを取り出し頬張ってみる

うん、美味しい

これはミノにも分けてやろうと
チャンミンはミノの家に届けた


「美味しそうだね、ありがとう」

「これさ、店主がすごくこだわっててね
麦や水まで選ばれたものを使ってるんだ」

「へぇー雑誌かなにかで有名なの?」

「え?」

「素材がいいって、話題なの?」

「………いや」

「?」

「誰かが言ってたんだ」

「誰?」

「へへ…わかんない、だれだっけな」

ミノも笑って、パンを受け取ってくれた。

「どこのパン屋?」

「あのオフィス街の近く」

チャンミンの答えに、ミノがびくっとした。

「どうしたの?ミノ」

「あ、なんでもないよ。
なんで、そんなところまで行ったの?」

「ドンジュさんとブラブラしてて、
別れて家へ帰る途中だよ?」

「ああ、そうか」

「なに?」

「いや、なんでもない…けど
あのさ…チャンミンはその後身体の様子はどう?
頭が痛くなったりしない?」

「しないよ?」

「何か、へんな感じがあったりしない?」

「大丈夫」

「………」



ミノはユノを思っていた

こんなチャンミンの笑顔が見たいだろうに。

なぜ会いに来ないのだろう



ミノは思い切ってユノに会ってみた


少しお酒も飲めるようなビストロへ
ユノが連れて行ってくれた

ユノはといえば、ミノにチャンミンの事を質問責めだった。

「ユノさん…」

「なに?」

「そんなにチャンミンのことが気になるなら
会いに行けばいいのに」

「……あの教師にまかせたから」

「は?」

「まかせてくれって、言われた。
会いに来られたくないだろ」

「ユノさん、それでいいの?」

「俺、なんて言って会うの?
チャンミンのオーナーです?」

「いいじゃないですか?ダメなんですか?」

「それってどう?」

「どうって?」

「なにも覚えてないチャンミンが、いきなり俺がオーナーだと言われて。恐縮する姿なんか見たくない」

「たしかに…悲しいですけど」

「いいんだよ。もう」

「諦めるんですか?」

ユノが笑った

何かを諦めたように笑う横顔には
男の哀しさと色気が相まって

伏せたまつげが震えている


「諦めるんですか?って、なにか期待しろっていうのか?」

「……」

「心配してくれてありがたいけど
俺はもう吹っ切ったんだ。」

「ユノさん…」





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ブリキの涙(30)



ベッドに眠るチャンミン

いつもと変わらない、俺のチャンミン

可愛い顔でぐっすりと眠っている



ユノはベッド脇に腰をかけて
その寝顔をみつめていた

目が覚めたら、

「おはよう、ユノ!」

そう言って首に抱きついてくる

そんな気がする


ユノはその寝顔をみつめながら、いろんな事を考えた

チャンミンと出会って自分は変わった

誰かの為になにかしてやるとか
誰かの前で泣いたりするのも初めてだった


俺自身が母親を恋しいという気持ちは人一倍強かったように思う。

だからこそ、チャンミンを家族の元へ返したかったのもある…

とりあえず、ドンジュに託すのが一番いいし
ドンジュとしたら、俺が姿を見せるのはそりゃイヤだろう

あいつは自信がないのか?
俺だって、またチャンミンが戻ってくる自信なんてない…


チャンミンが目覚めた


「チャンミン?」

状況が把握できないような様子でぼーっとしている
まだ布団から出ようとしない


ユノは立ち上がり、チャンミンの様子をみていた

チャンミンは訝しげな顔をしながら
あたりを見回した


表情が…今までのユノのチャンミンではなかった

こんなにも違うものかと、ユノはショックだった


もう、気安く名前を呼べない


チャンミンはむっくりとベッドに起き上がって
ユノを見つめた


見つめ合う2人

数時間前、泣きながら抱き合って、
愛してると伝えあって、キスをした2人はもういない…

ユノに急激に寂しさが襲ってきた

それは想像以上の寂しさだった


こういうことなのだ

最初から自分をオーナーとしていたロボットのチャンミンと態度もまるでちがって当たり前なのだ


チャンミンはユノを見ても何も感じないようだった

「あの…」

やっとチャンミンが口を開いた


「なに?」

ほんの少しの期待を込めて、ユノが聞く

自分の名前を呼んでくれたりはしないだろうか


「どなたですか?」


ユノは打ちのめされた
奈落の底に突き落とされたような…そんな感覚

ユノは大きくため息をついた

「チョン・ユンホです」

「ユンホさん…」

「はい」

「シム・チャンミンです」


薄くチャンミンは微笑んだ

ユノも薄く微笑んでうなずいた

「ユンホさんはミノの会社の人?」

「まあ、そうです」

「じゃ、お世話になったんですね?」

「下でみんなが待っていますよ」

「みんな?」

「ミノや…ドンジュ先生」

チャンミンの顔がパッと輝いた

ユノはその嬉しそうな顔を直視できなかった

「着替えて用意して、下に行くといい」

「あ、はい…すみません」


チャンミンは立ち上がり、用意されたチェックのシャツとジーンズを履いた

ユノは荷物を玄関まで持ってきた

「こんなにですか?全部僕の荷物なんですか?」

「心臓は大丈夫なんです。もうこれくらい持てますよ」

「心臓…大丈夫なんですか?
ミノは計画を実行してくれたんですね?」

「後で説明があるかと思います」

「ありがとうございます」


「これは、充電器…」

「はい?」

「これはとても大事なので、しっかりと説明をきいて、毎晩ちゃんと充電するように」

「はい」

「特注なんです、これ」

「は?そうなんですか?」

お前のために…特注したんだ…


「ま、いいんですけどね、そんなこと」

「?」

「これはカード」

「はい。なんのカードですか?」

「毎月、この口座にあなたの維持費が振り込まれます」

「はい…」

「しっかり管理してください。お母さまに渡すといいですね」

「はい」

「枕や、パジャマも充電しながら楽に眠れるように作ったから」

「…はい」

「古くなったら、ミノに言ってください」

「わかりました」

「あと、なにかいろいろあったんだけど…」

「わからなかったら、また教えてください」

「私はこれであなたとはもうお会いしないんですよ」

「あ、そうなんですか。
なんか…いろいろとありがとうございます。」

チャンミンはぺこりと頭をさげた


「チャンミン…」

「はい?」

ユノの心に愛おしい気持ちが溢れてきた

でも、自分が愛したチャンミンはもうここにはいなかった


「元気でね、管理はしっかり」

「はい…」

「せっかく…もう一度人生を生きることができるんだから…大事に…」

「そうですね、ありがとうございます」


2人で大量の荷物を持ちながら
エレベーターに乗った


「ユンホさん」

ふいにチャンミンから話しかけられた

「え?」

チャンミンはここ、と自分の肩を指差した

「?」

「血がでてますよ」

ユノは自分の肩を見た
昨夜チャンミンに噛まれたところから、うっすらと血が滲んで、白いTシャツに染みていた

「あ、はい」


愛してると…いやだと…そう言って肩を噛んで泣いていたチャンミン

最後の抵抗だったのだろう


エントランスには一台の車と
ミノとドンジュが待っていた

チャンミンはドンジュを見るなり、顔が輝いた


「先生!」

ドンジュも満面の笑顔となり、大きく手を広げると
チャンミンは荷物を置いて、その胸に飛び込んだ

「先生!僕、もう心臓は大丈夫だって!」

「うんうん、よかったな。
でも、これから医者に行って、きちんと説明してもらうから」

ミノが悲しそうにユノを見て近づいてきた

「ユノさん…ほんとに…」

「入金するカードも渡しておいたから」

「あ、はい…」

「特注したものがダメになったら言って」

「はい…」

「まったくと言っていいほど…」

「はい?」

「俺のことは…覚えてないみたいだから」

「あ…はい…」

「大丈夫だと思う。うまく前の生活になじめる」

「ユノさん、ありがとうございます」

「お前も元気で、チャンミンを頼むな」

「はい…」



チャンミンは嬉々として車に乗り込む
ドンジュが運転席に入る前、ユノに向かって深くお辞儀をした

ユノは軽くうなずいた

続いてミノが後部座席に乗り込む前に
ユノに深くお辞儀をして、なかなか頭をあげなかった


さようなら

チャンミン


元気で


きっと、前の人生よりも輝く時間を過ごせるはずだ

走れて、愛し、愛されて…


そうして、ユノはまた1人になった。

部屋に戻ると、あまりにガランとしたその様子に
ため息をひとつついた…

シーツにはまだチャンミンの匂いが残っているだろう

でも、それでもユノは満たされない

ユノのチャンミンはいない…

ユノは小さなUSBを眺めた

俺のチャンミンはこの中に閉じ込められている

消去されているというけれど、本当だろうか

その小さなUSBがユノにとってはチャンミンの骨壷に見えてきそうだ

ユノはPCを開くと、そのUSBを差し込んでみる

でてきたのは、EMPTYという文字だった

何もない…空っぽだ…

そこではじめて…ユノはチャンミンがいなくなったことに気がついた

ユノは泣いた…

張り詰めていた気持ちの糸がプツンと切れたように

ユノは誰もいない部屋で声をあげて泣いた




さようなら、チャンミン…





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ブリキの涙(29)



チャンミンは…夢をみていた

最近、盛んに夢をみる



空は透き通るように青く輝いて

チャンミンは青く光る芝生の上を走っていた

風を切ってかなりのスピードがでている

思い切り走る


こんなに走れるなんて!

どこまでもどこまでも…


でも…

突然…

頭を何かに引っ張られるような感覚になって
足が止まった

痛っ

後ろを振り返ると長い長い充電のコードが
自分の後頭部から繋がっている


僕は…

1人では生きられない

どこまでも僕は自由になれない…



ハッとして目が覚めた


チャンミンはユノの胸に抱かれてベッドの中にいた
目の前のユノの胸筋が寝息とともに上下している

自分は汗びっしょりだ
また、熱があるのだ

最近おかしな夢をよくみているけど
今日のは少し怖かった…

ユノがチャンミンの様子に気づいた


「どうした?」

「なんでも…ないよ」

「すごい汗だな、シャワー浴びよう」

起きようとするユノの手を
チャンミンは握った

「?」


「ユノ…すごく不安なんだ…」

「チャンミン…」

「何でか…わからないけど」

ユノの瞳が優しい

「何も心配することないよ、チャンミン」

「………」

「お前は何も心配することない」

ユノはギュッとチャンミンを抱きしめた

力強いユノ


この大きな胸に、すべてを預けると
ほんとうに不安が消えるから不思議だ


「ユノってすごいね」

「なんで?」

「大きいよね、ユノって」

「俺の何が大きいの?」

ユノがニヤニヤしている

「もう!バカじゃないの?」

「ウソウソ」

そう言ってまたユノはチャンミンを抱きしめた


「不安は、消えた?」

「消えた!」

「それはよかった。じゃあシャワー浴びよう」


2人は一緒にシャワーを浴びた

降り注ぐシャワーの中で、ユノはチャンミンの頬に手を添える。

チャンミンを見つめるその瞳が揺れている

「さっき、お前、不安だっていったけど」

「ごめん、不安なんてウソ!」

「チャンミン…」

「ちょっとね、イヤな夢みただけ。
ミノに言われてたんだ、脳が活性化してるから
夢を沢山みるかもって」


「不安になって当たり前だと思う…」

「だから!そうじゃないって言ってるじゃん!」

チャンミンは頬をなでるユノの手を払いのけた

「不安だって言ったら、ユノは僕をなかったことにしようとするでしょ?」

「チャンミン…」

「僕たちの今までの時間は、あなただけのものじゃないんだよ?」

「……」

「少しだけかもしれないけど、僕には大切な思い出なんだよ」

「だけどさ…」

「気づいたらユノが知らない人になっているなんて
そんなのイヤだよ」


「ワガママばかり言わないで…頼むから」


シャワーの水滴にうまくごまかされて
ユノも泣いていた…

「ユノ…」

「お前が心配なんだよ…このままでいいわけないんだ」

「僕は…ユノを困らせてるの?」

「そうだよ!」

ユノの大きな声にチャンミンはびっくりして
目を見開いた


「………」

「ごめん…お前はなんにも悪くない…
ワガママなんかじゃないよな、ごめんな」


ユノはシャワーに打たれながら
チャンミンを抱きしめた


「ユノもなにも悪くないね…」

「俺はチャンミンと一緒にいたいだけだ…ただそれだけ…」

「ユノ…」


バスルームにはシャワーの音と、2人の嗚咽が響いていた…


このまま、2人で過ごしていたら
思い出を積み重ねていったら

余計につらくなるだけ


翌日…


ユノは、ミノとドンジュに連絡をとった

早い方がいい…


チャンミンはユノの様子から
これからユノがしようとすることを察知した

わかっていた…
ユノもこうしたくてするわけじゃない
自分のためなのだ


正直…チャンミンもこの状態はとてもつらく

いつも頭の中で自分と違う何かが戦っているようで…たまに我慢ならない時もあった。

常に身体はだるく…また昔の体調が悪い時に戻ったようだった。

だけどそれ以上にユノを忘れることは考えられなかった

どうにかしないと

あのUSBがなくなればいいんだ。

そうすれば自分はこのままいられる

チャンミンはUSBを探した
部屋中ひっくり返してさがしたけれど
見つからない

そこにユノが帰ってきてしまった


「どうしたの?チャンミン」

「……探し物」

「なにを?」

言いにくそうなチャンミンが決心したように言った

「僕にとっての…凶器」

「チャンミン…」

「………」


「ここに…あるよ」

ユノがスーツのポケットからUSBを出してみせた。

「ユノ…」


「みんなが待ってる」

「みんな?僕はユノだけでいい」

「お母さんも、兄弟もみんな待ってるんだよ
チャンミンの帰りを」

「ユノは?ユノはいいの?僕がユノを忘れちゃってもいいの?」

「俺が覚えているよ、チャンミンの事は俺が絶対忘れない」

「そんな…」


チャンミンは半泣きだ


「本来のおまえがいたところに帰るだけだ」

ユノの瞳にも涙の膜が張っている

「僕のことが嫌い?」

「チャンミン…」

「ユノはよく平気だね!僕があなたを忘れちゃうって言うのに!」

ユノは愛おしそうにチャンミンを見つめると、
その細い腰を抱き寄せた


「平気なもんか…」

ユノの声が震えている

その瞳から涙がこぼれ落ちそうだ…


「チャンミンはブリキの木こりだって言ったね?
心がほしいって」

「うん…」

チャンミンは嗚咽をこらえても、溢れる涙を止めることができない。

悲しい…ユノは決心している


「こんなに涙を流して…立派な心のある人間になれたな」

「うん…」

「よかったな、チャンミン」


とうとう、ユノの目尻から
綺麗な涙が一筋流れた


「俺は全然だめだ。臆病なライオンはまだ勇気を手に入れることができない」

「ユノは臆病なんかじゃないよ」

「お前を…手放す勇気が…なくて」


ユノの顔が涙をこらえようとして歪む


「ユノ…いやだ」

チャンミンの顔も涙で歪み、唇が震える

その唇にユノはそっと触れた

チャンミンは泣きじゃくった

「僕…いやだ…忘れたくない
ユノと一緒にパン屋へ行ったり、ご飯食べたり
一緒に暮らしてただけでも…全部が大好きな時間なのに…」

「大したことしてやれなかったな…」

泣きながら、ユノが笑った

「そんなことないよ…湖だって、ユノは申し訳なさそうだったけど…意味わかんない…僕は…あんなに楽しかったのに」

「俺も…楽しかったよ…」

「僕ばっかり…たくさん肉食べちゃってね」

チャンミンも涙を止められず…それでも笑った

「全部俺が覚えてるから…お前のこの可愛い笑顔も全部…」


ユノの顔が真剣になった


「チャンミン…愛してるよ」

「ユノ…」

「お前が俺を忘れても…俺はずっと愛してる」


ユノはたまらずチャンミンを抱きしめた

「ユノ…ユノ…僕も愛してる」

「ごめんな…チャンミン」

「いやだ…」


ユノの手がチャンミンの後頭部をまさぐり
差し込み口を探す


「いやだよ…ユノ…いやだ」

チャンミンが泣きながらユノの肩を噛んだ

「ごめん…ごめんな…」

ユノの声が裏返る…

ユノの指が差し込み口を見つけた


「ユノ…愛してる…」


チャンミンはユノの肩から唇を離すと
ユノにくちづけた


長いくちづけ


ユノは震える指で…2人を分かつUSBを差し込んだ


瞬間、チャンミンはその衝撃で「ん…」と声をあげた

ゆっくりと離れる唇


ユノは泣きながら力が抜けていくチャンミンを抱きしめた

「チャンミン…俺のチャンミン…」


ガクッと膝が抜けるチャンミンを搔き抱いた


愛してる…

愛してるよ…




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